(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カテーテルの長尺状部材が第1管腔、第2管腔、第3管腔および第4管腔を有しており、第1の複数の基端側の組の電極が前記第1管腔内において第1の長尺状の管状部材によって支持されており、第2の複数の基端側の組の電極が前記第2管腔内において第2の長尺状の管状部材によって支持されており、第1の複数の先端側の組の電極が前記第3管腔内において第3の長尺状の管状部材によって支持されており、第2の複数の先端側の組の電極が前記第4管腔内において第4の長尺状の管状部材によって支持されている、請求項1に記載のカテーテル。
前記カテーテルの基端部が第1断面形状を有しており、前記カテーテルの先端部が、前記第1断面形状とは異なる第2断面形状を有している、請求項1に記載のカテーテル。
前記カテーテルが、その1つまたは複数の電極アセンブリ管腔内に2つの基端側電極アセンブリおよび2つの先端側電極アセンブリを有している、請求項1に記載のカテーテル。
前記基端側の組の電極の各電極が、前記第1長手方向部分の外周の一部分のみに沿って、前記長尺状部材の外側に電気エネルギーを発することと、前記長尺状部材の外側から電気エネルギーを受け取ることとの少なくとも一方を行うように構成されており、前記先端側の組の電極の各電極が、前記第2長手方向部分の外周の一部分のみに沿って、前記長尺状部材の外側に電気エネルギーを発することと、前記長尺状部材の外側から電気エネルギーを受け取ることとの少なくとも一方を行うように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の記載においては、当業者の理解を目的として特定の詳細事項について述べる。以下に記載される本技術の実施例は、網羅的に記載されているものではなく、例示する実施形態と同じ態様に本システムを限定するものではない。したがって、以下の記載および図面は限定的ではなく例示的である。
【0025】
(概要)
本開示の実施形態は、患者の神経を電気的に刺激するための医療器具および方法に概して関する。一実施形態においては、患者の神経を刺激することにより、横隔膜が動いて呼吸が回復または制御される。
【0026】
本明細書に記載する医療器具は、長尺状の管状部材と1つまたは複数の電極アセンブリとを有するカテーテル、電極アセンブリに刺激エネルギーを提供する単一の信号発生器、および患者の状態を感知して刺激信号を調節する1つまたは複数のセンサ等の複数の部品を有していてもよい。医療器具は、操縦機構をさらに有していてもよい。窓付きカテーテル、マルチルーメンカテーテル、リボンカテーテル等の、カテーテルの様々な実施形態が開示される。さらに、電極アセンブリの様々な実施形態も開示される。電極アセンブリは、単体で用いてもよいし、他の電極アセンブリと組み合わせてもよいし、カテーテルの外側部を形成する開示の長尺状の管状部材と一緒に用いてもよい。本明細書において、「カテーテル」という用語は、カテーテルの長尺状の管状部材を指し、もしくは、電極アセンブリ、操縦機構および長尺状の管状部材内に配置されるか管状部材に連結される他の部品を含めた、組み立てられたカテーテル全体を指す。いくつかの種類の操縦機構も開示される。
【0027】
様々な医療器具部品(カテーテル、電極アセンブリ、操縦機構等)の異なる実施形態は、好適な任意の構成にて組み合わせて一緒に使用することができる。さらに、開示された各実施形態の個別の特徴または要素を、別の実施形態の個別の特徴または要素と組み合わせてもよいし、連携させて用いてもよい。また、様々な実施形態を、以下に記載する状況とは異なる状況において用いてもよい。例えば、開示の電極構造を、当該技術分野において周知の様々な導入システムと組み合わせるか、組み合わせて用いることによって、様々な診断および/または治療用途に用いてもよい。
【0028】
使用時には、医療器具(例えば、1つまたは複数の電極アセンブリを有するカテーテル)は、電極アセンブリが患者の神経の近くに配置されるように患者の血管内に挿入される。挿入された電極アセンブリは、患者の神経に対して経血管的に電気刺激をもたらすために用いられる。開示の器具は、患者体内への一時的な配置を迅速に行い、かつ患者体内からの除去を容易にするために最適化することができる。開示の器具は、例えば、呼吸の回復、廃用性筋萎縮および慢性痛等の症状の治療、または神経刺激を伴う他の処置に用いることができる。開示の器具は、急性または慢性の症状の治療に使用できる。
【0029】
(医療器具の概要:カテーテルおよび電極アセンブリ)
図1〜6Bを参照して、医療器具の例示的実施形態および使用方法の概要を以下に説明する。それ以降の図面は、様々な医療器具部品の追加的または代替的な実施形態の説明において参照される。
【0030】
図1A、1Bおよび1Cに、例示的実施形態に係るカテーテル10の様々な図を示す。
図1A、1Bおよび1Cには、カテーテル10の長手方向軸線A−Aを中心とした異なる回転位置にあるカテーテル10が示されている。カテーテル10は、押出成形ポリウレタン(または他の好適な生体適合性材料)からなる長尺状の管状部材を有している。
図1Aに示すように、カテーテル10は、カテーテル10の先端部12付近において長手方向軸線に沿って並んだ一列の先端側窓16を有している。カテーテル10は、
図1Cに部分的に示されている2列目の先端側窓16をさらに有している。同様に、カテーテル10において窓16よりも基端側の位置14(いくつかの実施形態においては、カテーテル10の基端)において、カテーテル10は2列の基端側窓18を有している。本明細書においては、これらの窓を「基端側窓18」と称し、基端側の組の窓18を先端側の組の窓16と区別している。他の実施形態においては、カテーテル10は3列以上の先端側窓16または3列以上の基端側窓18を有している。基端側窓18の構造的特徴は先端側窓16と同じであっても異なっていてもよい。カテーテル10の、基端側窓18と先端側窓16の間の区分には窓が形成されていない。
【0031】
一実施形態において、カテーテル10は、6個の先端側窓16および12個の基端側窓18を有している。しかし、他の実施形態においては、カテーテル10はこれ以上または以下の先端側窓および基端側窓を有している。例えば、他の実施形態においては、カテーテル10は2個、4個、8個、10個または12個以上の先端側窓16および/または2個、4個、6個、8個、10個または12個以上の基端側窓18を有している。先端側窓16および基端側窓18は対になるように構成されているため、カテーテル10は偶数の先端側窓16および偶数の基端側窓18を有している。しかしながら、窓16または窓18の数は奇数であってもよい。
【0032】
窓16,18は、カテーテル10の外壁を切除(例えばレーザー、手作業による切削、穿孔、パンチング等)することによって形成される。もしくは、押出成形中または他の製造工程において別の好適な方法によって形成してもよい。窓16,18は、長手方向軸線A−Aに沿って長尺状をなしていてもよい。窓16,18は、長方形、楕円形、正方形または他の形状であってよい。窓16,18は、電気信号がカテーテル10の内腔からカテーテル10の外側に移動できるように構成された開口部である。追加的または代替的な実施形態においては、窓16,18は、電気信号が通過できる材料によって覆われている。図に示すように、基端側窓18は、回転方向において先端側窓16からずらして配置されている。つまり、一実施形態において、先端側電極16の列を通って基端側に引かれた直線が、基端側電極18の列を通らない。別の実施形態においては、基端側電極18の1つまたは複数の列が、対応する先端側電極16の列と整合している。
【0033】
カテーテル10の寸法は、特定の患者の解剖学的構造に合わせてカスタマイズできる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、カテーテル10の基端側窓18を含む区分の長さは10cm以下であり、3〜5cmまたは1〜3cmである。2つの隣り合う基端側窓18(長手方向に隣り合う窓または同じ窓列において隣り合う窓)の間の距離は5cm以下であり、約1cmであってもよい。カテーテル10の先端側窓16を含む区分の長さは6cm以下であり、2〜4cmまたは1〜2cmである。2つの隣り合う先端側窓16(長手方向に隣り合う窓または同じ窓列において隣り合う窓)の間の距離は5cm以下、3cm以下または約1cmである。カテーテルにおいて、窓の形成されていない基端側窓18と先端側窓16との間の区分の長さは、12cm以下、10cmまたは8cm以下である。窓16,18の長さは6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下または1mm以下である。一実施形態において、窓の長さは、その窓を通って電気的に露出される電極の長さよりも短い。上記のカテーテルの寸法は例に過ぎず、カテーテル10は上記の範囲および特定の実寸と異なる寸法を有していてもよい。
【0034】
図2は、カテーテル10のII−II面(
図1A)に沿った断面図である。カテーテル10の内部には1つまたは複数の管腔が形成されている。一実施形態のカテーテル10は6つの管腔20,22,24,26,28,30を有しているが、カテーテル10の管腔の数はこれより多くても少なくてもよい。管腔20,22,24,26は、以下に詳述する電極アセンブリを受容する電極アセンブリ管腔である。一実施形態において、基端側窓18は管腔20,22の内側とカテーテル10の外側との間に通路を形成している。したがって、管腔20,22は、
図1A〜1Cに示す基端側窓18と整合する電極を受容する。同様に、先端側窓16は管腔24,26の内側とカテーテル10の外側との間に通路を形成し、管腔24,26は
図1A〜1Cに示す先端側窓16と整合する電極を受容する。したがって、管腔20,22は基端側電極アセンブリ管腔であり、管腔24,26は先端側電極アセンブリ管腔である。詳細は後で述べるが、管腔20,22に受容される基端側電極アセンブリは患者の左横隔神経を刺激するために使用され、管腔24,26に受容される先端側電極アセンブリは患者の右横隔神経を刺激するために使用される。管腔28はガイドワイヤを受容する。管腔30は、操縦機構、他の器具またはワイヤを受容するため、または、治療部位に流体を行き来させるために使用される。
【0035】
図3Aは基端側電極アセンブリ32の例示的実施形態を示し、
図3Bは、単一の電極36における
図3AのIIIB−IIIB面に沿った断面図である。一実施形態において、基端側電極アセンブリ32は6個の基端側電極36を有している。同様に、
図3Cは先端側電極アセンブリ34の例示的実施形態を示し、
図3Dは、単一の電極38における
図3CのIIID−IIID面に沿った断面図である。先端側電極アセンブリ34は3個の先端側電極38を有している。2つの電極アセンブリ32および34は、電極の数、電極の構造的特徴、アセンブリ全体の構造的特徴において互いに異なっていてもよい。
【0036】
1つの基端側電極アセンブリ32はカテーテルの基端側電極アセンブリ管腔20,22の一方の中に保持されており、第2の基端側電極アセンブリ32はカテーテル10の基端側電極アセンブリ管腔20,22の他方の中に保持されている。同様に、1つの先端側電極アセンブリ34はカテーテルの先端側電極アセンブリ管腔24,26の一方の中に保持されており、第2の先端側電極アセンブリ34はカテーテル10の先端側電極アセンブリ管腔24,26の他方の中に保持されている。2つの基端側電極アセンブリ32と2つの先端側電極アセンブリ34がカテーテル10の管腔内においてこのように組み合わされていることによって、12個の基端側電極36が12個の基端側窓18と整合し、6個の先端側電極38が6個の先端側窓16と整合できるようになっている。
【0037】
図3Aおよび3Bを参照して、基端側電極アセンブリ32について詳述する。個別の電気リード44がまとめてコイル状に巻かれて基端側電極アセンブリ32のケーブル40を形成している。各リード44は長尺状の導電部材45を有し、非導電性材料の層によって囲まれている。一実施形態において、リード44はワイヤであり、長尺状導電部材45はステンレス鋼または他の導電性材料の素線を含み、非導電性材料46は絶縁層である。リード44は、電極36に電気信号または他の信号を行き来させる。
【0038】
一実施形態において、ケーブル40は7本のリード44を有している。この7本のリード44のうち、6本は特定の箇所(例えば
図3Bに示すように電極36の下)においてそれぞれ絶縁が除去されており下側の導電部材45が露出している。導電コネクタ42は露出した導電部材45に結合(機械的結合、接着、マイクロ溶接等)して、ケーブル40を横方向に包囲している。導電コネクタ42は薄く、可撓性を有し、かつ、ステンレス鋼または他の導電性材料から形成されている。導電コネクタ42は、露出した導電部材45と電極36との間の接触面を構成している。一実施形態において、電極36はプラチナおよび10%のイリジウム(または、ステンレス鋼、プラチナ、窒化チタン、被覆ステンレス鋼等の他の好適な植え込み可能な電極材料)のリング電極であり、導電コネクタ42およびケーブル40の外側に圧着(または接着、マイクロ溶着)されている。
図3Bの中央に示す7本目の絶縁リード44はケーブル40を支持および補強している。7本目のリード44は、センサからの信号やECG信号等の他の種類の信号を伝達するために使用してもよい。合計では、上記のように、7本のリードを有する基端側電極アセンブリがカテーテル10の管腔20,22内に2つ挿入されている。
【0039】
図3Cおよび3Dに示すように、先端側電極アセンブリ34のケーブル48は3本の電気リード44を有している。これらのリードは、基端側電極アセンブリ32において説明した構成と類似の構成を有している。3個の電極38が導電コネクタ42に装着されており、導電コネクタ42は対応するリード44の露出した導電部材45に接続されている。追加的または代替的な実施形態においては、リング電極36,38の代わりに部分的に円状または半円状の電極が用いられる。カテーテル10内の管腔の数、ケーブル40,48の数、各ケーブル40,48上の電極36,38の数、電極36,38間の距離および他の構造的特徴は、特定の用途に応じて異なる。
【0040】
一実施形態においては、基端側電極36または先端側電極38のいずれかが、患者体内からの電気信号や他のデータを測定するために使用される。つまり、電極は、神経刺激をもたらす局所電流を生成するために電気エネルギーを放出または受容することに加えて、またはこの代わりに、患者から電気的または他の種類の情報を受けるセンサとして機能することができる。
【0041】
図4A〜4Dに、複数の電極アセンブリ32,34がカテーテル10の管腔内に収められている状態を示す。
図4Aはカテーテル10を示し、
図4Bは2つの基端側電極アセンブリ32を示し、
図4Cは2つの先端側電極アセンブリ34を示す。2つの基端側電極アセンブリ32は、電極36が基端側窓18と整合するようにカテーテル10の管腔20,22内に配置される。同様に、2つの先端側電極アセンブリ34は、電極38が先端側窓16と整合するようにカテーテル10の管腔24,26内に配置される(
図4Aには示されていない)。整合された電極アセンブリ32,34は、各カテーテル管腔内において固定される(例えば接着材や他の構造または方法によって固定される)。
図4Dは、カテーテル10の
図4AのIVD−IVD面に沿った断面図である。カテーテル10の管腔20,22,24,26内には2つの基端側電極アセンブリ32および2つの先端側電極アセンブリ34が配置されている。
【0042】
図5を参照して、医療器具50は、2つの基端側電極アセンブリ32および2つの先端側電極アセンブリ34を有するカテーテル10を備えている。電極アセンブリ32,34は、電極36が基端側窓18を介して露出し、電極38が先端側窓16を介して露出するようにカテーテル10の長尺状の管状部材内に配置される。電気リード44によって構成されるケーブル40,48は、カテーテル10の基端から出てコネクタ52,54に装着される(例えばはんだ付け、圧着、PCB等により装着される)。
【0043】
医療器具50の組み立て時には、リード44および電極36,38を有する電極アセンブリ32,34が、カテーテル10の基端または先端の管腔開口を介して1つまたは複数の管腔内に導入される。例えば、リード44がカテーテル10の基端に挿入され、電極36,38がカテーテル10のさらに先端側の部位の所定位置に配置されるまで1つまたは複数の管腔内に通されるか、管腔を通って引かれる。電極アセンブリ32,34の挿入前または挿入後に、カテーテル壁の一部が除去されて窓16,18が形成される。窓16,18を介して電極が露出することによって、医療器具50が配置される血管の管腔と電極36,38との間に導電路が形成される。
【0044】
図5を引き続き参照して、例示的な使用方法において、ヒトまたは他の哺乳類(豚やチンパンジー等)の頸部および/または胸部の神経に対して経血管的に刺激を加えるために医療器具50が使用される。
図5は、ヒトの頸部および胸部の選択された神経および血管の構造を示し、具体的には、左横隔神経(PhN)56、右横隔神経58、迷走神経(VN)(図示しない)、外頸静脈または内頸静脈(JV)60、腕頭静脈(BCV)62、上大静脈(SVC)64および左鎖骨下静脈(LSV)66の相対位置を示している。
【0045】
医療器具50は、1つまたは複数の電極アセンブリ32,34を有するカテーテル10を患者の中心静脈内に経皮的に挿入することによって横隔膜を律動的に動かすために用いられる。カテーテル10の経皮的挿入はセルジンガー法によって行われ、皮下注射針を介してガイドワイヤが静脈内に挿入される。次に、カテーテルの先端がガイドワイヤ上を移動して静脈内に進められる。カテーテルの形状および機械的特性は、
図5に示すように、カテーテル10が左右の横隔神経に近い静脈壁の領域にかるく沿うようにカテーテル10が付勢されるように設計されている。
【0046】
図5の実施形態においては、医療器具50は左鎖骨下静脈66に挿入されて上大静脈64内に移動されている。図示しない別の構成においては、医療器具50は左頸静脈に挿入されて上大静脈64内に移動されている。カテーテル10は低侵襲手法によって患者体内に挿入されて一時的に配置され、患者体内から除去可能である。一実施形態において、カテーテルが左鎖骨下静脈66内に挿入されたときに、6対の窓18が左横隔神経56の後方に向かって配置され、3対の先端側窓16が右横隔神経58に対して横方向に向かうように窓18が配向される。
【0047】
一実施形態において、電極アセンブリ34は、カテーテル10と平行に延びる神経(
図5の右横隔神経58等)を最も効果的に刺激するために配置および配向された電極38を含み、電極アセンブリ32は、カテーテル10を横切る方向またはカテーテル10と直角方向に延びている神経(
図5の左横隔神経56等)を最も効果的に刺激するために配置および配向された電極36を含む。追加的または代替的な実施形態においては、電極アセンブリ34は、カテーテル10を横切る方向またはカテーテル10と直角方向に延びている神経を最も効果的に刺激するよう配置または配向された電極38を有し、電極アセンブリ32は、カテーテル10と平行に延びる神経を最も効果的に刺激するよう配置および配向された電極を有している。上記の実施形態においては、電極アセンブリ34の電極38は、カテーテル10に沿って電極アセンブリ32の電極36よりも先端側の位置に配置されている。しかし、他の実施形態においては、電極アセンブリ32の電極36が電極アセンブリ34の電極38よりも先端側に位置するように電極アセンブリ32がカテーテル10内に配置される。この代替的実施形態においては、カテーテル10の窓16,18が、電極アセンブリ32,34の代替的配置を可能にするように構成される。
【0048】
カテーテルが患者体内に完全に挿入されると、バイポーラ電極の組み合わせのいくつかの対をテストして、対象の神経の位置を特定するとともに、どの電極が最も効果的に対象神経を刺激するかを判断する。例えば、一実施形態においては、右横隔神経58の位置を特定するとともに、右横隔神経58を最も効果的に刺激するのは(先端側の組の電極38のうちの)どの対の電極38なのかを特定するためにテストが行われる。同様に、左横隔神経56の位置を特定するとともに、左横隔神経56を最も効果的に刺激するのは(基端側の組の電極36のうちの)どの対の電極36なのかを特定するためにテストが行われる。非限定的な例においては、選択された電極に電気的刺激を規則的に送る信号生成器を用いてテストが行われる。患者の容体を観察することやセンサを使用することによって、好適な電極対を特定する。
【0049】
図6Aは、
図4AのVIA−VIA面に沿ったカテーテル10の断面図である。
図6Aを参照して、神経刺激のために一対の電極を選択的に作動させることについて説明する。
図6Aの電極は、カテーテル10に沿った任意の箇所に位置する任意の対の電極であってよく、神経56は、カテーテル10に対して、平行や交差等のいかなる向きに配置された神経であってよい。しかしながら、説明を容易にするために、
図5では左横隔神経56はカテーテル10と交差しているが、
図6Aに関しては基端側電極36および左横隔神経56を参照する。
図6Aには示されていないが、一対の先端側電極38も右横隔神経58を刺激するために選択的に作動される。
【0050】
「選択的作動」においては、選択された一対のバイポーラ電極の間、例えば第1電極36’と第2電極36’’との間に電位が生じる。第1電極36’は第1窓18’と整合し、第2電極36’’は第2窓18’’と整合している。第1および第2電極36’,36’’および第1および第2窓18’,18’’をこのように配置することによって、第1および第2窓18’,18’’の近傍に電界68が形成される。第1および第2電極36’,36’’が、
図6Aに示す左横隔神経56や、電極36’,36’’の近くの他の神経等に効果的に刺激を与えるために選択される。窓18’,18’’および生じる電界68は、左横隔神経56または他の標的神経に向かうように配置されている。
【0051】
神経刺激時には、電流が電極36’,36’’の一方から他方に流れ、窓18’,18’’を通って流れて、血液および周囲組織に流れる。窓18’,18’’を有するカテーテル10は、電界68を制限して集中させる絶縁バリアとして機能するため、電界68が径方向外側に向かって全方位に拡張することが抑制される。電界を集中させることにより、標的神経の刺激を低いエネルギーレベルにて行うことができ、対象以外の神経や他の構造に刺激が加わることが避けられる。いくつか実施形態においては、刺激用電流は10〜6000nC(ナノクーロン)または50〜500nCである。
【0052】
図6Bに、神経78の刺激に用いられる従来例の神経刺激器具70を示す。従来器具70は、リードワイヤ72および電極74を有している。器具70は血管76に挿入され、器具70の周囲に電界80が形成される。
図6Bに示すように、電界80は器具70の外周の周囲に形成される。この電界は、神経78を標的としているとはいえ、特定の位置に制限されておらず、患者体内の他の解剖学的構造にも刺激を与えている。通常の場合、カテーテル10の窓16,18によって、より少量かつ安全な電流を用いて横隔神経56,58を励起することができ、過度の刺激や、他の神経、筋肉または心臓等の近傍構造に対する不要な刺激を抑制できる。
【0053】
(電極アセンブリ実施形態)
図7A〜13Kに、本明細書に記載する各カテーテルとともに使用できる電極および電極アセンブリの追加的または代替的な実施形態を示す。以下に記載する実施形態は、上記の電極アセンブリおよび電極の変更例である。したがって、言及されない特徴については変更されていないか、上記の実施形態に対して適宜変更が加えられている。参照を容易にするために、各実施形態の基端側電極36、基端側電極アセンブリ32、先端側電極38および先端側電極アセンブリ34には、その特徴のいくつかが下記の実施形態において変更されている場合でも、上記と同じ符号が付されている。
【0054】
(裸/縫いワイヤ)
図7A〜7Dに示すように、リード44の一部から非導電性材料46の層を除去し、下側の導電部材45を露出させてもよい。
図7Aはカテーテル10を示し、
図7Bは基端側電極アセンブリ32を示す。リード44の露出した導電部材45(直線状または表面積を増やすためにコイル状になっている)はカテーテル10の窓16,18内に配置され、いくつかの実施形態においては、窓16,18から径方向外側に延びている。別の実施形態においては、
図7Cに示すように、導電部材45はカテーテル外壁の開口部からカテーテル10の管腔を出て基端側−先端側方向に移動して、カテーテル10の別の開口部から管腔内に戻っている。電極36,38を形成している導電部材45の部分は、リード44の先端であってもよい。追加的または代替的に、絶縁リード44はカテーテル10に縫い込まれ、露出した導電部材45はカテーテル10の外側に配置され、残りの絶縁リード44はカテーテル管腔内に配置される。
図7Dは、カテーテル10の、露出した導電部材45を有する一対の基端側電極36を通る断面図である。
【0055】
いくつかの実施形態において、
図10A〜10Eを参照して説明される電極等の導電部材がカテーテル10の外側に固定され(例えば、接着、熱溶着等により固定される)、露出した導電部材45と電気的に接触する(例えば機械的手段、マイクロ溶接によって接触する)。このような導電部材を露出した導電部材45に固定することによって、露出した導電部材45のみを有する電極と比較して、導電性や表面積等の、電極の特定の電気的特性が向上する。導電部材の材料としては、プラチナ、プラチナ・イリジウム、金、ステンレス鋼、窒化チタン、MP35N、パラジウム等が挙げられる。
【0056】
(プリント電極)
図8Aに、カテーテル10の外側に直接プリントされた電極およびリードを有するカテーテルを示す。
図8Bは、カテーテル10の先端側電極38の分解図であり、
図8Cはカテーテル10の基端側電極36の分解図であり、
図8Dは
図8CのVIIID−VIIID面に沿った基端側電極対36の横断面図である。電極36,38は導電性インク(ポリマー内に懸濁する銀フレークまたは炭素フレーク)により形成される。これらの導電性インクは、カテーテル10に直接載置されて接着され、露出した電極36,38を除いて、外側ポリウレタンフィルムまたは他の可撓性および絶縁性を有するフィルムによって封止される。露出した電極36,38も、導電性や表面積等の電気的特性の向上、耐食性の付与、有毒となりえる銀酸化物形成の可能性の低減等の目的のいくつかを満たすために被覆される(例えば窒化チタンで被覆される)。
図8Cに示すように、先端側電極38の導電性インクトレースは、カテーテル10に沿って基端側電極36を越えて基端側に延びる。
【0057】
プリントされた電極を使用することによって、カテーテルの寸法または可撓性を大幅に変更することなく、設計の全体的な複雑度を低下させ、使用できるカテーテル管腔のスペースを最大化できる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、カテーテル外側にプリントされた電極を使用することによってスペースが節約されるため、カテーテルの寸法が小さくされる。追加的または代替的な実施形態においては、1つまた複数のカテーテル管腔が流体搬送、採血または中心静脈圧の監視のために使用される。別の追加的または代替的な実施形態においては、他の実施形態において記載したカテーテルアセンブリが存在しないため、管腔20,22,24,26等の複数のカテーテル管腔が省略される。したがって、一実施形態においては、カテーテル10は管腔28および管腔30のみを有している。例えば、プリントされた電極を有するカテーテル10が
図2に示す6個の管腔よりも少ない管腔を有している場合は、カテーテル10の断面積を小さくしてもよいし、数が少なくなった管腔のうちの1つまたは複数を大きくして大型の器具や他の物体を受容できるようにしてもよい。もしくは、器具または他の物体を受容するための1つまたは複数のより小さい管腔を追加してもよい。
【0058】
(電極支持カテーテル)
図9A〜9Eに、カテーテル10の管腔内に配置されたカテーテル94,96に支持された電極36,38を示す。この実施形態においては、基端側電極36は電極カテーテル94に接合され、先端側電極38は電極カテーテル96に接合されている。カテーテル94,96は、非導電性材料を含む長尺状の管状部材である。電極36,38はカテーテル94,96に圧着されて、電極カテーテル94,96の壁を介してリード44の導電部材45に電気的に接続されている。カテーテル94,96の断面積は、カテーテル10の対応する管腔の断面積よりも小さく、カテーテル10の管腔にカテーテル94,96を挿入できるようになっている。カテーテル94,96がカテーテル10に挿入されると、他の実施形態と同様に、電極36,38がカテーテル10の窓16,18と整合されてその位置に固定される。
図9Eには示されていないが、リード44は電極カテーテル94,96内を基端側−先端側方向に移動する。
【0059】
追加的または代替的な実施形態においては、単一の電極36もしくは38または一対のバイポーラ電極を有する1つまたは複数のカテーテルが、処置中(すなわち、カテーテル10が患者の血管系内にあるとき)にカテーテル10の管腔内に挿入され、最適な位置が見つかるまでいくつかの窓16,18に向かって移動する。これにより材料を減らすことができ、その結果、医療器具50の製造コストを低減できる。
【0060】
(外側電極)
図10A〜10Eは、カテーテル10の外側に配置された電極36,38を示す。
図10A〜10Eの実施形態においては、電極36,38はリード44に接続(マイクロ溶接等)されてカテーテル10の外側に固定(圧着、接着等)される。リード44はカテーテル10の壁を通って(例えば窓16,18を通って)挿入され、カテーテル10の管腔内に入る。
【0061】
別の実施形態においては、1つまたは複数のリング電極がカテーテル10の外側に固定される。1つまたは複数の神経に対して方向の照準を合わせやすくするために、電極の一部は絶縁コーティングによって覆われている。
【0062】
(射出成形)
図11A〜11Fに、電極アセンブリ32,34の製造工程に射出成形が含まれる実施形態を示す。電極を
図11Bおよび11Cに示すように構成するために、電極36,38が射出成形によってリード44に個別に装着される。電極36,38は、導電部材45と電気的に接触している。この成形工程において、各リード44の周囲に被覆部98が形成される。被覆部98はプラスチック等の非導電性材料を含んでいる。電極36,38は平坦状、半円状、または他の好適な形状を有している。同様に、被覆部98は、リード44の周囲において、例えば
図11Fに示す形状のような、いかなる形状を有していてもよい。
【0063】
図11Dおよび11Eに示す別の実施形態においては、電極36,38および束になったリード44が、成形治具内に配置される。成形治具からプラスチック等の材料がリード44の束の周囲に射出されることによって、電極が所定の位置に固定されて被覆部98が形成される。但し、一実施形態においては、電極38の少なくとも一部が露出した状態に維持される。いくつかの実施形態において、電極は薄いポリマー層によって被覆され、この層は後の工程において除去される。
図11Cに示す実施形態においては、被覆部98は電極の長手方向における近傍のみに配置され、単一のリードのみを包囲しているため「部分的」と表現される。
図11Eの実施形態においては、被覆部98は下側のリード44より大きい長手方向範囲を覆い、複数のリードを包囲しているため、「全体的」と表現される。各電極38がリード44に固定された後に、電極アセンブリ32,34がカテーテル10の管腔内に挿入されて窓16,18と整合される。
【0064】
(管状部材に支持された電極)
図12A〜12Kに、電極アセンブリ32,34のさらに別の実施形態を示す。この実施形態においては、管状部材100がリード44の先端102を支持し、電極36,38の近傍において先端102を保持している。
【0065】
図12Aはカテーテル10を示す。
図12Bは先端側電極アセンブリ34の斜視図である。
図12Cは基端側電極アセンブリ32の斜視図である。
図12Dは、
図12Bの先端側電極アセンブリ34の側面図である。
図12Eは、
図12Cの基端側電極アセンブリ32の側面図である。
図12Fは12Dの先端側電極38の横断面図である。
図12Gは12Eの基端側電極36の横断面図である。
図12Hは、
図12Bの2つの先端側電極アセンブリ34がカテーテル管腔内に収められた状態を示す、
図12Aのカテーテルの横断面図である。
図12Iは、
図12Cの2つの基端側電極アセンブリ32がカテーテル管腔内に収められた状態を示す、
図12Aのカテーテル10の横断面図である。
図12Jは、ECGワイヤがカテーテル10の中心管腔内に収められた状態の
図12Hのカテーテルを示す。
図12Kは、ECGワイヤがカテーテル10の中心管腔内に収められた状態の
図12Iのカテーテルを示す。
【0066】
図12B〜12Gに、基端側電極アセンブリ32の基端側電極36および先端側電極アセンブリ34の先端側電極38を示す。図に示すように、電極アセンブリ32,34は、他の実施形態と同様にリード44を有している。
図12Fおよび12Gに明確に示されているように、リード44の先端部102は、露出した導電部材45を有し、溶接等の方法によって管状部材100の外側および電極36,38の内側に取り付けられている。管状部材100の長さは1〜6mm、2〜4mm、一実施形態においては約3mmであるが、他の適宜な長さであってもよい。管状部材100は、ステンレス鋼の皮下チューブである。(
図12B〜12Eにおいては、管状部材100は見えておらず、そのすべてまたは大部分が電極36,38に覆われている。リード44の先端部102は
図12Dおよび12Eにおいて大まかな位置を示すために符号が付されているが、先端部102は電極36,38の下側に位置している。)
図12Fおよび12Gに示すように、リード44の先端部102によって、電極36,38は径方向外側に突出している。
【0067】
各リード44は、そのリードの先端102が取り付けられた電極よりも基端側に位置する電極36,38を通って基端側に移動する。例えば、
図12Bを参照して、先端側電極アセンブリ34の最も先端側の電極38に装着されたリード44は、他の2つの電極38および6個の基端側電極36すべてを通って基端側に移動する。
図12Cを参照して、最も先端側の電極36に装着されたリード44は他の5つの電極36のすべてを通って基端側に移動する。
【0068】
一実施形態において、先端側電極アセンブリ34は3本のリード44を有し、各リード44はそれぞれ各電極38に対応している。同様に、基端側電極アセンブリ32は6本のリード44を有し、各リード44はそれぞれ各電極36に対応している。各電極アセンブリ32,34のリード44が結合されるときに、リードが巻かれてケーブル48,40を形成する。より先端側の位置においては、ケーブル48(先端側電極アセンブリ34からのリード44によって形成されるケーブル)は1本または2本のリードを含む。より基端側の位置、例えば最も基端側の電極38より基端側の位置においては、ケーブル48は3本のリード44を含む。同様に、より先端側の位置においては、ケーブル40(基端側電極アセンブリ32からのリードによって形成されるケーブル)は1本、2本、3本、4本または5本のリードを含む。より基端側の位置、例えば最も基端側の電極36より基端側の位置においては、ケーブル40は6本のリード44を含む。
【0069】
図12Hおよび12Iは、カテーテル10の管腔内に収められた電極アセンブリ32,34の断面図である。
図12Hおよび12Iに示されるカテーテル10は
図2の形状とは異なるが、このカテーテル10も、基端側電極アセンブリ32を受容するように構成された管腔20,22と、先端側電極アセンブリ34を受容するように構成された管腔24,26と、ガイドワイヤを受容するように構成された管腔28と、操縦機構または他の構造を受容するように構成された管腔30とを有している。
図12Hに示すように、先端側電極38は先端側窓16と整合している。
図12Iには、基端側窓18と整合する基端側電極36が示されている。先端側電極アセンブリ34からのリード44は管腔24,26を通って基端側に延びているので、
図12Iの断面図に示されている。
【0070】
図12Jおよび12Kは
図12Hおよび12Iに似ているが、
図12Jおよび12Kにおいては管腔30内に2つの心電図記録(ECG)導電部材104が示されている点で相違している。ECG導電部材104は、患者のECG信号を感知するためにカテーテル10の先端に位置する1つまたは複数のECG電極106(
図12Aおよび14)に連結されている。
【0071】
図12A〜12Kに示す実施形態の利点としては、各電極36,38が他の電極36,38に対して移動可能であることが挙げられる。リード44は電極36,38に接続されているが、リード44は一般的に可撓性を有している。したがって、本実施形態においては、医療器具50の製造時にカテーテル10内に電極アセンブリ32,34を置くときに、少なくとも部分的に他の電極から独立して、対応する窓16,18に各電極36,38を配置することができる。電極を独立して配置できることによって、電極36,38がカテーテルや他の剛性構造によって他の電極に固定されている実施形態と異なり、位置決めの誤差が抑えられる。
【0072】
(円弧状電極)
図13A〜13Kに、
図12A〜12Kに示す実施形態に類似した実施形態を示す。
図12A〜12Kの実施形態と類似する特徴については説明を省略する。
図13A〜13Kの実施形態と
図12A〜12Kの実施形態の主な相違点は、
図13A〜13Kの各電極36,38は円弧状であるため、リード44の先端102(露出した導電部材45を含む)を保持して接触できるようになっている点である。
図13A〜13Kの基端側および先端側のアセンブリ32,34は管状部材100を有していても有していなくてもよい。
【0073】
図13Fおよび13Gに示すように、各電極36,38はC字状をなして、外壁108および内壁110を有している。電極の外壁108および内壁110は、リード44の先端102において露出した導電部材45を挟んでいる。
【0074】
(心電図記録電極)
図14に、2つのECG電極106および関連する部材を示す。本明細書における他の全特徴と同様に、ECG電極106は本明細書に記載する他の実施形態と共に用いることができる。ECG電極106はカテーテル10の先端に配置される(
図12A)。一実施形態においてはカテーテル10が2つのECG電極106を有しているが、いくつかの実施形態のカテーテル10は1つの電極106または2つよりも多い電極106を有している。各電極106は、絶縁された導電部材104によって患者の体外に配置されたECGシステムに接続されている。ECG導電部材104はまとめて編組または撚合されており、非導電性層105(
図12Jおよび12Kにも示されている)に覆われている。
【0075】
電極106は患者の心拍を監視する。心拍の監視は、医療器具50使用中の患者の心拍の変化を医療スタッフに警告できるため有益である。患者の心拍の変化は、医療器具50による特定の神経に対する刺激や、患者の心臓に対する意図しない刺激によって生じている可能性もある。また、心拍の監視は、神経の安定した活性化を達成するためにも役立つ。例えば、カテーテル10は患者の心臓が脈動したときに動くため、神経刺激に変動が生じる。患者の拍動がわかっていれば、一対のバイポーラ神経刺激電極の間に生成される電位をリアルタイムで調節でき、神経に一定の電荷を届けることができる。
【0076】
(操縦機構)
血管内においてカテーテルの窓16,18および電極36,38の位置決め制御を補助するために、様々な操縦機構を医療器具50に配置することができる。操縦機構はカテーテル10の中心管腔30またはカテーテル10の他の管腔内に配置される。少なくともいくつかの電極36,38を各標的神経のすぐ近くに配置することが好ましい。神経の近くに電極を置くことによって、血液を介して分流する電流が減り、神経の活性化に要する電流を低減できる。
【0077】
血管内の所望の位置への基端側窓18の配置を助ける要素はいくつかある。例えば、通常の鎖骨下静脈貫入角度とカテーテル10の形状および弾性とを適宜組み合わせることによって、基端側窓18を鎖骨下静脈の後壁に沿って、左横隔神経のすぐ近くに配置することができる。通常の場合、左横隔神経は左鎖骨下静脈の背面側において下方に延びている。
【0078】
窓16および対応する電極38を含んだカテーテル10の先端部が右横隔神経に対して所望の位置に確実に配置されるように、医療器具50は補強要素および操縦機構を備えていてもよい。一実施形態において、補強要素および操縦機構は、右横隔神経の近傍において上大静脈の外側壁に対する先端側の組の電極38の位置決めを補助する。
【0079】
(回転部材操縦機構)
図15A〜15Cに示すように、操縦機構112は、カテーテル10を操縦するワイヤまたはチューブ(例えばステンレス鋼皮下チューブやニチノール皮下チューブ)等の、予備成形された単一の長尺状部材114を有している。長尺状部材114はハンドル120と、ハンドル120に連結された基端部116と、基端部116に対して屈曲している先端部118とを有している。基端部116がハンドル120を介して回されると、先端部118がこれに応じて様々な位置に回転され、カテーテル10の先端を位置決めするよう機能する。
【0080】
図15A〜15Cに、3つの異なる位置に配置された長尺状部材114を示す。先端部118aは第1の位置にあり、先端部118bは第2の位置にあり、先端部118cは第3の位置にある。
図15Aは、3つの異なる位置に配置された操縦機構112の正面図であり、
図15Bは3つの異なる位置に配置された操縦機構112の上面図であり、
図15Cは、3つの異なる位置に配置された操縦機構112を操縦機構112の先端から操縦機構112の基端に向かって見た図である。
【0081】
長尺状部材114は、先端側電極38を含んだカテーテル10の先端部が血管壁に確実に当接できる剛性を有している。また、長尺状部材114は、基端側ハンドル120から先端部118へ操縦トルクを伝達できる剛性を有している。
【0082】
(制御部材操縦機構)
図16A〜16Eに、1つまたは複数の制御部材122を含む他の実施形態の操縦機構112を示す。一実施形態において、制御部材122はカテーテル10の一部を屈曲また湾曲させるために引いたり押したりされる。制御部材122は、皮下チューブまたは圧縮コイル等の1つまたは複数の管状部材124によって包囲され、管状部材124に対して長手方向にスライドする。管状部材124は可撓性を有している。本実施形態の操縦機構112は、管状部材124に装着(溶接、接着等)されたチューブやロッド等の補強要素126をさらに有している。
【0083】
図16A〜16Eの実施形態においては、カテーテル10の双方向の操縦が可能である。操縦機構112の基端において、それぞれ対応する管状部材124に対して制御部材122を押すまたは引くためのハンドル(図示しない)が配置されている。
図16Cに示すように、操縦アセンブリ112の先端において、管状部材124の間に隙間128が形成されている。この隙間28によって、カテーテル10の先端の屈曲が容易になる。組み立て後には、操縦機構112は中心管腔30またはカテーテル10の他の管腔に接着される。
【0084】
図17Aおよび17Bに、管状部材124が狭窄部130を有している、追加的または代替的な実施形態を示す。狭窄部130は、所望の可撓性をもたらすように、隙間128の代わりに形成してもよいし、隙間128と組み合わせて用いてもよい。狭窄部130はレーザー等の方法によって形成される。
【0085】
図18A〜18Eを参照して、操縦機構112のさらに別の実施形態においては、制御部材122がカテーテル10の異なる管腔132,134内に配置される。
図16A〜16Eの実施形態と同様に、制御部材122は、皮下チューブまたは圧縮コイル等の1つまたは複数の管状部材124に包囲されている。一実施形態においては、各管状部材124は対応する制御部材122の先端部を包囲しておらず、制御部材122の先端部は対応する管腔132、134の先端に固定されている。各管状部材124の先端部も、制御部材122の固定位置よりも基端側の位置において対応する管腔132,134に固定されている。制御部材122の固定部分と、対応する管状部材124の固定部分との間には管腔に沿って長手方向に延びる隙間が形成されている。このため、制御部材122が管状部材124に対して押されるか引かれた場合、隙間スペース内においてカテーテル10が湾曲する。
【0086】
図19A〜19Eに、操縦機構112が単一の制御部材122を有しているさらに別の実施形態を示す。制御部材122は管状部材124に包囲されて、カテーテル10の先端を湾曲させるために管状部材124に対して押し引きされる。制御部材122の先端部は、管腔30またはカテーテル10の他の管腔の先端内に固定され、管状部材124は、管腔30内のより基端側の位置に固定される。ここでも、カテーテル10の湾曲位置を制限するために、制御部材122の固定部分と管状部材124の固定部分との間に隙間が形成される。一実施形態においては、制御部材122が引かれることによってカテーテル先端が一方向に湾曲し、制御部材122が押されることによってカテーテル先端が反対の方向に湾曲される。
【0087】
いくつかの実施形態においては、前述の操縦機構がバルーンを有している。バルーンが膨張することによって、上大静脈外側壁に対するカテーテル10の先端部および先端側電極38の付勢が補助される。バルーンは、先端側電極38に対応する窓とは反対側のカテーテル側面に装着される。バルーンが膨張すると、電極38は上大静脈壁に向かって付勢される。
【0088】
(カテーテル実施形態)
(カテーテル窓構成)
図20A〜20Cを参照して、カテーテル10の窓16,18については様々な代替配置が可能である。例えば、
図1に示すように整列しているのではなく、カテーテル10の外面の基端−先端線136またはカテーテル10の外周上の周方向線138を基準として、窓16は別の窓16からずらして配置されていてもよく、窓18は別の窓18からずらして配置されていてもよい。例えば、より基端側の窓16が、最も先端側の窓16の中心を通って延びる一本の基端−先端線136上に位置していないときは、窓16は互いにずらして配置されている。
図20Bおよび20Cの各窓18は、窓18の中心を通って延びる周方向線138を基準にして、他の窓18からずらして配置されている。カテーテル10の実施形態においては、窓16,18はずらされた窓およびずらされていない窓をいかなる組み合わせにて構成することができる。前述したように、一組の窓16または窓16の列は、基端−先端線136を基準として、一組の窓18または窓18の列からずらされていてもよい。
【0089】
神経の近くに電極を配置することに加えて、窓16,18によって決定される、神経に対する電極の構成によっても、神経の軸索を刺激するために必要な電流量を低減させることができる。電極および電流の流れ方向が神経に平行であるか神経に沿っている場合は、より小さい電流で神経軸索を活性化でき、活動電位を生成できる大きさの経膜脱分極が発生する。神経経路の方向は正確には分かっておらず、個体によって異なる。
【0090】
複数の異なる電極構成が可能であるため、神経刺激に使用する電極の組を各個体に対して選択できる。例えば、基端側電極36については、神経を効果的に刺激するように、カテーテル10の周方向において電極対が直線状(例えば
図20Aのように周方向線138に沿った直線状)、互い違い(例えば
図20B)または角度をなして(例えば
図20C)配置される。
図20Aを参照して、周方向線138は2つの電極の中心(もしくはその上)を通っていてもよいし、2つの電極の別の部分(もしくはその上)を通っていてもよい(例えば、電極対は若干ずれていてもよい)。
図20Bを参照して、互い違いに配置された電極対は、長手方向に隣り合う電極の間(電極18aと電極18bの間等)の長手方向距離(カテーテル10の長手方向軸線に平行な基端−先端線に沿った距離)が、長手方向に隣り合う他の電極対(例えば電極18bおよび電極18c)の間の長手方向距離と略同じになるように配置される。
図20Cを参照して、角度をなして配置された電極対は、電極対の中心を通る平面がカテーテル10の長手方向軸線に対して直交しないように配置される。
図20Bの互い違いの電極の実施形態は、
図20Cの角度をなして配置された電極の実施形態の一部である。また、周方向線38が電極対の中心以外の部分もしくはその上を通っている
図20Aの実施形態も、角度をなして配置された電極対とみなすことができる。電極構成は、各患者の解剖学的な相違に応じて、カテーテル10に沿って変化させることができる。適切な電極対を選択することによって、患者間の相違があっても効果的な神経刺激を実施できる。
【0091】
(予備成形されたカテーテル)
図21に、本明細書に開示された実施形態による電極36,38を有する、予備成形されたカテーテル10を備える医療器具50を示す。予備成形されたカテーテル10は、円弧状、コイル状、S字状、U字状または他の予備成形された部分を有している。予備成形されたカテーテル10は、右横隔神経の経路が通常よりも前方または後方に位置している患者であっても、電極36,38が血管壁に密接して横隔神経または他の神経の近くに確実に配置されるように機能する。
【0092】
カテーテル10は、例えば、カテーテル管腔内に補強要素を挿入することによって予備成形できる。または、製造工程中に予備成形してもよい。予備成形されたカテーテル10は、可撓性を有しつつも若干の剛性を備えており、予備成形された形状に戻る傾向を有している。より剛性の高いガイドワイヤ上に配置されて挿入される際には、カテーテル10が直線状になるため挿入が容易になる。ガイドワイヤが取り出されると、カテーテル10は、予備成形された形状に戻る。
【0093】
(長尺状間隙を有するカテーテル)
図22A〜24Bを参照して、追加的または代替的な実施形態においては、カテーテル10の外側に沿って長尺状間隙140が形成される。長尺状間隙140はカテーテル10の外側と内腔とを接続し、スリットまたは経路とも称される。
図22Aおよび22Bに示すように、長尺状間隙140はカテーテル10の全長にわたって延びていてもよい。追加的または代替的に、
図23Aおよび23Bに示すように、長尺状間隙140はカテーテル10の全長の一部のみにわたって延びていてもよい。
図24Aおよび24Bに示すように、長尺状間隙140は追加的または代替的にスリーブ142によって覆われていてもよい。
【0094】
カテーテル10の管腔の長さおよび小径に起因して、医療器具50の組み立て時に電極アセンブリ32,34をカテーテル10の管腔に通すことが困難である場合がある。
図22A〜24Bの実施形態においては、電極アセンブリ32,34は、カテーテル10の1つまたは複数の管腔内に長尺状間隙140を介して挿入される。カテーテル10の管腔の基端または先端からでなく、管腔の径方向外側の位置からカテーテル10の管腔に到達できることによって、製造工程において、電気リード44および医療器具50の他の部品の取り付けを簡単に行うことができる。
【0095】
長尺状間隙140は、カテーテル10の最初の押出成形工程または型成形工程中に形成してもよいし、後の工程において形成してもよい。最初の押出成形または型成形に適したポリマーの非限定的な例としては、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリカーボネート系品種等の低密度および高密度熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)およびポリアミドブロック共重合体(PEBA)が挙げられる。
【0096】
図24Aおよび24Bに示されるように、電極アセンブリ32,34がカテーテル10の管腔内に設置された後、ワイヤアセンブリを管腔内に確実に保持するために、外側スリーブ142をカテーテル10上に通してもよい。例えば、外側スリーブ142は押出成形されたポリマー管状スリーブである。外側スリーブ142の内径は、カテーテル10の外面上を移動できる程度に大きく、カテーテル10上にてスライドした後に電極アセンブリ32,34をカテーテル10の管腔内に保持できる程度に小さい。外側スリーブ142は、カテーテル10の所望の長さにわたって基端側−先端側方向に延びる。
【0097】
外側スリーブ142は、薄い熱可塑性材料、例えばポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、シリコーンゴム、ナイロン、ポリエチレン、フッ素化炭化水素ポリマー等から形成できるが、これらに限定されない。スリーブに用いることができる好適なポリマー材の例としては、市販のPEBAX(登録商標)およびPELLETHANE(登録商標)が挙げられる。
【0098】
外側スリーブ142は、熱接合または多数の方法のいずれかによって機械的にカテーテル10に取り付けることができる。このような方法の一例においては、押出成形により形成可能な管状部材が、カテーテル10および外側スリーブ142の両方の上または周囲に配置される。管状部材は外側スリーブ142に対して圧接できるように収縮可能に形成される。例えば、管状部材は熱収縮チューブを含む。熱収縮チューブは、所望の特性に応じて1つまたは複数の層により構成することができる。一例において、Parker TexLoc社(テキサス州フォートワース)の熱収縮チューブは2つの電気的絶縁層を有している。Texflour(登録商標)フルオロポリマー二重収縮熱収縮チューブは、PTFE熱収縮外層およびFEPチューブの内層を有している。二重収縮チューブを使用する場合は、PTFEが収縮するとカテーテル10がFEPチューブに包囲され、FEPが溶融して防水保護被覆を形成するため、RF装置および他の電気刺激装置を含む様々な用途において好適である。
【0099】
次に、熱エネルギーが熱収縮チューブに印加されて外側スリーブ142およびカテーテル10の周囲にて熱収縮チューブが圧縮される。熱収縮チューブが収縮することによって、外側スリーブ142に対して径方向内側向きの圧縮力が加えられる。熱収縮チューブによってもたらされる圧縮力によって、カテーテル10に対する外側スリーブ142の固定が補助される。
【0100】
これと同時に、もしくは後の工程において、熱エネルギー(例えばRF加熱、電磁誘導加熱等)が、熱収縮チューブ、外側スリーブ142およびカテーテル10の組立品に印加される。この熱エネルギーは、カテーテル10に対する外側スリーブ142の結合をもたらすように組立品の温度を上昇できる大きさに設定される。熱収縮チューブによりもたらされる圧縮力と、材料をそれぞれの溶解温度以上に加熱する熱エネルギーとが組み合わされることによって、外側スリーブ142とカテーテル10とが互いに結合される。概して、熱エネルギーは、熱収縮チューブとポリマースリーブとの間の結合をもたらさない程度の大きさであり、また、カテーテル組立品の完全性を損傷させない程度の大きさである。
【0101】
次に、熱収縮チューブが、カテーテル10(外側スリーブ142内に収容されている)を含む組立品から除去される。スリット、切り欠き、穴または他の弱い領域を、組立品からの熱収縮チューブの除去を補助するために使用してもよい。いくつかの例では、収縮チューブはEPTFE等の生体適合性材料から構成され、カテーテル組立品上に維持される。
【0102】
本明細書に開示される実施形態によるカテーテル10の管腔内には、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))がコーティングされたマンドレル等の支持構造を挿入することが望ましい。支持構造は、カテーテル10の構造を維持するべく内側から支持し、製造工程全体にわたって長手方向管腔の開存性を維持する。支持構造は、後で管腔内の先端側または基端側の開口部のいずれかを介して支持構造を引っ張ることによって除去することができる。いくつかの例においては、支持構造は延伸および伸長することができ、除去に先立ち断面積を縮小させることが可能である。
【0103】
完成したカテーテルの長さに沿った特定の位置において様々な物理的特性(剛性、トルク伝達性、摩擦等)を変化させるために、カテーテル10の長さに沿った複数の位置において、材料、厚さまたは材料特性(デュロメータ等)が異なる1つまたは複数の外側スリーブ142を用いてもよい。例えば、可撓性スリーブ142をカテーテル10の先端部で用いることによって、カテーテル10の先端がガイドワイヤに追従しやすくなる。カテーテル10の基端部において硬度の高いスリーブ142を用いることによって、カテーテル10の先端を把持する際の押し込み性やトルク伝達性が向上される。隣り合うスリーブ142は、最終形成工程において、突合せ溶接等の方法によって端部同士が接合される。隣り合うスリーブ142の間の移行を滑らかにするために、重ね継ぎまたはスカーフ継ぎを適宜行ってもよい。
【0104】
上記の組み立て方法を利用して、他の要素または構造をカテーテル10の構造に組み込んでもよい。一例として、カテーテル10の先端を所望の形状または輪郭に形成するために、最初の押出成形品に沿った所望の位置において、成形要素を長尺状間隙140の1つまたは閉じた管腔内に挿入してもよい。成形要素は、カテーテル10に所望の構成(所望の湾曲等)を付与するように形成または予備形成可能である。成形要素は、例えば医療器具50の電極36,38の位置決めを補助するために、所望の角度関係を有している面においてカテーテル10が湾曲するように予備形成または形成される。
【0105】
成形要素は、弾性および可撓性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、成形要素は、例えば、所定の長さのニチノールワイヤ、リボン、バネ等を含む。いくつか実施形態においては、成形要素は、形状記憶合金等の、温度依存性の形状記憶材料を含む。いくつかの実施形態においては、成形要素は、カテーテル10が患者体内に挿入された後に所望の形状となるように構成される。例えば、体熱によって形状記憶成形要素が所望の形状に変化するようにしてもよいし、外的エネルギー源(電流等)を印加することにより、熱もしくは他の仕組みによって成形要素の形状を変化させてもよい。いくつかの実施形態においては、成形要素が作動時に湾曲する。
【0106】
(リードの代替的実施形態)
図25A〜26Hに示すように、追加的または代替的な実施形態においては、1つまたはすべての電極リード44が可撓性リボンケーブル144内に埋め込まれる。リボンケーブル144は、長さ方向に沿って互いに接続して単一の面構造を形成している複数の絶縁リード44を有している。面構造は可撓性を有し、他の形状に成形できる。本明細書に記載する他のリード44と同様に、リボンケーブル144のリード44は、絶縁材等の非導電性材料46の層によって包囲された長尺状の導電部材45を有している。
【0107】
図25A〜25Cの実施形態においては、リボンケーブル144が閉じられて可撓性の円筒状になっている(例えば、マンドレルの周りに成形され、隣接するリボン端部同士が長さ方向に沿って接着剤で固定されている)。このような設計は、カテーテルの長さに沿った箇所においてリード44の絶縁を除去して、可撓性の箔電極や本明細書の実施形態による電極等の電極36,38への装着を可能にする。リボンケーブルの実施形態の2つの基端側電極36については、断面図を
図25Cに示し、詳細を後述する。カテーテル10の長尺状の外側管状部材が、前述のように熱収縮方法によってリボンケーブル144の周囲に形成され、滑らかな電気絶縁壁が形成される。他の実施形態と同様に、各電極36,38はカテーテル10に形成された窓16,18を介して露出する。
【0108】
図25A〜25Cに示す実施形態の利点は、カテーテル10の全体においてより大きい断面をガイドワイヤおよび/または流体管腔に使用できることである。
図25Cに示すように、リボンケーブル144は支持カテーテル146によって支持されていてもよい。支持カテーテル146は、他の実施形態において記載した管腔を有していてもよいし、
図25Cに示すガイドワイヤ管腔28および搬送管腔148を有していてもよい。
図25A〜25Cの実施形態の別の利点としては、構造が単純であり製造が容易であることが挙げられる。
【0109】
図26A〜26Hに、リボンケーブル144の使用について詳細を示す。
図26Bに示すように、基端側電極36はリボンケーブル144のリード44に接触している。
図26Cに示すように、先端側電極38はリボンケーブル144の異なるリード44に接触していてもよい。リボンケーブル144は、弱い接着剤(サッカロース等の、血液に触れると溶ける接着剤)によって一時的に円筒状に保持される。
図26Dおよび26Eに示すように、ガイドワイヤ管腔30または他の管腔が、リボンケーブル144に恒久的に(例えば強力な生体適合性接着剤によって)取り付けられてもよい。リボンケーブル144および支持カテーテル146は薄い電気絶縁性被覆材に包囲されてカテーテル10に形成される(例えば、組立品をスリーブ142内にスライドさせて、前述の熱収縮方法等を用いて形成される)。リボンケーブル144の合わせ目の真上で合わせ目を開く(ナイフやレーザー等を用いて開く)ことによって、リボンケーブル144が
図26Dの閉じた位置から
図26Eの開いた位置に移行する。
図26Eに示す位置から
図26Dに示す位置にリボンケーブル144を変化させる際には接着剤を用いることができる。他の実施形態と同様に、カテーテル10の外側カバーには窓16,18が形成され、所望の位置において電極36,38が露出する。
【0110】
リボンケーブル144を有するカテーテル10は、閉じた状態で患者体内の血管内に導入される(
図26D)。血管内に入ると、接着剤が数分のうちに溶けてリボンケーブル144が略平坦な状態に展開できるようになる。この略平坦な状態は、弾性を備えているリボンケーブル144の優先的な状態である。必要に応じて、ニチノール等の弾性金属のワイヤやプルワイヤ等の2つの制御部材150をリボンケーブル144の端部に沿って埋め込んでもよい。制御部材150の弾性および/または作用によって
図26Eに示す所望の開位置への移行が補助される。
【0111】
図26Fに示すように、リボンケーブル144が備える弾性および/または制御部材150によって、右横隔神経58等の標的神経に近い血管壁に電極が密接するように、リボンケーブル144が血管壁に付勢される。この設計においては、窓16,18を介して露出しているカテーテル電極36,38の1つまたは複数が標的神経の極めて近くに位置している可能性が高く、非常に低い電流または電荷供給によって、きわめて選択的に神経を活性化し得る。さらに、この設計においては、電極36,38が血管内の血液から効果的に絶縁されるため、電流が望まない領域に広がることが抑制され、標的神経の活性化の選択性が最も高くなる。
【0112】
図26Gは、血管内で展開されるリボンケーブル144を有するカテーテル10の投影図である。本実施形態では、カテーテル10の基端部において、血液に溶けない恒久的な接着剤でリボンケーブル144が接着されている領域は略円形の管状断面を有している。これに対し、カテーテル10の先端部は、
図26Gに示すように、開放リボンケーブル状態に開かれている。この部分ではリボン端部の連結が一時的なものであり、接着材は血管内に入った後に溶解している。
図26Gには、リボンケーブル144を有するカテーテルの先端部は自然に螺旋状(もしくはつるまき状)構造となることがさらに示されている。螺旋状構成の寸法は、リボンケーブル端部に沿って埋め込まれた制御部材150の特性によって決まる。ある構成においては、螺旋状部分の直径が約20mmであり、長さが約30mmである。このような構造によって、先端側ワイヤのいくつかが例えば上大静脈64の外側を延びる標的右横隔神経58(
図26Gには示されていないが
図21には示されている)のすぐ近くに確実に配置される。
【0113】
図26Hに、リボンケーブル144を有するカテーテル10の先端側コイル部の全長を制限するために用いられる制御部材152を示す。制御部材152はカテーテル10の先端の一箇所に取り付けられ、カテーテルの基端部の管腔内を自由に延びて患者の体外に出る。プルワイヤの基端は、患者の体外において医療スタッフに制御される。制御部材152を引くことによって、リボンケーブル144を有するカテーテル10がSVC内で最大限に開くように制御され、リボン表面が血管壁に対して完全に当接するように展開される。
【0114】
(気圧計を有する医療器具)
医療器具50は、高度の異なる場所で動作できるように気圧に対する調整機能を有していてもよい。横隔膜に対して電気刺激による横隔神経ペーシングを受ける患者は、一定の酸素供給量を吸気する必要があるが、空気の密度は高度に応じて異なる。自然な修正法としては、患者がより深くおよび/または速く呼吸することによって対処される。医療器具50またはカテーテル10は、高度変化の影響を補うために大気圧を測定する測定器(気圧計等)を有していてもよい。高度の高い場所で動作できることは、軍隊や、怪我人を搬送する他の機関(スキーリゾート、登山者)、そしてより一般的には、ペーシングを必要とする患者が飛行機で移動する際に特に有益である。
【0115】
(電子チップを備える医療器具)
医療器具50またはカテーテル10は、カテーテル10および/またはその使用方法についての情報を記憶している電子チップを備えていてもよい。例えば、チップはカテーテル10のハブに配置される。一実施形態においては、カテーテル10が制御装置に接続されると、制御装置がチップを読み取り、チップの暗号化および/または応答が正しい場合にのみ電極36,38に信号を送る。チップは、カテーテルシリアル番号、サイズ(長さおよび/または直径)、ロット番号、バッチ番号、製造日、電極構成、電極相互接続情報(カテーテルにおいて導体によって電極に接続されたコネクタ用のピン配列)等のうちの1つまたは複数の情報を含む。制御装置は、チップに記録された情報によって識別された特定のシリアル番号またはカテーテル種類のみに適応されるアルゴリズムアップグレードを確定してもよい。
【0116】
(他の代替的実施形態および用語解釈)
前述したように、本明細書に開示されたすべての実施形態の部品および特徴は、開示された他の部品および特徴と適宜組み合わせることができる。しかし、例示を目的として、本明細書に記載する例示的実施形態の変更例を以下に挙げる。
【0117】
・電極の数の変更
・電極構成の変更
・電極固定の変更(圧着、接着剤、マイクロ溶接等)
・電極形状の変更(球形、楕円形、円形、長方形等)
・電極材料の変更
・電極表面積の変更
・電極間隔の変更
・管腔の数または形状の変更
・窓の形状/寸法の変更
・カテーテルの太さの変更(例えば、3mm(9Fr)以上/以下)
・カテーテルの長さの変更
・操縦機構の変更
本明細書および特許請求の範囲において、内容が明らかに異なることを示していない限り、以下の通りとする。
【0118】
・「備える」、「備えている」等は、排他的または網羅的ではなく、包括的な意味に解釈される。つまり、「含んでいるがこれに限定されない」と解釈される。
・「接続された」、「連結された」およびこれらの変形は、2つ以上の要素間の直接的または間接的なあらゆる接続および連結を指す。要素間の連結または接続は物理的、論理的またはこれらの組み合わせが可能である。
【0119】
・「本明細書において」、「上記」、「下記」および類似の用語は、本明細書について記載する場合、本明細書の全体を参照するものであり、本明細書の特定の一部のみを参照するものではない。
【0120】
・2つ以上の項目のリストに関して使用される「または」は、「リスト中の項目のいずれか」、「リスト中の項目のすべて」および「リスト中の項目の組み合わせ」のすべてに該当する。
【0121】
・単数形は、任意の適切な複数形の意味を含む。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「縦」、「横」、「水平」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「内向き」、「外向き」、「左」および「右」等の方向を示す言葉は、記載および表示される装置の特定の配向によって決定される。本明細書に記載する主題は、多くの代替的配向が可能である。したがって、これらの方向を表す単語は厳密に定義されているものでなく、狭義に解釈されない。
【0122】
本明細書においては、特定のシステム、方法および装置の実施例を例示のために記載した。これらはあくまでも例である。本明細書に記載される技術は、上記の例示的システム以外のシステムにも適用可能である。多くの変更、修正、追加、省略および置換が、本発明の実施において可能である。本発明は、記載された実施形態に対する当業者に自明の変更例を含む。このような変更例は、特徴、要素および/または機能を同様の特徴、要素および/または機能で置き換えること、異なる実施形態の特徴、要素および/または機能を混合および組み合わせること、本明細書に記載の実施形態の特徴、要素および/または機能を他の技術の特徴、要素および/または機能と組み合わせること、および/または、記載された実施形態の特徴、要素および/または機能を省略および組み合わせることによってもたらされる。
【0123】
したがって、添付の特許請求の範囲および後で導入される特許請求の範囲は合理的に推測され得るすべての変更、置換、追加、省略およびサブコンビネーションを含むように解釈される。特許請求の範囲は、実施例に記載された好ましい実施形態によって限定されるものではなく、全体的に見て本明細書と一致する最も広い解釈が与えられる。