(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体と移動手段とを有し、本体よりも所定の高さだけ高い位置に固定させた超音波を反射する反射体を、本体の位置および姿勢を認識可能となるように設けた水中作業装置と、
3次元の方位分解能を有する超音波センサが入射した超音波ビームへの反射波を受信し、前記超音波センサの高さから反射波の反射位置までの深さが、前記超音波センサの高さから、前記本体の高さと前記所定の高さとを減じた箇所に位置する前記反射体の下部までの深さから前記反射体の上部までの深さの範囲内であるときに、その反射波を前記反射体に反射したものと識別する反射体識別部と、
前記反射体識別部が前記反射体に反射したと識別した各反射波から各前記反射体の位置を求めるとともに、求められた各前記反射体の位置から前記水中作業装置の位置データおよび姿勢データを求める位置算出部と、を有することを特徴とする
位置測定システム。
前記水中作業装置は、前記所定の高さとして、前記入射した超音波ビームの中心音軸における信号強度に対して、1/2倍の信号強度に減衰する周辺音軸間の幅よりも長く設けることを特徴とする
請求項1に記載の位置測定システム。
前記水中作業装置は、前記反射体の直径として、前記入射した超音波ビームの中心音軸における信号強度に対して、1/2倍の信号強度に減衰する周辺音軸間の幅よりも長く設けることを特徴とする
請求項1に記載の位置測定システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、水中作業装置の位置測定システムの全体構成図である。
水中作業装置2は、プール1のプール床面8を走行しながら検査を行う。以下、3次元の俯瞰図における座標系として、水中作業装置2の進行方向をY軸とし、水中作業装置2の側面方向をX軸とし、プール1の高さ方向をZ軸とする。
【0014】
水中作業装置2は、地上部の制御装置(図示省略)から有線通信または無線通信により、遠隔制御される。水中作業装置2の検査手段は、例えば、タンクやプール1の壁面の板厚測定や溶接線の健全性を検査するための図示しない超音波センサや渦電流センサである。水中作業装置2の移動手段は、例えば、モータにより駆動される左右1対の走行車輪を装置の前後備える手段、または、左右1対のクローラであるが、特に限定されるものではない。
【0015】
水中作業装置2の本体よりも所定の高さだけ高い位置には、本体の位置および姿勢を認識可能となるように、超音波を反射する反射体9(9A,9B,9C)が設置されている。任意の方向からの入射波を確実に反射できるようにするため、反射体9の形状は球体とすることが望ましい。
なお、各反射体9は本体の位置および姿勢を認識可能となるように構成すればよく、例えば、反射体9の個数は、XY平面上の互いに異なる位置に少なくとも3個設置することが望ましい。また、各反射体9の位置を互いに距離を大きく空けておくことにより、水中作業装置2の姿勢検出の精度が高まる。
【0016】
超音波センサ3は、入射した超音波ビームを反射体9に反射させることで(図示の破線矢印)、各反射体9の位置を測定する。超音波センサ3には、振動子を2次元に配列したマトリクスアレイや1次元アレイを2個直交させた十字またはT字型のアレイセンサを使用する。この超音波センサ3は、
図2で後記するセンサ送信部12からの信号に基づいて超音波ビームを送信し、受信した反射波に基づく信号を後記するセンサ受信部14に送信する。
超音波センサ3は3次元の方位分解能を有するので、各反射体9の3次元(X,Y,Z)位置を測定することができる。なお、超音波センサ3の設置位置について、
図1ではプール1の上部に例示したが、水面による反射を抑制してプール1内の水中の物体を探るために、一般的にはプール1の内部(水中)に設置される。
【0017】
超音波センサ駆動部4には、超音波センサ3が取り付けられている。超音波センサ3と超音波センサ駆動部4とは、ケーブル5を介して超音波送受信機6に接続されている。
モニタ7は、水中作業装置2の検査手段による波形データなどの検査結果データや、測定された各反射体9の位置をもとにした水中作業装置2の位置姿勢データなどを表示する。
【0018】
図2は、超音波送受信機6の構成図である。超音波送受信機6は、駆動信号生成部11と、センサ送信部12と、送信信号生成部13と、センサ受信部14と、波形生成部15と、センサ位置算出部16と、反射体識別部17と、位置算出部18と、位置記憶部18とを有する。
超音波送受信機6は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。
このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
【0019】
駆動信号生成部11は、超音波センサ駆動部4の指令信号を送信する。センサ送信部12は、超音波センサ3の各振動子にパルス信号を送信することで、振動子を振動させて超音波ビームを送信する。
送信信号生成部13は、超音波ビームの送信パターンを決定する。センサ受信部14は、超音波センサ3の各振動子が受信した信号(振動子の振動に基づくアナログの電気信号)を、デジタル信号に変換する。
波形生成部15は、センサ受信部14からのデジタル信号と、送信信号生成部13からの送信パターンとをもとに、波形データを生成する。つまり、生成される波形データには、送信信号生成部13からの送信パターンが加算されている。
【0020】
センサ位置算出部16は、超音波センサ3の設定情報として、超音波センサ3の配置に基づく
図4の高さZc、俯角θvなどを算出したりまたは入力を受け付けたりする。
反射体識別部17は、波形生成部15の波形データから超音波センサ3の反射波の反射位置を測定することで、反射体9からの反射波と、その他の物体からの反射波とを識別する。
位置算出部18は、反射体識別部17が抽出した反射体9の反射波をもとに、反射体9の位置を算出する。そして、位置算出部18は、算出した各反射体9の位置から、水中作業装置2の位置姿勢データを算出する。算出した位置姿勢データは、モニタ7を介して表示される。
位置記憶部19は、位置算出部18の算出結果を記憶する。
【0021】
図3は、位置測定システムのXY平面図である。
超音波センサ3から反射体9Aに向かう入射波30Aは、Y軸に対して左周り側に方位角θh1で送信される。
超音波センサ3から反射体9Bに向かう入射波30Bは、Y軸に対して右周り側に方位角θh2で送信される。
超音波センサ3から反射体9Cに向かう入射波30Cは、Y軸に対して右周り側に方位角θh3で送信される。
【0022】
図4は、位置測定システムの側面図である。この側面図は、反射体9Cを通過する入射波30Cの方位角(
図3のθh3)を横軸とし、高さ方向のZ軸を縦軸とする。
俯角θvは、超音波センサ3が水中作業装置2の位置を走査するために、プール床面8に向けて超音波ビームを入射する設定角度である。
監視位置の高さZcは、プール床面8から超音波センサ3の表面中心からまでのZ軸距離である。センサ位置算出部16は、超音波センサ3の俯角θvを鉛直下向きに設定してから超音波ビームをプール床面8に当てることで、高さZcを求める。
【0023】
以下、超音波センサ3からの超音波ビームが様々な送信角θv1〜θv3により、様々な物体に反射する旨を説明する。
まず、送信角θv3の入射波31Cは反射体9Cに当たるので、反射波は超音波センサ3に向かって帰ってくる。よって、その反射波を超音波センサ3が受信することで、反射体9Cの位置を求めることができる。
一方、送信角θv2の入射波32Cは水中作業装置2の筐体に当たるので、その反射波は反射体9の位置を求めるときにはノイズとなる。送信角θv1の入射波33Cはプール床面8に当たるので、その反射波も反射体9の位置を求めるときにはノイズとなる。
【0024】
なお、以下の説明のために、水中作業装置2筐体の高さをhとし、その筐体上部から反射体9下部までの反射体支持部の長さgとする。ここで、反射体支持部とは、例えば、反射体9を下方から支える棒状の部材であり、反射体支持部自体は超音波ビームをなるべく反射しないように、体積を小さくしたり、反射しづらい素材で構成したりすることが望ましい。
【0025】
図5は、位置測定システムの側面図である。
反射体識別部17は、以下の式により、超音波センサ3の反射波の反射位置のZ軸高さを測定することができる。
(反射波の反射位置のZ軸高さ)=(反射波の伝搬時間)×(液体の音速)×cos(超音波ビームの送受信方位θv2)
この反射位置のZ軸高さが、反射体9が存在する深さZd〜深さZuまでの範囲内であるときには、その反射波は反射体9からの反射であるとみなすことができる。
超音波センサ3からプール床面8までの高さ(深さ)Zcは、前記したように、センサ位置算出部16によって取得される。
超音波センサ3から反射体9下部までの深さZdは、(深さZc)−(水中作業装置2筐体の高さh)
−(反射体支持部の長さg)である。
超音波センサ3から反射体9上部までの深さZuは、(深さZc)
−(水中作業装置2筐体の高さh)−(反射体支持部の長さg)−(反射体9の直径φ)である。
【0026】
まず、位置R1のように、反射波の反射位置が深さZdよりも深い(プール床面8から低い)場合には、その反射波は水中作業装置2の筐体やプール床面8からの反射であるとみなすことができるので、反射体識別部17は、その反射波を不採用とする。
次に、位置R2のように、反射波の反射位置が、深さZd〜深さZuまでの範囲内であるときには、反射体識別部17は、水中作業装置2の位置姿勢の特定用データとして採用する。
さらに、位置R3のように、反射波の反射位置が深さZuよりも浅い(プール床面8から高い)場合には、その反射波は構造物の配管などからの反射であるとみなすことができるので、反射体識別部17は、その反射波を不採用とする。
【0027】
図6は、超音波ビームの信号強度と、反射体9の大きさとの関係を示す側面図である。
反射体9に向けて送信される超音波ビームは、その信号強度が最も強い中心音軸42から遠ざかるほど、信号強度が減衰していく。
図6では、中心音軸42の信号強度(基準強度)に対して1/2倍の信号強度となる周辺音軸41,43を併記している。
【0028】
図7は、
図6の側面図において、反射体9近傍の拡大図である。
基準強度に対して1/2倍以上の信号強度である周辺音軸41,43間の幅を「音波到達幅w」とする。つまり、音波到達幅wの範囲内に反射体9が存在していると、反射体9からの反射波の信号強度も充分に強いので、その反射波を超音波センサ3が検知できる。
【0029】
ここで、
図5で説明したように、反射体支持部の長さgや反射体9の直径φは、水中作業装置2と反射体9とを区別する精度を決定する重要なパラメータであるので、以下の範囲になるようにすることが望ましい。
・反射体支持部の長さg(所定の高さ)の下限は、音波到達幅wとすることが望ましい。これにより、水中作業装置2と反射体9とが接近しすぎて、水中作業装置2本体からの反射波と、反射体9からの反射波とを超音波センサ3が混同することを抑制できる。
・反射体支持部の長さgの上限は、反射体9の直径φの3倍とすることが望ましい。これにより、水中作業装置2と反射体9とが離れすぎることで、堆積物などが存在する構造物の内部が狭い空間を走行中に反射体9が障害物に衝突することを抑制できる。つまり、水中作業装置2と反射体9とを一体とみなしたときの大きさを小型化できる。
・反射体9の直径φの下限は、音波到達幅wとすることが望ましい。これにより、反射体9自体が小さすぎることで、入射波を反射できる範囲が狭くなりすぎることを抑制し、入射波を適切に反射できる。
【0030】
図8は、波形生成部15が生成する送信角度θv2における波形データを示すグラフである。横軸は超音波を送信してから受信するまでの時間、縦軸は信号強度である。反射体識別部17は、信号強度が設定したしきい値(at)以上の場合に、反射波と判定する。
【0031】
図9は、反射体9の姿勢検出処理を示す平面図である。
位置算出部18は、反射体識別部17が抽出した反射体9の反射波をもとに、超音波ビームの送信角度(
図3のθh1〜θh3,
図4のθv1〜θv3)を用いて、反射体9の位置を算出する。
例えば、水中作業装置2の本体が同じ位置に存在していたとしても、符号101のように下向きの位置姿勢であることもあるし、符号102のように左向きの位置姿勢であることもある。よって、位置算出部18は、例えば、「反射体9A,9Bを結ぶ線分が水中作業装置2の本体前面で、反射体9B,9Cを結ぶ線分が水中作業装置2の本体左側面である」などの本体に対応する各反射体9の位置関係をあらかじめ記憶しておく。そして、位置算出部18は、記憶された位置関係を参照して、超音波ビームで検出された少なくとも3つの反射体9の位置データから、水中作業装置2のプール床面8に対する位置姿勢を特定する。
【0032】
図10は、反射体9の追跡処理を示す平面図である。
例えば、1秒前の反射体9A1の位置が、現在は反射体9A2の位置に移動したとする。同様に、反射体9B1→9B2に移動し、反射体9C1→9C2に移動したとする。
位置算出部18は、初期設定時に識別した各反射体9の位置を移動時に逐次追跡してもよい。この追跡処理の結果は、例えば、モニタ7に表示する水中作業装置2の位置に、移動軌跡線として表示してもよい。
または、追跡処理の結果は、受信した反射波の集合から反射体識別部17が反射体9の反射波を絞り込むときに活用してもよい。例えば、1秒前の(直前の)位置から現在の位置までの移動量が所定距離(例えば100m以上)以上長くなるような現在の位置情報を、位置算出部18はノイズとみなしてもよい。
【0033】
以上説明した本実施形態では、超音波センサ3を用いる検出対象の装置として、水中作業装置2の本体から長さgの反射体支持部により距離を空けて反射体9を固定するように構成した。
これにより、超音波センサ3は、水中作業装置2の本体からの反射波と、反射体9からの反射波とを、反射位置の高さの違いにより容易に区別することができる。よって、水中作業装置2の本体位置だけを大まかに検出するだけでは不充分で、その本体位置からの姿勢データも高精度に検出する必要があるような検査作業においても、超音波送受信機6は、適切に水中作業装置2の位置姿勢データを求めることができる。
【0034】
以下、従来技術との比較を行う。従来技術では、水中作業装置そのものを大型化して位置検出を行うような構成であるため、堆積物などが存在する構造物の内部が狭い空間を検査するような本実施形態の目的には適合しない。
例えば、特許文献1の構成では、水中作業装置に対して、壁面の板厚測定や溶接線の健全性検査などの水中作業の目的とは異なる超音波受信器を搭載してしまうことで、水中作業装置が大型化してしまう。
特許文献2の構成では、水中作業装置が大型化してしまい、絶えず超音波ソナーと作業装置が上下に配置される必要があるため、構造物の内部が狭い空間である場合は水中移動が困難になってしまう。
一方、本実施形態では、反射体支持部を介して水中作業装置2と反射体9との距離を空けることで、反射体9の検出精度を向上させつつ、水中作業装置2の大型化を抑制できる。
【0035】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0036】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LANに限定せず、有線LANやその他の通信手段に変更してもよい。
また、プール1は陸上でも海上でも設置される場所は問わない。さらに、超音波センサ3や超音波センサ駆動部4を制御する装置である超音波送受信機6の設置場所も問わない。