(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記泳動時間調整領域が、前記導入ゾーン又は前記検体濃縮ゾーンと、前記検体分離ゾーン又は前記副流路と、のそれぞれに設けられている請求項2に記載のマイクロ流路チップ。
所望の泳動用流路の形状に対応する形状の線状突起を有する成形型を用いて、所定深さの流路溝からなる前記泳動用流路を備えるマイクロ流路チップを作製するチップ作製工程と、
前記チップ作製工程で作製された前記マイクロ流路チップを用いて前記泳動用流路で所定の検体の電気泳動を行い、泳動時間を測定する泳動時間測定工程と、
前記泳動時間測定工程で取得された実泳動時間が予め定められた基準時間から外れている場合に、前記線状突起の少なくとも一部の領域における高さを調整する突起高さ調整工程と、
を含むマイクロ流路チップの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
泳動用流路を有するマイクロ流路チップにおいて、泳動時間の調整を容易に行えるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマイクロ流路チップは、
複数の試薬導入部と、
流路溝からなり、複数の前記試薬導入部どうしを接続する泳動用流路と、を備え、
前記泳動用流路の少なくとも1箇所に、当該泳動用流路における他の部位とは異なる溝深さを有するように形成された泳動時間調整領域が設けられている。
【0008】
この構成によれば、泳動用流路における少なくとも1箇所の部位の流路溝の溝深さを異ならせるだけで、泳動用流路の平面視形状(流路長さや流路幅)を変更することなく、泳動時間の調整を容易に行うことができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
複数の前記試薬導入部が、それぞれ電極が挿入される第一電極挿入部、第二電極挿入部、及び第三電極挿入部を含み、
前記泳動用流路が、前記第一電極挿入部と前記第二電極挿入部とを接続する主流路に、導入ゾーン、検体濃縮ゾーン、及び検体分離ゾーンをその順に有するとともに、前記主流路における前記検体分離ゾーンの上流側に副流路を介して前記第三電極挿入部が接続されており、
前記泳動時間調整領域が、前記導入ゾーン、前記検体濃縮ゾーン、前記検体分離ゾーン、及び前記副流路のいずれか1箇所以上に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、泳動用流路を流れる検体が、検体濃縮ゾーンで濃縮されてから検体分離ゾーンで分離されるので、微量の検体であっても高精度に分析を行うことができる。また、泳動時間調整領域の設置個所を導入ゾーン、検体濃縮ゾーン、検体分離ゾーン、及び副流路のいずれか1箇所以上とすることで、泳動時間の調整を適切に行うことができる。この場合において、泳動時間調整領域の設置個所を導入ゾーン、検体濃縮ゾーン、検体分離ゾーン、及び副流路のいずれか2箇所以上としても良く、このようにすれば、泳動用流路における異なるエリアの泳動時間をそれぞれ調整することができる。
【0012】
一態様として、
前記泳動時間調整領域が、前記導入ゾーン又は前記検体濃縮ゾーンと、前記検体分離ゾーン又は前記副流路と、のそれぞれに設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、検体が検体分離ゾーンに到達するまでの泳動時間と、検体が検体分離ゾーンを泳動する泳動時間とを、それぞれ調整することができる。
【0014】
一態様として、
前記泳動時間調整領域は、前記他の部位よりも浅い溝深さを有する領域であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、例えば成形型を用いた樹脂成形加工技術により流路溝を有するマイクロ流路チップを作製する場合に、成形型の一部を切削又は研磨することによって流路溝の溝深さを浅くでき、これにより、泳動時間の調整を容易に行うことができる。
【0016】
本発明に係るマイクロ流路チップの製造方法は、
所望の泳動用流路の形状に対応する形状の線状突起を有する成形型を用いて、所定深さの流路溝からなる前記泳動用流路を備えるマイクロ流路チップを作製するチップ作製工程と、
前記チップ作製工程で作製された前記マイクロ流路チップを用いて前記泳動用流路で所定の検体の電気泳動を行い、泳動時間を測定する泳動時間測定工程と、
前記泳動時間測定工程で取得された実泳動時間が予め定められた基準時間から外れている場合に、前記線状突起の少なくとも一部の領域における高さを調整する突起高さ調整工程と、
を含む。
【0017】
この構成によれば、チップ作製工程において、線状突起を有する成形型を用いて、所望形状の泳動用流路を有するマイクロ流路チップを作製することができる。その後、泳動時間測定工程を実行し、実泳動時間が予め定められた基準時間から外れていた場合には、突起高さ調整工程において、成形型の線状突起の少なくとも一部の領域における高さを調整する。すると、次のチップ作製工程で、流路溝からなる泳動用流路の少なくとも1箇所に、当該泳動用流路における他の部位とは異なる溝深さを有する領域を設けることができる。そして、その溝深さの異なる領域において、検体の泳動時間が調整されることになる。このように、既存の成形型を利用しつつ線状突起の突出高さを微調整するだけで、泳動時間の調整を容易に行うことができる。よって、泳動時間が予め定められた基準時間の範囲内に収まる均質なマイクロ流路チップを容易に得ることができる。
【0018】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
マイクロ流路チップ及びその製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のマイクロ流路チップ1は、
図1に示すように、樹脂基板10と、この樹脂基板10に接合される樹脂フィルム20とを備えている。樹脂基板10における樹脂フィルム20との接合面に流路溝11が形成されており、樹脂フィルム20で覆われた状態の流路溝11によって泳動用流路15が形成されている。
【0021】
樹脂基板10を構成する樹脂は、耐熱性及び透明性に優れたものを適宜選択することができる。樹脂基板10は、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂で構成することができる。
【0022】
樹脂基板10は、一方の面に流路溝11を有する。本実施形態では、流路溝11は分岐を有するように構成されている。流路溝11は、例えば、幅が1mm以下で、かつ、深さが0.01mm以上0.5mm以下であって良い。このようにすれば、微小なスケールでの実験等を行うことができる。流路溝11の一部は、樹脂基板10を貫通して他方の面に開口しており、当該開口を介して試薬導入部12や廃液貯留部14(
図2を参照)に連通している。
【0023】
樹脂基板10の外形形状及びサイズは、ハンドリング性や分析適合性(分析手法及び分析装置への適合性)等を考慮して適宜設定することができる。例えば四角形(正方形又は長方形)であれば、例えば一辺10mm以上200mm以下であることが好ましく、10mm以上100mm以下であることがより好ましい。樹脂基板10の外形形状は、その他の多角形、円形、又は楕円形等であっても良い。
【0024】
樹脂基板10は、成形型5(
図4等を参照)を用いた樹脂成形加工技術によって作製することができる。樹脂基板10は、例えば射出成形、トランスファー成形、又は押出成形によって作製することができる。好ましくは、射出成形によって樹脂基板10を作製することができる。
【0025】
樹脂フィルム20を構成する樹脂は、耐熱性及び透明性に優れたものを適宜選択することができる。樹脂フィルム20は、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂で構成することができる。なお、樹脂フィルム20を構成する樹脂は、樹脂基板10を構成する樹脂と同じ樹脂であっても良いし、異なる樹脂であっても良い。
【0026】
樹脂フィルム20の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01mm以上1mm以下とすることができる。0.01mm以上であることにより、接合時にシワ等が発生しにくく、十分に流路溝11を密閉することができる。また、1mm以下であることにより、樹脂基板10の凹凸への良好な追随性を得ることができる。
【0027】
樹脂基板10と樹脂フィルム20とは、樹脂基板10における流路溝11が形成された面と、樹脂フィルム20の一方の面とが接するように積層されている。樹脂フィルム20は、流路溝11を覆うように樹脂基板10に接合されている。こうして、樹脂基板10と樹脂フィルム20との間に、流路溝11からなるマイクロ流路(泳動用流路15)が形成される。このようなマイクロ流路チップ1は、例えばキャピラリー電気泳動等の化学分析用のマイクロ分析チップとして、好適に用いることができる。
【0028】
一例として、腫瘍マーカーの分析用のマイクロ流路チップ1における泳動用流路15を模式化したものを
図2に示す。これらの図に示すように、マイクロ流路チップ1は、複数の試薬導入部12と、複数の試薬導入部12どうしを接続する泳動用流路15とを備えている。本実施形態では、マイクロ流路チップ1は6つの試薬導入部12を備えている。以下では、それらを区別せずに言及する場合には「試薬導入部12」と総称し、それらについて特に区別して言及する場合には、
図2の表示に即して符号「12A」〜「12F」を付して説明するものとする。
【0029】
試薬導入部12は、筒状(例えば円筒状)の貯留槽として構成されている。試薬導入部12は、樹脂基板10における樹脂フィルム20との接合面とは反対側の面から突出するように設けられている。また、複数の試薬導入部12が、平面視で長方形状の樹脂基板10の長辺に沿って、等間隔で1列に並ぶように整列されている。
【0030】
試薬導入部12A,12B,12Fは、電気泳動用の緩衝液を導入するための部位である。試薬導入部12Dは、第一標識抗体液(例えば、DNA標識された腫瘍マーカー用抗体を含む液)を導入するための部位である。試薬導入部12C,12Eは、検体である腫瘍マーカーと第二標識抗体液(例えば、蛍光標識された腫瘍マーカー用抗体を含む液)との免疫反応液を導入するための部位である。
【0031】
複数の試薬導入部12のうちの一部(本例では、いずれも緩衝液が導入される試薬導入部12A、試薬導入部12B、及び試薬導入部12Fの計3つ)は、それぞれ電極が挿入される電極挿入部13となっている。本実施形態では、試薬導入部12Bにより第一電極挿入部13Aが構成され、試薬導入部12Fにより第二電極挿入部13Bが構成され、試薬導入部12Aにより第三電極挿入部13Cが構成されている。なお、本実施形態では、第一電極挿入部13A及び第三電極挿入部13Cには陰極が挿入され、第二電極挿入部13Bに陽極が挿入される。そして、これらの電極挿入部13どうしを接続するように泳動用流路15が設けられている。泳動用流路15は、主流路15Aと、当該主流路15Aに接続された副流路15Bとを含む。
【0032】
主流路15Aは、第一電極挿入部13Aである試薬導入部12Bと、第二電極挿入部13Bである試薬導入部12Fとを接続する流路である。副流路15Bは、第三電極挿入部13Cである試薬導入部12Aと、主流路15Aひいては第二電極挿入部13Bである試薬導入部12Fとを接続する流路である。また、試薬導入部12C,12D,12Eが、それぞれ接続流路を介して主流路15Aに接続されている。主流路15Aにおける第一電極挿入部13A側(試薬導入部12B側)を「上流側」と定義し、第二電極挿入部13B側(試薬導入部12F側)を「下流側」と定義すると、上流側から下流側に向かって、試薬導入部12D,12E,12C,12Aの順に接続されている。
【0033】
マイクロ流路チップ1は、複数の廃液貯留部14を備えている。本実施形態では、マイクロ流路チップ1は4つの廃液貯留部14を備えている。以下では、それらを区別せずに言及する場合には「廃液貯留部14」と総称し、それらについて特に区別して言及する場合には、
図2の表示に即して符号「14A」〜「14D」を付して説明するものとする。
【0034】
廃液貯留部14は、筒状(例えば円筒状)の貯留槽として構成されている。廃液貯留部14は、樹脂基板10における樹脂フィルム20との接合面とは反対側の面から突出するように設けられている。また、複数の廃液貯留部14が、等間隔で1列に並ぶように整列されて、複数の試薬導入部12の列と平行に配置されている。
【0035】
廃液貯留部14A,14Bは、試薬導入部12C,12Eからそれぞれ導入される免疫反応液のうちの余剰分を貯留するための部位(廃液だめ)である。廃液貯留部14Cは、試薬導入部12Bから導入される緩衝液のうちの余剰分を貯留するための部位(廃液だめ)である。廃液貯留部14Dは、試薬導入部12Dから導入される第一標識抗体液のうちの余剰分を貯留するための部位(廃液だめ)である。
【0036】
廃液貯留部14A〜14Dは、それぞれ接続流路を介して主流路15Aに接続されている。これらは、上流側から下流側に向かって、廃液貯留部14C,14D,14B,14Aの順に接続されている。より具体的には、廃液貯留部14Cは、試薬導入部12Bよりも下流側であって試薬導入部12Dよりも上流側の位置で主流路15Aに接続されている。廃液貯留部14Dは、試薬導入部12Dよりも下流側であって試薬導入部12Eよりも上流側の位置で主流路15Aに接続されている。廃液貯留部14Bは、試薬導入部12Eよりも下流側であって試薬導入部12Cよりも上流側の位置で主流路15Aに接続されている。廃液貯留部14Aは、試薬導入部12Cよりも下流側であって試薬導入部12Aよりも上流側の位置で主流路15Aに接続されている。
【0037】
本実施形態の泳動用流路15は、主流路15Aに、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、及び検体分離ゾーンZ3を有する。これらは、上流側から下流側に向かって、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、及び検体分離ゾーンZ3の順に設けられている。導入ゾーンZ1は、電気泳動用の緩衝液を各種の試薬よりも上流側から導入するゾーンであり、試薬導入部12Bから廃液貯留部14Cにかけて設けられている。検体濃縮ゾーンZ2は、免疫反応と等速電気泳動(isotachophoresis;ITP)とを利用して、検体である腫瘍マーカーを濃縮するゾーンであり、試薬導入部12Eから廃液貯留部14Aにかけて設けられている。等速電気泳動を行う場合には、第一電極挿入部13A(試薬導入部12B)と第二電極挿入部13B(試薬導入部12F)との間に電圧を印加する。検体分離ゾーンZ3は、キャピラリーゾーン電気泳動(capillary zone electrophoresis;CZE)を利用して検体である腫瘍マーカーを他の成分から分離するゾーンであり、試薬導入部12Aから試薬導入部12Fにかけて設けられている。キャピラリーゾーン電気泳動を行う場合には、第三電極挿入部13C(試薬導入部12A)と第二電極挿入部13B(試薬導入部12F)との間に電圧を印加する。
【0038】
また、泳動用流路15は、主流路15Aにおける検体分離ゾーンZ3の下流側に、検出ゾーンZ4をさらに有する。検出ゾーンZ4は、主流路15Aを泳動してきた検体を検出するゾーンであり、分析装置に装填された状態で、当該分析装置に具備された光検出部に対向するように設けられる。本実施形態の光検出部は、蛍光を検出可能に構成されている。
【0039】
また、泳動用流路15は、副流路15Bに、副流路ゾーンZ5をさらに有する。
【0040】
このような構成のマイクロ流路チップ1では、以下のようにして、検体である腫瘍マーカーの分析を行うことができる。各試薬の導入後、第一電極挿入部13Aと第二電極挿入部13Bとの間に電圧を印加すると、検体濃縮ゾーンZ2において、等速電気泳動の原理に従い、第一標識抗体(DNA標識された腫瘍マーカー用抗体)が第一電極挿入部13Aの方向に移動する。その後、腫瘍マーカーと第一標識抗体と第二標識抗体(蛍光標識された腫瘍マーカー用抗体)との免疫複合体が形成され、当該複合体が第二電極挿入部13Bの方向に移動して検体分離ゾーンZ3に到達する。本実施形態では、電圧を印加してから免疫複合体が検体分離ゾーンZ3に到達するまでの時間を“ハンドオフ時間”と言い、これは「泳動時間」の一例である。なお、未反応の(遊離の)第二標識抗体は、分子中に電荷を有さないため、その位置に留まり検体分離ゾーンZ3には到達しない。
【0041】
腫瘍マーカーと第一標識抗体と第二標識抗体との免疫複合体が検体分離ゾーンZ3に到達すると、電極の切り替えを行い、第三電極挿入部13Cと第二電極挿入部13Bとの間に電圧を印加する。免疫複合体及び未反応の(遊離の)第一標識抗体は、検体分離ゾーンZ3において、電荷及び分子サイズに応じたそれぞれの移動速度で、第二電極挿入部13Bの方向に移動する。そして、腫瘍マーカーを中核とするとともに蛍光色素を有する第二標識抗体を含む免疫複合体が検出ゾーンZ4に到達したときの蛍光強度のピーク面積から、腫瘍マーカーの濃度を測定することができる。なお、未反応の第一標識抗体は、分子中に蛍光色素を有さないため、検出ゾーンZ4に到達しても蛍光強度には影響せず、腫瘍マーカーの濃度測定には影響しない。本実施形態では、免疫複合体が検体分離ゾーンZ3に到達してから検出ゾーンZ4に到達するまでの時間を“ゾーン泳動時間”と言い、これも「泳動時間」の一例である。
【0042】
分析精度を高める観点からは、上述したハンドオフ時間やゾーン泳動時間は、予め定められた基準時間の範囲内に収まっていることが好ましい場合がある。なお、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間についての基準時間は、それぞれ、下限値と上限値とで規定される、所定幅を有する時間である。ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の少なくとも一方を基準時間の範囲内に収めるようにするため、本実施形態のマイクロ流路チップ1は、泳動用流路15の少なくとも1箇所に泳動時間調整領域18(
図9を参照)を有している。この泳動時間調整領域18は、泳動用流路15における他の部位とは異なる溝深さを有するように形成された領域であり、より具体的には泳動用流路15における他の部位よりも浅い溝深さを有する領域である。本実施形態では、泳動時間調整領域18は、泳動用流路15における他の部位と同じ溝幅を有し、かつ、他の部位よりも浅い溝深さを有するように形成されている。
【0043】
泳動時間調整領域18は、泳動用流路15のいずれか1箇所に設けられているだけでも良いが、泳動用流路15の2箇所以上に設けられていても良い。上述したように、泳動用流路15は、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、検体分離ゾーンZ3、及び検出ゾーンZ4を含む主流路15Aと、副流路ゾーンZ5を含む副流路15Bとを含んでいる。一例として、泳動時間調整領域18は、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、検体分離ゾーンZ3、及び副流路15B(副流路ゾーンZ5)のいずれか2箇所にそれぞれ設けられても良い。
【0044】
1つの態様として、泳動時間調整領域18は、導入ゾーンZ1又は検体濃縮ゾーンZ2と、検体分離ゾーンZ3又は副流路ゾーンZ5とに、それぞれ1箇所ずつ設けられていることが挙げられる。
【0045】
例えばハンドオフ時間が予め定められた基準時間よりも短い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を導入ゾーンZ1に設けることで、ハンドオフ時間を長くなるように調整することができる。導入ゾーンZ1の溝深さを浅くしてその断面積を小さくすることで、当該導入ゾーンZ1の抵抗が上昇して電圧分配が大きくなる。それに伴い、検体濃縮ゾーンZ2の電圧分配が相対的に小さくなるので、当該検体濃縮ゾーンZ2での流れが遅くなって、結果的にハンドオフ時間を長くすることができる。導入ゾーンZ1の泳動時間調整領域18における溝深さをより浅くするに従って、ハンドオフ時間をより長く調整することができる。こうして、ハンドオフ時間を基準時間の範囲内に収めることができる。なお、泳動時間調整領域18は、導入ゾーンZ1の全体に設けても良いし、導入ゾーンZ1の一部の領域だけに設けても良い。
【0046】
また、例えばハンドオフ時間が予め定められた基準時間よりも長い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を検体濃縮ゾーンZ2に設けることで、ハンドオフ時間を短くなるように調整することができる。検体濃縮ゾーンZ2の溝深さを浅くしてその断面積を小さくすることで、当該検体濃縮ゾーンZ2の抵抗が上昇して電圧分配が大きくなる。これにより、検体濃縮ゾーンZ2での流れが速くなって、結果的にハンドオフ時間を短くすることができる。検体濃縮ゾーンZ2の泳動時間調整領域18における溝深さをより浅くするに従って、ハンドオフ時間をより短く調整することができる。こうして、ハンドオフ時間を基準時間の範囲内に収めることができる。なお、泳動時間調整領域18は、検体濃縮ゾーンZ2の全体に設けても良いし、検体濃縮ゾーンZ2の一部の領域だけに設けても良い。
【0047】
また、例えばゾーン泳動時間が予め定められた基準時間よりも長い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を検体分離ゾーンZ3に設けることで、ゾーン泳動時間を短くなるように調整することができる。検体分離ゾーンZ3の溝深さを浅くしてその断面積を小さくすることで、当該検体分離ゾーンZ3の抵抗が上昇して電圧分配が大きくなる。これにより、検体分離ゾーンZ3での流れが速くなって、結果的にゾーン泳動時間を短くすることができる。検体分離ゾーンZ3の泳動時間調整領域18における溝深さをより浅くするに従って、ゾーン泳動時間をより短く調整することができる。こうして、ゾーン泳動時間を基準時間の範囲内に収めることができる。なお、泳動時間調整領域18は、検体分離ゾーンZ3の全体に設けても良いし、検体分離ゾーンZ3の一部の領域だけに設けても良い。
【0048】
また、例えばゾーン泳動時間が予め定められた基準時間よりも短い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を副流路ゾーンZ5に設けることで、ゾーン泳動時間を長くなるように調整することができる。副流路ゾーンZ5の溝深さを浅くしてその断面積を小さくすることで、当該副流路ゾーンZ5の抵抗が上昇して電圧分配が大きくなる。それに伴い、検体分離ゾーンZ3の電圧分配が相対的に小さくなるので、当該検体分離ゾーンZ3での流れが遅くなって、結果的にゾーン泳動時間を長くすることができる。副流路ゾーンZ5の泳動時間調整領域18における溝深さをより浅くするに従って、ゾーン泳動時間をより長く調整することができる。こうして、ゾーン泳動時間を基準時間の範囲内に収めることができる。なお、泳動時間調整領域18は、副流路ゾーンZ5の全体に設けても良いし、副流路ゾーンZ5の一部の領域だけに設けても良い。
【0049】
例えばハンドオフ時間が予め定められた基準時間よりも短く、かつ、ゾーン泳動時間が予め定められた基準時間よりも長い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を導入ゾーンZ1及び検体分離ゾーンZ3に設ける。このようにすることで、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方を基準時間の範囲内に収めることができる。また、例えばハンドオフ時間が予め定められた基準時間よりも長く、かつ、ゾーン泳動時間が予め定められた基準時間よりも短い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を検体濃縮ゾーンZ2及び副流路ゾーンZ5に設ける。このようにすることで、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方を基準時間の範囲内に収めることができる。
【0050】
また、例えばハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方がそれぞれ予め定められた基準時間よりも短い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を導入ゾーンZ1及び副流路ゾーンZ5に設ける。このようにすることで、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方を基準時間の範囲内に収めることができる。また、例えばハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方がそれぞれ予め定められた基準時間よりも長い場合には、浅溝の泳動時間調整領域18を検体濃縮ゾーンZ2及び検体分離ゾーンZ3に設ける。このようにすることで、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方を基準時間の範囲内に収めることができる。
【0051】
マイクロ流路チップ1の製造方法は、
図3に示すように、チップ作製工程と、泳動時間測定工程と、突起高さ調整工程とを含む。チップ作製工程及び泳動時間測定工程は、この順に必ず実行され、突起高さ調整工程は、泳動時間測定工程の後に当該泳動時間測定工程で得られた結果に依存して選択的に実行される。
【0052】
チップ作製工程は、流路溝11からなる泳動用流路15を備えるマイクロ流路チップ1を作製する工程である。
図4に示すように、チップ作製工程では、成形型5を用いた樹脂成形加工技術(本例では射出成型)により、マイクロ流路チップ1を作製する。本実施形態の成形型5は、線状突起52を有する第一金型51と、凹部55を有する第二金型54とを備えている。凹部55は、所望の樹脂基板10の外形形状に対応する形状に形成されている。線状突起52は、所望の泳動用流路15の平面視形状に対応する形状に形成されている。線状突起52は、初期段階では、部位によらずに一定の高さを有している。なお、ここで示した成形型5の構成はあくまで一例であり、その具体的構成は適宜変更することが可能である。
【0053】
チップ作製工程において、
図5に示すように、第一金型51と第二金型54とを型締めして形成されるキャビティ空間58に、ゲートから溶融樹脂を射出する。冷却後、型開きして樹脂基板10を取り出す。この樹脂基板10は、線状突起52の平面視形状に対応する形状を有し、所定深さの流路溝11からなる泳動用流路15を備える。その後、
図6に示すように、樹脂基板10における流路溝11が形成された方の面に樹脂フィルム20を貼り合わせることで、泳動用流路15を備えるマイクロ流路チップ1を作製する。なお、この時点では、マイクロ流路チップ1の泳動用流路15は、部位によらずに一定の溝深さを有している。
【0054】
泳動時間測定工程は、チップ作製工程で作製されたマイクロ流路チップ1を用いて泳動用流路15で所定の検体の電気泳動(キャピラリー電気泳動)を行い、泳動時間を測定する工程である。本実施形態では、上述した腫瘍マーカーを検体として、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方を測定する。
【0055】
その後、泳動時間測定工程で実測されたハンドオフ時間と、当該ハンドオフ時間について予め定められた基準時間とを比較する。また、泳動時間測定工程で実測されたゾーン泳動時間と、当該ゾーン泳動時間について予め定められた基準時間とを比較する。そして、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の少なくとも一方がそれぞれについての基準時間から外れている場合には、突起高さ調整工程を実行する。
【0056】
突起高さ調整工程は、成形型5(本例では第一金型51)の線状突起52の少なくとも一部の領域における高さを調整する工程である。本実施形態では、突起高さ調整工程において、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、検体分離ゾーンZ3、及び副流路ゾーンZ5の少なくとも1つに対応する領域の線状突起52の高さを調整する。ハンドオフ時間が基準時間から短い方向に外れていた場合には導入ゾーンZ1に対応する領域の線状突起52の高さを調整し、長い方向に外れていた場合には検体濃縮ゾーンZ2に対応する領域の線状突起52の高さを調整する。また、ゾーン泳動時間が基準時間から短い方向に外れていた場合には副流路ゾーンZ5に対応する領域の線状突起52の高さを調整し、長い方向に外れていた場合には検体分離ゾーンZ3に対応する領域の線状突起52の高さを調整する。
【0057】
本実施形態では、線状突起52の高さ調整は、
図7に示すように、線状突起52における突出する先端側を切削又は研磨することによって行う。これにより、突起高さ調整工程において、線状突起52は、その少なくとも一部の領域において突起高さが他の部位よりも低くなるように調整される。
【0058】
突起高さ調整工程が終了すると、
図3及び
図8に示すように、その成形型5を用いて、再度、チップ作製工程を実行する。このとき得られるマイクロ流路チップ1は、
図9に示すように、泳動用流路15の少なくとも1箇所に、当該泳動用流路15における他の部位よりも浅い溝深さを有する泳動時間調整領域18を具備するものとなる。その後、再度、泳動時間測定工程を行い、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間を再確認する。それらのうちの少なくとも一方が基準時間から外れていた場合には、再度、突起高さ調整工程とチップ作製工程と泳動時間測定工程とを繰り返す。そして、ハンドオフ時間及びゾーン泳動時間の両方が基準時間の範囲内に収まれば、最終的にマイクロ流路チップ1が完成したものとされる。
【0059】
以上説明したような製造方法(“泳動時間調整方法”と言うこともできる。)によれば、既存の成形型5を利用しつつ線状突起52の突出高さを微調整するだけで、ハンドオフ時間やゾーン泳動時間の調整を容易に行うことができる。高額な費用をかけて成形型5を作り直す必要がなく、コスト面で非常に有利である。よって、ハンドオフ時間やゾーン泳動時間が予め定められた基準時間の範囲内に収まる均質なマイクロ流路チップ1を、コストアップを招くことなく容易に製造することができる。
【0060】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、泳動時間調整領域18が、泳動用流路15における他の部位よりも浅い溝深さを有する領域として構成される例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば泳動時間調整領域18は、泳動用流路15における他の部位よりも深い溝深さを有する領域として構成されても良い。
【0061】
(2)上記の実施形態では、泳動時間調整領域18が導入ゾーンZ1又は検体濃縮ゾーンZ2と検体分離ゾーンZ3又は副流路ゾーンZ5とにそれぞれ1箇所ずつ設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば泳動時間調整領域18が、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、検体分離ゾーンZ3、及び副流路ゾーンZ5にそれぞれ設けられても良い。或いは、泳動時間調整領域18が、導入ゾーンZ1、検体濃縮ゾーンZ2、検体分離ゾーンZ3、及び副流路ゾーンZ5のうちのいずれか3箇所にそれぞれ設けられても良い。
【0062】
(3)上記の実施形態では、泳動用流路15が主流路15Aと副流路15Bとを含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば泳動用流路15が主流路15Aのみを含む直鎖型に構成されても良い。この場合、主流路15Aは、検体濃縮ゾーンZ2を有さずに検体分離ゾーンZ3を主体とするものとなる。泳動時間調整領域18は、その検体分離ゾーンZ3に設けられると好適である。
【0063】
(4)上記の実施形態では、チップ作製工程において、射出成型によってマイクロ流路チップ1を作製する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、チップ作製工程を例えばトランスファー成形又は押出成形等で実行しても良い。
【0064】
(5)上記の実施形態では、腫瘍マーカーの分析用のマイクロ流路チップ1を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、マイクロ流路チップ1を、他のあらゆる検体の分析のために用いても良い。その場合の分析条件は、検体の種別に応じて適宜設定されると良い。
【0065】
(6)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。