(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制限通路を画成し、かつ前記第1液室に面する障壁、および前記制限通路を画成し、かつ前記第2液室に面する障壁のうち、前記第1障壁の厚さは、他の部分の厚さより厚くなっていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、
図1から
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、防振装置10は、振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11と、振動発生部および振動受部のいずれか他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに弾性的に連結する弾性体13と、第1取付部材11内の液室19を後述する主液室(第1液室)14と副液室(第2液室)15とに区画する仕切部材16と、を備える液体封入型の防振装置である。
【0017】
以下、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、軸方向に沿う第2取付部材12側を上側、仕切部材16側を下側という。また、防振装置10を軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O周りに周回する方向を周方向という。
なお、第1取付部材11、第2取付部材12、および弾性体13はそれぞれ、平面視した状態で円形状若しくは円環状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配置されている。
【0018】
この防振装置10が例えば自動車に装着される場合、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結され、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。なお、第1取付部材11を振動発生部に連結し、第2取付部材12を振動受部に連結してもよい。
【0019】
第2取付部材12は、軸方向に延在する柱状部材であり、下端部が下方に向けて膨出する半球面状に形成されている。第2取付部材12において、半球面状の下端部より上方に位置する部分に、径方向の外側に向けて突出する鍔部12aが形成されている。第2取付部材12には、その上端面から下方に向かって延びるねじ孔12bが穿設され、このねじ孔12bにエンジン側の取付け具となるボルト(図示せず)が螺合される。第2取付部材12は、弾性体13を介して、第1取付部材11の上端開口部に配置されている。
【0020】
弾性体13は、第1取付部材11の上端開口部と第2取付部材12の下部の外周面とにそれぞれ加硫接着されて、これらの間に介在させられたゴム体であって、第1取付部材11の上端開口部を上側から閉塞している。弾性体13の上端部には、鍔部12aにおける下面、外周面、および上面を一体に覆う第1ゴム膜13aが一体に形成されている。弾性体13の下端部には、第1取付部材11の内周面を液密に被覆する第2ゴム膜13bが一体に形成されている。なお、弾性体13としては、ゴム以外にも合成樹脂等からなる弾性体を用いることも可能である。
【0021】
第1取付部材11は、円筒状に形成され、図示されないブラケットを介して振動受部としての車体等に連結される。第1取付部材11の下端開口部は、ダイヤフラム20により閉塞されている。
ダイヤフラム20は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料からなり、有底円筒状に形成されている。ダイヤフラム20の外周面は、ダイヤフラムリング21の内周面に加硫接着されている。ダイヤフラムリング21は、第1取付部材11の下端部内に、第2ゴム膜13bを介して嵌合されている。ダイヤフラムリング21は、第1取付部材11の下端部内に加締められて固定されている。ダイヤフラム20およびダイヤフラムリング21それぞれの上端開口縁は、仕切部材16の下面に液密に当接している。
【0022】
そして、このように第1取付部材11にダイヤフラム20が取り付けられたことにより、第1取付部材11内が、弾性体13とダイヤフラム20とにより液密に封止された液室19となっている。この液室19に液体Lが封入(充填)されている。
なお図示の例では、ダイヤフラム20の底部が、外周側で深く中央部で浅い形状になっている。ただし、ダイヤフラム20の形状としては、このような形状以外にも、従来公知の種々の形状を採用することができる。
【0023】
液室19は、仕切部材16によって主液室14と副液室15とに区画されている。主液室14は、弾性体13の下面13cを壁面の一部に有し、弾性体13と第1取付部材11の内周面を液密に覆う第2ゴム膜13bと仕切部材16とによって囲まれた空間であり、弾性体13の変形によって内容積が変化する。副液室15は、ダイヤフラム20と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、ダイヤフラム20の変形によって内容積が変化する。このような構成からなる防振装置10は、主液室14が鉛直方向上側に位置し、副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる、圧縮式の装置である。
【0024】
仕切部材16の内部には、例えばゴム材料等で形成されたメンブラン41が収容された収容室42が形成されている。メンブラン41は、表裏面が軸方向を向く板状に形成されている。仕切部材16には、収容室42と主液室14とを連通する複数の第1連通孔42aと、収容室42と副液室15とを連通する複数の第2連通孔42bと、が形成されている。第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各個数は同じになっている。第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各内径は同じになっている。第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各流路長は同じになっている。複数の第1連通孔42aはそれぞれ、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。複数の第2連通孔42bはそれぞれ、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。複数の第1連通孔42a、および複数の第2連通孔42bは各別に、メンブラン41および収容室42を挟んで軸方向で対向している。
【0025】
収容室42には、
図3に示されるように、メンブラン41の外周縁部41aを軸方向(厚さ方向)の両側から支持する支持部43が配設されている。メンブラン41の外周縁部41aは、表裏面が軸方向を向く平坦面となっている。支持部43は、収容室42を画成する壁面のうち、上側に位置して下方を向く上壁面、および下側に位置して上方を向く下壁面の双方に形成されている。支持部43は、周方向に延びる突条状に形成され、メンブラン41の外周縁部41aを全周にわたって支持している。支持部43は、メンブラン41の外周縁部41aを全周にわたって連続して支持している。なお、支持部43は、メンブラン41の外周縁部41aに対して、軸方向の両側から当接してもよいし、当接せず近接してもよい。
【0026】
メンブラン41において、外周縁部41aに対してこの外周縁部41aの外側から連なる部分に、軸方向の両側に突出した係止突起41cが形成されている。係止突起41cは、メンブラン41の外周縁部41aに沿ってその全周にわたって連続して配置されている。係止突起41cにおける軸方向の外端部は、メンブラン41において最も軸方向の外側に位置している。
【0027】
収容室42を画成する上壁面、および下壁面のうちの少なくとも一方において、支持部43に収容室42の外側から連なる部分に、メンブラン41の係止突起41cが係止される係止溝45が形成されている。係止溝45は、支持部43の外周面に沿ってその全周にわたって連続して配置されている。係止溝45は、収容室42における上壁面および下壁面の双方に形成され、各係止溝45は軸方向で互いに対向している。係止溝45は、収容室42における外周縁に配置されている。
【0028】
軸方向から見た平面視で、メンブラン41および収容室42は、
図2に示されるように、互いに同等の形状で同等の大きさに形成されている。メンブラン41および収容室42には、平面視で外側に向けて尖る角部41d、42cが形成されている。角部41d、42cは、軸方向から見た平面視で外側に向けて突の曲線状を呈する。角部41d、42cは、軸方向から見た平面視で、メンブラン41および収容室42の各図心に対して外側に向けて尖っている。
【0029】
図示の例では、メンブラン41および収容室42は、軸方向から見た平面視で、内周縁と、内周縁を径方向の外側から囲う外周縁と、内周縁の両端と外周縁の両端とを各別に連結する角部41d、42cと、を備えた三日月形状を呈する。前記平面視において、メンブラン41および収容室42の外周縁は、周方向に延びるとともに、仕切部材16の外周部に位置し、メンブラン41および収容室42の内周縁における中央部は、仕切部材16の中央部に位置している。
なお、メンブラン41および収容室42の平面視形状は、例えば角形状、若しくは星形状にする等、適宜変更してもよい。
【0030】
図2および
図3に示されるように、メンブラン41において、外周縁部41aのうち少なくとも角部41dに位置する部分に対して、この外周縁部41aの内側から連なる部分に、伸縮変形可能な伸縮部41bが形成されている。伸縮部41bはメンブラン41の厚さ方向に屈曲している。伸縮部41bは、収容室42を画成する壁面に向けて尖った頂部41eを備える。伸縮部41bは、メンブラン41に1つ形成され、上方に向けて屈曲している。頂部41eは、収容室42の上壁面に向けて尖っている。
【0031】
図示の例では、伸縮部41bは、メンブラン41の外周縁部41aに沿ってその全周にわたって連続して配置されている。
なお、伸縮部41bをメンブラン41に複数連ねて配置し蛇腹状にしてもよい。また、伸縮部41bは、下方に向けて屈曲してもよい。また例えば、伸縮部41bは、メンブラン41において、外周縁部41aのうち角部41dに位置する部分に対して、この外周縁部41aの内側から連なる部分に限って配設してもよい。
ここで、メンブラン41において、伸縮部41bより内側に位置する本体部の上下面に複数の突起体が設けられている。伸縮部41bは、図示の例に代えて例えば、メンブラン41の本体部うち、複数の突起体を除く部分の厚さより薄肉に形成され、かつ軸方向に直交する方向に延びる平板状に形成されてもよい。
【0032】
収容室42を画成する壁面において、伸縮部41bの頂部41eと対向する部分に、逃げ凹部44が形成されている。図示の例では、伸縮部41bの頂部41eは、収容室42の上壁面と対向している。逃げ凹部44は、収容室42の上壁面および下壁面の双方に形成され、各逃げ凹部44は軸方向で互いに対向している。なお、逃げ凹部44は、収容室42の上壁面にのみ形成してもよい。逃げ凹部44は、伸縮部41bにおける幅方向の全域にわたって、軸方向で対向している。
逃げ凹部44は、収容室42の上壁面、および下壁面それぞれにおいて、支持部43に収容室42の内側から連なる部分に形成されている。逃げ凹部44は、支持部43の内周面に沿ってその全周にわたって連続して配置されている。逃げ凹部44の溝幅は、係止溝45の溝幅より広い。逃げ凹部44および係止溝45の各深さは互いに同等になっている。
【0033】
仕切部材16には、主液室14と副液室15とを連通する制限通路24が設けられている。制限通路24は、
図2に示されるように、主液室14に開口する第1連通部26、副液室15に開口する第2連通部27、および第1連通部26と第2連通部27とを連通する本体流路25を備えている。
【0034】
本体流路25は、第1連通部26および第2連通部27のうちのいずれか一方から、周方向の一方側に向けて延びる主流路31と、主流路31における周方向の一方側の端部から径方向の内側に向けて突出し、第1連通部26および第2連通部27のうちの一方側からの液体の流速に応じて液体の旋回流を形成する渦室34と、を備える。
図示の例では、主流路31は、第2連通部27から周方向の一方側に向けて延びている。渦室34と第1連通部26とが直結されている。
【0035】
主流路31は、仕切部材16の外周面に形成されている。主流路31は、仕切部材16に、中心軸線Oを中心とする360°未満の角度範囲に配置されている。図示の例では、主流路31は、仕切部材16に、中心軸線Oを中心とする180°を超える角度範囲に配置されている。
【0036】
主流路31は、中心軸線Oと同軸に配置され、上側に位置して表裏面が軸方向を向く環状の上側障壁35の下面と、中心軸線Oと同軸に配置され、下側に位置して表裏面が軸方向を向く環状の下側障壁36の上面と、上側障壁35および下側障壁36それぞれの内周縁同士を連結し、径方向の外側を向く溝底面37と、により画成されている。
上側障壁35は主液室14に面している。下側障壁36は副液室15に面しており、第2連通部27は、下側障壁36を軸方向に貫く1つの開口により構成されている。
【0037】
渦室34は、軸方向から見た平面視で円形状を呈し、渦室34の中心軸線は、軸方向に延びている。渦室34は、中心軸線Oから離れた位置に配置されている。渦室34は、軸方向に直交する方向に収容室42と並べられて配設され、仕切部材16の内部で収容室42と非連通となっている。渦室34の内容積および平面積は、収容室42の内容積および平面積より小さくなっている。
【0038】
渦室34の少なくとも一部は、軸方向から見た平面視で、メンブラン41および収容室42それぞれにおける2つの角部41d、42c同士の間に位置している。図示の例では、渦室34のうち、径方向の内側に位置する部分が、メンブラン41および収容室42それぞれにおける2つの角部41d、42c同士の間に位置している。
【0039】
渦室34は、第2連通部27から第1連通部26に向かう、周方向の他方側から一方側に向けた液体Lの流速に応じて液体Lの旋回流を生じさせる。渦室34は、後述する外連通部46から流入する液体Lの流速に応じて液体Lの旋回流を形成する。例えば、渦室34内に流入する液体Lの流速が低いときには、渦室34内での液体Lの旋回が抑制されるものの、液体Lの流速が高いときには、渦室34内で液体Lの旋回流が形成される。旋回流は、渦室34の中心軸線回りに旋回する。
【0040】
外連通部46は、前記平面視で直線状に延びている。外連通部46は、前記平面視で渦室34の内周面の接線方向に延びている。外連通部46の周方向の大きさは、渦室34の内径より小さい。外連通部46および渦室34それぞれの軸方向の大きさは、互いに同等になっている。外連通部46から渦室34に流入する液体Lは、外連通部46を流通して前記接線方向に整流された後、渦室34の内周面に沿って流動することで旋回する。
【0041】
渦室34を画成する壁面のうち、上側に位置して下方を向く上壁面は、上面が主液室14に面する第1障壁38の下面とされ、下側に位置して上方を向く下壁面は、下面が副液室15に面する第2障壁39の上面となっている。第1障壁38の下面、および第2障壁39の上面は、軸方向に直交する方向に延びる平坦面となっている。第1障壁38、および第2障壁39は、渦室34の中心軸線と同軸に配置された円板状となっている。
【0042】
第1連通部26は、主液室14に面する第1障壁38を貫く複数の細孔26aを備える。細孔26aは、第1障壁38を軸方向に貫いている。なお、細孔26aを、副液室15に面する下側障壁36に形成し、第2連通部27に備えさせてもよい。
【0043】
細孔26aは、
図3に示されるように、本体流路25側の第1部分26bと、主液室14側の第2部分26cと、を備える。第1部分26bの流路長は、第2部分26cの流路長より短い。第1部分26bおよび第2部分26cはそれぞれ、本体流路25側から主液室14側に向かうに従い漸次、縮径している。第1部分26bの内周面の軸方向に対する傾斜角度は、第2部分26cの内周面の軸方向に対する傾斜角度より大きい。第1部分26bおよび第2部分26cは、段差なく連なっている。細孔26aの内径は、本体流路25側の開口端で最大となり、主液室14側の開口端で最小となっている。
【0044】
複数の細孔26aはいずれも、主流路31の流路断面積より小さく、軸方向から見た平面視において渦室34の内側に配置されている。複数の細孔26aは、互いに同じ形状で同じ大きさとなっている。各細孔26aの内径の最小値は、第1連通孔42a、および第2連通孔42bの各内径より小さく、各細孔26aの内径の最大値は、第1連通孔42a、および第2連通孔42bの各内径より大きくなっている。各細孔26aの内径の平均値は、第1連通孔42a、および第2連通孔42bの各内径より小さくなっている。
【0045】
複数の細孔26aそれぞれにおける流路断面積の最小値の総和は、複数の第1連通孔42aの流路断面積の総和、および複数の第2連通孔42bの流路断面積の総和より小さくなっている。第1連通孔42aおよび第2連通孔42bそれぞれの流路断面積は、全長にわたって同等になっている。
複数の細孔26aそれぞれにおける流路断面積の最小値の総和は、主流路31の流路断面積の最小値の例えば1.5倍以上4.0倍以下としてもよい。図示の例では、主流路31の流路断面積は、全長にわたって同等となっている。細孔26aの流路断面積の最小値は、例えば25mm
2以下、好ましくは0.7mm
2以上17mm
2以下としてもよい。
【0046】
そして、本実施形態では、複数の細孔26aのうちの少なくとも1つは、流路長が内径の最小値の3倍以上となっている。好ましくは、複数の細孔26aのうちの半数以上は、流路長が内径の最小値の3倍以上となっている。図示の例では、複数の細孔26aの全てについて、流路長が、内径の最小値の3倍以上となっている。
なお、複数の細孔26aのうち、一部が他と大きさが異なっている場合、流路長が内径の最小値の3倍以上となっている細孔26aを少なくとも1つ含みつつ、複数の細孔26aの流路長の平均値が、複数の細孔26aそれぞれにおける内径の最小値の平均値の2.5倍以上4.5倍以下となっている。好ましくは、複数の細孔26aのうち、一部が他と大きさが異なっている場合、複数の細孔26aの流路長の平均値が、複数の細孔26aそれぞれにおける内径の最小値の平均値の3倍以上となっている。
また、複数の細孔26aのうちの少なくとも1つの流路長は、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各流路長より長い。図示の例では、複数の細孔26aの全てについて、流路長が、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各流路長より長い。
【0047】
制限通路24を画成し、かつ主液室14に面する上側障壁35、および第1障壁38、並びに、制限通路24を画成し、かつ副液室15に面する下側障壁36、および第2障壁39のうち、複数の細孔26aが形成された第1障壁38の厚さが、上側障壁35、下側障壁36、および第2障壁39の各厚さより厚くなっている。複数の細孔26aが位置する第1障壁38の厚さは、全域にわたって同等になっている。第1障壁38の上面および下面は軸方向に直交する方向に延びる平坦面となっている。
【0048】
ここで、仕切部材16は、上側部材47と下側部材48とが軸方向に重ねられて構成されている。上側部材47および下側部材48はそれぞれ、表裏面が軸方向を向く板状に形成されている。なお、仕切部材16は、全体が一体に形成されてもよい。
【0049】
下側部材48の外周面が溝底面37となっている。下側部材48の上面に、上側部材47の下面との間で収容室42を画成する第1凹部と、上側部材47の下面との間で渦室34を画成する第2凹部と、が形成されている。第1凹部の底面に、第2連通孔42bが形成されている。第2凹部の底壁が第2障壁39となっている。下側部材48の下端部の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、かつ第2連通部27が形成された環状の下側障壁36が形成されている。
【0050】
上側部材47において、下側部材48の下側障壁36と軸方向で対向する外周縁部が、上側障壁35となっている。上側部材47において、下側部材48の前記第1凹部と軸方向で対向する部分に、第1連通孔42aが形成されている。上側部材47において、下側部材48の前記第2凹部と軸方向で対向する部分に、第1連通部26が形成され、この部分が第1障壁38となっている。
【0051】
このような構成からなる防振装置10では、振動入力時に、両取付部材11、12が弾性体13を弾性変形させながら相対的に変位する。すると、主液室14の液圧が変動し、主液室14内の液体Lが制限通路24を通って副液室15に流入し、また、副液室15内の液体Lが制限通路24を通って主液室14に流入する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置10によれば、液体Lが、複数の細孔26aを通して制限通路24から主液室14に流入する際に、これらの細孔26aが形成された第1障壁38により圧力損失させられながら各細孔26aを流通するため、主液室14に流入する液体Lの流速を抑えることができる。しかも、液体Lが、単一の細孔26aではなく複数の細孔26aを流通するので、液体Lを複数に分岐させて流通させることが可能になり、個々の細孔26aを通過した液体Lの流速を低減させることができる。これにより、仮に防振装置10に大きな荷重(振動)が入力されたとしても、細孔26aを通過して主液室14に流入した液体Lと、主液室14内の液体Lと、の間で生じる流速差を小さく抑えることが可能になり、流速差に起因する渦の発生、およびこの渦に起因する気泡の発生を抑えることができる。
【0053】
また、仮に気泡が主液室14ではなく制限通路24で発生しても、液体Lを、複数の細孔26aを通過させることで、発生した気泡同士を、主液室14内で離間させることが可能になり、気泡が合流して成長するのを抑えて気泡を細かく分散させた状態に維持し易くすることができる。
以上のように、気泡の発生そのものを抑えることができる上、たとえ気泡が発生したとしても、気泡を細かく分散させた状態に維持し易くすることができるので、気泡が崩壊するキャビテーション崩壊が生じても、発生する異音を小さく抑えることができる。
【0054】
特に、複数の細孔26aのうちの少なくとも1つの流路長が、この細孔26aの内径の最小値の3倍以上と長くなっているので、細孔26aを通過する液体Lの圧力損失を高めることが可能になり、細孔26aを通して制限通路24から主液室14に流入する液体Lの流速を確実に抑えることができる。したがって、前述の流速差を確実に小さく抑えることが可能になり、この流速差に起因して、主液室14内で気泡が発生するのを確実に抑えることができる。
【0055】
また、第1障壁38の厚さが、上側障壁35、下側障壁36、および第2障壁39の各厚さより厚くなっているので、第1障壁38に多くの細孔26aを形成することで、複数の細孔26aを通して制限通路24から主液室14に流入する液体Lに生ずる圧力損失を高くしても、第1障壁38が破損しやすくなるのを抑制することができる。したがって、耐久性を確保しつつ、気泡の発生を確実に抑えることが可能な防振装置10が得られる。
【0056】
また、複数の細孔26aのうちの少なくとも1つの流路長が、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各流路長より長いので、細孔26aを通過する液体Lの圧力損失を確実に高めることが可能になり、前述の流速差に起因して、主液室14内で気泡が発生するのをより一層確実に抑えることができる。
【0057】
次に、以上説明した作用効果についての検証試験について説明する。
【0058】
図1〜
図3に示した防振装置10において、第1障壁38の厚さ、および細孔26aの長さのみを異ならせて、他の部位は全て同じにした防振装置を3種類用意し、各防振装置に軸方向のサイン波振動を加えたときに発生したキャビテーション崩壊に起因した衝撃波を、第1取付部材に装着した加速度センサで測定した。
各防振装置において、細孔26aの内径の最小値を1.6mmとしたうえで、細孔26aの流路長を3.0mm(内径の最小値の1.9倍)、5.0mm(内径の最小値の3.1倍)、および7.0mm(内径の最小値の4.4倍)と異ならせた。
この結果、細孔26aの流路長が3.0mmの防振装置で測定された加速度を100%とした場合、細孔26aの流路長が5.0mmの防振装置では加速度が32%程度となり、細孔26aの流路長が7.0mmの防振装置では加速度が8%程度となることが確認された。
以上より、細孔26aの流路長が、細孔26aの内径の最小値の3倍以上になると、キャビテーション崩壊に起因した異音の発生を確実に抑えることができることが確認された。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、メンブラン41の表裏面が軸方向に向けられた構成を示したが、メンブラン41は、表裏面が例えば径方向等に向けられた状態で配設されてもよい。
また、第1連通部26および第2連通部27の双方が、細孔26aを有する構成を採用してもよい。
また、主流路31として、仕切部材16を約1周する構成を示したが、仕切部材16を1周より長く周回する構成を採用してもよい。
また、主流路31は、例えば軸方向に延びる等適宜変更してもよい。
また、収容室42に、支持部43、逃げ凹部44、および係止溝45を形成しなくてもよい。
また、仕切部材16に収容室42を形成しなくてもよい。
また、本体流路25として、渦室34を有しない構成を採用してもよい。
また、複数の細孔26aが形成された第1障壁38の厚さを、上側障壁35、下側障壁36、および第2障壁39の各厚さ以下としてもよい。
また、細孔26aの流路長を、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各流路長以下としてもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室14に正圧が作用する圧縮式の防振装置10について説明したが、主液室14が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室14に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
【0062】
また前記実施形態では、仕切部材16が、第1取付部材11内の液室19を、弾性体13を壁面の一部に有する主液室14、および副液室15に仕切るものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ダイヤフラム20を設けるのに代えて、弾性体13を軸方向に一対設けて、副液室15を設けるのに代えて、弾性体13を壁面の一部に有する受圧液室を設けてもよい。例えば、仕切部材16が、液体Lが封入される第1取付部材11内の液室19を、第1液室14および第2液室15に仕切り、第1液室14および第2液室15の両液室のうちの少なくとも1つが、弾性体13を壁面の一部に有する他の構成に適宜変更することが可能である。
【0063】
また、本発明に係る防振装置10は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。