特許第6983072号(P6983072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6983072-光学フィルム 図000002
  • 6983072-光学フィルム 図000003
  • 6983072-光学フィルム 図000004
  • 6983072-光学フィルム 図000005
  • 6983072-光学フィルム 図000006
  • 6983072-光学フィルム 図000007
  • 6983072-光学フィルム 図000008
  • 6983072-光学フィルム 図000009
  • 6983072-光学フィルム 図000010
  • 6983072-光学フィルム 図000011
  • 6983072-光学フィルム 図000012
  • 6983072-光学フィルム 図000013
  • 6983072-光学フィルム 図000014
  • 6983072-光学フィルム 図000015
  • 6983072-光学フィルム 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983072
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20211206BHJP
   G02B 5/18 20060101ALN20211206BHJP
   G02B 3/00 20060101ALN20211206BHJP
   B42D 25/23 20140101ALN20211206BHJP
   B42D 25/24 20140101ALN20211206BHJP
   B42D 25/29 20140101ALN20211206BHJP
   B42D 15/00 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   G02B5/30
   !G02B5/18
   !G02B3/00 A
   !B42D25/23
   !B42D25/24
   !B42D25/29
   !B42D15/00 341B
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-557758(P2017-557758)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2016081060
(87)【国際公開番号】WO2017110225
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-254581(P2015-254581)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-81914(P2016-81914)
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】清原 稔和
(72)【発明者】
【氏名】柴宮 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】那須 元紀
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−191010(JP,A)
【文献】 特開平10−227998(JP,A)
【文献】 特開平08−320490(JP,A)
【文献】 特開2010−039291(JP,A)
【文献】 特開平10−031232(JP,A)
【文献】 特開平10−293328(JP,A)
【文献】 特開平06−075116(JP,A)
【文献】 特開2015−152828(JP,A)
【文献】 特開2011−221228(JP,A)
【文献】 特開2011−059392(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065242(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/137550(WO,A1)
【文献】 特開2009−282240(JP,A)
【文献】 特開2011−203637(JP,A)
【文献】 特表2005−530632(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181972(JP,U)
【文献】 特開2009−244670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/18
G02B 3/00
B42D 15/00
B42D 25/23
B42D 25/24
B42D 25/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配向層と液晶層を順次備え、前記液晶層の一部の領域の液晶材料と他の領域の液晶材料が同一であり且つ前記一部の領域の液晶材料と前記他の領域の液晶材料とは配向状態が異なる光学フィルムの使用方法であって、
前記光学フィルムの液晶層上に糊層を介してセパレータを設け、
前記糊層を介してセパレータが設けられた前記液晶層から前記配向層と前記基板を剥離して前記液晶層を露出させ、
前記セパレータを前記糊層から剥離して、前記糊層を介して前記液晶層を露出した状態で物品に貼り付けることを含む前記光学フィルムの使用方法。
【請求項2】
前記液晶層の厚みが0.3〜9.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム使用方法。
【請求項3】
前記糊層の剥離力よりも前記液晶層の破断強度が低いことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶層を備える光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
意匠性を付与したフィルムとして、ホログラムが形成された光学フィルムが知られている。このような光学フィルムは、例えば、配向膜上に形成したコレステリック液晶フィルムに加熱したホログラム原版を押し当て、ホログラム(回折格子等)を転写する方法により製造される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、コレステリック液晶層に選択反射波長の異なる複数の領域が設けられた光学フィルムとして、偽造防止機能付シートも知られている。このようなシートは、例えば、パターン状にスリットを設けたフォトマスクを介して、コレステリック液晶層に紫外線をパターン状に照射する方法により製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−347016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、加熱したホログラム原版を液晶フィルムに押し当てる必要があり、加熱下で基板や液晶層自体に圧力がかかるため、基板の変形や液晶層へのダメージが生じたり、設計していた選択反射波長からずれが生じてしまったりするなどの問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、意匠性を付与した光学フィルムを、液晶層にダメージを与えることなく簡易に製造することができる光学フィルムを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、意匠性に優れた光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、液晶層を有する光学フィルムであって、前記液晶層の一部の領域の液晶材料と他の領域の液晶材料が同一であり且つ前記一部の領域の液晶材料と前記他の領域の液晶材料とは、配向状態が異なることを特徴とする光学フィルムを提供する。
【0008】
本発明の発明者らが発明した光学フィルムの製造方法によれば、配向膜の一部の領域の配向能を表面処理により消去もしくは弱めることにより、その上に形成される液晶層は、配向能を消去もしくは弱めた配向膜上の領域において液晶材料が配向せず、他の領域と配向状態が異なる領域が形成される。その結果、液晶層の配向状態が異なる領域により図柄が形成され、意匠性が付与された光学フィルムが得られる。そして、この液晶層の配向状態が異なる領域は、配向膜の表面処理により形成することが可能であるため、所望の図柄が形成された光学フィルムを液晶層にダメージを与えることなく簡易に製造することができる。特に、配向膜を表面処理する場合、液晶層形成後に外力が加わらないため、基板の変形や液晶層へのダメージ等が生じることがない。また、液晶層形成後に再加熱されることがないため、選択反射波長のズレが生じることがない。なお、配向膜の表面処理法としては、配向膜の一部の領域への溶媒塗布、COレーザー光での直接描画、マスクを用いたエキシマUV照射、電子線(EB)描画のような方法が挙げられる。また、後述するマスクを用いたラビングにより配向能を付与する方法も使用できる。
【0009】
本発明の光学フィルムは、前記液晶層の一部の領域の液晶材料が規則的に配向されていなくてよい。本発明の光学フィルムは、前記液晶層が、配向膜上に液晶材料を塗布されることで形成された連続膜であってもよい。本発明の光学フィルムは、前記液晶材料がコレステリック液晶であってもよい。本発明の光学フィルムは、さらに保護フィルムを備え得る。
【0010】
本発明の光学フィルムは、前記液晶層の表面に糊層を介して剥離可能なセパレータを備え得る。さらに、前記液晶層の前記糊層と反対側の表面に接着剤層を介して剥離可能な別のセパレータを備えていてもよい。
【0011】
本発明の光学フィルムは、さらにマイクロレンズアレイまたはレンチキュラーレンズアレイを備え得る。
【0012】
本発明の光学フィルムは、前記液晶層に回折能を示す領域が形成されていてもよく、あるいは、さらに、回折能を示す層を備えていてもよい。本発明の光学フィルムは、前記液晶層の下層に印刷層を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造で意匠性に優れた光学フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)〜(f)は、本発明の光学フィルムの製造方法の一実施形態を説明するための説明図である。
図2】本発明の第2実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図3】本発明の第3実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図4】本発明の第4実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図5】本発明の第5実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図6】本発明の第6実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図7】本発明の第7実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図8】本発明の第8実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図9】本発明の第9実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図10】本発明の第10実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図11】光学フィルムが真正であるか否かをビューワを用いて観察している様子を示す説明図である。
図12】液晶層上にマイクロレンズアレイを設けた本発明の第11実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図13】液晶層上にレンチキュラーレンズアレイを設けた本発明の第12実施形態の光学フィルムの概略断面図である。
図14図14(a)〜(e)は、本発明の第14実施形態における光学フィルムの液晶層を物品(被転写物)に転写するプロセスを示す図である。
図15図15(a)〜(h)、(h’)は、本発明の第15実施形態における光学フィルムの液晶層を物品(被転写物)に転写するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
第1実施形態
本発明の光学フィルムの第1実施形態について、図1(a)〜(f)を用いて説明する。図1(a)〜(f)は、本実施形態に係る光学フィルムの製造方法を説明するための説明図である。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、基板10上に配向膜20を形成する。図1(b)に示すように、この配向膜20表面を、ラビングロール70を用いてラビング処理し、配向膜20に配向能を付与する。
【0018】
次いで、配向膜20の一部の領域22の配向能を消失させ又は弱める表面処理を行う。例えば、図1(c)に示すように、スタンプ(溶媒塗布手段)80に溶媒を付着させ、これを配向能を付与した配向膜20上の一部の領域(溶媒塗布部)22に押し当てることで、当該領域22に溶媒を塗布し、当該領域22の配向能を消失させる(溶媒塗布工程)。
【0019】
図1(d)に示すように、配向膜20上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、加熱により液晶材料を配向させた後、配向を固定して液晶層30を形成する(液晶層形成工程)。このとき、配向膜20の一部の領域22は配向能が消失しているため、当該領域22上に位置する液晶層30の領域において液晶材料は規則的に配向せず、他の領域とは液晶材料の配向状態が異なるため、液晶層30に図柄32が形成される。図柄32は、スタンプ80に形成された図柄に対応する。
【0020】
図1(e)に示すように、液晶層30上に接着剤40を介して透光性保護フィルム50を貼り付ける。図1(f)に示すように、液晶層30から配向膜20及び基板10を剥離除去し、液晶層30/接着剤40/透光性保護フィルム50からなる光学フィルム100を得る。
【0021】
上記製造方法によれば、スタンプ80等の溶媒塗布手段により配向膜20に溶媒を塗布するだけで、極めて簡単に液晶層30に図柄32を形成することができる。また、液晶層30を形成した後、加熱したホログラム原版を押し当てる等の図柄形成のための余計な外力を加える必要がないため、液晶層30にダメージを与えることもない。よって、上記製造方法により、意匠性を付与した光学フィルムを、液晶層にダメージを与えることなく簡易に製造することができる。以下、上記製造方法に用いる各材料及び各工程について、より詳細に説明する。
【0022】
基板10は、配向膜20及び液晶層30の支持体として機能するものであり、液晶層30上に透光性保護フィルム50が形成された後、基板10は配向膜20と共に剥離除去される。このような機能を有する支持基板としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系プラスチックスや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ノルボルネン系樹脂などの鎖式または脂環式ポリオレフィン等から形成されたプラスチックフィルムやシート等が挙げられる。
【0023】
また、基板10としては、プラスチックフィルムやシートの表面にシリコン処理等の表面処理をしたもの、あるいは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂またはパラフィン系のワックスをコーティングしたもの等も使用することができる。さらに、基板10としては、プラスチックフィルムやシートに対して、エンボス加工等の物理的変形処理、親水化処理、疎水化処理等を行ったものも使用することができる。
【0024】
基板10の厚みは、通常8〜200μm、好ましくは15〜150μm、さらに好ましくは20〜100μmである。厚みが8μmより薄い場合、光学フィルム製造時のハンドリング性が低下する傾向がある。また、厚みが200μmより厚い場合には、基板10を配向膜20とともに液晶層30から剥離する際の作業性が低下する傾向がある。
【0025】
配向膜20は、液晶材料を配向させる機能を有する層である。なお、基板10が配向膜20を兼ねていてもよい。配向膜20を構成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0026】
配向膜20は、例えば、その構成材料を溶媒に溶解させた溶液を基板10上に塗布し、乾燥させて成膜した後、ラビング処理して配向能を付与することにより形成することができる。
【0027】
配向膜20を形成する際に用いる溶媒は、使用する材料に応じて適宜選択されるが、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、水、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。なお、配向膜20の形成時に用いる溶媒は、基板10を溶解しないものであることが好ましい。そのため、配向膜20の構成材料及び基板10の構成材料は、互いに溶解する溶媒が異なる材料を選択することが好ましい。
【0028】
乾燥は、使用する溶媒に応じた条件で加熱処理することで行われる。乾燥条件は、使用する溶媒の種類や膜厚等によって適宜調整すればよいが、通常、30〜200℃で20〜60秒である。
【0029】
配向膜20の厚みは、通常0.3〜6μm、好ましくは0.6〜2μm、さらに好ましくは0.8〜1.4μmである。厚みが0.3μmより薄い場合、基板10の微細な傷などの欠陥の影響を受けやすくなる傾向があり、3μmより厚い場合、乾燥ムラが発生しやすくなる傾向がある。
【0030】
配向膜20の配向処理は、公知の方法を用いて行うことができるが、大きく分類すると、ラビング処理によるものとそれ以外の方法によるものとがある。ラビング処理としては、図1(b)に示すようにラビングロール70を用いて行う方法がある。それ以外の配向処理方法としては、延伸による方法、インプリントによる方法、紫外光配向装置、軟X線配向装置等を用いて行う方法がある。
【0031】
溶媒塗布工程において使用する溶媒としては、配向膜20の配向能を消失させることが可能なものであれば特に制限されないが、通常、配向膜20の構成材料を溶解可能な溶媒が用いられる。溶媒塗布工程において使用する溶媒としては、上述した配向膜20を形成する際に用いる溶媒と同様のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよく、複数の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
溶媒塗布方法は、溶媒を配向膜20に塗布可能な方法であれば特に制限はなく、図1(c)に示すようなスタンプ80を用いる方法のほか、霧吹きでの噴霧、インクジェットプリンターでの印刷、グラビア印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0033】
溶媒の塗布量は、配向膜20の一部の領域22の配向能を消失させることができる量であればよく、適宜調整される。
【0034】
配向膜20の一部の領域22に溶媒を塗布した後、当該溶媒を乾燥させる。乾燥条件は、使用する溶媒の種類等によって適宜調整すればよいが、通常、室温で10〜30秒である。
【0035】
液晶層30は、配向膜20上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、加熱により液晶材料を配向させた後、配向を固定することで形成することができる。液晶材料としては、コレステリック液晶、ネマティック液晶、スメクティック液晶等が挙げられ、中でもコレステリック液晶が図柄32の視認性の観点から好ましい。以下、液晶層30がコレステリック液晶層である場合について詳述する。
【0036】
コレステリック液晶層は、高分子液晶、架橋型低分子液晶またはこれらの混合物等を主成分とする液晶性組成物を用いて形成することができる。
【0037】
高分子液晶としては、コレステリック配向が固定化できるものであれば特に制限はなく、主鎖型、側鎖型高分子液晶等のいずれでも使用することができる。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマー、並びに、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサンなどの側鎖型液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、コレステリック配向を形成する上で配向性がよく、合成も比較的容易である液晶性ポリエステルが好ましい。ポリマーの構成単位としては、例えば芳香族または脂肪族ジオール単位、芳香族または脂肪族ジカルボン酸単位、芳香族または脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を好適な例として挙げることができる。
【0038】
また、架橋型低分子液晶としては、例えばアクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格としたものが挙げられる。また、架橋型低分子液晶としては、ライオトロピック性を示すもの、サーモトロピック性を示すもののいずれも用いることができるが、サーモトロピック性を示すものが作業性等の観点からより好適である。
【0039】
コレステリック配向を固定化する方法は公知の方法を用いることができる。例えば高分子液晶を液晶材料として用いる場合には、配向膜20上に高分子液晶を塗布した後、熱処理等によってコレステリック液晶相を発現させ、その状態から急冷してコレステリック配向を固定化する方法を用いることができる。また、架橋型低分子液晶を液晶材料として用いる場合には、配向膜20上に架橋型低分子液晶を塗布した後、熱処理等によってコレステリック液晶相を発現させ、その状態を維持したまま光、熱または電子線等により架橋させてコレステリック配向を固定化する方法等を適宜採用することができる。
【0040】
また、コレステリック液晶層の耐熱性等を向上させるために、液晶性組成物に高分子液晶や架橋型低分子液晶の他に、例えばビスアジド化合物やグリシジルメタクリレート等の架橋剤を添加することもできる。これらの架橋剤を添加することにより、コレステリック液晶相を発現させた状態で架橋させることができる。さらに、液晶性組成物には、二色性色素、染料、顔料等の各種添加剤を適宜添加することもできる。
【0041】
液晶層30の構成は、通常、上述したコレステリック液晶層等の1層の液晶層からなるが、必要に応じて複数の液晶層を積層してなる構成であってもよい。
【0042】
液晶層30の厚みは、通常0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.7〜3μmである。厚みが0.3μm未満であると、特異な光学特性効果を有効に発現できない恐れがあり、20μmを超えると、乾燥ムラが発生しやすくなる傾向がある。なお、液晶層30が複数の液晶層を積層したものである場合は、その全液晶層の厚みの合計が上記範囲に入ることが望ましい。
【0043】
上述したように、液晶層30には、配向膜20の配向能が消失した一部の領域22上の領域において、液晶材料の配向状態が他の領域とは異なる部分が形成される。液晶層30がコレステリック液晶から構成されている場合には、液晶分子の配向構造が膜厚方向に螺旋を描くように規則正しいねじれを有しており、液晶分子の向きは同一面内で揃う。一方、配向能が消失している領域上の液晶分子の向きは同一面内で揃わずランダムとなり、反射光の見え方の相違による図柄32が形成される。
【0044】
液晶層30上には、接着剤40を介して透光性保護フィルム50が貼り付けられる。接着剤40としては、液晶層30と透光性保護フィルム50とを接着可能なものであり、当該接着剤40を通して液晶層30に形成された図柄32を視認可能な程度に透明なものであれば特に限定されず、従来公知の様々な粘・接着剤を用いることができる。具体的には、ホットメルト型接着剤、光または電子線硬化型の反応性接着剤等を適宜用いることができる。これらの中でも、作業性等の観点から反応性接着剤が好ましい。
【0045】
ホットメルト型接着剤としては特に制限はないが、作業性等の観点から、ホットメルトの作業温度が250℃以下、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜160℃程度のものが好ましい。ホットメルト型接着剤として具体的には、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ゴム系、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等をベース樹脂とするホットメルト接着剤を用いることができる。
【0046】
反応性接着剤としては、光または電子線重合性を有するプレポリマーおよび/またはモノマーに、必要に応じて他の単官能または多官能性モノマー、各種ポリマー、安定剤、光重合開始剤、増感剤等を配合して用いることができる。
【0047】
光または電子線重合性を有するプレポリマーとしては、具体的にはポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート等を例示することができる。また、光または電子線重合性を有するモノマーとしては、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、2官能アクリレート、2官能メタクリレート、3官能以上の多官能アクリレート、多官能メタクリレート等が例示できる。また、これらは市販品を用いることもでき、例えばアロニックス(アクリル系特殊モノマー、オリゴマー;東亞合成(株)製)、ライトエステル(共栄社化学(株)製)、ビスコート(大阪有機化学工業(株)製)等も本発明に用いることができる。
【0048】
また、光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン誘導体類、アセトフェノン誘導体類、ベンゾイン誘導体類、チオキサントン類、ミヒラーケトン、ベンジル誘導体類、トリアジン誘導体類、アシルホスフィンオキシド類、アゾ化合物等を用いることができる。
【0049】
本発明に用いることができる光または電子線硬化型の反応性接着剤の粘度は、接着剤の加工温度等により適宜選択するものであり一概にはいえないが、通常25℃で10〜2000mPa・s、好ましくは50〜1000mPa・s、さらに好ましくは100〜500mPa・sである。粘度が10mPa・sより低い場合、所望の厚さが得られ難くなる。また、2000mPa・sより高い場合には、作業性が低下する恐れがあり望ましくない。粘度が上記範囲から外れている場合には、適宜、溶剤やモノマー割合を調整し所望の粘度にすることが好ましい。
【0050】
また、光硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては公知の硬化手段、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を使用することができる。また、露光量は、用いる反応性接着剤の種類により異なるため一概にはいえないが、通常50〜2000mJ/cm、好ましくは100〜1000mJ/cmである。
【0051】
また、電子線硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては、電子線の透過力や硬化力により適宜選定されるものであり一概にはいえないが、通常、加速電圧が50〜1000kV、好ましくは100〜500kVの条件で照射して硬化することができる。
【0052】
接着剤40の厚みは特に限定されないが、通常0.5〜50μm、好ましくは1〜10μmである。また、接着剤40の形成方法としては、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法を用いることができる。
【0053】
透光性保護フィルム50としては、当該透光性保護フィルム50を通して液晶層30に形成された図柄32を視認可能な程度に透明なものであれば特に限定されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、アモルファスポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリビニルアルコール等から形成されるフィルムが挙げられる。透光性保護フィルム50は、紫外線吸収剤を含有してもよい。また、透光性保護フィルム50は、ハードコート層であってもよい。また、ハードコート層として用いる場合、意匠性を向上させるために、ビーズや金属粉(グリッター)を含有してもよい。また、反射防止の目的を付加するために、保護フィルムとして反射防止フィルムを用いてもよく、あるいは、保護フィルム上に反射防止層を形成してもよい。
【0054】
透光性保護フィルム50の厚みは特に限定されないが、通常8〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0055】
配向膜20及び基板10を液晶層30から剥離する方法は特に限定されないが、例えば、配向膜20や基板10の角または端部に粘着テープを貼り付けて人為的に剥離する方法、ロール等を用いて機械的に剥離する方法、構造材料全てに対する貧溶媒に浸漬した後に機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向膜20または基板10と液晶層30との熱膨張係数の差を利用し、温度変化を与えて剥離する方法等により行うことができる。
【0056】
液晶層の一部の領域の液晶材料と他の領域の液晶材料が同一であり且つ前記一部の領域の液晶材料と前記他の領域の液晶材料とは、配向状態が異なる本発明の光学フィルムの製造方法を説明してきたが、本発明の光学フィルムは別の製造方法で製造することもできる。例えば、図1(a)に示すように、基板10上に配向膜20を形成し、次に、配向能を所定の領域だけに付与するために、所定の領域に開口を有するマスクを配向膜上に設置する。次いで、上記実施形態と同様に、マスクの上からラビングロールを用いてラビング処理する。こうすることで、マスクの開口部に露出している所定領域の配向膜だけに配向能を付与することができる。次いで、上記実施形態と同様に配向膜上に液晶材料を含む液晶性組成物を塗布し、加熱により液晶材料を配向させた後、配向を固定して液晶層を形成することができる。このとき、配向膜の所定領域以外の領域は配向能が存在していないため、その領域上に位置する液晶層の領域において液晶材料は規則的に配向せず、所定領域とは液晶材料の配向状態が異なるため、液晶層に図柄が形成されることになる。最後に、上記実施形態と同様にして液晶層上に接着剤を介して透光性保護フィルムを貼り付けて、液晶層から配向膜及び基板を剥離除去し、液晶層/接着剤/透光性保護フィルムからなる光学フィルムを得ることができる。
【0057】
他に、COレーザー光での直接描画や、マスクを用いたエキシマUV照射、電子線(EB)描画のような方法を用いて配向膜の表面処理を行うことによっても、同様に液晶層の配向状態が異なる領域を形成できる。
【0058】
液晶層30/接着剤40/透光性保護フィルム50からなる光学フィルム100は、偽造防止用、装飾用等として使用することができる。光学フィルム100は、液晶層30の側に粘着剤などを塗布して、ラベル、タグ、化粧箱、梱包材、包装材などに貼り付けて使用することができる。これらに図柄があってもよい。また、光学フィルム100は、後述する実施形態に詳述するように、液晶層30の側にホットメルト剤や電磁波硬化樹脂等の接着層を塗布した上で接着層側をラベルなどの物品に接触させ、透光性保護フィルム50の側からホットスタンプあるいは電磁波照射をし、ラベルなどの物品に接着することができる。また、透光性保護フィルム50にCOPフィルムなどの耐溶剤性の低い部材を用いることにより、溶剤を用いてフィルムを剥がすことによる再利用を防止することができる。水溶性のフィルム等も同様の目的で使用できる。さらに、接着剤40及び透光性保護フィルム50を剥離して、転写箔として用いることもできる。
【0059】
なお、光学フィルム100の液晶層30側の最表面、すなわち、液晶層30の裏側に様々な目的で異なる部材(以下、裏面部材という)を形成または付着することができる。裏面部材の具体例を以下に例示する。
【0060】
(1)着色した裏面部材
液晶層30の側に貼合する“裏面部材”(ラベル、タグなど)またはそれらに設けた図柄の色を黒(緑)、白(赤)、青(青)などの色に変更することで目視の色も異なる。例えば、緑色の右円偏光を反射する液晶材料で液晶層30を構成したとする。この場合、裏面部材の色が黒色のときは液晶層の表面側から目視したときの色(厳密には、接着剤と透光性保護フィルムを剥がして目視した色)は緑色であるが、裏面部材を白色としたときは、補色の赤色に見える。また、裏面部材を青色とした時は、青色に見える。そのため、裏面部材の色を変えることで、単色の光学フィルムでありながらRGBの色を表わすことができる。このような裏面部材を有する光学フィルムを、後述するビューワの左円偏光フィルタを通して観察すると液晶層の図柄は消え、裏面部材の図柄と色だけが見える。
【0061】
(2)傾斜付き凹凸構造を有する裏面部材
裏面部材がその表面に傾斜を持つ凹凸構造を有していてもよい。凹凸構造はナノ〜ミリ単位のサイズであり、ナノインプリント法やエンボス加工などの公知の方法で形成することができる。入射光が入射角θを有している場合にはp・cosθ=λ/nのBraggの反射条件(pは裏面部材の厚み,nは裏面部材の屈折率)を満足する波長λの光が回折により選択的に反射される。従って,角度をつけて観察するときより短波長の色が観察される。裏面の傾斜付き凹凸により正面方向に回折された波長λの光が液晶のらせん構造を透過することで、正面からの観察でも、角度をつけて観察するのと同様の効果が得られ、多色を発現することができる。傾斜角度の調整により、カラー化が可能となるため、意匠性が向上するという効果がある。
【0062】
(3)位相差部材としての裏面部材
液晶層(ネマチック液晶)や凹凸構造により形成した位相差フィルムを裏面部材として積層し、その上に反射層を設けてもよい。反射層を設けることで、透過した逆ねじれの円偏光が戻る為、コレステリック層の図柄は円偏光板(および直線偏光板)で消えることは無くなる。一方、位相差フィルムは裸眼では透明であるが、直線偏光板を通して見ることにより、着色し認識出来る様になる。また、コレステリック液晶の下側に位相差フィルムを配置した場合、コレステリック液晶の未配向部は偏光板が無い状態で位相差フィルム部を認識できる。
【0063】
(4)鏡面部材としての裏面部材
透明部材(ガラス、フィルム)/反射部から構成される裏面部材を用いてもよい。反射部は全面であっても、部分的に形成されていてもよい。反射部があると円偏光フィルタを用いたビューワで図柄が消えなくなる。背面に持ってくる台紙にアルミ箔などの反射性の高いもので図柄や文字を書いておいてもよい。またはアルミ箔の上に例えば黒インクで図柄を書いておいてもよい。ビューワの右円偏光フィルタを使うとアルミ箔の上に書いた文字のみ消える。透明部材が厚い場合は、角度をつけて観察した場合、透明部材表面での反射像と、反射部での反射像のズレが発生し、目視だとコレステリック液晶層の柄が浮き上がって見える(疑似3D模様)。これにより、意匠性が向上する。上記のような種々の裏面部材は、例えば、PET、COP、TAC等々の材料から形成し得る。
【0064】
本発明の光学フィルムは、用途は極めて広く、種々の光学用素子や光エレクトロニクス素子、装飾用部材、偽造防止用素子等として使用することができる。特に、回折素子およびコレステリック液晶のそれぞれの効果を併せ持った新たなフィルム、シール、ラベル等として用いることができる。例えば、自動車運転免許証、身分証明証、パスポート、クレジットカード、プリペイドカード、各種金券、ギフトカード、有価証券等のカード基板、台紙のような支持基材に付着したり、埋め込むことができる。また、シールとして、電池、カメラ、計算機、時計等の製品に貼りつけることができる。ラベルとして、例えば、ネクタイやシャツのような衣服に縫い付ける繊維ラベルとして使用し得る。
【0065】
特に、偽造防止用素子として用いる場合は、光学フィルムまたはそれより転写された転写物が真正であることを確認するためには、通常、図11に示すようなビューワ120が用いられる。ビューワ120の二つの開口部には右円偏光のみを通過させる右円偏光フィルタ120aと左円偏光のみを通過させる左円偏光フィルタ120bが取り付けられている。ここで、カードなどの支持体130に装着された実施形態の光学フィルム100の液晶層が右円偏光のみを反射する液晶材料から構成されているとする。光学フィルム100にランダムな方向の偏光成分を有するに自然光が照射されると、光学フィルム100の液晶層から右円偏光だけが反射され、その反射光はビューワ120の右円偏光フィルタ120aを通過するため、右円偏光フィルタ120aを通じて液晶層に付された図柄やデザインを見ることができる。一方、液晶層から反射された右円偏光は左円偏光フィルタ120bを通過できないために液晶層に付された図柄やデザインを見ることができない。判別のみの目的では、デザインを見ることができない回転方向の円偏光フィルタのみでも良い。
【実施例】
【0066】
以下、第1実施形態の光学フィルムの実施例をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
基板としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた。PETフィルムは配向能を有しており、配向膜を兼ねる。PETフィルムにトルエンを付着させたスタンプを10kPaの圧力で0.2秒間押し当て、その後、室温で15秒間乾燥させた。
【0068】
ネマチック液晶(PALIOCOLOR LC242 BASF(株)製)19.0重量%、カイラル剤(PALIOCOLOR LC756 BASF(株)製)1.0重量%、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(IRGACURE TPO BASF(株)製)0.8重量%、シクロヘキサノン79.2質量%からなる溶液を、乾燥後の厚みで1.6μmとなるようにPETフィルム上に塗布し、55℃の乾燥炉で15分間加熱して乾燥させた。次いで、100℃に加熱した熱処理炉に10分間、80℃に加熱した熱処理炉に10分間放置して液晶を配向させ、LED−UVランプにより光照射を行って配向を固定し、コレステリック液晶層を形成した。
【0069】
上記液晶層上に、紫外線硬化型接着剤(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスUV−3630)を介してPC(ポリカーボネート)フィルムを貼り付け、高圧水銀灯により光照射を行って接着剤を硬化させた。その後、液晶層からPETフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/PCフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0070】
(実施例2)
PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム上に、PVA(ポリビニルアルコール)4質量%、純水76.8質量%、IPA(イソプロピルアルコール)19.2質量%からなる溶液を、乾燥後の厚みで1.2μmとなるように塗布し、40℃から130℃まで順次高温となる乾燥炉で36秒間乾燥させてPVA膜を形成した。このPVA膜に対して、文字状に切り抜いた厚さ30μmの低密度ポリエチレンフィルムを貼り付け、ラビング布を貼り付けたラビングロールを用いてラビング処理を施して、配向膜を形成した。
【0071】
実施例1と同様にして配向膜上にコレステリック液晶層を形成した。さらに、PCフィルムに代えてTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶層上にTACフィルムを貼り付けた。その後、液晶層から配向膜及びPENフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/TACフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0072】
(実施例3)
文字状に切り抜いたポリエチレンフィルムを用いずにPVA膜全体をラビング処理した以外は実施例2と同様にして配向膜を形成した。
【0073】
水とエタノールの混合溶媒(水:エタノール=2:1(質量比))を付着させたスタンプを上記配向膜上に1kPaの圧力で0.2秒間押し当てることで、溶媒を配向膜に塗布した。その後、溶媒を塗布した部分を室温で15秒間乾燥させた。
【0074】
実施例1と同様にして配向膜上にコレステリック液晶層を形成した。さらに、実施例2と同様にして、液晶層上にTACフィルムを貼り付けた。その後、液晶層から配向膜及びPENフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/TACフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0075】
実施例1〜3において得られた光学フィルムの液晶層にはスタンプの図柄が形成されていることが確認された。光学フィルムに形成された図柄は、鮮明で容易に視認可能なものであった。また、液晶層へのダメージの発生も確認されなかった。
【0076】
第1実施形態の光学フィルム100は、液晶層30/接着剤40/透光性保護フィルム50からなり、液晶層30に液晶材料の配向状態が他の領域とは異なる部分が形成され、それによって意匠性をもたらす図柄を形成した。しかしながら、本発明の光学フィルムは、第1実施形態の光学フィルム100の構造や使用方法に限定されず、以下に掲げるような種々の形態をとり得る。
【0077】
第2実施形態
第1実施形態では、液晶層の液晶材料の配向状態によって図柄を形成したが、さらに図柄の意匠性を増すために、図2に示す光学フィルム102のように液晶層30の下面にホログラムを生じる凹凸パターン60を設けてもよい。凹凸パターン60は、液晶層30の液晶材料の配向性が消失した部分30aと配向性が維持されている部分30bのいずれも覆うように設けられている。液晶層30を通過して凹凸パターン60に達した光は凹凸パターン60のピッチと入射角に応じて回折光を生じさせる。この回折光は液晶層30を経由するために液晶層特有の旋光性を有する。すなわち、液晶層が右円偏光を反射するコレステリック液晶である場合には、回折光もまた右円偏光となる。それゆえ、光学フィルム102を図11に示したような右円偏光フィルタ120aで観察すると、虹色のような回折パターンに応じた色のホログラムが観察できる。さらに、部分30aと部分30bにより形成される図柄も観察できる。一方、左円偏光フィルタ120bで光学フィルム102を観察しても暗視野となり回折光も図柄も観察できない。
【0078】
このように構成することで、液晶層30の配向性の有無のみならず、凹凸パターン60から生じるホログラムのような回折光によって意匠性を増すことができる。なお、凹凸パターンは、型押しやナノインプリント等の任意の方法で形成することができる。凹凸パターン60の下面にさらに、接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設けてもよい。
【0079】
第3実施形態
第2実施形態では、液晶層30の下面に凹凸パターン60を形成したが、図3に示す光学フィルム103のように液晶層30に下面に凹凸パターン60を有する反射層72を設けてもよい。反射層72は右円偏光を反射するコレステリック液晶材料から構成してもよい。第2実施形態と同様に、光学フィルム103を右円偏光フィルタで観察すると、虹色のような回折パターンに応じた色の回折光に加えて、部分30aと部分30bにより形成される図柄も観察できるが、左円偏光フィルタで光学フィルム103を観察しても暗視野となり回折光も図柄も観察できない。このように構成することで、液晶層30の配向性の有無のみならず、凹凸パターン60から生じるホログラムのような回折光によって意匠性を増すことができる。反射層72の下面にさらに保護フィルムや基材を設けてもよい。
【0080】
第4実施形態
第1実施形態では、液晶層を一層設けたが、図4に示す光学フィルム104のように液晶層30の下面に第2液晶層32を設けてもよい。この場合、第2液晶層32の液晶材料の配向性が消失した部分32aと配向性が維持されている部分32bは、液晶層30の液晶材料の配向性が消失した部分30aと配向性が維持されている部分30bに対して層内方向の位置をずらしてよい。また、液晶層30と第2液晶層32とは、液晶材料の層状構造のピッチや屈折率を異なるようにして反射光の色を相違させてもよい。例えば、液晶層30が正面反射で赤色を反射し、第2液晶層32が正面反射で青色を反射するような液晶材料からそれぞれ構成する。この場合、光学フィルム104を肉眼で正面から観察すると紫色に見える。一方、液晶層30と同じ液晶材料で構成した右円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると赤色が見え、液晶層32と同じ液晶材料で構成した右円偏光フィルタで光学フィルムを観察すると青色に見える。こうすることで、意匠性を増すことができる。
【0081】
上記のように液晶層30と第2液晶層32の反射色を異なるようにする代わりに、液晶層30と第2液晶層32とで反射する円偏光の旋光性を反対にしてもよい。例えば、液晶層30が右円偏光を反射するようにし、第2液晶層32が左円偏光を反射するようにそれぞれの液晶材料を調整する。そうすると、右円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると、液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)だけが浮き出て見え、左円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると、液晶層32に配向性の有無で形成したパターン(32a,32b)だけが浮き出て見える。この場合、液晶層30のパターンと第2液晶層32のパターンとで一つの組み合わせ又は重ね合わせ図柄が生じるようにすると、目視における意匠性が向上する。
【0082】
液晶層は2層に限らず3層以上の複数層にしてもよい。また、本実施形態のような複数の液晶層を第2または第3実施形態の凹凸パターンを有する光学フィルムに導入してもよい。
【0083】
第5実施形態
第1実施形態では、液晶層の液晶材料の配向状態によって図柄を形成したが、さらに図柄の意匠性を増すために、図5に示す光学フィルム105のように液晶層30の下面に印刷層82を設けてもよい。印刷層82には、光学フィルム105が貼り付けられる物品の製造者や取扱業者等のロゴやデザインを施すことができる。また、ロゴやデザインに代えて、あるいはそれに加えて写真を印刷層82に張り付けてもよい。印刷層82は、視認できるように偏光性や旋光性がない材料から構成してよく、そうすることで光学フィルム105の液晶層30が右円偏光を反射する液晶材料から形成されていれば、左円偏光フィルタで光学フィルム105を観察すると印刷層82のロゴやデザインは観察できるが液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)は見えず、右円偏光フィルタで光学フィルム105を観察すると、液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)が見えるが、印刷層82のロゴやデザインは液晶層30に隠れて(液晶層30からの反射光で)見えなくなる。
【0084】
印刷層82としては、サーモクロミックインクやフォトクロミックインクを用いて構成することもできる。こうすることで加熱や光照射により印刷層82に色変化を起こさせることができ、識別性を増すことができる。
【0085】
このような印刷層82は、第1実施形態〜第4実施形態の光学フィルムの最下層に設けることでより装飾性を増すことができる。例えば、第2または第3実施形態の光学フィルムの凹凸パターンの下面に図柄を有する印刷層を設けることができ、その場合、図柄とホログラムの凹凸パターンを一致するように形成してもよい。こうすることで、ビューワを通して観察する際に図柄とホログラム模様が重なって見えることで、意匠性が向上する。
【0086】
第6実施形態
第5実施形態で設けた印刷層80に代えて、図6に示す光学フィルム106のように、光吸収層90を最下層に設けてもよい。光吸収層90を設けることで、液晶層30の下方の物品からの反射光を防止して、液晶層の液晶材料の配向状態による図柄をより見やすく、鮮やかにすることができる。光吸収層90は、例えば顔料又は染料による黒色の印刷層にすることができる。光吸収層90は、液晶層30の全面を覆ってもよく、部分的に覆うように液晶層30の下面に設けてもよい。光吸収層90を特定のパターンにて液晶層30の下面に部分的に設けることで、光吸収層30によるデザインが生じる。光吸収層90として、可視光を吸収する材料のみならず、紫外線を吸収する材料を用いて紫外線吸収層としてもよい。なお、光吸収層90は、第1実施形態〜第5実施形態の光学フィルムの最下層に設けてもよい。
【0087】
第7実施形態
第1実施形態の光学フィルム100は、液晶層30/接着剤40/保護フィルム50の積層構造を有していたが、図7に示す光学フィルム107のように、保護フィルム50と液晶層30の間に、光透過性の装飾層92を設けてもよい。装飾層92は、着色がされた光透過性層や、平面的にロゴやデザインが施された膜であってもよい。装飾層92は、図11に示したようなビューワ120で観察したときに、液晶層30からの円偏光反射光が透過して液晶層の液晶材料の配向状態による図柄を認識できる程度の厚さと透過率を維持することが望ましい。こうすることで、光学フィルム100により意匠性を高くすることができる。装飾層92は、光透過性のポリマーなどの任意の材料から形成することでき、液晶層30と保護フィルム50との間に接着剤40を介して固着される。
【0088】
装飾層92を設ける代わりに、第1実施形態の光学フィルム100の保護フィルム50に直接、デザインや色を施してもよい。この場合、保護フィルムの表面に印刷を施してもよく、あるいは保護フィルム50を顔料や光沢を生じる粉体を添加し他材料から形成してもよい。
【0089】
第8実施形態
第2実施形態では、液晶層30の下面に凹凸パターン60を設けたが、この実施形態の光学フィルム108は、図8に示すようにその一部の領域、例えば左半分の領域108aの液晶層30の下面にだけ凹凸パターン60を設け、右半分の領域108bの液晶層30にだけ配向状態が異なる領域30aを設けている。こうすることで、液晶層30を右円偏光を反射する液晶材料から構成した場合、図11に示したような右円偏光フィルタ120aを通じて光学フィルム108を観察すると、領域108aからは凹凸パターン60から生じた回折光によるホログラム模様を観測することができ、領域108bからは配向状態が異なる領域30aによって生じる図柄が視認できる。それゆえ、これらの図柄とホログラム模様の両方をそれぞれの領域から観察できたときに、意匠性を一層高めることができる。
【0090】
第9実施形態
第5実施形態では、液晶層の下面に印刷層を設けたが、図9に示す光学フィルム109は、その一部の領域、例えば左半分の領域109aには液晶層30の代わりに印刷模様84aを有する印刷層84を設け、右半分の領域109bにだけ液晶層30を設ける。そして、液晶層30の一部にだけ配向状態が異なる領域30aを設けている。液晶層30は右円偏光を反射する液晶材料から構成している。この光学フィルム109を正面から目視すると、領域109aからは印刷層84の印刷模様84aが見え、領域109bからは液晶の配向状態が異なる領域30aによる図柄が見える。また、右円偏光フィルタを通じて光学フィルム109を観察すると、目視した時と同様に、領域109aからは印刷模様が見え、領域109bからは配向状態が異なる領域30aによる図柄が見える。左円偏光フィルタを通じて光学フィルム109を観察すると、領域109aからは印刷模様が見え、領域109bは暗視野となる。なお、印刷層30と液晶層30を同色にしてよく、そうすることで、目視及び右円偏光フィルタを通じて観察した時と、左円偏光フィルタを通じて観察した時の相違が一層明らかになる。
【0091】
第10実施形態
図10に第2実施形態の変形例を示す。第2実施形態では、凹凸パターン60が液晶層30の下面に形成されていたが、図10に示す光学フィルム110では、液晶層30と保護フィルム50との間にホログラム模様を生じる凹凸パターン60を有する中間層94が設けられている。凹凸パターン60は中間層94が液晶層30と対向する面に設けられている。中間層94は、例えば、液晶層30と同じ右円偏光を反射させるコレステリック液晶材料から構成することができる。この場合、光学フィルム110を正面から目視すると、凹凸パターン60によるホログラム模様を観察することができる。一方、斜め方向から観察する液晶層30のカラーシフトにより液晶材料の配向状態による図柄が色付いて見える。
【0092】
第11実施形態
図12に、第1実施形態の光学フィルムの液晶層30上の保護フィルムに代えてマイクロレンズアレイ150を設けた光学フィルム112を示す。マイクロレンズアレイ150は、複数のマイクロレンズ150aが碁盤の目のように液晶層30上に配列することで形成されており、各レンズは例えば、数μmの直径を有する。液晶層30の配向状態が異なる領域30a,30bによる図柄は、予めマイクロレンズアレイ150を通して所定の立体像を結像させることによって形成した図柄である。このようにして形成した図柄をマイクロレンズアレイ150を通して観察することで三次元の立体像として見ることができる。マイクロレンズアレイ150は、アクリルなどを用いて複屈折が生じないように形成することで、ビューワビューワを通じて右円偏光フィルタを通してのみ見える像が立体的に見えるために、見える像に意匠性を付すことができる。
【0093】
第12実施形態
図13に、第1実施形態の光学フィルム100の液晶層30上の保護フィルムに代えてレンチキュラーレンズアレイ160を設けた光学フィルム114を示す。レンチキュラーレンズアレイ160は、複数の半円柱状のレンチキュラーレンズ160aが液晶層30上に所定の方向に配列することで形成されており、各レンチキュラーレンズは例えば、数μm〜数mmの横幅を有する。各レンチキュラーレンズ160aの下方の液晶層30の領域を、例えば図13に示したように領域α,β,γのように三つの分け、領域α,β,γのそれぞれには、液晶層30を構成した配向状態が異なる領域30a,30bによりユニットとなる図柄を形成する。領域αの図柄の集合体を合わせることで一つの図柄が構成される。領域β及び領域γの図柄についても同様である。こうすることで、レンチキュラーレンズアレイ160をある特定の方向(レンチキュラーレンズアレイ160の光軸に対する特定の角度)から見たときに、領域αによる図柄だけを観察できる。また、レンズアレイ160を正面から見たときに領域βによる図柄だけを観察できる。また、レンチキュラーレンズアレイ160を領域αの図柄が見えたときと法線に対して逆の方向から見たときに、領域γによる図柄を観察できる。すなわち、見る方向により異なる図柄を観察できる。それゆえ、レンチキュラーレンズアレイ160を複屈折が生じないように形成することで、ビューワを通じて右円偏光フィルタを通して見える像が見る方向によって異なる図柄に見えるために、図柄の意匠性を増すことができる。領域α,β,γに記録する図柄は、見る方向によって連続的に繋がる動画のような図柄や立体的に見える図柄にしてもよい。
【0094】
第13実施形態
第1実施形態の光学フィルム100の透光性保護フィルム50の上層または下層にIRインクやUVインクなどを使って図柄を形成してもよい。これらのインクで形成された図柄は、赤外線または紫外線を吸収して発色するので目視はできないが、赤外線または紫外線を使って検知することができる。こうすることで、液晶層の図柄をビューワにより可視光で検知し、さらにIRインクまたはUVインクによる図柄を赤外線または紫外線を照射して検知することができるので、二段階で検知方法を施すことができる。なお、この場合、IRインクまたはUVインクによる図柄は可視光を透過する材料から形成することが望ましい。このようなIRインクやUVインクなどを使った図柄を形成する形態は、第1実施形態のみならず、上記実施形態のいずれかの光フィルムに組み合わせて用いてもよい。
【0095】
第14実施形態
本発明の光学フィルムは、前述のように種々の用途に好適であるが、商品等の物品に一旦貼りつけられた光学フィルムを剥離して別の物品に貼りつけるという行為、すなわち、再利用を防止することができるようにしておくことが望ましい。このような再利用を防止することができる光学フィルムを製造し、光学フィルムの液晶層を物品(被転写物)に転写するプロセスの一例を図14(a)〜(e)に示す。
【0096】
図14(a)に示す積層体は、図1に示したプロセスの液晶形成工程(図1(d))で得られた積層体であり、基板上の配向膜により液晶層の配向が固定され且つ図柄が形成されている。第1実施形態では、この積層体に接着剤を介して透光性保護フィルムを付着したが、この例では、糊層を介してセパレータを付着して、図14(b)に示すような積層体を得る。次に、この積層体の配向膜を基板ごと剥離して除去して図14(c)に示すような液晶層/糊層/セパレータからなる積層体を得る。この積層体は、後にセパレータを剥離することで種々の有用な物品に付着可能であるために、転写シール材としての製品形態となる。なお、図14(c)に示す積層体の露出した液晶層の表面を保護するために液晶層の表面(糊層の反対側)に保護フィルムを設けてもよい。次いで、この積層体から図14(d)に示すようにセパレータを剥離して、物品に貼りつける。こうして図14(e)に示すように、液晶層をセパレータを介して物品に転写することができた。なお、図14(c)に示すような積層体の液晶層の表面に保護フィルムを設けた場合には、積層体を物品に貼りつけた後に剥がすことができる。ここで、液晶層30は前述のように0.3〜9.0μm、特に0.3〜6.0μmのように極めて薄い膜として製造することができるので、糊層の剥離力よりも液晶層の破断強度が低く、糊層が弾性変形すると共に液晶層は破壊される。それゆえ、液晶層を有する光学フィルムの再利用は不可能となる。
【0097】
図14(a)〜(e)に示したプロセスにおいて、セパレータとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、一軸延伸ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、一軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)トリアセチルセルロース(TAC)あるいはエポキシ樹脂等のなど任意の材料フィルムを使用できる。トリアセチルセルロース(TAC)としては、特開2004−138697号に開示されたようなけん化したトリアセチルセルロース(TAC)を用いることもできる。
【0098】
糊剤は、液晶層に付着するとともにセパレータを剥離可能に付着させるものであれば任意の粘着剤や接着剤を使用し得、ホットスタンプやUV照射により硬化するような後処理を要する材料でも構わない。なお、セパレータとして既に糊剤が付着した両面セパレータ付きの転写テープ、例えば3M社製の467MP、9458,9626などを使用してもよい。
【0099】
第15実施形態
図15(a)〜(h)、(h’)に第14実施形態で説明したプロセスの変形例を示す。図15(a)に示す積層体は、図1に示したプロセスの液晶形成工程(図1(d))で得られた積層体であり、基板上の配向膜により液晶層の配向が固定され且つ図柄が形成されている。このような積層体の液晶層の表面に、図15(b)に示すように接着剤層を形成する。接着剤層としては、ホットメルト型接着剤や、光又は電子線硬化型の反応性接着剤が好適である。接着剤層は、後述するように最終的に積層体を物品に貼りつけた後に、液晶層上に残すかあるいは残さないかのいずれかの仕様を選択できる。次に、図15(c)に示すように接着剤層の上にセパレータ1を付着する。セパレータ1としては、第14実施形態で用いたセパレータと同様の材料を使用し得る。次いで、この積層体の配光層を基板ごと剥離して除去して図15(d)に示すような液晶層/接着剤層/セパレータ1からなる積層体を得る。この積層体の露出した液晶層上に、図15(e)に示すように、糊層を介してセパレータ2を付すことによりセパレータ2/糊層/液晶層/接着剤層/セパレータ1からなる積層体を得る。
【0100】
この積層体は、後にセパレータ1及びセパレータ2を剥離することで種々の有用な物品に付着可能であるために、シール材としての製品形態にすることができる。この積層体を物品に付着させるときに、図15(g)に示すようにセパレータ2を剥離して、積層体の糊剤を介して物品に貼りつける。最後に、セパレータ1を接着剤を残して剥離して図15(h)に示すような形態となる。接着剤を最表面に残すことで、液晶層の保護膜として機能して耐熱性や耐光性を付与でき、また、接着剤層の厚みや強度を利用して物品に貼りつけた後に再剥離を可能にしてもよい。
【0101】
セパレータ1を接着剤層から剥離する代わりに、図15(h’)に示すようにセパレータ1を接着剤とともに剥離して物品上に糊層を介して液晶層だけが残る形態にすることもできる。この場合には、液晶層30は前述のように1〜3μm程度の極めて薄い膜にすることができるので、そのような薄膜を物品からは容易に剥がすことができず、無理に剥離しようとすれば、液晶層自体が破断することになる。それゆえ、光フィルムの再利用は不可能となる。接着剤層を残す(図15(h))か残さない(図15(h’))かは、接着剤層のセパレータ1への接着力と接着剤層の液晶層への接着力の大小関係を考慮して接着剤層の材料を選定することで決定することができる。
【0102】
第14及び15実施形態の光フィルムで使用したセパレータ1、セパレータ2、糊剤、接着剤については、特開2003−121643号、特開2004−117522号、特開2004−138697号において、再剥離性基板またはセパレートフィルム、それらを液晶性物質に接着させるための接着剤または粘着剤として種々の物質が開示されており、それらを用いることもできる。
【0103】
なお、図14(a)〜(e)及び図15(a)〜(h)、(h’)には、第1実施形態と同様に配向膜を用いた例を示したが、基板自体が配向性を有する基板を用いてもよい。この場合には、配向膜を省略することができる。
【0104】
以上、本発明の光学フィルムを種々の実施形態で説明してきたが、各実施形態で説明した特徴的な構造や配置を別の実施形態に組み込むこともできる。
【0105】
例えば、第10実施形態で説明した中間層94を、第9実施形態の印刷層84と液晶層30の上面を覆うように設けてもよい。この場合、中間層94に、一部にだけ配向状態が異なる領域を設けて、印刷層84と隣り合う液晶層30に配向状態が異なる領域30aを設けなくともよい。液晶層30に、配向状態が異なる領域30aを設けないときには、液晶層30は、前述した方法で製造する必要はなく、小片状のコレステリック液晶をインクのビヒクル中に分散させた液晶インクを用いて構成してもよい。
【0106】
また、第5実施形態で説明した印刷層82または第6実施形態で説明した光吸収層90を別の実施形態の光学フィルムの最下面に設けてもよい。
【0107】
第2実施形態の説明において、光学フィルム102の最下面(凹凸パターン60)にさらに、接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設け得ることを述べたが、他の実施形態の光学フィルムに対しても同様に接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設けてもよい。支持体としてTACやPETなどのプラスチックフィルムに限らず、シャツ等の衣服に取り付ける繊維ラベルのような織布または不織布の布地でも構わない。
【0108】
上記実施形態の光学フィルムでは、いずれも液晶層の液晶材料の配向状態が互いに異なる領域30a,30bによって図柄やデザインを形成したが、30aまたは領域30bをドットパターン、バーコードパターン、QRコード(登録商標)とすることにより、それらのパターンやコードに情報性を付与することができる。そうすることで、光学フィルム自体やそれが付された物品の製品番号や製造年月日などの情報を付することもできる。
【0109】
光学フィルムの形、サイズ、厚さは任意であり、光学フィルムの付け替えを防止するためのスリット(切れ目)を光学フィルムの一部に設けてもよく、また、光学フィルムにドーナツ形状のように開口部を形成してもよい。
【0110】
実施形態で説明した光学フィルムの各層を構成する材料は、それらの層の機能を果たす限り、任意の材料を用い得る。例えば、液晶層や保護フィルムに装飾や着色をもたらす色素や光反射体などの添加物を加えることができる。液晶材料は、可視光を反射する材料のみならず、赤外線だけを反射する液晶材料から構成することができる。この場合、光学フィルムの液晶層は目視で透明となる。このような光学フィルムが真正であることを観察するには、光学フィルムに赤外線を照射し、反射した赤外線を赤外線センサで検知すればよい。この際、反射光をλ/4板で直線偏光に変換した後、直線偏光を通過する偏光フィルタを介して受光してもよい。
【0111】
上記説明した実施形態は例示にすぎず、それらの実施形態に当業者が想い付く変形を加えることもできる。
【符号の説明】
【0112】
10…基板、20…配向膜、22…一部の領域(溶媒塗布部)、30…液晶層、32…図柄、40…接着剤、50…透光性保護フィルム、60…凹凸パターン、70…ラビングロール、72…反射層、80…スタンプ、82、84…印刷層、90…光吸収層 92…装飾層、94…中間層、100,102〜110…光学フィルム、120…ビューワ、130…支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15