特許第6983038号(P6983038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983038
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート部材
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/04 20060101AFI20211206BHJP
   E04H 7/18 20060101ALI20211206BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20211206BHJP
   E02D 29/045 20060101ALI20211206BHJP
   E02D 27/38 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   E04C5/04
   E04H7/18 303
   E04G21/12 105A
   E02D29/045 A
   E02D27/38 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-214094(P2017-214094)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-85760(P2019-85760A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安永 正道
【審査官】 齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−057594(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0151860(US,A1)
【文献】 特開2005−030172(JP,A)
【文献】 特開2009−197541(JP,A)
【文献】 特公平07−086273(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/04
E04H 7/18
E04G 21/12
E02D 29/045 ー 29/05
E02D 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の鉄筋コンクリート部材であって、
周方向鉄筋とせん断補強鉄筋が埋設され、
前記周方向鉄筋の少なくとも一部は、同一平面内で渦巻き状に配置されており、前記せん断補強鉄筋は、当該周方向鉄筋に沿って螺旋状に間隔を空けて配置されることを特徴とする鉄筋コンクリート部材。
【請求項2】
前記周方向鉄筋が複数の鉄筋を継ぎ足して形成され、前記周方向鉄筋の一方の端部の鉄筋を除く鉄筋は、同一長さであることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項3】
径方向鉄筋がさらに埋設され、
前記径方向鉄筋に形成されたマーカの位置で、前記径方向鉄筋と前記周方向鉄筋とが交差することを特徴とする請求項1または請求項2記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項4】
前記周方向鉄筋は、前記鉄筋コンクリート部材の厚さ方向に複数段埋設されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の鉄筋コンクリート部材。
【請求項5】
前記鉄筋コンクリート部材は、地下タンクの底版であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の低温液化ガスを貯留する設備として地下タンクがある。図9に示すように、地下タンクでは地中連続壁107の内側に鉄筋コンクリート製の円盤状の底版111と円筒状の側壁109によるタンク躯体が形成され、その上に鋼製屋根119が設けられる。
【0003】
底版111の内部では、水平方向の上側鉄筋115および下側鉄筋117と、鉛直方向のせん断補強鉄筋113が埋設される。
【0004】
図10は、最上段の上側鉄筋115を簡略化して示した図である。上側鉄筋115は、図10に示すように、底版111の中央部の格子状鉄筋121、底版111の外周部の径方向鉄筋123および周方向鉄筋125で構成される。
【0005】
周方向鉄筋125は、同心円状に配筋された複数のリング125−1、125−2、…、125−6からなる。図10の例では、各リング125−1、…、125−6がネジ鉄筋を機械継手127で接続することによって形成され、各リング125−1、…、125−6の閉合部129ではネジ鉄筋の余長が生じる。よって、閉合部129では長さ調整のための精密切断を行った後、ネジ鉄筋を機械継手127に接続する。
【0006】
最上段以外の上側鉄筋115や下側鉄筋117も図10とほぼ同様の構成であるが、周方向鉄筋として、ネジ鉄筋ではなく通常の鉄筋が用いられ、機械継手127の代わりに重ね継手が用いられることが多い。この場合、リングの閉合部では鉄筋の余長がガス切断されるか、捨て筋としてそのまま配置される。
【0007】
図10に示す例では上側鉄筋115の中央部に格子状鉄筋121が設けられているが、底版全体の配筋が径方向鉄筋と周方向鉄筋とで構成される場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−049344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来の配筋方法では全てのリングの閉合部において鉄筋に余長が生じる。近年では、地下タンクが大容量化していることから底版の径や厚みが大きくなっており、多数のリングが配置されこれに太径の鉄筋が用いられるため、無駄な鉄筋量が多くなる。
【0010】
また、鉄筋の余長を切断するのにも手間がかかり、特に機械継手を用いる場合、各リングの閉合部を機械継手で接続できるようにディスクグラインダーで精密切断する必要があるため、より時間がかかる作業となる。
【0011】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、工期やコストを削減できる鉄筋コンクリート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するための本発明は、円盤状の鉄筋コンクリート部材であって、周方向鉄筋とせん断補強鉄筋が埋設され、前記周方向鉄筋の少なくとも一部は、同一平面内で渦巻き状に配置されており、前記せん断補強鉄筋は、当該周方向鉄筋に沿って螺旋状に間隔を空けて配置されることを特徴とする鉄筋コンクリート部材である。
【0013】
本発明では、周方向鉄筋を同一平面内で渦巻き状に配置することにより、鉄筋をリング状に配置する場合の閉合部が無くなるため、鉄筋の無駄や鉄筋の切断箇所が最小となり、購入する鉄筋量も少なくできる。また継手箇所も減らすことができるので、工期やコストの削減につながる。
【0014】
前記周方向鉄筋が複数の鉄筋を継ぎ足して形成され、前記周方向鉄筋の一方の端部の鉄筋を除く鉄筋は、同一長さであることが望ましい。
本発明では、周方向鉄筋の大部分で同一長さの鉄筋を用いるので、定尺で一括購入した鉄筋を切断せずそのまま使用できる。
【0015】
径方向鉄筋がさらに埋設され、前記径方向鉄筋に形成されたマーカの位置で、前記径方向鉄筋と前記周方向鉄筋とが交差することが望ましい。
径方向鉄筋にマーカを形成することで、周方向鉄筋の配筋時に径方向鉄筋との交差位置を簡単に把握して位置合わせすることができ、配筋に要する時間を短縮できる。
【0016】
前記周方向鉄筋は、前記鉄筋コンクリート部材の厚さ方向に複数段埋設されることが望ましい。
本発明では、鉄筋コンクリート部材の補強のため周方向鉄筋等が複数段埋設される。
【0017】
前記鉄筋コンクリート部材は、例えば地下タンクの底版である。
本発明の鉄筋コンクリート部材を地下タンクの底版に適用することで、地下タンクの底版構築にかかる工期やコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、工期やコストを削減できる鉄筋コンクリート部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】底版1を示す図。
図2】上側鉄筋3を示す図。
図3】せん断補強鉄筋7の接続について示す図。
図4】上側鉄筋3の配筋方法について説明する図。
図5】上側鉄筋3の配筋方法について説明する図。
図6】上側鉄筋3の配筋方法について説明する図。
図7】上側鉄筋3の配筋方法について説明する図。
図8】径方向鉄筋15を示す図。
図9】地下タンクを示す図。
図10】上側鉄筋115を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る底版1を図1に示す。この底版1は地下タンクの底版1であり、地下タンクのその他の構成は図9で説明したものと略同様である。底版1は円盤状の鉄筋コンクリート部材である。
【0022】
図1に示すように、底版1には、水平方向の鉄筋(主鉄筋)である上側鉄筋3および下側鉄筋5、鉛直方向の鉄筋であるせん断補強鉄筋7が埋設される。上側鉄筋3は底版1の上端近傍で底版1の厚さ方向に複数段埋設され、下側鉄筋5は底版1の下端近傍に同じく複数段埋設される。
【0023】
最上段の上側鉄筋3は、図2に示すように格子状鉄筋13、径方向鉄筋15および周方向鉄筋17を有する。
【0024】
格子状鉄筋13は底版1の平面の中央部に格子状に配置される。
【0025】
径方向鉄筋15は底版1の平面の外周部に配置される。径方向鉄筋15は格子状鉄筋13から連続して底版1の径方向に放射状に配置される。
【0026】
周方向鉄筋17は、底版1の平面の外周部で、底版1の周方向に沿って略円周状に配置される。周方向鉄筋17は径方向鉄筋15上に配置され、径方向鉄筋15と平面上交差する位置で番線等により径方向鉄筋15に固定される。
【0027】
本実施形態において、周方向鉄筋17は、ロール加工(曲げ加工)された定尺(例えば長さ12m)の複数の鉄筋19(19−1、19−2、…、19−n)を継ぎ足すことにより形成され、底版1の平面の中央部側にある始点21から平面の外側にある終点22まで同一平面内で渦巻き状に配置される。内外の鉄筋19の間隔dは、始点21と終点22の近傍を除いてほぼ一定(例えば27.5mm)である。図2の例では鉄筋19としてネジ鉄筋が用いられ、機械継手20を用いて鉄筋19が接続される。
【0028】
周方向鉄筋17を構成するn本の鉄筋19のうち、終端の鉄筋19−n(周方向鉄筋17の一方の端部の鉄筋19)は必要に応じて切断し、長さの調整を行うが、残りのn−1本の鉄筋19は切断する必要が無く、全て同一長さである。終端の鉄筋19−nの切断を行わない場合は全ての鉄筋19が同一長さとなる。
【0029】
残りの上側鉄筋3と下側鉄筋5も、図2と同様の構成である。ただし、ネジ鉄筋の代わりに通常の(ネジ無しの)鉄筋19が用いられ、機械継手20の代わりに重ね継手とされる場合も有る。一方、上側鉄筋3と下側鉄筋5の全てにおいてネジ鉄筋を機械継手で接続する可能性もある。
【0030】
格子状鉄筋13、径方向鉄筋15および周方向鉄筋17の平面位置は、全ての上側鉄筋3と下側鉄筋5の間で対応する。図3に一部を示すように、せん断補強鉄筋7は、各上側鉄筋3と下側鉄筋5において同じ平面位置にある格子状鉄筋13、径方向鉄筋15、あるいは周方向鉄筋17の交点のいずれかに取付けて、これらの鉄筋により形成される格子内に通される。
【0031】
なお、周方向鉄筋17と径方向鉄筋15による格子内に通されるせん断補強鉄筋7は、周方向鉄筋17に沿って螺旋状に間隔を空けて配置されることとなる。
【0032】
図2の上側鉄筋3の配筋を行う際は、図4に示すように格子状鉄筋13および径方向鉄筋15を配筋する一方、周方向鉄筋17に用いる鉄筋19をロール加工する。周方向鉄筋17の半径が大きいこと、鉄筋19が弾性体であり曲げ変形に追従できることから、螺旋の5周分程度の鉄筋19を同じ曲率でロール加工しておき、鉄筋19の配筋時にその曲率を微調整することも可能である。
【0033】
次に、これらの鉄筋19を渦巻き状に順次配置する。図5に示すように、1本目の鉄筋19−1は、前記の始点21に一端を合わせて反時計回りに配置する。
【0034】
2本目の鉄筋19−2は、その一端を図6に示すように鉄筋19−1の他端に機械継手20で接続し、反時計回りに配置する。
【0035】
以下同様の作業を繰り返すことで、同一長さの定尺の鉄筋19−1〜19−nを、一筆書きの要領で渦巻き状に始点21から終点22まで片押し式に配置する。図7はその途中段階を示す。終端の鉄筋19−nに余長(端筋)が出る場合は、余長部分を切断して撤去するか、そのまま残して配筋する。これにより図2に示す最上段の上側鉄筋3が形成される。
【0036】
図8に示すように、径方向鉄筋15において周方向鉄筋17と平面上交差する位置には、チョークなどでマーカ23が形成される。周方向鉄筋17を配筋する際は、マーカ23の位置で鉄筋19−1〜19−nが径方向鉄筋15と交差するように鉄筋19−1〜19−nを位置合わせして配置し、当該位置で鉄筋19−1〜19−nを径方向鉄筋15に固定する。
【0037】
残りの上側鉄筋3と下側鉄筋5の配筋方法も上記と略同様である。ただし、鉄筋19同士の継手は重ね継手とされる場合も有る。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、周方向鉄筋17を同一平面内で渦巻き状に配置することから、前記のようなリングの閉合部が存在せず、鉄筋19の余長がほとんど発生しない。そのため、鉄筋19の無駄や鉄筋19の切断箇所が最小となり、購入する鉄筋量も少なくできる。また、鉄筋19同士の継手箇所数も減らすことができるので、工期やコストの削減につながる。
【0039】
また本実施形態では、周方向鉄筋17の大部分で同一長さの鉄筋19を用いるので、定尺で一括購入した鉄筋19を切断せずにそのまま使用できる。
【0040】
また、径方向鉄筋15にマーカ23を形成しておくことで、鉄筋19を配筋する時に、径方向鉄筋15との交差位置を簡単に把握して位置合わせすることができ、配筋に要する時間を短縮できる。
【0041】
また、本実施形態では、上側鉄筋3や下側鉄筋5として周方向鉄筋17等が複数段に埋設されるので、底版1の補強を好適に行うことができる。
【0042】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば本実施形態は地下タンクの底版1についての例であり、これにより地下タンクの底版構築にかかるコストを低減できるが、本発明は地上タンクの基礎スラブ、円形の装置基礎スラブなどの円盤状の鉄筋コンクリート構造物であれば同様に適用可能である。また、中央部の格子状鉄筋13は省略することも可能である。
【0043】
また本実施形態では周方向鉄筋17の全ての部分が同一平面内で渦巻き状に配置されているが、底版1の形状等によっては、例えば周方向鉄筋17の外周部が外側に行くにつれ上に向かうように配置されることもあり、周方向鉄筋17の少なくとも一部が同一平面内で渦巻き状に配置されていればよい。
【0044】
また本実施形態では周方向鉄筋17の始点21から終点22まで連続して鉄筋19を配置する配筋方法について述べたが、周方向鉄筋17を数区間に分けて各区間の始点から同時に鉄筋19を配置して行くことも可能である。鉄筋19を重ね継手で接続する場合は、各区間の接続部の重ね継手長に若干の余裕を持たせておく。鉄筋19を機械継手20で接続する場合は、各区間の接続部で鉄筋19を精密切断する。さらに、本実施形態では周方向鉄筋17を反時計回りに配置しているが、時計回りに配置しても同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1、111:底版
3、115:上側鉄筋
5、117:下側鉄筋
7、113:せん断補強鉄筋
13、121:格子状鉄筋
15、123:径方向鉄筋
17、125:周方向鉄筋
19:鉄筋
20、127:機械継手
21:始点
22:終点
23:マーカ
107:地中連続壁
109:側壁
119:鋼製屋根
129:閉合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10