特許第6983057号(P6983057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983057
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】グレア測定装置及びグレア測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   G01J1/42 K
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-246909(P2017-246909)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-113413(P2019-113413A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096770
【弁理士】
【氏名又は名称】四宮 通
(72)【発明者】
【氏名】小平 恭宏
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−217688(JP,A)
【文献】 特開2007−276766(JP,A)
【文献】 特開2008−241380(JP,A)
【文献】 特開2016−142544(JP,A)
【文献】 特開2017−040534(JP,A)
【文献】 特開2007−292665(JP,A)
【文献】 特開2000−155049(JP,A)
【文献】 特開昭50−081470(JP,A)
【文献】 特開2009−115631(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/195821(WO,A1)
【文献】 Applicability of CIE's Glare (GR) Evaluation System for Outdoor Facilities to Indoor Sports Facilities,Journal of Light & Visual Environment,日本,一般社団法人 照明学会,1999年08月01日,Vol.23, No.2,pp. 31-37,doi: 10.2150/jlve.23.2_31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−G01J 1/60
F21K 9/00−F21K 9/90
F21S 2/00−F21S 45/70
H05B 39/00−H05B 47/29
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレア測定方向のポイントを含む領域の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部と、
前記撮像部により撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定する指定手段と、
を備え、
前記撮像された画像は、撮像時の撮像視野を同じくする1枚又は複数枚の画像である、
ことを特徴とするグレア測定装置。
【請求項2】
前記撮像部は、撮像画像における前記グレア測定方向のポイントの許容範囲を撮像視野内に示す許容範囲表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のグレア測定装置。
【請求項3】
グレア測定方向のポイントを含む領域の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部と、
を備え、
前記撮像部は、撮像画像における前記グレア測定方向のポイントの許容範囲を撮像視野内に示す許容範囲表示手段を備えた、
ことを特徴とするグレア測定装置。
【請求項4】
グレア測定方向のポイントを含む領域の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部と、
を備え、
前記撮像された画像は、光源の発光強度が周期的に変化する場合において、前記発光強度の周期の整数倍のシャッタ速度で撮像されたものである、
ことを特徴とするグレア測定装置。
【請求項5】
グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部と、
前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定する指定手段と、
を備え
前記撮像された画像は、撮像時の撮像視野を同じくする1枚又は複数枚の画像である、
ことを特徴とするグレア測定装置。
【請求項6】
前記撮像された画像において前記使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲を、前記使用者に報知する指定可能範囲報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のグレア測定装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記一部の範囲のみの画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得する輝度分布取得部と、前記輝度分布に基づいて前記評価値を算出する評価値算出部とを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のグレア測定装置。
【請求項8】
前記評価値算出部は、前記輝度分布に基づいて光源による等価光幕輝度を算出する第1の等価光幕輝度算出部と、前記輝度分布に基づいて光源以外の環境による等価光幕輝度を算出する第2の等価光幕輝度算出部と、前記光源による等価光幕輝度と前記環境による等価光幕輝度とに基づいて前記評価値としてグレアレイティングを算出するグレアレイティング算出部とを有する、
ことを特徴とする請求項7記載のグレア測定装置。
【請求項9】
前記撮像された画像は、露出を変えて撮像された複数の画像を含み、
前記輝度分布取得部は、前記複数の画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得する、
ことを特徴とする請求項7又は8記載のグレア測定装置。
【請求項10】
前記撮像された画像は、光源の発光強度が周期的に変化する場合において、前記発光強度の周期の整数倍のシャッタ速度で撮像されたものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のグレア測定装置。
【請求項11】
グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るグレア測定方法であって、
前記撮像された画像は、撮像時の撮像視野を同じくする1枚又は複数枚の画像であり、
前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定し得るようにしたことを特徴とするグレア測定方法
【請求項12】
前記撮像された画像において前記使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲を、前記使用者に報知することを特徴とする請求項11記載のグレア測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外スポーツ照明やその他のエリア照明(ドームや体育館等の屋内スポーツ照明等を含む)などに関してグレア測定を行う装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外スポーツ照明やエリア照明に関するグレア評価値は、国際照明委員会(CIE)のテクニカルレポート「CIE112-1994」(Glare Evaluation System for Use within Outdoor Sports and Area Lighting, CIE TECHNICAL REPORT, 112-1994,(1994))においてグレアレイティング(glare rating)GRとして規定されている。グレアレイティングGRは、「光源による等価光幕輝度:Lvl」と「環境による等価光幕輝度:Lve」から下記の数1によって算出するとされており、グレアレイティングGRの値の大小に応じて、「耐えられない」、「邪魔になる」、「許容できる限界」、「あまり気にならない」、「気にならない」という評価クラスに分けられる。
【0003】
【数1】
【0004】
光源による等価光幕輝度Lvl及び環境による等価光幕輝度Lveは、何れも下記の数2から算出され、それらの等価光幕輝度の計算範囲は、中心視を除く1.5°から60°までの範囲(視線方向(グレア測定方向)に対して1.5゜から60゜までの角度をなす範囲)とされている。
【0005】
【数2】
【0006】
数2において、Eeye iはi番目の光源によって生成される観測者の眼の照度であり、θは観察者の視線とi番目の光源の光の入射方向との角度(1.5°<θ<60°)であり、nは光源の総数である。
【0007】
ここで、テクニカルレポート「CIE112-1994」において、Lveについては照明されている領域は無限の小さな光源から構成されていると考えるとされている。
【0008】
ところが、テクニカルレポート「CIE112-1994」では、数2に従って等価光幕輝度Lvl,Lveを測定することは実際上困難であることを考慮して、光がθに重み付けされたグレアレンズを装着した輝度計を使用して等価光幕輝度Lvl,Lveを測定してもよいとされている。実際のグレア測定では、グレアレンズを利用したこの方法が取られることが多い。
【0009】
一方、下記特許文献1には、グレアレンズを用いずに、撮影カメラで撮影した画像の輝度分布に基づき画像処理により等価光幕輝度を求めて、グレアレイティングを得るグレア測定システムが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5990981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、グレアレンズを利用する前記従来のグレア測定では、グレアレンズの視野が制限されていないため、余分な光情報が等価光幕輝度に反映されてしまい、ひいては、精度の高いグレア測定を行うことができなかった。
【0012】
また、前記特許文献1のように画像を利用する場合であっても、撮像された画像の全体を利用するとすれば、やはり余分な光情報が等価光幕輝度に反映されてしまい、ひいては、精度の高いグレア測定を行うことができない。
【0013】
このような事情は、グレアの評価値として、グレアレイティングを得る場合のみならず、他の評価値を得る場合についても同様である。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より精度の高いグレア測定を行うことができるグレア測定装置及びグレア測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段として、以下の各態様を提示する。第1の態様によるグレア測定装置は、グレア測定方向のポイントを含む領域の画像を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部と、を備えたものである。
【0016】
この第1の態様によれば、前記撮像部により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るので、余分な光情報がグレアの評価値に反映されてしまうのを抑えることができ、ひいては、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0017】
第2の態様によるグレア測定装置は、前記第1の態様において、前記撮像部により撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定する指定手段を備えたものである。
【0018】
この第2の態様によれば、前記撮像部により撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定することができるので、撮影部で画像を撮影する際に、グレア測定方向に対して撮影部の向きを厳密に合わせる必要がなくなるため、画像の撮像を容易に行うことができ、ひいては、グレア測定を容易に行うことができる。
【0019】
第3の態様によるグレア測定装置は、前記第1又は第2の態様において、前記撮像部は、撮像画像における前記グレア測定方向のポイントの許容範囲を撮像視野内に示す許容範囲表示手段を備えたものである。
【0020】
この第3の態様によれば、撮像画像における前記グレア測定方向のポイントの許容範囲が撮像視野内に示されるので、グレア測定方向から大きく外れた画像を撮像してしまうおそれをなくすことができる。
【0021】
第4の態様によるグレア測定装置は、グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部を、備えたものである。
【0022】
この第4の態様によれば、グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るので、余分な光情報がグレアの評価値に反映されてしまうのを抑えることができ、ひいては、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0023】
第5の態様によるグレア測定装置は、前記第4の態様において、前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定する指定手段を備えたものである。
【0024】
この第5の態様によれば、前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定することができるので、撮影部で画像を撮影する際に、グレア測定方向に対して撮影部の向きを厳密に合わせる必要がなくなるため、画像の撮像を容易に行うことができ、ひいては、グレア測定を容易に行うことができる。
【0025】
第6の態様によるグレア測定装置は、前記第2、第3及び第5のいずれかの態様において、前記撮像された画像において前記使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲を、前記使用者に報知する指定可能範囲報知手段を備えたものである。
【0026】
この第6の態様によれば、前記撮像された画像において使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲が、使用者に報知されるので、使用者が当該画像に基づくグレア測定ができない箇所をグレア測定方向のポイントとして指定しまうおそれをなくすことができる。
【0027】
第7の態様によるグレア測定装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記処理部は、前記一部の範囲のみの画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得する輝度分布取得部と、前記輝度分布に基づいて前記評価値を算出する評価値算出部とを有するものである。
【0028】
この第7の態様は、輝度分布に基づいてグレアの評価値を算出する例を挙げたものである。
【0029】
第8の態様によるグレア測定装置は、前記第7の態様において、前記評価値算出部は、前記輝度分布に基づいて光源による等価光幕輝度を算出する第1の等価光幕輝度算出部と、前記輝度分布に基づいて光源以外の環境による等価光幕輝度を算出する第2の等価光幕輝度算出部と、前記光源による等価光幕輝度と前記環境による等価光幕輝度とに基づいて前記評価値としてグレアレイティングを算出するグレアレイティング算出部とを有するものである。
【0030】
この第8の態様は、前記評価値としてグレアレイティングを算出する具体例を挙げたものである。もっとも、前記第7の態様では、前記評価値はグレアレイティングに限らない。
【0031】
第9の態様によるグレア測定装置は、前記第7又は第8の態様において、前記撮像された画像は、露出を変えて撮像された複数の画像を含み、前記輝度分布取得部は、前記複数の画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得するものである。
【0032】
この第9の態様によれば、露出を変えて撮像された複数の画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得するので、ダイナミックレンジの広い輝度分布を取得することができ、ひいては、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0033】
第10の態様によるグレア測定装置は、前記第1乃至第9のいずれかの態様において、前記撮像された画像は、光源の発光強度が周期的に変化する場合において、前記発光強度の周期の整数倍のシャッタ速度で撮像されたものである。
【0034】
この第10の態様によれば、光源の発光強度の周期の整数倍のシャッタ速度で撮像されるので、シャッタタイミングに拘わらず画素の受光量が変動しないことから、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0035】
第11の態様によるグレア測定方法は、グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るものである。
【0036】
この第11の態様によれば、グレア測定方向のポイントを含む領域が撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るので、余分な光情報がグレアの評価値に反映されてしまうのを抑えることができ、ひいては、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0037】
第12の態様によるグレア測定方法は、前記第11の態様において、前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定し得るようにしたものである。
【0038】
この第12の態様によれば、前記撮像された画像における前記グレア測定方向のポイントを使用者が指定することができるので、撮影部で画像を撮影する際に、グレア測定方向に対して撮影部の向きを厳密に合わせる必要がなくなるため、画像の撮像を容易に行うことができ、ひいては、グレア測定を容易に行うことができる。
【0039】
第13の態様によるグレア測定方法は、前記第12の態様において、前記撮像された画像において前記使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲を、前記使用者に報知することを特徴とする請求項12記載のグレア測定方法。
【0040】
この第13の態様によれば、前記撮像された画像において使用者が前記グレア測定方向のポイントを指定し得る範囲が、使用者に報知されるので、使用者が当該画像に基づくグレア測定ができない箇所をグレア測定方向のポイントとして指定しまうおそれをなくすことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、より精度の高いグレア測定を行うことができるグレア測定装置及びグレア測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1の実施の形態によるグレア測定装置を示す概略構成図である。
図2】視線と光源の位置関係を示す図である。
図3】画素に対応するポイントの座標(θ,φ)において用いられるθ及びφを示す図である。
図4】視線(グレア測定方向)と等価光幕輝度の計算範囲との関係を示す概略斜視図である。
図5図1中のカメラで撮像された撮像画面を示す図である。
図6図1中の表示部に表示されるプレビュー画面を示す図である。
図7図1中のカメラの向きをグレア測定方向に合わせたときに当該カメラの表示部に表示されるプレビュー画面を示す図である。
図8図1中のカメラの向きをグレア測定方向に合わせて当該カメラにより撮像される撮像画面と、当該撮像画面中の撮像画像のうちの、等価光幕輝度の計算範囲を示す図である。
図9図1に示すグレア測定装置の動作の一例を示す概略フローチャートである。
図10】露出を変えて撮像した4枚の画像の画素濃淡値の範囲と、輝度との関係を模式的に示す図である。
図11】光源の発光強度の時間変化と図1中のカメラのシャッタ速度との関係の一例を示す図である。
図12】光源の発光強度の時間変化と図1中のカメラのシャッタ速度との関係の他の例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられる表示部に表示されるプレビュー画面を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられるカメラの向きをグレア測定方向にほぼ合わせたときに表示部に表示されるプレビュー画面を示す図である。
図15】本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられるカメラの向きをグレア測定方向にほぼ合わせて当該カメラにより撮像され使用者に提示される表示撮像画面を示す図である。
図16】本発明の第2の実施の形態によるカメラの向きをグレア測定方向にほぼ合わせて当該カメラにより撮像される撮像画像と、当該撮像画面中の撮像画像のうちの、等価光幕輝度の計算範囲を示す図である。
図17】本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置の動作の一例を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明によるグレア測定装置及びグレア測定方法について、図面を参照して説明する。
【0044】
[第1の実施の形態]
【0045】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるグレア測定装置1を示す概略構成図である。
【0046】
本実施の形態によるグレア測定装置1は、グレア測定方向のポイントを含む領域の画像を撮像する撮像部としてのカメラ11と、カメラ11により撮像された画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得る処理を行う処理部13と、キーボードやポインティングデバイス等の入力操作部14と、液晶パネル等の表示部15とを備えている。
【0047】
本実施の形態では、カメラ11として、白黒のデジタルスチルカメラが用いられている。もっとも、カメラ11としてカラーカメラを採用してもよく、その場合には、R,G,Bの階調値をグレースケール画像における輝度値に変換すればよい。処理部13、入力操作部14及び表示部15として、例えば、後述する機能を実現するプログラムを実行するノート型等のパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0048】
本実施の形態によるグレア測定装置1は、例えば、サッカー場や陸上競技場や野球場などのスポーツ競技場の照明(スポーツ照明)を、グレア評価対象とする。カメラ11は、スポーツ競技場のグランドの所望の観測点において、三脚12により所定の高さの位置に配置される。前記所定の高さは、一般的には、競技者の視線の高さとされる。また、カメラ11の向きは、三脚12及び図示しない雲台等により、所望の視線の方向(グレア測定方向)に合わせて調整することができるようになっている。
【0049】
本実施の形態では、カメラ11には、カメラレンズ11aとして、180゜の等立体角射影方式の魚眼レンズが装着されている。カメラレンズ11aは、180゜に限らず他の角度(例えば、120゜)のレンズでもよいし、等立体角射影方式に限らず他の方式(例えば、等距離射影方式)のレンズでもよいし、魚眼レンズに限らず広角レンズでもよい。カメラレンズ11aとして、他の方式等のレンズを採用する場合には、必要に応じて、当該レンズの特性に応じて、得られた画像を適宜補正すればよい。
【0050】
また、本実施の形態では、カメラ11で画像を撮像する際に、カメラの視野の像がプレビュー画面として表示部15に表示されるようになっている。もっとも、カメラ11は、プレビュー画面を表示する背面等の液晶モニタを有していたり電子ファインダーを有していてもよい。この場合には、プレビュー画面は表示部15に表示しなくてもよい。
【0051】
本実施の形態によるグレア測定装置1は、グレアの評価値として、グレアレイティングを得る。本実施の形態で採用されている、カメラ11で撮像した画像からグレアレイティングを算出する原理について、以下に説明する。
【0052】
まず、視野内に1つの光源が存在する場合の等価光幕輝度について説明すると、視野内において、図2のように視線方向から角度θの位置にグレア光源が1個存在する場合の輝度差弁別閾は、このグレア光源を取り除いた際に、下記数3によって示される等価光幕輝度Lvlと等しくなることが、Holladayによって実験的に示されている(L.L.Holladay:The Fundamentals of Glare and Visibility, Journal of the Optical Society of America, Vol.12, No.4, pp.271~319 (1926))。なお、図2は、視線と光源の位置関係を示す図である。
【0053】
【数3】
【0054】
数3において、Eは観測者の目がグレア光源から受ける照度[lx]であり、Kは実験定数である。
【0055】
次に、視野内に複数の光源が存在する場合の等価光幕輝度について説明すると、多くのグレア光源が視野内に存在する場合の等価光幕輝度Lvlは、下記の数4のように、個々のグレア光源による等価光幕輝度を重畳して求められることがHolladayやCrawfordによって示されている(L.L.Holladay:The Fundamentals of Glare and Visibility, Journal of the Optical Society of America, Vol.12, No.4, pp.271~319 (1926)、B.H.Crawford:The integration of the glare effects from a number of glare sources, Proceedings of the Physical Society, Vol.48, pp.35-37(1936))。
【0056】
【数4】
【0057】
MoonとSpencerは、この数4を拡張解釈し、任意の輝度分布 L(θ,φ)を持つ周辺視野による等価光幕輝度Lvlは、下記の数5で与えられるとしている(P.Moon, D,E,Spencer:The Visual Effect of Non-Uniform Surrounds, Journal of the Optical Society of America, Vol.35, No.3, pp.233~247(1945))。
【0058】
【数5】
【0059】
この数5は、光源の輝度と、観測者の視線方向と光源の角度から等価光幕輝度Lvlの測定ができることを明らかにしている。同様に、「環境による等価光幕輝度Lveについては、照明されている領域は無限の小さな光源から構成されている」との考え方を適用すれば、環境による等価光幕輝度Lveも数5から算出できる。
【0060】
そこで、カメラ11に前述したカメラレンズ11aを装着して観測者の視野の画像を撮影し、その画像から下記(i)〜(iii)のように各値を算出し、下記(iv),(v)のようにそれらの値を数5に適用することで光源による等価光幕輝度Lvlと環境による等価光幕輝度Lveを測定することができ、下記(vi)のようにそれらを前述した数1に代入することでグレアレイティングGRを算出することができる。
【0061】
(i)画像から各画素の輝度L(θ,φ)を測定する。ここで、(θ,φ)は当該画素の座標であり、図3に示すように、θは観測者の視線方向(グレア測定方向)と各画素の角度であり、φは視線回りの角度である。図3は、画素に対応するポイントの座標(θ,φ)において用いられるθ及びφを示す図である。
【0062】
(ii)観測者の視点を選定し、観測者の視線方向(グレア測定方向)と各画素の角度θを算出する。
【0063】
(iii)計算範囲(1.5°<θ<60°)内で、各画素の輝度値から光源を判別し、光源と光源以外を判別する。
【0064】
(iv)計算範囲(1.5°<θ<60°)内の光源に該当する画素の輝度L(θ,φ)とその画素の角度θを数5に代入し、光源による等価光幕輝度Lvlを計算する。
【0065】
(v)計算範囲(1.5°<θ<60°)内の光源以外の画素の輝度L(θ,φ)とその画素の角度θを数5に代入し、環境による等価光幕輝度Lveを計算する。
【0066】
(vi)上記(iv)、(v)の結果を数1に代入し、グレアレイティングGRを計算する。
【0067】
以上、本実施の形態で採用されている、カメラ11で撮像した画像からグレアレイティングGRを算出する原理について、説明した。
【0068】
本実施の形態では、テクニカルレポート「CIE112-1994」に従って、カメラ11により撮像した画像のうち、前記グレア測定方向を基準として決定された前記一部の範囲のみの画像として、等価光幕輝度の計算範囲(1.5°<θ<60°)の画像を採用する。
【0069】
図4は、視線(グレア測定方向)と等価光幕輝度の計算範囲Rとの関係を示す概略斜視図である。図4において、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)には、ハッチングを付してある。この計算範囲Rは、視線(グレア測定方向)に対してなす角度θが1.5゜から60゜までの範囲である。
【0070】
図5は、図1中のカメラ11で撮像された撮像画面を示す図である。図5において、×印21は、撮像画面におけるカメラレンズ11aの光軸の位置を示しており、画面の中心に位置している。ただし、×印21は、実際には画面上に表れるわけではない。この点は、後述する各図についても同様である。撮像画像の外縁22は、×印21を中心とした円となっている。本実施の形態では、前述したように180゜の魚眼レンズが用いられているので、撮像画像の外縁22での天頂角θ’は90゜となっている。実際には撮像画像の外縁22の内側には被写体の像が表れるが、図5ではその図示は省略している。この点は、後述する各図についても同様である。なお、本願明細書において、天頂角θ’とは、カメラレンズ11aの光軸に対してなす角度をいう。
【0071】
図6は、図1中の表示部15に表示されるプレビュー画面を示す図である。本実施の形態では、表示部15は、被写体の像の上に、カメラレンズ11aの光軸の位置(撮像画面における×印21の位置に相当する位置)を示すマーク31を重畳して表示するようになっている。マーク31は、画面の中心に位置している。図示の例では、マーク31は十字となっているが、これに限らない。表示画像の外縁32は、マーク31を中心とした円となっており、撮像画像の外縁22に相当している。表示画像の外縁32での天頂角θ’は90゜となっている。実際には表示画像の外縁32の内側には被写体の像が表れるが、図6ではその図示は省略している。この点は、後述する各図についても同様である。
【0072】
図7は、図1中のカメラ11の向きを所望のグレア測定方向に合わせたときに当該カメラ11の表示部15に表示されるプレビュー画面を示す図である。図7において、図6中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付している。
【0073】
図7では、プレビュー画面における所望のグレア測定方向のポイント(グレア測定を行おうとする所望の視線上のポイント)Pがマーク31と一致している。所望のグレア測定方向についてグレア測定を行う場合には、プレビュー画面のポイントPがマーク31と一致するように、カメラ11の向きが設定される。ポイントPは、カメラ11を配置した所望の観測点から所望のグレア測定方向に存する目標点(例えば、グラウンドと観客席とを隔てるフェンスの所定箇所などの既存の目印や、特別に設けた目印など。)に相当している。プレビュー画面のポイントPがマーク31と一致するようにカメラ11の向きが設定されることで、カメラレンズ11aの光軸と視線(グレア測定方向)とが一致するため、プレビュー画面内の表示画像の各位置における、視線(グレア測定方向)に対してなす角度θと天頂角θ’とが一致する。したがって、図7に示すように、表示画像の外縁32での視線(グレア測定方向)に対してなす角度θも天頂角θ’も90゜となる。
【0074】
図8は、図1中のカメラ11の向きを図7に示すように所望のグレア測定方向に合わせて当該カメラ11により撮像される撮像画面と、当該撮像画面中の撮像画像のうちの、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)を示す図である。図4において、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)には、ハッチングを付してある。図1中のカメラ11の向きを図7に示すように所望のグレア測定方向に合わせた結果、図8では、撮像画面における×印21の位置と撮像画面における所望のグレア測定方向のポイントPとが一致しており、撮像画面内の撮像画像の各位置における、視線(グレア測定方向)に対してなす角度θと天頂角θ’とが一致している。図8に示すように、撮像画像の外縁22での視線(グレア測定方向)に対してなす角度θも天頂角θ’も90゜となる。なお、理解を容易にするため、図8においては計算範囲Rも示しているが、実際の撮像画像には計算範囲Rは示されていない。
【0075】
撮像画面における等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)は、角度θ(=天頂角θ’)が1.5゜となる撮像画像上の位置を示す円23と、角度θ(=天頂角θ’)が60゜となる撮像画像上の位置を示す円24との間の領域となっており、内側の円23は等価光幕輝度の計算範囲Rの内縁、外側の円24は等価光幕輝度の計算範囲Rの外縁となっている。
【0076】
図9は、図1に示すグレア測定装置1の動作の一例を示す概略フローチャートである。
【0077】
本実施の形態によるグレア測定装置1によりグレア測定を行う場合、まず、所望の観測点に配置したカメラ11で所望のグレア測定方向の画像を撮像する(ステップS1)。このとき、図7に示すように、プレビュー画面における当該グレア測定方向のポイントPがマーク31と一致するようにカメラ11の向きを合わせて、図8に示すような画像を撮像する。
【0078】
ステップS1において、露光を変えて同一対象の複数枚の画像を撮像することが好ましい。図10は、露出を変えて撮像した4枚の画像の画素濃淡値の範囲(本例では、0から255までの濃淡値(階調値)の範囲)と、輝度との関係を模式的に示す図である。図10において、KA,KB,KC,KDは各画像の画素濃淡値の範囲を示しており、その順に高い輝度範囲に対応しかつ露出の近い2枚の画素濃淡値の範囲同士が同じ輝度範囲に対して若干重複するように、各画像の露光が設定されている。図10に示す例では、画素濃淡値の範囲KA,KB,KC,KDによって、最小輝度値Lminから最大輝度値Lmaxまでの広い輝度範囲がカバーされており、後述するステップS3において、白とびや黒つぶれを低減してダイナミックレンジの広い輝度を取得することができる。
【0079】
また、当該競技場の照明の光源がHIDランプ(high-Intensity discharge lamp)のように発光強度が周期的に変化するものである場合には、ステップS1において、カメラ11のシャッタ速度(シャッタが開いている時間)ΔSを前記光源の発光強度の周期ΔTの整数倍にして画像を撮像することが好ましい。シャッタ速度ΔSを周期ΔTの整数倍にすると、カメラ11のシャッタタイミングに拘わらず画素の受光量が変動せず、輝度の測定精度が高まり、ひいてはグレア測定の精度が高まるからである。このことは、図11及び図12からも理解することができる。
【0080】
図11は、当該競技場の照明の光源の発光強度の時間変化とカメラ11のシャッタ速度ΔSとの関係の一例を示す図である。図12は、当該競技場の照明の光源の発光強度の時間変化とカメラ11のシャッタ速度ΔSとの関係の他の例を示す図である。図11に示す例では、シャッタ速度ΔSを周期ΔTと同一にしている。図12に示す例では、シャッタ速度ΔSを周期ΔTよりも短くしている。図11及び図12において、ハッチングを付した面積が画素の受光量に相当している。図11に示す例では、カメラ11のシャッタタイミングに拘わらず画素の受光量が変動せずに一定である。一方、図12に示す例では、カメラ11のシャッタタイミングによって画素の受光量が変動してしまう。
【0081】
処理部13は、ステップS1でカメラ11により撮像された画像を受け取り、当該画像の各画素の画像濃度(濃淡値)を取得する(ステップS2)。
【0082】
次に、処理部13は、予め作成した「画像濃度−輝度テーブル」に従い、各画素の画像濃度(濃淡値)を輝度値に変換し、各画素の輝度値L(θ,φ)を得る(ステップS3)。ここで、輝度値L(θ,φ)は(θ,φ)の位置の画素の輝度値である。
【0083】
なお、ステップS1で露光を変えて同一対象の複数枚の画像を撮像した場合には、基本的に白とび及び黒つぶれしていない画像の画素の濃淡値から当該画素の輝度値L(θ,φ)を得る。最も低い輝度範囲の画像の画素の濃淡値が最小値(例えば0)の場合には、その画像の濃淡値から当該画素の輝度値を得る。最も高い輝度範囲の画像の画素の濃淡値が最大値(例えば255)の場合には、その画像の濃淡値から当該画素の輝度値を得る。同一画素について、2枚の画像の濃淡値が白とび及び黒つぶれしていない場合には、いずれかの画像の濃淡値から当該画素の輝度値を得る。なお、前記複数の画像毎に異なる「画像濃度−輝度テーブル」を予め得ておくことは言うまでもない。
【0084】
なお、ステップS3の各画素の輝度値L(θ,φ)を得る処理は、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)内の画素についてのみ行ってもよい。
【0085】
ステップS3の後に、処理部13は、計算範囲R(1.5°<θ<60°)内の各画素について、当該画素が光源に該当するものであるかそれとも光源以外に該当するものであるかを判別する(ステップS4)。この判別は、例えば、当該画素の輝度値L(θ,φ)が所定の閾値以上であるか否かによって行うことができ、例えば、処理部13は、輝度値が前記閾値以上である画素を光源に該当すると判別し、輝度値が前記閾値よりも小さい画素を光源以外に該当すると判別する。
【0086】
引き続いて、処理部13は、ステップS4で光源に該当すると判別された計算範囲R(1.5°<θ<60°)内の各画素の輝度値L(θ,φ)とその各画素の角度θを前記数5に代入することによって、光源による等価光幕輝度Lvlを計算する(ステップS5)。
【0087】
次に、処理部13は、ステップS4で光源以外に該当すると判別された計算範囲R(1.5°<θ<60°)内の各画素の輝度値L(θ,φ)とその各画素の角度θを前記数5に代入することによって、環境による等価光幕輝度Lveを計算する(ステップS6)。
【0088】
その後、処理部13は、ステップS5で求めた光源による等価光幕輝度LvlとステップS6で求めた環境による等価光幕輝度Lveを前記数1に代入することによって、当該グレア測定方向についてのグレアレイティングGRを算出し(ステップS7)、当該グレア測定方向についてのグレア測定を終了する。
【0089】
一般的に、1つの競技場等において複数の観測点及び複数のグレア測定方向についてグレア測定が要請されるので、複数の観測点及び複数のグレア測定方向について前述したステップS1〜S7を繰り返す。なお、ステップS1のみを複数の観測点及び複数のグレア測定方向について繰り返した後に、各グレア測定方向についてステップS2〜S7を行ってもよい。
【0090】
本実施の形態によれば、カメラ11により撮像された画像のうち、グレア測定方向を基準として決定された一部の範囲(等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°))のみの画像に基づいて、グレアの評価値を得るので、余分な光情報がグレアの評価値に反映されてしまうのを抑えることができ、ひいては、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、ステップS4で光源と光源以外とを判別し、ステップS5,S6でそれぞれ両者を切り分けて光源による等価光幕輝度Lvlと環境による等価光幕輝度Lveを算出するので、グレアレンズを用いた場合のように両者を判別せずに等価光幕輝度を算出する場合に比べて、より精度の高いグレア測定を行うことができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、処理部13のステップS3の機能が、前記一部の範囲のみの画像に基づいて前記範囲の輝度分布を取得する輝度分布取得部に相当している。処理部13のステップS4〜S7の機能が、前記輝度分布に基づいてグレアの評価値を算出する評価値算出部に相当している。処理部13のステップS5の機能が、前記輝度分布に基づいて光源による等価光幕輝度を算出する第1の等価光幕輝度算出部に相当している。処理部13のステップS6の機能が、前記輝度分布に基づいて環境による等価光幕輝度を算出する第2の等価光幕輝度算出部に相当している。処理部13のステップS7の機能が、前記光源による等価光幕輝度と前記環境による等価光幕輝度とに基づいて前記評価値としてグレアレイティングを算出するグレアレイティング算出部に相当している。
【0093】
[第2の実施の形態]
【0094】
前記第1の実施の形態によるグレア測定装置1では、所望のグレア測定方向の画像を撮像するに際し、プレビュー画面における所望のグレア測定方向のポイント(グレア測定を行おうとする所望の視線上のポイント)Pがマーク31と一致するように、カメラ11の向きを厳密に設定しなければならず、必ずしも使い勝手が良くない。
【0095】
これに対し、本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置は、所望のグレア測定方向の画像を撮像するに際し、カメラ11の向きをラフに設定することを可能とするように、前記第1の実施の形態によるグレア測定装置1を変形したものである。
【0096】
本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置が前記第1の実施の形態によるグレア測定装置1と異なる所は、以下に説明する点である。両者で同一又は対応する要素・ステップには同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0097】
図13は、本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられる表示部15に表示されるプレビュー画面を示す図であり、図6に対応している。図14は、本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられるカメラ11の向きをグレア測定方向にほぼ合わせたときに表示部15に表示されるプレビュー画面を示す図であり、図7に対応している。図15は、本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置で用いられるカメラ11の向きをグレア測定方向にほぼ合わせて当該カメラ11により撮像され表示部15に表示されて使用者に提示される表示撮像画面を示す図である。図16は、本発明の第2の実施の形態によるカメラ11の向きをグレア測定方向にほぼ合わせて当該カメラ11により撮像される撮像画像と、当該撮像画面中の撮像画像のうちの、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)を示す図である。
【0098】
本実施の形態では、表示部15は、プレビュー画面において、図13に示すように、被写体の像の上に、マーク31のみならず、所望のグレア測定方向のポイントPを指定し得る許容範囲を示す表示33を重畳して表示するようになっている。本実施の形態では、マーク31は必ずしも表示しなくてもよい。本実施の形態では、カメラレンズ11aとして180゜の魚眼レンズが用いられ、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)であることから、表示33は、カメラレンズ11aの光軸の位置(マーク31の位置)を中心とした円であって天頂角θ’が30゜となる位置の円とされ、表示(円)33内にグレア測定方向のポイントPが位置すれば、ポイントPを基準とした等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)が、撮像画像の外縁32(天頂角θ’)からはみ出さないようになっている。
【0099】
本実施の形態では、表示部15が表示(円)33を表示する機能が、撮像画像におけるグレア測定方向のポイントPの許容範囲を撮像視野内に示す許容範囲表示手段に相当している。
【0100】
本実施の形態では、所望のグレア測定方向についてグレア測定を行う場合には、図14に示すように、プレビュー画面のポイントPが表示(円)33内に位置するように、カメラ11の向きがラフに設定される。図14に示す例では、ポイントPがマーク31の左側にずれている。勿論、ポイントPがマーク31から必ずしもずれている必要はなく、一致していてもよい。
【0101】
本実施の形態では、このようにカメラの向きが設定された状態で撮像された画像は、処理部13によって表示部15に表示されて使用者(測定者)に提示される。この表示撮像画面が図15に示されている。処理部13は、この表示撮像画面において、撮像画像の上に、図13中の表示(円)33に相当し所望のグレア測定方向のポイントPを指定し得る範囲を示す表示(円)25を重畳して表示させる。本実施の形態では、処理部13及び表示部のこれらの機能が、撮像された画像において使用者がグレア測定方向のポイントを指定し得る範囲を、使用者に報知する指定可能範囲報知手段に相当している。
【0102】
使用者は、図15に示すような表示撮像画面を見ながら、当該画像中の表示(円)25内において目印等の像の位置を所望のグレア測定方向のポイントPとして指定する操作を、入力操作部14により行い、処理部13はその指定を受け取る。本実施の形態では、入力操作部14及び処理部13のこれらの機能が、カメラ11により撮像された画像におけるグレア測定方向のポイントPを使用者が指定する指定手段に相当している。
【0103】
図16は、カメラ11により撮像された撮像画像と、このようにして指定されたグレア測定方向のポイントPを基準として定まる等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)を示す図である。図16では、グレア測定方向のポイントPがカメラレンズ11aの光軸上からずれているため、グレア測定方向(視線)に対してなす角度θと天頂角θ’とは一致していない。理解を容易にするため、図16では、表示(円)25も点線で示している。
【0104】
図16では、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)の内縁23及び外縁24を便宜上円で示したが、カメラレンズ11aとして等立体角射影方式の魚眼レンズを使用した場合には、画面上の視点(×印21)からの距離y(θ’)は下記の数6で計算されるため、実際には、等価光幕輝度の計算範囲Rの形状は周辺ほどつぶれた円形になる。
【0105】
【数6】
【0106】
数6において、fはカメラレンズ11aの焦点距離であり、θ’は天頂角である。
【0107】
図17は、本発明の第2の実施の形態によるグレア測定装置の動作の一例を示す概略フローチャートである。
【0108】
本実施の形態によるグレア測定装置によりグレア測定を行う場合、まず、所望の観測点に配置したカメラ11でほぼ所望のグレア測定方向の画像を撮像する(ステップS1’)。このとき、図14に示すように、プレビュー画面における当該グレア測定方向のポイントPが表示(円)33内に位置するように、カメラ11の向きがラフに設定される。
【0109】
前記第1の実施の形態と同様に、ステップS1’において、露光を変えて同一対象の複数枚の画像を撮像することが好ましい。また、当該競技場の照明の光源が発光強度が周期的に変化するものである場合には、ステップS1’において、カメラ11のシャッタ速度ΔSを前記光源の発光強度の周期ΔTの整数倍にして画像を撮像することが好ましい。
【0110】
処理部13は、ステップS1’でカメラ11により撮像された画像を受け取り、当該画像の各画素の画像濃度(濃淡値)を取得する(ステップS2)。
【0111】
次に、処理部13は、ステップS2で受け取った画像に前記表示(円)25を重畳した図15に示すような表示撮像画面を表示部1に表示させ、グレア測定方向のポイントPの指定を使用者に促す(ステップS8)。
【0112】
これに応答して、使用者は、表示部15に表示された図15に示すような表示撮像画面を見ながら、当該画像中の表示(円)25内において目印等の像の位置を所望のグレア測定方向のポイントPとして指定する操作を、入力操作部14により行い、処理部13はその指定を受け取る(ステップS9)。
【0113】
次に、処理部13は、予め作成した「画像濃度−輝度テーブル」に従い、各画素の画像濃度(濃淡値)を輝度値に変換し、各画素の輝度値L(θ,φ)を得る(ステップS3’)。ここで、輝度値L(θ,φ)は(θ,φ)の位置の画素の輝度値である。
【0114】
その後、処理部13は、第1の実施の形態と同様に、ステップS4〜S7の処理を行い、当該グレア測定方向についてのグレア測定を終了する。ただし、等価光幕輝度の計算範囲R(1.5°<θ<60°)は、ステップS9で指定されたグレア測定方向のポイントPを基準として定まるものとされる。
【0115】
本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0116】
また、本実施の形態によれば、カメラ11により撮像された画像におけるグレア測定方向のポイントPを使用者が指定することができるので、カメラ11で画像を撮影する際に、グレア測定方向に対してカメラ11の向きを厳密に合わせる必要がなくなるため、画像の撮像を容易に行うことができ、ひいては、グレア測定を容易に行うことができる。
【0117】
さらに、本実施の形態によれば、図13に示すように、撮像画像におけるグレア測定方向のポイントの許容範囲が表示(円)33として撮像視野内に示されるので、グレア測定方向から大きく外れた画像を撮像してしまうおそれをなくすことができる。
【0118】
さらにまた、本実施の形態によれば、図15に示すように、撮像された画像において使用者がグレア測定方向のポイントPを指定し得る範囲が、使用者に報知されるので、使用者が当該画像に基づくグレア測定ができない箇所をグレア測定方向のポイントとして指定しまうおそれをなくすことができる。
【0119】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0120】
例えば、本発明によるグレア測定装置は、カメラ11を備えることなく、処理部13、入力操作部14及び表示部15のみで構成してもよい。この場合、当該グレア測定装置は、カメラ11で撮像した前述したような画像は適宜受け取ればよい。
【0121】
また、本発明で得るグレアの評価値はグレアレイティングに限られない。
【符号の説明】
【0122】
1 グレア測定装置
11 カメラ
11a カメラレンズ
13 処理部
14 入力操作部
15 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17