(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
もとのドライペットフード処方のタンパク質含量の少なくとも一部を提供する肉粉を含むもとのドライペットフード処方を調整して、前記肉粉の少なくとも一部を、新鮮な肉または冷凍肉の肉スラリーで置き換えることによって、もとのドライペットフード処方と比較して、必須脂肪酸又は必須アミノ酸のうち少なくとも1種の生体利用性を向上させるステップであって、前記肉粉が哺乳動物の組織に由来するレンダリング製品であり、調整したドライペットフード処方が、前記もとのドライペットフード処方のタンパク質含量とおよそ等しいタンパク質含量を有する、ステップと、
前記調整したドライペットフード処方によりキブルを製造するステップと、を含み、
前記キブルを製造するステップが、前記新鮮な肉または冷凍肉から前記肉スラリーを形成するステップと、
前記肉スラリーに由来する肉がドライペットフードの14重量%〜20重量%となるよう前記肉スラリーを原料のドライブレンドに加え、混合物を形成するステップと、
前記混合物を押出成形調理し、押出成形品を形成するステップと、
前記押出成形品を加工して前記キブルを形成するステップと、を含み、
前記肉スラリーを形成するステップが、前記新鮮な肉又は冷凍肉のサイズを減少させるステップと、71℃以下の温度で直接蒸気を噴射して、前記サイズを減少させた新鮮な肉又は冷凍肉を調理するステップと、前記蒸気噴射した肉を乳化させるステップとを含む、
方法。
前記もとのドライペットフード処方が肉以外の原料を含み、前記調整したドライペットフード処方が、前記もとのドライペットフード処方と比較して、同一の、肉以外の原料を同量含む、請求項1に記載の方法。
前記肉スラリーが、プレコンディショナ内において前記原料のドライブレンドに添加され、前記混合物が、前記プレコンディショナから、前記押出成形調理を行う押出成形機に供給される、請求項1に記載の方法。
前記押出成形調理が、前記押出成形機において、250〜500psiの圧力下、105℃〜130℃の温度にて、40秒未満の期間にわたって実施される、請求項6に記載の方法。
前記タンパク質含量が、肉スラリー及びタンパク質源により完全にもたらされ、前記タンパク質源は、植物性タンパク質、肉粉及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
[0001]
関連出願の相互参照
本出願は、2015年3月23日に出願された、米国特許仮出願第62/136,701号に対する優先権を主張するものであり、該開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
[背景技術]
[0002]本開示は、概して、ペットフード製品及びペットフード製品の製造方法に関する。より詳細には、本開示は、アミノ酸及び脂肪酸の利用性を向上させる方法及び組成物に関する。
【0003】
[0003]非必須アミノ酸、内在性タンパク質、その他の窒素化合物の合成に必須アミノ酸及び窒素を提供し、エネルギーも提供するためには、食餌性タンパク質が必要とされる。イヌ科動物の健康(筋肉の増強、健康な皮膚及び被毛のための除脂肪体重維持の補助、免疫系のサポート並びに全ての重要な臓器機能)には、レベル調整した高品質のタンパク質が必須である。
【0004】
[0004]妊娠及び授乳中、雌犬の栄養要求量及びエネルギー要求量は、非常に増加する。実際、雌犬の生涯の他の時期と比べ、授乳中はエネルギー要求量が高くなる。授乳は、一般的に体重減少が生じ、雌犬がボディ・コンディション・スコアを数ポイント低下させ得る時期である。増大した栄養要求量及びエネルギー要求量を充足するためには高品質の食餌が推奨される。
【0005】
[0005]生の子羊、牛ひき肉又は鶏ミールなどの動物性の肉並びに畜産副産物は、消化率及び嗜好性が高いことから、ペットフード製造業者により一般的に使用されるタンパク質源である。ペットフード産業では、押出成形によるドライペットフードの製造には、通常、乾燥原料又は乾燥された原料が使用される。生の動物肉、骨及び副産物は、乾燥タンパク質に富んだミールの作製を目的として、ブレンドプロセス、加熱プロセス及び乾燥プロセスによりレンダリングされる。
【0006】
[0006]これらのレンダリングしたミールと比較して、生の畜産副産物をペットフードレシピに加えると、易加工性の観点で複雑となり、原価が増大してしまう。例えば、家禽副産物のミールは、供給業者から乾燥材料として提供され、ドライミックスに直接組み込むことができ、押出成形によりペットフードを形成する。一方、生の鶏屠体の調理は、ペットフード製造業者にしてみれば時間がかかり、空間も専有されてしまう。したがって、生の動物性タンパク質源を使用したペットフードの製造は、かかる原料を使用しない場合と比較して費用がかかるため、市販のペットフードは典型的にはレンダリングミールをタンパク質源のベースにしている。
【0007】
[課題を解決するための手段]
[0007]本開示は、アミノ酸及び脂肪酸の利用性を向上させ、結果として、アルギニン及びリジンなどといった制限アミノ酸並びにリノール酸などといった必須脂肪酸の血中濃度(blood enrichment)をより良好にする方法及び組成物に関する。本発明者らは、思いがけず、ペットフード中のレンダリングした肉粉を新鮮な肉又は冷凍肉のスラリーで置き換えると脂肪消化率が高くなることを観察した。本発明者らの知る限り、この効果は既存の出版物では報告されていない。食餌中のレンダリングした肉粉のうち最大で20%を新鮮な肉又は冷凍肉のスラリーで置き換えたところ、子犬では良好な発育速度が観察され、成犬では良好な体重維持が観察された。
【0008】
[0008]本明細書において示す実験的証拠において詳細に記すとおり、本発明者らは、給与試験中に以下の健康効果を測定できた。(i)極寒冷な温度への暴露中、肉スラリーを20%含む製品又は肉スラリーを14%含む製品を与えたイヌにおける、同じ総タンパク質を有するものの肉スラリーは含まない製品を与えたイヌと比較して良好に体重維持する傾向;(ii)肉スラリーを14%含む妊娠・授乳期の母犬用の食餌を与えた、妊娠中及び授乳中の雌犬における、総タンパク質は同じであるものの肉スラリーは含有しない妊娠・授乳期の母犬用の食餌の場合と比較して良好な体重維持;(iii)肉スラリーを14%含む食餌を与えた雌犬が授乳している子犬における、総タンパク質は同じであるものの肉スラリーは含有しない食餌の場合と比較して良好な発育速度;(iv)肉スラリー14%の食餌を与えた雌犬における、総タンパク質は同じであるものの肉スラリーは含有しない食餌の場合と比較して高い乳タンパク質含量;(v)肉スラリーを14%含む食餌を与えた雌犬における乳汁中必須及び非必須アミノ酸量の増加;及び(vi)肉スラリー14%の食餌における、食餌性(diet)必須アミノ酸含量に対し高レベルの必須アミノ酸により示されるとおりの、高質の乳汁の促進における高い食餌効率。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、これらの効果は、肉スラリーを配合された食餌における必須アミノ酸及び必須脂肪酸の良好な利用性によるものであると考えている。
【0009】
[0009]したがって、全般的な実施形態において、フード組成物の製造方法が提供される。方法は、新鮮な肉又は冷凍肉から肉スラリーを形成するステップと、肉スラリーが混合物の約14%〜約30%となるよう肉スラリーを原料のドライブレンドに加え、混合物を形成するステップと、混合物を押出成形調理し、押出成形品を形成するステップと、押出成形品を加工して、フード組成物を形成するステップとを含む。
【0010】
[0010]一実施形態では、肉スラリーを形成するステップは、新鮮な肉又は冷凍肉のサイズを減少させるステップと、約71℃以下の温度で直接蒸気を噴射して、サイズを減少させた新鮮な肉又は冷凍肉を調理するステップとを含む。肉スラリーを形成するステップは、蒸気を噴射した肉を乳化するステップを含み得る。
【0011】
[0011]一実施形態では、混合物は、約18%〜約30%のタンパク質を含む。
【0012】
[0012]一実施形態では、ドライブレンドは全粒穀類を含む。
【0013】
[0013]一実施形態では、ドライブレンドは食物繊維を含む。
【0014】
[0014]一実施形態では、肉スラリーは、プレコンディショナ内において原料のドライブレンドに添加され、かかる混合物は、プレコンディショナから、押出成形調理を行う押出成形機に供給される。押出成形調理は、押出成形機において、250〜500psiの圧力下、105〜130℃の温度にて、40秒未満の期間にわたって実施され得る。
【0015】
[0015]一実施形態では、押出成形品の加工は、押出成形品を複数の断片に切り出すステップと、かかる断片を乾燥させるステップとを含む。かかる断片を乾燥させるステップにより、断片の含水量を約6%〜約9%(水分)に減少させることができる。押出成形品の加工は、乾燥させた断片を動物性脂肪又は動物消化物(animal digest)のうちの少なくとも1種でコーティングするステップを含む。
【0016】
[0016]別の実施形態では、本開示は、ドライペットフード組成物を提供する。組成物は、肉粉ではない肉を約14%〜約30%含む。
【0017】
[0017]一実施形態では、ドライペットフード組成物のタンパク質含量は約18%〜約30%である。タンパク質含量は、肉スラリー及びタンパク質源により完全に供給され、タンパク質源は、植物性タンパク質、肉粉及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
[0018]一実施形態では、肉粉ではない肉は、新鮮な肉又は冷凍肉のサイズを減少させるステップと、サイズを減少させた新鮮な肉又は冷凍肉を直接蒸気噴射により調理するステップと、蒸気を噴射した肉を乳化させてスラリーを形成するステップと、スラリーを1種以上のその他の原料に添加するステップとを含むプロセスでドライペットフード組成物を作製することにより提供される。
【0019】
[0019]別の実施形態では、本開示はもとのドライペットフード処方と比較して必須脂肪酸又は必須アミノ酸のうち少なくとも1種の生体利用性を向上させる方法を提供し、ここで、もとのドライペットフード処方は、タンパク質含量の少なくとも一部を提供する肉粉を含む。方法は、もとのドライペットフード処方を調整して、肉粉ではない肉によって提供された肉で肉粉の少なくとも一部分を置き換えるステップであって、調整したドライペットフード処方のタンパク質含量が、もとのドライペットフード処方のタンパク質含量とおよそ等しい、ステップと、調整したドライペットフード処方によりキブルを製造するステップとを含む。
【0020】
[0020]一実施形態では、もとのドライペットフード処方は肉以外の原料を含み、調整したドライペットフード処方は、もとのドライペットフード処方と比較して肉以外の原料を同量含む。
【0021】
[0021]別の実施形態では、本開示は、犬の発育を生後2年間向上させる方法を提供する。方法は、犬の母犬に、肉粉ではない肉を約14%〜約30%含むドライフード組成物を、母犬が犬を妊娠している間に給与するステップを含む。
【0022】
[0022]別の実施形態では、本開示は、子犬の発育を向上させる方法を提供する。方法は、子犬に授乳している母犬に、肉粉ではない肉を約14%〜約30%含むドライフード組成物を給与することにより、必須アミノ酸及び必須脂肪酸を子犬に給与するステップを含む。
【0023】
[0023]別の実施形態では、本開示は、妊娠中及び/又は授乳中の犬の体重維持を向上させる方法を提供する。方法は、妊娠中又は授乳中の犬に、肉粉ではない肉を約14%〜約30%含むドライフード組成物を給与するステップを含む。
【0024】
[0024]本開示の利点は、タンパク質の合成用のアミノ酸の利用性を完全に維持する原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0025】
[0025]本開示の利点は、高品質のタンパク質と高レベルの必須脂肪酸を提供する原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0026】
[0026]本開示の更に別の利点は、高消化率であることが判明している原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0027】
[0027]本開示の別の利点は、大変な環境下での体重減少の予防を助ける原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0028】
[0028]本開示の別の利点は、長期的に健康に影響する優れた栄養を送達することが判明している原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0029】
[0029]本開示の別の利点は、犬小屋に住む犬のボディ・コンディションの維持を助ける原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0030】
[0030]本開示の別の利点は、健康な成犬における体重維持を助ける原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0031】
[0031]本開示の別の利点は、高品質のタンパク質源及び脂肪源となり栄養学的に重要な恩恵をもたらす原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0032】
[0032]本開示の利点は、強い子犬に発育するよう改良された、必須アミノ酸源及び必須脂肪酸源となる原料を配合されたペットフードを提供するというものである。
【0033】
[0033]本開示の別の利点は、同腹子の強く健康的な発育を助けるペットフード製品を提供するというものである。
【0034】
[0034]本開示の更に別の利点は、強く健康的な発育のための高品質な動物タンパク質源を提供するというものである。
【0035】
[0035]本開示の更に別の利点は、ペットフードにおける必須栄養素の利用性を向上させるというものである。
【0036】
[0036]本開示の別の利点は、妊娠/授乳中の雌犬における健康体重の維持の助けになるというものである。
【0037】
[0037]本開示の更に別の利点は、強い子犬に発育させるために、妊娠/授乳中の雌犬に必要とされる全ての栄養素を含有するペットフードを提供するというものである。
【0038】
[0038]本開示の更に別の利点は、子犬を強い成犬に発育させるのに必要とされる全ての栄養素を含有するペットフードを提供するというものである。
【0039】
[0039]本開示の更に別の利点は、授乳中の雌犬の乳汁中の必須アミノ酸の利用性を高くするペットフードを提供するというものである。
【0040】
[0040]更なる特徴及び利点を本明細書に記載する。これらは、以下の発明を実施するための形態及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0061]本開示及び添付の「特許請求の範囲」において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「スラリー(a slurry)」又は「スラリー(the slurry)」は、2つ以上のスラリーを含む。「X及び/又はY」の文脈にて使用される用語「及び/又は」は、「X」又は「Y」あるいは「X及びY」と解釈されるべきである。同様にして、引用「X又はYのうち少なくとも1種」は、「X」又は「Y」あるいは「X及びY」として解釈されるべきである。本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の掲載が続く場合は、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであると判断すべきではない。
【0043】
[0062]本明細書で使用するとき、「約」は、ある数値範囲の数字、例えば、参照する数字の−10%〜+10%、好ましくは参照する数字の−5%〜+5%以内、より好ましくは参照する数字の−1%〜+1%以内、最も好ましくは参照する数字の−0.1%〜+0.1%以内の範囲の数字を指すものと理解される。更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers,whole)又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数字又は数字の部分集合を対象とする請求項を支持するために与えられていると解釈すべきである。例えば、範囲「1〜10」の開示は、1〜8、3〜7、1〜9、3.6〜4.6、3.5〜9.9などの範囲を指示するものとして解釈すべきである。
【0044】
[0063]本明細書に記載する全てのパーセンテージは、別途記載のない限り組成物の総重量によるものである。pHについての参照がなされるとき、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。
【0045】
[0064]用語「食品」、「食品製品」及び「フード組成物」は、人間を含む動物によって摂取されることが意図され、動物に少なくとも1つの栄養素を提供する製品又は組成物を意味する。用語「ペットフード」は、ペットに消費されることが意図された何らかのフード組成物を意味する。用語「ペット」は、本開示により提供される組成物から恩恵を受けることができる、あるいはかかる組成物を楽しむことのできる任意の動物を意味する。例えば、ペットは、トリ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヤギ、オオカミ、マウス、ヒツジ又はブタ動物であり得るが、ペットは任意の好適な動物であってよい。用語「コンパニオンアニマル」は、イヌ又はネコを意味する。幼若犬の成熟速度は犬種により異なるものの、本明細書で使用するとき、用語「子犬」は、生後2年までのイヌを意味し、好ましくは、生後18ヶ月まで、より好ましくは生後1年までのイヌを意味する。
【0046】
[0065]「ドライ」フード組成物の水分は10%未満であり、及び/又は水分活性は0.65未満であり、好ましくはこれらの両方を充足する。「キブル」とは、ペレットの形状又は他のいずれかの形状を有し得る、ドライペットフードの断片である。キブルの非限定例としては、粒子;ペレット;ペットフード、脱水肉、肉類似物、野菜の各断片及びこれらの組み合わせ;並びにペットスナック、例えば、肉又は野菜ジャーキー、生皮及びビスケットが挙げられる。本開示は、キブルの特定の形態に限定されない。
【0047】
[0066]本明細書で使用するとき、「肉粉」とは、乾燥及び粉砕して、実質的に均一なサイズの粒子に形成した肉である。例えば、米国飼料検査官協会(AAFCO)は、「肉粉」について、良好な加工実施にやむを得ず生じ得る量を除き、血液、毛、蹄、角、くず皮、糞、胃及び反芻胃の内容物の添加を除外した、哺乳動物の組織に由来するレンダリング製品と定義しており、本定義により規定されない余分な材料を含有してはならない。
【0048】
[0067]本明細書に開示される組成物は、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素を欠く場合がある。したがって、「含む(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成成分「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。同様にして、本明細書で開示される方法は、本明細書において具体的に開示されない任意の工程を含まなくてもよい。したがって、用語「を含む」を用いる実施形態の開示は、特定された工程「から本質的になる」及び「からなる」実施形態の開示を含む。本明細書で開示される全ての実施形態は、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0049】
[0068]本開示の一態様では、フード組成物は、肉粉ではない肉を最大で約30%含む。好ましくは、フード組成物はドライフード組成物である。フード組成物は、例えば、イヌ用に処方されたフード組成物などのペットフードであってよい。一実施形態では、肉粉ではない肉の量は、フード組成物の約14%〜約30%であり、例えば、約16%である。フード組成物のタンパク質含量は、好ましくは、約18%〜約30%であり、好ましくは約25%〜約30%であり、例えば、約25%である。一実施形態では、フード組成物の脂肪含量は約10%〜約20%であり、好ましくは約15%〜約17%である。フード組成物の灰分含量は、好ましくは、約6%〜約8%である。
【0050】
[0069]フード組成物は、好ましくは、新鮮な肉又は冷凍肉のスラリーを製造するステップを含むプロセスにより作製される。例えば、新鮮な肉又は冷凍肉は、サイズを減少させ、直接蒸気を噴射し調理して肉の水分を増加させ、乳化してスラリーを形成することができる。好適な肉の非限定例としては、鶏、牛、豚、仔羊、七面鳥、ウサギ、アヒル、ガチョウ並びに例えば、サーモン、マグロ、サバ、タラ、ポロック、オヒョウ、シタビラメ及びモンツキダラなどの魚が挙げられる。新鮮な肉又は冷凍肉は、1種類の肉あるいは2種以上の肉の組み合わせであってもよい。
【0051】
[0070]直接蒸気噴射は、好ましくは、肉100kgあたり5〜15kgの熱水/蒸気を加えることで肉の水分を増加させる。一実施形態ではスラリーの温度は約71℃であるものの、いくつかの実施形態では低温を使用することができる。好ましくは得られるスラリーは、インジェクタからの、押し出し前に材料を水和し混合するプレコンディショナへのスラリーの輸送を妨害しない粘度を有する。
【0052】
[0071]スラリー調製についての具体的な非限定例を以下に提供する。はじめに、冷凍塊肉のサイズを減少させ、概して5cm〜15cmの肉塊にする目的で、冷凍塊肉を予備破砕機(pre−breaker)に送り込むことができる。これらの肉塊を、長辺が6mm又は8mmの断片になるようにサイズを減少させるためグラインダーに送り込むことができる。冷凍肉に加え、又は代替として、新鮮な肉を使用する場合、かかる新鮮な肉をグラインダーに直接入れることができる。ひき肉を、好ましくは加熱中及び以降の任意の保持中に持続的に撹拌しながら、約71℃の温度にて5〜15秒の直接蒸気噴射により調理し、スラリーを形成することもできる。標準的な乳化剤を用い、スラリーの温度を約71℃以下に維持しながら、スラリーに最終的なサイズ減少及び乳化を行うことができる。最終的なサイズ減少及び乳化により、押出調理の前にプレコンディショナに輸送及び噴射することが可能になる。
【0053】
[0072]フード組成物の製造にあたり、スラリーを乾燥原料のブレンドに加えることができる。一実施形態では、プレコンディショナ中で、スラリーを、乾燥原料ブレンドの少なくとも一部に加え、混合物はプレコンディショナから押出成形機に供給される。
【0054】
[0073]スラリーの量は、最終的なフード組成物における望ましい量をもとに決定でき、好ましくは、フード組成物中、約14%〜約29%である。ドライブレンドにスラリーを加えることにより形成された混合物の原料濃度は、最終組成物における濃度と実質的に同じ(含水量以外)であってよいものの、典型的には、プレコンディショナにおいて水分が加えられて水分の一部が最終組成物に残存することから、原料濃度は最終組成物において僅かに薄くなる。更に、肉の調理中に熱水/蒸気が加えられることから、製品処方に加えられるスラリーの量は、スラリーに由来する肉に所望される量の好ましくは105%〜115%である。そのため、14%の鶏を必要とする処方については、10kgの水を100kgの鶏に加え、温度を約71℃に上昇させるとき、約15.4%の量の鶏スラリーを加える必要がある。
【0055】
[0074]ドライブレンドは、肉粉、穀類、植物性タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラル及び脂肪のうちの1種以上を含有し得る。本明細書で開示される組成物に好適な肉粉の非限定例としては、牛肉粉、家禽肉粉、豚肉粉、七面鳥肉粉、魚肉粉及びこれらの組み合わせが挙げられる。製品において所望される総タンパク質レベルを維持する際、スラリーレベルの増大は、任意の動物性ミールの存在する量の減少に応じたものとなる。一実施形態では、スラリーの量は任意の肉粉の量よりも多いものの、他の実施形態では、肉粉の量はスラリーの量よりも多い。
【0056】
[0075]好適な穀類の非限定例としては、トウモロコシ、米、小麦、大麦、オーツ麦、大豆、ソルガム、雑穀、ライコムギ、ライ麦及びこれらの混合物が挙げられ、好ましくは、全粒形態のものが挙げられる。一実施形態では、穀類は、最終的なフード組成物が20%〜55%の穀類を含むような量で使用される。
【0057】
[0076]好適な植物性タンパク質の非限定例としては、コムギタンパク質(例えば、全粒コムギ又はコムギグルテン、例えば、活性コムギグルテン)、トウモロコシタンパク質(例えば、粉砕トウモロコシ又はトウモロコシグルテン)、大豆タンパク質(例えば、大豆ミール、大豆濃縮物又は大豆単離物)、米タンパク質(例えば、米粉又は米粉グルテン)、綿実、ピーナッツミール、エンドウタンパク質及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの材料は、植物性タンパク質及び穀類の両方である。一実施形態では、植物性タンパク質は、最終的なフード組成物が5%〜20%の植物性タンパク質を含むような量で使用される。
【0058】
[0077]可溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維も使用できる。好適な食物繊維源の非限定例としては、チコリ、セルロース、ビートパルプ(サトウダイコン由来)、アラビアガム、タルハガム、サイリウム、米ぬか、カロブビーンガム、シトラスパルプ、ペクチン、フラクトオリゴ糖、短鎖フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴフラクトース(mannanoligofructose)、ダイズ繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、食物繊維は、最終的なフード組成物が1%〜10%の食物繊維を含むような量で使用される。
【0059】
[0078]食物繊維源は、発酵性繊維であり得る。発酵性繊維は、コンパニオン動物の免疫系に恩恵をもたらすことが以前から報告されている。腸においてプロバイオティクスの増殖を増強するプレバイオティクを提供することが当該技術分野で知られている、発酵性繊維又はその他の組成物をドライペットフードに組み込むことができる。
【0060】
[0079]好適な脂肪の非限定例としては、動物性脂肪及び植物性脂肪が挙げられる。好ましくは、脂肪源は、獣脂又はグリースなどの動物性脂肪源である。植物性脂肪、例えば、トウモロコシ油、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、オリーブ油並びに一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸に富むその他の脂肪を更に又は代替的に使用できる。いくつかの実施形態では、ω−3脂肪酸源、例えば、魚油、オキアミ油、亜麻仁油、クルミ油又は藻類油のうちの1種以上が含まれる。
【0061】
[0080]好適なビタミン類の非限定例としては、ビタミンA、ビタミンB類のいずれか、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK(前述のものの各種塩類、エステル類又は他の誘導体を含む)が挙げられる。好適なミネラル類の非限定例としては、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄、塩化物、ホウ素、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、ヨウ素及びセレニウムなどが挙げられる。
【0062】
[0081]ドライブレンドは、防腐剤、着色剤、又は嗜好性付与剤(palatant)のうちの1種以上などの、その他の追加成分を含み得る。好適な保存料の非限定例としては、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、パラヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な着色剤の非限定例としては、青色1号、青色2号、緑色3号、赤色3号、赤色40号、黄色5号及び黄色6号などの食用着色料(FD&C);焙煎麦芽粉、カラメル着色料、アナトー色素、クロロフィリン、コチニール、ベタニン、ターメリック、サフラン、パプリカ、リコペン、エルダーベリー果汁、パンダン及び蝶豆などの天然着色料;二酸化チタン;並びに当業者に既知の任意の好適な食品着色剤が挙げられる。好適な嗜好性付与剤の非限定例としては、酵母、獣脂、レンダリングした動物粉(例えば、家禽、牛、子羊及び豚)、香料抽出物又はブレンド(例えば、グリルした牛)及び動物消化物などが挙げられる。
【0063】
[0082]フード組成物の製造にスラリーを使用する方法の非限定例を以下に記載する。鶏、七面鳥、牛、仔羊又は鮭のうちの1種以上のミートスラリーを使用するドライペットフードは、挽いたドライブレンドに約14%〜約30%の肉スラリー、例えば、約16%の肉スラリーを加えることにより作製できる。挽いたドライブレンドは、約10%〜約30%の家禽肉粉及び/又は別の動物由来の粉、例えば、約20%の動物粉;トウモロコシ、コムギ及び精白米を含む約20%〜約55%の全粒混合物、例えば、約46%の全粒混合物;大豆、トウモロコシグルテン及び小麦グルテンを含む約5%〜約35%の植物性タンパク質混合物、例えば、約10%の植物性タンパク質混合物;チコリ、セルロース、及びビートパルプを含む約1%〜約15%の食物繊維混合物、例えば、約6%の食物繊維混合物;約0.5%〜約2.0%のビタミン及びミネラル、例えば、約1.0%のビタミン及びミネラル;並びに約0.1%〜約3.0%の魚油、例えば、約1.0%の魚油;を含み得る。
【0064】
[0083]持続的に撹拌しながらプレコンディショナ内で肉スラリーをドライブレンドに加え、蒸気噴射により温度を80〜85℃に上昇させることができる。プレコンディショニングしたミックスを押出成形機・クッカーに供給し、105〜130℃の温度及び250〜500psiの圧力で40秒未満の期間にわたって加工して、膨化した成形ロープを形成する。このロープを適した大きさの複数の断片に切り出すことができる。この断片を水分量6%〜9%に乾燥させてキブルを形成でき、このキブルを約8%の動物性脂肪及び消化物でコーティングすることができる。
【0065】
[0084]本開示の別の態様において、ペットに栄養を提供する方法が提供される。ペットはコンパニオンアニマルであってよく、好ましくはイヌ、より好ましくは妊娠中及び/又は授乳中の雌犬であってよい。方法は、本明細書に開示されるペットフード製品の任意の実施形態を給与するステップを含む。好ましい実施形態では、ペットフード製品は、子犬の発育を向上させるため、並びに母犬の体重維持をサポートするため、妊娠期間中に毎日、及び/又は授乳期間中に毎日、妊娠中及び/又は授乳中のイヌに給与される。
【0066】
[0085][実施例]
[0086]以下の非限定的な実施例は、アミノ酸及び脂肪酸の利用性を向上させるために新鮮な肉又は冷凍肉を使用するという構想の例である。
【0067】
[0087]実施例1:
[0088]原料となる鶏屠体(CC)及び家禽副産物粉(PBPM)のタンパク質の品質について広範な調査を行った。CC及びPBPMは、(i)化学組成について分析し、(ii)in vitroでのタンパク質の消化率について分析し、(iii)イヌの食餌に加え、食後アミノ酸(AA)の血漿中への出現と、見かけの全消化管消化率について評価した。後者の結果に基づき、回腸でのAA消化率を評価し、食後のAAの血漿中への出現と関連付けた。全ての実験に関し、実験用の原料は同じバッチ由来のものとした。
【0068】
[0089]化学的性質
[0090]CC及びPBPMを、水分、粗タンパク質(CP)、粗脂肪、粗食物繊維、灰分及び総エネルギー(GE)について分析した。欧州連合規制に準拠し、イオン交換クロマトグラフィー及びニンヒドリン試薬によるポストカラム誘導体化後の比色検出により、被験食及び原料に対し、メチオニンスルホン、メチオニンスルホキシド及びシステイン酸の測定を実施した。更に、CC、PBPM、CC食及びPBPM食の未反応のリジンを見積もった。
【0069】
[0091]硫酸及び水酸化カリウムを用いる方法により、被験原料及び被験食中のコラーゲンを分析した。イヌ用のCC食及びPBPM食を、水分、CP、粗脂肪、粗食物繊維、灰分及び総エネルギー(GE)について分析した。必須アミノ酸(EAA)を同様に分析した。更に、CC及びPBPMを、ラレアル/ボイセン(Lareal/Boisen)法により、in vitroでのタンパク質消化率について評価した。
【0073】
[0095]イヌ試験
[0096]試験には様々な犬種、性別及び不妊手術ステータスの16頭のイヌ:7頭のビーグル、2頭のケアーン・テリア、2頭のダックスフンド、4頭のフォックス・テリア及び1頭のミニチュア・シュナウツァーを使用した。それぞれのイヌ(4.92±2.92歳齢;体重9.0±2.3kg)を、広い外庭に自由に出られるようにして屋内犬舎に収容した。施設内の室温は18〜24℃に維持し、明暗サイクルは12時間とした。実験中、全てのイヌには食餌を与えて体重を維持した。食餌は午前9時に一度に一食分を与えた。イヌはいつでも水を飲むことができた。
【0074】
[0097]欧州ペットフード工業会連合(FEDIAF)の定めた成犬の最低要求量に合致するか超過するよう食餌を配合した。2種類の食餌の原料組成を上掲の表1に報告する。値は乾物(DM)ベースで表す。食餌は、何を唯一の動物性タンパク質源とするかで組成が異なった。CC及びPBPMは、それぞれCC食及びPBPM食の唯一の動物性タンパク質源とした。CPにおけるCC及びPBPMの寄与率はいずれの食餌においても約25%とし同一に処方した。タンパク質の約73%はトウモロコシ穀類及びグルテントウモロコシミールにより提供した。食餌は、DMベースで同様の割合のCP、脂肪、粗食物繊維、炭水化物(窒素不含有の抽出物、NFE)及び灰分(表2)を含有するよう処方した。CCは、肉挽き及び70/80℃で12分の調理前に、冷凍保存した。このプロセスにより得られる製品(スラリーと呼称する)を、次に、他の原料とともに押出成形機に送り込む。押出成形機を通して食餌を押し出し、110℃にて約20/25分乾燥させて目標の8% DMにした後、キブル化した。
【0075】
[0098]当該施設に勤務している獣医(colony veterinarians)、動物行動学者及び/又は介護スタッフらにより、イヌの健康状態及び行動を毎日モニターした。必要な場合、薬物療法を行った。健康診断及び臨床検査をもとに、全ての犬は健康だと判断された。
【0076】
[0099]試験はクロスオーバーデザインで26日間実施した。第1の期間中、8頭の犬からなる第1群にはCC食を与えたのに対し、8頭の犬からなる他の群にはPBPM食を与えた。第2の期間中、第1群のイヌにPBPM食を与え、第2群にはCC食を与えた。期間毎に、イヌに7日間の適応期間を過ごさせた後、6日間全ての糞便を回収し栄養消化率を決定した。摂食量を毎日測定した。回収時に湿っていた便は、7日間の回収が完了するまでの間−20℃で保管し、期間の終了時に秤量した。食餌及び糞便試料を、水分、CP、粗脂肪、粗食物繊維、灰分及び総エネルギー(GE)について分析した。全消化管栄養消化率を次のとおりに算出した。[栄養摂取量(全量g/7日間)−栄養排出量(nutrient output)(全量g/7日間)]/[栄養摂取量(全量g/7日間)。
【0077】
[0100]食前及び食後の期間中の採血日には、消化率試験に供するイヌを使用した。食餌毎に、16頭のイヌの内12頭のイヌを短時間で摂食する能力をもとに選択した。各期間の糞便回収中、イヌ毎に1回ずつAA吸収率試験を行った。1”×20gの針を使用して、頭部カテーテルにより、2つの2.5mLのシリンジに血液試料(3mL)を回収した。3mLの血液試料を採取する直前に、0.5mLの血液を採取及び廃棄し、カテーテル内に残存する抗凝結剤を除去した。給与(0時間)の0.5時間前と、給与から1、2、3、5及び8時間後に血液を採取した。収集後、血液をすぐに5mLのNa−ヘパリンチューブに移した。各採取後に、カテーテル内に容量1.0mLのヘパリン処理した生理食塩水(10Uヘパリン/mL生理食塩水)を流した。8時間の時点のサンプル採取後、カテーテルを取り外し、24時間の時点のサンプルは頸静脈の静脈穿刺により採取した。合計して、期間あたり24.5mLの血液を採取した。これはGIRCOR(Interprofessional Group on Reflection and Communication on Research)が推奨する採血量未満である。血液を、臨床用遠心機において、室温下4,000xgで5分間遠心分離した。得られた上清画分を除去した後、アミノ酸分析までの間−80℃で保管した。ポストカラムのニンヒドリン誘導体化と光度検出を用い、標準的なイオン交換液体クロマトグラフィーを使用して、Biochromアミノ酸分析により血漿AAの濃縮を行った。台形公式:AUC=∫
baf(x)dxを使用して、24時間の濃度曲線下面積(AUC)を算出した。
【0078】
[0101]変数を正規性について試験したところ、正規分布に従っているように思われた。対応のあるt検定を用い、見かけの全消化管消化率を試験した。検定のp値が0.05未満であった場合に、差は統計的に有意なものであるとみなした。統計試験は全て両側で行った。分散分析により曲線下の面積を分析した。結果を平均値±SDとして表す。
【0079】
[0102]結果
[0103]in vitroでのタンパク質消化率及びコラーゲン含量についてCC及びPBPMを分析した。CC及びPBPMの相対的な品質についての情報を得るため、製造した食餌に対する試験をイヌについて行った。最終的に、単独のアミノ酸消化率データを含む見かけの全消化管消化率を得るため、イヌに食餌を与えた。AA吸収の観点で、両方の食餌を質的に比較する目的で、回腸における推定AA消化率を、EAA類における食後血漿濃度と比較した。これらのin vivoデータと、原料及び食餌の両方の分析評価とをもって、タンパク質源の質についての結論とすることができ、イヌにおけるそれらのEAA利用性について良好な推定が与えられる。
【0080】
[0104]化学的性質:被験原料の化学組成を上掲表3に示す。非反応性リジンの割合は、被験原料間で同様であり、被験食の値は14.8%〜18%の間で変化した(表4)。PBPMのみが、システイン及びメチオニンスルホキシドの量が分析による検出閾値(50mg/kg)よりも高く、それぞれ133及び105mg/kgであった。更に、PBPM及びPBPM食では、非反応性リジンの量が多いことが判明した。
【0082】
[0106]In vitroでのタンパク質消化率:被験原料の分析により、CCの場合、回腸in vitroタンパク質消化率(ileal in vitro protein digestibility)は4.1%高いことが示された(表5)。
【0084】
[0108]見かけの全消化管消化率:イヌ試験では、乾物(DM)、有機物(OM)、灰分及び総エネルギー(GE)についての見かけの全消化管消化率における差は観察されなかった。2つの被験食間で、見かけの全消化管消化率は、CP(p値=0.037)及び脂肪(p値=0.001)において有意に異なり、PBPM群と比較してCC群の方が値が高かった(表6)。
【0085】
[0109]アミノ酸の見かけの全消化管消化率に関し、両方の食餌間で差は見られなかった。しかしながら、ロイシン(p値=0.085)及びグリシン(p値=0.070)の血漿濃度は2群のイヌ間で異なる傾向があった。
【0086】
[0110]補正したアミノ酸消化率を算出した(表7)。
【0087】
[0111]AA吸収試験:システインを除く全てのイヌのEEAをアミノ酸吸収動態について測定した。いずれの食餌を取らせた後でも、食後に素早く上昇し、吸収後の状態のベースラインレベルにはゆっくりと戻るという点でプロファイルはほとんど同一であった。リジンは食後にベースラインレベル未満に減少した唯一のアミノ酸であった。
図1A及び1Bは、リジン及びアルギニンのそれぞれの血漿濃度を経時的に示すグラフである。値は、12頭の犬に関し平均+SDである。
【0088】
[0112]時間は、全AA及びLys/TEAAに関し血漿アミノ酸濃度に有意に影響した。ある期間にわたり、2種の食餌間で有意差が見されたとき、相当するp値に配慮した。
【0090】
[0114]
【表7】
1 Hendrik, et al.(2012)により提唱された式を使用し補正したCP回腸消化率
補正した回腸CP/AA消化率=見かけの全消化管CP/AA消化率−46.869/0.491
2 AUCを従属変数とし、食餌、群及び食餌*群相互作用を独立変数とする、分散分析。
【0091】
[0115]曲線下面積は、アルギニン及びロイシンの吸収に有意に影響した。群及び食餌は、リジン、チロシン及びLys/TEEA比に有意に相互作用した。
【0092】
[0116]議論
[0117]化学的性質
[0118]原料素材(頭、足、内蔵)はCC及びPBPMの質に影響する主要な要素である。ヒドロキシプロリンはコラーゲンの主成分であり、トリプシン加水分解に感受性がなく、タンパク質のアンフォールディングを予防し、他の酵素の接近を低減することを特徴とする。この試験において、CC食ではCP画分の12.2%がコラーゲンだったのに対し、PBPM食では10.0%であった。しかしながら、CCのin vitroでの消化率はPBPMよりも4.1%高く、CPのin vitroでの消化率は89.0%に対して93.1%であった。したがって、コラーゲンは、タンパク質資源の品質を測定するには正確な要素ではないおそれがある。
【0093】
[0119]被験原料では、酸化した硫黄アミノ酸の量が異なっていた。酸化したアミノ酸は、タンパク質の質を評価するのに重要である。例えば、メチオニンスルホン及びシステイン酸は離乳ラットでは利用不能であるが、メチオニンスルホキシドであればある程度利用可能である。PBPMはシステイン酸レベル及びメチオニンスルホキシドレベルが高く、これはレンダリングプロセスにおいて用いられる高温により説明され得る。しかしながら、システイン酸、メチオニンスルホン及びメチオニンスルホキシドはいずれも50mg/kg未満であったことから、この差は食餌では測定されなかった。
【0094】
[0120]非反応性リジンの定量を被験食に対し行い、タンパク質源が品質の点で異なり得るかを確認した。反応性リジンは、モイスト式及びドライ式のキャットフードにおけるリジン消化率を正確に定量するのに重要である。結果として、いずれの原料も、非反応性リジンと割合が等しいことが判明した。これにより、ミールを製造するレンダリングプロセスは予想されていたほど優れているものではない可能性があることが明らかとなった。PBPMを挽き、120〜140℃の温度に約30〜40分加熱した。次に製品を乾燥させて、再度目の細かい粒子に挽いてPBPMを作製した。したがって、このプロセスは温度及び所要時間の点で優れており、メイラード反応によるリジンのε−アミノ基のより容易な反応を誘導し得る。しかしながら、組み入れるタンパク質源中に含有される還元糖の割合(%)が低いと、この反応は制限され得る。
【0095】
[0121]CCプロセスは、最初に冷凍CCを約80℃で12分だけ調理するステップである。次に、肉スラリーを70℃で挽いて押出成形機に導入する。したがって、CCプロセスに必要とされる温度及び時間はPBPMプロセスよりも低温かつ短時間であるものの、CC食の非反応性リジン含量は低くなかった。
【0096】
[0122]イヌ試験
[0123]第1期間から8頭の異なるイヌからなる2群間で消化率について成績を決定した。
【0097】
[0124]全消化管の見かけの近似消化率:食餌には、対象とする割合のCPと、18%及び9%の脂肪をそれぞれ配合した。DMベースで、いずれの被験食も同量の粗タンパク質を有し、同様に等エネルギーであった。目標どおり、被験原料は最終的な粗タンパク質の25%を占めていた。この比を達成するため、CP含量は両方の食餌において約18%とした。この含量はFEDIAFにより推奨される最小量に近い。食餌性タンパク質の割合が低いと、制限アミノ酸が出てくるおそれがある。
【0098】
[0125]CCのCP及び脂肪の見かけの消化率は、PBP粉よりも有意に高かった。
【0099】
[0126]正味摂取量については、1日1000Kcalを摂取し、体重が15kgであるイヌを例とした。計算は表9に示すとおり、下式に従って行った。
【0100】
平均摂取量(CPのg重量)=(食餌性CP量)*(GE)*(1000Kcalを摂食する際に摂取される正味CP摂取量)*(補正した回腸N消化率)
【0102】
平均酸化数の除去後のCP利用性=代謝量によるCP摂取量−平均酸化数
【0104】
[0128]Humbert et al.(2001)は、身体タンパク質の酸化について、1日あたり3.93g/kg BW^
0,75の値を報告している。いずれの食餌も、このベースとなるタンパク質酸化を超過しており、CC及びPBPMのそれぞれについて5.98g/kg BW^
0,75及び5.63g/kg BW^
0,75であった。しかしながら、CC食は、PBPM食の場合と比較して最低必要量を20%超過するタンパク質を提供した(それぞれ2.05及び1.7g/kg BW^
0,75)。僅かな差異は存在し得るものの、いずれの食餌も既に最小必要量を充足していることが判明していた。但し、特に代謝体重当たりの要求量が大きい動物、例えば、発育期の動物、妊娠/授乳中の雌犬又は使役犬などでは長期的には除脂肪体重の維持に関し栄養学的な優位性が出てくる可能性がある。
【0105】
[0129]アミノ酸吸収試験:AAレベルは食後のサンプリング時間に強く影響を受けた。全てのアミノ酸濃度は、食後に上昇し、食後3〜5時間の間にピークを有した。食後のアミノ酸吸収動態により、食後期の最初の2〜3時間の間、必須アミノ酸の殆どが顕著に増加していたことが示された。これは、両方の食餌において観察された良好なタンパク質消化率を反映する。
【0106】
[0130]しかしながら、リジンについてはベースラインを超えての上昇は認められなかったことから、リジンがかかる食餌の第1制限アミノ酸であったことが示唆された(
図1A)。いずれの被験食もFEDIAFにより推奨されている最小推奨許容量に近くなるよう配合されていることから、この観察結果は驚くには当たらない。リジンは、利用不能なメイラード化合物を形成し利用性を減少させる熱プロセスによる影響を非常に受けやすい。この結果により、リジンの必要量が確実に低タンパク質摂取量を充足するものになるようにするにはタンパク質の質が鍵となるという事実が強調される。有意ではなかったにせよ、CC食では曲線下面積が大きくなる傾向があり、PBPM食よりもリジンの制限性が低かったことが示唆された。
【0107】
[0131]文献において「制限する」ことが知られる別のアミノ酸は、2種の食餌間で優位な差を示した:アルギニン量はPBPM食の場合と比較してCC食において有意に多かった(
図1B)。CC食を与えたイヌが食後1時間及び2時間で示した経時的な血漿アルギニン値が高かったことから、CC食ではアルギニンの利用性が良好であることが示唆された。アルギニンの最終的なAUCも、PBPM食の場合と比較してCC食の方が有意に高かった。この研究結果は、アルギニンは尿素回路及びタンパク質合成経路において鍵となるアミノ酸であると考えられることから、特に関心を引くものである。アルギニンは、尿素回路の中間体成分であり、尿素の解毒に関係するアロステリックな活性化因子として知られる。同様にして、アルギニンは、インスリン及び成長ホルモンなどのホルモンに作用する分泌促進性から、同化作用のあるアミノ酸としてよく知られている。この良好なアルギニンステータスとともに、リジンの回腸消化率により、食後期のタンパク質合成について高い性能が導かれ得た。
【0108】
[0132]結論
[0133]最終的に、試験において実施した分析及び試行の結果により、両方の被験食の相対的な食餌性タンパク質の質について良好な評価を得ることができた。CC食の見かけの全消化管CP消化率により、PBPM食と比較して有意に高く、CCのタンパク質の質がPBPMよりもよいものであり得ることが明らかとなった。CCのin vitroでのタンパク質消化率は、回腸消化率の高さを示唆し得るものであるため、全消化管CP消化率において観察された差異を説明し得る。
【0109】
[0134]アミノ酸吸収試験により、リジンが第1制限アミノ酸であることが示され、CC食を与えたイヌにおいてリジン曲線下の面積が広くなる傾向があることが明らかとなった。この差は、タンパク質の代謝及び合成において鍵となる別の制限アミノ酸であるアルギニンでは更に大きくなった。有意に高い血漿ステータスにより示されるとおり、アルギニン利用性はCC食の方が高かった。
【0110】
[0135]したがって、結論として、食餌性CCタンパク質の生体利用性は食餌性PBPMタンパク質よりも高かった。
【0111】
[0136]実施例2
[0137]実施例1における試験結果をもとに、高脂肪含量及び高タンパク質含量(最終製品100グラムにつき25%タンパク質、15%脂肪)の製品間で消化率及び血中濃度において差が観察されるかを確認するため第2の試験を実施した。
【0112】
[0138]レシピ中の本物の肉の量を変えて、3種類の食餌を製造した。第1の食餌には本物の肉を20%含有させ、第2の食餌には本物の肉を14%含有させ(14%は、「本物の肉を多く含む」と主張することが許されるレシピにおける、本物の肉の最小量である)、第3の食餌には本物の肉を含有させなかった。第3の食餌には動物性タンパク質源として肉粉を含有させた。FEDIAFの定めた成犬の最低要求量に合致するか超過するよう食餌を処方した。食餌は、粗タンパク質(CP)、脂肪、粗食物繊維、炭水化物(CHO)及び灰分を乾物(DM)ベースで同じ割合で含有するよう配合した。3種類の食餌は、動物性タンパク質源中の本物の肉の量のみを違いとした。
【0114】
[0140]試験には、品種、性別及び不妊手術ステータスが様々な12頭のイヌを使用した。イヌは、広い外庭に自由に出られるようにして屋内犬舎に収容した。食餌は午前9時に一度に一食分を与えた。イヌはいつでも水を飲むことができた。健康診断及び臨床検査をもとに、全ての犬は健康だと判断された。
【0115】
[0141]12頭のイヌを、同じ年齢及び品種分布の4頭のイヌからなる3群に分けた。この試験は、10日ずつ3つの期間に分割した30日間のクロスオーバー試験とした。したがって、それぞれのイヌは、試験の終わりに3種類の食餌のそれぞれについて試験を受けた。
【0117】
[0143]10日間の期間を2つに分けた。最初の4日間は馴化期間として、1日あたりの摂食量と糞便硬さのみを評価し、残りの6日間は試験期間として、1日あたりの摂食量及び糞便硬さについて評価する他、糞便を回収し、計量し、−20℃で保管した。食後のアミノ酸血中濃度も評価した。
【0118】
[0144]完全なAAプロファイル及び脂肪酸プロファイルについて食餌を分析した。食餌及び糞便を、水分、CP、粗脂肪、粗食物繊維、灰分及びGEについて分析した。
【0119】
全消化管栄養消化率は次のとおりに算出した。
[栄養摂取量(合計g重量/7日間)−栄養排出量(合計g重量/7日間)]/栄養摂取量(合計g重量/7日間)
【0120】
リノール脂肪酸の正味摂取量は次のとおりに算出した。
[1日食品摂取量(合計g重量/7日間)*食餌中の脂肪酸濃度(%)*脂肪酸消化率(%)*全脂肪酸プロファイルに対するリノール脂肪酸の濃度(%)]
【0121】
[0145]1”×20gの針を使用して、頭部カテーテルにより、2つの2.5mLのシリンジに血液試料(5mL)を回収した。5mLの血液試料を採取する直前に、0.5mLの血液を採取及び廃棄し、カテーテル内に残存する抗凝結剤を除去した。食餌を与える0.5時間前と、食餌を摂食してから1、2、3、5時間後に血液を回収した。回収後、血液の半量を5mLのNa−ヘパリンチューブにすぐに移し、残りの半量を3mLドライチューブに移した。合計して、期間あたり20mL(全血液量の2.35%)の血液を回収した。これはGIRCORの推奨量以内である。
【0122】
[0146]血液を、臨床用遠心機において、室温下3,000xgで10分間遠心分離した。Na−ヘパリンチューブから血漿及び血清をそれぞれ得て、乾燥チューブを抽出した後、−80℃にて分析まで保管した。
【0123】
[0147]ポストカラムのニンヒドリン誘導体化と光度検出を用い、標準的なイオン交換液体クロマトグラフィーを使用して、Biochromアミノ酸分析により血漿サンプルに対しAAの濃縮(リジン、ロイシン、メチオニン、アルギニン、グルタミン)を行った。台形公式を用い各アミノ酸及び食餌について曲線下面積を算出し、基準値について調整した。
【0124】
[0148]粗タンパク質、CHO、脂肪、灰分、各食餌間のGE消化率について対応のあるt検定を行った。インスリン血症及びAA濃度について分散分析(ANOVA)を実施し、時間、食餌、期間、群及び食餌と群との相互作用がもつ作用について試験した。対応のあるt検定を用い、各アミノ酸に関し、曲線下面積を比較した。
【0125】
[0149]結果及び議論
[0150]食餌分析:同じ割合の粗タンパク質及び脂肪を含有するよう、但し、本物の肉(20%、14%又は0%)の量は変えて食餌を処方し、3種の食餌間に脂肪酸プロファイルにおける差を導入した(
図2)。キブル中の本物の肉の濃度を増大させることで、PUFAが総脂肪酸プロファイルに占める割合が高くなり、その分SFAが減少する。リノール脂肪酸及びステアリン脂肪酸が全脂肪酸プロファイルに占める割合を合計すると、3種の食餌について同じ結果が得られたことがわかる。これにより、レンダリングプロセスがリノール酸をその主要な水素化形態:ステアリン脂肪酸に変換することが明確に証明された。
【0126】
[0151]
図3に示すとおり、各食餌間のアミノ酸プロファイルには、非常に高い類似性があった。この発見は、3種の食餌において、本物の肉が総タンパク質含量に占める割合(それぞれ15.5%、10.6%及び0%)により説明される。
【0127】
[0152]
図4に示すとおり、3種の食餌についてCP、脂肪、CHO及びGEの高い消化率が観察され、3種の食餌の質が高いことが証明された。CPの消化率に関し、3種のそれぞれの食餌間に有意差は観察されなかった。しかしながら、CP消化率の増加傾向は、食餌中における本物の肉の量の増大に伴って観察された。この増加はHendricksの回腸消化率予測式を使用したときに更に大きくなる。
【0128】
[0153]脂肪の消化率に関し、3種の各食餌間に有意差は観察されなかった。この試験において、本物の肉を含まない食餌において飽和脂肪酸(ステアリン脂肪酸)を増大させても脂肪消化率に負の影響が生じなかったのは、3種の食餌間の脂肪酸プロファイルの差が少なかったことによる可能性が高い。CHO、灰分及びGEの消化率に関し、3種の各食餌間に有意差は観察されなかった。
【0129】
[0154]
図5に示すとおり、リノール脂肪酸の正味摂取量は、本物の肉を使用していない食餌と比較して、本物の肉を使用して作製した食餌において有意に高かった。本物の肉を使用して作製した食餌は高濃度のリノール脂肪酸を示すことから、この結果は合理的なものである。
【0130】
[0155]3種の食餌に関し、アミノ酸濃度は、食後期に顕著な増加を示したことから、良好なタンパク質消化率が観察されたことが確認された。それでもなお、食餌は別のアミノ酸の血漿濃度には影響しないことが観察された。
【0131】
[0156]18%のタンパク質を含有する食餌を使用する第1の試験(実施例1)の結果と、25%のタンパク質を含有する食餌を使用するこの試験の結果とを比較したところ、食餌中タンパク質含量を増大させることにより恩恵が得られるという有益な結果が得られた。更に、
図6及び7に示すとおり、2つの試験から、食餌間で非常に異なる濃度パターンを観察できる。25%のタンパク質を含む食餌を与えたイヌは、メチオニン、リジン及びアルギニンの血中濃度が高く、タンパク質摂取量が増えると、AA吸収が高くなることが確認された。しかしながら、AAの血中濃度は、AAの供給レベルと直接は相関しなかった。更に、18%のタンパク質を含む食餌を与えたイヌでは、曲線はアルギニン及びメチオニンに関しては極僅かに上昇するにとどまり、リジンに関しては減少したのに対し、25%のタンパク質を含む食餌を与えたイヌでは、曲線は堅調に上昇した。この発見は、18%のタンパクを含む食餌を与えたイヌでは、25%のタンパク質を含む食餌を与えたイヌと比較してAA供給が少ないものの、食後期ではこれらの必須アミノ酸が同様の濃度となり得るという事実により説明できる。したがって、18%のタンパク質を含む食餌の場合、アミノ酸プールの利用によるタンパク質合成の際のこの要求は、メチオニン及びアルギニンの場合では供給によりかろうじて補償されるか、リジンの場合では供給により補償されないかのいずれかである。
【0132】
[0157]第2の試験では、この期間は、試験を実施した地域下での極めて寒冷な気象期間と一致した。これらの過酷な気象条件のため、イヌは体重を維持するのが難しかった。14%及び20%の鶏を与えたイヌでは、与えた鶏が0%であったイヌと比較して、良好な体重維持が観察された(
図8)。
【0133】
[0158]結論
[0159]第1の試験(実施例1)で本物の肉から作製したキブル中のタンパク質及び脂肪の消化率の高さに関係する観察結果はこの試験では有意には現れなかったが、これはおそらく、本物の肉が総脂肪含量及び総タンパク質含量に占める割合が低いことに起因する。しかしながら、この試験では、本物の肉を使用することで、リノール脂肪酸の大量摂取が可能になり、潜在的な健康効果が促進されることが示された。
【0134】
[0160]最初の2種類の試験で得られた結果の比較により、キブル中のタンパク質含量を増加させることで、食後期においてタンパク質合成用のアミノ酸要求を広範に補償でき、ひいては25%のタンパク質を含むキブルを与えたイヌでは、食後期の高いタンパク質合成と、長期にわたる筋肉量の良好な維持とが保証され得る。
【0135】
[0161]実施例3
[0162]最初の2種類の試験(実施例1及び2)の結果により、キブル中の本物の肉の含量を増加させるに伴い、最終的なタンパク質及び脂肪の質が向上するという見識が得られた。この質の向上により、消化率が高まり、食後期においてはタンパク質合成の際のアミノ酸利用が高まる。
【0136】
[0163]3つ目の試験は、本物の肉で作った食餌のタンパク質の消化率が高く、かつ食品脂肪及びリノール脂肪酸含量が高ければ、栄養要求性が非常に高くなる2つの時期、すなわち雌犬の妊娠期及び授乳期に、健康効果を提供可能であるかを評価することを目的とした。
【0137】
[0164]この試験は、ブリーダーのもと、2種類の食餌を使用して妊娠中及び授乳中の雌犬で実施した。1つ目の食餌は動物性タンパク質源として本物の肉を含み、2つ目の食餌は動物性タンパク質源として肉粉のみを含む。食餌の質を間接的に評価する健康パラメーターを使用した。
【0138】
[0165]試験では、レシピ中の本物の肉の量を変えて、2種類の食餌を製造した。1つ目の食餌(食餌A)は100gの製品あたり本物の肉を14%含有し、2つ目の食餌(食餌B)は本物の肉を全く含まなかった。
【0140】
[0167]FEDIAFガイドラインの定めた妊娠期、授乳期、及び発育期の最低要求量に合致するか超過するよう食餌を処方した。食餌は、CP、脂肪、粗食物繊維、炭水化物(CHO)及び灰分をDMベースで同量含有するよう配合した。
【0141】
[0168]試験には、様々な犬種の12頭の雌犬を含めた(フレンチ・ブルドッグ、パグ、イングリッシュ・ブルドッグ、ラブラドール、フォックス・テリア)。試験に使用した雌犬はブリーダーのもとから来た。これらの被験動物は、1歳齢以上であり、第2発情期にあった。
【0142】
[0169]試験デザインは、妊娠/授乳状態であるという主張を証明するため、米国飼料検査官協会(AAFCO)のプロトコルをベースとした。12頭の雌犬を同様の年齢及び品種分布の2群に割り付けた。各群には妊娠第5週から授乳の最初の月の終わりまで2種類の食餌のうちのいずれかを与え、合計2ヶ月の期間とした。この食餌を、試験期間中の唯一の食物源とした。
【0143】
[0170]それぞれ酸化的加水分解、及びアミノ酸分析機を使用して、食餌を完全AAプロファイル及び完全脂肪酸プロファイルについて分析した。
【0144】
[0171]ブリーダーには、試験に供された雌犬の普段の1日あたりの摂食量について聞き取りを行い、エネルギー要求を充足する食餌比を算出した。ブリーダーには、試験に供された雌犬の週ベースの体重増加について聞き取りを行い、かつ4点スケールを与え糞便の硬さについて聞き取りを行った。出産後、ブリーダーには、同腹子の体重増加について週ベースで聞き取りを行った。
【0145】
[0172]評価した主要なパラメーターは、(a)Bwの増大(雌犬及び子犬)、(b)摂食量(雌犬)、(c)授乳中の子犬の発育に対する食餌効率及び(d)乳汁組成(タンパク質、AA)である。
【0147】
[0174]
図9に示すとおり、食餌間で製品の消化率において優位な差は観察されなかった。
【0148】
[0175]被験動物:試験は5頭の雌犬で実施した(2頭のフレンチ・ブルドッグ、1頭のボーダーコリー、1頭のラブラドール、1頭のビアデッド犬(Bearded Tchec dog))。食餌A群の同腹子の頭数は11頭とした(フレンチ・ブルドッグ:7頭、ボーダーコリー:4頭)。食餌B群の同腹子の頭数は14頭とした(フレンチ・ブルドッグ:4頭、ラブラドール:9頭、ビアデッド(Tchec Bearded Dog)犬:1頭)。
【0149】
[0176]後期妊娠中の母犬の体重(BW)増加を
図10A及び10Bに示す。同腹子数が少なすぎる(1頭)ことから、品種の大きさ(大型犬)を考慮した体重維持の観点で十分に「困難」なものではないと考えられたため、ビアデッド犬はデータ処理に含めなかった。食餌Aを与えた雌犬は、体重維持の点で、妊娠後期及び授乳期に良好に機能する傾向があった(例えば、
図11)。
【0150】
[0177]
図12A及び12Bに示すとおり、授乳中の子犬の発育速度は食餌Aの方が早かった。
図13に示すとおり、子犬の体重増加を母犬の摂食量により正規化したとき、食餌Aは特に授乳後期の体重増加の促進に効率的であった。
【0151】
[0178]食餌Aは、授乳中の子犬の発育促進において高効率であった。食餌Aを与えた、妊娠/授乳している雌犬が、良好に体重維持する傾向もあった。この結果は、スラリーに由来する必須脂肪酸レベルの高さによるものであり得るが、アミノ酸利用性もおそらく作用している。
【0152】
[0179]これらの結果は、限られた頭数の雌犬が組み入れられており、犬種及び体重が様々であることを注意深く考慮する必要がある。しかしながら、同じブリーダーの2頭のフレンチ・ブルドッグのみを考えた場合に、同じ差が観察された(
図14A及び14B)。
【0153】
[0180]ブリーダーに、3種類のパラメーター:半透明性、量及び最終的な質を使用して、授乳中の雌犬由来の乳汁の官能分析を行ってもらった(
図15A〜15C及び16)。乳汁の質は、食餌Aを与えた授乳雌犬のブリーダーにより良好に評価された。
【0154】
[0181]授乳雌犬における乳タンパク質を決定するため、3点の異なる時点でブリーダーに乳汁をサンプリングしてもらった(第1週目、授乳中期及び授乳後期)。
図17に示すとおり、食餌Aを与えた授乳雌犬ではタンパク質含量が高かった。
【0155】
[0182]同じブリーダーハウスの2頭のフレンチ・ブルドッグのみに焦点を当てたとき、乳タンパク質含量において明らかに差が観察された。
図18にみられるとおり、食餌Aを与えた授乳中の雌のフレンチ・ブルドッグは高レベルのタンパク質を含む乳を生産したのに対し、食餌Bを与えた授乳中の雌のフレンチ・ブルドッグは、公開されているデータ、すなわち授乳中の10頭のビーグル犬により生産された乳タンパク質の範囲6.7%〜9.6%にタンパク質含量が従う乳を生産した。食餌Aを与えたフレンチ・ブルドッグではタンパク質含量が高かったことは、子犬の発育速度の早さを説明し得た。
【0156】
[0183]
図19に示すとおり、食餌Aを与えた雌犬において平均的な乳アミノ酸プロファイルは、食餌Bを与えた雌犬におけるプロファイルとは有意に異なっており、14%スラリーを与えた雌犬では、複数種のアミノ酸のレベルが高かった。乳汁中のアミノ酸パターンと食餌中のアミノ酸パターンとに相関があることは、食餌アミノ酸の利用性についての間接的なサインである。
図20A〜20Cに示すとおり、様々な授乳期間で乳と食餌Aとの間の相関が高い(0.94〜0.96)ことから、食餌由来のアミノ酸の利用性が高いことが示唆される。食餌性アミノ酸プロファイルが類似していることから、同じ食餌性アミノ酸含量では、乳アミノ酸含量が高くなることにより説明されるとおり、食餌Aは食餌Bよりも高品質な乳汁を促進するにあたって高効率であった。これらの相関により、家禽肉粉と比較してスラリー中のタンパク質が高品質であること、及びアミノ酸利用性が良好であることを示す、第1の試験の結果(実施例1)が支持される。
【0157】
[0184]結論
[0185]この第3の試験により、肉スラリーを配合されたドッグフードは、スラリーを配合していない食餌よりも栄養性能が良好であることが確認された。長期摂食試験の実施中、スラリーベースの食餌は、乳汁生産の量及び質、授乳中の犬における体重維持並びに哺乳している子犬の良好な発育速度の観点で良好な性能の促進を示した。これらの効果は、ほぼ確実にリノール酸及び必須アミノ酸の両方の利用性の高さによるものである。
【0158】
[0186]本明細書に記載された、本好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることを理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の主題の主旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なうことなく、行うことができる。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。