特許第6983065号(P6983065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983065動物もしくは人、特に未熟児の血液または組織中の検体の濃度を自己較正の方法で測定するためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983065
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】動物もしくは人、特に未熟児の血液または組織中の検体の濃度を自己較正の方法で測定するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20211206BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20211206BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G01N1/10 V
   G01N33/48 B
   G01N21/64 Z
【請求項の数】13
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-502255(P2017-502255)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公表番号】特表2017-526908(P2017-526908A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015066089
(87)【国際公開番号】WO2016008898
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】14176976.0
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508290633
【氏名又は名称】ユニヴァーシテト チューリッヒ
(73)【特許権者】
【識別番号】500397558
【氏名又は名称】アイトゲネッシェ マテリアルプリューフングス ウント フォルシュングスアンシュタルト エーエムペーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】バウマン ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シェラー カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ロートマイヤー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シェラー ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ レネ
(72)【発明者】
【氏名】デ クルテン ダミアン ポール ジョセフ アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ マルティン
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−504881(JP,A)
【文献】 米国特許第05139023(US,A)
【文献】 特開昭61−025541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0154272(US,A1)
【文献】 特表平04−506919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0241966(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0253295(US,A1)
【文献】 伊藤 嘉浩,高分子ブラシのグラフト化による多孔性膜への刺激に応答した物質透過性の付与,高分子論文集,Vl.55,No.4,日本,公益社団法人 高分子学会,1998年,171-181
【文献】 LUKAS BAUMANN ET Al,"Development of light-responsive porous polycarbonate membranes for controlled caffeine delivery",RSC ADVANCES, vol. 3, no. 45,英国,Royal Society of Chemisty,2013年,vol. 3, no. 45,23317-23326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/10
G01N 33/48
G01N 33/66
G01N 21/64
A61B 5/157
A61B 5/1455
A61B 5/1477
A61B 5/1482
G03C 1/73,503
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物もしくは人の皮膚を通して検体が受動的に拡散した、前記動物または人の血液または組織中のその検体の濃度を測定するためのデバイスであって、前記濃度を測定するために、
前記デバイスは、前記動物または前記人の前記皮膚と接触するためのプローブヘッド(10)を備え、前記プローブヘッド(10)は、メンブレン(30)を備え、前記メンブレン(30)は、フォトクロミック化合物を含み、前記メンブレン(30)が前記検体に対する第1の透過性を備える第1の状態と、前記メンブレン(30)が前記検体に対する第2の透過性を備える第2の状態との間でスイッチング手段(40)の光照射によってスイッチされるように設計されており、前記検体に対する前記第1の透過性は、前記検体に対する前記第2の透過性とは異なり、または、前記デバイスは、前記動物または前記人の前記皮膚と接触するためのプローブヘッドを備え、前記プローブヘッドは、メンブレンおよびさらなるメンブレンを備え、前記メンブレンは、前記検体に対する前記第1の透過性を永続的に備え、前記さらなるメンブレンは、前記検体に対する前記第2の透過性を永続的に備え、前記検体に対する前記第1の透過性は、前記検体に対する前記第2の透過性とは異なり、
前記デバイスは、さらに、前記動物または前記人の前記血液または組織中の前記検体の前記濃度を測定するための分析手段(20)を備え、前記分析手段(20)は、前記第1の状態にある前記メンブレン(30)を通して拡散されるか、または前記第1の透過性を備える前記メンブレンを通して拡散される前記検体の第1の濃度を測定するように設計され、前記分析手段(20)は、前記第2の状態にある前記メンブレン(30)を通して拡散されるか、または前記第2の透過性を備える前記さらなるメンブレンを通して拡散される前記検体の第2の濃度を測定するように設計され、前記分析手段(20)は、前記第1および第2の濃度を用いて前記血液または組織中の前記検体の前記濃度を測定するように設計されている、デバイス。
【請求項2】
前記スイッチング手段は、前記メンブレン(30)に光を照射するように設計された光源(40)を備え、前記光源(40)は、前記メンブレン(30)を前記第1の状態へスイッチするための第1の波長を備える光で前記メンブレンを照明するように設計され、かつ前記光源(40)は、前記メンブレン(30)を前記第2の状態へスイッチするための前記第1の波長とは異なる第2の波長を備える光で前記メンブレン(30)を照明するように設計されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記スイッチング手段は、前記光源(40)の前記光を前記メンブレン(30)の方へ導くための光ガイド(401)を備えることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記プローブヘッド(10)は、前記検体を受け取るために前記メンブレン(30)に隣接した拡散チャンバ(100)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記拡散チャンバ(100)は、灌流媒体(3)を前記拡散チャンバ(100)中へ供給するための入口(101)と、前記メンブレン(30)を通して拡散された前記検体を前記拡散チャンバ(100)外へ輸送すべく、前記灌流媒体(3)を前記拡散チャンバ(100)外へ排出するための出口(102)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記プローブヘッドは、前記検体を受け取るための前記メンブレンに隣接した第1の拡散チャンバと、前記検体を受け取るための前記さらなるメンブレンに隣接した第2の拡散チャンバとを備え、前記第1の拡散チャンバは、灌流媒体を前記第1の拡散チャンバ中へ供給するための入口と、前記メンブレンを通して拡散する前記検体を前記第1の拡散チャンバ外へ輸送すべく、前記灌流媒体を前記第1の拡散チャンバ外へ排出するための出口とを備え、前記第2の拡散チャンバは、灌流媒体を前記第2の拡散チャンバ中へ供給するための入口と、前記さらなるメンブレンを通して拡散する前記検体を前記第2の拡散チャンバ外へ輸送すべく、前記灌流媒体を前記第2の拡散チャンバ外へ排出するための出口とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記分析手段(20)は、前記灌流媒体(3)がそれぞれの検体とともに前記分析手段(20)へ輸送されることができるように、前記出口(102)へ接続されることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記分析手段(20)は、前記灌流媒体が前記それぞれの検体とともに前記分析手段へ輸送されることができるように、前記出口へ接続されることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記メンブレン(30)および/または前記さらなるメンブレンは、スピロベンゾピラン部分またはスピロオキサジン部分を含み、前記メンブレン(30)および/または前記さらなるメンブレンは、前記スピロベンゾピラン部分またはスピロオキサジン部分を含む化合物またはポリマーが被覆されるかまたはグラフトされたポリカーボネートから形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記メンブレン(30)および/または前記さらなるメンブレンは、スピロオキサジン部分またはスピロベンゾピラン部分を含む両親媒性ネットワークを備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記分析手段(20)は、蛍光測定を用いて前記濃度を測定するように構成されたマイクロ流体チップ(201)を備え、そのマイクロ流体チップ(201)は、前記プローブヘッド(10)中に一体化されることを特徴とする、請求項1または4に記載のデバイス。
【請求項12】
前記マイクロ流体チップ(201)は、前記メンブレン(30)から見て反対側の前記拡散チャンバ(100)の頂部に配置されることを特徴とする、請求項4を引用する請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
動物または人の血液または組織中の検体の濃度を測定するための方法であって、前記濃度を測定するために、前記方法は、
−フォトクロミック化合物を含み、検体に対する第1の透過性を備える第1の状態と前記検体に対する第2の透過性を備える第2の状態との間でスイッチング手段(40)の光照射によってスイッチされるように設計されたメンブレン(30)を準備し、前記前記検体に対する前記第1の透過性を備えたメンブレン(30)を通して前記検体を拡散させ、かつ前記検体に対する前記第2の透過性を備えたメンブレン(30)を通して前記検体を拡散させるステップであって、前記第1の透過性は、前記第2の透過性とは異なる、前記ステップ、または前記検体に対する前記第1の透過性を永続的に備えるメンブレンおよび前記検体に対する第2の透過性を永続的に備えるさらなるメンブレンを準備し、前記検体に対する前記第1の透過性を永続的に備えるメンブレンを通して前記検体を拡散させ、かつ前記検体に対する第2の透過性を永続的に備えるさらなるメンブレンを通して前記検体を拡散させるステップであって、前記第1の透過性は、前記第2の透過性とは異なる、前記ステップと、
−前記第1の透過性を備える前記メンブレン(30)または前記メンブレンを通して拡散された前記検体の第1の濃度を測定し、前記第2の透過性を備える前記メンブレン(30)または前記さらなるメンブレンを通して拡散された前記検体の第2の濃度を測定して、前記第1および第2の濃度を用いて前記血液または組織中の前記検体の前記濃度を決定するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物または人の血液または組織中の、特に未熟児の血液または組織中の検体の濃度を測定するためのデバイス、および対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新生児(および成人)のために利用できる非侵襲性グルコース・モニタリング・デバイスは、現在、市販されていない。極めて早産(例えば、在胎期間(GA:gestational age)が34週未満)か、または在胎期間の割りにあまりに小さいすべての新生児は、頻繁な血中グルコース測定を必要とする。この測定は、現在、侵襲的に採血して血中グルコースを体外で測定することによってのみ達成できる。採血は、いくつかの望ましくない潜在的に危険な副作用を有する。例えば、早産の乳児の血液量が80ml/kg体重ほどと少ないために、採血が貧血を引き起こす。採血は、さらに、早産の赤ん坊にとって痛ましい。繰り返される痛みは、臨床成績が悪く、低減されるべきである。採血は、職員および乳児の両方に対する感染のリスクも伴う。従って、本発明は、臨床的に適切である。加えて、これらの不利な点は、血中グルコースを臨床的に望ましいほど頻繁に測定することを妨げる。血中グルコースは、急速に変化しかねないので、連続的な測定が臨床的に適切であろう。
【0003】
血液または組織中の検体を決定するための既知の非侵襲的な方法は、経皮的にエクスビボ(ex−vivo)体液をサンプリングする(本明細書では、エクスビボとは体液が体に由来することを意味する)。その場合には生体適合性を考慮に入れないでこれらの流体を分析できる。それらの分析は、組織構造または異質な埋め込み分析手段に対する組織炎症反応によって影響を受けない。さらに、エクスビボ流体は、(皮膚がフィルタとしての機能を果たして)大きい分子量をもつ物質が収集されないため、含まれる干渉分子がそれらのインビボ対応物よりずっと少ない。それゆえに、エクスビボ測定は、インビボよりはるかに正確であろう。しかし、皮膚特性が変動するため、それらを較正する必要がある。血液検体と皮膚を通して拡散されるその量との間の関係は、未知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のことに基づいて、本発明の基礎をなす課題は、特に採血する必要なしに、特に簡単な方法で患者の血液中の検体の濃度を決定することを許容する改善された前述の種類のデバイスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有するデバイスによって解決される。好ましい実施形態は、対応する従属請求項に明記される。
【0006】
請求項1によれば、人(または動物)、特に未熟児の皮膚を通して検体が受動的に拡散した、前記動物または人の血液または組織中のその検体の濃度を測定するためのデバイスは、前記検体に対する(例えば、メンブレンの第1および第2の状態に例えば対応する)少なくとも第1および第2の透過性を備える手段を備え、前記検体に対する第1の透過性は、検体に対する第2の透過性とは異なる。
【0007】
これは、動物または人の血液または組織中の所望の検体の濃度を自己較正の方法で測定することを原理的に許容する。
【0008】
好ましい実施形態によれば、プローブヘッドは、メンブレンが第1の状態にあってプローブヘッドが皮膚と接触するときに、前記動物もしくは人の皮膚を通して例えば受動的に拡散した、検体が前記メンブレンを通して拡散することが可能であるように、かつメンブレンが第2の状態にあってプローブヘッドが本人の皮膚と接触するときに、検体が前記メンブレンを通して拡散することが可能であるように、前記メンブレンが前記検体に対する第1の透過性を備える、前記第1の状態と、前記メンブレンが前記検体に対する第2の透過性を備える、前記第2の状態との間で(可逆的に)スイッチされるように設計された前記メンブレンを備え、前記第1の透過性は、前記第2の透過性とは異なる。
【0009】
さらに、代わりに、プローブヘッド(またはプローブヘッド手段)は、(第1の)メンブレンおよびさらなる(第2の)メンブレンを備え、プローブヘッドが皮膚と接触するときに、前記動物もしくは人の皮膚を通して例えば受動的に拡散した、前記検体がメンブレンを通して拡散することが可能であるように、かつプローブヘッドが本人の皮膚と接触するときに、前記検体がさらなるメンブレンを通して拡散することが可能であるように、前記メンブレンは、前記検体に対する第1の透過性を備え、前記さらなるメンブレンは、前記検体に対する第2の透過性を備え、第1の透過性は、第2の透過性とは異なる。
【0010】
可能な検体は、最も好ましいグルコースだけでなく、カフェイン、尿素、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、乳酸塩、オピオイド、コカイン、アンモニア、クレアチニン、ビリルビン、または未処理もしくは処理済の皮膚さえも通るすべての分子である。
【0011】
本発明によるこの解決法は、以下に示されるように有利な方法での患者の血液中の所望の検体(例えば、グルコース)の濃度の自己較正測定を許容する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば(前記2つの状態を有するメンブレンが採用されるケースでは)、デバイスは、好ましくは、前記2つの状態間で前記メンブレンをスイッチするためのスイッチング手段を備える。
【0013】
本発明のある実施形態では、かかるスイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするために電磁放射、特に光をメンブレンに照射するように設計される。
【0014】
さらなる実施形態では、スイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするために電界および/または(例えば、一定)磁界をメンブレンに印加するように設計されてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、スイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするために前記メンブレンと接触する媒体のpH値を変化させるように設計されてもよい。
【0016】
さらなる実施形態では、スイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするためにメンブレンの温度を変化させるように設計されてもよい。
【0017】
さらに別の実施形態では、スイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするために前記メンブレンに圧力および/または剪断応力をかけるように設計されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態によれば、前記スイッチング手段は、前記メンブレンを照明するように設計される光源を備え、光源は、メンブレンを第1の状態へスイッチするための第1の波長を備える光でメンブレンを照明するように特に設計され、かつ光源は、メンブレンを第2の状態へスイッチするための第1の波長とは異なる第2の波長を備える光でメンブレンを照明するように特に設計される。
【0019】
好ましくは、スイッチング手段は、メンブレンを1つの状態から他の状態へスイッチするためのそれぞれの光をメンブレンに照射できるように、光源の前記光をメンブレンの方へ導くための光ガイドを備える。
【0020】
好ましくは、前記メンブレンを通して皮膚からまたは皮膚へ拡散する前記検体を受け取るために、プローブヘッドは、前記メンブレンに隣接して拡散チャンバを備える。
【0021】
さらに、好ましくは、拡散チャンバは、灌流媒体を拡散チャンバ中へ供給するための入口、および、特に前記メンブレンを通して拡散する前記検体を拡散チャンバ外へ輸送すべく、前記灌流媒体を拡散チャンバから排出するための出口を備える。
【0022】
患者の血液または組織中の検体の濃度を測定するために、システムは、好ましくは、本発明の実施形態による分析手段を備え、前記分析手段は、第1の状態にあるメンブレンを通して拡散された(例えば、流動性灌流媒体中の)検体の第1の濃度を測定するように設計され、前記分析手段は、第2の状態にあるメンブレンを通して拡散された(例えば、流動性灌流媒体中の)検体の第2の濃度を測定するように設計され、特に、分析手段は、(例えば、前記灌流媒体中の)検体の前記第1および第2の濃度CmlおよびCmhを用いて血液または組織中の検体の濃度を測定するように設計される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記分析手段は、前記灌流媒体をそれぞれの透過液とともに分析手段へ輸送できるように、拡散チャンバの前記出口へ接続される。
【0024】
好ましくは、デバイスは、検体が第1の状態にあるメンブレンを通して拡散したときには灌流媒体が検体の第1の濃度を備えるように、かつ検体が第2の状態にあるメンブレンを通して拡散したときには灌流媒体が検体の第2の濃度を備えるように、拡散チャンバを通して灌流媒体を、メンブレンを通して拡散する検体を伴って導くように設計される。
【0025】
検体は、動物もしくは人の皮膚を通して拡散し、その後、メンブレンを通して灌流媒体中へ拡散しうることに注目すべきである。しかしながら、灌流媒体が十分高い濃度の検体を含むケースでは、検体がメンブレンを通して動物もしくは人の皮膚の方へ拡散する。このように、メンブレンの透過性に依存して灌流媒体中の検体の濃度も変化する。
【0026】
灌流媒体は、次に、検体の第1および第2の濃度を測定するように設計された分析手段の方へ検体を運ぶ。
【0027】
検体に対する透過性が異なる2つのメンブレンが採用されるケースでは、プローブヘッド手段は、前記検体を受け取るために前記メンブレンに隣接した第1の拡散チャンバ、および前記検体(異なる濃度)を受け取るために前記さらなるメンブレンに隣接した第2の拡散チャンバを備える。好ましくは、第1の拡散チャンバは、灌流媒体を第1の拡散チャンバ中へ供給するための入口、および、特に前記灌流媒体を検体とともに第1の拡散チャンバ外へ輸送すべく、前記灌流媒体を第1の拡散チャンバ外へ排出するための出口を備える。さらに、好ましくは、第2の拡散チャンバは、灌流媒体を第2の拡散チャンバ中へ供給するための入口、および、特に前記灌流媒体を検体とともに第2の拡散チャンバ外へ輸送すべく、前記灌流媒体を第2の拡散チャンバ外へ排出するための出口を備える。
【0028】
プローブヘッドに関して、考えられるのは、前記プローブヘッドが前記第1の拡散チャンバおよび前記メンブレンを備える第1のプローブヘッド、ならびに前記第2の拡散チャンバおよび前記さらなるメンブレンを備える第2のプローブヘッドへ分離されることである。しかしながら、プローブヘッドは、両方のメンブレンおよび拡散チャンバを含む単一のプローブヘッドによって形成されてもよい。
【0029】
検体に対する異なる透過性を有する2つのメンブレンが採用されるケースでは、分析手段は、メンブレンを通して拡散された(例えば、灌流媒体中の)検体の第1の濃度、およびさらなるメンブレンを通して拡散された(例えば、灌流媒体中の)検体の第2の濃度を測定するように設計される。この場合もやはり、分析手段は、好ましくは、前記第1および第2の濃度を用いて血液または組織中の検体の濃度を測定するように設計される。さらに、流動性灌流媒体に依存して(上記参照)、検体は、皮膚からそれぞれのメンブレンを通してそれぞれの拡散チャンバ中へ、またはそれぞれの拡散チャンバからそれぞれのメンブレンを通して本人の皮膚の方へ拡散しうる。
【0030】
第1または第2の検体濃度を含む灌流媒体を受け取るために前記灌流媒体を検体とともに分析手段へ輸送できるよう、分析手段が前記出口へ接続される。
【0031】
有利なことに、前記測定される2つの濃度は、さらなる較正なしに本人の血液(または皮膚)中の検体濃度を推定することを許容する。このように、本発明によるデバイスは、前記検体濃度の自己較正による推定を許容する。
【0032】
これは、以下のように達成される。皮膚およびメンブレン(または前記第1および第2のメンブレン)を通しての前記検体の受動拡散は、フィックの法則:
g,body−Cg,sensor=F(R+R) (1)
によってモデリングされ、ここでCg,bodyは、所望の血中検体(例えば、グルコース)濃度、Cg,sensorは、拡散チャンバにおける(または第1および第2の拡散チャンバにおける)の検体濃度、Fは、皮膚およびメンブレンを通しての検体流量、Rは、検体拡散に対する皮膚抵抗、Rは、検体拡散に対するメンブレン抵抗であり、状態ごとに1つ、または第1のメンブレンに対して1つおよび第2のメンブレンに対して他の1つ(上記参照)の2つの値を有する。未知数は、血中検体濃度Cおよび検体拡散に対する皮膚抵抗Rである。濃度および検体拡散流量を前記メンブレンの両方の状態(すなわち、両方の抵抗)に対して、または(of)第1および第2のメンブレンに対して測定することで、皮膚抵抗および血中検体濃度の両方を決定できる。
【0033】
好ましくは、濃度勾配を高く、従って、検体拡散流量を高く保つために、微小透析セットアップにおいて拡散チャンバ(または2つの拡散チャンバ)が灌流媒体(灌流液とも表される)でフラッシュされる。かくして、それぞれの拡散(または微小透析)チャンバを通る流れの流線にわたって一旦積分されると、式(1)は、
【0034】
【数1】
【0035】
となり、項
【0036】
【数2】
【0037】
は、透析物抽出比とも称され、ここでQは、透析物流量であり、Aは、メンブレンと接触した微小透析または拡散チャンバの面積である。
【0038】
【数3】
【0039】
であれば、(3)における透析物抽出比を線形化できる。その時には、式(2)は、以下のようになる。
【0040】
【数4】
【0041】
次に、2つの対応するメンブレン状態/透過性に対する(または2つのメンブレンに対する)2つの濃度CmlおよびCmh、ここでインデックスmlは、低抵抗(すなわち、高透過性)を表し、インデックスmhは、高抵抗(すなわち、低透過性)を表す、あるいは、2つのメンブレン抵抗値RmlおよびRmhを測定することで、(Cml=Cg,sensor(R=Rml)およびCmh=Cg,sensor(R=Rmh)を用いて)(4)から血中グルコース濃度を得る:
【0042】
【数5】
【0043】
好ましくは、次の近似が用いられ、
ml<<Rmh,Rmh=Rgおよび
=1’200’000scm−1
=5μLmin−1
=4cm
結果として
g,body=Qmlmh/(Cml−Cmh) (5’)
が得られる。
【0044】
それに対応して、本発明のある実施形態では、本発明によるデバイスの前記分析手段は、好ましくは、関係(5)または(5’)を用いることによって、検体(ここでは例えば、グルコース)の血液の濃度を決定するように設計される。
【0045】
前記メンブレンに2つ以上の状態が実装されていれば、前記検体の血中濃度Cg,bodyを式(2)または(4)に従って決定するためには、従来の方法で検体拡散に対する皮膚抵抗Rが一旦測定されると、メンブレンの1つの状態のみに対応する灌流法での検体濃度の1つの測定結果で十分である。
【0046】
必要に応じて、前記分析手段は、2つの対応する異なるメンブレンまたはメンブレン状態に対する2つの測定結果Cml=Cg,sensor(R=Rml)およびCmh=Cg,sensor(R=Rmh)に関して式(2)も非線形較正アルゴリズムとともに採用するであろう。
【0047】
分析手段は、前記濃度CmlおよびCmhを[1]に記載されるような蛍光測定によって測定するためのマイクロ流体チップを備えてもよい。
【0048】
本発明のさらなる実施形態によれば、分析手段および/またはマイクロ流体チップは、プローブヘッド中に一体化される。特に、プレートまたは層の形態を備えるマイクロ流体チップ(または分析手段)は、前記メンブレンから見て反対側の(同じく、プレートまたは層の形態を備える)拡散チャンバの頂部に配置される。かかる一体化デバイスのさらなる特徴は、いくつかの図を参照して以下に記載される。
【0049】
さらなる実施形態によれば、メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンは、フォトクロミック化合物またはその部分を含む。
【0050】
本発明の文脈におけるフォトクロミック化合物は、少なくとも2つの形態を呈示する化合物を指し、少なくとも2つの形態は、電磁放射の吸収によって誘起された1つの形態から他の形態への可逆的変換を経ることが可能であり、少なくとも2つの形態は、異なる吸収スペクトルを有する。変換は、共有結合形成、共有結合切断、シス・トランス異性化、異方性開環または閉環のような反応を含みうる。
【0051】
さらなる実施形態によれば、前記メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンは、例えば、多孔質ポリカーボネートから形成され、前記メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンは、スピロベンゾピラン部分またはスピロオキサジン部分をさらに含む。
【0052】
特に、メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンは、スピロベンゾピラン部分またはスピロオキサジン部分を含む第1のポリマーを含むか、またはそれらからなる。より詳しくは、第1のポリマー、特に多孔質ポリカーボネートは、化合物または第2のポリマーがグラフトされ、化合物または第2のポリマーは、スピロベンゾピラン部分またはスピロオキサジン部分を含む。
【0053】
好ましくは、前記メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンは、スピロオキサジン部分またはスピロベンゾピラン部分を含む両親媒性ネットワークを含む。
【0054】
本発明の文脈におけるスピロベンゾピラン部分は、分子式1
【0055】
【化1】
【0056】
を特徴とする化合物を特に指し、Lは、リンカー、特にメンブレンおよび/またはさらなるメンブレンあるいは第1のポリマー、化合物または第2のポリマーへのリンカーであり、特にリンカーLは、少なくとも1つのメチレン基(−CH−)を含み、Rは、HおよびNOから選択される、
【0057】
本発明の文脈におけるスピロオキサジン部分は、分子式2a、2b、2cまたは2d:
【0058】
【化2】
【0059】
を特徴とする化合物を特に指し、Lは、上記の意味を有し、
【0060】
およびLは、リンカーであり、特にLおよびLのうちの一方は、メンブレンおよび/またはさらなるメンブレンあるいは第1のポリマー、化合物または第2のポリマーへのリンカーであり、LおよびLのうちの他方は、追加の化合物またはポリマーへのリンカーであり、特に追加の化合物またはポリマーは、追加のスピロベンゾピラン部分または追加のスピロオキサジン部分を備えてもよく、
【0061】
およびRは、−O−C(O)−C(CH)=CH−および−O−C(O)−CH=CH、−NO、水素またはアルキル、特にCHから互いに独立して選択され、
【0062】
は、水素またはアルキル、特にCHである。
【0063】
いくつかの実施形態において、スピロベンゾピラン部分は、分子式3:
【0064】
【化3】
【0065】
を特徴とするスピロ化合物に由来し、
【0066】
は、上記の意味を有し、
【0067】
は、−CH−CH−O−C(O)−CH=CH、−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CH、−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−CH=CHおよび−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CHから選択される。
【0068】
いくつかの実施形態において、スピロオキサジン部分は、分子式4:
【0069】
【化4】
【0070】
を特徴とするスピロ化合物に由来し、
【0071】
およびRは、−O−C(O)−C(CH)=CH−、−O−C(O)−CH=CH、−NO、水素またはアルキル、特にCHから互いに独立して選択され、
【0072】
は、RおよびRのうちの少なくとも1つが−O−C(O)−C(CH)=CH−または−O−C(O)−CH=CHであることを条件として、−CH−CH−O−C(O)−CH=CH、−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CH、−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−CH=CH、−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CH、水素およびアルキル、特にCHから選択されるか、あるいはRは、−CH−CH−O−C(O)−CH=CH、−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CH、−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−CH=CHまたは−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CHである。
【0073】
いくつかの実施形態において、Rは、水素またはアルキル、特にCHであり、RおよびRのうちの少なくとも1つは、−O−C(O)−C(CH)=CH−または−O−C(O)−CH=CHである。
【0074】
いくつかの実施形態において、RおよびRのうちの少なくとも1つは、NO、水素またはアルキル、特にCHであり、Rは、−CH−CH−O−C(O)−CH=CH、−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CH、−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−CH=CHまたは−CH−CH−C(O)−O−CH−CH−O−C(O)−C(CH)=CHである。
【0075】
いくつかの実施形態において、スピロベンゾピラン部分は、SP5(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エタノール)、(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エチル2−メチルプロパ−2−エノアート)、(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エチルプロパ−2−エノアート)、SP12(3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパン酸)、SP14(2−[3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパノイルオキシ]エチル2−メチルプロパ−2−エノアート)、およびSP16(2−プロパ−2−エノイルオキシエチル3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパノアートから選択されたスピロ化合物に由来する。
【0076】
いくつかの実施形態において、スピロオキサジン部分は、SO37(1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−オール)、SO39(1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)2−メチルプロパ−2−エノアート、SO50((1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)プロパ−2−エノアート、およびSO49((5’−アセトキシ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)プロパ−2−エノアートから選択されたスピロ化合物に由来する。
【0077】
さらに、本発明による課題は、動物または人、特に未熟児の血液または組織中の検体の濃度を測定するための請求項18による方法によって解決され、前記濃度、および特に前記動物または前記人の皮膚抵抗を測定するために、検体は、前記検体に対する第1の透過性を備える手段を通して、また前記検体に対する第2の透過性を備える手段を通して拡散され、前記2つの透過性は異なる。前記手段は、メンブレンが第1の透過性を備える第1の状態を備える第1の状態、およびメンブレンが第2の透過性を備える第2の状態を備える単一のメンブレンを備えてもよい。代わりに、前記手段は、第1の透過性を(例えば、永続的に)備えるメンブレン、および第2の透過性を(例えば、永続的に)備える別のさらなるメンブレンによって形成されてもよい。
【0078】
好ましい実施形態において、方法は、
−(前記動物もしくは前記人の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体を前記検体に対する第1の透過性を備えるメンブレンを通して拡散させるステップと、
−(前記動物もしくは前記人の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体をさらなるメンブレンを通して、または前記検体に対する第2の透過性を備える前記メンブレンを通して拡散させるステップと、
−第1の透過性を備えるメンブレンを通して拡散する検体の第1の濃度、および第2の透過性を備えるメンブレンを通して、または第2の透過性を備えるさらなるメンブレンを通して拡散する検体の第2の濃度を測定するステップと、
−前記第1および第2の濃度を用いて血液もしくは組織中の前記検体の濃度を決定するステップと
を含む。
【0079】
好ましくは、本発明によるデバイスは、本発明による方法を実施するために用いられる。
【0080】
好ましくは、(検体に関してそれぞれが異なる透過性をもつ)2つの状態を有するメンブレンが用いられるときに、メンブレンは、第1の状態にされる。
【0081】
好ましくは、(患者の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体は、第1の状態にあるメンブレンを通して拡散されて、次に、好ましくは、拡散チャンバにおいて好ましくは灌流媒体中に収集される。代わりに、検体が拡散チャンバから(例えば、灌流媒体外へ)第1の状態にあるメンブレンを通して皮膚の方へ拡散することもある(このケースでは灌流媒体が検体をまさに最初から含み、ここでも同様に検体の特定の第1の濃度が灌流媒体中で確立される、上記参照)。第1の透過性は、第2の透過性より高くてもよい(逆もまた同様)。
【0082】
好ましくは、第1の濃度の検体を伴う灌流媒体は、特に検体を分析手段へ運ぶ灌流媒体を、拡散チャンバを通してポンピングすることによって分析手段へ輸送される。
【0083】
好ましくは、流動性灌流媒体中の検体の第1の濃度が測定されて、特に分析手段によって記憶される。
【0084】
好ましくは、メンブレンは、次に、特にメンブレンを第1の状態に保つために第1の波長の光をメンブレン上に照射することによって、および次にメンブレンを第2の状態にスイッチしてその状態に保つためにメンブレンに第2の波長の光を照射することによって、第1の状態から第2の状態へスイッチされる。上記のその他の方法が用いられてもよい。
【0085】
次に、好ましくは、(患者の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体が第2の状態にあるメンブレンを通して拡散されて、次に、好ましくは、拡散チャンバにおいて好ましくは灌流媒体中に収集される。代わりに、検体が拡散チャンバから(例えば、灌流媒体外へ)第2の状態にあるメンブレンを通して皮膚の方へ拡散することもある(このケースではやはり灌流媒体が検体をまさに最初から含み、ここでも同様に検体の特定の第2の濃度が灌流媒体中で確立される、上記参照)。
【0086】
好ましくは、(前の第1の濃度より低いかまたは高い)検体の第2の濃度を示す灌流媒体は、特に検体を分析手段へ運ぶ灌流媒体を、拡散チャンバを通してポンピングすることによって分析手段へ輸送される。
【0087】
好ましくは、流動性灌流媒体中の検体の第2の濃度が測定される。
【0088】
好ましくは、次に、2つの測定濃度を用いて分析手段によって、例えば、上記のように関係(5)または(5’)を用いることによって血液中(例えば、グルコース)または皮膚中の検体の濃度が決定される。
【0089】
分析手段は、2つの測定濃度、例えば、上記の前記関係(5)または(5’)を用いて当人の血液または組織中の検体の濃度を決定するようになっているプログラムコードを備える、適切なコンピュータープログラムが実行されるコンピュータを備えてもよい。
【0090】
(第1の)メンブレンおよびさらなる(第2の)メンブレンが用いられるケースでは、方法は、好ましくは以下のように実施される、すなわち、
【0091】
好ましくは、(患者の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体は、前記検体が第1のメンブレンを通して拡散するように皮膚を第1のメンブレンと接触させることによって、第1のメンブレンを経由してプローブヘッドの第1の拡散チャンバにおいて(例えば、灌流媒体中に)収集される。代わりに、検体が第1の拡散チャンバから(例えば、灌流媒体外へ)(第1の)メンブレンを通して皮膚の方へ拡散することもある(このケースでは灌流媒体が検体をまさに最初から含み、ここでも同様に検体の特定の第1の濃度が灌流媒体中で確立される、上記参照)。第1の透過性は、第2の透過性より高くてもよい(逆もまた同様)。
【0092】
好ましくは、検体の第1の濃度を示す灌流媒体は、特に検体を分析手段へ運ぶ灌流媒体を第1の拡散チャンバを通してポンピングすることによって分析手段へ輸送される。
【0093】
好ましくは、灌流媒体中の検体の(第1の)濃度が測定されて、特に分析手段によって記憶される。
【0094】
次に、好ましくは、(患者の皮膚を通して例えば受動的に拡散された)検体は、検体が第2のメンブレンを通して拡散するように皮膚を第2のメンブレンと接触させることによって、第2のメンブレンを経由してプローブヘッドの第2の拡散チャンバにおいて(例えば、灌流媒体中に)収集される。
【0095】
第1および第2の拡散チャンバにおいて検体を収集するステップは、原理的に同時に、すなわち、並行して行うことができる。
【0096】
好ましくは、(第1の濃度より低いかまたは高い) 検体の第2の濃度を示す灌流媒体は、特に検体を分析手段へ運ぶ灌流媒体を第2の拡散チャンバを通してポンピングすることによって分析手段へ輸送される。
【0097】
好ましくは、流動的灌流媒体中の検体の第2の濃度が測定される。原理的に、検体の2つの濃度は、同時に、すなわち、並行して測定されてもよい。
【0098】
好ましくは、次に、2つの測定濃度を用いて分析手段によって、例えば、上記のように関係(5)または(5’)を用いることによって血液中(例えば、グルコース)または皮膚中の検体の濃度が決定される。
【0099】
かさねて、分析手段は、2つの測定濃度、例えば、上記の前記関係(5)または(5’)を用いて当人の血液または組織中の検体の濃度を決定するようになっているプログラムコードを備える、適切なコンピュータープログラムが実行されるコンピュータを備えてもよい。
【0100】
有利なことに、本発明による方法は、早産児の皮膚のように非常に透過性の高い皮膚にとって非侵襲的であり、あるいは皮膚の透過性が非常に高い検体(すなわち、未処理の皮膚を測定可能な量で通過するすべての分子、例えば、早産の新生児に対するグルコース)を非侵襲的に測定できる。このケースでは、血中検体濃度を測定するために侵襲的な方法(例えば、マイクロニードル)を全く必要としない。
【0101】
しかしながら、本発明による方法は、透過性がより低い皮膚に用いられてもよい。本明細書では、本発明による方法を実施する前に、所望の検体に対する皮膚の透過性を十分高めるために低侵襲の方法(例えば、皮膚を穿刺するマイクロニードル、皮膚剥削、レーザ・アレイを用いたマイクロドリル加工または他の化学的、電磁気的、熱的および機械的方法による角質層の薄層化)によって患者の皮膚が用意されてもよい。
【0102】
さらに、本発明に従って所望の検体を測定する前に、ソノフォレシス、電気泳動法によって、または表面皮膚層を機械的また化学的に除去することによってその透過性を増加させるように皮膚が用意されてもよい。
【0103】
独立請求項として明記されてもよい発明のさらなる態様によれば、デバイスが提供され、検体は、動物もしくは人の皮膚を通して拡散していないが、その濃度が未知のリザーバから、拡散に対するその抵抗が未知のバリアを通して受動的に拡散しており、その検体がこのデバイスによって測定されるであろう。
【0104】
本発明のさらなる特徴および利点が実施形態の詳細な記載により図面を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】本発明によるデバイスの実施形態の概略図(縮尺通りではない)を示す。
図2】本発明によるデバイスのプローブヘッドの概略断面図(縮尺通りではない)を示す。
図3】乳児の上に置かれたプローブヘッドの概略図(縮尺通りではない)を示す。
図4】本発明によるデバイスのプローブヘッドの斜視図を示す。
図5図4に示されるプローブヘッドの上面図を示す。
図6図5のラインA−Aに沿ったプローブヘッドの断面図を示す。
図7図6の円Bによって囲まれたプローブヘッド細部の断面図を示す。
図8図6の円Cによって囲まれたさらなるプローブヘッド細部の断面図を示す。
図9】拡散チャンバを含むプローブヘッドの一部の斜視図を示す。
図10図9に示される部分の側面図を示す。
図11図9による拡散チャンバ上の平面図を示す。
図12図10の断面A−Aを示す。
図13図11の断面B−Bを示す。
図14図13の細部Cを示す。
図15図13の細部Dを示す。
図16】本発明によるデバイスの概観図を示す。
図17】グルコース濃度を測定するための本発明によるデバイスのマイクロ流体チップを示す。
図18図17に示される種類のマイクロ流体チップのためのモールドを示す。
図19図17に示される種類のマイクロ流体のチップのためのモールドを示す。
図20】本発明に用いることができる合成スピロ化合物SP5(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エタノール)を示す。
図21】本発明に用いることができる合成スピロ化合物R=Me(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エチル2−メチルプロパ−2−エノアート)をもつSP7、およびR=H(2−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)エチルプロパ−2−エノアート)をもつSP9を示す。
図22】本発明に用いることができる合成スピロ化合物SP12(3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパン酸を示す。
図23】本発明に用いることができる合成スピロ化合物R=Me(2−[3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパノイルオキシ]エチル2−メチルプロパ−2−エノアート)をもつSP14、およびR=H(2−プロパ−2−エノイルオキシエチル3−(3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ[クロメン−2,2’−インドリン]−1’−イル)プロパノアート)をもつSP16を示す。
図24】本発明に用いることができる合成スピロ化合物SO37(1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−オール)を示す。
図25】本発明に用いることができる合成スピロ化合物R=Me((1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)2−メチルプロパ−2−エノアート)をもつSO39、およびR=HをもつSO50((1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)プロパ−2−エノアート)を示す。
図26】本発明に用いることができる合成スピロ化合物SO49((5’−アセトキシ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[f][1,4]ベンゾオキサジン−3,2’− インドリン]−9−イル)プロパ−2−エノアート)を示す。
図27】上から見られる拡散チャンバ内の3D流の流線を示し、流れは層流である。
図28】0(物質が何も抽出されない)と1(血液中と同じ濃度)との間の値を有する局所的透析物抽出比を示す拡散チャンバの断面を示す。示されるのは、低透過性のメンブレンを用いた3D有限要素法からの結果である。
図29図28と同様。高透過性のメンブレンを用いてシミュレートされた。
図30】理論からまたはFEMシミュレーションから決定されるような拡散チャンバの出口における全透析物抽出比を示す。2つの結果は、線形比例し、R=9.99999である。
図31】適用範囲内で透析物抽出比がメンブレン透過性に線形比例し、R=9.99997であることを示す。
図32】標準的な蛍光光度計および速度論的酵素UV法を用いたグルコース濃度測定を示す。測定結果の95%がその間に位置すべき上限および下限も示される(±2RMSE)。
図33】マイクロ流体工学マイクロ蛍光光度計を用いたグルコース濃度測定を示す。測定結果の95%がその間に位置すべき上限および下限も示される(±2RMSE)。
図34】プラズマ誘起スピロベンゾピランおよびPHEMA被覆トラックエッチ(track−edged)・ポリカーボネート・メンブレン(細孔径:200nm)の透過性の変化を示す。
図35】耳からのテープ状ブタ皮膚を通してのグルコース拡散実験を示す。光の吸収は、グルコース濃度に比例する。
図36】本発明によるデバイスの実施形態の(縮尺通りではない)概略図である。
図37】乳児の上に置かれた図36のプローブヘッドの(縮尺通りではない)概略図である。
図38図36および37のプローブヘッドの斜視図である。
図39図36〜38のプローブヘッドの分解組立図である。
図40】メンブレンから見て反対側の図39のプローブヘッドの表側の図である。
図41図40のラインA−Aに沿った断面図を示す。
図42図41の細部Cを示す。
図43】(メンブレンのない)図38のプローブヘッドの拡散チャンバの図を示す。
図44】プローブヘッドの拡散チャンバ上の平面図を示す。
図45図44のラインA−Aに沿った断面図を示す。
図46図45の細部Bを示す。
図47】マイクロ流体チップの形態の分析手段がプローブヘッド中に一体化された、本発明によるプローブヘッドの実施形態の分解組立図を示す。
図48図47のプローブヘッドの上側の平面図を示す。
図49図47および48のプローブヘッドの平面図を示す。
図50図47〜49のプローブヘッドの拡散チャンバを示す。
図51】端部に真空調節器が付いた追加の真空ポンプをもつ、本発明による図16のデバイスの修正形態を示す。
図52図17および47に示される種類のマイクロ流体チップのためのモールドのSEM顕微鏡写真を示す。
図53図17および47に示される種類のマイクロ流体チップのためのモールドのSEM顕微鏡写真を示す。
図54図47に示される種類の拡散(微小透析)チャンバのためのモールドのSEM顕微鏡写真を示す。
図55図36〜46に示されるプローブヘッドの拡散チャンバ内の3D流の流線を示し、流れは層流である。
図56】0(物質が何も抽出されない)と1(血液中と同じ濃度)との間の値を有する局所的透析物抽出比を示す、図38、44における種類の拡散チャンバのモデルの断面図を示す。示されるのは、高透過性のメンブレンを用いた3D有限要素法からの結果である。
図57】0(物質が何も抽出されない)と1(血液中と同じ濃度)との間の値を有する局所的透析物抽出比を示す、図38、44における種類の拡散チャンバのモデルの断面図を示す。示されるのは、低透過性のメンブレンを用いた3D有限要素法からの結果である。
図58】理論からまたはFEMシミュレーションから決定されるような、図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における全透析物抽出比を示す。2つの結果は、線形比例し、R=1である。
図59】適用範囲内で、図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における透析物抽出比が理論R=0.9996およびシミュレーションR=0.9998の両方に対してメンブレン透過性に線形比例することを示す。
図60】理論から予測されるように、3D FEMシミュレーションにおける拡散チャンバであれば、図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における透析物抽出比が高さに依存しないことを示す。チャンバ高さと透析物抽出比との間に有意な相関関係はない。異なる点間の透析物抽出比における差は、計算誤差に由来する。
図61】一旦白色光に曝露され、一旦UV光に露光された、2つの異なる状態を用いて測定された図36〜46の種類のプローブヘッドの透析物抽出比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
図1は、本発明によるデバイス1の実施形態の概略図を示す。デバイス1は、患者Pの皮膚2と接触するためのメンブレン30によって区切られた(微小透析チャンバとも表される)拡散チャンバ100を備えるプローブヘッド10(図4も参照)を備え、拡散チャンバ100は、灌流媒体3を拡散チャンバ100中へ供給するため、またそれを拡散チャンバ100外へ排出するための入口101および出口102を備え、出口102は、検体がメンブレンの第1の状態においてメンブレン30を通して拡散した、灌流媒体3中のその検体(例えば、グルコース)の濃度、および検体がメンブレンの第2の状態においてメンブレン30を通して拡散したときの、灌流媒体3中の検体の濃度を測定するために分析手段20へ接続され、前記検体に対するメンブレン30の透過性は、検体の2つの濃度が異なるように前記2つの状態において異なる。
【0107】
さらに、分析手段20へ流れる灌流媒体3との前記混合物中の検体の濃度のエクスビボ測定のために試薬4が提供される。前記濃度を測定するために、分析手段20は、好ましくは、グルコース濃度を決定するマイクロ流体チップ201を備える、(異なる濃度測定が選ばれるならば随意的な)マイクロ蛍光光度計200、およびマイクロ蛍光光度計200からのグルコース濃度を計算するため、それを表示するため、またメンブレン30を第1の状態から第2の状態およびその逆にスイッチするための励起を制御するためのコンピュータ202または専用組込型コンピュータを備える。好ましくは、メンブレン30は、光源40を用いて光、好ましくは300nm〜400nmの範囲内の、第1の波長を有する、特にUV光をそれに照射することによって第1の状態へスイッチされ、光源2を用いて光、特に500nm〜650nmの範囲内の、第2の波長を有する、特に可視光をそれに照射することによって第2の状態へスイッチされる。
【0108】
図2は、本発明によるデバイス1のプローブヘッド10の概略断面図を示す。それによれば、光源40は、プローブヘッド10中に直接組み込むことができ、または遠くに位置してライトガイド401でプローブヘッド10へ接続できる。プローブヘッド10が患者Pの皮膚2と接触したときに、患者Pのエクスビボ体液の前記検体(例えば、グルコース)A’は、拡散チャンバ100を区切る、メンブレン30を通してチャンバ100中へ拡散できる。
【0109】
図3からわかるように、好ましくは、単にプローブヘッド10が患者Pと接触する。
【0110】
図4〜15は、本発明によるデバイス1のプローブヘッド10の好ましい実施形態を示す。
【0111】
プローブヘッド10は、好ましくはUVに透明なPMMAから形成された本体11(図6参照)を備える。本体11は、本体11の後側にUV/可視光を光源40からメンブレン30へ導くように設計された光ガイド401の自由端401aを挿入するための第1のリセス12を備え、自由端401aを3つのねじ402によってクランプできるように合ったねじ山を有する関連づけられた開口部403(図12参照)を通して前記第1のリセス12中へ突き出た、3つのねじ402によってその光ガイド401を本体に対して配置して、固定することができる。本体11は、前記後側から見て反対側の本体の表側に前記拡散チャンバ100を形成するU字形の第2のリセス100をさらに備え(図8、9,13、および14参照)、その第2のリセス100は、前記光スイッチ可能なメンブレン30によってカバーされ、メンブレン30は、第2のリセス/膨張チャンバ100をメンブレン30でカバーするためにメンブレン30を本体11に固定するときに、前記本体11の横側に形成された円周溝14に配置された弾性Oリング13によって本体11に解除可能にクランプされる(図6、7、9、および10参照)。スイッチ可能なメンブレン30は、それ自体をプローブヘッド10に解除可能に自己接着することもでき、延いては弾性Oリング13および円周溝14を必要としないであろう。
【0112】
図4,5、および6に示されるように、プローブヘッド10は、前記入口101へ流れが接続している第1の導管110、および前記出口102へ流れが接続している第2の導管111をさらに備え、前記入口101および出口102は、前記第1のリセスの底部に形成され、前記入口101および前記出口102は、図12、13、14および15に示されるようにそれぞれが前記U字形拡散チャンバ100の端部へ開く貫通開口部として形成される。
【0113】
患者Pの血液中の検体の実際の濃度を決定するために、皮膚およびメンブレン30を通して受動的に拡散するエクスビボ検体が分析される。このために、これら検体は、灌流媒体3によってプローブヘッド10から分析手段20へ運び去られる。然るべき分析は、灌流媒体3中の検体濃度の測定を許容する。それゆえに、メンブレンの拡散抵抗を変化させるための外部刺激として光が当てられ、すなわち、メンブレン30が第1の状態からその第2の状態にされる。検体分析の第2の実行後に、異なるメンブレン状態を用いた2つの連続した濃度測定から血中検体レベルを計算できる。
【0114】
グルコース分析のために、分析手段20によって、グルコースを含む灌流媒体/流体をグルコースの化学量論的変換用酵素溶液と混合できる。この最終的な溶液が次に分析手段20の蛍光光度計によって分光学的に分析されることになる。この溶液は、図1および16に示されるようにプローブヘッド10の出口102へ接続されたマイクロ流体チップ201中へ移される。
【0115】
図16は、本発明によるデバイス1のブロック図を示す。灌流媒体3は、粒子フィルタ114および液体流量計115を経由して入口101からプローブヘッド10の拡散チャンバ100中へポンピングされ、検体を分析手段20へ、すなわちそれぞれの灌流媒体3中のグルコース濃度を測定するように設計されたマイクロ蛍光光度計200のマイクロ流体チップ201へ輸送する。既知の流量の灌流媒体3が用いられるので、それぞれの流体3中のグルコース濃度を分析手段20によって決定できる。
【0116】
そのうえ、マイクロ蛍光光度計200へ流れる濃度のエクスビボ測定のための試薬または試薬流体4(好ましくは、ヘキソキナーゼ/グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ/ATP/緩衝液/Mg2+水溶液)(異なる濃度測定が選ばれるならば、いずれも随意的;分析手段は、所要範囲内の濃度を好ましくは連続的に(またはほとんど連続的に)十分な精度でモニタすることをまさに許容すべきである)が計量計116および粒子フィルタ117を経由して分析手段20のマイクロ蛍光光度計200へポンピングされる。
【0117】
それぞれのグルコース濃度を決定するマイクロ流体チップ201は、マイクロ蛍光光度計200によって測定される2つの異なるメンブレン状態に対する2つの濃度からグルコース濃度を計算するためのコンピュータまたは専用組込型コンピュータに接続される。コンピュータ202は、さらに、患者Pの血液中の検体の計算された濃度を表示するように、かつ2つの状態間でメンブレン30をスイッチするスイッチング手段(光源40)を制御するように設計される。分析された透析物は、廃物容器203中へ排出される。
【0118】
さらに、空気圧縮機120または圧縮空気ライン、高精度空気圧調節器118(例えば、フィードバックおよびベント付き)、および空気圧測定デバイス119は、灌流媒体3のプローブヘッド10/拡散チャンバ100を通してマイクロ蛍光光度計200中への、また試薬流体4の前記マイクロ蛍光光度計200中への非常に小さい圧力変動での圧力駆動流を許容し、非常に低い流量変動、従って、以下の式(9)における非常に小さい誤差をもたらす。空気圧縮機/圧縮空気ライン120からの圧力は、試薬流体および灌流媒体(または灌流液)のための2つのリザーバ3、4が加圧されるように、2つの高精度圧力調節器118へ加えられる。次に、各リザーバ3、4の圧力差を(大気圧にある)分析手段の出口の圧力と比較して制御すると、圧力差がプローブヘッド10、配管およびマイクロ流体チップ中へ層流をもたらすことになる。
【0119】
既に先に導入されたように、フィックの法則は、患者の皮膚およびメンブレン30を介しての受動拡散をモデリングする:
g,body−Cg,sensor=F(R+R) (1),
ここでCg,bodyは、血中グルコース濃度、Cg,sensorは、拡散チャンバ100におけるグルコース濃度、Fは、皮膚およびメンブレン30を通してのグルコース流量、Rは、グルコース拡散に対する皮膚抵抗、Rは、グルコース拡散に対するメンブレン抵抗であり、状態ごとに1つの、2つの値を有する。未知数は、血中グルコース濃度Cおよびグルコース拡散に対する皮膚抵抗Rである。濃度およびグルコース拡散流量を2つのメンブレン抵抗に対して測定することで、皮膚抵抗および血中グルコース濃度の両方を決定できる。
【0120】
そこで、濃度勾配を高く、従って、グルコース拡散流量を高く保つために、上記の微小透析セットアップにおいてセンサが前記灌流媒体でフラッシュされる。かくして、拡散チャンバ100を通る流れの流線にわたって一旦積分されると、式(1)は、
【0121】
【数6】
【0122】
となり、項
【0123】
【数7】
【0124】
は、透析物抽出比とも称され、ここでQは(Q ist he)、透析物流量であり、Aは、メンブレンと接触している微小透析チャンバ面積である。
【0125】
【数8】
【0126】
であれば、(3)における透析物抽出比を線形化できる。その時には、式(2)は、以下のようになる。
【0127】
【数9】
【0128】
次に、2つの対応するメンブレン状態に対する2つの検体濃度CmlおよびCmh、または2つのメンブレン抵抗値RmlおよびRmhを測定することで、(4)から血中グルコース濃度を得る。
【0129】
【数10】
【0130】
理論的な測定誤差は、以下のように計算される。
【0131】
【数11】
【0132】
従って、次の値(Rは近似である)を用いると、無視できるRml<<Rmh,Rmh=R
=1’200’000scm−1
=5μLmin−1
Am=4cm
【0133】
式6〜10は、以下を与える。
【0134】
【数12】
【0135】
蛍光測定を用いた濃度測定のためのマイクロ流体チップ201の原理は、図17に示される。チップ201は、好ましくは、[1]に詳細に記載される非標準的フォトリソグラフィ・プロセスによって作製されたシリコン・モールド上のSU−8上へモールドされたポリジメチルシロキサン(PDMS:polymethylsiloxane)から作られる。チップ201は、例えば、射出成形によってポリカーボネート(PC:polycarbonate)から作られてもよい。チップ201は、連続的な流速を用いる。チップ201は、最初に、(例えば、灌流媒体とのそれぞれの混合物において)透析物中に希釈された検体を標準的なヘキソキナーゼ・グルコース・アッセイのための液体試薬4と受動的に混合する。受動拡散を用いた混合時間は、反応遅れ時間と比較して無視できる。従って、酵素反応は、拡散律速ではなく、擬一次反応速度に従う。共役酸素反応の遅れ時間のための遅延チャンネル(60s)24がある。作製されたチャンネルの高さは、チャンネル中の遅延が変化しないように制御されて一定である。厚い構造上で±2.5%のチャンネル均一性を有する、このプロセスは、シリコンウェーハの中心部分のみをモールドのために用いた、多層UVパターン形成SU−8フォトレジストによる非標準的な作製プロセスである。チャンネル内の流れは、横方向の混合がほとんど生じないように、すなわち、流れがチャンネル長にわたって均一であるように層流に保たれる。
【0136】
詳しくは、図17に示されるように、透析物中のグルコース濃度をモニタするためのマイクロ流体チップ201は、試薬流体4のための試薬入口21、前記透析物のために用いられる透析物入口22、透析物および試薬流体4を混合するためのマイクロミキサー23、前記遅延チャンネル24、第1の蛍光チャンバ25、第2の遅延チャンネル26、第2の蛍光チャンバ27、および測定された透析物を排出するための廃物出口28を備える。
【0137】
図18は、プローブ体積251、可視光(VIS:visible light)蛍光放射収集ファイバ252、および紫外UV蛍光励起光253をもつ製造されたモールドの蛍光チャンバ25を示す。
【0138】
図19は、プローブ体積251、可視光(VIS)蛍光放射収集ファイバ252、および紫外UV蛍光励起光253をもつ製造されたモールドの蛍光チャンバ25のバリエーションを示す。
【0139】
第1の遅延チャンネル24後に、7sの第2の遅延チャンネル26によって分離された2つの蛍光チャンバ25、27を用いて擬一次反応が定点法によってモニタされる。酵素反応生成物の2つの蛍光信号間の差異は、グルコース濃度に比例する。蛍光チャンバ25は、3つの埋め込み光ファイバを有し、1つは340nmにおける蛍光励起用、および2つは450nmにおける放射用である。励起は、フィルタされたUVランプ、レーザ、またはLEDに由来し、放射は、冷却されたシリコン光電増倍管(SiPM:Si photomultiplier)上で測定される。
【0140】
この特定の例では、メンブレン30の透過性の第1の状態から第2の状態へ変化させるために2つの異なる波長が用いられた。
【0141】
フォトクロミック化合物としては、図20〜26に示されるようなスピロベンゾピラン化合物およびスピロオキサジン化合物が用いられた。
【0142】
スピロ化合物は、スピロ化合物のアクリレート誘導体と、MMA(メチルメタクリレート:methyl methacrylate)、AEMA(アミノエチルメタクリレート:aminoethyl methacrylate)、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート:hydroxyethyl methacrylate)もしくはHEA(ヒドロキシエチルアクリレート:hydroxyethyl acrylate)、HEA−TMS([ トリメチルシリルオキシ]ヒドロキシエチル:[trimethylsilyloxy]hydroxyethyl))またはPDMS((α,オーム)−メタクリルオキシプロピルポリ(ジメチルシロキサン):(α,オーム)−methacryloxypropyl poly(dimethylsiloxane))との共重合によって、あるいは、スピロ化合物のカルボン酸誘導体がグラフトされたPAEMA(ポリ(N−アミノ)エチルメタクリレート:poly(N−amino)ethyl methacrylate)、PHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート:polyhydroxyethyl methacrylate)もしくはPHEA(ポリヒドロキシエチルアクリレート:polyhydroxyethyl acrylate)層またはポリマーネットワークの後変性によってグラフト・ポリマー中に一体化された。
【0143】
図20は、第1の例に従って合成されたスピロ化合物SP5を示す。
【0144】
図21は、第2および第3の例に従って合成されたスピロ化合物、R=MeをもつSP7およびR=HをもつSP9を示す。
【0145】
図22は、第4の例に従って合成されたスピロ化合物SP12を示す。
【0146】
図23は、第5および第6の例に従って合成されたスピロ化合物、R=MeをもつSP14およびR=HをもつSP16を示す。
【0147】
図23は、第7の例に従って合成されたスピロ化合物SO37を示す。
【0148】
図24は、第8および第9の例に従って合成されたスピロ化合物、R=MeをもつSO39およびR=HをもつSO50を示す。
【0149】
最後的に図25は、第10の例に従って合成されたスピロ化合物SO49を示す。
【0150】
光応答性メンブレン30は、異なる方法で調製された、すなわち、
【0151】
15nm、30nm、50nm、100nm、200nm、400nm、1000nmの細孔径をもつ市販のトラックエッチされたポリカーボネート・メンブレンが、スピロベンゾピランアクリレートおよびPMMAのコポリマーを含むポリマー溶液を用いてディップコートされた。
【0152】
スピロベンゾピランアクリレート・モノマー自体を重合することもできる。コモノマーは、主としてスピロベンゾピラン・スイッチの効果およびスピロピランの光安定性を高めるために役立つ。コポリマーは、図21(CAS番号がR=Hでは89908−23−6、R=CHでは25952−50−5である)または図23によるスピロベンゾピランを1〜10%の間で含んだ。最良のスイッチングは、4%のスピロベンゾピランで観測された。被覆された他の膜は、トラックエッチされたポリエステル・メンブレンおよびPVDFメンブレンであり、より低い透過性の変化を示した。透過性の変化は、カフェインおよびグルコースの水溶液を用いて実証された。
【0153】
【化5】
【0154】
さらに、15nm、30nm、50nm、100nm、200nm、400nm、1000nmの細孔径をもつトラックエッチされたポリカーボネート・メンブレンのプラズマ誘起グラフト表面重合が製造された。スピロベンゾピランアクリレートおよびコモノマー(2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、2−アミノメタクリラート、メチルメタクリレート)からなるコポリマーがプラズマ処理メンブレンからグラフトされた。グラフトされたポリマー中のスピロベンゾピランの量は、1〜100%の間であった。スピロベンゾピランアクリレートは、いくつかの実験ではスピロオキサジンアクリレートで置き換えられた。透過性の変化は、カフェインおよびグルコースの水溶液を用いて実証された。
【0155】
さらに、200nmの細孔径をもつトラックエッチされたポリエステル・メンブレンから表面誘起原子移動ラジカル重合(SI−ATRP:surface−induced atom transfer radical polymerization)が行われた。スピロベンゾピランアクリレートおよびコモノマー(2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシメタクリレート(HEMA)、2−アミノメタクリレート(AEMA)、メチルメタクリレート(MMA))からなるコポリマーがプラズマ処理されたメンブレンからグラフトされた。グラフトされたポリマー中のスピロベンゾピランの量は、0.4〜13%の間であった。透過性の変化は、カフェインの水溶液を用いて実証された。
【0156】
さらに、親水性ドメインとしてポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレートル)および疎水性ドメインとして(α,オーム)−メタクリルオキシプロピルポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)からなるメンブレンが両親媒性共ネットワークとして用いられた[2,フォトクロミック・ユニットのない両親媒性共ネットワークのレシピー]。異なる重量比(wt%)のHEA:PDMS(70:30,60:40,50:50,40:60)およびスピロベンゾピランアクリレート(0.05〜2wt%)をもつメンブレンが製造された。いくつかの実験ではスピロベンゾピランがスピロオキサジンアクリレートで置き換えられた。透過性の変化は、カフェインの水溶液を用いて実証された。メンブレン30がプローブヘッド10のみに付着するが患者の皮膚には付着しないケースでは(例えば、両親媒性共ネットワークのケースでは)、Oリング13が省略されてもよい。一般に、入口および出口101、102(例として図2参照)は、位置を切り替えてもよく、出口は、依然として分析手段20に接続される。
【0157】
プローブヘッド10の寸法は、もちろん変更できる。特にメンブレン透過性のスイッチング刺激が例えば電気刺激に変えられるケースでは材料を変更できる。結果として、紫外光への透明性は、もはや必要ないであろう。
【0158】
チップ201上のマイクロ蛍光光度計の代わりに標準的な蛍光光度計を用いてもよい。標準的な蛍光光度計もキャピラリでプローブヘッド10へ接続されるであろう。マイクロ流体チップ201の材料も変更されてよい。蛍光の代わりに、吸収分光法を用いてもよい。SiPMの代わりに、光電子増倍管または他の高感度光検出器を用いてもよい。一般に、酵素反応の代わりに十分に正確なオンライン・グルコース濃度を用いてもよい。さらに、他の代謝物を測定する必要があれば、酵素反応も変更しなければならない。
【0159】
灌流媒体3中に薬剤を含めることによって、デバイス1を制御されたドラッグデリバリーに用いることができるであろう。
【0160】
センサの作動原理は、刺激を与えることによって透過性を変化させるインテリジェントなメンブレンを用いる代わりに、異なる透過性をもつ2つのメンブレンを並べて用いることによっても機能できるであろう。透過性におけるかかる変化は、光、温度、pHまたは電気の変化のいずれかによってトリガできる。
【0161】
光応答性メンブレン中に一体化できるであろう他のフォトクロミック分子は、
−アゾベンゼン
−クマリン、および
−ジチエニルエテン
である。
【0162】
さらに、プローブヘッド10の広範な有限要素法シミュレーションが実施された。実際の3D幾何構造がシミュレーションに用いられた。流れに対する境界条件は、次のように選ばれた、すなわち、圧力駆動流によるチャンバ壁に対して滑りのない流れ、および入口への層流パターンならびに出口102における大気圧。微小透析チャンバ100内の流れの3Dパターンは、図27に示されるように層流である。
【0163】
さらに、図28は、低透過性のメンブレン30を用いた3D有限要素法から生じるような0(物質が何も抽出されない)と1(血液中と同じ濃度)との間の無次元値をもつ局所的透析抽出比を示す拡散チャンバ100の断面図を示す。
【0164】
さらに、図29は、図28と同様であるが、より高い透過性のメンブレン30を用いたシミュレーションを示す。
【0165】
皮膚および本発明によるスマート・メンブレン30を通しての5ミリモル/Lのグルコース濃度の拡散が異なる透過性状態を用いてシミュレートされた。図30は、グルコースが低透過性状態をもつメンブレン30を通して拡散された拡散チャンバ100内の透析物抽出比(血液中の同じ物質の濃度で除した透析物中の物質の濃度)の断面図を示す。図31は、高透過性状態について同じことを示す。図30は、シミュレートされた出口における透析物抽出比を理論と比較してプロットする。2つは、高度に相関し、R=0.99999であるが、関係が厳密に1対1ではない。壁に近づくと流速が減少する曲がった層流パターンがこの差異を説明する。この差異は、微小透析ヘッド10後により高い濃度が連続的に測定されることおよびより良好な精度を意味するため、都合がよい。
【0166】
図31は、グルコースの適用予想範囲内で透析物抽出比がメンブレン透過性に対して高度に線形比例し、R=0.99997であることを示す。これが意味するのは、血中グルコースを測定するために2つのメンブレン状態のみを用いうるということである。
【0167】
蛍光光度計を用いて然るべき精度でグルコース濃度を決定できるであろうということが示された。図32は、酵素反応を用いた非常に低いグルコース濃度の蛍光測定結果を示す。図33に示されるように、マイクロ蛍光光度計を用いて同じ原理でグルコース濃度を測定できるであろう。
【0168】
グルコースへのメンブレン透過性を日光ではなく、366nmのUV光への曝露によってスイッチできることも実証された。結果は、プラズマ誘起スピロベンゾピランおよびPHEMA被覆トラックエッチ・ポリカーボネート・メンブレン(細孔径:200nm)を用いて図34に示される。
【0169】
最後に、耳からのテープ状ブタ皮膚を用いたインビトロ・テスティングは、図35に示されるようにフランツセル実験を用いたグルコースの受動拡散プロセスを呈示した。
【0170】
グルコース測定は、多大な臨床的価値を有するため、本発明によるデバイス1の1つの可能な用途として上記ではグルコース測定が記載された。しかしながら、皮膚を通して拡散する任意の検体に同じ原理を適用でき、デバイス1は、非侵襲的診断法の広範な新しいアプローチを可能にする。
【0171】
可能な検体の例:乳酸塩、グルコース、クレアチニン、ビリルビン、尿素、アンモニア、オピオイド、コカイン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、カフェイン、(医薬の服用を制御するための)薬剤。
【0172】
図36〜46は、本発明によるデバイス1/プローブヘッド10のさらなる実施形態を示す。
【0173】
この場合もやはり、プローブヘッド10は、患者Pの皮膚2と接触するためのメンブレン30によって区切られた拡散チャンバ(微小透析チャンバとも表される)100を備え、拡散チャンバ100は、灌流媒体3を拡散チャンバ100中へ供給するため、また灌流媒体を拡散チャンバ100外へ排出するための入口101および出口102を備える。プローブヘッド10は、入口101に流れが接続している第1の導管110(例えば、キャピラリ)、および出口102に流れが接続している第2の導管111(例えば、キャピラリ) をさらに備える。前記第2の導管111を経由して、出口102は、検体がメンブレンの第1の状態においてメンブレン30を通して拡散した、灌流媒体3中のその検体(例えば、グルコース)の濃度、および検体がメンブレンの第2の状態においてメンブレン30を通して拡散したときの灌流媒体3中の検体の濃度を測定するための分析手段20へ接続され、前記検体に対するメンブレン30の透過性は、検体の2つの濃度が異なるように前記2つの状態で異なる。
【0174】
プローブヘッド10は、図16に関連して記載されるデバイスとともに用いられてもよい。さらに、本明細書に記載されるすべてのプローブヘッド10は、図51に示されるデバイスとともに用いられてもよい。図51に示されるデバイス1は、図16のデバイスに対応し、違いは、図51によるデバイス1が圧力調整器118を経由して、分析された透析物を受け取るための廃物容器203へ接続された追加の真空ポンプ204を備えることである。ポンプによって発生した圧力は、圧力測定デバイス205によって測定できる。試薬流体容器も、空気圧縮機/圧縮空気ライン120の代わりに圧力調整器118を経由して、この追加の真空ポンプ204へ接続できるであろう。
【0175】
さらに、図36〜46のプローブヘッド10は、好ましくはモールドPDMSから形成された本体11を備える。本体11は、前記導管110、111が配置された本体11の後側から見て反対側の本体11の表側に前記拡散チャンバ100を形成する好ましくは円形のリセス100を備える。リセス100は、本明細書に記載されるように光スイッチング可能なメンブレン30、特に上述の両親媒性共ネットワークによってカバーされる。
【0176】
メンブレン30の親水性ドメインは例えばPDMSから作られるので、酸素プラズマを用いた表面処理によってメンブレン30をプローブヘッド10の本体11上へ接着させることもできる。メンブレン30をUV硬化性レジストで接着させることもできるであろう。
【0177】
そのうえ、拡散チャンバ100は、メンブレン30を支持するための複数のポスト113を備える。前記ポスト113は、(例えば、図54に顕微鏡写真として示されるタイプの)グリッド構造113によって形成されてもよい。
【0178】
図47〜50は、上記のように設計されるとよい、マイクロ流体チップ201(分析手段20)がプローブヘッド10中に一体化された本発明によるプローブヘッド10のさらなる実施形態を示す。
【0179】
この場合もやはり、プローブヘッド10は、(上から下へ)患者Pの皮膚2と接触するための、例えば、矩形層の形態の(本明細書に記載される適切なメンブレンとするとよい)メンブレン30(メンブレン30の接触表面が図47ではメンブレンの上側に示される)、メンブレン30を支持するための複数のポスト(例えば、グリッド構造)113を備える拡散チャンバ100を形成する、好ましくはモールドPDMSから形成された層(本体)11、本明細書に記載されるようなメンブレン30をスイッチするために必要な光を導くためのファイバ260から来る、メンブレン励起光を均一にするための好ましくはモールドPDMSから形成された散乱層300、好ましくはモールドPDMSから形成され、ファイバ260から放射された光の強度の減少を補正するためにファイバ260への距離の2乗の密度により光を90°で反射するための好ましくは球面鏡からなるか、または球面鏡を備える光ガイド・プレート301、ファイバ260から光ガイド・プレート301中へ放射されたすべての光を(例えば、グリッド構造303の形態の)複数のポスト303によって支持された空洞でできたメンブレン30上へ反射するための好ましくはモールドPDMSから形成されたミラー層302、光を吸収して本明細書に記載されるようなマイクロ流体チップ(または分析手段)201へ光が到達するのを妨げるために好ましくは黒色光吸収色素と混合されたモールドPDMSから形成された光シールド304、可視光(VIS)を蛍光チャンバ25および27から導くためのファイバ252aならびにUV光を蛍光チャンバ25および27(上記参照)に導くためのファイバ253a、およびマイクロ流体チップ(または分析手段)201に光が到達するのをこの場合もやはり妨げて組み込まれたプローブヘッド10を包囲するために好ましくは黒色光吸収色素と混合されたモールドPDMSから形成された別の光シールド305を備える。
【0180】
プローブヘッド10は、試薬流体4をチップ201の試薬入口21へ導くための導管(例えば、キャピラリ)240(透析物入口22は、拡散チャンバ100へ接続される)、灌流媒体3を拡散チャンバ100中へ導くための導管(例えば、キャピラリ)110、および測定された検体をチップ100から引き抜くための導管(例えば、キャピラリ)280をさらに備える。
【0181】
プローブヘッド10の上記の構成要素は、特に、図47において分かるように、互いに重なり合って積層された層の形態で設計される。
【0182】
さらに、図52および53は、図17および47に示される種類のマイクロ流体チップのためのモールドを示し、プローブされる体積251のための領域、可視光(VIS)蛍光放射収集ファイバ252、および紫外UV蛍光励起光のためのファイバ253をもつ。
【0183】
そのうえ、図54は、図47に示される種類の拡散(微小透析)チャンバ100のSEM顕微鏡写真を示し、隣接するメンブレン30を支持するためのグリッド構造113をもつ。
【0184】
さらに、図55は、図36〜46に示されたプローブヘッドの拡散チャンバ内の3D流の流線を示し、流れは層流である。
【0185】
図56は、0(物質が何も抽出されない)と1(血液中と同じ濃度)との間の値を有する局所的透析物抽出比を示す図38、44における種類の拡散チャンバ100のモデルの断面図を示す。示されるのは、高透過性のメンブレン30を用いた3D有限要素法からの結果である。
【0186】
図57は、図56と同様であるが、より低い透過性のメンブレン30を用いたシミュレーションを示す。
【0187】
図58は、理論からまたはFEMシミュレーションから決定されるような、図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における全透析物抽出比を示す。2つの結果は、線形比例し、R=1である。このことが意味するのは、より複雑な層流パターンを用いたとしてもシミュレートされるプローブヘッド10を理論によってよく説明できることである。
【0188】
図59は、適用範囲内で図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における透析物抽出比が理論R=0.9996およびシミュレーションR2=0.9998の両方についてメンブレン透過性に線形比例することを示す。
【0189】
図60は、理論から予測されるように、3D FEMシミュレーションにおける拡散チャンバであれば、図38および44に示される種類の拡散チャンバの出口における透析物抽出比が高さに依存しないことを示す。チャンバ高さと透析物抽出比との間に有意な相関関係はない。異なる点間の透析物抽出比における差は、計算誤差に由来する。このことが意味するのは、拡散チャンバ100の高さが変化してもそれが透析物抽出比にも測定結果にも影響しないことであり、
【0190】
図61は、白色光に一旦曝露され、UV光に一旦曝露されたときに、2つの異なる状態を用いて測定された図36〜46の種類のプローブヘッドの透析物抽出比を示す。これは、メンブレン30をUV光または白色光に曝露することが透析物抽出比を制御することを示す。
【0191】
参考文献
[1]de Courten,D.,Baumann,L.,Scherer,L.J.,& Wolf,M.(2012).「Opto−Fluidic Chip for Continuous Inline Monitoring of Glucose with Kinetic Enzymatic Fluorescence Detection」Procedia Engineering,47,1203−1206.
[2] N.Bruns),J.Scherble, L.Hartmann,R.Thomann,B.Ivan,R.Muehaupt),J.C.Tiller,Macromolecules,2005,38,2431−2438.
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