【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、本発明は生体適合性高分子または粘着剤を含み、底面の直径(w)及び高さ(h)がなす縦横比率(w:h)が1:5乃至1:1.5であり、末端チップ(distal tip)の角度(α)が10゜乃至40゜であるマイクロ構造体(microstructure)を提供する。
【0015】
本発明者らは、前述した従来技術の問題点を解決するために例の研究努力した結果、生体適合性高分子を用いてマイクロ構造体を製作し、特にマイクロ構造体のチップ(tip)角度及び直径範囲を多様に製作して皮膚透過に容易なマイクロ構造体を開発した。本発明者らは、マイクロ構造体の底面の直径(w)及び高さ(h)がなす縦横比率(w:h)を最適化して、皮膚透過のための最適チップ角度を確保した。また、マイクロ構造体に2重または3重構造を適用して(本発明のB、C、及びDタイプのマイクロ構造体)機械的強度を極大化し、マイクロ構造体の配列を六角形パターンを適用して皮膚付着時、マイクロ構造体の全体的に均等な圧力が伝達されるようにし、窮極的に生体内にマイクロ構造体に搭載された有用成分を安定的に伝達することができることを確認した。
【0016】
本明細書の用語“生体適合性高分子”は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギニック酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、キトサン、ポリリシン(polylysine)、コラゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルランポリラクタイド、ポリグルコライド(PGA)、ポリラクタイド−グリコライド共重合体(PLGA)、プルランポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(ブチリック酸)、ポリ(バレリック酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非−分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、サイクロデキストリン、及びこのような高分子を形成する単量体の共重合体及びセルロースで構成された群から選択された1以上の高分子である。
【0017】
本明細書の用語“粘着剤”は、シリコン、ポリウレタン、ヒアルロン酸、物理的接着剤(gecko)、ポリアクリル、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチレンビニルアセテート、及びポリイソブチレンで構成された群から選択された1以上の粘着剤である。
【0018】
本明細書の用語“ヒアルロン酸”は、ヒアルロン酸だけでなく、ヒアルロン酸塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、及びヒアルロン酸カルシウム)、及びこれらの混合物を全て含む意味として使われる。本発明の一具現例によれば、本発明のヒアルロン酸は分子量が100−5000kDaである。本発明のいかなる具現例によれば、本発明のヒアルロン酸は分子量が100−4500、150−3500、200−2500kDa、220−1500kDa、240−1000kDa、または240−490kDaである。
【0019】
本明細書で使われる“カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)”は、公知された多様な分子量のCMCを使用することができる。例えば、本発明で使われるCMCの平均分子量は90,000kDa、250,000kDa、または700,000kDaである。
【0020】
本発明は多様なマイクロ構造体を提供することができ、例えばマイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ、マイクロファイバー、マイクロスパイク、マイクロプローブ、マイクロバーブ(microbarb)、マイクロアレイ、またはマイクロ電極を提供することができる。本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体はマイクロニードルである。
【0021】
本発明の一具現例によれば、本発明の生体適合性高分子または粘着剤は、1−5%(w/v)で含まれる。本発明の特定具現例によれば、本発明のヒアルロン酸またはCMCの濃度は3%(w/v)で含まれる。
【0022】
本発明のマイクロ構造体の最も大きい特徴の1つは、従来のものとは異なり、2重または3重構造が適用されて機械的強度が極大化されたということである。このために、マイクロ構造体の底面の直径(w)及び高さ(h)がなす縦横比率(w:h);マイクロ構造体の末端チップ(distal tip)角度(α);及びチップの直径範囲(t)などを最適化して皮膚透過が容易であるように製作した。
【0023】
前述した条件によって製作された本発明のマイクロ構造体は、
図1a乃至
図1dのAタイプ乃至Dタイプの形状に表れる。Aタイプのマイクロ構造体は一般的な円錐形状であり;Bタイプは円柱と円錐の2重構造であり;Cタイプは変形された円柱(円錐台)と円錐の2重構造であり;Dタイプは2つの変形された円柱(円錐台)と円錐の3重構造である。
【0024】
本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体の底面の直径(w)及び高さ(h)がなす縦横比率(w:h)は1:5乃至1:1.5であり、末端チップ(distal tip)の角度(α)が10゜乃至40゜である。本発明の他の具現例によれば、前記縦横比率は1:5乃至1:2である(
図1a−1d参照)。
【0025】
図1aで、Aタイプは円錐形状のマイクロ構造体であって、底面の直径(w)、高さ(h)、及びチップの角度(α)で示すことができる。本発明の一具現例によれば、Aタイプの縦横比率(w:h)は1:5乃至1:1.5である。
【0026】
図1bで、Bタイプは円柱と円錐の2重構造で構成されたマイクロ構造体であって、円錐の底面の直径(w)、高さ(h
1)、及びチップの角度(α);及び円柱の底面の直径(w)及び高さ(h
2)で示すことができる。本発明の一具現例によれば、Bタイプのw
1:h
1縦横比率は1:5乃至1:1.5であり、w:h
2縦横比率は1:5乃至1:1.0であり、w:h縦横比率は1:5乃至1:2である。本発明の特定具現例によれば、w:h
2縦横比率は1:1.4であり、h
1:h
2比率は1.1:1である。一方、本発明のBタイプのマイクロ構造体で最適のw:h縦横比率は1:3であり、最適の構造体間の間隔範囲は1/2h−2hである。
【0027】
図1cで、Cタイプは円錐台と円錐の2重構造で構成されたマイクロ構造体であって、円錐の底面の直径(w
1)、高さ(h
1)、及びチップの角度(α);及び円錐台の底面の直径(w)及び高さ(h
2)で示すことができる。本発明の一具現例によれば、Cタイプのw
1:h
1縦横比率は1:5乃至1:1.5であり、w:h
2縦横比率は1:5乃至1:1.0であり、w:h縦横比率は1:5乃至1:2である。本発明の特定具現例によれば、w:h
2縦横比率は1:1.25であり、h
1:h
2比率は1.3:1である。一方、本発明のCタイプのマイクロ構造体で最適のw:h縦横比率は1:3であり、最適の構造体間の間隔範囲は1/2h−2hである。
【0028】
図1dで、Dタイプは2つの円錐台と円錐の3重構造で構成されたマイクロ構造体であって、円錐の底面の直径(w
1)、高さ(h
1)、及びチップの角度(α);上部円錐台の底面の直径(w
2)、高さ(h
2);下部円錐台の底面の直径(w)及び高さ(h
3)で示すことができる。本発明の一具現例によれば、Dタイプのw
1:h
1縦横比率は1:5乃至1:1.5であり、w:h
2及びw:h
2の縦横比率は1:5乃至1:1.0であり、w:h縦横比率は1:5乃至1:2である。
【0029】
本発明の特定具現例によれば、w:h
2縦横比率は1:1.5、w:h
3縦横比率は1:1であり、h
1:h
2:h
3比率は1.5:1.5:1である。一方、本発明のDタイプのマイクロ構造体で最適のw:h縦横比率は1:3.5乃至1:4であり、最適の構造体間の間隔範囲は1/2h−2hである。
【0030】
本発明のマイクロ構造体の高さは80μm乃至1500μmに製作できる。本発明の特定具現例によれば、前記マイクロ構造体の高さは100μm乃至1300μmである。
【0031】
本発明の一具現例によれば、末端チップの直径(t)は2−20μmである。前記直径(t)は顕微鏡または電子顕微鏡で40倍乃至250倍拡大して観察されるマイクロ構造体の末端チップの断面部分の直径を意味する。
【0032】
本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体は80以上の機械的強度(透過率、%)を有する。本発明の他の具現例によれば、前記機械的強度は80−100である。本発明の更に他の具現例によれば、前記機械的強度は90−100である。本発明の更に他の具現例によれば、前記機械的強度は95−100である。
【0033】
本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体のうち、2重及び3重構造を有するB−Dタイプの皮膚透過度がAタイプの皮膚透過度より高く表れた。
【0034】
本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体は生体適合性高分子及び粘着剤の他に有用成分を追加的に含む。例えば、前記有用成分は薬物、美容成分(美白、シワ改善などの化粧料成分)、またはその組合せである。本発明のマイクロ構造体は有用成分を含むことによって、皮膚内に有用成分を有効に伝達することができる。
【0035】
本発明の一具現例によれば、本発明のマイクロ構造体は、金属、高分子ポリマー、または粘着剤を追加的に含むことができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、本発明は、(a)生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドに供給するステップ;(b)前記生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドの孔に注入するステップ;(c)前記生体適合性高分子または粘着剤を乾燥させるステップ;及び(d)前記マイクロモールドと乾燥された生体適合性高分子または粘着剤を分離してマイクロ構造体を形成させるステップ;含むマイクロ構造体の製造方法を提供する。
【0037】
本発明の方法を各々のステップ別に詳細に説明すると、次の通りである:
【0038】
ステップ(a):生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドに供給するステップ
【0039】
本発明によれば、まず生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドに供給する。
【0040】
本発明のマイクロモールドは当業界のいかなるマイクロモールド製作技法を用いても製作可能である。例えば、MEMS(Micro−Electro Mechanical System)製作技法、フォトリソグラフィ(photolithography, Biodegradable polymer microneedles: Fabrication, mechanics and transdermal drug delivery, Journal of Controlled Release 104, 51−66, 2005)製作技法、及びソフトリソグラフィ(soft lithography)製作技法などが本発明のマイクロモールド製作に利用できるが、これに制限されるものではない。そのうち、ソフトリソグラフィ(soft lithography)製作技法を用いる場合、PDMS(polydimethylsiloxane)またはPMMA(Poly(methyl methacrylate))のような弾性体モールドを製造して、これをマイクロ構造体の製造に用いることができる。PDMSモールドを製造する技術は一種のプラスティック加工技術であって、キャスティング(casting)、インジェクション(injection)、ホット−エンボシング(hot−embossing)などの多様な方法により所望のモールディング構造を得ることができる。例えば、シリコンウエハ、ガラスなどの基板上に感光物質をコーティングし、フォトマスクを用いてパターニングすれば、結果的にマスター(master)が作られる。これを鋳型にPDMSをキャスティングし焼結させれば、スタンプ機能をするPDMSモールドを完成することができる。
【0041】
本発明の一具現例によれば、前記ヒアルロン酸は分子量が240−490kDaであり、本発明の特定具現例によれば、ヒアルロン酸衣平均分子量は360kDaである。
【0042】
本発明によれば、ステップ(a)で生体適合性高分子の固形分含有量(solid content)は全体マイクロ構造体の組成に対して1−30%(w/v)で含まれることができる。
【0043】
本発明の一具現例によれば、ステップ(a)で生体適合性高分子は全体マイクロ構造体の組成に対して濃度が1−5%(w/v)であり、本発明の特定具現例によれば、3%(w/v)の濃度で含まれることができる。
【0044】
ステップ(b):生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドの孔に注入
【0045】
次に、前記生体適合性高分子または粘着剤をマイクロモールドの孔に注入する。
【0046】
本発明の一具現例によれば、本発明の注入はマイクロモールドに生体適合性高分子を供給した後、(i)前記マイクロモールドに800−1000gの遠心力を加えて実施するか、または(ii)500−860mmHg圧力下で実施することができる。
【0047】
例えば、マイクロモールドに800−1000gの遠心力を加えて実施する場合、800−1000gで10−20分間遠心分離するか、または900gで15分間遠心分離を実施することができる。また、真空圧力で実施する場合、500−860mmHg圧力下で5−20分間注入するか、または600−760mmHg圧力下で10−30分間注入することができる。
【0048】
本発明の特定具現例によれば、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギニック酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、キトサン、ポリリシン(polylysine)、コラゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルランポリラクタイド、ポリグルコライド(PGA)、ポリラクタイド−グリコライド共重合体(PLGA)、プルランポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(ブチリック酸)、ポリ(バレリック酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非−分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、サイクロデキストリン、及びこのような高分子を形成する単量体の共重合体及びセルロースで構成された群から選択された1以上の高分子である。本発明の特定具現例によれば、前記粘着剤はシリコン、ポリウレタン、ヒアルロン酸、物理的接着剤(gecko)、ポリアクリル、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチレンビニルアセテート、及びポリイソブチレンで構成された群から選択された1以上の物質を含む。
【0049】
ステップ(c):生体適合性高分子または粘着剤の乾燥
【0050】
ステップ(b)の実施の以後、前記生体適合性高分子または粘着剤を乾燥させる。
【0051】
本発明の一具現例によれば、前記ステップ(c)は、(i)常温で36−60時間の間実施するか、(ii)40−60℃で5−16時間の間実施するか、または(iii)60−80℃で2−4時間の間実施することができる。本発明の他の具現例によれば、前記ステップ(c)は、(i)20−30℃で42−54時間の間実施するか、(ii)45−55℃で5−7時間の間実施するか、または(iii)65−75℃で2−4時間の間実施することができる。本発明の特定具現例によれば、前記ステップ(c)は、(i)25℃で48時間の間実施するか、(ii)50℃で6時間の間実施するか、または(iii)70℃で3時間の間実施することができる。このような乾燥過程はマイクロ構造体の機械的強度を高めてくれる。
【0052】
ステップ(d):マイクロモールドと架橋されたヒアルロン酸ハイドロジェルを分離
【0053】
ステップ(c)の実施の以後、本発明のマイクロモールドと乾燥された生体適合性高分子または粘着剤を分離してマイクロ構造体を形成させる。
【0054】
本発明のマイクロ構造体の製造方法は、複数個のマイクロ構造体が四角形または六角形に配列されるように形成することができる。六角形配列方式を適用して製造された複数のマイクロ構造体は、皮膚付着時、マイクロ構造体の全体的に均等な圧力が伝達できる。
【0055】
本発明の一具現例によれば、前記複数個のマイクロ構造体は250−1500μmの間隔(p)で配列できる。この場合、1cm
2面積当たり約25−1300個の構造体を配列することができる(<表1>参照)。
【0056】
本発明のマイクロ構造体の製造方法は、前述したマイクロ構造体を共通とするため、前記マイクロ構造体との関係で共通された内容は本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0057】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は
図1a乃至
図1dのA乃至Dタイプの形状のうち、いずれか1つの形状であることを特徴とするマイクロ構造体を提供する。A乃至Dタイプ形状のマイクロ構造体の特徴は、前述した通りであり、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。