特許第6983112号(P6983112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983112
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】排気系部品締結構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20211206BHJP
【FI】
   F01N13/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-109375(P2018-109375)
(22)【出願日】2018年6月7日
(65)【公開番号】特開2019-210897(P2019-210897A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】河野 健太
(72)【発明者】
【氏名】畠山 由章
(72)【発明者】
【氏名】高原 亮策
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/010821(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0230962(US,A1)
【文献】 特表2011−511230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00− 1/24
F01N 5/00− 5/04
F01N 13/00−13/20
F16L 23/04−23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の排気系部品の第1のフランジと、
前記第1の排気系部品とは異なる第2の排気系部品の第2のフランジと、
締結力発生箇所を有し、前記締結力発生箇所で生じる力に応じて、前記第1および第2のフランジを径方向に締め付けて締結する締結部材と、を備える排気系部品締結構造であって、
前記第1および第2のフランジと、前記締結部材との間に接触部材を備え、
前記接触部材は、前記締結力発生箇所を挟んで2箇所に設けられており、
前記接触部材は、前記第1および第2のフランジの中心を基準として、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられている、排気系部品締結構造。
【請求項2】
前記締結部材は、前記第1および第2のフランジの外周に配置される、4箇所以上の外周締め付け部材を備え、
前記接触部材は、前記第1および第2のフランジの中心を基準として、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられた2箇所以上の前記外周締め付け部材の内周面に対応させて設けられている、請求項1に記載の排気系部品締結構造。
【請求項3】
前記接触部材は、変形可能な金属製の薄板である、請求項1または請求項2に記載の排気系部品締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気系部品締結構造に関する。詳しくは、締結部材が、第1の排気系部品の第1のフランジおよび第2の排気系部品の第2のフランジを径方向に締め付けて締結する構造である、排気系部品締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、締結部材としてのカップリングを用いて、内燃機関の第1の排気系部品のフランジおよび第2の排気系部品のフランジからなる一対のフランジを、径方向に締め付けて締結する締結構造が知られている。
このような締結構造において、特許文献1に示されるような、揺動可能に連結された複数の円弧状部材の端部同士をボルトにより連結する構造のカップリングを用いて、一対のフランジを締結する締結構造が知られている。
また、特許文献2には、カップリングを用いた締結構造において、車両内部の騒音を低減するために、一対のフランジと締結部材との間に、絶縁層を配置する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−344580号公報
【特許文献2】特開2006−170199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような締結構造においては、1つのボルトを締め込むことにより容易に締結できる構造を採用しているため、一対のフランジに対するカップリングの接触状態が、場所によって不均一となるという問題がある。具体的には、ボルトの締め込み部分、すなわち締結力発生箇所の周辺については、一対のフランジとカップリングとの接触力が高くなり、それ以外の部分では、接触力が低くなる。
特許文献2には、一対のフランジと締結部材との間に絶縁層を配置する構成が示されているが、この構成は、車両内部の騒音を低減することを目的としている構成であるため、一対のフランジのほぼ全周にわたって絶縁層が配置されている。したがって、締結力発生箇所を有するカップリングを用いた締結構造において、このような、一対のフランジのほぼ全周にわたって絶縁層を配置する構成を採用したとしても、一対のフランジに対するカップリングの接触状態を全周にわたって効果的に均等化することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一対のフランジに対するカップリングの接触状態を改善することにより、一対のフランジ同士の締結力の面内分布を改善することができる、排気系部品締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、第1の排気系部品(例えば、過給機のタービンハウジング10)の第1のフランジ(例えば、第1のフランジ11)と、前記第1の排気系部品とは異なる第2の排気系部品(例えば、触媒ケース20)の第2のフランジ(例えば、第2のフランジ21)と、締結力発生箇所(例えば、締結力発生箇所36)を有し、前記締結力発生箇所で生じる力に応じて、前記第1のフランジと前記第2のフランジを径方向に締め付けて締結する締結部材(例えば、カップリング30、60、70)と、を備える排気系部品締結構造であって、前記第1および第2のフランジと、前記締結部材との間に接触部材(例えば、シム板50)を備え、前記接触部材は、前記第1および第2のフランジの中心を基準として、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられる。
【0007】
(1)の発明に係る排気系部品締結構造では、前記第1および第2のフランジと、前記締結部材との間に接触部材を備え、前記接触部材は、前記第1および第2のフランジの中心を基準として、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられる。
これにより、前記第1および第2のフランジに対する前記締結部材の接触状態を改善することができ、その結果、前記第1および第2のフランジ同士の締結力の面内分布を改善することができる。よって、シール性と締結性の両立を図ることができる。
【0008】
(2)前記接触部材は、前記締結力発生箇所を挟んで2箇所に設けられている。
【0009】
(2)の発明に係る排気系部品締結構造では、前記接触部材が、前記締結力発生箇所を挟んで2箇所に設けられているため、より適切に、締結力の面内分布の均等化を期待できる箇所に前記接触部材をバランス良く配置することができる。
【0010】
(3)前記接触部材は、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられている。
【0011】
(3)の発明に係る排気系部品締結構造では、前記接触部材が、前記締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられているため、より効果的に、前記第1および第2のフランジ同士の締結面内の締結力の分布を均等化させることができる。
【0012】
(4)の発明に係る排気系部品締結構造では、前記締結部材が、前記第1のフランジおよび前記第2のフランジの外周に配置される、4箇所以上の外周締め付け部材(例えば、円弧状部材61、62、63、64)を備え、前記接触部材は、前記±90°の範囲内に設けられた2箇所以上の前記外周締め付け部材(例えば、円弧状部材61、64)の内周面に対応させて設けられている。
【0013】
(4)の発明に係る排気系部品締結構造では、前記締結部材が、4箇所以上の外周締め付け部材を備え、前記接触部材が、前記±90°の範囲内に設けられた2箇所以上の前記外周締め付け部材の内周面に対応させて設けられている。
これにより、接触部材を、外周締め付け部材の位置に対応させて配置することができるため、作業性が良好となり、接触部材の配置精度も高まる。
【0014】
(5)前記接触部材は、変形可能な金属製の薄板である。
【0015】
(5)の発明に係る排気系部品締結構造では、接触部材が、変形可能な金属製の薄板であるため、第1および第2のフランジの外周における、前述の±90°の範囲内の任意の適切な位置に、接触部材を配置することができる。また、金属製の薄板は、変形状態を有る程度維持できるため、第1および第2のフランジの外周、または締結部材の内周に接触部材を仮位置決めした状態で、締結部材を取り付けることができる。よって、取り付け作業性がよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対のフランジに対するカップリングの接触状態を改善することにより、一対のフランジ同士の締結力の面内分布を改善することができる、排気系部品締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気系の一部および、排気系部品の締結構造を示す概略図である。
図2】上記実施形態に係る締結構造のカップリングを示す図である。
図3図1におけるL−L断面を模式的に示す図である。
図4A図3におけるM−O−N断面を模式的に示す図である。
図4B図4Aの上部付近を拡大した拡大図である。
図4C図4Aの下部付近を拡大した拡大図である。
図5】上記実施形態に係る締結構造の一部を拡大して示す断面斜視図である。
図6】上記実施形態に係る締結構造における、一対のフランジ同士の締結力の面内分布を示すグラフである。
図7】上記実施形態に係る締結構造における、カップリングの他の構成の例を示す図である。
図8】上記実施形態に係る締結構造における、シム板の他の配置位置の例を示す図である。
図9】上記実施形態に係る締結構造における、カップリングの他の構成の例を示す図である。
図10】従来構造を示す図であり、本発明の一実施形態の図3に対応する図である。
図11A】従来構造を示す図であり、図4Aに対応する図である。
図11B】従来構造を示す図であり、図4Bに対応する図である。
図11C】従来構造を示す図であり、図4Cに対応する図である。
図12】従来構造における、ボルトの締結トルクと、一対のフランジ同士の締結力の面内分布との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関としてのエンジンの排気系1の一部および、排気系部品の締結構造2を示す概略図である。
【0019】
図1には、第1の排気系部品としての過給機のタービンハウジング10と、第2の排気系部品としての触媒ケース20が示されている。タービンハウジング10は、第1のフランジ11を備え、触媒ケース20は、第2のフランジ21を備えており、これらの第1のフランジ11と第2のフランジ21は、一対のフランジ11、21を構成する。
そして、この一対のフランジ11、21は、締結部材としてのカップリング30により、径方向に締め付けられて、締結されている。
【0020】
図2は、本実施形態において用いられるカップリング30を示す図である。
カップリング30は、揺動可能に連結された複数の円弧状部材の端部同士をボルトにより連結する構造となっており、第1の円弧状部材31と、第2の円弧状部材32と、第3の円弧状部材33とを備える。また、カップリング30は、第1の円弧状部材31と第2の円弧状部材32を揺動可能に連結する揺動連結部34と、第2の円弧状部材32と第3の円弧状部材33を揺動可能に連結する揺動連結部35と、第1の円弧状部材31と第3の円弧状部材33をボルト39を用いて連結する締結力発生箇所36とを備える。
【0021】
揺動連結部34、35は、弾性を有する薄板状の金属により構成されており、この薄板状の部分が曲がることにより揺動する構造となっている。
【0022】
締結力発生箇所36は、第1の円弧状部材31の端部に設けられたの第1の連結フランジ部37と、第3の円弧状部材の端部に設けられた第2の連結フランジ部38と、第1および第2の連結フランジ部37、38を連結するためのボルト39とによって構成されている。第1の連結フランジ部37には、ボルト39をねじ込むためのめねじ部が設けられている。
【0023】
図3は、図1のL−L断面を示す図であり、排気系部品における一対のフランジ11、21を、カップリング30により締結する排気系部品の締結構造2を示す模式的な図である。
【0024】
図3に示されるように、一対のフランジ11、21(図3においては、フランジ11が確認できる)の外周には、カップリング30が設けられており、カップリング30のボルト39を締め付けることによって、一対のフランジ11、21は径方向に締め付けられて、締結される。
【0025】
そして、一対のフランジ11、21とカップリング30との間には、接触部材としてのシム板50が設けられている。このシム板50は、一対のフランジ11、21の中心を基準として、締結力発生箇所36の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられている。本実施形態においては、締結力発生箇所36を挟んで、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられている。
ここで、シム板50は、変形可能な薄板であり、金属製の薄板や樹脂シートを用いる。シム板50の厚さとしては、0.1〜0.3mm程度が好ましい。
【0026】
図4Aは、図3のM−O−N断面を模式的に示す図である。
図4Aに示されるように、一対のフランジ11、21は、その端面同士が向き合っている状態で配置されており、その外周にはカップリング30が設けられている。一対のフランジ11、21の間には、図示しないシール部材が配置されており、一対のフランジ11、21が締結された状態において、一対のフランジ11、21の端面同士の間には、僅かな隙間が存在している。
前述のとおり、カップリング30のボルト39を締め付けることによって、一対のフランジ11、21は径方向に締め付けられる。その結果、一対のフランジ11、21の傾斜面が、カップリング30の内面に設けられた締結傾斜面によって押されて、一対のフランジ11、21同士が近付く方向に力が働く。このような作用により、一対のフランジ11、21は締結される。
【0027】
図4Bは、図4Aの上側付近を拡大した拡大図である。シム板50は、一対のフランジ11、21を覆うように設けられており、カップリング30の第1の円弧状部材31と、一対のフランジ11、21との間に挟まれている。
図4Cは、図4Aの下側付近を拡大した拡大図である。この部分においては、シム板50が設けられていない。よって、一対のフランジ11、21の傾斜面は、カップリング30の第2の円弧状部材32の内面に設けられた締結傾斜面と直接接触している。
図5は、図4Bの部分を、斜視断面図で示した図である。この図によっても、シム板50が、一対のフランジ11、21を覆うように設けられており、カップリング30の第1の円弧状部材31と、一対のフランジ11、21との間に挟まれていることが確認できる。
【0028】
次に、上述の±90°の範囲内の位置にシム板50を設けている理由について説明する。
図10、11は、カップリング30を用いて一対のフランジ11、21を締結する、従来構造を示す図である。図10は、本実施形態の図3に対応する、従来構造を示す図である。図11は、本実施形態の図4に対応する、従来構造を示す図である。
【0029】
図10図11に示されるように、従来構造においては、シム板50が設けられていない。
そして、図11B図11Cに示されるように、第1のフランジ11の第1の傾斜面12と、第2のフランジ21の第2の傾斜面22とによって画定される総合フランジ角度θ、すなわち、第1のフランジ11の第1のフランジ角度θ1と第2のフランジ21の第2のフランジ角度θ2の和である総合フランジ角度θは、フランジの全周において一定である。
また、カップリング30の内面の第1の締結傾斜面40と第2の締結傾斜面41によって画定されるカップリング内面の締結傾斜面角度φも、カップリング30の内面全周において一定である。
なお、第1および第2のフランジ角度θ1、θ2は、図11B図11Cに示すように、フランジの端面と、フランジの傾斜面の間のなす角を意味する。
【0030】
そして、このような従来構造において、1箇所のボルト39を締め込むことによりフランジの全周を締結する構造を採用したとき、ボルト39の締め込み部分、すなわち締結力発生箇所36(0°の部分)の周辺の一対のフランジ11、21は、カップリング30により強く押圧され、その結果、強い締結力が働く。その一方、締結力発生箇所36から最も遠い部分(180°の部分)の周辺は、一対のフランジ11、21が押圧される力が比較的弱くなり、締結力が弱くなる。
【0031】
図12は、従来構造における、ボルト39の締結トルクと、一対のフランジ11、12同士の締結力の面内分布との関係を示すグラフである。ここで一対のフランジ11、12同士の締結力とは、一対のフランジ11、21同士が向かい合う締結面内において、フランジ同士が押し合う方向の力、すなわち圧縮力を意味する。
【0032】
図12に示されるように、従来構造においては、締結力発生箇所から最も遠いポイントB(180°の部分)の締結力は、締結力発生箇所(0°の部分)の近傍であるポイントAの締結力に比べて、かなり低い値となっている。また、ポイントC、D(−90°、+90°の部分)の締結力ついては、ポイントAの締結力とポイントBの締結力の間の値となっている。すなわち、従来構造においては、一対のフランジに対するカップリングの接触状態が不均一であるため、一対のフランジ同士の締結面内の締結力の分布も不均一となっている。
【0033】
したがって、従来構造において、フランジの締結面全面にわたって十分な締結力を得るためには、すなわち、ポイントBにおいても強い締結力を得るためには、非常に強い締結トルクをボルト39にかける必要がある。
【0034】
本実施形態においては、図3に示したとおり、一対のフランジ11、21とカップリング30との間に、接触部材としてのシム板50が、前述の±90°の範囲内に設けられている。具体的には、このシム板は、締結力発生箇所36を挟んで、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられている。
【0035】
そして図3、4に示されるように、シム板50を挟むことにより、カップリング30の中心軸が、フランジの中心軸に対して、締結力発生箇所36の方向に移動する。すなわち、締結力発生箇所(0°の部分)においては、カップリング30は一対のフランジ11、21から離れる方向となり、他方、締結力発生箇所36から最も遠い部分(180°の部分)においては、カップリング30が一対のフランジ11、21に近づく方向となる。その結果、締結力発生箇所から最も遠い部分(180°の部分)においても、カップリング30により一対のフランジ11、21が強く押圧され、一対のフランジ11、21に対するカップリングの接触状態が改善し、一対のフランジ11、21同士の締結力の面内分布が均等化される方向となる。
【0036】
このように、締結構造として、1箇所のボルト39を締め込むことによりフランジの全周を締結する構造を採用している場合であっても、前述の±90°の範囲内にシム板50を挟み込むことで、フランジ同士の締結面内の締結力の分布を改善することができる。
【0037】
図6は、一対のフランジ11、21同士の締結面内の締結力について、シム板50を挟んだときに得られたデータと、シム板50を挟まないときに得られたデータとを比較した結果を示すグラフである。
【0038】
図6の上のグラフは、横軸をフランジ同士の締結面における位置、縦軸をフランジの締結力として、その値をプロットしたものである。横軸については、締結力発生箇所であるポイントA(0°の部分)をスタート地点として反時計回りに、ポイントA(0°の部分)、ポイントC(−90°の部分)、ポイントB(180°の部分)、ポイントD(90°の部分)の順に並べている。
【0039】
従来構造である、シム板50を挟まない場合(グラフでは、「シム板無し」と記載)においては、ポイントAの締結力と、ポイントBの締結力との差(グラフにおいてαとして図示)が非常に大きく、フランジ同士の締結力の面内分布が不均一であることが分かる。
一方、本実施形態の締結構造である、シム板50を挟んだ場合(グラフでは「シム板有り」と記載)においては、ポイントAの締結力とポイントBの締結力との差(グラフにおいてβとして図示)が小さくなる方向となっており、フランジ同士の締結力の面内分布が明らかに改善していることが分かる。
また、ポイントA、B、C、Dを総合的に見ても、シム板50を挟んだ場合の方が、フランジ同士の締結力の面内分布が改善していることが分かる。
より具体的には、シム板50を挟む事により、従来構造では低い締結力を示していたポイントB(180°の部分)の締結力が底上げされる一方、従来構造では高い締結力を示していたポイントA(0°の部分)の締結力はやや下がる傾向にあり、全体として締結力の平均化を達成することができている。よって、この構成により、締結面が片当たりすることもなくなり、かつ低い締結力の部分が底上げされているため、シール性と締結性の両立を図ることができる。
図6の下のグラフは、ポイントA、B、C、Dの平均値と、各ポイントとの差分をとり、その差分値をグラフの縦軸にプロットしたものである。このグラフからも、締結力の平均化が達成できていることを確認することができる。
このように、本実施形態の締結構造においては、前述の±90°の範囲内にシム板50を設けることにより、一対のフランジ同士の締結力の面内分布を改善することができる。
【0040】
なお、シム板50は、一対のフランジ11、21の中心軸を基準として、締結力発生箇所36の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられることが好ましい。すなわち、シム板50が±90°の範囲内に設けられることにより、カップリングは、締結力発生箇所側に変位して組みつけられ、その結果、締結力発生箇所36から最も遠い部分(180°の部分)が、カップリングにより一対のフランジ11、21が強く押圧される。よって、一対のフランジ11、21に対するカップリングの接触状態が改善し、一対のフランジ11、21同士の締結面内の締結力の分布が均等化される方向となり、本願発明の効果が得られる。
【0041】
また、シム板50を、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けることがさらに好ましい。これにより、より効果的に、一対のフランジ11、21同士の締結面内の締結力の分布を均等化させることができる。また、シム板50を2個用いることにより、より適切に、締結力の分布の均等化を期待できる箇所にシム板50をバランス良く配置することができる。また、締結力発生箇所36を避けてシム板50を配置することも可能であり、締結後のシム板の状態も安定する。
【0042】
なお、接触部材としてのシム板は、変形可能な薄板であることが好ましく、金属製の薄板であることがより好ましい。接触部材としてこのようなシム板を用いれば、一対のフランジの外周における、前述の±90°の範囲内の任意の適切な位置に、接触部材を配置することができる。すなわち、接触部材を適切な位置に配置する上で、その配置の自由度が高い。また、金属製の薄板であれば、変形状態を有る程度維持できるため、一対のフランジの外周またはカップリングの内周に接触部材を仮位置決めした状態で、カップリングを取り付けることができる。よって、取り付け作業性がよい。
【0043】
また、接触部材として、その他の態様の接触部材を用いてもよく、例えば樹脂シートでもよい。また、一対のフランジの外形形状を覆うような形にあらかじめ成型されている薄肉のエラストマーやゴム、樹脂等により接触部材を構成してもよい。この場合、一対のフランジの外周またはカップリングの内周に接触部材を勘合などさせて、仮固定した状態で、カップリングを取り付けることができるため、取り付け作業性がよい。
【0044】
なお、カップリングとしては、図2に示されるカップリング30に限らず、各種のカップリングを採用することができる。
例えば、図7に示されるような、3箇所の揺動部65、66、67を備え、4箇所の円弧状部材61、62、63、64を備えるカップリング60を採用してもよい。
このとき、図8に示すように、締結力発生箇所に近い側の円弧状部材61、64の内面に対応する位置に、接触部材としてのシム板50を配置してもよい。この場合、シム板50を、円弧状部材61、64の位置に対応させて配置することができるため、作業性が良好となり、シム板50の配置精度も高まる。
【0045】
このように、締結部材としてのカップリングとして、4箇所以上の外周締め付け部材としての円弧状部材を備えるカップリングを用い、前述の±90°の範囲内に設けられている2箇所以上の円弧状部材の内面に対応させて、接触部材を配置することが好ましい。この場合、接触部材としてのシム板を、円弧状部材の位置に対応させて配置することができるため、作業性が良好となり、接触部材の組み付け精度も高まる。
なお、4〜7箇所の円弧状部材を備えるカップリングを用いる場合は、接触部発生部の近傍にある2箇所の円弧状部材の内面に対応させて、接触部材を配置する。例えば8〜11箇所の円弧状部材を備えるカップリングを用いる場合は、接触部発生部の近傍にある2〜4箇所の円弧状部材の内面に対応させて、接触部材を配置する。例えば12〜15箇所の円弧状部材を備えるカップリングを用いる場合は、接触部発生部の近傍にある2〜6箇所の円弧状部材の内面に対応させて、接触部材を配置する。
いずれの場合であっても、2箇所の円弧状部材の内面に対応させて、接触部材を配置する場合は、部品点数が少なく、作業性も良好である。
なお、外周締め付け部材は、通常は円弧状部材であるが、例えば外周締め付け部材の配置数が多い場合などにおいては、必ずしも円弧形状でなくてもよい。
【0046】
なお、接触部材としてのシム板50は、1個のみを用いることも可能である。この場合、部品点数が少なくなるという利点がある。1個のシム板50のみを配置する場合においても、その配置する範囲としては、±90°の範囲内であれば本願発明の効果が得られる。より好ましくは、±20°〜±60°の範囲内である。具体的には、図3に示される2個のシム板50が連結されることにより構成された1個のシム板を、±20°〜±60°の範囲内に配置することで、より適切に一対のフランジ同士の締結面内の締結力の分布が均等化される。
【0047】
また、カップリングとして、図9に示されるような、1箇所の揺動連結部73と、2箇所の円弧状部材71、72を備えるカップリング70を採用してもよい。カップリング70の揺動連結部73は、第1の円弧状部材71の一端側に設けられた第1の折り返し部75と、第2の円弧状部材72の一端側に設けられた第2の折り返し部76と、第1および第2の折り返し部75、76を連結する環状部材77によって構成されている。また、締結力発生箇所74は、ボルト78と、ナット79とにより構成されており、ナット79にボルト78をねじ込むことにより締結力が発生する。
このようなカップリングを用いた場合においても、接触部材としてのシム板を、前述の±90°の範囲内に設けることにより、一対のフランジ同士の締結面内の締結力の分布が均等化される方向となり、本願発明の効果が得られる。
【0048】
本実施形態の排気系部品締結構造によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る排気系部品締結構造では、一対のフランジ11、21と、カップリング30との間に、シム板50を備え、シム板50が、一対のフランジ11、21の中心を基準として、カップリング30の締結力発生箇所36の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられる。
これにより、一対のフランジ11、12に対するカップリング30の接触状態を改善することができるため、その結果、一対のフランジ11、12同士の締結面内の締結力の分布を改善することができる。
すなわち、シム板50を挟む事により、従来構造では低い締結力を示していたポイントB(180°の部分)の締結力は底上げされる一方、従来構造では高い締結力を示していたポイントA(0°の部分)の締結力はやや下がる傾向にあり、全体として締結力の平均化を達成することができる。よって、この構成により、締結面が片当たりすることもなくなり、かつ低い締結力の部分も底上げされているため、シール性と締結性の両立を図ることができる。
【0049】
(2)本実施形態に係る排気系部品締結構造では、シム板50が、カップリング30の締結力発生箇所36を挟んで2箇所に設けられているため、より適切に、締結力の分布の均等化を期待できる箇所にシム板50をバランス良く配置することができる。
【0050】
(3)本実施形態に係る排気系部品締結構造では、シム板50が、カップリング30の締結力発生箇所36の位置する方向を0°としたときに、−20°〜−60°の範囲内と、+20°〜+60°の範囲内の2箇所に設けられているため、より効果的に、一対のフランジ11、21同士の締結面内の締結力の分布を均等化させることができる。
【0051】
(4)本実施形態に係る排気系部品締結構造では、カップリング60が、4箇所以上の円弧状部材61、62、63、64を備え、接触部材が、カップリングの締結力発生箇所の位置する方向を0°としたときに、±90°の範囲内に設けられた2箇所以上の円弧状部材61、64の内面に対応させて設けられている。
これにより、接触部材を、円弧状部材の位置に対応させて配置することができるため、作業性が良好となり、接触部材の配置精度も高まる。
【0052】
(5)本実施形態に係る排気系部品締結構造では、シム板50が、変形可能な金属製の薄板であるため、一対のフランジ11、21の外周における、前述の±90°の範囲内の任意の適切な位置に、シム板50を配置することができる。また、金属製の薄板は、変形状態を有る程度維持できるため、一対のフランジ11、21の外周、またはカップリング30の内周にシム板50を仮位置決めした状態で、カップリング30を取り付けることができる。よって、取り付け作業性がよい。
【0053】
なお、本実施形態においては、内燃機関の排気系部品締結構造について説明したが、この締結構造は、内燃機関に限らず、様々な排気系部品の締結構造に採用可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…エンジン(内燃機関)の排気系
2…排気系部品の締結構造
10…過給機のタービンハウジング(第1の排気系部品)
11…第1のフランジ
12…第1のフランジ傾斜面
20…触媒ケース(第2の排気系部品)
21…第2のフランジ
22…第2のフランジ傾斜面
30、60、70…カップリング(締結部材)
36…締結力発生箇所
40…第1の締結傾斜面
41…第2の締結傾斜面
50…シム板(接触部材)
61、62、63、64…円弧状部材(外周締め付け部材)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12