特許第6983044号(P6983044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000002
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000003
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000004
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000005
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000006
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000007
  • 特許6983044-伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983044
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】伸縮性基板、伸縮性基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20211206BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H05K1/02 D
   H05K1/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-227135(P2017-227135)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2019-96825(P2019-96825A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 雅之
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−069530(JP,A)
【文献】 特開2016−219543(JP,A)
【文献】 特開2008−090112(JP,A)
【文献】 特開平01−157588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する伸縮性基材と、
前記伸縮性基材の一方面側の面の一部と重ねられ、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材と、
前記伸縮性基材の前記面に形成された伸縮性配線と、
前記フィルム基材に形成され、前記伸縮性配線に接続された外部端子と、
前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側に形成され、生体に貼り付けられる粘着剤層と、を含み、
前記粘着剤層が、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に形成されており、前記重複領域のうち、前記外部端子の側に非形成であり前記外部端子から離間する側に形成されている、伸縮性基板。
【請求項2】
伸縮性を有する伸縮性基材と、
前記伸縮性基材の一方面側の面の一部と重ねられ、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材と、
前記伸縮性基材の前記面に形成された伸縮性配線と、
前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側に形成された粘着剤層と、を含み、
前記粘着剤層が、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に形成されており、
前記重複領域の側に形成された前記粘着剤層と、前記非重複領域の側に形成された前記粘着剤層とが、各々分離して形成されている、伸縮性基板。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記伸縮性基材の前記一方面側に形成されている、請求項1または2に記載の伸縮性基板。
【請求項4】
前記重複領域の側に形成された前記粘着剤層と、前記非重複領域の側に形成された前記粘着剤層とが一続きに形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の伸縮性基板。
【請求項5】
前記伸縮性基材と重なる前記フィルム基材のうち、前記非重複領域に向かう側の端部の一部が前記非重複領域の側に延出する延出部であり、
前記伸縮性配線は、前記延出部の延出量が最大となる領域に形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の伸縮性基板。
【請求項6】
伸縮性を有する伸縮性基材の一方面側の面に伸縮性配線を形成する工程と、
前記伸縮性基材の一部と重なるように、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材を形成する工程と、
前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側において、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に粘着剤層を形成する工程と、を含み、
前記粘着剤層を形成する工程は、前記重複領域と前記非重複領域との境界を含む所定の領域に対応する部分を除いて前記粘着剤層を形成する、伸縮性基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する伸縮性基板及び、この伸縮性基板を製造する伸縮性基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブルデバイスやメディカルデバイスの市場では生体センサや生体情報モニタに対する関心が高まっている。たとえばスポーツ業界では、競技者の身体能力や技量をより向上させるため、身体動作を高精度に定量化することが試みられている。かかる場合、生体の動きを検知するウェアラブルな生体センサが適用されることがある。また医療業界では、疾病の治療や未病対策のために心電図や心拍数、血圧、体温といったバイタルサイン(生体情報)を検出することが試みられており、かかる場合には生体情報を検知する生体情報モニタを適用することがある。
【0003】
上記分野では、情報の取得対象である生体に直接貼り付けて使用することが可能な生体センサが要求されている。生体に貼付可能な生体センサは、生体情報のモニタリング中に対象者の活動を阻害することがなく、自然な状態での生体情報を取得することができるからである。
生体に貼付可能な生体センサは、生体に貼付可能であって、生体信号を検出する電極や配線等を有する基板によって実現することができる。生体に貼付けられる基板には、生体表面の伸縮と共に伸縮可能であることが好ましい。このような伸縮性基板としては、例えば、特許文献1に記載されたものが公知である。
【0004】
特許文献1に記載の伸縮性基板は、皮膚と共に伸縮する伸縮性基材を有している。また、伸縮性基板は、検出された電気信号を外部に出力するための外部端子を備えている。外部端子を形成する領域は、伸縮性基材よりも伸縮性が低い(硬い)基材によって形成されていて、伸縮性基材と硬い基材との境界においては伸縮性基板の伸縮性が大きく変化する。また、伸縮性基板の生体への貼り付けは、多くの場合、生体情報のモニタ対象となる者(以下、「対象者」と記す)によって行われる。対象者は、伸縮性基板をカバーフィルムや台紙から剥がし、シワにならないように適切な張力をかけながら自身の身体に貼り付ける。また、外部端子を素子等のコネクタに取り付けるため、対象者は外部端子の形成領域を上下方向に折り曲げる等の動作をする。
上記動作により、伸縮性基板には、約20%の伸縮挙動が加わる。このことにより、上述の伸縮性基材と硬い基材との境界に渡って形成される配線が、断線することが知られている。特許文献1に記載の発明は、境界上の配線の断線を、伸縮性基材と硬い基材の境界を含む領域に伸縮性の変化を緩やかにする伸縮性補材を設けることによって防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−34038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、伸縮性基板を構成する各層は、いずれも薄い樹脂性の膜であって、伸縮性基板の製造工程ではリリース、あるいは工程紙と呼ばれるセパレータに貼り付けられて取り扱われる。特許文献1には配線上に保護層を設けて、その上から伸縮性補材を設ける構成が記載されている。このような構成の製造工程では、配線が形成された伸縮性基材上にセパレータに貼り付けられた保護層をセパレータが上になるように重ねて熱圧プレスする。次にセパレータを剥離し、この上からセパレータに貼り付けられた伸縮性補材をセパレータが上になるように重ねて熱圧プレスする。熱圧プレスは、伸縮性基板の製造工程においては比較的時間を要する工程であり、回数が増加することは伸縮性基板の製造工程全体の製造効率を低下させるという欠点がある。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、熱圧プレスの工程を用いることなく配線の断線を抑止し、高い製造効率を得ることが可能な伸縮性基板及び伸縮性基板の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の伸縮性基材は、伸縮性を有する伸縮性基材と、前記伸縮性基材の一方面側の面の一部と重ねられ、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材と、前記伸縮性基材の前記面に形成された伸縮性配線と、前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側に形成された粘着剤層と、を含み、前記粘着剤層が、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に形成されている。
【0008】
また、本発明の伸縮性基板の製造方法は、伸縮性を有する伸縮性基材の一方面側の面に伸縮性配線を形成する工程と、前記伸縮性基材の一部と重なるように、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材を形成する工程と、前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側において、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に粘着剤層を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の伸縮性基板及び伸縮性基板の製造方法は、熱圧プレスの工程を用いることなく配線の断線を抑止し、高い製造効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態の伸縮性基板を貼り付けた状態を示した斜視図である。
図2】(a)は生体に貼り付けられる前の伸縮性基板の上面図である。(b)は、(a)に示した矢線A、Aの側から伸縮性基板を見た縦断面図である。
図3図2(b)に示した伸縮性基材の各構成の縦断面図であって、(a)は伸縮性基材、(b)は伸縮性カバー、(c)は粘着剤層、(d)はフィルム基材を示している。
図4】本発明の第一実施形態の伸縮性基板の製造方法の各工程を説明する図である。
図5】本発明の第一実施形態の伸縮性基板の製造方法のうち、図4に続く各工程を説明する図である。
図6】本発明の第二実施形態の伸縮性基板の上面図である。
図7】(a)は第三実施形態の伸縮性基板の上面図である。(b)は(a)に示した矢線B,Bの側から伸縮性基板を見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
(伸縮性基板)
以下、本発明の第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態(総称して本実施形態とも記す)を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、図面は、本実施形態の構成を説明するための図であって、その長さ、厚さ及び幅等を正確に表すものとは限らない。さらに、本実施形態は、その形状やデザイン等が図示した構成に限定されるものではない。
図1は、第一実施形態の伸縮性基板1を貼り付けた状態を示した斜視図である。第一実施形態では、伸縮性基板1を対象者の身体(以下、「生体」と記す)に貼り付けて、筋電位等の生体信号を測定するセンサに使用する例を挙げて説明する。第一実施形態では、伸縮性基板1を生体に貼り付けた状態で生体の側に向かう側を伸縮性基板1の裏(裏面、裏側)とし、裏の反対の側を表(表面、表側)とする。図1に示した伸縮性基板1は、伸縮性基板1を表側から見た上面斜視図である。
図2(a)は、生体に貼り付けられる直前の伸縮性基板1の上面図である。図2(b)は、図2(a)に示した伸縮性基板1を図中の矢線A、Aの側から見た縦断面図である。
【0012】
(全体構成)
図1図2(a)及び図2(b)に示した伸縮性基板1は、伸縮性を有する伸縮性基材31と、伸縮性基材31の一方面側の裏面31b(以下、単に「裏面」と記す)の一部と重ねられ、伸縮性基材31よりも伸縮性が低いフィルム基材53と、を有している。第一実施形態では、伸縮性基材31とフィルム基材53とが重なっている領域を重複領域5、フィルム基材53とが重なっていない領域を非重複領域3とする。
また、伸縮性基板1は、伸縮性配線32を有している。伸縮性配線32は、重複領域5と非重複領域3とにわたって形成されている。また、伸縮性基板1は、伸縮性基材31の裏面31bの側に形成された粘着剤層34を含んでいる。そして、粘着剤層34は、重複領域5及び非重複領域3の両方に形成されている。図1では、重複領域5に形成された粘着剤層34を重複粘着剤層34b、非重複領域3に形成された粘着剤層34を非重複粘着剤層34aと記す。
なお、第一実施形態の「フィルム」や「シート」及び「膜」の文言は、一般的に厚みの薄い形状物を広く含む。即ち、シート、フィルムまたは膜状物等の称呼の違いにより個別の厚みの大小を規定するものではない。
【0013】
上記構成において、伸縮性基材31の「一方面側」とは、薄膜である伸縮性基材31の二つの主面の一方の側を指し、いずれかを特定するものではない。また、一方面側は、一方の面を指すものではなく、面のある方向をいう。一方側の面は、一方の側にある伸縮性基材31の面を示す。伸縮性基材31よりも「伸縮性が低い」とは、実質伸縮性を有していないものも含む。
また、伸縮性基板1は、図2(b)に示したように、上記構成の他、伸縮性カバー35とセパレータ11aとを有している。伸縮性カバー35は、伸縮性基材31上の伸縮性配線32を保護するための部材である。
伸縮性基板1の重複領域5の一方の端部には外部端子51が形成されていて、伸縮性配線32は、外部端子51に接続されている。伸縮性配線32の他方の端部には電極33が接続されている。電極33は、例えば生体安全性を有する導電ゲルなどを介して生体と接触して生体信号を検出する。セパレータ11aは、伸縮性基板1の伸縮性基材31を保護し、わずかながらタック性を有する伸縮性基材31が意図しない部材に貼り付く、あるいはシワになることを防いでいる。なお、セパレータ11aの素材は樹脂や紙に限定されず、このような機能を有し、かつ、伸縮性基材31から容易に剥離可能な部材であればどのような材料を使用するものであってもよい。
【0014】
第一実施形態では、伸縮性基板1において、生体安全性を有する粘着剤層34が伸縮性基材31の伸縮性配線32が形成された裏面31bの側に形成されている。このような第一実施形態では、伸縮性配線32が形成された面を生体側に向けて伸縮性基板1を貼り付けることができる。なお、第一実施形態はこのような構成に限定されるものでなく、電極33が生体から電気信号を検出することが可能な限り、表面31a、裏面31bのどちら側を生体に貼り付けるものであってもよい。
【0015】
また、図2(a)、図2(b)に示した例では、重複領域5の側に形成された重複粘着剤層34bと、非重複領域3の側に形成された非重複粘着剤層34aとが一続きに形成されている。このような構成によれば、非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bを同時に形成することができ、粘着剤層の形成工程を簡易にすることができる。
このような第一実施形態によれば、生体に貼り付けられた伸縮性基板1の外部端子51側の端部を持って力を加えた際、伸縮性基板1に力が加わる起端を伸縮性基材31、あるいは非重複領域3と重複領域5との境界から遠ざけることができる。このため、伸縮性基板1を生体に貼り付ける際の伸縮性基材31の伸びを緩和し、非重複領域3と重複領域5との間の伸びの相違によって伸縮性配線32が断線することを抑えることができる。
また、第一実施形態によれば、生体に貼り付けられた伸縮性基板1の外部端子51側の端部を持って力を加えた際、この力が重複粘着剤層34bを介して生体に伝わり、伸縮性基材31に加わる力を生体の側へ逃がすことができる。このため、伸縮性基材31の伸びを抑え、非重複領域3と重複領域5との間の伸びの相違によって伸縮性配線32が断線することを抑えることができる。
【0016】
次に、以上説明した各部材について説明する。
(フィルム基材)
フィルム基材53は、可撓性を有する部材であって、伸縮性基材31よりも大きなヤング率を有している。なお、第一実施形態では、フィルム基材53は伸縮性基材31よりも伸縮性が低く、実質的に殆ど伸縮しない部材とする。フィルム基材53の材質は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはフッ素樹脂等の、低摺動性、耐食性かつ高強度の合成樹脂を用いることができる。このほか、フィルム基材53には、セルロースナノファイバーペーパー等相応の耐久性を備えた紙素材を用いてもよい。
【0017】
フィルム基材53の厚みは、10μm以上200μm以下とすることができ、望ましくは25μm以上150μm以下であり、より望ましくは50μm以上100μm以下である。また、フィルム基材53の厚みは伸縮性基材31の厚みよりも厚くすることが好ましい。フィルム基材53の厚みを上記範囲とすることで、外部端子51が形成される領域の面内剛性を十分に高めることができるとともに、伸縮性基板1の全体の厚みを抑制することができる。
【0018】
(伸縮性基材)
伸縮性基材31は、フィルム基材53よりも高い伸縮性を有している。伸縮性基材31を構成する好ましい素材としては、ニトリルゴム、ラテックスゴム、ウレタン系エラストマー等のエラストマー材料を挙げることができるが、これに限定されない。特に、医療用に用いられるウレタン系エラストマーシートを用いることで、人体の皮膚に貼り付けた場合でも高い安全性を得ることができる。
【0019】
伸縮性基材31の厚みは特に限定されないが、伸縮性基板1を適用する対象物(対象面)の伸縮の動きを阻害しないという観点からは、たとえば、厚みは100μm以下であることが好ましい。伸縮性基材31の厚みは、より望ましくは25μm以下であり、更に望ましくは10μm以下である。
【0020】
伸縮性基材31は、最大伸び率が、10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましく、200%以上であることが特に好ましい。上述する素材からなる伸縮性基材31であれば、たとえば、最大伸び率300%以上を発揮することが可能である。ここで伸縮性基材31の最大伸び率とは、面内方向の一方向に弾性変形可能な伸び率の最大値のことをいう。
なお、本明細書において伸び率とは、外力が付加されていない場合の寸法(伸び率0%寸法)に対し、力が加えられることで面内方向の一方向に伸びた割合を意味する。たとえば伸び率50%であれば伸び率0%寸法の1.5倍の伸び率であり、伸び率100%であれば伸び率0%寸法の2倍の伸び率である。
【0021】
(伸縮性カバー)
前記したように、伸縮性基材31には伸縮性を有する伸縮性配線32が形成されている。伸縮性カバー35は、伸縮性配線32の少なくとも一部を覆い、伸縮性配線32を保護する部材である。このような伸縮性カバー35は、絶縁性かつ伸縮性の材料から構成されることが好ましい。伸縮性カバー35には、たとえばエラストマー材料を用いることができ、伸縮性基材31と共通の樹脂材料を用いてもよい。これにより、伸縮性基材31の伸縮性を損なうことなく伸縮性配線32を保護することができる。第一実施形態の伸縮性カバー35は、予めシート状に作成された伸縮性カバー35を、フィルム基材53及び伸縮性基材31に対して貼付して接合される。
伸縮性カバー35の厚みは特に限定されないが、伸縮性基板1の伸縮性を妨げないという観点からは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(伸縮性配線)
外部端子51は、フィルム基材53の端部に複数形成されている。第一実施形態では、外部端子51は複数の伸縮性配線32と1対1に対応して直接接続されている。外部端子51と配線部との接合は、例えば、ラミネート接続や加圧プレスによって行われる。
伸縮性配線32の厚み寸法及び幅寸法は、伸縮性配線32の無負荷時の伸縮性基材31の伸張時の抵抗変化のほか、伸縮性基板1の全体の厚み寸法及び幅寸法の制約に基づいて決定することができる。伸縮性基材31の伸張時の寸法変化に追従させて良好な伸縮性を確保するという観点からは、伸縮性配線32の幅寸法は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。各伸縮性配線32の厚み寸法は、25μm以下とすることができ、望ましくは10μm以上15μm以下である。
【0023】
(粘着剤層)
非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bは、いずれも粘着剤をコート法等によって塗付し、製膜されたシート素材に対して、電極33が露出されるような形状として打抜加工がなされる。このようにして作成された粘着剤層34は、伸縮性基材31や伸縮性カバー35等とは別部品として構成された後に伸縮性カバー35に貼り付けられる。
ただし、第一実施形態は、非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bを伸縮性基材31や伸縮性カバー35と別部品とする構成に限定されるものでなく、伸縮性基材31と伸縮性カバー35とを貼り合わせた後に伸縮性カバー35の表面に塗付されるものであってもよい。
【0024】
第一実施形態において、非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bは、同様の材料で構成される同様の剤とすることができる。粘着剤層34は、被貼付面に付着して直ちに被貼付面に対する粘着力を発揮し、被貼付面の状態によっては繰り返し粘着力を発揮することができる樹脂構成物である。このような粘着剤の特性は、接着以前には液体やゲルで乾燥後に固体になる接着剤と相違する。また、上記の「粘着剤」の他、電解質成分を含有しつつ液体と固体の両方の性質を持ち、常に濡れた状態を安定保持する「ゲルシート」を適用することも可能である。これら粘着剤及びゲルシートは、皮膚などに代表される生体組織に対し悪影響を及ぼすことがないよう生体安全性を有することが望ましい。このため、粘着剤層34には、絆創膏やサージカルテープに使用される粘着剤が使用される。このような粘着剤には、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤がある。
また、第一実施形態は、非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bが同様の粘着剤層であることに限定されず、その原料や加工、処理及び粘着性が異なるものであってもよい。非重複粘着剤層34a、重複粘着剤層34bの粘着性が異なる例としては、例えば、非重複粘着剤層34aについては生体に密着して生体信号を検出することから高い粘着性を有するものを使用する。また、重複粘着剤層34bについては、重複領域5において重複粘着剤層34bの端部に働く力の抗力が大きくなり過ぎないように、非重複粘着剤層34aよりも粘着性が小さいものを使用してもよい。
【0025】
(伸縮性基板の製造方法)
次に、以上説明した伸縮性基板1の製造方法について説明する。
図3(a)から図5(c)は、伸縮性基板1の製造方法を説明するための図である。図3(a)から図3(d)は、いずれも伸縮性基板1の構成部材の縦断面図である。図4(a)から図5(c)は、いずれも伸縮性基板1あるいは製造過程にある伸縮性基板1を図2(b)に示した縦断面図の上下が反転した状態で示した縦断面図である。
図3(a)は、表面31a、裏面31bを有する伸縮性基材31の縦断面図である。図3(a)に示した伸縮性基材31の裏面31b側にはプロテクトフィルム13aが、表面31a側にはセパレータ11aが貼り付けられている。プロテクトフィルム13a及びセパレータ11aは、いずれも伸縮性基材31のタック性によって伸縮性基材31に貼り付くセパレータである。
【0026】
図3(b)は、伸縮性カバー35の縦断面図である。伸縮性カバー35は、プロテクトフィルム13b及びセパレータ11bによって挟み込まれ、保護されている。図3(c)は、粘着剤層34の縦断面図である。伸縮性カバー35は、プロテクトフィルム13c及びセパレータ11cによって挟み込まれ、保護されている。プロテクトフィルム13a、13b、13c及びセパレータ11a、11b、11cは、伸縮性基材31が本来の対象物以外に貼り付くこと、伸縮性基材31にシワが生じること等を防ぐものであればよい。さらに、セパレータ11a、11bにあっては、加えて伸縮性カバー35接着時の熱工程に耐えるものであればどのような材料のものであってもよい。図3(a)から図3(c)は、いずれもセパレータ11a、11b、11cを下側にする向きで示されている。
図3(d)は、外部端子51が形成されたフィルム基材53の縦断面図であって、生体に貼り付けられた伸縮性基板1に取り付けられた向きで示されている。外部端子51は、主にカーボンペーストの塗膜によって形成され、このような塗膜は、コネクタ接点に要求される表面硬度や耐摩耗性を備えている。外部端子51が形成されたフィルム基材53を外部引出ケーブルとも記す。外部引き出しケーブルは、公知のFPC(Flexible Printed Circuits)によっても作成することができる。
【0027】
第一実施形態の伸縮性基板の製造方法は、伸縮性を有する伸縮性基材31の一方面側の裏面31bに伸縮性配線32を形成する工程(工程A)と、伸縮性基材31の一方面側の裏面31bの一部と重なるように、伸縮性基材31よりも伸縮性が低いフィルム基材53を形成する工程と(工程B)と、伸縮性基材31の一方面側である裏面31b側に粘着剤層を形成する工程(工程C)と、を含んでいる。第一実施形態では、工程Cにおいて、粘着剤層が、伸縮性基材がフィルム基材と重なる重複領域5及びフィルム基材と重ならない非重複領域3の両方に形成される。
以下、このような各工程について具体的に説明する。
【0028】
<工程A>
図4(a)、図4(b)は、工程Aを説明するための図である。工程Aでは、図4(a)に示すように、図3(a)に示した伸縮性基材31の裏面31b上からプロテクトフィルム13aが剥離される。続けて、図4(b)のように、裏面31b上に伸縮性を有する伸縮性配線32が形成される。また、伸縮性配線32を印刷で形成する場合、工程Aでは、伸縮性配線32と同一プロセスで伸縮性配線32と接続する電極33が形成される。電極33は、生体に接して伸縮性基板1に生体信号を入力する電極である。
【0029】
伸縮性配線32及び電極33(以下、「伸縮性配線32等」)は、導電材料を含んで構成されており導電性を有する。伸縮性配線32等を構成する導電材料としては、銀、金、白金、カーボン、銅、アルミニウム、コバルトもしくはニッケル、またはこれらの合金等の導電性の良好な材料を選択することができる。導電材料の形状は特に限定されないが、顆粒または粉体等の粒子状とすることができる。粒子形状は特に限定されず、球状、針状、フレーク状、ナノワイヤ状等とすることができる。
伸縮性配線32等は、さらに樹脂バインダを含むことが好ましい。すなわち、第一実施形態の伸縮性配線32等は、樹脂材料に導電性粒子が分散して配合された導電性材料で形成されている。伸縮性配線32等が樹脂バインダを含むことにより、伸縮性基材31の伸縮によって伸縮性配線32等が破断され難くなる。樹脂バインダとしては、たとえばウレタンやアクリルに代表される樹脂バインダ等の熱可塑性のエラストマー材料を挙げることができるが、これに限定されない。樹脂バインダとしては、塗膜化された状態における伸縮性配線32等の弾性率が伸縮性基材31の弾性率に比して同等か、またはより小さくなるように低ヤング率のものを選定することが望ましい。エラストマー材料は一種類で用いてもよく、または複数種類のエラストマー材料を混合して用いてもよい。
【0030】
伸縮性配線32等の形成方法は特に限定されないが、たとえば印刷法により形成することができる。すなわち、第一実施形態の伸縮性配線32等は、伸縮性を有する導電性ペーストを印刷塗布して形成された印刷パターンである。このような印刷パターンは、導電性ペーストの塗布後、導電性ペーストを所定の時間加熱されて乾燥、固化する工程を経て形成される。
伸縮性配線32等を形成する具体的な印刷法は特に限定されないが、たとえば、スクリーン印刷方法、インクジェット印刷方法、グラビア印刷方法、オフセット印刷方法等を例示することができる。このうち、微細解像性や厚膜安定性の観点から、スクリーン印刷が好適に用いられる。
また、印刷法で伸縮性配線32等を形成する場合、上述した導電性粒子及び樹脂バインダならびに有機溶剤を含む導電性ペーストを調製して印刷法に供するとよい。伸縮性配線32に、銀等の金属粒子を主成分とする伸縮性の導電性ペーストを用いることによって、たとえば50%以上70%以下程度の伸び率を実現することができ、伸長特性に優れた配線の形成が可能となる。
【0031】
<工程B>
工程Bでは、図4(c)に示すように、外部引出ケーブルと伸縮性基材31とが重ねられる。このとき、フィルム基材53は、外部端子51が伸縮性配線32と重なるように伸縮性基材31に重ねられる。フィルム基材53には、伸縮性基材31に対向する面側に図示しない易接着層が形成されていることから、外部端子51とフィルム基材53との密着性の担保はもちろん、伸縮性基材31とフィルム基材53とをラミネート処理した場合の密着性もまた担保できるものである。
【0032】
次に、第一実施形態では、図3(b)に示した伸縮性カバー35が伸縮性基材31と重ねられる。伸縮性カバー35は、プロテクトフィルム13b(図3(b))や紙製のセパレータ11bに貼付されている。セパレータ11bに貼付された状態の伸縮性カバー35には、図4(c)のように、開口部45が開口される。開口部45は、伸縮性配線32の電極33が電極として例えば生体等の外部と電気的なコンタクトをとるために形成される開口部である。プロテクトフィルム13bが剥離除去された後、伸縮性カバー35及びセパレータ11bは、図4(b)に示した状態の伸縮性基材31及びフィルム基材53と位置合わせされ、ラミネート処理によって貼り合わされる。なお、第一実施形態のラミネート処理は、セパレータ11a、11bを介して伸縮性カバー35と伸縮性基材31とを加熱及び加圧して圧着する処理を指す。伸縮性カバー35は、ラミネート処理されたことによって軟化して伸縮性基材31に密着する。
【0033】
<工程C>
図5(a)、図5(b)、図5(c)は、第一実施形態の工程Cを説明するための図である。工程Cでは、図5(a)に示すように、工程Bにおいてラミネート処理された外部引出ケーブル、伸縮性基材31、伸縮性カバー35からセパレータ11bが剥離される。伸縮性カバー35は、図5(a)に示すように、一部がフィルム基材53に乗り上げて融着するので、フィルム基材53との間に段差部Sを生じている。
続いて、工程Cでは、伸縮性カバー35と重なるように、図3(c)に示した粘着剤層34からプロテクトフィルム13cを剥離し、粘着剤層34を伸縮性カバー35と重ねて貼り合わせる。図5(b)は、伸縮性カバー35と粘着剤層34とを貼り合わせた状態を示している。なお、図5(a)から図5(c)では、便宜上、セパレータ11cが下地の段差に応じて撓み、セパレータ11aや裏面31bは平坦であるように示している。しかし、実際の伸縮性基板1は、このような状態になるとは限らない。セパレータ11a、11cの形状は、セパレータ11a、11cの剛性に応じて決定される。続いて、図5(c)に示すように、図5(b)に示したセパレータ11cが粘着剤層34から剥離される。図5(b)のように、セパレータ11c及び粘着剤層34には開口部46が開口される。開口部46は、伸縮性配線32の電極33が例えば生体等の外部と電気的なコンタクトをとるために形成される開口部である。開口部46を形成することにより、46上に非重複粘着剤層34aが存在しなくなり、電極33が非重複粘着剤層34aから露出する。
図5(b)に示すように、第一実施形態では、粘着剤層34のうちの非重複領域3にある部分を非重複粘着剤層34a、重複領域5にある部分を重複粘着剤層34bとする。セパレータ11c剥離後の伸縮性基板1は、図1図2に示した使用される直前の伸縮性基板1となる。
【0034】
以上説明したように、第一実施形態は、粘着剤層を非重複領域3と共に重複領域5にも設けることによって非重複領域3、重複領域5の境界における伸縮性配線32の断線を抑止することができる。熱圧プレスは伸縮性配線の工程において比較的時間のかかる工程であり、熱圧プレスの回数が増えると伸縮性基板の製造効率が低下する。
前述の公知の伸縮性基板では、伸縮性カバー35のセパレータ11bを剥離した後にセパレータに支持された保護層をさらに熱圧プレスによって貼り合わせて非重複領域3と重複領域5との境界における伸縮性配線32の断線を抑止していた。
一方、第一実施形態は、非重複領域3、重複領域5の両方に粘着剤層34を形成することによって非重複領域3と重複領域5との境界における伸縮性配線32の断線を抑止する効果を得る。このような第一実施形態は、熱圧プレスの工程を用いることなく配線の断線を抑止し、高い製造効率を得ることが可能な伸縮性基板及び伸縮性基板の製造方法を提供することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。第二実施形態は、図5(a)から図5(c)に示した段差部Sに粘着剤層が重ねて形成された場合、粘着剤層と生体との間にわずかな間隙が生じる(粘着剤層が「浮く」)ことを防止することを目的にしてなされたものである。
図6は、本発明の第二実施形態の伸縮性基板100の上面図である。伸縮性基板100は、重複領域5の側に形成された重複粘着剤層134bと、非重複領域3の側に形成された非重複粘着剤層134aとが、各々分離して形成される点で第一実施形態と相違する。
つまり、第一実施形態の粘着剤層34は、図2に示したように、非重複領域3と重複領域5とにわたって形成される一連の部材であった。しかし、第二実施形態は、重複粘着剤層134bを非重複領域3と重複領域5との境界から離し、重複領域5にのみ形成されるものとした。
このような第二実施形態は、非重複領域3と重複領域5との境界に生じる段差により粘着剤層が生体から浮くこと、さらには非重複粘着剤層134a、重複粘着剤層134bの浮きが端部から広がることを防ぐことができる。そして、粘着剤層が浮くことがない第二実施形態は、第一実施形態よりも生体にフィットし、伸縮性基材31にかかる力を生体表面に伝えて逃がすことができる。このような第二実施形態は、重複領域5に加わった力を生体の表面を介して第一実施形態よりも効率的に逃がし、加わった力によって伸縮性基材31が過剰に伸張することを防ぐことができる。
【0036】
また、上記第二実施形態の伸縮性基板の製造方法では、粘着剤層を形成する工程において、重複領域15と非重複領域3との境界を含む所定の領域に対応する部分を除いて粘着剤層を形成することによって伸縮性基板100を製造することができる。ここで、「重複領域15と非重複領域3との境界を含む所定の領域」とは、境界と、この周辺を含む範囲をいい、領域の大きさは規定されない。ただし、所定の領域の大きさは、非重複粘着剤層134aが伸縮性基材31を生態に密着させて高品質な生体信号を検出できる大きさ以上であることを妨げず、重複粘着剤層134bが生体に力を伝えることができる大きさ以上であることを妨げない範囲に制限される。
【0037】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、第一実施形態、第二実施形態において、重複領域が生体に貼り付いても実質的な外部引き出しケーブルの長さを維持するためになされたものである。
図7(a)は、第三実施形態の伸縮性基板101の上面図である。図7(b)は、図7(a)に示した矢線B,Bの側から伸縮性基板を見た縦断面図である。第三実施形態の伸縮性基板101は、伸縮性基材31と重なるフィルム基材153のうち、非重複領域3に向かう側の端部の一部が、この一部と異なる非延出部153bよりも非重複領域3の側に延出する延出部153aである点で第一実施形態、第二実施形態と相違する。
第三実施形態では、図7に示したように、重複領域15が非重複領域3の側に延出している。このような第三実施形態では、非重複領域3の側にだけ形成される公知の粘着剤層と同じエリアに粘着剤層134を形成し、非重複領域3と共にフィルム基材153にも重複粘着剤層134bを設けることができる。
したがって、第三実施形態は、外部引き出しケーブルの長さを公知の伸縮性基板と同じ長さだけ確保しながら、重複粘着剤層134bを有する伸縮性基板101を提供することが可能になる。
【0038】
図7に示した伸縮性基板101では、伸縮性基材31と重なるフィルム基材153のうち、非延出部153bは、非重複領域3の幅方向に延出部153aを挟んで形成されている。外部引き出しケーブルの長さを確保するため、第三実施形態では、例えば、重複領域15と非重複領域3の境界から延出部153a端部までの最大長さd1を重複領域15と非重複領域3の境界から重複領域15端部までの長さd2以上とする。このようにすれば、重複粘着剤層134bを設けたことによって実質的に短くなった外部引出ケーブルの長さを回復することができる。また、第三実施形態の延出部153a、非延出部153bは、端部が曲線(弧を描く)の形状を有している。このような第三実施形態は、延出部153a、非延出部153bの端部にかかる力が分散されて、端部を剥がれ難くすることができる。
また、図7に示した伸縮性基板101は、延出部153aのピークを含む領域に伸縮性配線32が形成されている。このように構成することにより、第三実施形態は、延出部153aの長さを最大限に使って外部引き出しケーブルの長さを確保することができる。
【0039】
ただし、第三実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、延出部153aが非重複領域3の幅方向の両端に延出するものであってもよい。このように、延出部153aを端部に形成する構成では、外部引き出しケーブルに加わった力が伸縮性配線32の形成領域を除く部分を伝わるようになる。このため、伸縮性基材31の伸張を押さえ、非重複領域3と重複領域5との境界における断線を抑えることができる。
また、上記した長さd2は、長さd1よりも長くてもよい。このような場合、第三実施形態は、公知の伸縮性基板よりも外部引出ケーブルを長くし、外部引出ケーブルを接続する作業をし易くすることができる。さらに、長さd2が長さd1よりも短い場合であっても、重複粘着剤層134bによって外部引出ケーブルの長さが実質的に短くなることを緩和することができる。
さらに、延出部153a、非延出部153bの端部は、図示した弧よりも大きな弧を描くものであっても良いし、小さな弧を描くものであってもよい。さらに、延出部153a、非延出部153bの端部は、他の形状の曲線で形成されるものであってもよいし、直線で形成された形状を有するものであってもよい。
【0040】
以上説明した本発明は、上述の第一実施形態から第三実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
例えば、本発明の伸縮性基板の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0041】
上記実施形態および実施例は以下の技術思想を包含するものである。
(1) 伸縮性を有する伸縮性基材と、前記伸縮性基材の一方面側の面の一部と重ねられ、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材と、前記伸縮性基材の前記面に形成された伸縮性配線と、前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側に形成された粘着剤層と、を含み、前記粘着剤層が、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に形成されている伸縮性基板。
(2) 前記粘着剤層は、前記伸縮性基材の前記一方面側に形成されている、(1)の伸縮性基板。
(3) 前記重複領域の側に形成された前記粘着剤層と、前記非重複領域の側に形成された前記粘着剤層とが一続きに形成されている、(1)または(2)の伸縮性基板。
(4) 前記重複領域の側に形成された前記粘着剤層と、前記非重複領域の側に形成された前記粘着剤層とが、各々分離して形成されている、(1)または(2)の伸縮性基板。
(5) 前記伸縮性基材と重なる前記フィルム基材のうち、前記非重複領域に向かう側の端部の一部が前記非重複領域の側に延出する延出部である、(1)から(4)のいずれか一つの伸縮性基板。
(6) 伸縮性を有する伸縮性基材の一方面側の面に伸縮性配線を形成する工程と、前記伸縮性基材の一部と重なるように、前記伸縮性基材よりも伸縮性が低いフィルム基材を形成する工程と、前記伸縮性基材の前記一方面側または他方面側において、前記伸縮性基材が前記フィルム基材と重なる重複領域及び前記フィルム基材と重ならない非重複領域の両方に粘着剤層を形成する工程と、を含む、伸縮性基板の製造方法。
(7) 前記粘着剤層を形成する工程は、前記重複領域と前記非重複領域との境界を含む所定の領域に対応する部分を除いて前記粘着剤層を形成する、(6)の伸縮性基板の製造方法。
【符号の説明】
【0042】
1、100、101・・・伸縮性基板
3・・・非重複領域
5、15・・・重複領域
11a,11b,11c・・・セパレータ
13a,13b,13c・・・プロテクトフィルム
31・・・伸縮性基材
31a・・・表面
31b・・・裏面
32・・・伸縮性配線
33・・・電極
34、134・・・粘着剤層
34a,134a・・・非重複粘着剤層
34b,134b・・・重複粘着剤層
35・・・伸縮性カバー
45、46・・・開口部
51・・・外部端子
53,153・・・フィルム基材
153a・・・延出部
153b・・・非延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7