【実施例】
【0066】
以下、第1実施形態の光学フィルムの実施例をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
基板としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた。PETフィルムは配向能を有しており、配向膜を兼ねる。PETフィルムにトルエンを付着させたスタンプを10kPaの圧力で0.2秒間押し当て、その後、室温で15秒間乾燥させた。
【0068】
ネマチック液晶(PALIOCOLOR LC242 BASF(株)製)19.0重量%、カイラル剤(PALIOCOLOR LC756 BASF(株)製)1.0重量%、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(IRGACURE TPO BASF(株)製)0.8重量%、シクロヘキサノン79.2質量%からなる溶液を、乾燥後の厚みで1.6μmとなるようにPETフィルム上に塗布し、55℃の乾燥炉で15分間加熱して乾燥させた。次いで、100℃に加熱した熱処理炉に10分間、80℃に加熱した熱処理炉に10分間放置して液晶を配向させ、LED−UVランプにより光照射を行って配向を固定し、コレステリック液晶層を形成した。
【0069】
上記液晶層上に、紫外線硬化型接着剤(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスUV−3630)を介してPC(ポリカーボネート)フィルムを貼り付け、高圧水銀灯により光照射を行って接着剤を硬化させた。その後、液晶層からPETフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/PCフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0070】
(実施例2)
PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム上に、PVA(ポリビニルアルコール)4質量%、純水76.8質量%、IPA(イソプロピルアルコール)19.2質量%からなる溶液を、乾燥後の厚みで1.2μmとなるように塗布し、40℃から130℃まで順次高温となる乾燥炉で36秒間乾燥させてPVA膜を形成した。このPVA膜に対して、文字状に切り抜いた厚さ30μmの低密度ポリエチレンフィルムを貼り付け、ラビング布を貼り付けたラビングロールを用いてラビング処理を施して、配向膜を形成した。
【0071】
実施例1と同様にして配向膜上にコレステリック液晶層を形成した。さらに、PCフィルムに代えてTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、液晶層上にTACフィルムを貼り付けた。その後、液晶層から配向膜及びPENフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/TACフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0072】
(実施例3)
文字状に切り抜いたポリエチレンフィルムを用いずにPVA膜全体をラビング処理した以外は実施例2と同様にして配向膜を形成した。
【0073】
水とエタノールの混合溶媒(水:エタノール=2:1(質量比))を付着させたスタンプを上記配向膜上に1kPaの圧力で0.2秒間押し当てることで、溶媒を配向膜に塗布した。その後、溶媒を塗布した部分を室温で15秒間乾燥させた。
【0074】
実施例1と同様にして配向膜上にコレステリック液晶層を形成した。さらに、実施例2と同様にして、液晶層上にTACフィルムを貼り付けた。その後、液晶層から配向膜及びPENフィルムを剥離し、液晶層/接着剤/TACフィルムからなる光学フィルムを得た。
【0075】
実施例1〜3において得られた光学フィルムの液晶層にはスタンプの図柄が形成されていることが確認された。光学フィルムに形成された図柄は、鮮明で容易に視認可能なものであった。また、液晶層へのダメージの発生も確認されなかった。
【0076】
第1実施形態の光学フィルム100は、液晶層30/接着剤40/透光性保護フィルム50からなり、液晶層30に液晶材料の配向状態が他の領域とは異なる部分が形成され、それによって意匠性をもたらす図柄を形成した。しかしながら、本発明の光学フィルムは、第1実施形態の光学フィルム100の構造や使用方法に限定されず、以下に掲げるような種々の形態をとり得る。
【0077】
第2実施形態
第1実施形態では、液晶層の液晶材料の配向状態によって図柄を形成したが、さらに図柄の意匠性を増すために、
図2に示す光学フィルム102のように液晶層30の下面にホログラムを生じる凹凸パターン60を設けてもよい。凹凸パターン60は、液晶層30の液晶材料の配向性が消失した部分30aと配向性が維持されている部分30bのいずれも覆うように設けられている。液晶層30を通過して凹凸パターン60に達した光は凹凸パターン60のピッチと入射角に応じて回折光を生じさせる。この回折光は液晶層30を経由するために液晶層特有の旋光性を有する。すなわち、液晶層が右円偏光を反射するコレステリック液晶である場合には、回折光もまた右円偏光となる。それゆえ、光学フィルム102を
図11に示したような右円偏光フィルタ120aで観察すると、虹色のような回折パターンに応じた色のホログラムが観察できる。さらに、部分30aと部分30bにより形成される図柄も観察できる。一方、左円偏光フィルタ120bで光学フィルム102を観察しても暗視野となり回折光も図柄も観察できない。
【0078】
このように構成することで、液晶層30の配向性の有無のみならず、凹凸パターン60から生じるホログラムのような回折光によって意匠性を増すことができる。なお、凹凸パターンは、型押しやナノインプリント等の任意の方法で形成することができる。凹凸パターン60の下面にさらに、接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設けてもよい。
【0079】
第3実施形態
第2実施形態では、液晶層30の下面に凹凸パターン60を形成したが、
図3に示す光学フィルム103のように液晶層30に下面に凹凸パターン60を有する反射層72を設けてもよい。反射層72は右円偏光を反射するコレステリック液晶材料から構成してもよい。第2実施形態と同様に、光学フィルム103を右円偏光フィルタで観察すると、虹色のような回折パターンに応じた色の回折光に加えて、部分30aと部分30bにより形成される図柄も観察できるが、左円偏光フィルタで光学フィルム103を観察しても暗視野となり回折光も図柄も観察できない。このように構成することで、液晶層30の配向性の有無のみならず、凹凸パターン60から生じるホログラムのような回折光によって意匠性を増すことができる。反射層72の下面にさらに保護フィルムや基材を設けてもよい。
【0080】
第4実施形態
第1実施形態では、液晶層を一層設けたが、
図4に示す光学フィルム104のように液晶層30の下面に第2液晶層32を設けてもよい。この場合、第2液晶層32の液晶材料の配向性が消失した部分32aと配向性が維持されている部分32bは、液晶層30の液晶材料の配向性が消失した部分30aと配向性が維持されている部分30bに対して層内方向の位置をずらしてよい。また、液晶層30と第2液晶層32とは、液晶材料の層状構造のピッチや屈折率を異なるようにして反射光の色を相違させてもよい。例えば、液晶層30が正面反射で赤色を反射し、第2液晶層32が正面反射で青色を反射するような液晶材料からそれぞれ構成する。この場合、光学フィルム104を肉眼で正面から観察すると紫色に見える。一方、液晶層30と同じ液晶材料で構成した右円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると赤色が見え、液晶層32と同じ液晶材料で構成した右円偏光フィルタで光学フィルムを観察すると青色に見える。こうすることで、意匠性を増すことができる。
【0081】
上記のように液晶層30と第2液晶層32の反射色を異なるようにする代わりに、液晶層30と第2液晶層32とで反射する円偏光の旋光性を反対にしてもよい。例えば、液晶層30が右円偏光を反射するようにし、第2液晶層32が左円偏光を反射するようにそれぞれの液晶材料を調整する。そうすると、右円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると、液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)だけが浮き出て見え、左円偏光フィルタで光学フィルム104を観察すると、液晶層32に配向性の有無で形成したパターン(32a,32b)だけが浮き出て見える。この場合、液晶層30のパターンと第2液晶層32のパターンとで一つの組み合わせ又は重ね合わせ図柄が生じるようにすると、目視における意匠性が向上する。
【0082】
液晶層は2層に限らず3層以上の複数層にしてもよい。また、本実施形態のような複数の液晶層を第2または第3実施形態の凹凸パターンを有する光学フィルムに導入してもよい。
【0083】
第5実施形態
第1実施形態では、液晶層の液晶材料の配向状態によって図柄を形成したが、さらに図柄の意匠性を増すために、
図5に示す光学フィルム105のように液晶層30の下面に印刷層82を設けてもよい。印刷層82には、光学フィルム105が貼り付けられる物品の製造者や取扱業者等のロゴやデザインを施すことができる。また、ロゴやデザインに代えて、あるいはそれに加えて写真を印刷層82に張り付けてもよい。印刷層82は、視認できるように偏光性や旋光性がない材料から構成してよく、そうすることで光学フィルム105の液晶層30が右円偏光を反射する液晶材料から形成されていれば、左円偏光フィルタで光学フィルム105を観察すると印刷層82のロゴやデザインは観察できるが液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)は見えず、右円偏光フィルタで光学フィルム105を観察すると、液晶層30に配向性の有無で形成したパターン(30a,30b)が見えるが、印刷層82のロゴやデザインは液晶層30に隠れて(液晶層30からの反射光で)見えなくなる。
【0084】
印刷層82としては、サーモクロミックインクやフォトクロミックインクを用いて構成することもできる。こうすることで加熱や光照射により印刷層82に色変化を起こさせることができ、識別性を増すことができる。
【0085】
このような印刷層82は、第1実施形態〜第4実施形態の光学フィルムの最下層に設けることでより装飾性を増すことができる。例えば、第2または第3実施形態の光学フィルムの凹凸パターンの下面に図柄を有する印刷層を設けることができ、その場合、図柄とホログラムの凹凸パターンを一致するように形成してもよい。こうすることで、ビューワを通して観察する際に図柄とホログラム模様が重なって見えることで、意匠性が向上する。
【0086】
第6実施形態
第5実施形態で設けた印刷層80に代えて、
図6に示す光学フィルム106のように、光吸収層90を最下層に設けてもよい。光吸収層90を設けることで、液晶層30の下方の物品からの反射光を防止して、液晶層の液晶材料の配向状態による図柄をより見やすく、鮮やかにすることができる。光吸収層90は、例えば顔料又は染料による黒色の印刷層にすることができる。光吸収層90は、液晶層30の全面を覆ってもよく、部分的に覆うように液晶層30の下面に設けてもよい。光吸収層90を特定のパターンにて液晶層30の下面に部分的に設けることで、光吸収層30によるデザインが生じる。光吸収層90として、可視光を吸収する材料のみならず、紫外線を吸収する材料を用いて紫外線吸収層としてもよい。なお、光吸収層90は、第1実施形態〜第5実施形態の光学フィルムの最下層に設けてもよい。
【0087】
第7実施形態
第1実施形態の光学フィルム100は、液晶層30/接着剤40/保護フィルム50の積層構造を有していたが、
図7に示す光学フィルム107のように、保護フィルム50と液晶層30の間に、光透過性の装飾層92を設けてもよい。装飾層92は、着色がされた光透過性層や、平面的にロゴやデザインが施された膜であってもよい。装飾層92は、
図11に示したようなビューワ120で観察したときに、液晶層30からの円偏光反射光が透過して液晶層の液晶材料の配向状態による図柄を認識できる程度の厚さと透過率を維持することが望ましい。こうすることで、光学フィルム100により意匠性を高くすることができる。装飾層92は、光透過性のポリマーなどの任意の材料から形成することでき、液晶層30と保護フィルム50との間に接着剤40を介して固着される。
【0088】
装飾層92を設ける代わりに、第1実施形態の光学フィルム100の保護フィルム50に直接、デザインや色を施してもよい。この場合、保護フィルムの表面に印刷を施してもよく、あるいは保護フィルム50を顔料や光沢を生じる粉体を添加し他材料から形成してもよい。
【0089】
第8実施形態
第2実施形態では、液晶層30の下面に凹凸パターン60を設けたが、この実施形態の光学フィルム108は、
図8に示すようにその一部の領域、例えば左半分の領域108aの液晶層30の下面にだけ凹凸パターン60を設け、右半分の領域108bの液晶層30にだけ配向状態が異なる領域30aを設けている。こうすることで、液晶層30を右円偏光を反射する液晶材料から構成した場合、
図11に示したような右円偏光フィルタ120aを通じて光学フィルム108を観察すると、領域108aからは凹凸パターン60から生じた回折光によるホログラム模様を観測することができ、領域108bからは配向状態が異なる領域30aによって生じる図柄が視認できる。それゆえ、これらの図柄とホログラム模様の両方をそれぞれの領域から観察できたときに、意匠性を一層高めることができる。
【0090】
第9実施形態
第5実施形態では、液晶層の下面に印刷層を設けたが、
図9に示す光学フィルム109は、その一部の領域、例えば左半分の領域109aには液晶層30の代わりに印刷模様84aを有する印刷層84を設け、右半分の領域109bにだけ液晶層30を設ける。そして、液晶層30の一部にだけ配向状態が異なる領域30aを設けている。液晶層30は右円偏光を反射する液晶材料から構成している。この光学フィルム109を正面から目視すると、領域109aからは印刷層84の印刷模様84aが見え、領域109bからは液晶の配向状態が異なる領域30aによる図柄が見える。また、右円偏光フィルタを通じて光学フィルム109を観察すると、目視した時と同様に、領域109aからは印刷模様が見え、領域109bからは配向状態が異なる領域30aによる図柄が見える。左円偏光フィルタを通じて光学フィルム109を観察すると、領域109aからは印刷模様が見え、領域109bは暗視野となる。なお、印刷層30と液晶層30を同色にしてよく、そうすることで、目視及び右円偏光フィルタを通じて観察した時と、左円偏光フィルタを通じて観察した時の相違が一層明らかになる。
【0091】
第10実施形態
図10に第2実施形態の変形例を示す。第2実施形態では、凹凸パターン60が液晶層30の下面に形成されていたが、
図10に示す光学フィルム110では、液晶層30と保護フィルム50との間にホログラム模様を生じる凹凸パターン60を有する中間層94が設けられている。凹凸パターン60は中間層94が液晶層30と対向する面に設けられている。中間層94は、例えば、液晶層30と同じ右円偏光を反射させるコレステリック液晶材料から構成することができる。この場合、光学フィルム110を正面から目視すると、凹凸パターン60によるホログラム模様を観察することができる。一方、斜め方向から観察する液晶層30のカラーシフトにより液晶材料の配向状態による図柄が色付いて見える。
【0092】
第11実施形態
図12に、第1実施形態の光学フィルムの液晶層30上の保護フィルムに代えてマイクロレンズアレイ150を設けた光学フィルム112を示す。マイクロレンズアレイ150は、複数のマイクロレンズ150aが碁盤の目のように液晶層30上に配列することで形成されており、各レンズは例えば、数μmの直径を有する。液晶層30の配向状態が異なる領域30a,30bによる図柄は、予めマイクロレンズアレイ150を通して所定の立体像を結像させることによって形成した図柄である。このようにして形成した図柄をマイクロレンズアレイ150を通して観察することで三次元の立体像として見ることができる。マイクロレンズアレイ150は、アクリルなどを用いて複屈折が生じないように形成することで、ビューワビューワを通じて右円偏光フィルタを通してのみ見える像が立体的に見えるために、見える像に意匠性を付すことができる。
【0093】
第12実施形態
図13に、第1実施形態の光学フィルム100の液晶層30上の保護フィルムに代えてレンチキュラーレンズアレイ160を設けた光学フィルム114を示す。レンチキュラーレンズアレイ160は、複数の半円柱状のレンチキュラーレンズ160aが液晶層30上に所定の方向に配列することで形成されており、各レンチキュラーレンズは例えば、数μm〜数mmの横幅を有する。各レンチキュラーレンズ160aの下方の液晶層30の領域を、例えば
図13に示したように領域α,β,γのように三つの分け、領域α,β,γのそれぞれには、液晶層30を構成した配向状態が異なる領域30a,30bによりユニットとなる図柄を形成する。領域αの図柄の集合体を合わせることで一つの図柄が構成される。領域β及び領域γの図柄についても同様である。こうすることで、レンチキュラーレンズアレイ160をある特定の方向(レンチキュラーレンズアレイ160の光軸に対する特定の角度)から見たときに、領域αによる図柄だけを観察できる。また、レンズアレイ160を正面から見たときに領域βによる図柄だけを観察できる。また、レンチキュラーレンズアレイ160を領域αの図柄が見えたときと法線に対して逆の方向から見たときに、領域γによる図柄を観察できる。すなわち、見る方向により異なる図柄を観察できる。それゆえ、レンチキュラーレンズアレイ160を複屈折が生じないように形成することで、ビューワを通じて右円偏光フィルタを通して見える像が見る方向によって異なる図柄に見えるために、図柄の意匠性を増すことができる。領域α,β,γに記録する図柄は、見る方向によって連続的に繋がる動画のような図柄や立体的に見える図柄にしてもよい。
【0094】
第13実施形態
第1実施形態の光学フィルム100の透光性保護フィルム50の上層または下層にIRインクやUVインクなどを使って図柄を形成してもよい。これらのインクで形成された図柄は、赤外線または紫外線を吸収して発色するので目視はできないが、赤外線または紫外線を使って検知することができる。こうすることで、液晶層の図柄をビューワにより可視光で検知し、さらにIRインクまたはUVインクによる図柄を赤外線または紫外線を照射して検知することができるので、二段階で検知方法を施すことができる。なお、この場合、IRインクまたはUVインクによる図柄は可視光を透過する材料から形成することが望ましい。このようなIRインクやUVインクなどを使った図柄を形成する形態は、第1実施形態のみならず、上記実施形態のいずれかの光フィルムに組み合わせて用いてもよい。
【0095】
第14実施形態
本発明の光学フィルムは、前述のように種々の用途に好適であるが、商品等の物品に一旦貼りつけられた光学フィルムを剥離して別の物品に貼りつけるという行為、すなわち、再利用を防止することができるようにしておくことが望ましい。このような再利用を防止することができる光学フィルムを製造し、光学フィルムの液晶層を物品(被転写物)に転写するプロセスの一例を
図14(a)〜(e)に示す。
【0096】
図14(a)に示す積層体は、
図1に示したプロセスの液晶形成工程(
図1(d))で得られた積層体であり、基板上の配向膜により液晶層の配向が固定され且つ図柄が形成されている。第1実施形態では、この積層体に接着剤を介して透光性保護フィルムを付着したが、この例では、糊層を介してセパレータを付着して、
図14(b)に示すような積層体を得る。次に、この積層体の配向膜を基板ごと剥離して除去して
図14(c)に示すような液晶層/糊層/セパレータからなる積層体を得る。この積層体は、後にセパレータを剥離することで種々の有用な物品に付着可能であるために、転写シール材としての製品形態となる。なお、
図14(c)に示す積層体の露出した液晶層の表面を保護するために液晶層の表面(糊層の反対側)に保護フィルムを設けてもよい。次いで、この積層体から
図14(d)に示すようにセパレータを剥離して、物品に貼りつける。こうして
図14(e)に示すように、液晶層をセパレータを介して物品に転写することができた。なお、
図14(c)に示すような積層体の液晶層の表面に保護フィルムを設けた場合には、積層体を物品に貼りつけた後に剥がすことができる。ここで、液晶層30は前述のように0.3〜9.0μm、特に0.3〜6.0μmのように極めて薄い膜として製造することができるので、糊層の剥離力よりも液晶層の破断強度が低く、糊層が弾性変形すると共に液晶層は破壊される。それゆえ、液晶層を有する光学フィルムの再利用は不可能となる。
【0097】
図14(a)〜(e)に示したプロセスにおいて、セパレータとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、一軸延伸ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、一軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)トリアセチルセルロース(TAC)あるいはエポキシ樹脂等のなど任意の材料フィルムを使用できる。トリアセチルセルロース(TAC)としては、特開2004−138697号に開示されたようなけん化したトリアセチルセルロース(TAC)を用いることもできる。
【0098】
糊剤は、液晶層に付着するとともにセパレータを剥離可能に付着させるものであれば任意の粘着剤や接着剤を使用し得、ホットスタンプやUV照射により硬化するような後処理を要する材料でも構わない。なお、セパレータとして既に糊剤が付着した両面セパレータ付きの転写テープ、例えば3M社製の467MP、9458,9626などを使用してもよい。
【0099】
第15実施形態
図15(a)〜(h)、(h’)に第14実施形態で説明したプロセスの変形例を示す。
図15(a)に示す積層体は、
図1に示したプロセスの液晶形成工程(
図1(d))で得られた積層体であり、基板上の配向膜により液晶層の配向が固定され且つ図柄が形成されている。このような積層体の液晶層の表面に、
図15(b)に示すように接着剤層を形成する。接着剤層としては、ホットメルト型接着剤や、光又は電子線硬化型の反応性接着剤が好適である。接着剤層は、後述するように最終的に積層体を物品に貼りつけた後に、液晶層上に残すかあるいは残さないかのいずれかの仕様を選択できる。次に、
図15(c)に示すように接着剤層の上にセパレータ1を付着する。セパレータ1としては、第14実施形態で用いたセパレータと同様の材料を使用し得る。次いで、この積層体の配光層を基板ごと剥離して除去して
図15(d)に示すような液晶層/接着剤層/セパレータ1からなる積層体を得る。この積層体の露出した液晶層上に、
図15(e)に示すように、糊層を介してセパレータ2を付すことによりセパレータ2/糊層/液晶層/接着剤層/セパレータ1からなる積層体を得る。
【0100】
この積層体は、後にセパレータ1及びセパレータ2を剥離することで種々の有用な物品に付着可能であるために、シール材としての製品形態にすることができる。この積層体を物品に付着させるときに、
図15(g)に示すようにセパレータ2を剥離して、積層体の糊剤を介して物品に貼りつける。最後に、セパレータ1を接着剤を残して剥離して
図15(h)に示すような形態となる。接着剤を最表面に残すことで、液晶層の保護膜として機能して耐熱性や耐光性を付与でき、また、接着剤層の厚みや強度を利用して物品に貼りつけた後に再剥離を可能にしてもよい。
【0101】
セパレータ1を接着剤層から剥離する代わりに、
図15(h’)に示すようにセパレータ1を接着剤とともに剥離して物品上に糊層を介して液晶層だけが残る形態にすることもできる。この場合には、液晶層30は前述のように1〜3μm程度の極めて薄い膜にすることができるので、そのような薄膜を物品からは容易に剥がすことができず、無理に剥離しようとすれば、液晶層自体が破断することになる。それゆえ、光フィルムの再利用は不可能となる。接着剤層を残す(
図15(h))か残さない(
図15(h’))かは、接着剤層のセパレータ1への接着力と接着剤層の液晶層への接着力の大小関係を考慮して接着剤層の材料を選定することで決定することができる。
【0102】
第14及び15実施形態の光フィルムで使用したセパレータ1、セパレータ2、糊剤、接着剤については、特開2003−121643号、特開2004−117522号、特開2004−138697号において、再剥離性基板またはセパレートフィルム、それらを液晶性物質に接着させるための接着剤または粘着剤として種々の物質が開示されており、それらを用いることもできる。
【0103】
なお、
図14(a)〜(e)及び
図15(a)〜(h)、(h’)には、第1実施形態と同様に配向膜を用いた例を示したが、基板自体が配向性を有する基板を用いてもよい。この場合には、配向膜を省略することができる。
【0104】
以上、本発明の光学フィルムを種々の実施形態で説明してきたが、各実施形態で説明した特徴的な構造や配置を別の実施形態に組み込むこともできる。
【0105】
例えば、第10実施形態で説明した中間層94を、第9実施形態の印刷層84と液晶層30の上面を覆うように設けてもよい。この場合、中間層94に、一部にだけ配向状態が異なる領域を設けて、印刷層84と隣り合う液晶層30に配向状態が異なる領域30aを設けなくともよい。液晶層30に、配向状態が異なる領域30aを設けないときには、液晶層30は、前述した方法で製造する必要はなく、小片状のコレステリック液晶をインクのビヒクル中に分散させた液晶インクを用いて構成してもよい。
【0106】
また、第5実施形態で説明した印刷層82または第6実施形態で説明した光吸収層90を別の実施形態の光学フィルムの最下面に設けてもよい。
【0107】
第2実施形態の説明において、光学フィルム102の最下面(凹凸パターン60)にさらに、接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設け得ることを述べたが、他の実施形態の光学フィルムに対しても同様に接着シール等の粘着層及び離型紙、保護フィルム、基材などを設けてもよい。支持体としてTACやPETなどのプラスチックフィルムに限らず、シャツ等の衣服に取り付ける繊維ラベルのような織布または不織布の布地でも構わない。
【0108】
上記実施形態の光学フィルムでは、いずれも液晶層の液晶材料の配向状態が互いに異なる領域30a,30bによって図柄やデザインを形成したが、30aまたは領域30bをドットパターン、バーコードパターン、QRコード(登録商標)とすることにより、それらのパターンやコードに情報性を付与することができる。そうすることで、光学フィルム自体やそれが付された物品の製品番号や製造年月日などの情報を付することもできる。
【0109】
光学フィルムの形、サイズ、厚さは任意であり、光学フィルムの付け替えを防止するためのスリット(切れ目)を光学フィルムの一部に設けてもよく、また、光学フィルムにドーナツ形状のように開口部を形成してもよい。
【0110】
実施形態で説明した光学フィルムの各層を構成する材料は、それらの層の機能を果たす限り、任意の材料を用い得る。例えば、液晶層や保護フィルムに装飾や着色をもたらす色素や光反射体などの添加物を加えることができる。液晶材料は、可視光を反射する材料のみならず、赤外線だけを反射する液晶材料から構成することができる。この場合、光学フィルムの液晶層は目視で透明となる。このような光学フィルムが真正であることを観察するには、光学フィルムに赤外線を照射し、反射した赤外線を赤外線センサで検知すればよい。この際、反射光をλ/4板で直線偏光に変換した後、直線偏光を通過する偏光フィルタを介して受光してもよい。
【0111】
上記説明した実施形態は例示にすぎず、それらの実施形態に当業者が想い付く変形を加えることもできる。