(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
器具本体の天板の上面に載置される調理容器を電磁誘導により加熱する加熱コイルと、天板の下面に設けられ、調理容器の容器底部の温度を検出する鍋底温度センサと、加熱コイルの出力制御や調理時間の計測を行う動作制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、
動作制御部は、
湯沸し運転として、調理容器の加熱が開始された後の鍋底温度センサの検出温度の変化度合に基づいて容器底部の反り量を判定し、調理時間として前記反り量に対応した湯沸し時間を設定し、調理容器の加熱が開始された後、所定の時点から湯沸し時間が経過するまで加熱コイルの出力を所定の設定出力で維持し、湯沸し時間が経過した時点で所定の調理終了処理を行い、
反り量判定動作として、調理容器の加熱中における第1期間の前記変化度合を検出し、第1期間の前記変化度合が小さいほど容器底部の反り量が大きいと判定する第1反り量判定動作と、調理容器の加熱中における第1期間より後の第2期間の前記変化度合を検出し、第2期間の前記変化度合が小さいほど容器底部の反り量が大きいと判定する第2反り量判定動作とをそれぞれ実行し、前記第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の判定結果に基づいて容器底部の反り量を判定することを特徴とする、誘導加熱調理器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の誘導加熱調理器では、加熱コイルによる調理容器の誘導加熱性能を阻害せず且つ十分な耐久性も得られるよう、天板に耐熱性および耐衝撃性の高いセラミックガラスが広く用いられている。しかしながらその反面、調理容器から鍋底温度センサへの熱伝導性が低く、調理容器内の被加熱物の実際の温度状態を精度良く適時に検出できない。特に、容器底部の反り量が大きいと、調理容器自体は電磁誘導によって正常に加熱されているにもかかわらず、調理容器の温度が鍋底温度センサに十分に伝達されず、被加熱物の実際の温度状態と鍋底温度センサの検出温度との誤差がより大きくなる。従って、上記従来の誘導加熱調理器では、容器底部の反り量が大きいと判定された場合に、加熱コイルの出力を制限することで、油など被加熱物の過熱の防止を図っている。
【0005】
しかしながら、被加熱物の過熱を考慮する必要がない湯沸しにおいて、上記従来の誘導加熱調理器のように、調理中に加熱コイルの出力が制限されてしまうと、その分、被加熱物が目標温度に達するまでの時間が冗長になるため、早期に湯沸しを完了させたい場合に、使用者に不便さを感じさせる問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、天板の上面に載置された調理容器を電磁誘導により加熱する誘導加熱調理器において、湯沸し時の使い勝手の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、器具本体の天板の上面に載置される調理容器を電磁誘導により加熱する加熱コイルと、天板の下面に設けられ、調理容器の容器底部の温度を検出する鍋底温度センサと、加熱コイルの出力制御や調理時間の計測を行う動作制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、動作制御部は、湯沸し運転として、調理容器の加熱が開始された後の鍋底温度センサの検出温度の変化度合に基づいて容器底部の反り量を判定し、調理時間として前記反り量に対応した湯沸し時間を設定し、調理容器の加熱が開始された後、所定の時点から湯沸し時間が経過するまで加熱コイルの出力を所定の設定出力で維持し、湯沸し時間が経過した時点で所定の調理終了処理を行
い、反り量判定動作として、調理容器の加熱中における第1期間の前記変化度合を検出し、第1期間の前記変化度合が小さいほど容器底部の反り量が大きいと判定する第1反り量判定動作と、調理容器の加熱中における第1期間より後の第2期間の前記変化度合を検出し、第2期間の前記変化度合が小さいほど容器底部の反り量が大きいと判定する第2反り量判定動作とをそれぞれ実行し、前記第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の判定結果に基づいて容器底部の反り量を判定することを特徴とするものである。
【0008】
このものでは、湯沸し運転において、加熱コイルの出力は、所定の時点から湯沸し時間が経過するまで変更されずに設定出力で維持されるから、その間、調理容器を高温で一定的に加熱し続けることができる。従って、たとえ容器底部の反り量が大きくても、被加熱物が目標温度に達するまでの時間が冗長にならない。
【0010】
このものでは、調理容器の加熱中における第1期間の鍋底温度センサの検出温度の変化度合だけでなく、上記第1期間の変化度合と、その後の第2期間の変化度合との両方によって容器底部の反り量を判定するから、反り判定の正確性が高く、より適切な湯沸し時間が設定される。従って、被加熱物が必要以上に加熱され続けたり、加熱不足になったりするのを確実に防止することが可能である。
【0011】
好ましくは、上記誘導加熱調理器において、前記第1反り量判定動作又は第2反り量判定動作の少なくとも何れか一方で前記反り量が基準より小さいと判定された場合は、さらに第2期間より後の第3期間において前記検出温度が所定の算出開始温度から算出終了温度まで上昇するのに要した算出用昇温時間を検出し、前記算出用昇温時間を用いて湯沸し時間を算出する。
【0012】
このものでは、第1反り量判定動作又は第2反り量判定動作の少なくとも何れか一方でも容器底部の反り量が基準より小さいと判定された場合は、被加熱物の実際の温度状態と鍋底温度センサの検出温度との誤差が小さい状態であるとして、さらに第2期間より後の沸騰温度により近い第3期間において、鍋底温度センサの検出温度が算出開始温度から算出終了温度まで上昇するのに要した時間(算出用昇温時間)、即ち、被加熱物の温度の上昇度合を検出し、その上昇度合に応じて湯沸し時間が決定される。これにより、被加熱物の実際の温度状態に合わせてより正確に調理終了処理を行うことができる。
【0013】
好ましくは、上記誘導加熱調理器において、前記第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の何れにおいても前記反り量が基準より小さいと判定されなかった場合は、第2反り量判定動作にて第2期間の前記変化度合として検出された、前記検出温度が所定の判定開始温度から判定終了温度まで上昇するのに要した判定用昇温時間を用いて湯沸し時間を算出する。
【0014】
第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の何れにおいても容器底部の反り量が基準より小さいと判定されなかった場合、即ち、反り量が基準以上であると判定された場合、その時点で既に被加熱物の実際の温度は沸騰温度に近い可能性がある。そこで、本発明では、上記のように反り量が基準以上であると判定された場合は、先に第2期間において容器底部の反り量を判定するのに検出された判定用昇温時間に応じて湯沸し時間を決定する。従って、反り量の判定が終了してから新たに被加熱物の温度の上昇度合を検出し、その上昇度合に基づいて湯沸し時間を算出するよりも、早期に調理終了処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、容器底部の反り量にかかわらず、早期に湯沸し運転を完了させることができるから、湯沸し時の使い勝手が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る誘導加熱調理器1は、キッチンのカウンタトップ5に開設された取付口50に落とし込み状態で装着される所謂ビルトイン式のIHコンロであり、器具本体10の上面を構成する天板11の下面側には、天板上面11Aの所定位置に載置される鍋ややかん等の調理容器Pを電磁誘導により加熱する単数又は複数の加熱コイル21が設けられている。尚、本明細書では、カウンタトップ5の前方側に面して配置される器具本体10の前面13を誘導加熱調理器1の正面とし、器具本体10を正面側から見たときの奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0019】
加熱コイル21は、主制御回路100に組み込まれた図示しない電源回路に電気配線を通じて接続されており、上記電源回路から所定の高出力電力が供給されることで、加熱コイル21の上方に載置された調理容器Pに電磁誘導を生じさせる。
【0020】
天板11の下面側における加熱コイル21の中央部に設けられた空間には、加熱コイル21によって加熱される調理容器Pの底部(以下、「容器底部」という)P1の温度を検出する鍋底温度センサ22が設けられている。尚、容器底部P1の温度を適切に検出可能な位置であれば、鍋底温度センサ22は、加熱コイル21の側方に設けられてもよい。
【0021】
天板11は、耐熱性および耐衝撃性の高いセラミックガラスで形成されており、調理容器Pは、天板上面11Aにおける加熱コイル21の上方対向位置に直接載置される。鍋底温度センサ22は、天板下面11Bに接触した状態で設けられ、調理容器Pから天板11を介して伝達される温度を検出する。尚、容器底部P1の温度を適切に検出可能であれば、鍋底温度センサ22は、天板下面11Bに接触していない状態で設けられてもよい。
【0022】
天板11の前方には、誘導加熱調理器1の主電源のオンオフを操作するための電源スイッチ(図示せず)、加熱コイル21の出力を操作するためのコイル操作スイッチ23、加熱コイル21による被加熱物Fの調理条件を設定操作するための設定操作スイッチ24、加熱コイル21の出力状態や上記調理条件などの情報を表示する情報表示部25等からなる操作パネル14が設けられている。さらに、器具本体10の内部には、加熱コイル21の出力状態や上記調理条件などの情報を音声にて出力する音声出力部26が設けられている。尚、音声出力部26は、上記各情報をブザー音にて出力するものとしてもよい。
【0023】
図示しないが、操作パネル14には、設定操作スイッチ24として、湯沸しや煮物、揚げ物、炊飯など複数の調理モードの中から一つの調理モードを選択設定するための調理モード設定スイッチ、調理時間を手動設定するためのタイマ設定スイッチ、加熱温度を手動設定するための温度設定スイッチ等を備えており、これら各設定操作スイッチ24を用いて被加熱物Fの種々の調理条件を設定入力できる。
【0024】
器具本体10の内部には、加熱コイル21の出力制御や調理時間の計測など誘導加熱調理器1全体の動作を制御する動作制御部として主制御回路100が組み込まれている。上記電源スイッチやコイル操作スイッチ23、設定操作スイッチ24、情報表示部25、音声出力部26、加熱コイル21、鍋底温度センサ22等の電装部は何れも、電気配線を通じて主制御回路100に接続されている。主制御回路100の電源回路は、図示しない外部電源に接続されており、上記各電装部の駆動電力は、外部電源から電源回路を通じて供給される。
【0025】
主制御回路100は、電源スイッチのオンオフ操作に応じて誘導加熱調理器1の主電源をオンオフさせる電源制御部、加熱コイル21の出力を制御する加熱制御部、情報表示部25および音声出力部26の出力を制御する情報出力制御部、選択された調理モードの調理時間を設定する調理時間設定部、調理モードや手動により設定された調理時間を計測する計時部、上記調理時間に応じて所定の調理終了処理を行う調理制御部、鍋底温度センサ22の検出温度(以下、「鍋底検出温度」という)T1の変化度合に基づいて容器底部P1の反り量を判定する反り量判定部、鍋底検出温度T1が所定の制限温度Ts以上である場合に湯沸しの調理モード(湯沸しモード)の設定を禁止する湯沸しモード制限部等の回路構成を有している。
【0026】
調理制御部は、湯沸しモードが選択設定された場合に、調理時間として上記反り量に対応する湯沸し時間H1,H2を設定し、湯沸し時間H1,H2が経過した時点で所定の調理終了処理を行う湯沸し運転の実行部を有している。
【0027】
反り量判定部は、調理容器Pの加熱中における所定時間あたりの鍋底検出温度T1の温度上昇値ΔTを監視する温度上昇値監視部と、調理容器Pの加熱中に鍋底検出温度T1が所定の判定開始温度Taから判定終了温度Tbまで上昇するのに要した判定用昇温時間ΔS1を監視する判定用昇温時間監視部と、上記温度上昇値ΔTが小さいほど容器底部P1の反り量が大きいと判定する第1反り量判定動作の実行部と、上記判定用昇温時間ΔS1が長いほど容器底部P1の反り量が大きいと判定する第2反り量判定動作の実行部とを有している。
【0028】
調理時間設定部は、加熱コイル21がオンにされた時点の鍋底検出温度T1に対応する湯沸し開始温度T2を複数段階の基準温度の中から選定する開始温度設定部と、湯沸し時間H1,H2を算出するための定数A1,B1,A2,B2を、上記湯沸し開始温度T2や第1反り量判定動作の判定結果、第2反り量判定動作の判定結果に応じて選定する定数選定部と、調理容器Pの加熱中に鍋底検出温度T1が所定の算出開始温度Tcから算出終了温度Tdまで上昇するのに要した算出用昇温時間ΔS2を監視する算出用昇温時間監視部と、上記定数A1,B1および算出用昇温時間ΔS2を用いて湯沸し時間H1を算出する第1の湯沸し時間算出部と、上記定数A2,B2および判定用昇温時間ΔS1を用いて湯沸し時間H2を算出する第2の湯沸し時間算出部とを有している。
【0029】
上記誘導加熱調理器1による湯沸し運転時の制御動作を、
図2から
図4のフローチャートに従って説明する。
【0030】
図2に示すように、誘導加熱調理器1の主電源がオンにされた状態のときに、鍋底検出温度T1が制限温度Ts(ここでは、50℃)未満でない場合、即ち、容器底部P1の温度が既に制限温度Ts以上である場合は(ST1のステップでNo)、容器底部P1の温度が制限温度Ts未満である場合とその後の温度上昇度合が異なるため、この状態から湯沸し運転を開始しても、被加熱物Fの沸騰を精度良く適時に検出できない可能性がある。従って、この場合は、設定操作スイッチ24による湯沸しモードの選択操作の受け付けを拒否する(ST2)。
【0031】
一方、誘導加熱調理器1の主電源がオンにされた状態のときに、鍋底検出温度T1が制限温度Ts未満であれば(ST1のステップでYes)、湯沸しモードの設定を許可する(ST3)。そして、設定操作スイッチ24の操作によって湯沸しモードが選択され、対応するコイル操作スイッチ23にて加熱コイル21のオン操作がなされた場合は(ST4のステップでYes)、加熱コイル21の出力は湯沸しモードで設定された所定の高出力に維持したまま、上記オン操作がなされて調理容器Pの加熱が開始された時点からの経過時間、即ち、調理時間の計測を開始すると共に、その時点における鍋底検出温度T1に対応する湯沸し開始温度T2を設定する(ST5)。
【0032】
具体的には、例えば上記オン操作がなされた時点の鍋底検出温度T1が「8℃」であれば、湯沸し開始温度T2は「10℃」に設定され、上記オン操作がなされた時点の鍋底検出温度T1が「12℃」であれば、湯沸し開始温度T2は「20℃」に設定され、上記オン操作がなされた時点の鍋底検出温度T1が「25℃」であれば、湯沸し開始温度T2は「30℃」に設定される。即ち、湯沸し開始温度T2は、上記オン操作がなされた時点の鍋底検出温度T1の一の位を繰り上げた値に設定される。
【0033】
上記ST5のステップの実行後、第1反り量判定動作および第2反り量判定動作を行う(ST6)。詳述すると、
図3に示すように、第1反り量判定動作では、まず、鍋底検出温度T1が上記のように設定された湯沸し開始温度T2に達したか否かを監視する(ST611)。そして、鍋底検出温度T1が湯沸し開始温度T2に達すれば(ST611のステップでYes)、その時点から所定時間(ここでは、60秒間)が経過するのを監視する(ST612)。尚、上記第1反り量判定動作を行っている間も、加熱コイル21の出力は、変更されずに高出力のままで維持される。
【0034】
鍋底検出温度T1が湯沸し開始温度T2に達してから上記所定時間が経過すれば(ST612のステップでYes)、その時点における鍋底検出温度T1から湯沸し開始温度T2を差し引いた値、即ち、上記所定時間あたりの鍋底検出温度T1の温度上昇値ΔTを検出し、その温度上昇値ΔTの大小に基づいて容器底部P1の第1反り量を判定する(ST613〜ST615)。
【0035】
具体的には、温度上昇値ΔTが第1の基準上昇値D1(ここでは、20deg)よりも、また第2の基準上昇値D2(ここでは、30deg)よりも大きければ(ST614のステップでYes、ST615のステップでYes)、第1反り量は「小」と判定され(ST616)、温度上昇値ΔTが第1の基準上昇値D1より大きいが、第2の基準上昇値D2以下であれば(ST614のステップでYes、ST615のステップでNo)、第1反り量は「中」と判定され(ST617)、温度上昇値ΔTが第2の基準上昇値D2以下であれば(ST614のステップでNo)、第1反り量は「大」と判定される(ST618)。
【0036】
図4に示すように、第2反り量判定動作では、まず、鍋底検出温度T1が判定開始温度Ta(ここでは、40℃)に達したか否かを監視する(ST621)。そして、鍋底検出温度T1が判定開始温度Taに達すれば(ST621のステップでYes)、その時点からの経過時間の計測を開始すると共に、鍋底検出温度T1が判定終了温度Tb(ここでは、60℃)に達するのを監視する(ST622〜ST623)。尚、上記第2反り量判定動作を行っている間も、加熱コイル21の出力は、変更されずに高出力のままで維持される。
【0037】
鍋底検出温度T1が判定開始温度Taから判定終了温度Tbに達すれば(ST623のステップでYes)、その時点における経過時間、即ち、鍋底検出温度T1が判定開始温度Taから判定終了温度Tbまで昇温するのに要した判定用昇温時間ΔS1の長短に基づいて容器底部P1の第2反り量を判定する(ST624〜ST625)。
【0038】
具体的には、判定用昇温時間ΔS1が第1の基準上昇時間E1(ここでは、40秒間)以下であれば(ST624のステップでNo)、第2反り量は「小」と判定され(ST626)、判定用昇温時間ΔS1が第1の基準上昇時間E1より長いが、第2の基準上昇時間E2(ここでは、60秒間)以下であれば(ST624のステップでYes、ST625のステップでNo)、第2反り量は「中」と判定され(ST627)、判定用昇温時間ΔS1が第1の基準上昇時間E1よりも、また第2の基準上昇時間E2よりも長ければ(ST624のステップでYes、ST625のステップでYes)、第2反り量は「大」と判定される(ST628)。
【0039】
図2に示すように、ST6のステップで行われた第1反り量判定動作の判定結果(以下、「第1反り判定」という)又は第2反り量判定動作の判定結果(以下、「第2反り判定」という)の少なくとも何れか一方が「小」であった場合は(ST7又はST8のステップでYes)、被加熱物Fの容量(水量)に対応するパラメータとして、鍋底検出温度T1がさらに算出開始温度Tcから算出終了温度Tdに達するまでに要した算出用昇温時間ΔS2を検出する。具体的には、上記ST621からST623までのステップと同様、鍋底検出温度T1が算出開始温度Tc(ここでは、60℃)に達すれば(ST9のステップでYes)、その時点からの経過時間の計測を開始し、さらに鍋底検出温度T1が算出終了温度Td(ここでは、85℃)に達するのを監視する(ST10〜ST11)。
【0040】
鍋底検出温度T1が第2温度Tdに達すれば(ST11のステップでYes)、その時点における経過時間、即ち、鍋底検出温度T1が算出開始温度Tcから算出終了温度Tdまで昇温するのに要した算出用昇温時間ΔS2と、湯沸し開始温度T2に対応する定数A1,B1とを用いて、反り量が「小」である場合の湯沸し時間(以下、「第1湯沸し時間」という)H1を以下の式(1)により算出する(ST12)。
【0041】
H1=A1×ΔS2+B1 ・・・(1)
【0042】
尚、少なくとも何れか一方の反り判定が「小」とされた場合の定数A1,B1は、反り量が最小の調理容器Pを用いて試験的に実測した算出用昇温時間ΔS2と沸騰時間との関係を示す複数のサンプルデータに基づいて予め設定されている(
図5参照)。また、第1反り量判定動作および第2反り量判定動作は、同時平行して行われ、そのうちの何れか一方でも反り判定が「小」とされた場合は、他方の反り量判定動作の判定結果を待たずに、上記ST11のステップが実行される。
【0043】
その後、調理時間が第1湯沸し時間H1に達すれば(ST13のステップでYes)、調理終了処理として、加熱コイル21の出力を所定の低出力(ここでは、最低出力)に制限すると共に、情報表示部25および音声出力部26から被加熱物Fが沸騰状態になった旨、即ち、湯沸しが完了した旨を報知させ、湯沸し運転を終了する(ST14)。
【0044】
一方、上記ST6のステップにて、第1反り判定および第2反り判定の何れも「小」でなかった場合、即ち、「中」や「大」であった場合は(ST7のステップでNo、ST8のステップでNo)、上記第2反り判定に用いた判定用昇温時間ΔS1と、湯沸し開始温度T2に対応する定数A2,B2とを用いて、反り量が「小」でない場合の湯沸し時間(以下、「第2湯沸し時間」という)H2を以下の式(2)により算出する(ST15)。
【0045】
H2=A2×ΔS1+B2 ・・・(2)
【0046】
尚、何れの反り判定も「小」とされなかった場合の定数A2,B2は、反り量が異なる複数種類の調理容器Pを用いて試験的に実測した判定用昇温時間ΔS1と沸騰時間との関係を示す複数のサンプルデータに基づいて予め設定されている(
図6参照)。
【0047】
その後、調理時間が第2湯沸し時間H2に達すれば(ST16のステップでYes)、調理終了処理として、加熱コイル21の出力を低出力(ここでは、最低出力)に調整すると共に、情報表示部25および音声出力部26から被加熱物Fが沸騰状態になった旨、即ち、湯沸しが完了した旨を報知させ、湯沸し運転を終了する(ST14)。
【0048】
このように、上記誘導加熱調理器1によれば、湯沸し運転において、容器底部P1の反り量を判定している間も、加熱コイル21の出力は、湯沸し時間H1,H2が経過するまで変更されずに設定出力(高出力)で維持されるから、その間、調理容器Pを高温で一定的に加熱し続けることができる。従って、容器底部P1の反り量にかかわらず、被加熱物Fが目標温度に達するまでの時間が冗長にならず、早期に湯沸し運転を完了させることができる。よって、使い勝手が向上する。
【0049】
しかも、このものでは、湯沸し運転を開始すれば、容器底部P1の反り量に対応した湯沸し時間H1,H2が設定され、湯沸し時間H1,H2が経過した時点で調理終了処理を行う(ここでは、加熱コイル21の出力を低出力に制限すると共に、情報表示部25および音声出力部26から湯沸し完了の報知を行う)から、被加熱物Fが必要以上に加熱され続けたり、加熱不足になったりするのも防止できる。よって、使い勝手が一層向上する。
【0050】
さらに、このものでは、加熱コイル21の出力開始後の鍋底検出温度T1の温度上昇値ΔTの大小、或いは、鍋底検出温度T1が判定開始温度Taから判定終了温度Tbまで上昇するのに要した判定用昇温時間ΔS1の長短の何れか一方だけでなく、温度上昇値ΔTおよび判定用昇温時間ΔS1の両方によって容器底部P1の反り量を判定するから、反り判定の正確性が高く、より適切な湯沸し時間H1,H2が設定される。よって、被加熱物Fが必要以上に加熱され続けたり、加熱不足になったりするのをより確実に防止することができ、使い勝手がより一層向上する。
【0051】
また、このものでは、第1反り量判定動作又は第2反り量判定動作の少なくとも何れか一方でも容器底部P1の反り量が「小」と判定された場合は、被加熱物Fの実際の温度状態と鍋底検出温度T1との誤差が小さい状態であるとして、さらに鍋底検出温度T1が算出開始温度Tcから沸騰温度により近い算出終了温度Tdまで上昇するのに要した算出用昇温時間ΔS2、即ち、被加熱物Fの温度の上昇度合を検出し、その上昇度合に応じて第1湯沸し時間H1が決定されるから、被加熱物Fの実際の温度状態に合わせてより正確に調理終了処理を行うことができる。
【0052】
一方、第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の何れにおいても容器底部P1の反り量が「小」と判定されなかった場合は、被加熱物Fの実際の温度状態と鍋底検出温度T1との誤差が大きい状態であるとして、先に第2反り量判定動作にて容器底部P1の反り量を判定するのに検出された判定用昇温時間ΔS1に応じて第2湯沸し時間H2を決定するから、反り量の判定が終了してから新たに被加熱物Fの温度の上昇度合を検出し、その上昇度合に基づいて第2湯沸し時間H2を算出するよりも、早期に調理終了処理を行うことができる。
【0053】
尚、上記実施形態では、調理終了処理として、加熱コイル21の出力を低出力に制限すると共に、情報表示部25および音声出力部26から湯沸し完了の報知を行い、使用者に対して加熱コイル21の出力停止操作を促すように構成されたものを説明したが、加熱コイル21の出力を自動停止させると共に、情報表示部25および音声出力部26から湯沸し完了の報知を行う構成としてもよいし、加熱コイル21の出力を制限しないで、情報表示部25および音声出力部26から湯沸し完了の報知のみ行う構成としてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、被加熱物Fの容量に対応するパラメータとして、鍋底検出温度T1が算出開始温度Tcから算出終了温度Tdまで上昇するのに要した算出用昇温時間ΔS2を検出するものを説明したが、鍋底検出温度T1が算出開始温度Tcに達した後の単位時間毎(例えば、5秒毎)の温度上昇値ΔTpを検出し、所定時間(例えば、25秒間)内の上記温度上昇値ΔTpのうち、最大値と最小値を除いた他の温度上昇値ΔTpの合計を、被加熱物Fの容量に対応するパラメータとして用いるものとしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、加熱コイル21のオン操作がなされた時点、即ち、調理容器Pの加熱が開始された時点から湯沸し時間H1,H2が経過するまで、加熱コイル21の出力を設定出力で維持するように構成されたものを説明したが、加熱コイル21のオン操作がなされた後、所定時間が経過した時点(例えば、鍋底検出温度T1が湯沸し開始温度T2に達した時点)から湯沸し時間H1,H2が経過するまで、加熱コイル21の出力を設定出力で維持するように構成されたものとしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、加熱コイル21のオン操作がなされた時点からの経過時間を調理時間として監視し、上記調理時間が湯沸し時間H1,H2に達すれば、所定の調理終了処理を実行するように構成されたものを説明したが、加熱コイル21のオン操作がなされた後、所定時間が経過した時点(例えば、鍋底検出温度T1が湯沸し開始温度T2に達した時点)からの経過時間を調理時間として監視し、上記調理時間が湯沸し時間H1,H2に達すれば、所定の調理終了処理を実行するように構成されたものとしてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、第1反り量判定動作および第2反り量判定動作を同時に平行して行い、そのうちの何れか一方でも反り判定が「小」とされた場合は、他方の反り量判定動作の判定結果を待たずに第1湯沸し時間H1を算出するように構成されたものを説明したが、第1反り量判定動作として、調理容器の加熱中における第1期間の鍋底検出温度T1の変化度合に基づいて第1反り判定を行った後、第2反り量判定動作として、第1期間より後の第2期間の鍋底検出温度T1の変化度合に基づいて第2反り判定を行い、そのうちの少なくとも何れか一方の反り判定が「小」とされた場合に、第1湯沸し時間H1を算出するように構成されたものとしてもよい。
【0058】
詳述すると、
図2に示すST6のステップにおいて、まず、第1期間における鍋底検出温度T1の変化度合として、鍋底検出温度T1が上記のように設定された湯沸し開始温度T2に達してから所定時間(例えば、60秒間)が経過するまでの温度上昇値ΔTを検出する。或いは、鍋底検出温度T1が湯沸し開始温度T2に達してからさらに所定温度(例えば、制限温度Tsより低い40℃)まで上昇するのに要した経過時間に基づいて昇温時間ΔSを検出する。その結果、温度上昇値ΔTが大きければ(或いは昇温時間ΔSが短ければ)第1反り量は小さいと判定し、温度上昇値ΔTが小さければ(或いは昇温時間ΔSが長ければ)第1反り量は大きいと判定する(第1反り量判定動作)。
【0059】
次に、第1期間が終了した後の第2期間における鍋底検出温度T1の変化度合として、鍋底検出温度T1が判定開始温度Ta(例えば、40℃)に達してからさらに判定終了温度Tb(例えば、60℃)まで上昇するのに要した経過時間に基づいて判定用昇温時間ΔS1を検出する。その結果、判定用昇温時間ΔS1が短ければ第1反り量は小さいと判定し、温度上昇値ΔTが長ければ第1反り量は大きいと判定する(第2反り量判定動作)。
【0060】
そして、上記第1反り量判定動作又は第2反り量判定動作の判定結果の少なくとも何れか一方が「小」であった場合は、さらに第2期間が終了した後の第3期間における鍋底検出温度T1の変化度合として、鍋底検出温度T1が算出開始温度Tc(例えば、60℃)に達してからさらに算出終了温度Td(例えば、85℃)まで上昇するのに要した算出用昇温時間ΔS2を検出し、上記実施の形態と同様、第1湯沸し時間H1を算出する。
【0061】
一方、上記第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の判定結果の何れもが「小」でなかった場合は、第2反り量判定動作において先に第2期間の鍋底検出温度T1の変化度合を判定する際に検出された判定用昇温時間ΔS1を用いて、上記実施の形態と同様、第2湯沸し時間H2を算出する。
【0062】
このように、加熱開始初期である第1期間(ここでは、湯沸し開始温度T2からの所定時間、或いは、湯沸し開始温度T2から40℃まで)の鍋底検出温度T1の変化度合と、その後の第2期間(ここでは、40℃から60℃まで)の鍋底検出温度T1の変化度合との両方によって容器底部P1の反り量を判定するから、上記実施の形態と同様、反り量をより正確に判定できる。よって、被加熱物Fが必要以上に加熱され続けたり、加熱不足になったりするのを確実に防止することができる。
【0063】
また、第1反り量判定動作又は第2反り量判定動作の少なくとも何れか一方でも容器底部P1の反り量が「小」と判定された場合は、さらに第2期間より後の沸騰温度により近い第3期間(ここでは、60℃から85℃まで)の鍋底検出温度T1の変化度合を検出し、その変化度合に応じて第1湯沸し時間H1が決定されるから、上記実施の形態と同様、被加熱物Fの実際の温度状態に合わせてより正確に調理終了処理を行うことができる。
【0064】
一方、第1反り量判定動作および第2反り量判定動作の何れにおいても容器底部P1の反り量が「小」と判定されなかった場合は、その時点で既に被加熱物Fの実際の温度が沸騰温度に近い可能性があるから、新たに第2湯沸し時間H2を算出するための鍋底検出温度T1の変化度合を検出しないで、先に第2期間において容器底部P1の反り量を判定するのに検出された判定用昇温時間ΔS1に応じて第2湯沸し時間H2を決定する。よって、上記実施の形態と同様、早期に調理終了処理を行うことができる。
【0065】
本発明は、湯沸し水量が比較的少ない(例えば、1リットル〜2リットル)一般家庭用の誘導加熱調理器において特に有用である。上記のような湯沸し水量であれば、水量が異なっても十分な温度変化を検出できるから、正確に反り量を判定することが可能である。
【0066】
また、本発明は、キッチンのカウンタトップ5に埋設して使用されるビルトインコンロに限らず、キッチンのテーブルに載置して使用されるテーブルコンロや、所望の場所へ持ち運んで使用可能な小型の卓上コンロにも適用できる。