特許第6983088号(P6983088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983088
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】燃料ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20211206BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20211206BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20211206BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   F02M21/02 301C
   B01J23/755 M
   F02M37/00 341D
   F02M21/02 K
   C10L3/08
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-42062(P2018-42062)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2019-157673(P2019-157673A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】諫田 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(72)【発明者】
【氏名】椿原 昇
(72)【発明者】
【氏名】石崎 七海
【審査官】 池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014085(JP,A)
【文献】 特開2007−231937(JP,A)
【文献】 特開2002−371932(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/150600(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第3425028(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
B01J 23/755
F02M 37/00
C10L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質炭化水素ガスである原料ガスを改質処理してメタンを主成分として含有する燃料ガスを生成する燃料ガス生成部と、当該燃料ガス生成部に前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、前記燃料ガスを消費する内燃機関とが設けられた燃料ガス供給装置であって、
前記原料ガス供給部からの前記原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給制御部が、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量を求め、且つ、前記燃料ガス生成部から前記内燃機関に供給される前記燃料ガスを貯留する貯留部の実圧力を前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、前記運転目標圧力と前記実圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で目標供給量を求めて、前記原料ガスの供給量を前記目標供給量に制御するように構成されている燃料ガス供給装置。
【請求項2】
前記燃料ガス生成部が、前記改質処理として、水蒸気供給部から供給される水蒸気により水蒸気改質処理を実行するように構成され、
前記原料ガス供給制御部が、前記水蒸気供給部から供給される前記水蒸気の水蒸気圧力が前記運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合には、前記実圧力を前記運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、前記実圧力と前記低目標圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で前記目標供給量を求めるように構成されている請求項1記載の燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記基準蒸気圧力が、前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定められている請求項2記載の燃料ガス供給装置。
【請求項4】
前記低目標圧力が、前記負荷が大きくなるほど大きくなるように定められている請求項2又は3記載の燃料ガス供給装置。
【請求項5】
前記燃料ガス生成部が、前記原料ガスを脱硫処理する脱硫装置と、前記脱硫装置にて脱硫処理された前記原料ガスを改質触媒により前記水蒸気改質してメタンに分解する分解反応を行い、メタンを含有する混合ガスを生成する混合ガス生成部、及び、当該混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素から触媒によりメタンを再合成する再合成部を備えた改質装置と、を備える形態に構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質炭化水素ガスである原料ガスを改質処理してメタンを主成分として含有する燃料ガスを生成する燃料ガス生成部と、当該燃料ガス生成部に前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、前記燃料ガスを消費する内燃機関とが設けられた燃料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる燃料ガス供給装置は、プロパン、ブタン等の重質炭化水素ガスを改質処理して、メタンを主成分として含有する燃料ガスを製造し、製造された燃料ガスを、ガスエンジンやガスタービン等の内燃機関の燃料として用いられるようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には記載が省略されているが、このような燃料ガス供給装置においては、燃料ガス生成部に対して原料ガスを供給する原料ガス供給部からの原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給制御部が設けられて、この原料ガス供給制御部が、基本的には、内燃機関の負荷が大きくなるほど多くする形態で原料ガスの目標供給量を求めて、原料ガスの供給量を目標供給量に制御することになる。
【0004】
そして、供給される原料ガスが燃料ガス生成部にて改質処理されて燃料ガスとして生成されるまでの間には時間遅れが生じることになるので、燃料ガス生成部から内燃機関に供給される燃料ガスを貯留する貯留部を設けて、内燃機関の負荷が変動しても、負荷に応じた燃料ガスを内燃機関に供給できるようにすることになる。
つまり、内燃機関の負荷が急増した際には、貯留部に予め貯留されている燃料ガスが内燃機関に供給され、かつ、内燃機関の負荷が急減した際には、燃料ガス生成部から供給される燃料ガスのうちの余剰分が貯留部に貯留されることになる。
【0005】
ちなみに、燃料ガス生成部から内燃機関に供給される燃料ガスを貯留する貯留部は、燃料ガス生成部と内燃機関とを接続する配管路のみにて形成することも可能であるが、一般には、燃料ガス生成部と内燃機関との間に、バッファタンクを設けることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/150600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来では、内燃機関の負荷が急増した際に対処するための十分な量の燃料ガスを、貯留部に貯留した上で、内燃機関の負荷が急減した際には、余剰の燃料ガスを貯留部に貯留するものであるから、貯留部の容量を大きくする必要があり、装置全体が大型化する不都合があった。
【0008】
つまり、例えば、貯留部の容量を大きくするためにバッファタンクを設ける場合には、バッファタンクの容量を大きくする必要があり、その結果、バッファタンクが大型化することにより、装置全体が大型化する不都合があった。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるようにしながらも、装置全体の小型化を図ることができる燃料ガス供給装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、重質炭化水素ガスである原料ガスを改質処理してメタンを主成分として含有する燃料ガスを生成する燃料ガス生成部と、当該燃料ガス生成部に前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、前記燃料ガスを消費する内燃機関とが設けられたものであって、その特徴構成は、
前記原料ガス供給部からの前記原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給制御部が、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量を求め、且つ、前記燃料ガス生成部から前記内燃機関に供給される前記燃料ガスを貯留する貯留部の実圧力を前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、前記運転目標圧力と前記実圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で目標供給量を求めて、前記原料ガスの供給量を前記目標供給量に制御するように構成されている点にある。
【0011】
尚、本発明における重質炭化水素ガスは、メタンに比べて分子量の大きなガス状の炭化水素であり、プロパン、ブタン、エタン、イソブタンを含むものである。また、主成分とは、主な有効成分の中で含有量の多い成分であり、特に50%を超えて含まれている必要があるものでもないし、含有量として最も多い成分である必要もない。但し、主成分として含有量が50%を超えて含まれていれば、より好ましく、含有量として50%を超えていない場合には、最も多い成分であることが好ましい。
【0012】
すなわち、内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量が求められ、その基準供給量を、燃料ガス生成部から内燃機関に供給される燃料ガスを貯留する貯留部の実圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、実圧力と運転目標圧力との差分値に基づいて補正して、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量の目標供給量が求められる。
そして、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量が、求められた目標供給量となるように制御される。
【0013】
ちなみに、基準供給量を、実圧力を運転目標圧力にすべく、運転目標圧力と実圧力との差分値に基づいて補正するとは、実圧力が運転目標圧力よりも低い場合には、基準供給量を増加側に補正し、かつ、実圧力が運転目標圧力よりも高い場合には、基準供給量を減少側に補正することを意味する。
尚、目標供給量を求めて原料ガスの供給量を制御することは、設定制御周期で繰り返し行われることになる。
【0014】
また、基準供給量を増加側や減少側に補正する際の補正値(補正供給量)は、所定の大きさの一定値とすることが可能であるが、制御の応答性を高める等のために、一般には、補正値(補正供給量)を、差分値(運転目標圧力と実圧力との差)が大きいほど、正側や負側に大きな値となるように定めることになる。
【0015】
このように、内燃機関の負荷が大きくなるほど多くなるように基準供給量を求めて、貯留部の実圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、運転目標圧力と実圧力との差分値に基づいて、基準供給量を補正する形態で目標供給量が求められることになるから、内燃機関の負荷が大きいときには、運転目標圧力が小さいため、貯留部には少な目の燃料ガスが貯留され、内燃機関の負荷が小さいときには、運転目標圧力が大きいため、貯留部には多い目の燃料ガスが貯留されることになる。
【0016】
つまり、内燃機関の負荷が大きいときには、その後、内燃機関の負荷が大きく急減することがあっても、内燃機関の負荷が大きく急増することがないから、内燃機関の負荷が大きく急減することに対処することを目的として、貯留部には少な目の燃料ガスを貯留させるようにする。
【0017】
これに対して、内燃機関の負荷が小さいときには、その後、内燃機関の負荷が大きく急増することがあっても、内燃機関の負荷が大きく急減することがないから、内燃機関の負荷が大きく急増することに対処することを目的として、貯留部には多い目の燃料ガスを貯留させるようにする。
【0018】
このように、内燃機関の負荷に合わせて貯留部に貯留する燃料ガスの貯留量を制御するものであるから、内燃機関の負荷が大きく急減する場合には、余剰の燃料ガスを、燃料ガスを少な目に貯留している貯留部に適切に貯留でき、かつ、内燃機関の負荷が大きく急増する場合には、燃料ガスを多い目に貯留している貯留部から燃料ガスを内燃機関に適切に供給することができるのである。
【0019】
換言すれば、内燃機関の負荷に合わせて貯留部に貯留する燃料ガスの貯留量を制御することによって、貯留部の容量を小さくしながらも、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるため、装置全体の小型化を図ることができる。
ちなみに、貯留部にバッファタンクを備えさせる場合においては、バッファタンクに貯留する燃料ガスの貯留量が制御されることによって、バッファタンクの容量を小さくしながらも、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるため、バッファタンクの小容量化によって、装置全体の小型化を図ることができる。
【0020】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置によれば、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるようにしながらも、装置全体の小型化を図ることができる。
【0021】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料ガス生成部が、前記改質処理として、水蒸気供給部から供給される水蒸気により水蒸気改質処理を実行するように構成され、
前記原料ガス供給制御部が、前記水蒸気供給部から供給される前記水蒸気の水蒸気圧力が前記運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合には、前記実圧力を前記運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、前記低目標圧力と前記実圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で前記目標供給量を求めるように構成されている点にある。
【0022】
すなわち、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合には、実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて基準供給量を補正する形態で目標供給量が求められる。
そして、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量が、求められた目標供給量となるように制御される。
【0023】
これにより、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合においても、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に所定通り供給して、燃料ガスを適正通り生成できることになる。
【0024】
説明を加えると、内燃機関に対する燃料ガスの供給圧力となる運転目標圧力は、通常運転状態の水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力よりも低く設定することになるが、水蒸気供給部が通常運転状態である水蒸気圧力に近い値に設定されることになる。
つまり、運転目標圧力は、通常運転状態の水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力に基づいて定めた基準蒸気圧力よりも低く設定することになるが、基準蒸気圧力に近い値に設定することになる。
これにより、運転目標圧力を高圧に維持させることによって、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できるようにすることになる。
【0025】
しかしながら、ボイラ等にて構成される水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力は、水蒸気供給部の運転状況に応じて変動することがあり、水蒸気圧力は、水蒸気供給部の通常運転状態では、基準蒸気圧力よりも高い状態を維持するものの、基準蒸気圧力よりも高くない状態を生じる虞がある。
【0026】
このような場合には、原料ガス供給制御部が、実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて、内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で求められる基準供給量を補正する形態で目標供給量を求めることになる。
尚、低目標圧力は、運転目標圧力に較べて、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できないものとなるが、内燃機関の運転を継続させることができる燃料ガスの圧力に基づいて設定されることになる。
【0027】
ちなみに、基準供給量を、実圧力を低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて補正するとは、実圧力が低目標圧力よりも低い場合には、基準供給量を増加側に補正し、かつ、実圧力が低目標圧力よりも高い場合には、基準供給量を減少側に補正することを意味する。
尚、目標供給量を求めて原料ガスの供給量を制御することは、設定制御周期で繰り返し行われることになる。
【0028】
また、基準供給量を増加側や減少側に補正する際の補正値(補正供給量)は、所定の大きさの一定値とすることが可能であるが、制御の応答性を高める等のために、一般には、補正値(補正供給量)を、差分値(運転目標圧力と実圧力との差)が大きいほど、正側や負側に大きな値となるように定めることになる。
【0029】
つまり、燃料ガス生成部の内部圧力は、貯留部の実圧力に近い圧力となるものであるから、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合において、貯留部の実圧力が運転目標圧力であると、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に所定通り供給できないものとなって、燃料ガスを適正通り生成できなくなり、内燃機関の運転を停止させる等の処置を講ずる事態を招くものとなる。
【0030】
そこで、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧よりも高くない場合においては、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つようにすることにより、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に供給して、燃料ガスを適正通り生成できるようにするのである。
【0031】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が低い場合にも、燃料ガスを適正通り生成することできる。
【0032】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記基準蒸気圧力が、前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定められている点にある。
【0033】
すなわち、運転目標圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることに合わせて、基準蒸気圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めるものであるから、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が基準蒸気圧力よりも高くなる状態を維持し易いものとなって、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つことを極力継続することができる。
【0034】
説明を加えると、例えば、基準蒸気圧力を、運転目標圧力における内燃機関の負荷が小さいときに対応する大きな値よりも大きな値とする一定圧力に定めることが考えられる。
しかしながら、この場合には、貯留部の実圧力が内燃機関の負荷が大きいときに対応する小さな値の運転目標圧力に保たれているときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、運転目標圧力よりも十分に高いのにも拘わらず、基準蒸気圧力よりも高くない状態となって、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に不必要に移行することになる等、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つ状態から低目標圧力に保つ状態に移行し易くなる虞がある。
【0035】
そこで、運転目標圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることに合わせて、基準蒸気圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることによって、貯留部の実圧力が、内燃機関の負荷が大きいときに対応する小さな値の運転目標圧力に保たれているときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも十分に高いのにも拘わらず、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が基準蒸気圧力よりも高くない状態となることを極力回避して、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つようにして、内燃機関に対する燃料ガスの供給を良好に行えるようにする。
【0036】
つまり、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つようにすれば、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できるようにすることになる。
そこで、基準蒸気圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることによって、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に移行することを極力回避させるのである。
【0037】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に移行することを極力回避させて、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つ状態を極力維持できる。
【0038】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記低目標圧力が、前記負荷が大きくなるほど大きくなるように定められている点にある。
【0039】
すなわち、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど大きくなるように定めるものであるから、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力を十分に低い値とすることができるため、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなって、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができる。
【0040】
説明を加えると、燃料ガスを内燃機関に供給する圧力となる低目標圧力を、内燃機関が運転を継続することができる程度に十分に低い圧力に定めるにしても、燃料ガスを供給する圧力としては、内燃機関の負荷が大きいときの方が内燃機関の負荷が小さいときよりも大きくする必要がある。
【0041】
このような点に鑑みて、例えば、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きいときに対応する一定の圧力に定めることが考えられるが、この場合には、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力が内燃機関の負荷が大きいときの圧力となるため、内燃機関の負荷が小さいときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなって、装置の運転を停止させる事態となる虞がある。
【0042】
そこで、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど大きくなるように定めることにより、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力を十分に低い値とすることができるようにして、内燃機関の負荷が小さいときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなることを極力回避して、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができるのである。
【0043】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、水蒸気圧力が低目標圧力よりも小さくなることを極力回避して、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができる。
【0044】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料ガス生成部が、前記原料ガスを脱硫処理する脱硫装置と、前記脱硫装置にて脱硫処理された前記原料ガスを改質触媒により前記水蒸気改質してメタンに分解する分解反応を行い、メタンを含有する混合ガスを生成する混合ガス生成部、及び、当該混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素から触媒によりメタンを再合成する再合成部を備えた改質装置と、を備える形態に構成されている点にある。
【0045】
すなわち、燃料ガス生成部が、脱硫装置と改質装置とを備え、改質装置が混合ガス生成部と再合成部とを備えているから、混合ガス生成部において、原料ガスとしての重質炭化水素ガスを脱硫した後に分解する反応を促進させ、再合成部において、分解反応に基づき生成する混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素からメタンを再合成することができる。
【0046】
具体的には、混合ガス生成部において、重質炭化水素ガスを分解する反応を促進させることにより、生成する混合ガス中の重質炭化水素ガス濃度を大きく低下させることができる。この際、生成した混合ガスは反応熱により高温に達しており、生成した混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素濃度がやや高くなる。
その後、生成した混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素が、再合成部においてメタンを再合成する反応に供されるため、混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素濃度が低下して、メタンガス濃度が増加するため、メタン濃度の高い燃料ガスを得られる。
【0047】
つまり、混合ガス生成部で積極的に分解反応を行い、重質炭化水素ガスをより完全に分解することで、重質炭化水素の分解反応を進め、再合成部にて生成した水素と一酸化炭素とを再合成して、さらにメタンを得るから、内燃機関の運転に適したメタン濃度の高い燃料ガスが得られる。
【0048】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、内燃機関の運転に適したメタン濃度の高い燃料ガスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】燃料ガス供給装置のフロー図
図2】エンジン負荷と基準供給量との関係を示すグラフ
図3】エンジン負荷と運転目標圧力との関係を示すグラフ
図4】運転目標圧力と実圧力との差分値と補正供給量との関係を示すグラフ
図5】エンジン負荷と低目標圧力との関係を示すグラフ
図6】低目標圧力と実圧力との低圧側差分値と補正供給量との関係を示すグラフ
図7】エンジン負荷と運転目標圧力及び低目標圧力との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(燃料ガス供給装置の全体構成)
図1に示すように、燃料ガス供給装置には、重質炭化水素ガスを原料ガスFとして供給する原料ガス供給部1、原料ガス供給部1から原料ガス供給ライン2を通して供給される原料ガスを改質処理してメタンを主成分として含有する燃料ガスNを生成する燃料ガス生成部H、燃料ガスNを消費する内燃機関の一例としてのガスエンジンGE、燃料ガス生成部HとガスエンジンGEとの間に設けられて燃料ガスNを貯留するバッファタンクBT、及び、原料ガス供給部1からの原料ガスFの供給量を制御する原料ガス供給制御部CFが設けられている。
【0051】
原料ガス供給部1は、例えば、LPG(液化石油ガス)の運搬船の場合には、LPGを昇温して気化させたガスを原料ガスFとして供給するものであって、原料ガスFをガスタンク(図示せず)に貯留しながら、貯留した原料ガスFを適正圧力(例えば、0.90MPaG程度)にて供給するように構成されている。
原料ガス供給ライン2には、原料ガスFの供給量を調整する供給量制御弁3が設けられ、加えて、ガスエンジンGEの排熱を利用して原料ガスFを予熱する予熱部5が設けられている。つまり、ガスエンジンGEの排ガスを予熱部5に導く予熱流路6が設けられている。
【0052】
本実施形態においては、ガスエンジンGEは、LPG(液化石油ガス)の運搬船において、例えば、発電機や空調装置の補機を駆動することに用いられるが、燃料ガスNを、推進用のガスエンジン等の推進用の内燃機関に供給する形態で実施してもよい。
【0053】
バッファタンクBTに貯留された燃料ガスNをガスエンジンGEに供給する燃料ガス供給ライン7には、圧力調整部としての圧力調整弁8が設けられ、また、圧力調整弁8を制御する圧力制御部CAが設けられている。
また、燃料ガス生成部Hからの燃料ガスNをバッファタンクBTに供給する燃料ガス排出路L5には、燃料ガスNを冷却する燃料ガス冷却部9が設けられている。
【0054】
ちなみに、本実施形態においては、ガスエンジンGEに供給される燃料ガスNを貯留する貯留部Jが、燃料ガス排出路L5、バッファタンクBT、及び、燃料ガス供給ライン7における圧力調整弁8よりも上流側部分にて構成される。
【0055】
(燃料ガスの供給圧力制御)
圧力制御部CAは、圧力調整弁8を制御して、ガスエンジンEに供給する燃料ガスNの供給圧力KPを目標供給圧力MKに調整するものであって、図7に示すように、ガスエンジンEの負荷(以下、エンジン負荷Eと呼称)が大きくなるほど、目標供給圧力MKを大きく設定して、供給圧力KPを目標供給圧力MKに調整するように構成されている。
尚、図7においては、エンジン負荷Eを運転レート[%]として記載する。
【0056】
説明を加えると、圧力制御部CAには、エンジン負荷Eを示す情報、及び、燃料ガスNの供給圧力KPを示す情報が入力されている。
ちなみに、エンジン負荷Eを示す情報は、例えば、ガスエンジンEにて発電機を駆動する場合には、発電負荷に相当する情報であり、また、燃料ガスNの供給圧力KPを示す情報は、圧力調整弁8の下流側の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)にて検出される情報である。
【0057】
圧力制御部CAには、エンジン負荷Eと目標供給圧力MKとの関係を示す圧力関係情報が記憶されている。
そして、圧力制御部CAは、エンジン負荷Eと圧力関係情報とに基づいて、目標供給圧力MKを求め、供給圧力KPが目標供給圧力MKとなるように、圧力調整弁8の開度を制御するように構成されている。
【0058】
(燃料ガス生成部の詳細)
燃料ガス生成部Hには、改質装置10及び脱硫装置20が装備されている。
改質装置10が、原料ガスFの分解反応を行い、メタンを含有する混合ガスを生成する混合ガス生成部11と、原料ガスFの分解反応に基づき生成する混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素からメタンを再合成する再合成部12とを備える形態に構成されている。
【0059】
そして、脱硫装置20が、改質装置10の混合ガス生成部11に供給される重質炭化水素ガスを脱硫処理するように構成されている。
すなわち、予熱部5にて予熱された原料ガスFを、脱硫装置20を通過させて改質装置10の混合ガス生成部11に供給する原料ガス供給路L1が設けられている。
【0060】
原料ガス供給路L1のうちの、脱硫装置20にて脱硫される前の原料ガスFを流動させる供給路部分が、再合成部12における混合ガス生成部11から供給される混合ガスが通流する熱交換部11bを経由させる状態で設けられて、脱硫装置20にて脱硫される前の原料ガスFを混合ガス生成部11から供給される混合ガスと熱交換させて昇温させるように構成されている。
また、原料ガス供給路L1のうちの、脱硫装置20にて脱硫された後の原料ガスFを流動させる供給路部分が、混合ガス生成部11に接続される状態で設けられている。
【0061】
また、混合ガス生成部11で生成した混合ガスの一部を、原料ガス供給路L1に返送するリサイクル路L4が設けられている。つまり、混合ガス生成部11で生成した混合ガスには、水素が含まれているから、混合ガスの一部が、脱硫装置20における脱硫処理のために、リサイクル路L4を通して原料ガス供給路L1に返送するように構成されている。
ちなみに、再合成部12からの燃料ガスNが、上述の如く、燃料ガス排出路L5を通してバッファタンクBTに導かれることになり、かつ、燃料ガス冷却部9が、燃料ガスNを冷却して凝縮水を除去するように構成されている。
【0062】
さらに、原料ガス供給路L1のうちの、脱硫装置20にて脱硫される前の原料ガスFを流動させる供給路部分には、上流側から順に、上述したリサイクル路L4からリサイクルされる混合ガスをリサイクルガスとして添加する混合ガス添加部30と、リサイクル路L4に返送されたリサイクルガスを混合した原料ガスFに対して改質処理用の水蒸気を混合する水蒸気混合部50とが備えられている。
水蒸気混合部50には、ボイラ等から構成される水蒸気供給部40が接続されて、水蒸気供給部40から供給される水蒸気が原料ガスFに対して混合されるように構成されている。
【0063】
(改質装置の詳細)
改質装置10は、混合ガス生成部11を上部に備え且つ再合成部12を下部に備える状態で一体形成されている。
混合ガス生成部11には、脱硫装置20にて脱硫された原料ガスFを受け入れて改質触媒による改質処理(水蒸気改質処理)を行う断熱反応容器11Aが備えられている。
断熱反応容器11Aの内部には、改質触媒が充填されており、断熱反応容器11Aの内部が、改質処理(水蒸気改質処理)に適した所定の温度、圧力に管理されている。
【0064】
混合ガス生成部11における断熱反応容器11Aの上方入口部10aには、原料ガス供給路L1が接続され、脱硫装置20にて脱硫された原料ガスFが、原料ガス供給路L1を通して断熱反応容器11Aの上方入口部10aに供給され、当該上方入口部10aから断熱反応容器11Aの内部に供給されるように構成されている。
【0065】
そして、混合ガス生成部11が、原料ガスFとしての液化石油ガス(LPG)と水蒸気とによる水蒸気改質処理により、メタンを主成分とする混合ガスを生成するように構成されている。
【0066】
断熱反応容器11Aに充填する改質触媒としては、たとえば、ニッケル系あるいは貴金属系の低温水蒸気改質触媒が利用でき、具体的には、たとえば、微細孔を有する非導電性多孔質体の表面に、パラジウム、銀、ニッケル、コバルトおよび銅の群から選ばれた1種の金属の膜を被着したものが好適に用いられる。
【0067】
また、混合ガス生成部11における側壁部の下方側の下方排出部10bには、上述したリサイクル路L4が接続され、混合ガス生成部11内で生成した混合ガスの一部が、下方排出部10bから取り出されて、原料ガス供給路L1に設けられた混合ガス添加部30に導かれるように構成されている。
【0068】
再合成部12には、混合ガス生成部11における断熱反応容器11Aの内部と連通する上下姿勢の多数のチューブ状反応部11aが、水平方向に沿って並ぶ状態で設けられ、チューブ状反応部11aの内部には、触媒が充填されている。
【0069】
そして、混合ガス生成部11で形成された混合ガスが、断熱反応容器11Aの内部から多数のチューブ状反応部11a内を下方向に向かって通流して、チューブ状反応部11aの下端部で集合し、その後、混合ガス生成部11の下端部に形成された下方出口部10cを通して燃料ガス排出路L5に排出されるように構成されている。
【0070】
また、脱硫装置20にて脱硫される前の原料ガスFを混合ガス生成部11から供給される混合ガスと熱交換させて昇温させるための、上述の熱交換部11bが、多数のチューブ状反応部11aの上側部分を利用する形態で形成されている。
つまり、再合成部12の外壁とチューブ状反応部11aとの間、及び、隣接するチューブ状反応部11a同士の間に、相互に連通する空間が形成されている。なお、この空間は、断熱反応容器11Aの内部とは連通しないように構成されている。
【0071】
そして、熱交換部11bは、再合成部12の外壁とチューブ状反応部11aとの間及び隣接するチューブ状反応部11a同士の間の空間を通して、原料ガス供給路L1を通流して脱硫装置20に向けて流動する脱硫される前の原料ガスFを流動させることにより、原料ガスFを昇温するように構成されている。
【0072】
つまり、チューブ状反応部11aの内部を下方向に通流する比較的高温の混合ガスと、上述の熱交換部11bの空間内を上方向に通流する比較的低温の原料ガスFとが、相互に対向流とする状態で流動して、熱交換を行うように構成されている。
尚、上述の熱交換部11bの空間は、熱交換路L2として機能することになり、この熱交換路L2は、原料ガスFを改質装置10に供給するものであるから、原料ガス供給路L1の一部としても機能することになる。
【0073】
尚、再合成部12のチューブ状反応部11aに充填する触媒として、たとえば、ニッケル系あるいは貴金属系の低温水蒸気改質触媒が充填され、具体的には、たとえば、微細孔を有する非導電性多孔質体の表面に、パラジウム、銀、ニッケル、コバルトおよび銅の群から選ばれた1種の金属の膜を被着した改質触媒が充填されている。
【0074】
また、再合成部12における熱交換部11bの下方側には、チューブ状反応部11aの下方側部分を囲繞する形態で内部冷却部11cが形成されている。
つまり、内部冷却部11cが、再合成部12の外壁とチューブ状反応部11aとの間及び隣接するチューブ状反応部11a同士の間の空間を通して、冷却用の水を流動させて水蒸気を生成するように構成されている。
【0075】
(脱硫装置の詳細)
改質装置10の再合成部12の熱交換部11bから排出された水蒸気を含む原料ガスFは、脱硫装置20を通流して脱硫処理されることになる。尚、原料ガス供給路L1における熱交換部11bの熱交換路L2から脱硫装置20に至るまでの流路部分を、脱硫路L3と呼称する。
脱硫装置20は、脱硫触媒を充填した脱硫反応容器を備え、脱硫路L3が脱硫装置20の上部に接続される。
【0076】
脱硫触媒としては、たとえば、ニッケル−モリブデン系、コバルトモリブデン系触媒と酸化亜鉛との組み合わせなど、メルカプタン類化合物を硫化水素まで還元するとともに吸着除去可能なものが好適に用いられる。
脱硫装置20を経由した水蒸気を含む原料ガスFは、原料ガス供給路L1を通して混合ガス生成部11に導入される。
【0077】
(原料ガスの処理のまとめ)
原料ガス供給部1から供給される原料ガスFは、予熱部5にてガスエンジンGEからの高温の排ガスにより予熱され、リサイクルガス及び水蒸気が添加される。その後、原料ガスFは、再合成部12の一部を利用して構成された熱交換部11bによる加熱により、さらに昇温する。
昇温した原料ガスFは、再合成部12の上部から脱硫路L3に排出され、脱硫路L3を通して脱硫装置20に供給されて、脱硫処理される。
【0078】
脱硫装置20にて脱硫された後の原料ガスFは、改質装置10の混合ガス生成部11の上方入口部10aから混合ガス生成部11内に流入して、水蒸気改質処理により、重質炭化水素ガスを分解する反応により、重質炭化水素ガス濃度を大きく低下させた混合ガスとして生成される。
生成された混合ガスは反応熱により高温(例えば、450℃を超えて520℃以下)に達しており、混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素濃度はやや高くなる。
【0079】
次に、混合ガス生成部11から排出される混合ガスは、再合成部12のチューブ状反応部11aを通流して、熱交換路L2を通流する比較的低温の原料ガスFに熱を与えることにより冷却される。そして、当該混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素が、当該チューブ状反応部11a内の触媒によりメタンに再合成される。
【0080】
その後、メタンの再合成が進行し混合ガスが燃料ガスNとなり、再合成部12の下方出口部10cから燃料ガス排出路L5に排出されて、冷却部9にて冷却された後、バッファタンクBTを経由してガスエンジンGEに供給される。
【0081】
(原料ガスの供給制御)
原料ガス供給制御部CFが、エンジン負荷Eが大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量M1を求め(図2参照)、且つ、燃料ガス生成部HからガスエンジンGEに供給される燃料ガスNを貯留する貯留部Jの実圧力RPをエンジン負荷Eが大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力MPにすべく、実圧力RPと運転目標圧力MPとの差分値SPに基づいて基準供給量M1を補正する形態で目標供給量MFを求めるように構成されている。
そして、原料ガス供給制御部CFが、供給量制御弁3の開度を調節して、原料ガスFの供給量を目標供給量MFに制御するように構成されている。
以下、基準供給量M1を実圧力RPと運転目標圧力MPとの差分値SPに基づいて補正して目標供給量MFを求め、原料ガスFの供給量を求めた目標供給量MFに制御する処理を、基準運転処理と略称する。
【0082】
また、原料ガス供給制御部CFが、水蒸気供給部40から供給される水蒸気の水蒸気圧力JPが運転目標圧力MPよりも高い基準蒸気圧力KPよりも高くない場合には、実圧力RPを運転目標圧力MPよりも低い低目標圧力LPにすべく、タンク内部圧TPと低目標圧力LPとの低圧側差分値SLに基づいて基準供給量M1を補正する形態で目標供給量MFを求めるように構成されている。
そして、原料ガス供給制御部CFが、供給量制御弁3の開度を調節して、原料ガスFの供給量を目標供給量MFに制御するように構成されている。
以下、基準供給量M1を実圧力RPと低目標圧力LPとの差分値SPに基づいて補正して目標供給量MFを求め、原料ガスFの供給量を求めた目標供給量MFに制御する処理を、補助運転処理と略称する。
【0083】
本実施形態においては、貯留部Jの実圧力RPとして、バッファタンクBTの内部圧であるタンク圧力TPを圧力センサ(図示せず)にて検出して、検出したタンク圧力TPを原料ガス供給部CFに入力するように構成されている。
また、水蒸気供給部40から供給される水蒸気の水蒸気圧力JPとして、水蒸気供給部40から水蒸気混合部50に供給される水蒸気の圧力を圧力センサ(図示せず)にて検出して、検出した水蒸気圧力JPを原料ガス供給部CFに入力するように構成されている。
【0084】
また、エンジン負荷Eを示す情報は、例えば、ガスエンジンEにて発電機を駆動する場合には、発電負荷に相当する情報であり、エンジン負荷Eを示す情報が、原料ガス供給部CFに入力されるように構成されている。
【0085】
(基準運転処理の詳細)
原料ガス供給制御部CFには、各種の情報を記憶する記憶部Dが接続され、この記憶部Dには、エンジン負荷Eと基準供給量M1との関係を示す負荷関連情報(図2参照)、エンジン負荷Eと運転目標圧力MPとの関係を示す圧力関連情報(図3参照)、及び、上述した差分値PSと補正供給量M2との関係を示す差分値関連情報(図4参照)が記憶されている。
【0086】
ちなみに、差分値PSと差分値関連情報(図4参照)とに基づいて求められ補正供給量M2は、タンク内圧力TP(実圧力RP)が運転目標圧力MPよりも高い場合には、負側の値と求められ、かつ、タンク内圧力TP(実圧力RP)が運転目標圧力MPよりも低いい場合には、正側の値と求められことになる。
また、補正供給量M2は、差分値PSの絶対値が大きいほど多くする状態で求められることになる。
【0087】
本実施形態においては、タンク内圧力TP(実圧力RP)から運転目標圧力MPを減算した正負を有する値を差分値SPとして求め、その差分値SPと差分値関連情報(図4参照)とに基づいて正負を有する補正供給量M2を求めるように構成されている。
【0088】
従って、原料ガス供給制御部CFは、基準運転処理においては、エンジン負荷Eを示す情報と負荷関連情報とに基づいて、基準供給量M1を求め、エンジン負荷Eを示す情報と圧力関連情報とに基づいて運転目標圧力MPを求め、さらに、運転目標圧力MPとタンク内部圧TPとから差分値PSを求め、差分値PSと差分値関連情報とに基づいて、補正供給量M2を求める。
そして、原料ガス供給制御部CFは、基準供給量M1と補正供給量M2とを加算して目標供給量MFを求め、供給量制御弁3の開度を調節して、原料ガスFの供給量を目標供給量MFに制御することになる。
【0089】
このように、エンジン負荷Eが大きいときには、運転目標圧力MPが小さいため、バッファタンクBTには少な目の燃料ガスNが貯留され、エンジン負荷Eが小さいときには、運転目標圧力MPが大きいため、バッファタンクBTには多い目の燃料ガスNが貯留されることになるから、バッファタンクBTの容量を小さくしながらも、エンジン負荷Eの急増や急減に適切に対処できる。
ちなみに、バッファタンクBTの容量を十分に小さくすると、エンジン負荷Eが急減した際に、燃料ガスNを外部に排出することになるが、エンジン負荷Eが大きいときの運転目標圧力MPを低く設定するものであるから、燃料ガスNの外部排出量を少なくできる。
【0090】
(補助運転処理の詳細)
上述した記憶部Dに、エンジン負荷Eと低目標圧力LPとの関係を示す低圧力関連情報(図5参照)、及び、上述した低圧側差分値SLと補正供給量M2との関係を示す低圧側差分値関連情報(図6参照)が記憶されている。
【0091】
ちなみに、低圧側差分値SLと低圧側差分値関連情報(図6参照)とに基づいて求められる補正供給量M2は、タンク内圧力TP(実圧力RP)が運転目標圧力MPよりも高い場合には、負側の値と求められ、かつ、タンク内圧力TP(実圧力RP)が運転目標圧力MPよりも低い場合には、正側の値と求められことになる。
また、補正供給量M2は、差分値SLの絶対値が大きいほど多くする状態で求められることになる。
【0092】
本実施形態においては、タンク内圧力TP(実圧力RP)から低目標圧力LPを減算した正負を有する値を低圧側差分値SLとして求め、その低圧側差分値SLと低圧側差分値関連情報(図6参照)とに基づいて正負を有する補正供給量M2を求めるように構成されている。
【0093】
尚、本実施形態においては、差分値SPの単位量の変化に対する補正供給量M2の変化量に較べて、低圧側差分値SLの単位量の変化に対する補正供給量M2の変化量を小さく設定するように構成するが、差分値SPの単位量の変化に対する補正供給量M2の変化量と低圧側差分値SLの単位量の変化に対する補正供給量M2の変化量とが同じ量になるように構成してもよい。
【0094】
従って、原料ガス供給制御部CFは、補助運転処理においては、エンジン負荷Eを示す情報と負荷関連情報とに基づいて、基準供給量M1を求め、エンジン負荷Eを示す情報と低圧力関連情報とに基づいて低目標圧力LPを求め、さらに、低目標圧力LPとタンク内部圧TPとから低圧側差分値SLを求め、低圧側差分値SLと低圧側差分値関連情報(図6参照)とに基づいて、補正供給量M2を求める。
そして、原料ガス供給制御部CFは、基準供給量M1と補正供給量M2とを加算して目標供給量MFを求め、供給量制御弁3の開度を調節して、原料ガスFの供給量を目標供給量MFに制御する。
【0095】
(原料ガスの供給制御の補足説明)
上述の如く、原料ガス供給制御部CFが、基準運転処理に加えて補助運転処理を行うことによって、水蒸気圧力JPが変動しても、ガスエンジンGEに対して燃料ガスNを供給する状態を継続することができる。
【0096】
例えば、図7において、エンジン負荷Eが、時間経過に伴って、漸次増大すると仮定した場合において、水蒸気圧力JPが、例示する如く、時間経過に伴って漸次減少した場合を想定すると、水蒸気圧力JPが基準蒸気圧力KPより高い場合には、タンク内圧力TP(実圧力RP)を運転目標圧力MPに制御する基準運転処理が実行される。
【0097】
その後、水蒸気圧力JPが基準蒸気圧力KPより高くない場合に移行すると、基準運転処理から、タンク内圧力TP(実圧力RP)を低目標圧力LPに制御する補助運転処理に移行することになる。
そして、補助運転処理が実行されているときに、水蒸気圧力JPが基準蒸気圧力KPより高い場合に復帰すると、補助運転処理から、タンク内圧力TP(実圧力RP)を運転目標圧力MPに制御する基準運転処理に復帰することになる。
【0098】
〔別実施形態〕
以下別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、LPG船に搭載した内燃機関としてのガスエンジンGEに燃料ガスNを供給する場合について例示したが、本発明の燃料ガス供給装置は、その他の種々の目的で装備される内燃機関に対する燃料ガスNの供給に適用できるものである。
【0099】
(2)上記実施形態では、燃料ガス生成部Hが、再合成部12を備える改質装置10を装備する場合を例示したが、改質装置10として再合成部12を備えない形態のものを装備させる等、燃料ガス生成部Hの具体構成は各種変更できる。
【0100】
(3)上記実施形態では、貯留部Jに、バッファタンクBTを装備する場合を例示したが、バッファタンクBTを省略する形態で貯留部Jを構成してもよい。
【0101】
(4)上記実施形態では、燃料ガスNをガスエンジンGEに供給する目標供給圧力MKが、エンジン負荷Eが大きくなるほど大きくする場合を例示したが、圧力を一定に制御するガバナ等を用いて、目標供給圧力MKを一定圧力に制御する形態で実施してもよい。
この場合には、低目標圧力LPを目標供給圧力MKよりも高い一定の圧力に設定することになる。
【0102】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 原料ガス供給部
10 改質装置
11 混合ガス生成部
12 再合成部
CF 原料ガス供給制御部
GE 内燃機関
H 燃料ガス生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7