【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、重質炭化水素ガスである原料ガスを改質処理してメタンを主成分として含有する燃料ガスを生成する燃料ガス生成部と、当該燃料ガス生成部に前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、前記燃料ガスを消費する内燃機関とが設けられたものであって、その特徴構成は、
前記原料ガス供給部からの前記原料ガスの供給量を制御する原料ガス供給制御部が、前記内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量を求め、且つ、前記燃料ガス生成部から前記内燃機関に供給される前記燃料ガスを貯留する貯留部の実圧力を前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、前記運転目標圧力と前記実圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で目標供給量を求めて、前記原料ガスの供給量を前記目標供給量に制御するように構成されている点にある。
【0011】
尚、本発明における重質炭化水素ガスは、メタンに比べて分子量の大きなガス状の炭化水素であり、プロパン、ブタン、エタン、イソブタンを含むものである。また、主成分とは、主な有効成分の中で含有量の多い成分であり、特に50%を超えて含まれている必要があるものでもないし、含有量として最も多い成分である必要もない。但し、主成分として含有量が50%を超えて含まれていれば、より好ましく、含有量として50%を超えていない場合には、最も多い成分であることが好ましい。
【0012】
すなわち、内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で基準供給量が求められ、その基準供給量を、燃料ガス生成部から内燃機関に供給される燃料ガスを貯留する貯留部の実圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、実圧力と運転目標圧力との差分値に基づいて補正して、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量の目標供給量が求められる。
そして、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量が、求められた目標供給量となるように制御される。
【0013】
ちなみに、基準供給量を、実圧力を運転目標圧力にすべく、運転目標圧力と実圧力との差分値に基づいて補正するとは、実圧力が運転目標圧力よりも低い場合には、基準供給量を増加側に補正し、かつ、実圧力が運転目標圧力よりも高い場合には、基準供給量を減少側に補正することを意味する。
尚、目標供給量を求めて原料ガスの供給量を制御することは、設定制御周期で繰り返し行われることになる。
【0014】
また、基準供給量を増加側や減少側に補正する際の補正値(補正供給量)は、所定の大きさの一定値とすることが可能であるが、制御の応答性を高める等のために、一般には、補正値(補正供給量)を、差分値(運転目標圧力と実圧力との差)が大きいほど、正側や負側に大きな値となるように定めることになる。
【0015】
このように、内燃機関の負荷が大きくなるほど多くなるように基準供給量を求めて、貯留部の実圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めた運転目標圧力にすべく、運転目標圧力と実圧力との差分値に基づいて、基準供給量を補正する形態で目標供給量が求められることになるから、内燃機関の負荷が大きいときには、運転目標圧力が小さいため、貯留部には少な目の燃料ガスが貯留され、内燃機関の負荷が小さいときには、運転目標圧力が大きいため、貯留部には多い目の燃料ガスが貯留されることになる。
【0016】
つまり、内燃機関の負荷が大きいときには、その後、内燃機関の負荷が大きく急減することがあっても、内燃機関の負荷が大きく急増することがないから、内燃機関の負荷が大きく急減することに対処することを目的として、貯留部には少な目の燃料ガスを貯留させるようにする。
【0017】
これに対して、内燃機関の負荷が小さいときには、その後、内燃機関の負荷が大きく急増することがあっても、内燃機関の負荷が大きく急減することがないから、内燃機関の負荷が大きく急増することに対処することを目的として、貯留部には多い目の燃料ガスを貯留させるようにする。
【0018】
このように、内燃機関の負荷に合わせて貯留部に貯留する燃料ガスの貯留量を制御するものであるから、内燃機関の負荷が大きく急減する場合には、余剰の燃料ガスを、燃料ガスを少な目に貯留している貯留部に適切に貯留でき、かつ、内燃機関の負荷が大きく急増する場合には、燃料ガスを多い目に貯留している貯留部から燃料ガスを内燃機関に適切に供給することができるのである。
【0019】
換言すれば、内燃機関の負荷に合わせて貯留部に貯留する燃料ガスの貯留量を制御することによって、貯留部の容量を小さくしながらも、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるため、装置全体の小型化を図ることができる。
ちなみに、貯留部にバッファタンクを備えさせる場合においては、バッファタンクに貯留する燃料ガスの貯留量が制御されることによって、バッファタンクの容量を小さくしながらも、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるため、バッファタンクの小容量化によって、装置全体の小型化を図ることができる。
【0020】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置によれば、内燃機関の負荷の急増や急減に適切に対処できるようにしながらも、装置全体の小型化を図ることができる。
【0021】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料ガス生成部が、前記改質処理として、水蒸気供給部から供給される水蒸気により水蒸気改質処理を実行するように構成され、
前記原料ガス供給制御部が、前記水蒸気供給部から供給される前記水蒸気の水蒸気圧力が前記運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合には、前記実圧力を前記運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、前記低目標圧力と前記実圧力との差分値に基づいて前記基準供給量を補正する形態で前記目標供給量を求めるように構成されている点にある。
【0022】
すなわち、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合には、実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて基準供給量を補正する形態で目標供給量が求められる。
そして、原料ガス供給部から燃料ガス生成部に供給される原料ガスの供給量が、求められた目標供給量となるように制御される。
【0023】
これにより、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合においても、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に所定通り供給して、燃料ガスを適正通り生成できることになる。
【0024】
説明を加えると、内燃機関に対する燃料ガスの供給圧力となる運転目標圧力は、通常運転状態の水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力よりも低く設定することになるが、水蒸気供給部が通常運転状態である水蒸気圧力に近い値に設定されることになる。
つまり、運転目標圧力は、通常運転状態の水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力に基づいて定めた基準蒸気圧力よりも低く設定することになるが、基準蒸気圧力に近い値に設定することになる。
これにより、運転目標圧力を高圧に維持させることによって、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できるようにすることになる。
【0025】
しかしながら、ボイラ等にて構成される水蒸気供給部からの水蒸気の水蒸気圧力は、水蒸気供給部の運転状況に応じて変動することがあり、水蒸気圧力は、水蒸気供給部の通常運転状態では、基準蒸気圧力よりも高い状態を維持するものの、基準蒸気圧力よりも高くない状態を生じる虞がある。
【0026】
このような場合には、原料ガス供給制御部が、実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて、内燃機関の負荷が大きくなるほど原料ガス供給量を多くする形態で求められる基準供給量を補正する形態で目標供給量を求めることになる。
尚、低目標圧力は、運転目標圧力に較べて、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できないものとなるが、内燃機関の運転を継続させることができる燃料ガスの圧力に基づいて設定されることになる。
【0027】
ちなみに、基準供給量を、実圧力を低目標圧力にすべく、低目標圧力と実圧力との差分値に基づいて補正するとは、実圧力が低目標圧力よりも低い場合には、基準供給量を増加側に補正し、かつ、実圧力が低目標圧力よりも高い場合には、基準供給量を減少側に補正することを意味する。
尚、目標供給量を求めて原料ガスの供給量を制御することは、設定制御周期で繰り返し行われることになる。
【0028】
また、基準供給量を増加側や減少側に補正する際の補正値(補正供給量)は、所定の大きさの一定値とすることが可能であるが、制御の応答性を高める等のために、一般には、補正値(補正供給量)を、差分値(運転目標圧力と実圧力との差)が大きいほど、正側や負側に大きな値となるように定めることになる。
【0029】
つまり、燃料ガス生成部の内部圧力は、貯留部の実圧力に近い圧力となるものであるから、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧力よりも高くない場合において、貯留部の実圧力が運転目標圧力であると、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に所定通り供給できないものとなって、燃料ガスを適正通り生成できなくなり、内燃機関の運転を停止させる等の処置を講ずる事態を招くものとなる。
【0030】
そこで、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも高い基準蒸気圧よりも高くない場合においては、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つようにすることにより、水蒸気供給部から供給される水蒸気を燃料ガス生成部に供給して、燃料ガスを適正通り生成できるようにするのである。
【0031】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が低い場合にも、燃料ガスを適正通り生成することできる。
【0032】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記基準蒸気圧力が、前記負荷が大きくなるほど小さくなるように定められている点にある。
【0033】
すなわち、運転目標圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることに合わせて、基準蒸気圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めるものであるから、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が基準蒸気圧力よりも高くなる状態を維持し易いものとなって、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つことを極力継続することができる。
【0034】
説明を加えると、例えば、基準蒸気圧力を、運転目標圧力における内燃機関の負荷が小さいときに対応する大きな値よりも大きな値とする一定圧力に定めることが考えられる。
しかしながら、この場合には、貯留部の実圧力が内燃機関の負荷が大きいときに対応する小さな値の運転目標圧力に保たれているときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、運転目標圧力よりも十分に高いのにも拘わらず、基準蒸気圧力よりも高くない状態となって、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に不必要に移行することになる等、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つ状態から低目標圧力に保つ状態に移行し易くなる虞がある。
【0035】
そこで、運転目標圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることに合わせて、基準蒸気圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることによって、貯留部の実圧力が、内燃機関の負荷が大きいときに対応する小さな値の運転目標圧力に保たれているときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が運転目標圧力よりも十分に高いのにも拘わらず、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が基準蒸気圧力よりも高くない状態となることを極力回避して、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つようにして、内燃機関に対する燃料ガスの供給を良好に行えるようにする。
【0036】
つまり、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つようにすれば、燃料ガスを内燃機関の負荷変動に対する応答性の良い高圧状態で供給できるようにすることになる。
そこで、基準蒸気圧力を内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように定めることによって、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に移行することを極力回避させるのである。
【0037】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、貯留部の実圧力を運転目標圧力よりも低い低目標圧力に保つ状態に移行することを極力回避させて、貯留部の実圧力を運転目標圧力に保つ状態を極力維持できる。
【0038】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記低目標圧力が、前記負荷が大きくなるほど大きくなるように定められている点にある。
【0039】
すなわち、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど大きくなるように定めるものであるから、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力を十分に低い値とすることができるため、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなって、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができる。
【0040】
説明を加えると、燃料ガスを内燃機関に供給する圧力となる低目標圧力を、内燃機関が運転を継続することができる程度に十分に低い圧力に定めるにしても、燃料ガスを供給する圧力としては、内燃機関の負荷が大きいときの方が内燃機関の負荷が小さいときよりも大きくする必要がある。
【0041】
このような点に鑑みて、例えば、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きいときに対応する一定の圧力に定めることが考えられるが、この場合には、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力が内燃機関の負荷が大きいときの圧力となるため、内燃機関の負荷が小さいときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなって、装置の運転を停止させる事態となる虞がある。
【0042】
そこで、低目標圧力を、内燃機関の負荷が大きくなるほど大きくなるように定めることにより、内燃機関の負荷が小さいときの低目標圧力を十分に低い値とすることができるようにして、内燃機関の負荷が小さいときに、水蒸気供給部から供給される水蒸気の水蒸気圧力が、低目標圧力よりも小さくなることを極力回避して、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができるのである。
【0043】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、水蒸気圧力が低目標圧力よりも小さくなることを極力回避して、装置の運転を停止させる事態となることを極力回避することができる。
【0044】
本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成は、前記燃料ガス生成部が、前記原料ガスを脱硫処理する脱硫装置と、前記脱硫装置にて脱硫処理された前記原料ガスを改質触媒により前記水蒸気改質してメタンに分解する分解反応を行い、メタンを含有する混合ガスを生成する混合ガス生成部、及び、当該混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素から触媒によりメタンを再合成する再合成部を備えた改質装置と、を備える形態に構成されている点にある。
【0045】
すなわち、燃料ガス生成部が、脱硫装置と改質装置とを備え、改質装置が混合ガス生成部と再合成部とを備えているから、混合ガス生成部において、原料ガスとしての重質炭化水素ガスを脱硫した後に分解する反応を促進させ、再合成部において、分解反応に基づき生成する混合ガスに含まれる一酸化炭素及び水素からメタンを再合成することができる。
【0046】
具体的には、混合ガス生成部において、重質炭化水素ガスを分解する反応を促進させることにより、生成する混合ガス中の重質炭化水素ガス濃度を大きく低下させることができる。この際、生成した混合ガスは反応熱により高温に達しており、生成した混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素濃度がやや高くなる。
その後、生成した混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素が、再合成部においてメタンを再合成する反応に供されるため、混合ガス中に含まれる水素、一酸化炭素濃度が低下して、メタンガス濃度が増加するため、メタン濃度の高い燃料ガスを得られる。
【0047】
つまり、混合ガス生成部で積極的に分解反応を行い、重質炭化水素ガスをより完全に分解することで、重質炭化水素の分解反応を進め、再合成部にて生成した水素と一酸化炭素とを再合成して、さらにメタンを得るから、内燃機関の運転に適したメタン濃度の高い燃料ガスが得られる。
【0048】
要するに、本発明の燃料ガス供給装置の更なる特徴構成によれば、内燃機関の運転に適したメタン濃度の高い燃料ガスを得ることができる。