特許第6983073号(P6983073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983073
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】磁気固定化殺菌性酵素
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20211206BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20211206BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20211206BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/38 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20211206BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20211206BHJP
   A01N 63/50 20200101ALN20211206BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALN20211206BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALN20211206BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALN20211206BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALN20211206BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20211206BHJP
   C12N 9/08 20060101ALN20211206BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   A01N59/00 A
   A01C1/06 Z
   A01P1/00
   A01P3/00
   A61F13/00 300
   A61L15/18 100
   A61L15/20 100
   A61L15/28 100
   A61L15/38 100
   A61L15/42 100
   A61L15/44 100
   !A01N63/50
   !B82Y5/00
   !B82Y25/00
   !B82Y30/00
   !B82Y40/00
   !C12N9/04 D
   !C12N9/04 E
   !C12N9/08
   !C12N9/42
【請求項の数】29
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-560330(P2017-560330)
(86)(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公表番号】特表2018-524283(P2018-524283A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016031419
(87)【国際公開番号】WO2016186879
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】62/163,032
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/215,713
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517398324
【氏名又は名称】ザイムトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ステファン コーギ―
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/055853(WO,A1)
【文献】 特表2008−543850(JP,A)
【文献】 米国特許第5607681(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0004583(US,A1)
【文献】 特開2002−128618(JP,A)
【文献】 特表2018−519838(JP,A)
【文献】 特表2019−514421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01C 1/06
A01P 1/00
A01P 3/00
A61F 13/00
A61L 15/18
A61L 15/20
A61L 15/28
A61L 15/38
A61L 15/42
A61L 15/44
A01N 63/50
B82Y 5/00
B82Y 25/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C12N 9/04
C12N 9/08
C12N 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.過酸化水素生成酵素、フリーラジカル生成酵素を含む磁気ナノ粒子の自己組織化メソ多孔性凝集体と配合された水溶性ポリマーマトリックスを有する第1の成分と;
b.前記過酸化水素生成酵素用の第1の基質、前記フリーラジカル生成酵素用の第2の基質と配合された水溶性ポリマーマトリックスを有する第2の成分と
を含む固体抗菌性組成物であって;
前記第1および第2の成分に含まれる水溶性ポリマーマトリックスは、水溶性セルロース、イヌリン、デキストラン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アルギネート誘導体、またはキトサン誘導体を含み、
前記第1および第2の成分に含まれる水溶性ポリマーマトリックスが前記第1の成分における前記酵素と前記第2の成分における前記基質とを分離することで、前記組成物を本質的に不活性かつ安定にし、水和または酸素への前記第1および第2の成分の曝露により、前記組成物が活性化され、前記過酸化水素生成酵素用の前記基質が過酸化水素へと酸化され、前記過酸化水素が、前記フリーラジカル生成酵素用の基質として働き、静菌または殺菌活性を有する前記フリーラジカルが生成される固体抗菌性組成物。
【請求項2】
前記活性が、静菌性、殺菌性、殺ウイルス性、静真菌性、または殺真菌性である、請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
a.過酸化水素生成酵素、およびフリーラジカル生成酵素を含む磁気ナノ粒子の自己組織化メソ多孔性凝集体と配合された水溶性ポリマーマトリックスを有する第1の成分と;
b.前記フリーラジカル生成酵素用の基質および前記過酸化水素生成酵素用の基質である過酸化水素源を有する、液体である第2の成分と
を含む液体抗菌性組成物であって;
前記第1および第2の成分に含まれる水溶性ポリマーマトリックスは、水溶性セルロース、イヌリン、デキストラン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アルギネート誘導体、またはキトサン誘導体を含み、
前記第1の成分および第2の成分が互いに分離して保管される場合、前記組成物が本質的に不活性かつ安定であり、
前記第1および第2の成分を混合することにより、前記組成物が活性化され、前記過酸化水素源が、前記フリーラジカル生成酵素用の基質として働き、静菌または殺菌活性を有する前記フリーラジカルが生成される液体抗菌性組成物。
【請求項4】
前記活性が、静菌性、殺菌性、殺ウイルス性、または殺真菌性である、請求項3に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
前記第1および第2の成分が層である、請求項1または2に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
磁気ナノ粒子の前記メソ多孔性凝集体が、酸化鉄組成物を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項7】
前記過酸化水素生成酵素が、オキシダーゼである、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項8】
前記過酸化水素生成酵素がグルコースオキシダーゼまたはアルコールオキシダーゼであり、かつ、前記基質が、β−D−グルコースまたはアルコールである、請求項1〜2またはのいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項9】
前記フリーラジカル生成酵素が、ペルオキシダーゼである、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項10】
前記ペルオキシダーゼが、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、または甲状腺ペルオキシダーゼである、請求項に記載の抗菌性組成物。
【請求項11】
前記ペルオキシダーゼ用の前記基質が、チオシアネート、ヨウ化物、または臭化物である、請求項に記載の抗菌性組成物。
【請求項12】
前記フリーラジカル生成酵素が、次亜チオシアン酸塩、次亜ヨウ素酸塩、または次亜臭素酸塩を生成する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項13】
セルラーゼ酵素をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項14】
前記第1および第2のマトリックスが、カルボキシメチルセルロース、アルギネート誘導体またはキトサン誘導体を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗菌性組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗菌性組成物を含む農産物。
【請求項16】
請求項3または4に記載の抗菌性組成物を含む液体殺有害生物剤製品。
【請求項17】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の抗菌性組成物を含む種子粉衣。
【請求項18】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の抗菌性組成物を含む改良種子。
【請求項19】
前記種子が、野菜、果実、花および農作物からなる群から選択される、請求項18に記載の改良種子。
【請求項20】
前記種子が、トマト種子である、請求項19に記載の改良種子。
【請求項21】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の抗菌性組成物を含む動物の敷料、創傷包帯、または布帛。
【請求項22】
植物製品の生産量を改善する方法であって、前記植物の植え付けまたは発芽の前またはその間に、請求項1820のいずれか一項に記載の改良種子を、水和および酸素化に曝す工程を含む方法。
【請求項23】
動物製品の生産量を改善する方法であって、前記動物による使用の前または使用中に、請求項21に記載の動物の敷料を、水和および酸素に曝す工程を含む方法。
【請求項24】
前記水和が、前記動物の尿による、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
動物(ヒトを除く)における敗血症を低減するために、創傷包帯を創傷に施す工程を含む、請求項21に記載の創傷包帯の使用。
【請求項26】
請求項1または2に記載の抗菌性組成物を製造する方法であって、前記第1の成分を、水溶媒和性セルロース誘導体、アルギネート誘導体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるマトリックス材料とともに配合する工程と、前記第2の成分を、水溶媒和性セルロース誘導体、アルギネート誘導体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるマトリックス材料とともに配合する工程とを含む方法。
【請求項27】
前記第1の成分が、噴霧乾燥、凍結乾燥、円筒乾燥、パルス燃焼式乾燥、または回転式種子粉衣にさらに供される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の成分が、噴霧乾燥、凍結乾燥、円筒乾燥、パルス燃焼式乾燥、または回転式種子粉衣にさらに供される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
植物または動物(ヒトを除く)における微生物有害生物の増殖を低減するかまたはなくす方法であって、請求項3または4に記載の液体抗菌性組成物を含む物質を噴霧する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/163,032号、および2015年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/215,713号の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願は両方とも全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、植物、動物、布帛、およびそれからの製品における微生物汚染または感染を低減するための組成物および方法を提供する。本発明は、ヒト感染を低減するための組成物および方法も提供する。特に、本発明は、1つの成分中の静菌性、殺菌性、静真菌性、および殺真菌性酵素と、別の成分中の酵素用の基質とを含む固体磁気ナノ粒子を提供する。組成物は、休止状態であり、水和および酸素に曝すと活性になる。
【背景技術】
【0003】
汚染性および感染性微生物は、世界的に、農産物および動物製品の生産量、品質、および安全性を著しく低下させる。結果として生じる経済的損失は、米国だけで年間数百億ドル規模である。さらに、動物の感染を低減するための現行の方法は、食物連鎖内に留まり、多剤耐性の「スーパー耐性菌」をもたらす、抗生物質の有害な過剰使用に依存している。これらの細菌は、医学的に重要な抗生物質の存在下で生存するように選択されており、人の健康にとって重大な脅威である。
【0004】
種子は、農場、州、および国を越えて、植物病害を拡散し得る。このような病害の制御は、種子から開始し得る。種子処理は、細菌、ウイルス、および真菌などの病原体から種子を保護するべきである。したがって、高品質の無病種子が、より高い植物生産量および食品安全性を得るに当たって重要な部分である。
【0005】
例えば、米国におけるトマトの生産は、キサントモナス属(Xanthomonas spp.)によって引き起こされる病害である細菌性斑点病(BLS)にひどく脅かされている。細菌性斑点病(BLS)は、非常に大きな経済的損失をもたらす深刻な病害であり、この病原体は、フロリダ(Florida)だけで生鮮トマト分野に毎年8,700万ドルもの損失をもたらすことが報告されている。BLSは、キサントモナス属(Xanthomonas)の主な種:X.エウベシカルトリア(X.euvesicartoria)、X.ペルホランス(X.perforans)(すなわち、X.アクソノポディス病原型ベシカトリア(X.axonopodis pv.vesicatoria))、X.ベシカトリア(X.vesicatoria)およびX.ガードネリ(X.gardneri)によって引き起こされ、外来系統が最近導入された。
【0006】
細菌感染は、葉および果実に個別の斑点(病変)を生じ、これにより、作物の生産量が減少される。宿主組織の細菌細胞侵入は、植物全体をしおれさせ、植物が光合成し、果実を実らせる能力を著しく低下させる。果実の斑点は、トマト果実中にそれほど深く貫通しないが、生鮮トマトの価値を低下させる。これは、消費者が一般に、隆起した疥癬状の黒色の斑点で覆われた果実および野菜を食べたがらないためである。さらに、二次感染を生じさせ、果実の腐敗を引き起こす病変に定着し得る様々な真菌および他の細菌がある。キサントモナス属(Xanthomonas spp.)は、熟した果実におけるBLSの小数の事例を引き起こし得るが、作物の損失の大部分は、初期感染によって引き起こされ、初期感染は、落花および熟していない果実の落下につながる。
【0007】
植物病原体は、種子、苗(transplant)、球根および他の繁殖材料を含む繁殖材料の伝染によって広まることが多い。種子汚染は、キサントモナス属(Xanthomonas spp.)(BLSの発生を引き起こす)の主な原因であるが、ボランティア宿主植物が別の感染源である。キサントモナス属(Xanthomonas)は、16.5ヶ月間超、おそらくさらに長い年数にわたって種子上および種子内で生存することができることが示されている。子葉、または胚葉は、汚染された種皮を有する種子から出てくるときに感染する。ごくわずかな種子が汚染されている場合でも、それらは、感染した苗が隣接する苗を感染させることになり、苗は成熟した植物より感染しやすいため、農場に破壊的な打撃を与えることがある。
【0008】
植物病原体の防除は、高い生産量を維持するために、銅塩などの合成化学薬品に大きく依存している。しかしながら、人々は、農薬残留物が人の健康および環境に与える影響への高まる懸念を示している(Mark et al.,FEMS Microbiol.Ecol.56(2):167−77(2006);Ritter et al.,J.Tox.Environ.Health 9(6):441−56(2006))。研究により、合成農薬を使用する農業従事者は、頭痛、疲労、不眠症、目まいおよび手の振戦を含むより多くの神経障害を抱えていることが示されている(http://www.niehs.nih.gov/health/topics/agents/pesticides/)。農薬は、先天性異常、神経損傷、癌、精子の運動性の低下および急性中毒も引き起こし得る(Moses,AAOHN J.,37(3):115−30(1989);Reeves and Schafer Int’l J.,Occup.Environ.Health 9(1):30−39(2003);Carozza et al.,Environ.Health Perspect.116(4):559−65(2008);米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency),2014,http://www.epa.gov/pesticides/food/risks.htm)。
【0009】
細菌性植物病原体はまた、抗生物質を用いて防除される。合成殺菌剤は、特に、人が摂取する作物に関する重大な懸念事項である。作物への合成殺菌剤の連続的な施用による抗生物質耐性細菌の発生は、ひいては生命に関わるヒト感染を引き起こし得る抗生物質耐性細菌の蓄積をもたらす。
【0010】
したがって、植物病原体を防除するためのより安全で有効な代替手段に対する極めて大きなニーズがある。さらに、細菌性病原体からの作物の保護は、合成化学薬品および抗生物質を使用することができない有機栽培作物にとって特に難題である。
【0011】
ヒトおよび家畜における抗生物質耐性は、新薬の開発によって抑えられ得ない速度で発達し、拡散している。家畜への抗生物質の定期的な投与の広く行き渡った実施は、この脅威の原因になる。世界で生産される抗生物質の約半分は、農業に使用されている。この使用の大半は、より速い成長を促進し、疾病を治療するよりむしろ予防する。家畜によって媒介される耐性微生物は、汚染された食品の摂取によって、動物との直接の接触から、または例えば汚染された水もしくは土壌中での環境による伝播によって、ヒトに伝播し得る。
【0012】
例えば、乳腺炎は、乳房組織の損傷をもたらす、乳頭管の毒素放出細菌による感染に応答した乳腺の炎症反応である。これは、血管透過性を増大させ、乳汁産生の減少および乳組成の変化をもたらす。例えば、血液成分、血清タンパク質、および酵素が、乳汁中に漏出する。また、カゼイン、ラクトース、および脂肪の質の低下がある(Harmon,J.Dairy Sci 77(7):2103−2112(1994);Osteras and Edge Acta Vet Scand 41(1):63−77(2000);Nielsen,Economic Impact of Mastitis in Dairy Cows.Department of Animal Breeding and Genetics,Uppsala,Sweden,Swedish University of Agricultural Sciences.2009))。
【0013】
乳腺炎は、「伝染性(contagious)」および「環境性(environmental)病原体の両方によって引き起こされる。伝染性病原体は、乳汁中のみに存在する細菌であり、搾乳工程中に感染していない乳房に伝播する。環境性病原体は、環境中に存在し、搾乳の間に乳房を感染させる。近年、乳腺炎を引き起こす細菌の疫学が変化した。主な伝染性病原体である、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)は、多くの群れから根絶されたが、他の主要な伝染性病原体である、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、広く行き渡ったままであった。しかしながら、最も重要な変化は、環境性病原体(例えば、Str.ウベリス(Str.uberis)、Str.ディスガラクティエ(Str.Dysgalactiae)、エンテロバクター属(Enterobacter)、および大腸菌(Escherichia coli)およびクレブシエラ属(Klebsiella spp.))によって引き起こされる乳腺炎が、著しく増加していることである(Jones and J.M.Swisher 2009;Jones and T.L.Bailey 2009)。
【0014】
米国農務省(U.S.Department of Agriculture)によれば、乳腺炎は、米国のウシにおける抗生物質の使用の原因である主要な疾病である。(Kerr,Drying−Off Lactating Livestock,Small Farms V(2010))。抗生物質のこの大量使用を考えると、乳腺炎は、人の健康上のリスクの増大に大きく寄与している。
【0015】
同様に、鶏肉産業は、医学的に重要な薬剤分類に属する抗生物質を含む低レベルの予防的抗生物質をその動物に定期的に供給する。これは、疾病を回避することを企図しており、鳥類を大きくする。しかしながら、この慣行は、人の食物連鎖に行き着き得る薬剤耐性細菌を選択する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本明細書に記載される理由のため、微生物感染および家畜の汚染を制御する新規な方法に対する大きなニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、植物、動物、布帛、およびそれからの製品における微生物汚染または感染を低減するための組成物および方法を提供する。本発明は、ヒト感染を低減するための組成物および方法も提供する。特に、本発明は、1つの成分中の安定化された抗菌性酵素と、別の成分中の酵素用の基質とを含む固体磁気ナノ粒子を提供する。組成物は、休止状態であり、水和および酸素に曝すと活性になる。その後、酵素用の基質は、微生物およびウイルスの増殖を停止させるか、またはそれらを死滅させる過酸化水素およびフリーラジカルに転化される。
【0018】
本発明は、安全で強力な酸化剤を用いた農業、工業、および医療上の微生物管理の新規な方法を提供する。本発明は、多くの感染性および腐敗性生物に対して有効である。
【0019】
したがって、本発明は、過酸化水素生成酵素およびフリーラジカル生成酵素を含む磁気ナノ粒子の自己組織化メソ多孔性凝集体を有する第1の成分と;前記過酸化水素生成酵素用の第1の基質および前記フリーラジカル生成酵素用の第2の基質を有する第2の成分とを含む固体抗菌性組成物であって;前記組成物が本質的に不活性であり、水和または酸素への前記第1および第2の成分の曝露により、前記組成物が活性化され、前記過酸化水素生成酵素用の前記基質が過酸化水素へと酸化され、前記過酸化水素が、前記フリーラジカル生成酵素用の基質として働き、静菌または殺菌活性を有する前記フリーラジカルが生成される固体抗菌性組成物を提供する。
【0020】
本発明は、フリーラジカル生成酵素を含む磁気ナノ粒子の自己組織化メソ多孔性凝集体を有する第1の成分と;前記フリーラジカル生成酵素用の基質および過酸化水素源を有する第2の成分とを含む液体抗菌性組成物であって;前記組成物が本質的に不活性であり、前記第1および第2の成分を混合することにより、前記組成物が活性化され、前記過酸化水素源が、前記フリーラジカル生成酵素用の基質として働き、静菌または殺菌活性を有する前記フリーラジカルが生成される液体抗菌性組成物も提供する。
【0021】
本発明のある実施形態において、抗菌性固体または液体組成物は、静菌性、殺菌性、殺ウイルス性、または殺真菌性である。
【0022】
固体抗菌性組成物のある実施形態において、前記第1および第2の成分は層である。好ましい実施形態において、前記層のうちの1つは、他の層の内部にある。より好ましい実施形態において、フリーラジカル生成酵素は、前記内層中にある。
【0023】
固体抗菌性組成物のある実施形態において、前記第1の成分は、水溶性セルロース誘導体または水溶媒和性セルロース誘導体であるマトリックス材料をさらに含む。固体抗菌性組成物の他の実施形態において、前記第2の成分は、水溶性セルロース誘導体または水溶媒和性セルロース誘導体であるマトリックス材料をさらに含む。好ましい実施形態において、前記マトリックス材料は、カルボキシメチルセルロースである。他の好ましい実施形態において、固体抗菌性組成物は、アルギネート誘導体またはキトサン誘導体をさらに含む。
【0024】
本発明のある実施形態において、磁気ナノ粒子の前記メソ多孔性凝集体は、酸化鉄組成物を有する。他の実施形態において、磁気ナノ粒子のメソ多孔性凝集体は、磁気ナノ粒子の少なくとも90%が、少なくとも3nmおよび30nm以下のサイズを有する磁気ナノ粒子サイズ分布、および磁気ナノ粒子の前記メソ多孔性凝集体の少なくとも90%が、少なくとも10nmおよび500nm以下のサイズを有する凝集粒子サイズ分布を有する。他の実施形態において、磁気ナノ粒子のメソ多孔性凝集体は、少なくとも10emu/gの飽和磁化を有する。
【0025】
本発明のある実施形態において、フリーラジカル生成酵素および過酸化水素生成酵素は、飽和容量の100%以下で磁気ナノ粒子のメソ多孔性凝集体に含まれる。
【0026】
ある実施形態において、過酸化水素生成酵素は、オキシダーゼである。好ましい実施形態において、オキシダーゼは、グルコースオキシダーゼまたはアルコールオキシダーゼである。他の実施形態において、前記過酸化水素生成酵素用の基質は、β−D−グルコースまたはアルコールである。
【0027】
本発明のある実施形態において、フリーラジカル生成酵素は、ペルオキシダーゼである。好ましい実施形態において、ペルオキシダーゼは、ラクトペルオキシダーゼである。他の好ましい実施形態において、ペルオキシダーゼは、ミエロペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、または甲状腺ペルオキシダーゼである。他の実施形態において、ペルオキシダーゼ用の基質は、チオシアネート、ヨウ化物、または臭化物である。他の好ましい実施形態において、フリーラジカル生成酵素は、次亜チオシアン酸塩、次亜ヨウ素酸塩、または次亜臭素酸塩を生成する。
【0028】
本発明のある実施形態において、抗菌性組成物は、セルラーゼ酵素をさらに含む。好ましい実施形態において、セルラーゼ酵素は、エキソセルラーゼまたはエンドセルラーゼである。他の好ましい実施形態において、セルラーゼ酵素は、前記抗菌性組成物の外層に組み込まれる。
【0029】
本発明は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む農産物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む、液体殺有害生物剤、種子粉衣、および改良種子を提供する。
【0030】
より好ましい実施形態において、本発明は、野菜、果実、花および農作物からなる群から選択される改良種子を提供する。
【0031】
より好ましい実施形態において、前記野菜種子は、トマト、エンドウマメ、タマネギ、ニンニク、パセリ、オレガノ、バジル、コリアンダー、ニンジン、キャベツ、トウモロコシ、キュウリ、ダイコン、コショウ、ブロッコリー、カリフラワー、キュウリ、ホウレンソウ、ケール、チャード、アーティチョーク、およびレタスからなる群から選択される。
【0032】
他のより好ましい実施形態において、前記果実種子は、柑橘類、トマト、オレンジ、レモン、ライム、アボカド、クレメンタイン、リンゴ、カキ、西洋ナシ、モモ、ネクタリン、液果類、イチゴ、ラズベリー、ブドウ、ブルーベリー、ブラックベリー、サクランボ、アンズ、ウリ、カボチャ(squash)、ズッキーニ、ナス、カボチャ(pumpkin)、ココナツ、グァバ、マンゴー、パパイヤ、メロン、ハネデューメロン、カンタロープ、スイカ、バナナ、プランテイン、パイナップル、マルメロ、ナナカマド、ビワ、プラム、スグリ、ザクロ、イチジク、オリーブ、核果類、堅果類、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、ピスタチオ、およびマカダミアナッツからなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、前記種子は、トマト種子である。
【0033】
他のより好ましい実施形態において、前記農作物は、トウモロコシ、コムギ、ダイズ、キャノーラ、ソルガム、ジャガイモ、サツマイモ、ヤムイモ、レンズマメ、インゲンマメ、キャッサバ、コーヒー、干し草、ソバ、オートムギ、オオムギ、ナタネ、スイッチグラス、エレファントグラス、ビート、サトウキビ、およびコメからなる群から選択される。
【0034】
他のより好ましい実施形態において、前記前記花種子は、一年生植物、多年生植物、球根、花をつける木質茎、カーネーション、バラ、チューリップ、ケシ、キンギョソウ、ユリ、キク、アイリス、アルストロメリア、ピンポンマム、フジ、およびストレリチアからなる群から選択される。
【0035】
本発明は、植物製品の生産量を改善する方法であって、前記植物の植え付けまたは発芽の前またはその間に、本明細書に記載される改良種子を水和および酸素化に曝す工程を含む方法を提供する。
【0036】
本発明は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む動物の敷料(bedding)を提供する。
【0037】
本発明は、動物製品の生産量を改善する方法であって、前記動物による使用の前または使用中に、本明細書に記載される動物の敷料を、水和および酸素に曝す工程を含む方法をさらに提供する。好ましい実施形態において、前記水和は、前記動物の尿による。好ましい実施形態において、前記動物製品は、生きた動物、乳汁、肉、脂肪、卵、体液、血液、血清、抗体、酵素、レンネット、骨、動物副産物、および動物排泄物からなる群から選択され得る。他の好ましい実施形態において、前記動物は、ウシ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラバ、カモ、ガチョウ、バッファロー、ラクダ、ヤク、ラマ、アルパカ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、は虫類、両生類、オウム、インコ、オカメインコ、カナリア、ハト(pigeon)、コバト(dove)、および昆虫からなる群から選択され得る。
【0038】
本発明は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む創傷包帯を提供する。好ましい実施形態において、創傷包帯は包帯である。他の実施形態において、本発明は、敗血症を低減する方法であって、本明細書に記載される創傷包帯を創傷に施す工程を含む方法を提供する。
【0039】
本発明は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む布帛を提供する。
【0040】
本発明は、本明細書に記載される固体抗菌性組成物を製造する方法であって、前記第1の成分を、水溶性セルロース誘導体、水溶媒和性セルロース誘導体、アルギネート誘導体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるマトリックス材料とともに配合する工程と、前記第2の成分を、水溶性セルロース誘導体、水溶媒和性セルロース誘導体、アルギネート誘導体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるマトリックス材料とともに配合する工程とを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、前記第1の成分または前記第2の成分は、噴霧乾燥、凍結乾燥、円筒乾燥、パルス燃焼式乾燥、または回転式種子粉衣にさらに供される。
【0041】
本発明は、微生物有害生物の増殖を低減するかまたはなくす方法であって、本明細書に開示される液体抗菌性組成物を含む物質を噴霧する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】固体抗菌性集合体および種子粉衣として使用されるときのその機能の略図。
図2】遊離および固定化ダイズペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼ(SB1+GOX−1)の速度が、指示薬としてのAmplex Redの酸化を用いて比較される。固定化により、フリーラジカルの生産効率が、遊離酵素の3倍増加された。
図3】Live and Dead蛍光アッセイによって測定した5分後の溶液中の5×10個の大腸菌(E.coli)細胞に対するLP系の有効性。様々な濃度のグルコースまたはHを測定した。(A)LP/GOX固定化(斜線)対遊離(実線)。(B)LP固定化(斜線)対遊離(実線)。
図4】固体集合体中のSBPおよびGOXが、インビトロでキサントモナス属(Xanthamonas)を効率的に死滅させた。(A)BNC固定化酵素を、セルロースフィルム−懸濁基質と接触させた。(B)混合、水和、および増殖している細菌単層への曝露により、これらの集合体は、24時間後にかなりの増殖阻害を示した。
図5】7日後の固体集合体で粉衣されたトマト種子の発芽。発芽の阻害が観察されなかった。試験および対照種子は、85%の発芽を示した。発芽率は、コムギアッセイにおいて100%であった。
図6】機械が、本発明の抗菌性組成物を用いて改良種子を製造する一実施形態の概略図。
図7】固体抗菌性組成物および動物の敷料コーティングとして使用されるときのその機能の略図。
図8】機械が、本発明の抗菌性組成物を用いて改良された動物の敷料を製造する一実施形態の概略図。
図9】カンキツかいよう病菌(Xanthomonas Campestris)病原型14171に対する0.1倍〜10倍の酵素濃度の影響。
図10】カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)病原型に対する基質濃度の影響。図10Aは、分析中の酵素集合体の配置を概略的に示す。図10Bは、全ての基質濃度における増殖阻害を示す。
図11】病原性真菌トマト苗立枯病菌(Pythium vexans)に対する0.1倍〜10倍の酵素濃度の影響。
図12】本発明の種子粉衣によってシュードモナス属(Pseudomonas)およびクラビバクター属(Clavibacter)病原体から保護されたトマト種子。酵素層は、1倍の酵素配合物および1倍の基質配合物を含んでいた。種子は、3連であった。図12Aは、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)14045−8bを示す。図12Bは、クラビバクター・ミシガンエンシス(Clavibacter michiganensis)0690を示す。
図13】種子粉衣は、距離依存的にフザリウム属(Fusarium)の2つの病原性種からトマト種子を保護した。種子粉衣は、1倍の酵素配合物および1倍の基質配合物を含んでいた。種子を3連で平板培養し、真菌接種材料から異なる距離で配置した。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、植物、動物、布帛、およびそれからの製品における微生物汚染または感染を低減するための組成物および方法を提供する。これは、1つの成分中の自己組織化磁気ナノ粒子中の過酸化水素生成(HPP)酵素およびフリーラジカル生成(FRP)酵素と、別の成分中の酵素用の基質とを含む固体の多成分組成物によって初めて達成される。これらの磁気固定化酵素は、安定かつ不活性な固体または液体組成物中にあり得る。したがって、それらは、製品に組み込む前または後に貯蔵され得る。抗菌活性が必要とされるとき、これらの多成分組成物は、水和および/または酸素への曝露によって活性化される。HPP酵素は、過酸化水素およびD−グルコノ−δ−ラクトンを生成するように基質に作用する。FRP酵素は、フリーラジカルを生成するように過酸化水素および1つまたは複数のさらなる基質に作用する。過酸化水素およびフリーラジカルは、抗菌特性を有する。代替的な実施形態において、過酸化水素は、過酸化水素生成酵素およびその基質の代わりに提供される。
【0044】
封入されたペルオキシダーゼを含む自己組織化メソ多孔性ナノクラスターは、非常に活性でかつ堅固である。この技術は、組織の3つの統合されたレベルにおける、生化学、ナノテクノロジー、および生物工学の強力なブレンドである:レベル1は、磁気メソ多孔性ナノクラスターの合成のための磁気ナノ粒子(MNP)を用いたペルオキシダーゼおよびオキシダーゼ酵素の自己集合である。このレベルは、酵素を固定し、安定させるために、分子の自己封入(self−entrapment)の機構を使用する。レベル2は、他のマトリックスへのMNPの安定化である。レベル3は、レベル1+2の送達のための製品の調整および包装である。酵素に吸着された磁気ナノ粒子の集合体は、本明細書において「バイオナノ触媒」(BNC)とも呼ばれる。
【0045】
MNP固定化は、非常に活性でかつコスト効率の高いペルオキシダーゼを提供する。ペルオキシダーゼは、非常に強力な酵素であるが、過剰な過酸化物の存在下における強い阻害のため、工業環境に配備するのが難しいことで有名である。NPは、過酸化活性を増大し、それらの阻害を低下させ、それにより、NPは、工業的に有用になる。さらに、MNPは、温度、イオン強度およびpHなどの動作条件のより広い範囲を可能にする。(MNPのサイズおよび磁化は、NPの形成および構造に影響を与え、その全てが、封入された酵素の活性に大きな影響を与える。様々な反応条件下でのそれらの驚くべき回復力により、MNPは、他の作用物質が現在使用されている場合、改良された酵素的または触媒的作用物質として使用され得る。さらに、MNPは、酵素が適用可能であるとまだ見なされていないかまたは判断されていない場合、他の用途に使用され得る。
【0046】
BNCは、磁気ナノ粒子間の格子間の隙間であるメソ細孔を含有する。酵素は、好ましくは、BNCのメソ細孔の少なくとも一部中に埋め込まれるかまたは固定される。本明細書において使用される際、「磁気」という用語は、永久磁性、超常磁性、常磁性、強磁性、およびフェリ磁性挙動を含むあらゆるタイプの有用な磁気特性を包含する。
【0047】
磁気ナノ粒子またはBNCは、ナノスケール、すなわち、一般に500nm以下のサイズを有する。本明細書において使用される際、「サイズ」という用語は、磁気ナノ粒子が大体またはほぼ球形であるとき、磁気ナノ粒子の直径を指し得る。磁気ナノ粒子が、大体またはほぼ球形でない(例えば、ほぼ卵形または不規則である)場合、「サイズ」という用語は、最も長い寸法または磁気ナノ粒子の3次元の平均のいずれかを指し得る。「サイズ」という用語はまた、磁気ナノ粒子の集団にわたるサイズの平均(すなわち、「平均サイズ」)を指し得る。
【0048】
異なる実施形態において、磁気ナノ粒子は、正確に、約、例えば、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、50nm、40nm、30nm、25nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、もしくは1nm以下、または未満のサイズ、または上記の例示的なサイズのいずれか2つによって境界される範囲内のサイズを有する。
【0049】
BNCにおいて、個別の磁気ナノ粒子は、上に示されるサイズのいずれかを有する一次ナノ粒子(すなわち、初晶)であると見なされ得る。BNC中のナノ粒子の凝集体は、ナノ粒子よりサイズが大きく、一般に、少なくとも約5nmのサイズ(すなわち、二次サイズ)を有する。異なる実施形態において、凝集体は、正確に、約、少なくとも、例えば、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、もしくは800nm超、以下、または未満のサイズ、または上記の例示的なサイズのいずれか2つによって境界される範囲内のサイズを有する。[0036]
【0050】
典型的に、一次および/または凝集磁気ナノ粒子またはそのBNCは、サイズの分布を有し、すなわち、それらは、一般に、サイズが分散され、狭くまたは広く分散される。異なる実施形態において、一次または凝集体サイズの任意の範囲が、一次または凝集体サイズの全範囲の大きなまたは小さな割合を占め得る。例えば、ある実施形態において、一次粒径の特定の範囲(例えば、少なくとも約1、2、3、5、もしくは10nmおよび約15、20、25、30、35、40、45、もしくは50nm以下)または凝集体粒径の特定の範囲(例えば、少なくとも約5、10、15、もしくは20nmおよび約50、100、150、200、250、もしくは300nm以下)は、一次粒径の全範囲の少なくとも、または約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%超を占める。他の実施形態において、一次粒径の特定の範囲(例えば、約1、2、3、5、もしくは10nm未満、または約15、20、25、30、35、40、45、もしくは50nm超)または凝集体粒径の特定の範囲(例えば、約20、10、もしくは5nm未満、または約25、50、100、150、200、250、もしくは300nm超)は、一次粒径の全範囲の約50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、もしくは0.1%以下または未満を占める。
【0051】
磁気ナノ粒子の凝集体(すなわち、「凝集体」)またはそのBNCは、それらを構成する個々の初晶の量に応じて、多孔性の相当の欠如を含む任意の多孔度を有し得る。特定の実施形態において、凝集体は、格子間のメソ細孔(すなわち、充填配置によって形成される、一次磁気ナノ粒子間に位置するメソ細孔)を含有することによってメソ多孔性である。メソ細孔は、一般に、少なくとも2nmかつ50nm以下のサイズである。異なる実施形態において、メソ細孔は、正確にまたは約、例えば、2、3、4、5、10、12、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50nmの細孔径、または上記の例示的な細孔径のいずれか2つによって境界される範囲内の細孔径を有し得る。粒径の場合と同様に、メソ細孔は、典型的に、サイズの分布を有し、すなわち、それらは、一般に、サイズが分散され、狭くまたは広く分散される。異なる実施形態において、メソ細孔径の任意の範囲が、メソ細孔径の全範囲または全細孔容積の大きなまたは小さな割合を占め得る。例えば、ある実施形態において、メソ細孔径の特定の範囲(例えば、少なくとも約2、3、もしくは5、および8、10、15、20、25、もしくは30nm以下)は、メソ細孔径の全範囲または全細孔容積の少なくとも、または約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%超を占める。他の実施形態において、メソ細孔径の特定の範囲(例えば、約2、3、4、もしくは5nm未満、または約10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50nm超)は、メソ細孔径の全範囲または全細孔容積の約50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、もしくは0.1%以下または未満を占める。
【0052】
磁気ナノ粒子は、当該技術分野において公知の組成物のいずれかを有し得る。ある実施形態において、磁気ナノ粒子は、磁性であるゼロ価の金属部分であるかまたはそれを含む。このようなゼロ価の金属のいくつかの例としては、コバルト、ニッケル、および鉄、ならびにそれらの混合物および合金が挙げられる。他の実施形態において、磁気ナノ粒子は、コバルト、ニッケル、もしくは鉄、またはそれらの混合物の酸化物などの、磁性金属の酸化物であるかまたはそれを含む。ある実施形態において、磁気ナノ粒子は、明確なコアおよび表面部分を有する。例えば、磁気ナノ粒子は、鉄、コバルト、またはニッケル元素で構成されるコア部分および金、白金、パラジウム、または銀の層などの、金属酸化物または貴金属コーティングなどの、不動態化層で構成される表面部分を有し得る。他の実施形態において、金属酸化物磁気ナノ粒子またはその凝集体は、貴金属コーティングの層で被覆される。貴金属コーティングは、例えば、磁気ナノ粒子表面上の電荷数を減少させ得、それにより、溶液中の分散性を有益に高め、BNCのサイズを良好に制御し得る。貴金属コーティングは、酸化、浸出によるかまたはシトレート、マロネート、もしくはタートレートなどの有機酸をキレートするときはキレートによる可溶化から磁気ナノ粒子を保護し、生化学反応または過程に使用される。不動態化層は、任意の好適な厚さ、特に、少なくとも、約、例えば、0.1nm、0.2nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm以下、または未満、またはこれらの値のいずれか2つによって境界される範囲内の厚さを有し得る。
【0053】
本発明に有用な磁性材料は、当該技術分野において周知である。非限定的な例は、鉄鉱石(マグネタイトまたは磁鉄鉱)、コバルト、およびニッケルなどの鉱石を含む強磁性体および強磁性材料を含む。他の実施形態において、希土類磁石が使用される。非限定的な例としては、ネオジム、ガドリニウム、ジスプロシウム(sysprosium)、サマリウム−コバルト、ネオジム−鉄−ホウ素などが挙げられる。さらに他の実施形態において、磁石は、複合材料を含む。非限定的な例としては、セラミック、フェライト、およびアルニコ磁石が挙げられる。好ましい実施形態において、磁気ナノ粒子は、酸化鉄組成物を有する。酸化鉄組成物は、当該技術分野において公知の磁性または超常磁性酸化鉄組成物、例えば、マグネタイト(FesO/O、赤鉄鉱(α−Fe2θ 3)、磁赤鉄鉱(γ−Fe2C>3)、または式AB(式中、Aが二価金属(例えば、Xn+、Ni+、Mn2+、Co2+、Ba2+、Sr2+、またはそれらの組合せ)であり、Bが三価金属(例えば、Fe3+、Cr3+、またはそれらの組合せ)である)で表されるスピネルフェライトのいずれかであり得る。
【0054】
個別の磁気ナノ粒子またはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な磁性度を有する。例えば、磁気ナノ粒子、BNC、またはBNC骨格集合体は、少なくとも、または約5、10、15、20、25、30、40、45、50、60、70、80、90、もしくは100emu/g以下の飽和磁化(Ms)を有し得る。磁気ナノ粒子、BNC、またはBNC−骨格集合体は、好ましくは、5emu/g以下(no more than)(すなわち、以下(up to))または未満、より好ましくは、4emu/g、3emu/g、2emu/g、1emu/g、0.5emu/g、もしくは0.1emu/g以下または未満の残留磁化(Mr)を有する。磁気ナノ粒子、BNC、またはBNC−骨格集合体の表面磁場は、約または少なくとも、例えば、約0.5、1、5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000ガウス(G)、または上記の値のいずれか2つによって境界される範囲内の磁場であり得る。微粒子が含まれる場合、微粒子はまた、上記の磁気強度のいずれかを有し得る。
【0055】
磁気ナノ粒子またはその凝集体は、得られるBNCを生成するために、用途に応じて、飽和レベル以下または未満の好適な量の酵素を吸着するように作製され得る。異なる実施形態において、磁気ナノ粒子またはその凝集体は、約、少なくとも、例えば、1、5、10、15、20、25、もしくは30pmol/m2以下、または未満の酵素を吸着し得る。あるいは、磁気ナノ粒子またはその凝集体は、飽和レベルの約、少なくとも、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%以下、または未満である量の酵素を吸着し得る。
【0056】
本発明の抗菌性集合体は、幅広い病原体に対して有効であり得る。ある実施形態において、病原体としては、アシドボラックス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、バークホルデリア・アンドロポゴニス(Burkholderia andropogonis)、バークホルデリア・カリオフィリ(Burkholderia caryophylli)、バークホルデリア・グルマエ(Burkholderia glumae)、カンジダツス・リベリバクター(Candidatus Liberibacter)、カンジダツス・ファイトプラズマ・ソラニ(Candidatus Phytoplasma solani)、クラビバクター・ミシガンエンシス(Clavibacter michiganensis)、ディッケヤ・ダダンチ(Dickeya dadantii)、エルウィニア・プシディ(Erwinia psidii)、ペクトバクテリウム・アトロセプチカム(Pectobacterium atrosepticum)、ペクトバクテリウム・ベータバスキュロラム(Pectobacterium betavasculorum)、ペクトバクテリウム・カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)、ペクトバクテリウム・カロトボラム亜種ベータバスキュロラム(Pectobacterium carotovorum subsp.betavasculorum)、ペクトバクテリウム・ワサビアエ(Pectobacterium wasabiae)、ファイトプラズマ(Phytoplasma)、シュードモナス・アミグダリ(Pseudomonas amygdali)、シュードモナス・アスプレニイ(Pseudomonas asplenii)、シュードモナス・カリカパパヤエ(Pseudomonas caricapapayae)、シュードモナス・シクホリイ(Pseudomonas cichorii)、シュードモナス・コロナファシエンス(Pseudomonas coronafaciens)、シュードモナス・コルゲート(Pseudomonas corrugate)、シュードモナス・フィクセレクタエ(Pseudomonas ficuserectae)、シュードモナス・フラベッセンス(Pseudomonas flavescens)、シュードモナス・フスコバギナエ(Pseudomonas fuscovaginae)、シュードモナス・ヘリアンチ(Pseudomonas helianthi)、シュードモナス・マルギナリス(Pseudomonas marginalis)、シュードモナス・オリジハビタンス(Pseudomonas oryzihabitans)、シュードモナス・パレロニアナ(Pseudomonas palleroniana)、シュードモナス・パパベリス(Pseudomonas papaveris)、シュードモナス・サロモニイ(Pseudomonas salomonii)、シュードモナス・サバスタノイ(Pseudomonas savastanoi)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・トマト(Pseudomonas tomato)、シュードモナス・ツルビネラエ(Pseudomonas turbinellae)、シュードモナス・ビリディフラバ(Pseudomonas viridiflava)、キジラミ萎黄いおう病菌(Psyllid yellows)、ラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum)、ロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)、スピロプラズマ・シトリ(Spiroplasma citri)、キサントモナス・アキソノポディス(Xanthomonas axonopodis)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)、キサントモナス・オリザエ(Xanthomonas oryzae)、およびキシレラ・ファスティディオーサ(Xylella fastidiosa)などの病原性植物細菌種が挙げられる。
【0057】
他の実施形態において、抗菌性集合体は、大腸菌(Escherishia Coli)、ブルセラ属(Brucella sp.)、ビブリオ属(Vibrio sp.)、セラチア属(Serrati asp.)、ノカルディア属(Nocardia sp.)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium sp.)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、バチルス属(Bacillus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、ナイセリア属(Neisseria sp.)、ヘモフィラス属(Haemophilus sp.)、ヘリコバクター属(Helicobacter sp.)、マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、トレポネーマ属(Treponema sp.)、およびエルシニア属(Yersinia sp.)を含む非植物病原体細菌に対して有効である。
【0058】
他の実施形態において、抗菌性集合体は、アスシジウム属(Ascidium sp.)、アルテルナリア属(Alternaria sp.)、ナラタケ属(Armillaria sp.)、アスコキタ属(Ascochyta sp.)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、ビポラリス属(Bipoloaris)、ヤケイロタケ属(Bjerkandera sp.)、ボトリティス属(Botrytis sp.)、セラトバシジウム属(Ceratobasidium sp.)、セルコスポラ属(Cercospora sp.)、クリシミキサ属(Chrysimyxa sp.)、クラドスポリウム属(Cladosporium sp.)、コクリオボルス属(Cochliobolus sp.)、コレオスポリウム属(coleosporium sp.)、コレトトリクム属(Colletotrichum sp.)、シリンドロクラジウム属(Cylindrocladium sp.)、シトスポラ属(Cytospora sp.)、ジアポルテ属(Diaporthe sp.)、ディディメラ属(Didymella sp.)、ドレクスレラ属(Drechslera sp.)、エリシフェ属(Erysiphe sp)、エキソバシジウム属(Exobasidium sp.)、フザリウム属(Fusarium sp.)、マンネンタケ属(Ganoderma sp.)、ジベレラ属(Gibberella sp.)、ジムノスポランギウム属(Gymnospragium sp.)、ヘリコバシジウム属(Helicobasidium sp.)、カワウソタケ属(Inonotus sp.)、レプトスファエリア属(Leptosphaeria sp.)、レウコストマ属(Leucostoma sp.)、ホウライタケ属(Marasmius sp.)、ミクロスパエラ属(Microspaera sp.)、ケカビ属(Mucor sp.)、ミコスファエレラ属(Mycosphaerella sp.)、ネクトリア属(Nectria sp.)、オイディウム属(Oidium sp.)、パサロラ属(Passalora sp.)、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis sp.)、ファエオラムラリア属(Phaeoramularia sp.)、フォーマ属(Phoma sp.)、フィロスチカ属(Phyllostica sp.)、フィトフトラ属(Phytophtora sp.)、シュードセルコスポラ属(Pseudocercospora sp.)、プッチニア属(Puccini asp.)、ピレノフォラ属(Pyrenophora sp.)、リゾクトニア属(Rhizoctonia sp.)、クモノスカビ属(rhizopus sp.)、セプトリア属(Septoria sp.)、スファセロマ属(Sphaceloma sp.)、ステムフィリウム属(Stemphylium sp.)、スティグミナ属(Stigmina sp.)、チレチア属(Tilletia sp.)、チフラ属(Typhula sp.)、ウロマイセス属(Uromyces sp.)、ウスチラゴ属(Ustilago sp.)、バーティシリウム属(Verticillium sp.)などの属を含む植物病原体真菌に対して有効である。
【0059】
他の実施形態において、本発明は、モザイクウイルス(Mosaic Virus)、モットルウイルス(Mottle Virus)、ベゴモウイルス(Begomovirus)、カーラウイルス(Carlavirus)、カーモウイルス(Carmovirus)、クリニウイルス(Crinivirus)、ファバウイルス(Fabavirus)、フロウイルス(Furovirus)、マクロモウイルス(Machlomovirus)、マクルラウイルス(Macluravirus)、ネクロウイルス(Necrovirus)、ポテクスウイルス(Potexvirus)、テヌイウイルス(Tenuivirus)、およびトスポウイルス(Tospovirus)などの植物ウイルスを含む植物ウイルスに対して有効である。
【0060】
磁気ナノ粒子またはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な細孔容積を有する。例えば、磁気ナノ粒子またはその凝集体は、約、少なくとも、例えば、約0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、もしくは1cm3/g以下、または未満の細孔容積、または上記の値のいずれか2つによって境界される範囲内の細孔容積を有し得る。[0052]磁気ナノ粒子またはその凝集体またはそのBNCは、任意の好適な比表面積を有する。例えば、磁気ナノ粒子またはその凝集体は、約、少なくとも、例えば、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200m2/g以下、または未満の比表面積を有し得る。
【0061】
MNP、それらの構造、組織、好適な酵素、および使用が、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2012122437号パンフレットおよび国際公開第2014055853号パンフレットに記載されている。
【0062】
ある実施形態において、本発明は、過酸化水素生成(HPP)酵素を提供する。特定の実施形態において、HPP酵素は、EX 1.1.3亜属のものであり得るオキシダーゼである。特定の実施形態において、オキシダーゼは、EC 1.1.3.3(リンゴ酸オキシダーゼ)、EC 1.1.3.4(グルコースオキシダーゼ)、EC 1.1.3.5(ヘキソースオキシダーゼ)、EC 1.1.3.6(コレステロールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.7(アリール−アルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.8(L−グロノラクトンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.9(ガラクトースオキシダーゼ)、EC 1.1.3.10(ピラノースオキシダーゼ)、EC 1.1.3.11(L−ソルボースオキシダーゼ)、EC 1.1.3.12(ピリドキシン4−オキシダーゼ)、EC 1.1.3.13(アルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.14(カテコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.15(2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ)、EC 1.1.3.16(エクジソンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.17(コリンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.18(第二級アルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.19(4−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ)、EC 1.1.3.20(長鎖アルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.21(グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ)、EC 1.1.3.22、EC 1.1.3.23(チアミンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.24(L−ガラクトノラクトンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.25、EC 1.1.3.26、EC 1.1.3.27(ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ)、EC 1.1.3.28(ヌクレオシドオキシダーゼ)、EC 1.1.3.29(Nアシルヘキソサミンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.30(ポリビニルアルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.31、EC 1.1.3.32、EC 1.1.3.33、EC 1.1.3.34、EC 1.1.3.35、EC 1.1.3.36、EC 1.1.3.37 D−アラビノノ−l,4−ラクトンオキシダーゼ)、EC 1.1.3.38(バニリルアルコールオキシダーゼ)、EC 1.1.3.39(ヌクレオシドオキシダーゼ、H形成性)、EC 1.1.3.40(D−マンニトールオキシダーゼ)、またはEC 1.1.3.41(キシリトールオキシダーゼ)であり得る。
【0063】
本発明は、固体抗菌性組成物の一連の成分のうちの1つの中にフリーラジカル生成(FRP)酵素を提供する。ある実施形態において、FRPは、ペルオキシダーゼである。ペルオキシダーゼは、生体系において広く見られ、フェノールから芳香族アミンに及ぶ幅広い芳香族化合物を酸化するために、過酸化水素(H)を水へと還元する酸化還元酵素のサブセットを形成する。
【0064】
ペルオキシダーゼは、亜属EC 1.11.1に属する。特定の実施形態において、EC 1.11.1酵素は、EC 1.11.1酵素は、より詳細には、例えば、EC 1.11.1.1(NADHペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.2(NADPHペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.3(脂肪酸ペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.4、EC 1.11.1.5(シトクロム−cペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.6(カタラーゼ)、EC 1.11.1.7(ペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.8(ヨウ化物ペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.9(グルタチオンペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.10(塩化物ペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.11(L−アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.12(リン脂質−ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.13(マンガンペルオキシダーゼ)、EC 1.11.1.14(ジアリールプロパンペルオキシダーゼ)、またはEC 1.11.1.15(ペルオキシレドキシン)であり得る。
【0065】
他の実施形態において、ペルオキシダーゼはまた、機能によってさらに特定されてもよく、例えば、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、または万能ペルオキシダーゼである。ペルオキシダーゼはまた、真菌、微生物、動物、または植物ペルオキシダーゼとして特定され得る。ペルオキシダーゼはまた、クラスI、クラスII、またはクラスIIIペルオキシダーゼとして特定され得る。ペルオキシダーゼはまた、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、ラクトペルオキシダーゼ(LPO)、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、プロスタグランジンHシンターゼ(PGHS)、グルタチオンペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、カタラーゼ、シトクロムcペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ピーナッツペルオキシダーゼ、ダイズペルオキシダーゼ、カブペルオキシダーゼ、タバコペルオキシダーゼ、トマトペルオキシダーゼ、オオムギペルオキシダーゼ、またはペルオキシダシンとして特定され得る。これらの特定の実施形態において、ペルオキシダーゼは、ラクトペルオキシダーゼである。
【0066】
ラクトペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼ(LP/GOX)抗菌系は、乳汁、唾液、涙液、および粘液などの体液中に天然に存在する(Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215−24(2000))。この系は、哺乳動物および高等生物に無害な2つの天然化合物であるチオシアネート(SCN−)およびヨウ化物(I−)を用いる(Welk et al.Archives of Oral Biology,2587(2011))。LPは、過酸化水素(H)の存在下で、それぞれ次亜チオシアン酸塩(OSCN−)および次亜ヨウ素酸塩(OI−)へのチオシアネートおよびヨウ化物イオンの酸化を触媒する。この系中のHは、酸素の存在下で、β−D−グルコースに対するGOXの活性によって提供される。これらのフリーラジカル化合物は、ひいては、微生物の細胞膜中のスルフヒドリル基を酸化し(Purdy,Tenovuo et al.Infection and Immunity,39(3),1187(1983);Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215−24(2000)、これは、膜透過性の低下(Wan,Wang et al.Biochemistry Journal,362,355−362(2001))および最終的に微生物細胞死につながる。次亜チオシアン酸塩および次亜ヨウ素酸塩の20μM程度の濃度が、細胞増殖の阻害をもたらすことができる(Bosch,van Doorne et al.2000)。LP/GOX系は、それ自体でチオシアネートに有効であり;ヨウ化物と組み合わされるとき、生物静力学的および殺生物的活性を促進し、かつグラム陰性菌(例えば、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aerugenosa))、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.))、および真菌(例えば、C.アルビカンス(C.albicans))(Reiter,Marshall et al.Infection and Immunity,13(3),800−807(1976);Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215−24(2000);Welk et al.Archives of Oral Biology,2587(2011))を含む感受性標的範囲を拡大する相乗効果がある。さらに、LP/GOX系は、2つの段階で機能する:(1)細胞膜における次亜チオシアン酸塩および次亜ヨウ素酸塩の生成および作用、および次に、これらの化合物を使い果たしたとき、(2)過剰なHが増大し、細胞構造におけるそれ自体の酸化的損傷を成立させる(Reiter,Marshall et al.1976)。上記の参考文献は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0067】
酵素系は、歯磨き粉および乳汁の防腐剤(anti−spoiling agent)などのバイオフィルム制御産業において展開され、承認されている。この系は、概して非特異的であり、わずかな反応要件で堅固である。1つの研究により、2ヶ月に1回の再接種を18ヵ月間行った後のグラム(−)および(+)細菌およびC.アルビカンス(C.albicans)に対する持続的な生物静力学的および殺生物的活性が判明した(Bosch et al.,J.Applied Microbiol.,89(2),215−24(2000))。有効なpH範囲は、3〜7であり、pH5でピークLP活性を有する(Reiter,Marshall et al.1976;Purdy,Tenovuo et al.1983)。より高い活性は、典型的に、pH3で細菌に対して見られるが、これは、低いpHによる増殖の阻害に起因する可能性が高い(Reiter,Marshall et al.1976)。pH以外に、LP/GOX系の活性のための唯一の厳しい要件は、酸素の存在であり、酸素なしでは、GOXは、グルコースからHを生成することができない。上記の参考文献は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0068】
LP/GOXは、細菌および真菌を含む微生物用の殺有害生物剤として記載されている(全体が参照により本明細書に援用される米国特許第6,447,811号明細書を参照)。したがって、ある実施形態において、本明細書に記載される本発明は、固体または液体配合物中の磁気固定化殺有害生物剤を提供する。殺有害生物剤は、フリーラジカルを生成するペルオキシダーゼ酵素を含む。ある実施形態において、ペルオキシダーゼ酵素は、ラクトペルオキシダーゼである。殺有害生物剤は、グルコースを酸化する酵素を含み得る過酸化物源をさらに含む。
【0069】
本発明は、不活性な磁気固定化酵素を提供する。酵素は、それらが水、酸素、基質、またはそれらの任意の組合せに曝されないため、不活性であり得る。本発明の好ましい実施形態において、磁気固定化酵素は、油基剤中である。これにより、使用前の酵素活性が抑制される。固定化酵素の活性化は、水和および/または酸素への曝露の際に起こる。より好ましい実施形態において、磁気固定化酵素は、水中油型乳剤を形成するために水溶液中で油を乳化するための作用物質を含む油基剤中である。別のより好ましい実施形態において、油は、鉱油、植物油、または動物油である。例示的な鉱油としては、パラフィン油および灯油タイプの油が挙げられる。例示的な動物油としては、ニシン油およびサバ油などの魚油が挙げられる。植物油の例は、ピーナッツ油、ゴマ油、ナタネ油、アマニ油、ヒマシ油、大豆油、トウモロコシ胚芽油、および綿実油である。
【0070】
他の実施形態において、表面上の磁気固定化酵素の分配をさらに促進するために、当該技術分野において公知の1つまたは複数の展着剤が、組成物または油基剤にさらに加えられ得る。ある実施形態において、展着剤は、非イオン性(non−ionogenic)表面張力低下物質である。好ましい実施形態において、展着剤は、エトキシ化アルコールおよびホスファチジル脂質である。
【0071】
他の実施形態において、1つまたは複数の接着剤が加えられ得る。接着剤は、磁気固定化酵素が、雨または他の条件によって植物から洗い流されるのを防ぐのに役立ち得る。接着剤は、当該技術分野において周知である。例は、デンプン、キサンタンガム、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)などのゴムである。
【0072】
組成物は、噴霧、散布、霧化、オーバーヘッド噴霧、散水、浸漬、および細流かんがいによって適用され得る。組成物を適用するための特に有利な方法は、小規模の方法(ミストシステム)および大規模の方法の両方によって噴霧している。細流かんがいは、ロックウールおよび他の増殖基質上の培養系に使用され得る。本発明に係る磁気固定化酵素はまた、細流かんがいシステムを消毒するのに使用され得る。最後の両方の場合、油基剤の存在は、最適活性のために厳密に必要なわけではない。組成物を含む浴への浸漬が、植物部位、特に、球根、塊茎、果実などの収穫可能な部位の処理に特に好適である。
【0073】
磁気固定化酵素は、様々な形態で商業的に利用可能にされ得る。好ましい実施形態において、ペルオキシダーゼ活性は、製品の保存期間を増大するため、できるだけ長く遅らせられる。酵素活性は、水和(すなわち水)および酸素への曝露の際に開始する。本発明の場合、グルコースオキシダーゼ/グルコース系は、過酸化水素供与体である。より好ましい実施形態において、過酸化水素供与体は、ペルオキシダーゼとは別々に提供される。さらに、油基剤および展着剤はまた、必要に応じて、別々に包装され得る。
【0074】
別の実施形態において、組成物を形成するためのキットが提供され、キットは、ペルオキシダーゼ(例えばラクトペルオキシダーゼ)および過酸化水素供与体(例えばグルコースオキシダーゼおよびグルコース)を含む任意選択的に濃縮された酵素組成物を含む。好ましい実施形態において、キットは、チオシアネート、ヨウ化物、油、乳化剤、または展着剤をさらに含み得る。より好ましい実施形態において、成分は、使用前に互いに混合される。別の実施形態において、キットは、使用前または使用と同時の希釈または水和のために濃縮形態の1つまたは複数の成分を含み得る。
【0075】
β−D−グルコースがHに酸化されるか、またはセルロース由来の糖がHに酸化される実施形態において、セルラーゼ酵素に、本発明の組成物が提供される。ある実施形態において、種子粉衣は、セルラーゼをさらに含む。
【0076】
ある実施形態において、セルラーゼは、エキソセルラーゼ、エンドセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、または当該技術分野において公知のそれらの組合せである。エンドセルラーゼ(EC 3.2.1.4)は、新しい鎖端を生成する非晶質部位において内部結合をランダムに切断する。エキソセルラーゼ(EC 3.2.1.91)は、エンドセルラーゼによって生成される露出された鎖の末端から2〜4つの単位を切断し、四糖類または二糖類(セロビオースなど)をもたらす。2つの主なタイプのエキソセルラーゼ[またはセロビオヒドロラーゼ(CBH)]があり−CBHIは、還元末端から前進的に(processively)機能し、CBHIIは、セルロースの非還元末端から前進的に機能する。セロビアーゼ(EC 3.2.1.21)またはβ−グルコシダーゼは、エキソセルラーゼ製品を個々の単糖類へと加水分解する。酸化的セルラーゼは、例えばセロビオースデヒドロゲナーゼ(受容体)として、ラジカル反応によってセルロースを解重合する。セルロースホスホリラーゼは、水の代わりにホスフェートを用いてセルロースを解重合する。
【0077】
他の実施形態において、エンドセルラーゼは、EC 3.2.1.4、エンド−1,4−β−D−グルカナーゼ、β−1,4−グルカナーゼ、β−1,4−エンドグルカンヒドロラーゼ、セルラーゼA、セルロシンAP、エンドグルカナーゼD、アルカリセルラーゼ、セルラーゼA3、セルデキストリナーゼ、9.5セルラーゼ、アビセラーゼ、パンセラーゼSS、および1,4−(1,3、1,4)−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼ)を含み得る。セルラーゼ酵素は、典型的に、真菌、細菌、およびセルロースの原生動物)によって産生される。エンドグルカナーゼの別名は:エンド−1,4−β−グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ(CMCase)、エンド−1,4−β−D−グルカナーゼ、β−1,4−グルカナーゼ、β−1,4−エンドグルカンヒドロラーゼ、およびセルデキストリナーゼである。
【0078】
ある実施形態において、本明細書に記載される方法は、本発明に使用される酵素を発現する組み換え細胞を使用する。組み換えDNA技術は、当該技術分野において公知である。ある実施形態において、細胞は、酵素を発現するプラスミドなどの発現ベクターにより形質転換される。他の実施形態において、ベクターは、例えば、転写開始、転写終結、翻訳開始および翻訳終結のための、1つまたは複数の遺伝子シグナル(genetic signal)を有する。本明細書において、酵素をコードする核酸は、好適な宿主生物へと適切に形質転換されるときにそれが発現されるようにベクター中でクローン化され得る。好適な宿主細胞は、当該技術分野において周知であるように、細菌、真菌、植物、または動物に由来し得る。
【0079】
ある実施形態において、本発明は、マトリックス材料がバイオポリマーであると規定している。例としては、多糖類(例えば、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、キトサン、イヌリン、デキストラン、アガロース、およびアルギン酸)、ポリ乳酸、およびポリグリコール酸が挙げられる。他の実施形態において、マトリックス材料は、水溶性セルロース誘導体、水溶媒和性セルロース誘導体、アルギネート誘導体、およびキトサン誘導体である。
【0080】
ある実施形態において、マトリックスは、セルロースを含む。セルロースは、数百から何千ものβ(1→4)結合D−グルコース単位の線状鎖からなる多糖である、式(C10)nを有する有機化合物である。本発明に使用されるセルロースは、植物、藻類、または微生物源から得られるかまたはそれに由来し得る。ある実施形態において、本発明は、当該技術分野において公知のセルロース誘導体を提供する。セルロースのヒドロキシル基(−OH)は、当該技術分野において公知の試薬と部分的にまたは完全に反応され得る。好ましい実施形態において、セルロース誘導体は、セルロースエステルおよびセルロースエーテル(−OR)である。より好ましい実施形態において、セルロース誘導体は、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、ニトロセルロース(硝酸セルロース)、硫酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0081】
ある実施形態において、マトリックスは、カルボキシメチルセルロースを含む。カルボキシメチルセルロース(CMC)またはセルロースガム[1]は、セルロース骨格を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシル基のいくつかに結合されたカルボキシメチル基(−CH2−COOH)を有するセルロース誘導体である。それは、当該技術分野において公知の技術を用いて、例えば、セルロースとクロロ酢酸とのアルカリ触媒反応によって合成される。極性(有機酸)カルボキシル基は、セルロースを、可溶性かつ化学反応性にする。CMCの機能特性は、セルロース構造の置換度(すなわち、いくつのヒドロキシル基が置換反応に関与しているか)、ならびにセルロース骨格構造の鎖長およびカルボキシメチル置換基のクラスター度に応じて決まる。
【0082】
ある実施形態において、マトリックスは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。HPCは、水溶性および有機溶解性の両方を有するセルロースの誘導体である。HPCは、繰り返しグルコース単位中のヒドロキシル基のいくつかが、プロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロピル化されて、−OCH2CH(OH)CH3基を形成するセルロースのエーテルである。グルコース単位当たりの置換ヒドロキシル基の平均数は、置換度(DS)と呼ばれる。完全置換は、3のDSを提供するであろう。付加されるヒドロキシプロピル基がヒドロキシル基を含むため、これは、HPCの調製の際にエーテル化され得る。これが起こるとき、グルコース環当たりのヒドロキシプロピル基のモル数である、モル置換度(MS)は、3より高くなり得る。セルロースは非常に結晶性であるため、HPCは、水への良好な溶解度を達成するために約4のMSを有さなければならない。HPCは、疎水性基および親水性基の組合せを有するため、45℃で下限臨界溶解温度(LCST)を有する。LCST未満の温度で、HPCは、水に容易に溶解し;LCST超で、HPCは溶解しない。HPCは、水中のその濃度に応じて、液晶および多くの中間相を形成する。このような中間相は、等方性、異方性、ネマチックおよびコレステリック中間相を含む。最後の中間相は、紫色、緑色および赤色などの多くの色を与える。
【0083】
ある実施形態において、マトリックスは、メチルセルロースを含む。メチルセルロース(Methyl cellulose)(またはメチルセルロース(methylcellulose))は、セルロースから誘導される。メチルセルロースは、純粋形態で親水性の白色の粉末であり、(温水ではなく)冷水に溶解されて、透明の粘性溶液またはゲルを形成する。メチルセルロースは、天然に存在せず、セルロースを、苛性アルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウムの溶液)とともに加熱し、それを塩化メチルで処理することによって合成的に生成される。後続の置換反応において、ヒドロキシル残基(−OH官能基)は、メトキシド(−OCH基)で置換される。
【0084】
置換されるヒドロキシル基の数に応じて、様々な種類のメチルセルロースが調製され得る。セルロースは、3つのヒドロキシル基をそれぞれが露出する多くの結合されたグルコース分子からなるポリマーである。所与の形態のメチルセルロースの置換度(DS)は、グルコース当たりの置換ヒドロキシル基の平均数として定義される。したがって、理論上の最大値は、3.0のDSであるが、より典型的な値は、1.3〜2.6である。
【0085】
ある実施形態において、マトリックスは、アルギネートを含む。アルギン酸、およびアルギンとも呼ばれるアルギネートは、褐藻類の細胞壁中に広く分布しているアニオン性多糖である。水と結合されるとき、それは粘性のゴムを形成する。抽出された形態で、それは、水を素早く吸収し;水中でそれ自体の重量の200〜300倍を吸収することができる。それは、フィラメント、顆粒または粉末形態で販売されている。本発明は、公知のアルギネートおよびアルギネート由来材料のマトリックス材料を提供する。好ましい実施形態において、アルギネート由来材料としては、アルギネート−ポリリジン−アルギネート(APA)、アルギネート/ポリ−l−リジン/ペクチン/ポリ−1−リジン/アルギネート(APPPA)、アルギネート/ポリ−1−リジン/ペクチン/ポリ−l−リジン/ペクチン(APPPP)、およびアルギネート/ポリ−L−リジン/キトサン/ポリ−l−リジン/アルギネート(APCPA)、アルギネート−ポリメチレン−コ−グアニジン−アルギネート(A−PMCG−A)、ヒドロキシメチルアクリレート−メチルメタクリレート(HEMA−MMA)、多層のHEMA−MMA−MAA、ポリアクリロニトリル−ビニルクロリド(PAN−PVC)が挙げられる。
【0086】
ある実施形態において、マトリックスは、キトサンを含む。キトサンは、ランダムに分布したβ−(1−4)−結合D−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)で構成される線状多糖である。キトサン中のアミノ基は、約6.5のpKa値を有し、これは、pHおよび%DA−値に左右される電荷密度を有する酸性ないし中性の溶液中でプロトン化をもたらす。これにより、キトサンが水溶性になり、粘膜などの負に帯電した表面に容易に結合する生体接着剤になる。それは、甲殻類(カニおよびエビなど)の外骨格および真菌の細胞壁の構成要素であるキチンを、水酸化ナトリウムにより脱アセチル化することによって商業的に生成される。キトサンは、種子処理およびバイオ殺有害生物剤として農業に使用される。ワイン生産において、キトサンは、腐敗を防ぐのにも役立つ清澄剤として使用される。キトサンはまた、出血を減少させるためにおよび抗菌剤として包帯に使用される。キトサンはまた、薬剤を経皮的に送達するのを助けるのに使用される。
【0087】
他の実施形態において、マトリックス材料は、アクリロニトリル/メタリルスルホン酸ナトリウム、(AN−69)、ポリエチレングリコール/ポリペンタメチルシクロペンタシロキサン/ポリジメチルシロキサン(PEG/PD5/PDMS)、ポリJVjiV−ジメチルアクリルアミド(PDMAAm)、シリカ封入物(siliceous encapsulate)、および硫酸セルロース/アルギン酸ナトリウム/ポリメチレン−コ−グアニジン(CS/A/PMCG)であり得る。
【0088】
ある実施形態において、本発明は、特に、種子粉衣に使用される抗菌性組成物を提供する。本明細書に開示される酵素系に応答する病原体に弱い任意の種子に有益であろう。ある実施形態において、種子は、野菜、果実、農作物、および花の種子であり得る。他の実施形態において、本発明は、特に、工業的または商業的に関連する家畜およびそれから得られる製品のための敷料に使用される抗菌性組成物を提供する。多くの家畜が、当該技術分野において公知である。他の実施形態において、本発明は、特に、創傷包帯に使用される抗菌性組成物を提供する。多くの創傷包帯が、当該技術分野において公知である。本発明は、本明細書に開示される酵素系に応答する病原体または汚染物質に耐える布帛を提供する。布帛は、本明細書に記載される抗菌性組成物を含む。
【0089】
本発明のある実施形態は、ヒト感染を低減するための組成物および方法を提供する。これは、1つの成分中の磁気ナノ粒子中の過酸化水素生成(HPP)酵素およびフリーラジカル生成(FRP)酵素と、別の成分中の酵素用の基質とを含む多成分組成物によって初めて達成される。固体組成物は、安定かつ不活性である。したがって、それらは、製品に組み込む前または後に貯蔵され得る。抗菌活性が必要とされるとき、多成分組成物は、水和によって活性化される。HPP酵素は、過酸化水素およびD−グルコノ−δ−ラクトンを生成するように基質に作用する。FRP酵素は、フリーラジカルを生成するように過酸化水素および1つまたは複数のさらなる基質に作用する。過酸化水素およびフリーラジカルは、抗菌特性を有する。
【0090】
本明細書に記載される本発明がより十分に理解され得るために、以下の実施例が記載されている。これらの実施例は、例示目的のためのものであるに過ぎず、本発明を限定するものと決して解釈されるものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0091】
実施例1−磁気ナノ粒子固定化HPPおよびFRP酵素の最適化
ダイズペルオキシダーゼ系(SBP)、フリーラジカル生成酵素(FRP)を、BNPにおける触媒として使用した。BNPは、フェノールをポリフェノールに転化することによって溶液からフェノールを除去し、ポリフェノールは、ろ過または遠心分離によって除去された。SBPのための最適条件(すなわち、BNP濃度およびpH)を、以下のように決定した。
【0092】
ダイズペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼ(SBP/GOX)酵素系を組み合わせて、ナノ粒子クラスター中で共固定した(co−immobilized)。基質緩衝液中の過酸化水素の必要性をなくすために、酸素およびβ−D−グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼ(GOX)を用いて、組み合わされたペルオキシダーゼ触媒に過酸化水素を提供することができる。修正されたハイスループットのマイクロプレートベースのアッセイを用いて、異なる量のGOXを含むペルオキシダーゼ触媒(HRP、SBPまたはそれらの組合せ)をスクリーニングした。50mMのグルコースを、H生成に使用した。総ペルオキシダーゼ濃度を、スクリーニングのために60nMに保持し、異なる濃度のGOXを試験した(600nM、60nM、および6nMのGOX)。240mg/mlの材料中で固定された等量のSBP:HRP:GOXからなる三酵素系は、10倍および0.1倍のGOX:ペルオキシダーゼ系と比較して、最も高いフリーラジカル生成活性を有していた。
【0093】
上で決定される最適化された条件を用いて、Hを生成するためにグルコースを用いたペルオキシダーゼ活性は、遊離系と比較して活性の3倍の増加を示した。この系は、効率的な固定化酵素クラスターを形成するための任意のペルオキシダーゼのためのスクリーニング条件(pH、イオン強度、濃度および時間)を狭めるのに使用される。
【0094】
三酵素系の最良の調製条件ならびにSBP、HRP、およびGOXの比率を決定した後、この系を、過酸化水素を生成するための10、50、および100mMのグルコースのβ−D−グルコース濃度(図2)に対してスクリーニングした。フェノール濃度を1mMに増加させた。未反応のフェノールが、遠心分離による重合ペレットの除去の後、OD270で測定された。3時間後、10mMのグルコースは、最も高い活性を示した。これは、フリーラジカル基質と比べて非常に高い濃度のグルコースが必要でないことを示唆している。グルコースは、他の基質と比較して過剰に保つべきであるが、この系中のその濃度は、おそらく、フリーラジカル生成基質との化学量論的反応のために10mM未満の濃度にさらに低下され得る。
【0095】
上述される系を用いて、最適化ラクトペルオキシダーゼ(「LP」または「LCP」)固定化条件を決定した。大腸菌(E.coli)を死滅させるための液体媒体中の最適化LP/GOX条件を、酸化剤として過酸化水素を用いて設定し(LCP、図3A)、またはLCPおよびGOXを、酸化剤としてグルコースを用いて設定した(LCP:GOX、図3B)。異なる比率のLP:GOXを、それぞれ125nM:25nM、125nM:12.5nMの125nM:6.25nMで試験した。
【0096】
混合された酵素を、125、250または500μg/mlの磁気ナノ粒子により固定した。新鮮な50μlの大腸菌(E.coli)細胞(最終濃度10個の細胞/ml)を、96ウェルマイクロプレート中で分配し、30μlの固定化酵素溶液、20μlのSCN(0.02M)/20μlのH2O2(酸化剤としてペルオキシダーゼ:1M、0.1M、0.01M)または20μlのSCN(0.02M)/20μlのグルコース(酸化剤としてグルコース:1M、0.1M、0.01M)とともにインキュベートした。100μlの100mMのPBS緩衝液を、200μlの最終体積になるように加えた。対照は、非固定化酵素、単独の試薬、および対照を100%死滅させるための70%のエタノールを含んでいた。全ての処理を3連で行った。
【0097】
インキュベーションの後、マイクロプレートを遠心分離して、細胞を回収した。次に、細胞を、LIVE/DEAD染色のために蛍光プレートに移した。LIVE/DEAD(登録商標)BacLight(商標)Bacterial Viability Kits(Life Technologies,Cat.No.L−7007)は、2つの異なる核酸プローブを提供し、これを用いて、無傷の細胞膜を有する生細菌を、損傷した膜を有する死細菌と迅速に区別した。蛍光カウント値を、蛍光プレートリーダー(Biotek)を用いて測定した。生細胞および死細胞(エタノール処理の後)の検量線を用いて、死細胞の数を定量化した。処理の有効性を、固定化酵素配合物への5分間の曝露後の死細菌に対する生細菌の比率として評価した。
【0098】
固定化LP単独(125nMの酵素:500μg/mlのNP)の最も高い有効性は、20μlの0.1MのH(10mMの最終濃度)を用いた場合であることが分かり、約68%の細胞が5分で死滅した(図3A)。固定化LP:GOX(125nMのLP:25nMのGOX:500μg/mlのNP)を、20μlの1Mのグルコース(100mMの最終濃度)とともに使用したとき、有効性は、5分で100%であった(図3B)。全ての場合において、固定化酵素が、それらの非固定化同等物より高い有効性を有することが分かった。
【0099】
実施例2−固体抗菌性LP/GOX集合体の生成
FRP基質を含むLP/GOX系を、酸素の存在下でGOXがグルコースを消費し、Hを生成するのを防ぐことによって活性を安定させた固体抗菌性集合体中で区分した。配合物が濡らしたときのみ活性化され、基質が酵素へと拡散させられるように、区分された試薬を、多層コーティング集合体(レベル2)へと配合した。LP/GOXは、静菌および抗菌活性のためのハイポラジカル(hyporadical)を生成する非特異的抗菌系である。これは、土壌伝染性の植物病原体の作用による生育し得る種子の喪失を防ぐ本明細書に記載される新規な植物種子粉衣中で適用され得る。
【0100】
各層につき2mmのディスクを、層1または層2の20μlの溶液を完全に乾燥させることによって作製した。水で活性化されるディスクは、固定化酵素、基質、およびそれらを一緒に保持するセルロースマトリックスで構成されていた。第1の層は、固定化LCP/GOX、基質KIおよびKSCN、および青色食用着色剤を含有していた。第2の層は、グルコース、KI、KSCN、および黄色食用着色剤を含有していた。前者は、青色酵素/基質ドットであり、後者は、黄色基質のみのドットである。両方とも、カルボキシメチルセルロース(CMC)の粘性の溶液中で調製し、この溶液を、(容易な除去のため)ワックスフィルム上にピペットで取り、24時間乾燥させたところ、それらのそれぞれの成分の小さい濃縮されたディスクが残った。黄色および青色ドットは、水分によって活性化される「サンドイッチ(sandwich)」状に積層される。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
乾燥形態で、集合体は、安定かつ非反応性であった。しかしながら、水和の際、基質(O、グルコース、KIおよびKSCN)は、固定化酵素に拡散した。水で活性化される集合体は、ペトリ皿上の大腸菌(E.coli)およびキサントモナス属(Xanthomonas)培養物に対する殺菌活性のために全ての成分を組み合わせたものである。
【0105】
植物病原体に対する水で活性化される配合物の有効性を、抗生物質ディスク拡散アッセイと同様の方法を用いて決定した。ディスク拡散アッセイにおいて、公知の濃度の抗菌物質に浸漬した小さい紙ディスクを、微生物培養寒天プレート上に置き、次に、それをインキュベートして、叢(lawn)を形成する。増殖阻害の領域のサイズは、特定の微生物に対する特定の抗菌物質の抗菌効果の大きさに相関され得る。層1および2を、キサントモナス属(Xanthamonas)aa CU6923を接種されたばかりのライマメ寒天上で互いに積み重ねた(図4A)。次に、プレートを室温で24時間インキュベートした。酵素を含有しない陰性対照は、クリアランスを示さなかった。対照的に、固定化酵素を含むディスクは、細菌増殖なしの約1cmの透明の領域によって示されるようにキサントモナス属(Xanthomonas)を死滅させ、その増殖を防いだ。酵素含有配合物を用いて、細菌増殖の完全な阻害が、24時間後に、および最大で5週間にわたって観察された(図4B)。同様の結果が、ミューラー・ヒントン寒天上の大腸菌(E.coli)培養物について見られたが、より小さくかつより不明確なクリアランス領域を有していた。これは、大腸菌(E.coli)がカタラーゼ(+)生物であるためであり得る。それは、反応中に生成された過酸化水素の一部を消費して、LCP/GOX系によるより少なくかつより遅いハイポラジカル生成をもたらし得る。したがって、カタラーゼ(+)生物は、より高い濃度の酵素および基質を必要とし得る。
【0106】
実施例3−LP/GOX種子粉衣
種子を、連続する2層系中の本明細書に開示される抗菌性組成物で粉衣した。ポリマーの濃度は、必要とされる粉衣の厚さに基づいて変化し得る。固定化酵素の濃度は、所望の抗菌活性の有効性および持続時間に基づいて変化し得る。
【0107】
固体抗菌性LP/GOX集合体は、以下のプロトコルにしたがって、プラント安全性であることが示された:1mLの黄色グルコース/基質混合物を、500μLの青色酵素/基質混合物と組み合わせた。同じことを、1mLの黄色および500μLの青色対照で行った。混合物をボルテックスした。鉗子を用いて、20個のトマト種子をそれぞれ、酵素および対照混合物に浸漬し、一晩乾燥させた。次に、種子を、3つのセクション:粉衣された酵素+、粉衣された酵素−、非粉衣で印を付けられた空の滅菌培養皿の底部で、湿ったろ紙上に置いた。7日後、種子を発芽について調べた。
【0108】
酵素粉衣は、7日後に種子発芽を阻害しなかった(図5)。試験および対照種子は、85%の発芽を示した。同じアッセイにおいてコムギを用いて、発芽率は100%であった(データは示されていない)。
【0109】
小さい種子バッチの例において、1gの種子を、まず、10mlの層1配合物中で1分間浸漬し、真空オーブン中で、低温(例えば、約40℃)で乾燥させる。次に、乾燥された種子を層2配合物に浸漬し、真空オーブン中で、低温(例えば、約40℃)で乾燥させる。この粉衣方法は、酵素、試薬および粘度について配合物を最適化するのに使用され得る。粘度は、乾燥後に、種子上に残されるポリマーの量に関連している。
【0110】
種子粉衣のより大きいバッチ(例えば、1g、10g超、または最大で5kgまたはそれ以上の種子)の例において、当該技術分野において公知の市販の種子コーティング機が使用され得る(図6)。例示的な種子コーティング機は、垂直な円筒状の固定子および水平な円盤状の回転子を含み得る。回転子は、種子を回転させ、それによって、種子を固定子まで上昇させ、ここで、それらは速度を落とし、混合チャンバの中心へと再度急降下する。混合チャンバの中心は、粉衣材料の分散を確実にする回転ディスクを含み得る。あるいは、低粘度溶液の場合、スプレーノズルが、溶液を噴霧または霧化してもよい。
【0111】
ある実施形態において、混合相および乾燥相が用いられ得る。まず、酵素を含有する溶液を、約1対2の比率(酵素重量:種子重量)で回転している種子に展着する。乾燥空気ジェット乾燥機が、種子を乾燥させるのに使用され得る。乾燥に必要とされる時間は、種子および蒸発する水の量に基づいて変化し得る。種子が完全に乾燥されたとき、グルコース、他の基質、または他の試薬を含有する層2の溶液を、約1対2の比率(溶液重量:種子重量)で回転している種子に展着する。乾燥空気ジェット乾燥機が、回転している種子を乾燥させるのに使用され得る。得られる種子粉衣を最適化するために、種子に対する層溶液の比率は、当該技術分野において公知のように変化され得る。
【0112】
10kgを超えるより大きいバッチの場合、連続種子粉衣機が、粉衣の間に種子の乾燥を促進するために使用され得る。種子は、当該技術分野において公知の機械的手段(例えばコンベヤベルト)を介して、1つの粉衣機から別の粉衣機へと移動される。前記移動に使用される時間は、次の粉衣の前の乾燥に使用され得る(図6)。
【0113】
当業者は、さらなる層または成分が、それが抗菌性組成物の活性化を防止しない限り、プロセス中の任意の時点で粉衣された種子に加えられ得ることを認識するであろう。さらなる粉衣工程は、乾燥剤(例えばタルク)、着色剤(例えば染料)、殺有害生物剤(例えば殺虫剤)、植物に有益な細菌(例えば植物の成長を促進する根圏細菌(Rhizobacteria)胞子)、または他の化学物質(例えば殺真菌剤、肥料、主要栄養素および微量栄養素)などの、他の有機、無機および生物学的添加剤を含み得る。種子の下塗り(例えば予備水和(prehydration))は、第1の層の粉衣の際に種子に行き渡らせる水の量を制御することによって最適化され得る。
【0114】
種子粉衣の有効性が、生育チャンバにおいて試験され、生育チャンバにおいて、粉衣された種子が、最小限の素寒天上で、標的病原体(例えばトマトの場合はキサントモナス属(xanthomonas))の存在下で生育される。粉衣された種子は、病原体が接種された寒天表面上で発芽するように置かれる。種子の周りの阻害の領域の直径は、配合物の有効性を示す。
【0115】
あるいは、種子は、制御された生育チャンバ(14時間の昼間、10時間の夜間、60%の湿度、22℃)中で、約10gの接種された土壌(土壌のg当たり約10個の病原体細胞)中で生育される。土壌の有効性は、苗の発芽(発芽率)、植物における病原体の存在または発生、および発芽後の死亡率を測定することによって試験される。
【0116】
実施例4−LP/GOX動物の敷料コーティング
本発明の1つの実施例において、動物の敷料が、粉砕されたトウモロコシ穂軸(図7、Green Products Company,Conrad,Iowa)を用いて、本明細書に開示される固体抗菌性集合体で被覆される。「木のような(wood−like)」材料は、水中でそれ自体の重量を吸収することができる一方、より軟質の髄(pith)および軸は、水中でそれらの重量の最大で4.5倍を吸収することができる。材料は、機械的抵抗性があり、生分解性であり、堆肥化可能であり、再生可能である。直径が3.2mm未満の粒子(例えばGreenTru1/8”)が、主に小動物の敷料に使用される。それは、木質の環部分から作製され、良好な吸収特徴を有する。GreenTru 1020トウモロコシ穂軸は、大量のトウモロコシ穂軸粒子が必要とされる「担体」用途(殺有害生物剤および肥料)に現在使用されている。
【0117】
トウモロコシ穂軸粒子を、グルコース(100mM)、4℃のKIおよびKSCN(それぞれ0.5mM)および50%の保水容量(WHC)の0.5%のポリマーに24時間浸漬し、次に、10%の水分になるまで、50〜100℃で空気乾燥させる。「充填された」粒子は、反応試薬の容器として働く。充填された粒子を、本明細書に開示される固定化酵素系および最適なCMC濃度を含有するコーティング配合物に浸漬する。被覆された粒子を、24時間乾燥させる。
【0118】
機能化された敷料粒子の有効性が、液体および固体細菌培養物において示される。固体培養物の場合、被覆された材料の10個の粒子を、標的細菌が接種されたペトリ皿に置く。粒子を、10μlの水または人工的なウシの尿(2%の尿素、pH6)で活性化する。粒子の周りの非増殖領域(環)の直径を、阻害効率のために測定する。
【0119】
溶液中で、1個の粒子を、1mlの細菌培養物(10、10、10および10個の細菌)に加える。生細胞および死細胞のパーセンテージを、5分、1時間、24時間、および48時間の時点で、LIVE/DEAD(登録商標)キットを用いて、上述されるように測定する。
【0120】
材料コーティングのより大きいバッチ(例えば、1g、10g超、または最大で5kgまたはそれ以上のトウモロコシ穂軸材料)の場合、上述される市販のコーティング機が使用され得る(図8)。まず、材料に、1:1の比率(1gの溶液に対して1gの材料)で、グルコース(50〜100mM)および試薬(それぞれ0.5mMのKSCNおよびKI)および0.5%のポリマー(CMC)を含有する溶液を噴霧する。次に、材料を、50〜100℃の温度で乾燥させる。ある実施形態において、空気ジェット流が使用され得る。次に、固定化酵素を含有する溶液を、1対2の比率(溶液重量:材料重量)で材料に展着する。例えば、これは、2%のポリマーおよび0.5mMのKSCNおよびKIであり得る。ポリマーの濃度は、必要とされるコーティングの厚さに基づいて変化する。固定化酵素の濃度は、所望の抗菌活性の有効性および持続時間に基づいて変化する。酵素濃度を、敷料および病原体向けに最適化される。最終材料を、約10%以下の水分含量になるまで乾燥させる。乾燥に必要とされる時間は、材料および蒸発する水の量に基づいて変化する。
【0121】
10kg超のより大きいバッチの場合、連続粒子コーターが、コーティングの間に種子の乾燥を促進するために使用され得る。乾燥時間が次のコーティングの前に提供されるように、種子は、1つのコーターから別のコーターへと(例えばコンベヤベルトを介して)機械的に移動される。
【0122】
実施例5−ウシラクトペルオキシダーゼおよびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコースオキシダーゼ種子粉衣
本発明の別の実施例において、LP/GOXを、1:10のLP対GOXの比率で配合した。GOXは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(Sigma Aldrich,St.Louis,MO、Cat.No.G7141)に由来した。LPは、ウシ乳汁(Sigma Aldrich,St.Louis,MO、Cat.No.61328)に由来した。ここで、酵素の1倍の組成物を、38.7nMのラクト−ペルオキシダーゼおよび387nMのグルコースオキシダーゼおよび300μg/mlのNPを用いて配合した。組成物は、0.3mMのKIおよび0.5mMのNHSCNも有していた。酵素をまず共固定した。簡潔に述べると、酵素を一緒に混合し、次に、1mlの最終体積になるまで、超音波処理されたNP(40%の電力で1分間)に加えた。次に、管を、1100rpmで1時間振とうする。
【0123】
20μlのドットを寒天プレート上に置くことによって、固定化酵素集合体を、0.1倍、0.2倍、1倍、5倍、および10倍の濃度で作製した。集合体中のカルボキシメチル−セルロースポリマー(CMC)の量を、4%で一定に保持し、配合物を、食用着色剤(FD&C Blue 1およびred 40、ml当たり10μl)で青色に着色した。各ドットは、室温で一晩、または減圧下で1時間乾燥された20μlの配合物を含有していた。
【0124】
1倍の基質配合物は、4%のCMC、0.3mMのKI、0.5mMのNHSCNおよび50mMのグルコースを含有していた。CMCの量を4%で一定に保持しながら、基質の量を増加させることによって、異なる基質濃度(1倍、5倍、10倍、および20倍)を分析した。配合物を、食用着色剤(FD&C yellow 5、ml当たり10μl)で黄色に着色した。各ドットは、室温で一晩または減圧下で1時間乾燥された20μlの配合物を含有していた。
【0125】
酵素集合体は、細菌増殖を効率的に阻害した。細菌を、液体培養物または固体寒天プレート(寒天15g/L)中のLB培地(10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母エキス、10gのNaCl/L)で増殖させた。配合物を、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas campestris)病原型、シュードモナス・シリンガエ変種トマト(Pseudomonas syringae var.tomato)、およびクラビバクター・ミシガンエンシス(Clavibacter michiganensis)の野生分離株で試験した。細菌(ml当たり10個の細菌に調整された48時間液体培養物)を、ガラスビーズ手順を用いて、プレート当たり約6.6×10個の細菌で、寒天プレート上で平板培養して、細菌叢を形成した。接種後、酵素を含有する乾燥ディスクを表面に置き、基質を含む乾燥ディスクをそれらの上に加えた。CMCが再水和するにつれ、食用着色剤を含む基質が拡散し、それによって、ディスクが緑色に変化した。あるいは、粉衣された種子を寒天の表面に置いた。プレートを室温で48〜96時間インキュベートし、平板培養を3連で行った。図9に示されるように、カンキツかいよう病菌(X.campestris)が、用量依存的に酵素集合体によって効率的に阻害された。阻害の量(halo of inhibition)は、酵素の濃度とともに増加した。同様に、図10は、最も低い基質濃度でさえ、カンキツかいよう病菌(X.campestris)の阻害を示す。
【0126】
酵素集合体は、真菌増殖を効率的に阻害した。真菌を、ポテトデキストロース寒天で増殖させた。真菌株の1つのプラグ(7mmの直径)がプレートの中心になるように、新鮮なプレートに接種した。プレートの接種の後、酵素希釈物を含有する乾燥ディスクを寒天の表面に加え、基質を含む乾燥ディスクをそれらの上に加えた。CMCが再水和するにつれ、食用着色剤を含む基質が撹拌し、それによって、ディスクが緑色に変化した。ディスクを、接種材料から同じ距離で加えたところ、菌糸体の増殖が観察された。図11は、酵素濃度の増加とともにトマト苗立枯病菌(Pythium vexans)の用量依存的な阻害を示す。
【0127】
酵素集合体は、トマト種子を効率的に保護した。トマト種子(変種ラトガース(var.Rutgers))を、まず種子を酵素配合物に浸漬し、第1の層を真空乾燥させ、種子を基質配合物に浸漬し、種子を室温で2回目の真空乾燥させることによって、手作業で粉衣した。10〜13μlの各溶液を、各粉衣工程で、種子に付着させた。種子を一晩乾燥させ、さらなる使用まで4℃で貯蔵した。図12は、粉衣された種子が、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)およびクラビバクター・ミシガンエンシス(Clavibacter michiganensis)感染から効率的に保護されたことを示す。
【0128】
本発明のさらなる実証において、粉衣された種子を、フザリウム・エクイセチ(Fusarium equiseti)およびフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)を含有する接種材料プラグから異なる距離で置いた。トマト苗立枯病菌(Pythium vexans)および紋枯病菌(rhizoctonia solani)も分析した(データは示されていない)。真菌を室温でインキュベートし、平板培養を3連で行った。図13は、3、5、および7日後のフザリウム属(Fusarium)の距離依存的な阻害を示す。
【0129】
拡散。共固定化ラクトペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼを含有する配合物は、キサントモナス属(Xanthomonas)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クラビバクター属(Clavibacter)、クサレカビ属(Pythium)、およびフザリウム属(fusarium)から農業材料を効率的に保護する。対照は、染料または基質単独では、細菌または真菌に効果を与えないことを示した。強い殺菌効果が、水和されたポリマーによって形成された透明の衛生処理(sanitation)領域(図9〜11)または粉衣された種子の周りに形成された領域(図12〜13)で、全ての細菌に対して観察された。衛生処理の領域は、最も酵素濃度依存的であることが示された(図2)。基質の濃度は、短期間の衛生処理にほとんど効果を与えなかったが、より長い期間にわたって効果を維持する際に決定要因になるかもしれない。また、固定化グルコースオキシダーゼ単独では、過酸化水素の生成によりわずかなレベルの殺菌活性を有していた。しかしながら、抗菌効果は、共固定化ウシラクトペルオキシダーゼの存在によって著しく増加された。
【0130】
真菌病原体フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・エクイセチ(Fusarium equiseti)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)およびトマト苗立枯病菌(Pythium vexans)の場合、非常に強い陰性の化学反発(negative chemorepulsion)が観察された。図11および13に示されるように、菌糸体の増殖は、異方性であり、酵素配合物(ドットまたは粉衣された種子)を含有する領域に近づくほど遅くなる。フザリウム属(Fusarium)およびクサレカビ属(Pythium)で、2週間超にわたって保護が観察された。試験される酵素および基質の範囲で、紋枯病菌(Rhizoctonia solani)に対する有意な効果は観察されなかった。
【0131】
酵素が、0.1倍の濃度でさえ、非常に有効であったため、約1gのウシラクトペルオキシダーゼを用いて、3030万個のトマト種子を、および1gのグルコースオキシダーゼを用いて、303万個のトマト種子を粉衣および保護することができる。同様に、1kgのヨウ化カリウムおよびチオシアン酸アンモニウムは、それぞれ9億1200万個および11億9300万個の種子を粉衣および保護するのに十分である。1リットルのウシ乳汁が、約33mgのラクトペルオキシダーゼを含有するため、1リットルの乳汁は、真菌および細菌病原体から約100万個のトマト種子を保護するのに十分なラクトペルオキシダーゼを抽出するように処理され得る。平均で、1頭のウシは、1日に約20リットルの乳汁を生産する。各リットルは、約2000万個のトマト種子を粉衣するのに十分なラクトペルオキシダーゼを含有する。組成物は、他の種子を粉衣するのに使用され得;種子当たりに使用される溶液の量は、トマト種子に使用される量と比較して、種子の表面積に比例する。
【0132】
本明細書に開示され、または言及される全ての刊行物および特許文献は、全体が参照により援用される。上記の説明は、例示および説明の目的で示されているに過ぎない。本明細書は、本発明を、開示される正確な形態に限定することは意図されていない。本発明の範囲が、添付の特許請求の範囲によって規定されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13