特許第6983140号(P6983140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983140
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】回転電機および軸受構造体
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20211206BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20211206BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20211206BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20211206BHJP
   F16C 23/04 20060101ALN20211206BHJP
【FI】
   H02K5/167 A
   H02K7/08 Z
   F16C17/02 Z
   F16C33/74 Z
   !F16C23/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-208889(P2018-208889)
(22)【出願日】2018年11月6日
(65)【公開番号】特開2020-78131(P2020-78131A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2020年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将来
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−006258(JP,U)
【文献】 特開平03−143243(JP,A)
【文献】 実開昭54−167306(JP,U)
【文献】 特開平11−356005(JP,A)
【文献】 米国特許第06464230(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 7/08
F16C 17/02
F16C 33/74
F16C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心と、を有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、を有する固定子と、
静止支持されて、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の両側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する軸受本体をそれぞれ有する2つの軸受構造体と、
前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、
前記フレームの両端に取り付けられて前記2つの軸受構造体のそれぞれを支持する軸受ブラケットと、
を備える回転電機であって、
前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、
前記軸受本体と、
前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側に設けられた内側油切りと、
前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側の反対側に設けられた外側油切りと、
を具備し、
前記ロータシャフトにおいて前記軸受本体の径方向内面と対向するジャーナル部の外径は、前記ジャーナル部を軸方向に挟んで両側に隣接する径大部の外径よりも小さく形成されており、
前記軸受本体は、軸方向の内側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体内側仕切り板と、軸方向の外側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体外側仕切り板と、を有し、
前記内側油切りと前記外側油切りの少なくとも一方は、
前記ロータシャフトの外表面に沿って配された第1の円筒部と、
軸方向に前記軸受本体側に前記ジャーナル部とギャップを空けて配されたジャーナル側絞り部と、
を有し、
前記ジャーナル側絞り部と第2の円筒部を有する挿入部が設けられ、
前記第2の円筒部は、前記第1の円筒部と嵌合して、前記第1の円筒部との軸方向の相対的な位置が調節可能に形成されており、
前記ジャーナル側絞り部は、前記ジャーナル部と前記径大部との境界の回転軸に垂直な段差面との間に間隔を空けて配されて軸方向に延びた段差面側ラビリンス歯を有する、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
軸方向に延びるロータシャフトと前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心とを有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、前記フレームの両端に取り付けられた軸受ブラケットと、を備える回転電機の前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受構造体であって、
前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、
軸受本体と、
前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側に設けられた内側油切りと、
前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側の反対側に設けられた外側油切りと、
を具備し、
前記ロータシャフトにおいて前記軸受本体の径方向内面と対向するジャーナル部の外径は、軸方向に隣接する径大部の外径よりも小さく形成されており、
前記軸受本体は、軸方向の内側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体内側仕切り板と、軸方向の外側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体外側仕切り板と、を有し、
前記内側油切りと前記外側油切りの少なくとも一方は、
前記ロータシャフトの外表面に沿って配された第1の円筒部と、
軸方向に前記軸受本体側に前記ジャーナル部とギャップを空けて配されたジャーナル側絞り部と、
を有し、
前記ジャーナル側絞り部と第2の円筒部を有する挿入部が設けられ、
前記第2の円筒部は、前記第1の円筒部と嵌合して、前記第1の円筒部との軸方向の相対的な位置が調節可能に形成されており、
前記ジャーナル側絞り部は、前記ジャーナル部と前記径大部との境界の回転軸に垂直な段差面との間に間隔を空けて配されて軸方向に延びた段差面側ラビリンス歯を有する、
ことを特徴とする軸受構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機およびその軸受構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、典型的には、軸方向に延びたロータシャフトとその径方向外側に取り付けられた回転子鉄心を有する回転子と、回転子鉄心の径方向外側に設けられた固定子鉄心とその径方向内側部分を軸方向に貫通する固定子巻線を有する固定子とを備える。ロータシャフトは、回転子鉄心を挟んだ軸方向の両側をそれぞれ軸受により回転可能に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−103871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受部分からの油漏れの防止のために、たとえば、軸受部分に隣接して油切りが設けられている。油切りには、ラビリンスシールが形成されている場合がある(特許文献1)。
【0005】
この軸受部におけるラビリンスシール構造は、回転側の部材と、固定側の部材との間で形成されるが、回転側の部材と、固定側の部材との間にはギャップが存在することから、圧力差が存在する場合には、漏えいを完全に止めることは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、回転電機において、より潤滑油の漏えいの少ない軸受構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明に係る回転電機は、軸方向に延びるロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心と、を有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線と、を有する固定子と、静止支持されて、前記回転子鉄心を挟んで軸方向の両側で前記ロータシャフトを回転可能に支持する軸受本体をそれぞれ有する2つの軸受構造体と、前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、前記フレームの両端に取り付けられて前記2つの軸受構造体のそれぞれを支持する軸受ブラケットと、を備える回転電機であって、前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、前記軸受本体と、前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側に設けられた内側油切りと、前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側の反対側に設けられた外側油切りと、を具備し、前記ロータシャフトにおいて前記軸受本体の径方向内面と対向するジャーナル部の外径は、前記ジャーナル部を軸方向に挟んで両側に隣接する径大部の外径よりも小さく形成されており、前記軸受本体は、軸方向の内側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体内側仕切り板と、軸方向の外側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体外側仕切り板と、を有し、前記内側油切りと前記外側油切りの少なくとも一方は、前記ロータシャフトの外表面に沿って配された第1の円筒部と、軸方向に前記軸受本体側に前記ジャーナル部とギャップを空けて配されたジャーナル側絞り部と、を有し、前記ジャーナル側絞り部と第2の円筒部を有する挿入部が設けられ、前記第2の円筒部は、前記第1の円筒部と嵌合して、前記第1の円筒部との軸方向の相対的な位置が調節可能に形成されており、前記ジャーナル側絞り部は、前記ジャーナル部と前記径大部との境界の回転軸に垂直な段差面との間に間隔を空けて配されて軸方向に延びた段差面側ラビリンス歯を有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る軸受構造体は、軸方向に延びるロータシャフトと前記ロータシャフトの径方向外側に取りつけられた回転子鉄心とを有する回転子と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子鉄心と前記固定子鉄心内を軸方向に貫通する固定子巻線とを有する固定子と、前記固定子の径方向外側に配されたフレームと、前記フレームの両端に取り付けられた軸受ブラケットと、を備える回転電機の前記ロータシャフトを回転可能に支持する2つの軸受構造体であって、前記2つの軸受構造体の少なくとも一方は、軸受本体と、前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側に設けられた内側油切りと、前記軸受本体より軸方向に回転子鉄心側の反対側に設けられた外側油切りと、を具備し、前記ロータシャフトにおいて前記軸受本体の径方向内面と対向するジャーナル部の外径は、軸方向に隣接する径大部の外径よりも小さく形成されており、前記軸受本体は、軸方向の内側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体内側仕切り板と、軸方向の外側に前記ジャーナル部と径方向のギャップを空けて配された本体外側仕切り板と、を有し、前記内側油切りと前記外側油切りの少なくとも一方は、前記ロータシャフトの外表面に沿って配された第1の円筒部と、軸方向に前記軸受本体側に前記ジャーナル部とギャップを空けて配されたジャーナル側絞り部と、を有し、前記ジャーナル側絞り部と第2の円筒部を有する挿入部が設けられ、前記第2の円筒部は、前記第1の円筒部と嵌合して、前記第1の円筒部との軸方向の相対的な位置が調節可能に形成されており、前記ジャーナル側絞り部は、前記ジャーナル部と前記径大部との境界の回転軸に垂直な段差面との間に間隔を空けて配されて軸方向に延びた段差面側ラビリンス歯を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転電機において、より潤滑油の漏えいの少ない軸受構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る回転電機の軸受構造の構成を示す上半部縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係る回転電機の軸受構造の外側油切りの構成を示す縦断面図である。
図4】第2の実施形態に係る回転電機の軸受構造の外側油切りの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転電機および軸受構造体について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。
【0013】
回転電機300は、回転子10、固定子20、フレーム40、2つの軸受ブラケット45、および2つの軸受構造体100を有する。
【0014】
回転子10は、軸方向に延びたロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向外側に取り付けられた回転子鉄心12を有する。
【0015】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向の外側に空隙18を介して配された円筒状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21内を貫通する固定子巻線22を有する。
【0016】
フレーム40は、回転子鉄心12および固定子20を囲むようにこれらの径方向外側に設けられている。フレーム40の両方の端部には、それぞれ軸受ブラケット45が取り付けられている。それぞれの軸受ブラケット45は、軸受構造体100を静止支持する。軸受構造体100は、ロータシャフト11を回転可能に静止支持する。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る回転電機の軸受構造の構成を示す上半縦断面図である。また、図3は、第1の実施形態に係る回転電機の軸受構造の外側油切りの構成を示す縦断面図である。なお、内側油切り130についても、外側油切り140と同様の構成であるが、図3では外側油切り140の構成のみを示している。
【0018】
軸受構造体100は、軸受本体110、本体押さえ120、内側油切り130、外側油切り140を有する。
【0019】
ここで、軸受構造体100は、ロータシャフト11を支持するために設けられるが、軸受構造体100が設けられる部分のロータシャフト11の部分は、段差を有し、回転軸に垂直な方向、すなわち径方向に段差面11dが形成されている。すなわち、ロータシャフト11は、軸方向に相対的に径の細いジャーナル部11aと、これを挟んで、内側には対的にジャーナル部11aより径の大きな径大部11bと、軸方向の外側には相対的にジャーナル部11aより径の大きな径大部11cとを有する。
【0020】
軸受本体110は、本体メタル部111、本体メタル部111の軸方向の内側、すなわち回転子鉄心12に近い側に取り付けられた本体内側仕切り板113、および本体メタル部111の軸方向の外側、すなわち回転子鉄心12に遠い側に取り付けられた本体外側仕切り板114を有する。
【0021】
本体メタル部111は、おおよそ円筒形状であり、その径方向の内面は、ジャーナル部11aの径方向外側に、面しており、軸受ブラケット45に静止支持されている本体押さえ120により、径方向外側から支持されている。本体メタル部111の径方向外側は、軸方向中央部が径方向外側に突出しており、軸方向中央部は滑らかな球面の一部を構成する曲面状の球面部111a形成されている。本体押さえ120の筒状部121の本体メタル部111に面する径方向の内側の受け座121aは、本体メタル部111に対応する形状に形成されている。
【0022】
本体メタル部111の径方向内側表面には、摺動部材である保護メタル部112が設けられている。保護メタル部112の材質は、鉛、スズ、アンチモン、亜鉛などの低融点合金を主体とするすべり軸受用の合金(以下、ホワイトメタルと称する)である。
【0023】
本体メタル部111の軸方向の端部に取り付けられた本体内側仕切り板113および本体外側仕切り板114のそれぞれは、ジャーナル部11aの径方向外側を囲むように、かつジャーナル部11aとの間にギャップを有するように形成された環状に形成されている。環状部分のジャーナル部11aに対向する面には、全周に設けられた図示しない径方向に広がった歯部を有してもよい。なお、この場合、ジャーナル部11aの軸方向の長さを増加させることになり、その分、ロータシャフト11の剛性が低下する。このため、歯部の範囲の増加は、ロータシャフト11の剛性の余裕が確保されている範囲で行う。
【0024】
本体押さえ120は、筒状部121、内側円環部122、外側円環部123、および結合円環124を有する。筒状部121は、回転軸を軸中心としたほぼ円筒状であり、前述のように本体メタル部111を径方向外側から支持する受け座121aが形成されている。内側円環部122は、筒状部121の軸方向の回転子鉄心側の端部に接続され、内側油切り130とボルト等により結合する。外側円環部123は、筒状部121の軸方向の回転子鉄心側と反対側の端部に接続され、外側油切り140とボルト等により結合する。結合円環124は、筒状部121の軸方向の途中から径方向に拡がり、軸受ブラケット45の開口45a周りの部分とボルト等により結合する。
【0025】
内側油切り130は、本体押さえ120の内側円環部122と結合する円板部131と、円筒部132と、ジャーナル側絞り部134とを有する。円筒部132は、円板部131の開口部分から軸方向にロータシャフト11の径大部11bの径方向表面に沿って延びている。円筒部132の内周面には軸方向に間隔をおいて径大部側絞り部133が形成されている。径大部側絞り部133は環状で径方向に延びており径方向内側の口径は、ロータシャフト11の径大部11bの外径により所定の両側のギャップ分だけ大きい。この結果、円筒部132の内面にはラビリンスが形成される。ジャーナル側絞り部134は、円板部131の開口部分から円筒部132と反対方向のジャーナル部11aに向かってオーバハングし、ジャーナル部11aの外表面に対向した部分に径方向に延びた歯部(図示せず)を有する。
【0026】
外側油切り140は、本体押さえ120の外側円環部123と結合する円板部141と、円筒部142と、ジャーナル側絞り部144とを有する。円筒部142は、円板部141の開口部分から軸方向にロータシャフト11の径大部11cの径方向表面に沿って延びている。
【0027】
円筒部142の内周面には軸方向に間隔をおいて径大部側絞り部143が形成されている。径大部側絞り部143は環状で径方向に延びており、径方向内側表面には、回転軸方向に垂直な面に沿って径方向の内側に向かって拡がった径大部側ラビリンス歯143aが取り付けられている。径大部側ラビリンス歯143aの径方向内側の口径は、ロータシャフト11の径大部11cの外径より所定の両側のギャップ分だけ大きい。この結果、円筒部142の内面にはラビリンスが形成される。
【0028】
ジャーナル側絞り部144は、円板部141の開口部分から円筒部142と反対方向のジャーナル部11aに向かってオーバハングし、ジャーナル部11aの外表面に対向した部分にジャーナル側ラビリンス歯144aが取り付けられている。ジャーナル側ラビリンス歯144aの径方向内側の口径は、ロータシャフト11のジャーナル部11aの外径より所定の両側のギャップ分だけ大きい。
【0029】
なお、円筒部132および円筒部142は、それぞれロータシャフト11の径大部11bおよび径大部11cの径方向外側に配されている場合を示したが、これに限定されない。すなわち、一部または全てがジャーナル部11aの径方向外側にあってもよい。この場合、ジャーナル部11aの径方向外側にあるジャーナル側絞り部134に取り付けられた図示しない歯部、およびジャーナル側絞り部144に取り付けられたジャーナル側ラビリンス歯144aは、それぞれの径方向内側が、ジャーナル部11aの外表面との間に所定のギャップを有するように形成される。
【0030】
なお、以上説明した軸受本体110、本体押さえ120、内側油切り130および外側油切り140は、詳細の図示は省略するが、それぞれ周方向に分割された要素を有し、ロータシャフト11を囲むようにそれらの要素をロータシャフト11の径方向外側に配してボルト等により結合してそれぞれ一体化したものである。
【0031】
以上のように構成された本実施形態に係る軸受構造体100においては、本体メタル部111の本体内側仕切り板113および本体外側仕切り板114の開口部に形成された歯部は、ジャーナル部11aとの間に所定のギャップを有する。従来の構成では、本体内側仕切り板113および本体外側仕切り板114は、ロータシャフト11の径大部11b、11cの外側に配されている。したがって、所定のギャップが従来と等しいと仮定すると、潤滑油の漏洩のルートとしてのギャップ部分の流路断面積は、径大部11b、11cの外径に対するジャーナル部11aの外径の比であり、たとえば80%ないし90%程度までに減少する。この結果、軸受構造体100において、まず、軸受本体110からの潤滑油の漏洩を低減することができる。
【0032】
外側油切り140についても、絞り部は、従来は全て径大部11cの径方向外側に配されていたものが、本実施形態では、径大部11cの径方向外側に配された径大部側絞り部143以外に、ジャーナル部11aの径方向外側に配されたジャーナル側絞り部144が形成されている。内側油切り130についても同様に、ジャーナル部11aの径方向外側に配されたジャーナル側絞り部134が形成されている。
【0033】
従って、ラビリンスの一部の環状面積が、従来のたとえば80%ないし90%程度にまで減少する。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、回転電機300において、より潤滑油の漏えいの少ない軸受構造体100を提供することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る回転電機の軸受構造の外側油切りの構成を示す縦断面図である。本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。
【0036】
本第2の実施形態においては、外側油切り240は、第1の実施形態における外側油切り140と異なる構成を有する。なお、以下、代表的に外側油切り240について説明するが、内側油切りについても、外側油切り240と同様の構成を有することでもよい。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0037】
外側油切り240は、円板部141と、円筒部242(第1の円筒部)と、挿入部244とを有する。
【0038】
挿入部244は、軸方向に径大部11cからジャーナル部11aに向かってオーバハングするジャーナル側絞り部244aを有する点では、第1の実施形態における挿入部144と同様であるが、オーバハングした方向とは逆の方向に、円筒部244b(第2の円筒部)を有する。
【0039】
また、ジャーナル側絞り部244aには、第1の実施形態と同様に、ロータシャフト11のジャーナル部11aに対向するように径方向に延びたジャーナル側ラビリンス歯244cが形成されているが、さらに、ジャーナル側絞り部244aには、ロータシャフト11のジャーナル部11aと径大部11cとの境界の段差面11dに対向するように軸方向に延びた段差面側ラビリンス歯244dが形成されている。
【0040】
外側油切り240の円筒部242には、挿入部244の円筒部244bと嵌合するように環状穴242aが形成されている。この結果、円筒部244bの環状穴242aと嵌合した挿入部244の円筒部244bは、軸方向の相互の位置を調節可能である。また、円筒部242には、環状穴242aから径方向外側に貫通するねじ孔242bが形成されており、止めねじ242cにより、円筒部244bの環状穴242aと嵌合した挿入部244の円筒部244bを所定の位置に保持可能である。
【0041】
以上の構成により、挿入部244のジャーナル側絞り部244aに設けられた段差面側ラビリンス歯244dと、ロータシャフト11の段差面11dとの間隔は、所定のギャップを有するように設定可能である。
【0042】
以上のように、本第2の実施形態においては、ロータシャフト11の段差面11dとの間にも、所定のギャップを有するラビリンスを形成することができる。段差面11dに沿っては、ロータシャフト11の回転に伴い、外部に漏洩する潤滑油に遠心力が働くことから、この部分にラビリンスを形成することは、潤滑油の漏洩の抑制に大きな効果をもたらす。
【0043】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0044】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0045】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…回転子、11…ロータシャフト、11a…ジャーナル部、11b、11c…径大部、11d…段差面、12…回転子鉄心、18…ギャップ、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、40…フレーム、45…軸受ブラケット、45a…開口、100…軸受構造体、110…軸受本体、111…本体メタル部、111a…球面部、112…保護メタル部、113…本体内側仕切り板、114…本体外側仕切り板、120…本体押さえ、121…筒状部、121a…受け座、122…内側円環部、123…外側円環部、124…結合円環、130…内側油切り、131…円板部、132…円筒部、133…径大部側絞り部、134…ジャーナル側絞り部、140…外側油切り、141…円板部、142…円筒部、143…径大部側絞り部、143a…径大部側ラビリンス歯、144…ジャーナル側絞り部、144a…ジャーナル側ラビリンス歯、240…外側油切り、242…円筒部(第1の円筒部)、242a…環状穴、242b…ねじ孔、242c…止めねじ、244…挿入部、244a…ジャーナル側絞り部、244b…円筒部(第2の円筒部)、244c…ジャーナル側ラビリンス歯、244d…段差面側ラビリンス歯、300…回転電機
図1
図2
図3
図4