(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信情報記憶部に記憶された受信情報を用い、その物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する第1走行影響判定部(2g)を備えた請求項1に記載した車載システム。
前記センサは、物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると前記第1走行影響判定部により判定された場合に、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定する請求項2に記載した車載システム。
物標が移動体であると前記物標認識部により判定された場合に、前記相関性特定部により特定された相関性を用い、その物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する第2走行影響判定部(2h)を備えた請求項1から3の何れか一項に記載した車載システム。
前記センサは、物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると前記第2走行影響判定部により判定された場合に、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定する請求項4に記載した車載システム。
前記センサは、送信波を送信して反射波を受信することで物標までの距離を検出し、物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると前記第2走行影響判定部により判定された場合に、送信波の波長帯域幅を拡大し、送信波の信号出力時間を短くする請求項4又は5に記載した車載システム。
前記システム側通信部は、物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると前記第2走行影響判定部により判定された場合に、警告信号を前記物標側通信部に送信する請求項4から6の何れか一項に記載した車載システム。
物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると前記第2走行影響判定部により判定された場合に、物標と自車両との衝突を回避する車両制御を行う車両制御部(2i)を備えた請求項4から7の何れか一項に記載した車載システム。
位置情報検出部(6,8)と物標側通信部(7,9)とを有する移動可能な物標との間で無線通信を行うシステム側通信部(3)と、少なくとも1回の測定により物標までの距離及び物標の方位を検出情報として検出するセンサ(4)と、を備えた車載システム(1)のマイクロコンピュータ(2)に、
前記位置情報検出部により検出された当該物標の少なくとも位置を含む位置情報が前記物標側通信部から送信されることで、前記システム側通信部に受信された位置情報を受信情報として記憶する受信情報記憶手順と、
前記センサから検出情報を複数回入力して物標の移動速度及び移動方位を含む物標情報を検出する物標情報検出手順と、
前記物標情報検出手順により検出した物標情報をセンサ情報として記憶するセンサ情報記憶手順と、
前記受信情報記憶手順により記憶した受信情報と前記センサ情報記憶手順により記憶したセンサ情報とを比較する比較手順と、
受信情報とセンサ情報との比較結果により両者の相関性を特定する相関性特定手順と、
前記相関性特定手順により特定した相関性が高い場合には、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が低い場合よりも少なくして物標を認識する物標認識手順と、を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のセンサでは、物標までの距離及び物標の方位を検出するには1回の測定で可能であるが、物標の移動速度及び移動方位を検出して当該物標を移動体と認識するには複数回の測定が必要となる。又、この種のセンサでは、送信波が直接到達する所謂見通し内の物標については検出可能であるが、送信波が直接到達しない所謂見通し外の物標については検出不能である。一方、例えば歩行者や自転車や車両等の移動体が障害物の陰から飛び出す等、移動体がセンサの見通し外から見通し内に突然進入する場合がある。
【0005】
しかしながら、上記した従来の方法では物標を移動体と認識するのにセンサによる複数回の測定が必要となるので、センサの見通し外から見通し内に突然進入した物標を移動体と認識するのに時間がかかる。そのため、物標との衝突を回避する車両制御の始動が遅くなり、安全運転を十分に確保し得ない問題がある。
【0006】
他方、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)等により検出した位置情報を移動体同士で無線通信により共有し、衝突の危険性を予測した場合に警報出力や情報提供を行う車車間通信システムや歩車間通信システムが知られている。しかしながら、障害物の陰等ではGNSS等により検出する位置情報の精度が十分でなく、誤った車両制御を行うことで運転者に不快感を与える可能性が高く、車両制御を行うだけの信頼性が得られていない。このような車両制御を行う信頼性という点からも、センサの見通し外から見通し内に突然進入した物標を移動体と認識するのに要する時間を短縮することが望まれている。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサの見通し外から見通し内に突然進入した物標を移動体と認識するのに要する時間を適切に短縮することができる車載システム、物標認識方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、システム側通信部(3)は、位置情報検出部(6,8)と物標側通信部(7,9)とを有する移動可能な物標との間で無線通信を行う。センサ(4)は、少なくとも1回の測定により物標までの距離及び物標の方位を検出情報として検出する。受信情報記憶部(2a)は、位置情報検出部により検出された当該物標の少なくとも位置を含む位置情報が物標側通信部から送信されることで、システム側通信部に受信された位置情報を受信情報として記憶する。物標情報検出部(2b)は、センサから検出情報を複数回入力して物標の移動速度及び移動方位を含む物標情報を検出する。センサ情報記憶部(2c)は、物標情報検出部により検出された物標情報をセンサ情報として記憶する。
【0009】
比較部(2d)は、受信情報記憶部に記憶された受信情報とセンサ情報記憶部に記憶されたセンサ情報とを比較する。相関性特定部(2e)は、受信情報とセンサ情報との比較結果により両者の相関性を特定する。物標認識部(2f)は、相関性特定部により特定された相関性が高い場合には、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が低い場合よりも少なくして物標を認識する。
【0010】
即ち、物標から無線通信により受信した位置情報を受信情報として記憶し、センサにより検出した物標情報をセンサ情報として記憶することで、受信情報とセンサ情報とを併用するようにした。そして、両者の相関性が高い場合には、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が低い場合よりも少なくして物標を認識するようにした。同一の物標であれば受信情報とセンサ情報との相関性が高くなることを利用し、見通し外の物標の存在を、物標が見通し外から見通し内に進入する前の段階で当該物標から無線通信により受信した受信情報により検出しておくことで、物標が見通し外から見通し内に進入した直後に、その物標を移動体と即座に認識することができる。これにより、センサの見通し外から見通し内に突然進入した物標を移動体と認識するのに要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
自車両Mに搭載されている車載システム1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)2と、通信部3(システム側通信部に相当する)と、センサ4と、位置情報検出部5とを有する。自車両Mの周囲には不特定多数の物標が存在し、
図1では例えば他車両N1,N2が存在する場合を例示している。不特定多数の物標は他車両N1,N2に限らず歩行者や自転車等でも良い。
【0013】
他車両N1は、位置情報検出部6と、通信部7(物標側通信部に相当する)とを有する。位置情報検出部6は、例えばGNSS受信機を有し、衛星から受信したGNSS信号を解析して測位し、他車両N1の位置を含む位置情報を検出する。尚、位置情報検出部6は、GNSS測位の方法に限らず、WiFi(Wireless Fidelity)やLTE(Long Term Evolution)の方法により測位する構成でも良い。通信部7は、位置情報検出部6により検出された位置情報をブロードキャスト送信する。同様に、他車両N2は、位置情報検出部8と、通信部9(物標側通信部に相当する)とを有する。位置情報検出部8は、他車両N2の位置を含む位置情報を検出する。通信部9は、位置情報検出部8により検出された位置情報をブロードキャスト送信する。
【0014】
通信部3は、自車両Mに装備されている通信モジュールや運転者が自車両Mに持ち込んだ通信機能付きの携帯端末等である。通信部3は、自車両Mと他車両N1とが無線通信可能な位置関係であれば、通信部7との間で所定の無線通信規格にしたがって無線通信を行い、通信部7からブロードキャスト送信された他車両N1の位置情報を受信する。同様に、通信部3は、自車両Mと他車両N2とが無線通信可能な位置関係であれば、通信部9との間で所定の無線通信規格にしたがって無線通信を行い、通信部9からブロードキャスト送信された他車両N2の位置情報を受信する。通信部3は、位置情報を受信すると、その受信した位置情報をマイコン2に出力する。尚、所定の無線通信規格は、例えばWiFi、LTE、V2X(Vehicle to Everything)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、LPWA(Low Power Wide Area)等である。
【0015】
通信部3が物標との間で無線通信可能な探索範囲は、後述するセンサ4が物標を探索する探索範囲よりも広いことが望ましく、例えば数100mであることが望ましい。尚、他車両N1,N2の通信部7,9から送信された位置情報は、精度が保障されておらず誤差を含んでいる可能性が考えられ、その位置情報だけに頼って車両制御を行うことは困難である。他車両N1,N2の通信部7,9から送信された位置情報だけに頼るサービスとしては、単に他車両N1,N2の存在を運転者に知らせる等の情報提供レベルのサービスに留まっている。
【0016】
センサ4は、LIDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、ソナー等であり、電磁波を送受信可能な構成である。センサ4は、送信波の送信タイミングから反射波の受信タイミングまでの時間を用いて物標までの距離及び物標の方位を検出情報として検出し、その検出した検出情報をマイコン2に出力する。センサ4は、物標までの距離及び物標の方位を検出するには1回の測定で可能であるが、物標の移動速度及び移動方位を検出し、物標を移動体と認識するには複数回の測定が必要となる。
【0017】
センサ4で検出される物標までの距離及び物標の方位は精度が保障されており、そのセンサ4で検出された物標までの距離及び物標の方位だけに頼って車両制御を行うことは可能である。しかしながら、センサ4は、送信波が直接到達する所謂見通し内の物標については検出可能であるが、送信波が直接到達しない所謂見通し外の物標については検出不能である。センサ4の探索範囲は、送信波の送信周期に依存し、送信波の送信周期が短いと、遠方から受信した反射波を分離不能となるので、送信波の送信周期が比較的短ければ、探索範囲が比較的狭くなり、最大検出距離が比較的短くなり、一方、送信波の送信周期が比較的長ければ、探索範囲が比較的広くなり、最大検出距離が比較的長くなる。センサ4の探索範囲は、例えばLIDARやミリ波レーダであれば100m〜200m程度であり、ソナーであれば10m以下である。
【0018】
位置情報検出部5は、上記した他車両N1の位置情報検出部6及び他車両N2の位置情報検出部8と同様に、例えばGNSS受信機を有し、衛星から受信したGNSS信号を解析して測位し、自車両Mの位置を含む位置情報を検出する。尚、位置情報検出部5も、GNSS測位の方法に限らず、WiFiやLTEの方法により測位する構成でも良い。
【0019】
マイコン2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有し、非遷移的実体的記録媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、車載システム1の動作全般を制御する。マイコン2は、ソフトウェア等により実現される内部の機能として、受信情報記憶部2aと、物標情報検出部2bと、センサ情報記憶部2cと、比較部2dと、相関性特定部2eと、物標認識部2fと、第1走行影響判定部2gと、第2走行影響判定部2hと、車両制御部2iとを有する。
【0020】
受信情報記憶部2aは、自車両Mの周囲に存在する不特定多数の物標から送信された位置情報が通信部3に受信されたことで、通信部3から不特定多数の位置情報を入力すると、その入力した不特定多数の位置情報を受信情報として記憶する。即ち、受信情報記憶部2aは、自車両Mの周囲に他車両N1,N2が存在し、他車両N1,N2の通信部7,9からそれぞれブロードキャスト送信された他車両N1,N2の位置情報が通信部3に受信されると、その受信された他車両N1,N2の位置情報を受信情報として記憶する。受信情報記憶部2aは、循環式のメモリであり、記憶可能なメモリ容量まで受信情報の容量が達すると、記憶している古い受信情報を消去して新しい受信情報を記憶する。
【0021】
物標情報検出部2bは、センサ4から検出情報を複数回入力すると、その複数回入力した検出情報を用い、自車両Mの周囲に存在する不特定多数の物標の移動速度及び移動方位を含む物標情報を検出する。この場合、物標情報検出部2bは、上記したように見通し内の物標に限って物標情報を検出可能である。即ち、物標情報検出部2bは、他車両N1,N2が見通し内に存在すれば、他車両N1,N2の物標情報を検出する。
【0022】
センサ情報記憶部2cは、物標情報検出部2bにより検出された物標情報をセンサ情報として記憶する。即ち、センサ情報記憶部2cは、自車両Mの周囲に他車両N1,N2が存在し、他車両N1,N2の物標情報が検出されると、その検出された物標情報をセンサ情報として記憶する。センサ情報記憶部2cも、受信情報記憶部2aと同様に循環式のメモリであり、記憶可能なメモリ容量までセンサ情報の容量が達すると、記憶している古いセンサ情報を消去して新しいセンサ情報を記憶する。
【0023】
比較部2dは、受信情報記憶部2aに記憶されている受信情報を読み出し、センサ情報記憶部2cに記憶されているセンサ情報を読み出し、それらの読み出した受信情報とセンサ情報とを比較する。
【0024】
相関性特定部2eは、受信情報とセンサ情報との比較結果により両者の相関性を特定する。相関性特定部2eは、受信情報から特定される物標の移動軌跡とセンサ情報から特定される物標の移動軌跡との一致度が比較的高く、位置の時系列変化の一致度が比較的高ければ、両者の相関性が比較的高いと判定する。この場合は、受信情報により特定される物標とセンサ情報により特定される物標とが同一である可能性は比較的高い。一方、相関性特定部2eは、受信情報から特定される物標の移動軌跡とセンサ情報から特定される物標の移動軌跡との一致度が比較的低く、位置の時系列変化の一致度が比較的低ければ、両者の相関性が比較的低いと判定する。この場合は、受信情報により特定される物標とセンサ情報により特定される物標とが同一である可能性は比較的低い。
【0025】
物標認識部2fは、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性特定部2eにより特定された相関性に応じて決定し、その決定した検出回数にしたがって物標を認識する。具体的には、物標認識部2fは、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が比較的高ければ比較的少なく決定し、一方、相関性が比較的低ければ比較的多く決定する。
【0026】
第1走行影響判定部2gは、受信情報記憶部2aに記憶された受信情報により特定される物標の移動方位と、位置情報検出部5により検出された位置情報により特定される自車両Mの移動方位とを比較し、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する。この場合、第1走行影響判定部2gは、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を、自車両Mについては例えばGNSSによる測位した位置情報を用い、物標についても例えばGNSSによる測位した位置情報を用いるので、その判定精度は比較的低い。第1走行影響判定部2gは、自車両Mの移動方位から予測進路を推定し、物標の移動方位から予測進路を推定し、それらの推定した予測進路が交差したり接近したりすると判定し、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、制御信号をセンサ4に出力する。
【0027】
センサ4は、第1走行影響判定部2gから制御信号を入力すると、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定する。センサ4は、探索範囲を限定することで、予め設定されている全ての探索範囲を探索する場合よりも物標を検出し易くなる。
【0028】
第2走行影響判定部2hは、物標が移動体であると物標認識部2fにより認識された場合に、相関性特定部2eにより特定された相関性を用い、その物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する。この場合、第2走行影響判定部2hは、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を、自車両Mについては例えばGNSSによる測位した位置情報を用いるが、物標については受信情報とセンサ情報とから特定される位置の時系列変化を用いるので、その判定精度は比較的高い。第2走行影響判定部2hは、自車両Mの移動方位から予測進路を推定し、物標の受信情報とセンサ情報とから特定される位置の時系列変化から予測進路を推定し、それらの推定した予測進路が交差したり接近したりすると判定し、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、制御信号をセンサ4、通信部3及び車両制御部2iに出力する。
【0029】
センサ4は、第2走行影響判定部2hから制御信号を入力すると、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定する。この場合も、センサ4は、探索範囲を限定することで、予め設定されている全ての探索範囲を探索する場合よりも物標を検出し易くなる。又、センサ4は、第2走行影響判定部2hから制御信号を入力すると、送信波の波長帯域幅を拡大する。
【0030】
通信部3は、第2走行影響判定部2hから制御信号を入力すると、自車両Mの走行に対して影響があると判定された物標に対して警告信号を送信する。即ち、通信部3は、自車両Mの走行に対して影響があると判定された物標が他車両N1,N2であれば、警告信号を他車両N1,N2の通信部7,9に送信する。車両制御部2iは、第2走行影響判定部2hから制御信号を入力すると、物標と自車両Mとの衝突を回避する車両制御を行う。衝突を回避する車両制御とは、例えばブレーキ制御やステアリング制御であり、自車両Mを安全な場所に退避させる制御である。
【0031】
次に、上記した構成の作用について
図2から
図8を参照して説明する。
車載システム1において、マイコン2は、例えばイグニッションのオン状態では物標認識処理を所定周期で実行する。マイコン2は、物標認識処理を開始し、自車両Mの周囲に存在する不特定多数の物標から送信された位置情報が通信部3に受信されたことで、通信部3から位置情報を入力すると(S1)、その入力した位置情報を受信情報として記憶する(S2、受信情報記憶工程、受信情報記憶手順に相当する)。マイコン2は、受信情報を記憶すると、その記憶した受信情報により特定される物標の位置と、位置情報検出部5により検出した自車両Mの位置とを比較し、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する(S3)。マイコン2は、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると(S3:YES)、制御信号をセンサ4に出力し、センサ4の探索範囲を限定する(S4)。
【0032】
又、マイコン2は、物標認識処理を開始し、センサ4から検出情報を複数回入力すると(S5)、その複数回入力した検出情報を用い、自車両Mの周囲に存在する不特定多数の物標の移動速度及び移動方位を含む物標情報を検出し(S6、物標情報検出工程、物標情報検出手順に相当する)、その検出した物標情報をセンサ情報として記憶する(S7、センサ情報記憶工程、センサ情報記憶手順に相当する)。マイコン2は、受信情報を記憶する処理とセンサ情報を記憶する処理とを並行する。
【0033】
マイコン2は、記憶した受信情報とセンサ情報をそれぞれ読み出し、それらの読み出した受信情報とセンサ情報とを比較し(S8、比較工程、比較手順に相当する)、受信情報とセンサ情報との比較結果により両者の相関性を特定する(S9、相関性特定工程、相関性特定手順に相当する)。マイコン2は、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、その特定した相関性に応じて決定し(S10)、その決定した検出回数にしたがって物標を認識する(S11、物標認識工程、物標認識手順に相当する)。即ち、マイコン2は、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が比較的高ければ比較的少なく決定し、一方、相関性が比較的低ければ比較的多く決定する。
【0034】
マイコン2は、物標を移動体であると認識すると、その特定した相関性を用い、その物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する(S12)。マイコン2は、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると(S12:YES)、制御信号をセンサ4、通信部3及び車両制御部2iに出力する。即ち、マイコン2は、センサ4の探索範囲を限定し(S13)、センサ4から送信される送信波の波長帯域幅を拡大し(S14)、警告信号を通信部3から送信させ(S15)、物標と自車両Mとの衝突を回避する車両制御を行い(S16)、物標認識処理を終了する。
【0035】
このように、従来のセンサ4だけを利用して物標を移動体と認識する方法ではセンサ4の見通し外から見通し内に進入した物標を移動体と認識するのに要する時間がかかる問題に対し、本発明では、物標の位置情報を無線通信により受信する方法を適用することで、上記した問題の解決を図る。
図3に示すように、センサ4だけを利用して物標を移動体と認識する方法では、センサ4から検出情報を複数回入力する必要があり、例えばセンサ4から検出情報を入力する周期が50ミリ秒であり、検出情報を5回入力する必要があれば、物標を移動体と認識するのに200ミリ秒程度を要する。これに対し、
図4に示すように、物標の位置情報を無線通信により受信する方法を適用すると、例えばセンサ4から検出情報を入力する周期が50ミリ秒であっても、物標から無線通信により受信した位置情報とセンサ4により検出したセンサ情報との相関性が高いことを利用することで、物標を移動体と認識するのに50ミリ秒程度で済む。即ち、センサ4の見通し外から見通し内に進入した物標を移動体と認識するのに要する時間を短縮することできる。
【0036】
又、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定した場合にセンサ4から送信される送信波の波長帯域幅を拡大すると、距離方向の分解能を高まり、障害物の陰から飛び出した物標を移動体と認識するのに要する時間を短縮することできる。
図5に示すように、センサ4の探索範囲に障害物Zがあり、障害物Zの陰に歩行者Aが存在する場合がある。
図6に示すように、送信波の信号出力時間(T1)が比較的長いと、反射波の信号波形でピークが1つしか出現されず、障害物Zと歩行者Aとを1つの物標として認識することになり、歩行者Aを認識することができない。これに対し、
図7に示すように、送信波の波長帯域幅を拡大し、送信波の信号出力時間(T2(<T1))を比較的短くすることで、反射波の信号波形でピークが2つ出現され、障害物Zと歩行者Aとを分離して2つの物標として認識することができ、歩行者Aを適切に認識することができる。尚、
図6及び
図7では送信波をパルス波形としているが、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調等の連続波であっても良い。又、障害物Zとは、建造物、壁、街路樹、ガードレール、駐車車両等であり、運転手の視界を遮るものと同義である。
【0037】
尚、以上は、センサ4の探索範囲内に存在する物標が位置検出機能を有する場合を説明したが、位置検出機能を有しない物標がセンサ4の探索範囲内に存在する場合もある。即ち、
図8に示すように、障害物Zの陰に隠れている歩行者Aは位置検出機能を有する携帯端末を携帯しているが、障害物Zの陰に隠れていない歩行者Bは位置検出機能を有する携帯端末を携帯していない場合があり得る。このような状況では、マイコン2は、歩行者Aについては当該歩行者Aの携帯端末から位置情報を受信することで本発明の方法により物標を認識し、歩行者Bについては従来の方法により物標を認識する。即ち、物標が歩行者や自転車や車両であるかに拘らず、位置検出機能を有する物標と位置検出機能を有しない物標とが共存する状況では、位置検出機能を有する物標については本発明の方法により物標を認識し、位置検出機能を有しない物標については従来の方法により物標を認識する。
【0038】
以上に説明したように本実施形態によれば、次に示す効果を得ることができる。
車載システム1において、物標から無線通信により受信した位置情報を受信情報として記憶し、センサ4により検出した物標情報をセンサ情報として記憶することで、受信情報とセンサ情報とを併用するようにした。そして、両者の相関性が高い場合には、物標が移動体であるか否かを判定するのに必要な検出回数を、相関性が低い場合よりも少なくして物標を認識するようにした。センサ4の見通し外から見通し内に物標が移動したときに受信情報とセンサ情報との相関性が高くなることを利用し、見通し外の物標の存在を、物標が見通し外から見通し内に進入する前の段階で当該物標から無線通信により受信した受信情報により検出しておくことで、物標が見通し外から見通し内に進入した直後に、その物標を移動体と即座に認識することができる。これにより、センサ4の見通し外から見通し内に進入した物標を移動体と認識するのに要する時間を短縮することができる。
【0039】
又、車載システム1において、物標から無線通信により受信した受信情報を用い、その物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定するようにした。物標から無線通信により受信した受信情報により特定される物標の移動方位を用いることで、受信情報とセンサ情報との相関性を特定する前の段階でも、判定精度は高くないが、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を即座に判定することができる。
【0040】
又、車載システム1において、受信情報により物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定するようにした。センサ4の探索範囲を限定することで、物標の存在を即座に検出することができ、物標の位置を特定するのに要する時間をより短縮することができる。
【0041】
又、車載システム1において、受信情報とセンサ情報との相関性を用い、その物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定するようにした。受信情報とセンサ情報との相関性を用いることで、物標から無線通信により受信した受信情報を用いて判定する場合よりも、物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を精度良く判定することができる。
【0042】
又、車載システム1において、受信情報とセンサ情報との相関性により物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、この場合も、その物標の出現地点にしたがって探索範囲を限定するようにした。センサ4の探索範囲を限定することで、物標の存在を即座に検出することができ、物標の位置を特定するのに要する時間をより短縮することができる。
【0043】
又、車載システム1において、受信情報とセンサ情報との相関性により物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、送信波の波長帯域幅を拡大するようにした。送信波の波長帯域幅を拡大し、送信波の信号出力時間を比較的短くすることで、反射波の信号波形でピークを2つ出現させることができ、障害物と物標とを分離して2つの物標として認識することができ、物標を適切に認識することができる。
【0044】
又、車載システム1において、受信情報とセンサ情報との相関性により物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、警告信号を送信するようにした。自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があることを車両外部に通知することができる。
【0045】
又、車載システム1において、受信情報とセンサ情報との相関性により物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定すると、物標と自車両Mとの衝突を回避する車両制御を行うようにした。物標と自車両Mとの衝突を適切に回避することができ、安全運転を適切に確保することができる。
【0046】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0047】
センサ4はカメラであっても良い。センサ4としてカメラを用いる構成では、送信波を送信して反射波を受信することで物標までの距離を検出する構成ではないので、物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定したときに送信波の波長帯域幅を拡大する処理を行わない。
【0048】
物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定し、物標と自車両Mとの衝突を回避する車両制御を行う際に、その旨を自車両Mの運転者に対して報知する構成でも良い。
物標が自車両Mの走行に対して影響を及ぼす可能性があると判定したときに、その履歴を記録したり、その記録した履歴をサーバ等に送信したりする構成でも良い。
【0049】
受信情報だけを用いて物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定し、その後に、受信情報とセンサ情報との相関性を用いて物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する構成を例示したが、受信情報だけを用いて物標が自車両の走行に対して影響を及ぼす可能性の有無を判定する処理を省いても良い。