(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983023
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】制御プログラムを更新する方法、プログラム、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20211206BHJP
G06F 8/65 20180101ALI20211206BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20211206BHJP
G06F 11/36 20060101ALI20211206BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G06F8/65
G06F11/34 157
G06F11/36 180
H01L21/30 541Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-192830(P2017-192830)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2019-66692(P2019-66692A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 健一
【審査官】
冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−232217(JP,A)
【文献】
特開2002−342102(JP,A)
【文献】
特開2008−152332(JP,A)
【文献】
特開平10−312275(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/114360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 − 7/24
9/00 − 9/02
G06F 8/00 − 8/38
8/60 − 8/77
9/44 − 9/445
9/451、11/07
11/28 −11/36
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にパターンを形成するリソグラフィ装置と、前記リソグラフィ装置の動作のシミュレーションを行うシミュレーション装置と、前記リソグラフィ装置および前記シミュレーション装置のうちの一方を制御する第1制御装置と、前記リソグラフィ装置および前記シミュレーション装置のうちの他方を制御する、前記第1制御装置とは異なる第2制御装置と、を含むリソグラフィシステムにおける、前記リソグラフィ装置を制御するための制御プログラムを更新する方法であって、
前記第1制御装置が前記リソグラフィ装置を制御し、前記第2制御装置が前記シミュレーション装置を制御している状態において、前記第1制御装置と前記第2制御装置との間で制御パラメータを同期するとともに、前記第2制御装置が、更新用の制御プログラムである更新プログラムを取得する工程と、
前記第2制御装置が、前記取得した更新プログラムをインストールすることにより、前記第2制御装置の制御プログラムを更新する工程と、
前記第2制御装置が、前記更新された制御プログラムにより前記シミュレーション装置を動作させて前記シミュレーションを実行する工程と、
前記シミュレーションの結果が所定のリソグラフィ性能が得られないことを示す場合に、前記第2制御装置にインストールされている制御パラメータおよび制御プログラムの少なくともいずれかを修正する工程と、
前記修正の後で前記リソグラフィ装置の稼働を停止させ、その後、前記第2制御装置が前記リソグラフィ装置を制御し前記第1制御装置が前記シミュレーション装置を制御するように前記第1制御装置と前記第2制御装置の制御対象の切り替えを行う工程と、
前記切り替えの完了後、前記リソグラフィ装置の稼働を再開する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記切り替えは、
ネットワークを介して接続されているケーブルの差し替え、
ネットワーク仮想化、
ネットワーク接続の間に転送ポートを設けるポートフォワード、
のいずれかによって行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御パラメータを同期させることは、
前記第2制御装置が、前記第1制御装置に対して制御パラメータの転送要求を発行する工程と、
前記第1制御装置が、前記転送要求に応答して、制御パラメータを前記第2制御装置に転送する工程と、
前記第2制御装置が、前記第1制御装置から受信した前記制御パラメータを前記第2制御装置が保持している制御パラメータに対して上書き保存する工程と、
を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リソグラフィ装置は、原版を介して前記基板を露光する露光装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記制御パラメータは、前記基板に露光を行う領域であるショット領域の配置を規定するレイアウト情報および露光量に関する情報を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リソグラフィシステムは、前記リソグラフィ装置のキャリブレーションを行うために、前記リソグラフィ装置における処理結果と前記シミュレーション装置における演算結果とを比較する分析装置を更に含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
物品を製造する物品製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法に従って更新された制御プログラムに基づいて制御されるリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された基板を加工する工程と、
を有し、前記加工された基板から前記物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
制御プログラムを更新する方法、プログラム、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置やインプリント装置等のリソグラフィ装置の高精度化や高機能化が進む中、リソグラフィ装置の制御を行うためのソフトウェアも高精度化や高機能化のために随時改良されている。このようなソフトウェアの改良は、新規開発のリソグラフィ装置だけでなく、既に稼動中のリソグラフィ装置のハードウェアの性能を引き出す目的で、稼動中のリソグラフィ装置に対するソフトウェアの更新が頻繁に行われる。
【0003】
従来のリソグラフィ装置の制御プログラムの更新手順は、概ね次のようなものである。
【0004】
事前に、ユーザが要望する機能の追加、及び、改良すべき機能を調査し、リソグラフィ装置のハードウェア構成に対して更新すべき制御プログラムの内容(バージョン)が決定される。
リソグラフィ装置の制御プログラムの更新を行う際には、稼働中の装置を停止する必要があるため、生産計画・人員計画を考慮して更新時期が決定される。
次に、更新用の制御プログラム(更新プログラム)を取得する。更新プログラムは、光/磁気ディスクのような可搬メディアに記録した形態で、リソグラフィ装置の製造ベンダから提供されるのが一般的である。
次に、リソグラフィ装置での基板処理を終了させて、更新プログラムのインストールを実施することで制御プログラムの更新を実施する。
更新が完了したら、リソグラフィ装置でテストを行い、テストの結果を判断する。
テストの結果に基づき更新成功と判断され次第、停止していたリソグラフィ装置での基板処理を開始する。
このような流れで制御プログラムの更新が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−177312号公報
【特許文献2】特開2007−288098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィ装置において、装置の制御に用いる制御プログラムは、インストール前にユーザ先のさまざまな運用環境を想定したテストに合格したとしても、インストールした後になって問題が明らかになることも多い。装置の複雑な設定とユーザの運用環境の全てを事前に把握して網羅的なテストを実施することは困難なためである。このように、ソフトウェアの新機能がユーザ先の運用環境(例えば、装置毎に調整されたパラメータ、基板、原版)で適正な効果が出せるかを十分検証することはできず、制御プログラムのインストール後に重大な問題が発覚するリスクが残ってしまう。
【0007】
従来、テスト内容の網羅度を高め高品質な制御プログラムを提供するためには、更新用の制御プログラム(更新プログラム)をインストールした後で、制御プログラムの更新に伴うデータ検証及び精度検証を大量に実施することが必要であった。しかしこの方法では、長時間の稼働停止が必要であり、また、更新するソフトウェアの変更規模の大小にかかわらずインストール及び検証に必要とする全体の時間を短縮することができない。したがって、装置の稼働停止期間を十分に確保できずソフトウェアを更新すること自体が困難である。
【0008】
本発明は、リソグラフィ装置の稼働停止時間の短縮に有利な制御プログラムの更新に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、基板の上にパターンを形成するリソグラフィ装置と、
前記リソグラフィ装置の動作のシミュレーションを行うシミュレーション装置と、
前記リソグラフィ装置および前記シミュレーション装置のうちの一方を制御する第1制御装置と、
前記リソグラフィ装置および前記シミュレーション装置のうちの他方を制御する、前記第1制御装置とは異なる第2制御装置と、
を含
むリソグラフィシステムにおける、前記リソグラフィ装置を制御するための制御プログラムを更新する方法であって、
前記第1制御装置が前記リソグラフィ装置を制御し、前記第2制御装置が前記シミュレーション装置を制御している状態において、前記第1制御装置と前記第2制御装置との間で制御パラメータを同期するとともに、前記第2制御装置が、更新用の制御プログラムである更新プログラムを取得する工程と、前記第2制御装置が、前記取得した更新プログラムをインストールすることにより、前記第2制御装置の制御プログラムを更新する工程と、前記第2制御装置が、前記更新された制御プログラムにより前記シミュレーション装置を動作させて前記シミュレーションを実行する工程と、前記シミュレーションの結果が所定のリソグラフィ性能が得られないことを示す場合に、前記第2制御装置にインストールされている制御パラメータおよび制御プログラムの少なくともいずれかを修正する工程と、前記修正の後で前記リソグラフィ装置の稼働を停止させ、その後、前記第2制御装置が前記リソグラフィ装置を制御し前記第1制御装置が前記シミュレーション装置を制御するように前記第1制御装置と前記第2制御装置の制御対象の切り替えを行う工程と、前記切り替えの完了後、前記リソグラフィ装置の稼働を再開する工程と、を有することを特徴とする
方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リソグラフィ装置の稼働停止時間の短縮に有利な制御プログラムの更新に関する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態におけるリソグラフィシステムの構成図。
【
図2】実施形態におけるシミュレーション装置のハードウェア構成図。
【
図3】実施形態における第1制御装置のハードウェア構成図。
【
図4】実施形態における第2制御装置のハードウェア構成図。
【
図5】実施形態における制御対象の切り替え処理のフローチャート。
【
図6】第2実施形態に係るリソグラフィシステムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の実施の具体例を示すにすぎないものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係るリソグラフィシステム100の構成を示す図である。本実施形態では、基板の上にパターンを形成するリソグラフィ装置として、原版を介して基板を露光する露光装置を使用する例を説明する。
図1において、リソグラフィシステム100は、露光装置10と、露光装置10の動作を模擬するシミュレーション装置20とを含む。また、リソグラフィシステム100は、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの一方を制御する第1制御装置30と、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの他方を制御する第2制御装置40とを含む。露光装置10、シミュレーション装置20、第1制御装置30、および第2制御装置40は、例えばネットワーク50を介して相互に通信可能に構成されている。
【0014】
露光装置10は、例えば、半導体デバイスの製造工程に使用され、ステップ・アンド・リピート方式またはステップ・アンド・スキャン方式により原版Rに形成されているパターンを基板W上に露光(転写)する投影型露光装置である。露光装置10は、照明系11と、原版Rを保持する原版ステージ12と、投影光学系13と、基板Wを保持する基板ステージ14と、制御部15とを備える。なお、
図1では、投影光学系13の光軸(本実施形態では鉛直方向)と平行な方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内で露光時の基板Wの走査方向をY方向、Y方向に直交する非走査方向をX方向としている。
【0015】
照明系11は、不図示の光源から照射された光を調整し、原版Rを照明する。原版Rには、基板W上に転写されるべきパターン(例えば回路パターン)が形成されている。原版Rは、例えば石英ガラス製である。原版ステージ12は、原版Rを保持しつつ、XYの各方向に移動可能である。投影光学系13は、照明系11からの光で照明された原版R上のパターンの像を所定の倍率(例えば1/2〜1/5)で基板W上に投影する。基板Wは、表面上にレジスト(感光剤)が塗布された、例えば単結晶シリコンからなる基板である。基板ステージ14は、基板Wを不図示のチャックを介して保持しつつXYZの各方向に移動可能である。
【0016】
原版搬送部16は、露光装置外部から原版を受け取り、異物の検査および位置合わせを行った後に原版ステージ12上に搬送する。基板搬送部17は、露光装置外部の感光体塗布機から基板を受け取り、温度調節および位置合わせを行った後に基板ステージ14上に搬送する。制御部15は、第1位置検出部18を用いて原版ステージ12の位置を検出し、駆動指令値と位置の観測値とに基づいて原版ステージ12の駆動を制御する。また、制御部15は、第2位置検出部19を用いて基板ステージ14の位置を検出し、駆動指令値と位置の観測値とに基づいて基板ステージ14の駆動も制御する。制御部15は、露光装置10のその他の各部も制御して、露光動作を統括している。
【0017】
なお、本実施形態ではこのように、リソグラフィ装置として露光装置の例を示すが、他のリソグラフィ装置であってもよい。例えば、リソグラフィ装置は、荷電粒子線で基板(上の感光剤)に描画を行う描画装置であってもよい。あるいは、リソグラフィ装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であってもよい。
【0018】
露光装置10の動作を模擬するシミュレーション装置20は、露光装置10とは独立して動作が可能であり、第2制御装置40から提供される制御パラメータに応じて、露光装置10の振る舞いを演算して出力する。
図2にシミュレーション装置20のハードウェア構成図を示す。シミュレーション装置20は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ装置によって構成されうる。CPU21は、装置全体の制御を司る中央処理装置である。RAM22は、主記憶装置として機能するメモリである。ROM23は、起動プログラムやデータを記憶しているメモリである。通信部25は、ネットワーク50と接続するためのインタフェースを含み、ネットワーク50を介した通信を実行する。HDD24はハードディスク装置であって、そこには、オペレーティングシステム241(OS)、シミュレーションプログラム242、制御パラメータ243がインストールされている。制御パラメータは、例えば、基板上に露光を行う領域であるショット領域の配置を規定するレイアウト情報を含みうる。また、制御パラメータは、露光量に関する情報として、照明系11の出力や、原版ステージ12及び基板ステージ14の走査速度(駆動プロファイル)を含みうる。このような制御パラメータはレシピデータとも呼ばれている。シミュレーション装置20は、第1制御装置30または第2制御装置40から提供された制御パラメータを、制御パラメータ243としてHDD24に格納しうる。
【0019】
第1制御装置30は、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの一方を制御する。
図3に第1制御装置30のハードウェア構成例を示す。第1制御装置30も、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ装置によって構成されうるものであり、したがって、その構成は
図2のシミュレーション装置20のそれと同様である。CPU31は、装置全体の制御を司る中央処理装置である。RAM32は、主記憶装置として機能するメモリである。ROM33は、起動プログラムやデータを記憶しているメモリである。通信部35は、ネットワーク50と接続するためのインタフェースを含み、ネットワーク50を介した通信を実行する。HDD34はハードディスク装置であって、そこには、オペレーティングシステム341(OS)、制御プログラム342、制御パラメータ343(レシピデータ)がインストールされている。
【0020】
第1制御装置30が露光装置10を制御する場合、第1制御装置30は、オペレーティングシステム341の上で動作する制御プログラム342により、露光装置10に対して制御処理の指示を行う。制御プログラム342には、制御パラメータ343に応じた振る舞いがプログラミングされている。この制御プログラム342は、露光装置10の性能(制御精度、スループット等)を向上させるために更新されうる。また、制御パラメータ343を変更することで、アライメント精度重視、スループット重視といった露光装置の使用目的に応じ動作を変更することも可能である。
【0021】
第2制御装置40は、第1制御装置30に対して、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの他方を制御する。
図4に第2制御装置40のハードウェア構成例を示す。第2制御装置40も、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ装置によって構成されうるものであり、したがって、その構成は
図3の第1制御装置30のそれと同様である。CPU41は、装置全体の制御を司る中央処理装置である。RAM42は、主記憶装置として機能するメモリである。ROM43は、起動プログラムやデータを記憶しているメモリである。通信部45は、ネットワーク50と接続するためのインタフェースを含み、ネットワーク50を介した通信を実行する。HDD44はハードディスク装置であって、そこには、オペレーティングシステム441(OS)、制御プログラム442、制御パラメータ443(レシピデータ)がインストールされている。
【0022】
第2制御装置40は、第1制御装置30とは独立して動作する。第2制御装置40がシミュレーション装置20を制御する場合、第2制御装置40は、オペレーティングシステム441の上で動作する制御プログラム442により、シミュレーション装置20に対して制御処理の指示を行う。なお、第2制御装置40がシミュレーション装置20を制御することが前提とされている場合には、第2制御装置40とシミュレーション装置20とは一体のコンピュータ装置で構成されていてもよい。あるいは、第2制御装置40とシミュレーション装置20とは別体で構成されていても、
図1に示されるように、第2制御装置40とシミュレーション装置20はネットワーク50を介さずにデータ通信が可能なように直接接続されていてもよい。
【0023】
第1制御装置30の制御パラメータ343と、第2制御装置40の制御パラメータ443とは、それぞれの通信部およびネットワーク50を介して同期させることが可能である。また、前述したように、第1制御装置30は、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの一方を制御し、第2制御装置40は、露光装置10およびシミュレーション装置20のうちの他方を制御する。ここで、第1制御装置30と第2制御装置40との間で、制御対象(露光装置10/シミュレーション装置20)を相互に置き換える(切り替える)ことが可能である。
【0024】
図5は、制御対象の切り替え処理のフローチャートである。ここでは、当初、第1制御装置30が露光装置10を制御し、第2制御装置40がシミュレーション装置20を制御しているものとする。また、このフローチャートに係る処理は、露光装置10およびシミュレーション装置20の稼働中に実施されうる。
図5に示される制御対象の切り替え処理は、環境準備フェーズ、検証フェーズ、および更新フェーズの順に進行する。
【0025】
まず、環境準備フェーズについて説明する。まずS101で、制御パラメータの同期が行われる。例えば、第2制御装置40は、第1制御装置30に対し、制御パラメータの転送要求を発行する。第1制御装置30は、この転送要求に応答して、制御パラメータ343を第2制御装置40に転送する。第2制御装置40は、受信した制御パラメータ343を制御パラメータ443に対して上書き保存する。これにより、第1制御装置30と第2制御装置40との間で制御パラメータが同期される。これにより、第1制御装置30と第2制御装置40との間では、同じ演算結果が得られる制御プログラムと、同じ制御パラメータを有する状態になるため、同じ制御を行わせた場合には同じ制御結果を得ることができる。
【0026】
次に、S102で、第2制御装置40では、露光装置10のハードウェア構成や、露光装置10の機能の追加及び改良に関するユーザの要望に基づいて、更新すべき制御プログラムのバージョンが決定される。その後、S103で、第2制御装置40は、決定されたバージョンの更新用の制御プログラム(更新プログラム)を装置外部から取得する。更新プログラムは、露光装置の製造ベンダにより光磁気ディスク等の記録媒体に格納した形で提供されることが一般的である。ただし、物理的な記録媒体は必ずしも必要ではなく、ネットワーク50を介して制御プログラムを取得してもよい。例えば、第2制御装置40は、情報暗号化技術を含む情報圧縮伝送技術を用いて、リポジトリと呼ばれる貯蔵庫から暗号化された制御プログラムの電子データをネットワーク50を介してダウンロードする。その後、第2制御装置40は、暗号を復元した後、MD5やSHAなどのハッシュ値でデータの欠損が無いことを確認する。記録媒体をマスタからコピー生成して輸送する時間やコピーの失敗リスクを考慮した場合、このようなダウンロードの方が記録媒体を用いる方法より無駄がなく能率的である。
【0027】
次に、処理は検証フェーズに移行する。S104で、第2制御装置40は、S103で取得した更新プログラムをインストールすることにより、制御プログラム442を更新する。なお、シミュレーション装置20において、例えば、露光装置10の各部と第1制御装置30または第2制御装置40との間のインタフェースの変更が必要になる場合がある。その場合、S104で、制御プログラム442の更新と同時に、シミュレーション装置20のアップグレードを行うこともできる。
【0028】
次に、S105で、第2制御装置40は、更新後の制御プログラム442によりシミュレーション装置20を動作させ、テスト(シミュレーション)を実行する。テストは、インストール前後のパラメータのチェック、装置上のコマンド命令を網羅的に実行するテスト、エラーを前提とした異常系のテスト、露光ジョブの実行によるスループットのテスト、制御精度のテスト等を含みうる。S101で制御パラメータ443は露光装置側の制御パラメータ343と同期されているため、シミュレーション装置20において、露光装置10でテストした場合と同じ結果を得ることができる。また、テストにおいては、更新された制御プログラム442で全てのレシピが問題なく処理できるかどうかも判定されうる。
【0029】
ここで、一例として、制御プログラム442の更新に伴い、基板ステージ14の駆動プロファイルが変更された場合を考える。S101で同期された制御パラメータを適用して制御プログラム442により露光装置10を稼働させた場合、更新前の制御プログラムでは正しく動作していた制御パラメータが、更新後の制御プログラムでは正しく動作しない可能性がある。また、変更された駆動プロファイルと制御パラメータとの組み合わせによっては、更新後の制御プログラムが期待通りに動作しない可能性もある。
【0030】
例えば、変更された駆動プロファイルを適用すると基板ステージ14の加速度等が変更される。これにより、露光装置10で露光ジョブを実行すると基板ステージ14の速度が許容範囲に収まらず、基板ステージ14の駆動のやり直しが発生してスループットが低下することがある。また、基板ステージ14の振動が許容範囲に収まらずエラーが発生することもある。
【0031】
また、例えば、最大画角のショット領域に最小画角のショット領域が配置されているようなレイアウト情報の場合に露光装置10で露光ジョブを実行すると、投影光学系13の画角調整機構(不図示)の駆動が基板ステージ14の駆動に対して遅延する。そのため、期待されたスループットにならないことがある。
【0032】
S105では、更新後の制御プログラムによりシミュレーション装置20で上記内容を網羅するテストを行い、S106で、その結果が期待通りかを判定する。実施形態において、テストの各項目が連続的に実行される。このように、S101で第1制御装置30と同期された制御パラメータを適用し、更新後の制御プログラム442でシミュレーション装置20によるテストを行うことにより、更新後の制御プログラム442の検証を行うことができる。
【0033】
S106でテストの結果が期待通りでないと判定された場合は(S106でNO)、S107で、制御プログラム442および制御パラメータ443の少なくともいずれかの修正を行う。例えば、基板ステージの速度や振動等の動的特性が許容範囲に収まらず、エラーが発生したりスループットが低下したりするとのシミュレーション結果が出た場合、基板ステージ14の駆動プロファイルを修正する。また、投影光学系13の画角調整機構の駆動が基板ステージ14の駆動に対して遅延することで期待されたスループットにならないとのシミュレーション結果が出た場合には、投影光学系13の画角調整機構の駆動プロファイルを修正する。その後、S104に戻って処理を繰り返す。
【0034】
S105でのテストの結果が期待通りである場合は(S106でYES)、処理は更新フェーズに移行する。具体的には、S108で、露光装置10の稼働を停止し、その後、第1制御装置30と第2制御装置40の制御対象の切り替えが行われる。この切り替えにより、露光装置10は、第2制御装置40における更新後の制御プログラム442で制御されることになる。この切り替え時において、不要な初期化処理は無駄な時間となりうる。そのため、切り替えは、露光装置10に対して、原版ステージ12および基板ステージ14の初期位置への駆動や原点出し駆動、キャリブレーションなどの工程を行わない方法で実現される。一例として、切り替えは、ネットワーク接続しているLANケーブルを差し替えて、ネットワークだけ再起動させることにより行われる。あるいは、ソフトウェア技術を用いて切り替えを行うことも可能である。例えば、ネットワーク仮想化や、ネットワーク接続の間に転送ポートを設けるポートフォワード等を用いて切り替えを行ってもよい。このような方法を用いれば物理的な接続に縛られない通信先の切り替えが実現可能である。第1制御装置30と第2制御装置40の切り替えが完了すると、露光装置10の稼働を再開する。
【0035】
なお、
図1には一対のシミュレーション装置20と第2制御装置40が示されているが、複数対のシミュレーション装置20と第2制御装置40が設けられていてもよい。シミュレーション装置20および第2制御装置40は複数同時に起動することが可能であり、これによりS105では、異なる複数の制御プログラム442によるテストを並列で実行することができる。あるいは、それぞれに同じ制御プログラム442をインストールして、それぞれ互いに少なくとも一部が異なる複数の制御パラメータを適用してテストを並列で実行することもできる。この場合、S108では、複数の第2制御装置40の中から選択した1つの第2情報処理装置に対して第1制御装置30との切り替えを行う。
【0036】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して、第2実施形態を説明する。
図1〜5と同じ構成要素には同じ参照符号を付しその説明を省略する。
図6において、露光装置10とシミュレーション装置20が、第1制御装置30に接続されている。第1制御装置30は、同じ制御プログラム342および制御パラメータ343を用いて、露光装置10およびシミュレーション装置20を制御する。
【0037】
また、露光装置10およびシミュレーション装置20は、分析装置60に接続されている。分析装置60は、露光装置10の処理結果61およびシミュレーション装置20の演算結果62を受信し、処理結果61と演算結果62との比較による分析を行う。シミュレーション装置20は、経時劣化や計測騙されが無い理想的な装置モデルとして稼働させることができる。したがって、分析装置60は、露光装置10の処理結果61を、シミュレーション装置20の演算結果62と比較し、その比較結果に基づいて、露光装置10の経時劣化や計測騙され等による露光装置10の状態の異常を検知する。これにより、露光不良が発生する前に再調整などのメンテナンスを行うことができる。
【0038】
一例として、露光装置10のキャリブレーション計測を行う場合を考える。制御パラメータ343には、露光装置10のキャリブレーション計測の結果として得た、ハードウェアユニットのオフセットパラメータが含まれている。露光装置10の各種精度性能を維持するために、個々のパラメータの経時劣化モデルの許容時間や許容露光パルス数に応じて、露光装置10のリセット中や露光ジョブ中にキャリブレーション計測を行うことで、それらのオフセットパラメータが更新されうる。
【0039】
例えば、露光装置10においては、レンズや原版のガラス硝材の熱による膨張、ハードウェアの気圧変動による変形、振動による共振等の物理現象によって、経時劣化や計測騙されが発生しうる。実験的に得られたデータに基づいて、経時劣化モデルが定義されうるが、装置内全てのユニット及びその相互関係の変動に関して非線形成分を含んだ経時劣化モデルを定義し更新することは困難である。
【0040】
本実施形態では、露光装置10の第1位置検出部18および第2位置検出部19等を用いた実測により得られた処理結果61と、シミュレーション装置20による演算結果62との差、及び、その差の分散値を常時監視する。これにより、複雑な非線形モデル式を持たずとも、装置の経時劣化による状態の異常を検知することが可能となり、露光不良が発生する前に再調整などのメンテナンスを行うことが可能となる。
【0041】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィシステムを用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、かかる工程でパターンが転写された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0042】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:露光装置、20:シミュレーション装置、30:第1制御装置、40:第2制御装置、50:ネットワーク