(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
転がり軸受の内外に対向する固定側軌道輪および回転側軌道輪にそれぞれ隣り合って固定側間座および回転側間座が設けられ、前記固定側軌道輪および前記固定側間座が、固定部材および回転部材のうちの固定部材に設置され、前記回転側軌道輪および前記回転側間座が、前記固定部材および前記回転部材のうちの回転部材に設置された軸受装置において、
前記固定側間座における前記回転側間座と対向する周面に開口する出口から前記回転側間座における前記固定側間座と対向する周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル孔が設けられ、かつ前記固定側間座の軸方向端面に、前記ノズル孔から吐出された圧縮エアの排気口が設けられ、前記ノズル孔の出口が前記ノズル孔の入口よりも前記回転側間座の回転方向の前方に位置するように前記ノズル孔が径方向に対して傾斜させて設けられていると共に、前記排気口の出口が前記排気口の入口よりも前記回転側間座の回転方向の前方に位置するように前記排気口が径方向に対して傾斜させて設けられていることを特徴とする軸受装置の冷却構造。
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の軸受装置の冷却構造において、前記ノズル孔および前記排気口の各個数は同数の複数であり、これらノズル孔および排気口がそれぞれ円周方向に等配で設けられている軸受装置の冷却構造。
請求項3に記載の軸受装置の冷却構造において、任意の一つの前記ノズル孔の前記出口からこのノズル孔に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記排気口までの円周方向の距離が、任意の一つの前記排気口からこの排気口に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記ノズル孔の前記出口までの円周方向の距離よりも長い軸受装置の冷却構造。
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の軸受装置の冷却構造において、前記転がり軸受は、前記固定側軌道輪と前記回転側軌道輪との間の軸受内部に封入されたグリースにより潤滑され、前記回転側間座における前記固定側軌道輪に隣接する軸方向端部に、前記固定側間座の側に張り出して前記ノズル孔から吐出された圧縮エアが前記軸受内部へ流入することを阻止する障害壁が設けられた軸受装置の冷却構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮エアによる冷却は、例えば圧縮エアに潤滑剤を混合して転がり軸受を潤滑する場合に適用できる。いわゆる、エアオイル潤滑やオイルミスト潤滑である。この場合、軸受内部を通る圧縮エアの量が多過ぎると、エアオイル等の円滑な給排気が阻害される可能がある。また、回転によって転がり軸受の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体に圧縮エアが衝突することで、騒音が大きくなる可能性がある。
【0006】
圧縮エアによる冷却は、軸受をグリース潤滑する場合にも適用できる。その場合、軸受内部を通る圧縮エアの量が多いと、圧縮エアが軸受内部のグリースを排出してしまい、潤滑不良を誘発する可能性がある。
【0007】
この発明の目的は、軸受冷却のために固定側間座と回転側間座との間に吹き込まれた圧縮エアを、固定側間座に設けられた排出口から円滑に排出することで、圧縮エアが転がり軸受の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減できる軸受装置の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の軸受装置の冷却構造は、転がり軸受の内外に対向する固定側軌道輪および回転側軌道輪にそれぞれ隣り合って固定側間座および回転側間座が設けられ、前記固定側軌道輪および前記固定側間座が、固定部材および回転部材のうちの固定部材に設置され、前記回転側軌道輪および前記回転側間座が、前記固定部材および前記回転部材のうちの回転部材に設置された軸受装置において、
前記固定側間座における前記回転側間座と対向する周面に開口する出口から前記回転側間座における前記固定側間座と対向する周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル孔が設けられ、かつ前記固定側間座の軸方向端面に、前記ノズル孔から吐出された圧縮エアの排気口が設けられ、前記ノズル孔が前記回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていると共に、前記排気口が前記回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていることを特徴とする。
例えば、前記固定側軌道輪が外輪であり、前記回転側軌道輪が内輪である。その場合、前記固定部材および回転部材は、例えばそれぞれハウジングおよび軸である。
【0009】
この構成によると、固定側間座に設けられたノズル孔より冷却用の圧縮エアを回転側間座の周面に向けて吐出する。ノズル孔は回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、ノズル孔から吐出された圧縮エアは、回転側間座の周面に沿って旋回しながら軸方向に流れ、この間に回転側間座を冷却する。圧縮エアが旋回するため、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアが回転側間座の周面と接している時間が長く、回転側間座を効率良く冷却することができる。
【0010】
回転側間座の周面を通過した圧縮エアは、固定側間座の軸方向端面に設けられた排気口や、転がり軸受の内部を通って外部に排出される。排気口も回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、旋回流となっている圧縮エアが排気口から円滑に排出される。それにより、転がり軸受の内部を通る圧縮エアの量を減らして、圧縮エアが転がり軸受の内部を多く流れることによる弊害を排除また軽減することができる。
具体的には、転がり軸受をエアオイル潤滑やオイルミスト潤滑する場合、エアオイル等の円滑な給排気が阻害されることを防止できると共に、転がり軸受の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜や回転中の転動体に圧縮エアが衝突することによる騒音を抑制できる。また、転がり軸受をグリース潤滑する場合、圧縮エアが軸受内部のグリースを排出してしまうことを防止できる。
【0011】
この発明において、前記ノズル孔および前記排気口の各個数は同数の複数であり、これらノズル孔および排気口がそれぞれ円周方向に等配で設けられているのが好ましい。
この場合、ノズル孔から吐出される圧縮エアにより、回転側間座を円周方向均等に冷却することができる。また、回転側間座の周面を通過した圧縮エアが、各排気口から均等に排出される。このため、圧縮エアの排出が円滑に行われる。
【0012】
前記ノズル孔と前記排気口の配置につき、任意の一つの前記ノズル孔の前記出口からこのノズル孔に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記排気口までの円周方向の距離が、任意の一つの前記排気口からこの排気口に対して前記回転側間座の回転方向の一つ前側に位置する前記ノズル孔の前記出口までの円周方向の距離よりも長いのが望ましい。
このようなノズル孔と排気口の位置関係であると、圧縮エアが回転側間座の周面に接している時間が長くなり、冷却効果が高い。
【0013】
この発明において、前記転がり軸受が、前記固定側軌道輪と前記回転側軌道輪との間の軸受内部に封入されたグリースにより潤滑される場合、前記回転側間座における前記固定側軌道輪に隣接する軸方向端部に、前記固定側間座の側に張り出して前記ノズル孔から吐出された圧縮エアが前記軸受内部へ流入することを阻止する障害壁が設けられているとよい。
障害壁が設けられていると、圧縮エアが転がり軸受の軸受内部へ流入することが阻止される。このため、軸受内部に封入されたグリースが圧縮エアで排除されることが防がれ、良好な潤滑状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の軸受装置の冷却構造は、転がり軸受の内外に対向する固定側軌道輪および回転側軌道輪にそれぞれ隣り合って固定側間座および回転側間座が設けられ、前記固定側軌道輪および前記固定側間座が、固定部材および回転部材のうちの固定部材に設置され、前記回転側軌道輪および前記回転側間座が、前記固定部材および前記回転部材のうちの回転部材に設置された軸受装置において、前記固定側間座における前記回転側間座と対向する周面に開口する出口から前記回転側間座における前記固定側間座と対向する周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル孔が設けられ、かつ前記固定側間座の軸方向端面に、前記ノズル孔から吐出された圧縮エアの排気口が設けられ、前記ノズル孔が前記回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていると共に、前記排気口が前記回転側間座の回転方向の前方へ傾斜させて設けられていため、軸受冷却のために固定側間座と回転側間座との間に吹き込まれた圧縮エアを、固定側間座に設けられた排出口から円滑に排出することで、圧縮エアが転がり軸受の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1の実施形態]
図1〜
図4はこの発明の第1の実施形態に係る軸受装置の冷却構造を示す。この例の軸受装置の冷却構造は、工作機械の主軸装置に適用されている。ただし、工作機械の主軸装置だけに限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、軸受装置Jは、軸方向に並ぶ二つの転がり軸受1,1を備え、各転がり軸受1,1の外輪2,2間および内輪3,3間に、外輪間座4および内輪間座5がそれぞれ介在している。外輪2および外輪間座4がハウジング6に設置され、内輪3および内輪間座5が主軸7に嵌合している。転がり軸受1はアンギュラ玉軸受であり、外輪2と内輪3の各軌道面間に複数の転動体8が介在している。各転動体8は、保持器9により円周等配に保持される。二つの転がり軸受1,1は互いに背面組合せで配置されており、外輪間座4と内輪間座5の幅寸法差により、各転がり軸受1,1の初期予圧を設定して使用される。
【0018】
この実施形態では、転がり軸受1は内輪回転で使用される。よって、外輪2、内輪3が、それぞれ請求項で言う「固定側軌道輪」、「回転側軌道輪」に相当し、外輪間座4、内輪間座5が「固定側間座」、「回転側間座」に相当する。また、主軸7が「回転部材」に相当し、ハウジング6が「固定部材」に相当する。後で示す他の実施形態についても同様である。
【0019】
外輪2,2および外輪間座4は、例えばハウジング6に対して隙間嵌めとされ、ハウジング6の段部6aと端面蓋40とにより軸方向の位置決めがされる。また、内輪3,3および内輪間座5は、例えば主軸7に対して締まり嵌めとされ、両側の位置決め間座41,42により軸方向の位置決めがされる。なお、図の左側の位置決め間座42は、主軸7に螺着させたナット43により固定される。
【0020】
冷却構造について説明する。
図2は軸受装置の冷却構造の主要部を拡大して示す断面図である。外輪間座4は、外輪間座本体11と、この外輪間座本体11とは別部材からなるリング状の潤滑用ノズル12,12とを有する。外輪間座本体11は断面略T字形状に形成され、この外輪間座本体11の軸方向両側に潤滑用ノズル12,12がそれぞれ対称配置で固定されている。外輪間座本体11の内径寸法は、潤滑用ノズル12,12の内径寸法よりも大きい。これにより、外輪間座4の内周面に、外輪間座本体11の内周面と、この内周面に続く潤滑用ノズル12,12の側面とで構成される凹み部13が形成されている。この凹み部13は、断面長方形の環状溝である。外輪間座4の凹み部13以外の内周面、すなわち潤滑用ノズル12,12の内周面と、内輪間座5の外周面とは、微小な径方向隙間δaを介して対向している。これにより、前記凹み部13と内輪間座5の外周面との間に、他よりも径方向幅の広い空間14が形成されている。
【0021】
前記外輪間座本体11には、内輪間座5の外周面に向けて冷却用の圧縮エアAを吐出するノズル孔15が設けられている。ノズル孔15の出口15aは、外輪間座4の内周面の前記凹み部13に開口している。この例では、複数個(例えば3個)のノズル孔15が設けられており、それぞれが円周方向等配に配置されている。
【0022】
図1のIV−IV断面図である
図4に示すように、各ノズル孔15は、それぞれ内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてある。つまり、外輪間座4の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線Lから、この直線Lと直交する方向にオフセットした位置にある。ノズル孔15をオフセットさせる理由は、圧縮エアAを内輪間座5の回転方向に旋回流として作用させて、冷却効果を向上させるためである。なお、
図1、
図2では、外輪間座4を、ノズル孔15の中心線を通る断面で表示している。
【0023】
外輪間座本体11の外周面には、軸受外部から各ノズル孔15に圧縮エアAを導入するための導入溝16が形成されている。この導入溝16は、外輪間座4の外周面における軸方向中間部に設けられ、各ノズル孔15に連通する円弧状に形成されている。導入溝16は、外輪間座本体11の外周面において、後述のエアオイル供給経路(図示せず)が設けられる円周方向位置を除く円周方向の大部分を示す角度範囲にわたって設けられている。
図1のように、ハウジング6に圧縮エア導入経路45が設けられ、この圧縮エア導入経路45に導入溝16が連通するように構成されている。ハウジング5の外部には、圧縮エア導入孔45に圧縮エアAを供給するエア供給装置(図示せず)が設けられている。
【0024】
潤滑構造について説明する。
図1に示すように、外輪間座4は、転がり軸受1の軸受内部にエアオイルを供給する前記潤滑用ノズル12,12を有する。各潤滑用ノズル12は、軸受内部に突出して内輪3の外周面との間でエアオイル通過用の環状隙間δbを介して対向する先端部30を含む。換言すれば、潤滑用ノズル12の先端部30が、内輪3の外周面に被さるように軸受内部に進入して配置される。また、潤滑用ノズル12の先端部30は、保持器9の内周面よりも半径方向の内方に配置されている。
【0025】
図2に示すように、潤滑用ノズル12には、この潤滑用ノズル12と内輪3の外周面間の前記環状隙間δbにエアオイルを供給するエアオイル供給孔31が設けられている。このエアオイル供給孔31は、軸受側に向かうに従い内径側に至るように傾斜し、先端部30の内周側に出口が開口している。エアオイル供給孔31には、ハウジング6および外輪間座本体11に設けられたエアオイル供給経路(図示せず)を通ってエアオイルが供給される。内輪3の外周面におけるエアオイル供給孔31の延長線上の箇所には、環状凹み部3aが設けられている。
潤滑用ノズル12から吐出されたエアオイルの油が前記環状凹み部3aに溜り、この油が、内輪3の回転に伴う遠心力により、傾斜面である内輪3の外周面に沿って軸受中心側へと導かれる。
【0026】
排気構造について説明する。
外輪間座本体11の軸方向端に、排気口17が設けられている。排気口17は例えば
図3の展開図に示すような矩形に切り欠かれた形状であり、外輪間座本体11に隣接して転がり軸受1の外輪2が配置されることで、軸受装置Jの内部と外部とを連通する開口形状となる。排気口17の個数はノズル孔15と同数(例えば3個)であり、ノズル孔15と同様に、各排気口17が円周方向に等配で設けられている。また、排気口17も、ノズル孔15と同様に、内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてある。
【0027】
図2ではノズル孔15と排気口17が同一断面に図示されているが、実際には
図4に示すように、ノズル孔15と排気口17の位置は円周方向にずれている。ノズル孔15および排気口17は、次のように円周方向に配置してある。すなわち、任意の一つのノズル孔15の出口15aからこのノズル孔15に対して内輪間座5の回転方向の一つ前側に位置する排気口17までの円周方向距離Mが、任意の一つの排気口17からこの排気口17に対して内輪間座5の回転方向の一つ前側に位置するノズル孔15の出口15までの円周方向距離Nよりも長くなっている。ここで、ノズル孔15の位置は、出口15aの中心の円周方向位置としている。また、排気口17の位置は、排気口17の内径端の円周方向中央位置としている。
このようにノズル孔15および排気口17を配置することにより、圧縮エアAを軸受装置Jの内部になるべく長時間滞留させることができる。
【0028】
図1において、ハウジング6には、冷却用の圧縮エアおよび潤滑用のエアオイルを軸受装置Jから排気する排気経路46が設けられている。排気経路46は、前記排気口17に連通する径方向排気孔48と、この径方向排気孔48に連通する軸方向排気孔49とを有する。
【0029】
上記構成からなる軸受装置の冷却構造の作用について説明する。
外輪間座4に設けられたノズル孔15より、冷却用の圧縮エアAが内輪間座5の外周面に向けて吹き付けられる。このとき、圧縮エアAが狭いノズル孔15内から広い空間14に吐出されることで、圧縮エアAが断熱膨張する。ノズル孔15内における圧縮エアの体積をV1、温度をT1とし、空間14での圧縮エアの体積をV2、温度をT2とした場合、気体の状態方程式、熱力学の第1法則より、V1<V2、T1>T2となる。すなわち、空間14では、圧縮エアAの温度が下がると共に、体積が増加する。体積が増加することで、圧縮エアAの流速が増大する。このように、低温で高速の圧縮エアAを内輪間座5に吹き付けることで、内輪間座5を効率良く冷却する。
【0030】
空間14から出た圧縮エアAは、内輪間座5の外周面および内輪3の外周面に沿って軸方向の外側へ流れる。この間も、内輪間座5および内輪3を冷却する。ノズル孔15が内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、圧縮エアAは、内輪間座5の外周面および内輪3の外周面に沿って旋回しながら軸方向に流れる。旋回しながら軸方向に流れると、軸方向にまっすぐ流れる場合と比べて、圧縮エアAが内輪間座5の外周面および内輪3の外周面と接している時間が長くなる。また、前述のように、圧縮エアAが軸受装置Jの内部になるべく長時間滞留するように、ノズル孔15および排気口17が円周方向に配置されている(M>N)。これらのことから、内輪間座5および内輪3をより一層効率良く冷却することができる。
【0031】
内輪間座5の外周面および内輪3の外周面を通過した圧縮エアAは、外輪間座4の軸方向端面に設けられた排気口17や、転がり軸受1の内部を通って外部に排出される。排気口17もノズル孔15と同様に、内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、旋回流となっている圧縮エアAが排気口17から円滑に排出される。それにより、転がり軸受1の内部を通る圧縮エアAの量を減らして、圧縮エアAが転がり軸受1の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減することができる。この実施形態のように、転がり軸受1をエアオイル潤滑する場合、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。また、この実施形態のように、潤滑用ノズル12の先端部30が軸受内部に進入している場合、圧縮エアAが回転中の転動体9に衝突することによる騒音を低減できる。
【0032】
ノズル孔15および排気口17の各個数は同数の複数であり、これらノズル孔15および排気口17がそれぞれ円周方向に等配で設けられているため、ノズル孔17から吐出される圧縮エアAにより、内輪間座5および内輪3を円周方向均等に冷却することができる。また、内輪間座5の外周面および内輪3の外周面を通過した圧縮エアAが、各排気口17から均等に排出される。このため、圧縮エアAの排出が、より一層円滑に行われる。
【0033】
[第2の実施形態]
図5、
図6はこの発明の第2の実施形態を示す。この軸受装置Jも転がり軸受1をエアオイル潤滑するが、第1の実施形態と違って、
図5に示すように、一体型である外輪間座4に圧縮エアAを吐出するノズル孔15とエアオイル供給孔31とが設けられている。
【0034】
この軸受装置Jでは、ノズル孔15の出口15aが開口する外輪間座4の内周面に、第1の実施形態の外輪間座4のような凹み部13(
図2参照)が形成されていない。その代わり、内輪間座5に、外周面と内周面とを貫通する孔20が円周方向に等配で複数(この例では10個)設けられている。各孔20は、内輪間座5の軸方向中間部に設けられている。孔20の形状は、例えば丸孔形状である。この孔20も、内径側に行くに従い内輪間座5の回転方向の前方に傾斜している。孔20を設けることで、ノズル孔15から吐出された圧縮エアAの一部が、主軸7の外周面に当たるようになっている。
【0035】
エアオイル供給孔31は、外輪間座4の側面部に開口し、転がり軸受1の軸受内部に面している。第1の実施形態のように、外輪間座4におけるエアオイル供給孔31が設けられている部分が軸受内部に突出していない。エアオイル供給孔31は、吐出されたエアオイルが内輪3の軌道面と転動体8との境界付近に当たるように、転がり軸受1に向かうに従い内径側に位置するように傾斜している。エアオイル供給孔31には、ハウジングに設けられたエアオイル供給経路(図示せず)から、外輪間座4に設けられた径方向孔21(
図6)を通って、エアオイルが供給される。
【0036】
第1の実施形態と同様に、外輪間座4の軸方向端面に、排気口17が設けられている。排気口17の形状は前記同様である。排気口17の個数はノズル孔15と同数(例えば3個)である。
図6に示すように、ノズル孔15および排気口17は、共に円周方向に等配で設けられている。また、ノズル孔15および排気口17は、共に内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてある。ノズル孔15および排気口17の円周方向の配置は、第1の実施形態と同じである。
【0037】
この軸受装置の冷却構造の場合、ノズル孔15より冷却用の圧縮エアAを内輪間座5の外周面に吹き付けて内輪間座5を冷却すると共に、圧縮エアAの一部が内輪間座5に形成された孔20を通って主軸7に当たることで主軸7を直接冷却する。その後、圧縮エアAは、内輪間座5の外周面に沿って軸方向の外側へ流れる。ノズル孔15が内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、圧縮エアAは内輪間座5の外周面に沿って旋回しながら軸方向に流れ、この間に内輪間座5を効率良く冷却する。
【0038】
内輪間座5を冷却した後、圧縮エアAは、外輪間座4の排気口17や転がり軸受1の内部を通って外部に排出される。排気口17も内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、旋回流となっている圧縮エアAが排気口17から円滑に排出される。それにより、転がり軸受1の内部を通る圧縮エアAの量を減らして、圧縮エアAが転がり軸受1の内部を多く流れることによる弊害を排除または軽減することができる。この実施形態のように、転がり軸受1をエアオイル潤滑する場合には、エアオイルの円滑な給排気が阻害されることを防止できる。また、この実施形態のように、外輪間座4の一部が軸受内部に突出していない場合、回転によって転がり軸受1の軸端付近に生じるエアカーテン状の空気流の膜に圧縮エアAが衝突することで生じる騒音を低減できる。
【0039】
上記各実施形態は転がり軸受1をエアオイル潤滑する形式であるが、この発明は転がり軸受をグリース潤滑する形式にも適用できる。
【0040】
[第3の実施形態]
図7はグリース潤滑である軸受装置の断面図、
図8はその部分拡大図である。この軸受装置Jも、エアオイル潤滑の軸受装置と同様に、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受1,1の外輪2,2間および内輪3,3間に、外輪間座4および内輪間座5をそれぞれ介在させている。各転がり軸受1としてアンギュラ玉軸受が使用されている。外輪2および内輪3の各軌道面間に複数の転動体8が介在され、これら転動体8が保持器9により円周等配に保持される。加えて、グリース潤滑であるこの軸受装置Jは、外輪2の軸方向両端に、外輪2と内輪3との間の軸受内部空間S1を密封するシール部材51,52がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
外輪間座4は断面形状が略T字状であり、T字の縦線部分である内側突出部4aの内周面と内輪間座5の外周面とが径方向隙間δ1を介して対向している。外輪間座4には、内径側突出部4aの内周面に出口15aを開口させて、内輪間座5の外周面に向けて冷却用の圧縮エアAを吐出するノズル孔15が設けられている。ノズル孔15の数は例えば3個であり、各ノズル孔15は円周方向に等配とされている。また、図示しないが、各ノズル孔15は、それぞれ内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてある。
【0042】
外輪間座4の外周面には、軸受装置Jの外部から前記各ノズル孔15に圧縮エアAを導入するための導入溝16が形成されている。また、外輪間座4の軸方向端面には、ノズル孔15から吐出された圧縮エアAの排出口17が設けられている。排出口17は、第1の実施形態と同様の切欠き状であり、ノズル孔15と同様に、それぞれ内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてある。
【0043】
内輪間座5は、軸方向両端部に外径側に張り出す障害壁53を有する。この例では、障害壁53は、軸方向の転がり軸受1に近い側ほど外径側への張り出し量が大きいテーパ形状である。なお、この構成の内輪間座5は、外輪間座4を組立可能にするため、すなわち外輪間座4の内周と障害壁53との干渉を防ぐために、軸方向中間部が分割された二つの内輪間座分割体からなる。
【0044】
図8に示すように、前記障害壁53の外径端は、外輪間座4の内周面と僅かな径方向隙間δ2を介して対向している。また、障害壁53の端面は前記軸方向内側のシール部材51と僅かな軸方向隙間δ3を介して対向している。これにより、シール部材51と障害壁53とでラビリンスシール効果を持つラビリンスシール部55が構築され、このラビリンスシール部55により軸受内部空間S1と間座空間S2とが隔てられている。
【0045】
この軸受装置Jは、運転時等に、軸受装置Jの外部に設けた圧縮エア供給装置から送られる冷却用の圧縮エアAが、外輪間座4のノズル孔15から内輪間座5の外周面に向けて供給される。この圧縮エアAは、内輪間座5に衝突した後、内輪間座5の外周面に沿って軸方向両側へ流れ、さらに内輪間座5の障害壁53のテーパ状外径面に沿って外径側へ導かれて、外輪間座5の排気口17から排出される。障害壁53によって圧縮エアAを外径側へ導くことに加えて、ノズル孔15と同じように排気口17が内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、間座空間S2での圧縮エアAの流れ、ならびに間座空間S2からの圧縮エアAの排出がスムーズになる。圧縮エアAが間座空間S2を通過する間に、軸受装置Jおよびこの軸受装置Jに支持された主軸7の熱を奪う。それにより、軸受装置Jおよび主軸7が効率良く冷却される。
【0046】
内輪間座5の軸方向両端に障害壁53が設けられていることにより、圧縮エアAが軸受内部空間S1へ流入することが阻止される。特にこの実施形態では、軸受内部空間S1と間座空間S2とがラビリンスシール部55により隔てられているため、圧縮エアAの軸受内部空間S1への流入をより一層効果的に阻止できる。さらに、間座空間S2において圧縮エアAがスムーズに流れるため、間座空間S2の内圧が軸受内部空間S1の内圧よりも低くなっており、圧縮エアAが軸受内部空間S1に流入し難い。これらのことから、圧縮エアAが軸受内部空間S1に流入することを極力抑えることができ、軸受内部空間S1に封入されたグリースが圧縮エアAで排除されることが防がれる。そのため、良好な潤滑状態を維持することができる。
【0047】
[第4の実施形態]
図9はグリース潤滑である軸受装置の他の例の断面図、図
10はその部分拡大図である。この軸受装置Jが、第3の実施形態と異なる点は、内輪間座5に形成された障害壁の形状である。他は、第3の実施形態と同じである。
【0048】
図9に示すように、内輪間座5は、中央の円筒体5aと、その軸方向両側の障害壁形成体5b,5bとからなる。各障害壁形成体5bは、軸方向端に障害壁61が設けられている。障害壁形成体5bにおける障害壁61を除く部分は、円筒体5aと同じ外径の円筒状である。
【0049】
図
10に示すように、障害壁61は、外径側に延びるつば状部61aと、このつば状部61aの外径端から軸方向内側に延びる円筒状部61bとからなる。つば状部61aの外径端は、転がり軸受1の外輪2の内周面近くまで延びている。円筒状部61bの軸方向内側端は、外輪間座4の内径側突出部4aと微小な隙間62を介して対向しており、この対向部分でラビリンスシールLSが構成されている。
【0050】
障害壁形成体5bの円筒状部分、障害壁61のつば状部61a、円筒状部61b、および外輪間座4の内径側突出部4aの内側に、冷却用空間S3が形成される。また、障害壁61の円筒状部61bと、外輪間座4におけるT字の横線部分である円筒部4bとの間に、排気用空間S4が形成される。これら冷却用空間S3と排気用空間S4は、ラビリンスシールLSとして構成された前記隙間62を介して繋がっている。
【0051】
軸受内部空間S1と冷却用空間S2とは、障害壁61によって完全に隔離されている。また、障害壁61のつば状部61aの外径端が外輪3の内周面近くまで延びていることに加えて、障害壁61のつば状部61aが軸方向内側のシール材51と僅かな軸方向隙間63を介して対向していることにより、軸受内部空間S1と排気用空間S4との間に、ラビリンスシール効果を持つラビリンスシール部が構築されている。
【0052】
この軸受装置Jは、運転時等に、外輪間座4のノズル孔15から冷却用の圧縮エアAを内輪間座5の外周面に向けて吐出することで、内輪間座5を冷却する。その後、圧縮エアAは内輪間座5の外周面に沿って軸方向の両側に流れる。軸方向の両側には転がり軸受1があるが、内輪間座5の軸方向両端部に障害壁61が設けられているため、圧縮エアAが軸受内部へ流入しにくい。また、障害壁61の一部がラビリンスシールLSとして構成されているため、内輪間座5の外周面に吹き付けられ後の圧縮エアAの排気が抑制されて、圧縮エアAが冷却用空間S3に留まる時間が長くなり、内輪間座5を効率良く冷却することができる。それにより、内輪間座5およびそれに接する転がり軸受1の内輪3がより一層効率よく冷却される。
【0053】
冷却用空間S3の圧縮エアAは、時間をかけて少しずつ隙間62を通って排気用空間S4へ流れ、さらに排気用空間S4から排気口17を通って軸受装置Jの外部へ排出される。ノズル孔15と同じように排気口17が内輪間座5の回転方向の前方へ傾斜させてあるため、排気口17からの圧縮エアAの排出はスムーズに行われる。
【0054】
障害壁61が設けられているため、冷却用空間S3から軸受内部空間S1へ直接に圧縮エアAが流れ込むことはない。また、軸受内部空間S1と排気用空間S4との間にラビリンスシール部が構築されているため、排気用空間S4から軸受内部空間S1へ圧縮エアAが流れ込むこともほとんどない。このため、軸受内部に封入されているグリースが圧縮エアAで吹き飛ばされることが防がれ、良好な潤滑状態を維持することができる。
【0055】
以上の各実施形態では、転がり軸受1を内輪回転で使用する場合を示したが、外輪回転で使用する場合も、この発明を適用することができる。その場合、例えば内輪3の内周に嵌合する軸(図示せず)が固定部材、外輪2の外周に嵌合するローラ(図示せず)が回転部材である。
【0056】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。