(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983045
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】緩衝ストッパ
(51)【国際特許分類】
F16F 1/36 20060101AFI20211206BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20211206BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20211206BHJP
B62D 5/22 20060101ALI20211206BHJP
F16C 27/06 20060101ALI20211206BHJP
F16F 1/368 20060101ALI20211206BHJP
F16F 1/37 20060101ALI20211206BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
F16F1/36 E
B62D3/12 503B
B62D5/04
B62D5/22
F16C27/06 A
F16F1/368 Z
F16F1/37 Z
F16F7/00 F
F16F7/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-228592(P2017-228592)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-100371(P2019-100371A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】水町 昭二
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−002935(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/159332(WO,A1)
【文献】
特開2016−137797(JP,A)
【文献】
特開2018−192955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/36
F16F 1/37
F16F 7/00
F16F 1/368
B62D 5/22
B62D 5/04
B62D 3/12
F16C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に相対変位する二部材の互いに対面して近接離間する端面部と互いに対面する側壁部とによって四方を囲まれる環状の装着空間に装着される緩衝ストッパであって、
前記二部材の互いに対面する前記側壁部のいずれにも径方向に間隔を開けて配置され、前記二部材間の間隔が縮小したときに互いの前記端面部によって軸方向に圧縮されて径方向に膨張する環状の第1弾性体と、
前記第1弾性体の外周側または内周側に配置された環状の第2弾性体と、
を有し、
前記第1弾性体は、前記第2弾性体に面する周面の全周に凹状にくぼんだ部分を有し、
前記第2弾性体は、
対面する前記側壁部との間に径方向間隔を開けて前記凹状にくぼんだ部分に嵌り込み、
前記第1弾性体が径方向に膨張したときに前記第1弾性体によって径方向に押圧されて弾性変形し、前記対面する側壁部に接触するとこの側壁部と前記第1弾性体との間で径方向に圧縮される、
ことを特徴とする緩衝ストッパ。
【請求項2】
請求項1記載の緩衝ストッパにおいて、
前記第2弾性体は、気泡を備える発泡ウレタンよりなることを特徴とする緩衝ストッパ。
【請求項3】
請求項1記載の緩衝ストッパにおいて、
前記第2弾性体は、径方向のバネ性を備える板バネよりなることを特徴とする緩衝ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝作用を発揮しながら可動部材の変位や部材間の相対変位などを停止させる緩衝ストッパに関する。本発明の緩衝ストッパは例えば、ステアリングラックのラックエンドストッパとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
緩衝ストッパは例えば、車両の操舵装置におけるステアリングラックの端部に使用されるラックエンドストッパとして
図6に示すように、互いに軸方向に対向し軸方向に相対変位するラックハウジング51およびラック61間でゴム材料よりなる弾性体81を圧縮変形させる構造とされている。
【0003】
この緩衝ストッパは、油圧・電動等でアシストされたステアリングラックにおいてフルロックまで勢い良くハンドルを切った場合等にラック61がラックハウジング51に衝突する際の衝撃を緩衝させることになる。
【0004】
ところで一般に、緩衝ストッパによる衝撃の緩衝は、可動物(ラック61)の重量と速度による運動エネルギーを緩衝ストッパの変位と反力により吸収しようとするものであって、
図7のグラフ図に示すように緩衝ストッパの変位量と反力からなる線図で示される面積Sの大きさで吸収可能なエネルギー量が決まる。
【0005】
したがって、吸収可能なエネルギー量を増やすためには、緩衝ストッパの変位量を大きくするか、あるいは反力(剛性=バネ定数)を大きくするかして、線図で示される面積Sを大きくするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−133102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、以下の点で改良の余地がある。
【0008】
すなわち、緩衝ストッパでは一般に、緩衝ストッパの許容変位量が規制される場合、緩衝ストッパの変位量を大きくすることができない。
【0009】
また、許容変位量の規制が厳しい場合、吸収可能なエネルギー量を確保するために反力を大きくしたいところとなるが、許容変位量の規制が厳しい場合はゴムボリュームを拡大できないことが多いため、ゴム材料として弾性率の大きな(≒ゴム硬度の高い)材料を使用するのが一般的である。
【0010】
しかしながら、ゴム材料の弾性率にも限度があるため、十分に大きな反力を得ることができず、結果、緩衝ストッパで吸収可能なエネルギー量を大きくすることができない。
【0011】
また、変位後に反力が求められる場合の方策として、ラックハウジングおよびラック間の装着空間内に弾性体を充満させる(体積圧縮状態とする)ことにより所定の反力を確保することが考えられるが、この体積圧縮状態では荷重の立ち上がりが大きいことからやはり、吸収可能なエネルギー量を大きくすることができない。
【0012】
吸収可能なエネルギー量を大きくすることができる緩衝ストッパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
軸方向に相対変位する二部材
の互いに対面して近接離間する端面部と互いに対面する側壁部とによって四方を囲まれる環状の装着空間に装着される緩衝ストッパであって、
前記二部材の互いに対面する前記側壁部のいずれにも径方向に間隔を開けて配置され、前記二部材間の間隔が縮小したときに
互いの前記端面部によって軸方向に圧縮され
て径方向に膨張する
環状の第1弾性体と、前記第1弾性体の外周側または内周側に配置された
環状の第2弾性体とを有し、
前記第1弾性体は、前記第2弾性体に面する周面の全周に凹状にくぼんだ部分を有し、前記第2弾性体は、
対面する前記側壁部との間に径方向間隔を開けて前記凹状にくぼんだ部分に嵌り込み、前記第1弾性体が径方向に膨張したときに前記第1弾性体によって径方向に押圧され
て弾性変形し、
前記対面する側壁部に接触するとこの側壁部と前記第1弾性体
との間で径方向に圧縮される
。
【発明の効果】
【0016】
吸収可能なエネルギー量を大きくすることが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施の形態に係る緩衝ストッパの要部断面図
【
図2】(A)(B)(C)とも同緩衝ストッパの作動状態を示す要部断面図
【
図3】第2実施の形態に係る緩衝ストッパの要部断面図
【
図4】(A)(B)(C)とも同緩衝ストッパの作動状態を示す要部断面図
【
図5】実施の形態に係る緩衝ストッパにおける変位量と反力の関係を示すグラフ図
【
図7】同緩衝ストッパにおける変位量と反力の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態に係る緩衝ストッパ11は、車両の操舵装置におけるステアリングラックのラックエンドストッパとして用いられるものであって、
図1または
図3に示すように、互いに軸方向に対向し軸方向に相対変位する二部材としてのラックハウジング51およびラック61間に介装される。
【0019】
ラックハウジング51は、軸直角平面状の端面部52を有し、端面部52の外周側に段差部53が設けられ、段差部53の内周面による側壁部54が設けられている。一方、ラック61は、ラックハウジング51の端面部52に対し軸方向に対向する端面部62を有し、端面部62の内周側に段差部63が設けられ、段差部63の外周面による側壁部64が設けられている。したがってラックハウジング51における端面部52および側壁部54ならびにラック61における端面部62および側壁部64によって四方を囲まれる環状の装着空間71が設けられ、この装着空間71内に全体として環状をなす緩衝ストッパ11が装着されている。
【0020】
第1実施の形態・・・・
図1に示すように、緩衝ストッパ11は、ラックハウジング51の端面部52およびラック61の端面部62間で軸方向に圧縮される第1弾性体21を有している。
【0021】
この第1弾性体21は、所定のゴム材料によって環状に形成され、軸方向両端部にそれぞれ金属製の取付環31を接着(加硫接着)されている。またこの第1弾性体21は
図2(A)(B)(C)に示すように、ラックハウジング51に対しラック61が接近する方向に変位して端面部52,62間の間隔が縮小したときにラックハウジング51およびラック61によって軸方向に圧縮され、この分、径方向外方および径方向内方へ向けて膨張するものとされている。
【0022】
また、緩衝ストッパ11は、第1弾性体21の外周側に配置された第2弾性体41を有している。
【0023】
この第2弾性体41は、第1弾性体21と異なるバネ特性を備える材料として特に、気泡を備える発泡ウレタンにより環状に形成されている。またこの第2弾性体41は
図2(A)(B)(C)に示すように、第1弾性体21が径方向外方へ向け膨張したときにこの第1弾性体21によって径方向外方へ向け押圧され弾性変形するものとされ、更に、第1弾性体21とラックハウジング51に設けた側壁部54との間で径方向に圧縮されるものとされている。
【0024】
図2(A)は、ラック61が変位を開始する前の初期状態を示し、この初期状態において、第2弾性体41は側壁部54に対し非接触とされ、側壁部54との間に径方向間隙cが形成されている。
【0025】
図2(A)の初期状態からラック61が変位を開始すると、
図2(B)に示すように第1弾性体21が軸方向に圧縮され径方向に膨張し、膨張する第1弾性体21が第2弾性体41を径方向へ向け押圧し、押圧される第2弾性体41が弾性変形し、側壁部54に接触する。このとき第2弾性体41は第1弾性体21の膨張(外径拡大)を殆ど阻害しないので、緩衝ストッパ11としての反力の増大には未だ寄与しない(
図5のグラフ図における線形a部に相当する)。
【0026】
次いで、
図2(B)の状態からラック61が更に変位すると、
図2(C)に示すように第2弾性体41が第1弾性体21と側壁部54との間で径方向に圧縮され、体積が減少する方向に変形し、このとき発泡ウレタンよりなる第2弾性体41には、気泡による体積変化に対する抵抗力が発生する。したがってこの気泡による体積変化に対する抵抗力が第1弾性体21の膨張(外径拡大)に抵抗するため、緩衝ストッパ11としての反力の増大に寄与する(
図5のグラフ図における非線形b部に相当する)。
【0027】
上記構成の緩衝ストッパ11においては、ラックハウジング51に対しラック61が接近する方向に変位して端面部52,62間の間隔が縮小すると、第1弾性体21がラックハウジング51およびラック61間で軸方向に圧縮され、この分、径方向外方および径方向内方へ向けて膨張する。膨張する第1弾性体21はその外周側に配置された第2弾性体41を径方向外方へ向け押圧し、押圧される第2弾性体41は弾性変形し、更に、第1弾性体21とラックハウジング51に設けた側壁部54との間で径方向に圧縮される。第2弾性体41は発泡ウレタンよりなり、発泡ウレタンはその内部に備える気泡により体積圧縮状態においても弾性を発揮する。したがって第1弾性体21および第2弾性体41が共に体積圧縮状態になっても発泡ウレタンの弾性によりゴム弾性体単体時よりも荷重の上昇を緩やかにすることができるため、
図5のグラフ図に実線領域S’にて示されるように、吸収可能なエネルギー量を大きくすることが可能とされている。
【0028】
第2実施の形態・・・・
図3に示すように、緩衝ストッパ11は、ラックハウジング51の端面部52およびラック61の端面部62間に配置される第1弾性体21を有している。
【0029】
この第1弾性体21は、所定のゴム材料によって環状に形成され、軸方向両端部にそれぞれ金属製の取付環31を接着(加硫接着)されている。また、第1弾性体21は
図4(A)(B)(C)に示すように、ラックハウジング51に対しラック61が接近する方向に変位して端面部52,62間の間隔が縮小したときにラックハウジング51およびラック61によって軸方向に圧縮され、この分、径方向外方および径方向内方へ向けて膨張するものとされている。
【0030】
また、緩衝ストッパ11は、第1弾性体21の外周側に配置された第2弾性体41を有している。
【0031】
この第2弾性体41は、第1弾性体21とは異なるバネ特性を備える材料として特に径方向のバネ性を備える金属製の板バネにより円周上一箇所をカットされた環状であってかつ断面円弧の鼓状に形成されている。また、第2弾性体41は
図4(A)(B)(C)に示すように、第1弾性体21が径方向外方へ向け膨張したときにこの第1弾性体21によって径方向外方へ向け押圧され弾性変形するものとされ、更に、第1弾性体21とラックハウジング51に設けた側壁部54との間で径方向に圧縮されるものとされている。
【0032】
図4(A)は、ラック61が変位を開始する前の初期状態を示し、この初期状態において、第2弾性体41は側壁部54に対し非接触とされ、側壁部54との間に径方向間隙cが形成されている。
【0033】
図4(A)の初期状態からラック61が変位を開始すると、
図4(B)に示すように第1弾性体21が軸方向に圧縮され径方向に膨張し、膨張する第1弾性体21が第2弾性体41を径方向へ向け押圧し、押圧される第2弾性体41が弾性変形し、側壁部54に接触する。このとき第2弾性体41は第1弾性体21の膨張(外径拡大)を殆ど阻害しないので、緩衝ストッパ11としての反力の増大には未だ寄与しない(
図5のグラフ図における線形a部に相当する)。
【0034】
次いで、
図4(B)の状態からラック61が更に変位すると、
図4(C)に示すように第2弾性体41が第1弾性体21と側壁部54の間で径方向に圧縮され、断面円弧状であったものが断面ほぼ直線状に変形し、このとき、この変形が皿バネのように作用して第1弾性体21の膨張(外径拡大)に抵抗するため、緩衝ストッパ11としての反力の増大に寄与することになる(
図5のグラフ図における非線形b部に相当する)。
【0035】
上記構成の緩衝ストッパ11においては、ラックハウジング51に対しラック61が接近する方向に変位して端面部52,62間の間隔が縮小すると、第1弾性体21がラックハウジング51およびラック61間で軸方向に圧縮され、この分、径方向外方および径方向内方へ向けて膨張する。膨張する第1弾性体21はその外周側に配置された第2弾性体41を径方向外方へ向け押圧し、押圧される第2弾性体41は弾性変形し、更に、第1弾性体21とラックハウジング51に設けた側壁部54との間で径方向に圧縮される。第2弾性体41は径方向のバネ性を備える板バネよりなり、第1弾性体21が体積圧縮状態に移行する間をこの第2弾性体41がその弾性(バネ力)で付勢する。したがってゴム弾性体単体時よりも荷重の上昇を緩やかにすることができるため、
図5のグラフ図に実線領域S’にて示されるように、吸収可能なエネルギー量を大きくすることが可能とされている。
【0036】
なお、上記第1および第2の実施の形態では、第2弾性体41を第1弾性体21の外周側に配置する構成としたが、第2弾性体41はこれを第1弾性体21の内周側に配置する構成としても良い。この場合、第2弾性体41は、第1弾性体21が径方向内方へ向け膨張したときにこの第1弾性体21によって径方向内方へ向け押圧され弾性変形するものとされ、更に、第1弾性体21とラック62に設けた側壁部64との間で径方向に圧縮されるものとされる。
【0037】
また、取付環31を断面L字形に形成し、このL字形の筒状部と第1弾性体21との間に第2弾性体41を配置することも考えられる。この場合、第2弾性体41は、第1弾性体21が径方向外方または内方へ向け膨張したときにこの第1弾性体21によって径方向外方または内方へ向け押圧され弾性変形するものとされ、更に、第1弾性体21と取付環31の筒状部との間で径方向に圧縮されるものとされる。
【符号の説明】
【0038】
11 緩衝ストッパ
21 第1弾性体
31 取付環
41 第2弾性体
51 ラックハウジング
52,62 端面部
53,63 段差部
54,64 側壁部
61 ラック
71 装着空間
c 径方向間隙