特許第6983173号(P6983173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983173
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】向上した光学性能を有する中間膜
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20211206BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20211206BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C03C27/12 Z
   B60J1/00 J
   B60J1/02 M
【請求項の数】4
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-551924(P2018-551924)
(86)(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公表番号】特表2019-518691(P2019-518691A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】US2017023298
(87)【国際公開番号】WO2017176452
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年3月10日
(31)【優先権主張番号】62/318,128
(32)【優先日】2016年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/440,263
(32)【優先日】2017年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】スパングラー,ローラ・リー
(72)【発明者】
【氏名】ハールバット,ジェフリー・ビー
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/086234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B60J 1/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間膜又は中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、
(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;そして
(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与える;
ことを含み;
ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の全体にわたって、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0mradを超えて0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う上記方法。
【請求項2】
形成を、形成された中間膜のHUD領域の全体にわたって、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0mradを超えて0.075mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フロントガラスを製造する方法であって、1対のグレージングパネルの間に形成された中間膜を積層してフロントガラスを形成することを更に含み;
フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示し、
標準取付条件は、標準の高さの運転者がそのフロントガラスに関して最小の反射二重像分離距離を観察する与えられたフロントガラスに関する取付条件であり、
標準の高さの運転者は、そのアイボックスの中心線が、取り付けた状態のフロントガラスの内部上の最も低い位置から水平に引いた線から134.4mmの高さである運転者であり、
上部アイボックス反射二重像分離距離及び下部アイボックス反射二重像分離距離は以下の方法で測定される、請求項1に記載の方法。
光をHUD投影システムからフロントガラスを通して通過させることによって投影像を生成する。カメラレンズの中心線が182.4mm(上部アイボックス反射二重像分離距離の測定時)又は126.2mm(下部アイボックス反射二重像分離距離の測定時)の高さに位置するデジタルカメラを用いて投影像を撮像する。カメラによって撮像された得られた像をデジタル化して、複数のピクセルを含むデジタル投影像を形成する。デジタル化したら、撮像画像を定量分析して、少なくとも1つの一次像指標、及び少なくとも1つの二次像指標を含むプロファイルを形成する。分析は、デジタル投影像の少なくとも一部を、像のその部分におけるピクセルの強度を表す数値を含む垂直像マトリクスに変換することによって行う。マトリクスの列を抽出し、ピクセル数に対してグラフ化してプロファイルを与える。プロファイルに関する一次像指標をプロファイルに関する二次像指標と比較して差を求める。次に、この差に基づいて一次ピークと二次ピークの間の分離距離(ピクセル)を用いて、次式:
【数1】
にしたがって反射二重像分離距離(D)(分(アーク分))を計算する。
【請求項4】
中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、
(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;
(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与え、ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の全体にわたって、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0mradを超えて0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行い;そして
(c)形成された中間膜を1対のグレージングパネルの間に積層してフロントガラスを形成し、ここでフロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す;
ことを含み、
標準取付条件は、標準の高さの運転者がそのフロントガラスに関して最小の反射二重像分離距離を観察する与えられたフロントガラスに関する取付条件であり、
標準の高さの運転者は、そのアイボックスの中心線が、取り付けた状態のフロントガラスの内部上の最も低い位置から水平に引いた線から134.4mmの高さである運転者であり、
上部アイボックス反射二重像分離距離及び下部アイボックス反射二重像分離距離は以下の方法で測定される、上記方法。
光をHUD投影システムからフロントガラスを通して通過させることによって投影像を生成する。カメラレンズの中心線が182.4mm(上部アイボックス反射二重像分離距離の測定時)又は126.2mm(下部アイボックス反射二重像分離距離の測定時)の高さに位置するデジタルカメラを用いて投影像を撮像する。カメラによって撮像された得られた像をデジタル化して、複数のピクセルを含むデジタル投影像を形成する。デジタル化したら、撮像画像を定量分析して、少なくとも1つの一次像指標、及び少なくとも1つの二次像指標を含むプロファイルを形成する。分析は、デジタル投影像の少なくとも一部を、像のその部分におけるピクセルの強度を表す数値を含む垂直像マトリクスに変換することによって行う。マトリクスの列を抽出し、ピクセル数に対してグラフ化してプロファイルを与える。プロファイルに関する一次像指標をプロファイルに関する二次像指標と比較して差を求める。次に、この差に基づいて一次ピークと二次ピークの間の分離距離(ピクセル)を用いて、次式:
【数2】
にしたがって反射二重像分離距離(D)(分(アーク分))を計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2016年4月4日出願の米国仮特許出願62/318,128(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
[0002]本発明は、ポリマー中間膜、及びポリマー中間膜から製造されるフロントガラスのような多層パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]「安全ガラス」という用語は、一般にガラスの2つのシートの間に配置されている少なくとも1つのポリマーシート又は中間膜を含む透明な積層体を指す。安全ガラスは建築用途及び自動車用途において透明バリヤとしてしばしば用いられており、その主要な機能の1つは、物体にガラスを貫通させることなく衝撃から生成するエネルギーを吸収することである。衝撃力がガラスを破壊するのに十分な場合には、ガラスはポリマー中間膜に結合した状態で維持され、これにより損傷及び負傷を引き起こす可能性がある鋭利なガラスの破片の分散が阻止される。安全ガラスはまた、紫外(UV)及び/又は赤外(IR)放射線の通過の減少のような他の利益を与えることもでき、これはまた、色、テクスチャーなどを加えることによって窓の開口部の美的外観を向上させることもできる。更に、より静かな内部空間をもたらす所望の遮音特性を有する安全ガラスも製造されている。
【0003】
[0004]積層安全ガラスは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを搭載した乗物において用いられている。HUDシステムは、計器群又は他の重要な情報のイメージを、フロントガラス上の乗物の操縦者の眼のレベルの位置に投影する。かかるディスプレイによって、運転者は、ダッシュボード情報を視覚で入手しながら近付いてくる進行路に集中し続けることが可能になる。均一な厚さを有する平坦なフロントガラス上に投影した場合、投影像はそれぞれのガラスパネルの内表面及び外表面に反射するので、投影像の位置における差によって、干渉する反射二重像又は「ゴースト」像が形成される。
【0004】
[0005]これらのゴースト像を最小にするために用いられる1つの方法は、誘電体被覆のような被覆を、ガラスとポリマー中間膜の間のフロントガラスの表面の1つの上に施すことである。この被覆は二次像の明度を大きく減少させながら一次像に非常に近接している位置に第3のゴースト像を形成して、二次像が背景中に溶け込むように見えるように設計されている。残念なことに、たまに、かかる被覆の有効性が制限され、被覆それ自体がポリマー中間膜のガラス基材への接着を妨げる場合がある。これによって、光学的歪み及び他の性能の問題が引き起こされる場合がある。
【0005】
[0006]フロントガラスにおけるゴースト像を減少させる他の方法は、内側及び外側のガラスパネルを互いからある1つの角度で配向させることである。これにより、反射像の位置が単一の位置に整列し、それによって単一の画像が形成される。通常は、これは、不均一な厚さの少なくとも1つの領域を含むくさび形状又は「テーパー状」の中間膜を用いることによって外側パネルを内側パネルに対して変位させることによって行われる。殆どの従来のテーパー状中間膜はHUD全体にわたって一定のくさび角度を含んでいるが、最近になってHUD領域にわたって複数のくさび角度を含む幾つかの中間膜が開発された。
【0006】
[0007]従来のテーパー状中間膜に関する問題は、ゴーストの出現を最小にするのに必要なくさび角度が、フロントガラス取付の仕様、投影システムの設計及び据付、及びユーザーの位置などの種々のファクターによって左右されることである。多くの従来のテーパー状中間膜は、与えられた乗物に特有の単一の組の条件に関して設計及び最適化されている。更に、最適化条件の組には、通常は、運転者の高さ(height)、フロントガラスから運転者までの距離、及び運転者が投影された像を見る角度などが含まれる。フロントガラスが最適化された高さの運転者は反射二重像を少ししか知覚しないか又は全く知覚しないが、その高さよりも高いか又は低い運転者は相当なゴースト像を知覚する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0008]而して、HUD投影システムと共に用いるのに好適で、全ての高さの運転者に関して二重像分離が減少するポリマー中間膜及びかかる中間膜を用いるフロントガラスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0009]本発明の一態様は、1対のグレージングパネル、及びグレージングパネルの間に配置されてそれぞれと接触しているポリマー中間膜を含むフロントガラスに関する。ポリマー中間膜はHUD領域を画定し、HUD領域は少なくとも1つの変動角度の区域を含むテーパー状の縦方向の厚さプロファイルを有する。フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離(upper eyebox reflected double image separation distance)、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離(lower eyebox reflected double image separation distance)の少なくとも1つを示す。
【0009】
[0010]本発明の他の態様は、中間膜又は中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、(a)目標(target)中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;そして、(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与える;ことを含み、ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う上記方法に関する。
【0010】
[0011]本発明の更に他の態様は、中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与え、ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行い;そして(c)形成された中間膜を1対のグレージングパネルの間に積層してフロントガラスを形成し、ここでフロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す;ことを含む上記方法に関する
[0012]下記において、添付の図面を参照して本発明の種々の態様を詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0013]図1は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを含む乗物の部分側面図である。
図2】[0014]図2aは、HUD領域を有する中間膜を含むフロントガラスの分解図である。[0015]図2bは、線A−A’に沿った図2aに示すフロントガラスの部分断面図である。
図3】[0016]図3は、参照しやすいようにテーパー状中間膜の種々の特徴をラベル付けした、本発明の一態様にしたがって構成されたテーパー状中間膜の断面図である。
図4】[0017]図4は、本発明の種々の態様にしたがう幾つかのテーパー状中間膜に関する、HUD領域中の位置の関数としてのくさび角度のグラフ表示である。
図5】[0018]図5は、テーパー状の区域全体が一定のくさび角度及び線状の厚さプロファイルを有する、中間膜の全幅に及ぶテーパー状の区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図6】[0019]図6は、テーパー状の区域が一定角度の区域及び変動角度の区域を含む、中間膜の幅の一部に及ぶテーパー状の区域、及び中間膜の幅の一部に及ぶ水平(flat)の端部区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図7】[0020]図7は、テーパー状の区域が一定角度の区域及び2つの変動角度の区域を含む、中間膜の幅の一部に及ぶテーパー状の区域、及び中間膜の幅の一部に及ぶ2つの水平の端部区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図8】[0021]図8は、テーパー状の区域が完全に曲線状の厚さプロファイルを有する変動角度の区域から形成されている、中間膜の幅の一部に及ぶテーパー状の区域、及び中間膜の幅の一部に及ぶ2つの水平の端部区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図9】[0022]図9は、テーパー状部が2つの変動角度の区域によって互いから離隔されている3つの一定角度の区域を含む、中間膜の幅全体に及ぶテーパー状の区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図10】[0023]図10は、テーパー状の区域が3つの一定角度の区域及び4つの変動角度の区域を含む、中間膜の幅の一部に及ぶテーパー状の区域、及び中間膜の幅の一部に及ぶ2つの水平の端部区域を有するテーパー状中間膜の断面図である。
図11】[0024]図11aは、中間膜の厚さプロファイルが図6に示す中間膜の厚さプロファイルと同様である、乗物のフロントガラスにおいて用いるように構成されているテーパー状中間膜の平面図である。[0025]図11bは、中間膜の厚さプロファイルを示す、図11aの中間膜の断面図である。
図12】[0026]図12aは、低位置(short)、標準位置(nominal)、及び高位置(tall)のアイボックス位置からの、一定角度の区域を有するHUD領域を含むテーパー状中間膜を用いるフロントガラスの反射二重像分離を示す図である。[0027]図12bは、低位置、標準(又は通常)位置、及び高位置のアイボックス位置からの、変動角度の区域を有するHUD領域を含むテーパー状中間膜を用いるフロントガラスの反射二重像分離を示す図である。
図13a】[0028]図13aは、与えられたフロントガラスに関する種々のアイボックス位置における反射二重像分離を求めるための実験装置の一部を示す概要図である。
図13b】[0029]図13bは、与えられたフロントガラスに関する種々のアイボックス位置における反射二重像分離を求めるための実験装置の他の部分を示す概要図である。
図14】[0030]図14は、一次像及び二次像に関するピクセル数を強度の関数としてプロットすることによって撮像投影像を分析することによって形成されるグラフの例である。
図15】[0031]図15は、実施例において幾つかのフロントガラスを形成するために用いた中間膜に関する、目標くさび角度プロファイル及び測定されたくさび角度プロファイルのグラフである。
図16】[0032]図16は、実施例において形成されたフロントガラスの撮像画像の例であり、更なる分析のためにそれから像の抽出部をとった領域を強調している。
図17】[0033]図17は、実施例において形成された1つのフロントガラスの撮像画像の抽出された部分である。
図18】[0034]図18は、実施例において形成された他のフロントガラスの撮像画像の抽出された部分である。
図19】[0035]図19は、実施例において形成された更に他のフロントガラスの撮像画像の抽出された部分である。
図20】[0036]図20は、実施例において形成された更に他のフロントガラスの撮像画像の抽出された部分である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0037]本発明は、概して、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを有する乗物において用いることができるポリマー中間膜、及びかかる中間膜を用いる積層フロントガラスに関する。より具体的には、本明細書に記載する中間膜及びフロントガラスは、全ての高さの運転者に関して反射二重像分離を最小にするか、又は更には阻止するように構成することができる。従来のフロントガラスは、単一の運転者の高さにおいて反射二重像分離を排除するように最適化された中間膜を用いているが、より高位置か又はより低位置の運転者によって観察される二重像又はゴースト像には対処していない。下記において更に詳細に記載するように、本発明の幾つかの態様によるフロントガラスは、同時に標準の高さの運転者に関して二重像又はゴースト像を阻止しながら、最も低いアイボックス位置及び最も高いアイボックス位置において反射二重像を最小にする。
【0013】
[0038]まず図1を参照すると、HUDシステム112を用いる乗物110の部分概要図が示されている。HUDシステム112は、乗物のダッシュボード116の下部に取り付けられ、乗物のフロントガラス120上に像を投影するように構成されている投影アセンブリ114を含む。像が投影アセンブリ114からフロントガラス120上に投影されると、反射像がフロントガラス120によってコリメートされて、乗物110の正面付近に単一の虚像122が形成される。虚像は、運転者126の視野角124と交差するように投影することができ、これにより運転者126は同時に乗物110を運転しながら投影像122を見ることができる。
【0014】
[0039]HUDシステム112は、乗物のフロントガラス上に像を投影することができる任意の好適なタイプのシステムであってよい。一般に、好適なHUDシステムは、リレー光学素子のシステムとフロントガラスの反射を用いて、乗物の外側に虚像122を形成する。HUDシステム112には、図1において113a及び113bとして示される複数の鏡の間で像を伝えて、最終的にフロントガラス120へ像を送るように構成されている投影ユニット111を含ませることができる。一般に、鏡の少なくとも1つは、フロントガラス120上に投影するために像を拡大するために、図1において鏡113bによって示されるように凹形である。HUDシステム112は、多くの異なる態様の1つで構成することができ、メーカー仕様の取付条件にしたがって特定の乗物に関して具体的に設計することができる。
【0015】
[0040]フロントガラス120はHUDシステム112の不可欠な光学構成要素であり、像を運転者の視野角124の中に反射させるための最終光学コンバイナーとして作用させることができる。本発明の幾つかの態様にしたがって構成されるフロントガラス220を図2a及び2bに示す。フロントガラス220には、1対のグレージングパネル222a、b、及びパネル222a、bの間に配置されてそれぞれと接触しているポリマー中間膜224を含ませることができる。図2aにおいては明瞭にするために分解図で示されているが、中間膜224は、組み立ててフロントガラス220を形成する際には、パネル222a、bのそれぞれの内表面の相当部分又は全部と接触させることができる。
【0016】
[0041]グレージングパネル222a及び222bは任意の好適な材料で形成することができ、任意の特定の用途のために必要な寸法を有していてよい。例えば、幾つかの態様においては、グレージングパネル222a、bの少なくとも一方はガラスのような硬質材料で形成することができ、それぞれのパネル222a、bは、同じ材料又は異なる材料から形成することができる。幾つかの態様においては、パネル222a、bの少なくとも一方はガラスパネルであってよく、一方で他の態様においては、パネル222a、bの少なくとも一方は、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、及びこれらの組合せのような硬質ポリマーなどの他の材料で形成することができる。通常は、直ぐ後に詳細に記載するように、パネル222a、bのいずれも、中間膜224の形成において用いるのにより好適な熱可塑性ポリマー材料などのより軟質のポリマー材料からは形成されない。
【0017】
[0042]幾つかの態様においては、パネル222a、bの少なくとも一方にガラスパネルを含ませることができる。例えばアルミナ−シリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英又は溶融シリカガラス、及びソーダ石灰ガラスからなる群から選択されるガラスなどの任意の好適なタイプのガラスを用いることができる。用いる場合には、1つ又は複数のガラスパネルは、アニーリング、熱処理、化学強化、エッチング、被覆、又はイオン交換による強化にかけることができ、或いは、一方又は両方のパネルはこれらの処理の1以上にかけたものであってよい。ガラスそれ自体は、圧延ガラス、フロートガラス、又は厚板ガラスであってよい。幾つかの態様においては、ガラスは化学処理又はイオン交換による強化にかけなくてよく、一方で他の態様においては、ガラスはアルミナ−シリケートガラスでなくでよい。パネル222a、bの両方がガラスパネルを含む場合には、それぞれを形成するのに用いるガラスのタイプは同じであってよく、或いは異なっていてよい。
【0018】
[0043]パネル222a、bは任意の好適な厚さを有していてよい。幾つかの態様においては、外側パネル222b及び/又は内側パネル222aの呼び厚さは、少なくとも約0.4ミリメートル(mm)、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも約0.9mm、少なくとも約1.0mm、少なくとも約1.1mm、少なくとも約1.2mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.4mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約1.6mm、少なくとも約1.7mm、少なくとも約1.8mm、少なくとも約1.9mm、少なくとも約2.0mm、少なくとも約2.1mm、少なくとも約2.2mm、及び/又は約2.9mm未満、約2.8mm未満、約2.7mm未満、約2.6mm未満、約2.5mm未満、約2.4mm未満、約2.3mm未満、約2.2mm未満、約2.1mm未満、約2.0mm未満、約1.9mm未満、約1.8mm未満、約1.7mm未満、約1.6mm未満、約1.5mm未満、約1.4mm未満、約1.3mm未満、約1.2mm未満、約1.1mm未満、又は約1.0mm未満であってよい。
【0019】
[0044]幾つかの態様においては、2つのパネル222a、bは同じ呼び厚さを有していてよく(これは通常は「対称」構造と呼ぶ)、或いはパネル222a、bの一方は他のパネル222b、aと異なる厚さを有していてよい。これは「非対称」構造と呼ぶ。幾つかの態様において、フロントガラス220が非対称構造を含む場合には、フロントガラス220を乗物内に取り付けた際に、乗物の外側に面するように構成することができる外側パネル222bは、乗物の内部に面するように構成することができる内側パネル222aよりも大きな厚さを有していてよい。幾つかの態様においては、フロントガラス220は、内側パネル222aが外側パネル222bよりも大きな厚さを有する非対称構造を有していてよい。
【0020】
[0045]図2aに示すように、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bはそれぞれ、それぞれ232a、234a、及び236aとして示される上側取付縁部(upper installed edge)、並びにそれぞれ232b、234b、及び236bとして示される下側取付縁部(lower installed edge)を含む。内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bのそれぞれの上側及び下側取付縁部232a、b、234a、b、及び236a、bのそれぞれは、フロントガラス120を乗物内に取り付けた際と同様の形態で配向させた際に概して垂直方向において(vertical direction)互いから離隔させることができる。
【0021】
[0046]「上側(上部)」及び「下側(下部)」のような用語は相対的であるが、かかる用語は、本明細書において用いる場合には「取り付けた状態で」又は「取り付けられた」で修飾され、これは部品又は物品を含むフロントガラスを乗物内に取り付けた際に配向されるように配向した際の部品又は物品の相対位置を指す。したがって、「上側取付縁部」及び「下側取付縁部」とは、それぞれフロントガラス220を乗物内に取り付けた際に配向されるように配向した際のフロントガラスの上側及び下側縁部を指す。幾つかの態様においては、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの上側取付縁部232a、234a、及び236aの1以上は、その対応する下側取付縁部232b、234b、及び236bに対して平行の約5°以内、約3°以内、又は約1°以内であってよい。
【0022】
[0047]図2aに示すように、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bは、それぞれ、運転席側取付縁部(driver side installed edge)(それぞれ238a、240a、及び242a)、並びに助手席側取付縁部(passenger side installed edge)(それぞれ238a、240b、及び242b)を含む。内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bのそれぞれの運転席側取付縁部は、フロントガラス220を乗物内に取り付けた際に配向されるように配向した際に、対応する助手席側取付縁部238b、240b、及び242bから概して水平方向に離隔させることができる。本明細書においては「運転席側」及び「助手席側」と呼ぶが、運転席と助手席の実際の位置は、フロントガラスを用いる乗物を運転する国によって逆転する可能性がある。これらの用語は、本明細書においては基準点として用いられ、不必要に限定するように解釈すべきではない。
【0023】
[0048]更に、図2aに示すように、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの運転席側取付縁部238a、240a、及び242a、並びに助手席側取付縁部238b、240b、及び242bのそれぞれは、それぞれ内側パネル222a、中間膜224、外側パネル222bの角部において、それぞれ上側取付縁部232a、234a、及び236a、並びに下側取付縁部232b、234b、及び236bと交差する。運転席側取付縁部238a、240a、及び242aの1以上、及び/又は助手席側取付縁部238b、240b、及び242bの1以上は、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの上側取付縁部232a、234a、及び236a、及び/又は下側取付縁部232b、234b、及び236bに対してある1つの角度で配向させることができる。その結果、上側取付縁部232a、234a、又は236aの1以上は、その対応する下側取付縁部232b、234b、又は236bよりも短くすることができる。更に、図2aには示していないが、フロントガラスは1以上の領域において湾曲させることもでき、幾つかの場合においては水平方向及び垂直方向の両方で変化する複雑な湾曲部を有していてよい。
【0024】
[0049]幾つかの態様においては、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの上側取付縁部232a、234a、及び236aの少なくとも1つの長さは、運転席側取付縁部238a、240a、又は242aと、上側取付縁部232a、234a、又は236aの1つの端部との交差部から、助手席側取付縁部238b、240b、又は242bと上側取付縁部232a、234a、又は236aの他の端部との交差部までで測定して、少なくとも約500mm、少なくとも約650mm、少なくとも約750mm、少なくとも約850mm、少なくとも約950mm、少なくとも約1000mm、及び/又は約2500mm以下、約2000mm以下、約1500mm以下、約1250mm以下であってよい。
【0025】
[0050]幾つかの態様においては、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの下側取付縁部232b、234b、及び236bの少なくとも1つの長さは、運転席側取付縁部238a、240a、又は242aと、下側取付縁部232b、234b、又は236bの1つの端部との交差部から、助手席側縁部238b、240b、又は242bと下側取付縁部232b、234b、又は236bの他の端部との交差部までで測定して、少なくとも約750mm、少なくとも約900mm、少なくとも約1000mm、少なくとも約1250mm、又は少なくとも1400mm、及び/又は約2500mm以下、約2250mm以下、約2000mm以下、約1850mm以下であってよい。
【0026】
[0051]更に、幾つかの態様においては、フロントガラス220は、内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの下側取付縁部232b、234b、及び236bから下に向かって伸びる湾曲した下部領域を有していてよい。かかる態様においては、下側取付縁部232b、234b、又は236bから最も遠い湾曲した下部領域の点における曲率半径は、少なくとも100mm、少なくとも約150mm、少なくとも約175mm、又は少なくとも約200mm、及び/又は約325mm以下、約300mm以下、約275mm以下、約250mm以下、又は約225mm以下であってよい。しかしながら、実際の寸法はフロントガラス220の最終用途に応じて定めることができ、上記の範囲の外側に変化してよい。
【0027】
[0052]ここで図2a及び2bを参照すると、中間膜224は、少なくとも1つの不均一な厚さの領域を含むHUD領域244を画定することができる。図2において特に示すように、外側パネル222bと内側パネル222aの間に積層した際に、中間膜224のHUD領域244によって、外側パネル222bを内側パネル222aから僅かな角度で配向させることができる。配向の実際の角度は中間膜224の特定のくさびプロファイルによって定まり、その幾つかの態様を直ぐ後に詳細に議論する。
【0028】
[0053]図2aにおいて示すように、中間膜224のHUD領域244は、上側取付HUD境界246a及び下側取付HUD境界246bによって画定することができる。上記で議論したように、上側及び下側取付HUD境界246a、bは、フロントガラス220を乗物内に取り付けた際と同じように配向させた際に概して垂直方向において互いから離隔させることができる。上側及び下側取付HUD境界246a、bはまた、中間膜224のそれぞれの上側及び下側取付縁部234a、bに実質的に平行にすることもできる。本明細書において用いる「実質的に平行」とは、平行の約5°以内を意味する。幾つかの態様においては、上側及び下側取付HUD境界246a、bはまた、中間膜224のそれぞれの上側及び下側取付縁部234a、bに対して平行の約3°以内、約2°以内、又は約1°以内にすることもできる。
【0029】
[0054]図2aに示すように、下側HUD取付境界246bは、フロントガラス220を乗物内に取り付けた際と同じように配向させた際に、フロントガラス220の高さに沿って中間膜224の下側取付縁部234bから離隔させることができる。本明細書において用いる「高さ」という用語は、フロントガラス220を乗物内に取り付けた際と同じように配向させた際に、フロントガラス220の2番目に大きな寸法を指す。フロントガラス220の高さは、例えば、それぞれ内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの上部と下側の取付縁部232a、b、234a、b、及び236a、bの間に画定することができる。同様に、「幅」はフロントガラスの最も大きな寸法であり、それぞれ内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの運転席側と助手席側の取付縁部238a、b、240a、b、及び242a、bの間に画定することができる。更に、フロントガラス220の「厚さ」は最も小さな寸法であり、それぞれを積層してフロントガラス220を形成した際の内側パネル222a、中間膜224、及び外側パネル222bの合計厚さであってよい。
【0030】
[0055]図2aに示すように、下側HUD取付境界246aは、中間膜224の上側取付縁部234a及び下側取付縁部234bにの間に配置することができ、これらに対して概して平行にすることができる。例えば、下側HUD取付境界246aは、中間膜224の下側取付縁部234bから、少なくとも約150mm、少なくとも約200mm、少なくとも約225mm、少なくとも約250mm、少なくとも約275mm、少なくとも約300mm、又は少なくとも約350mm、及び/又は約550mm以下、約500mm以下、約450mm以下、又は約425mm以下の距離だけ離隔させることができる。上側HUD取付境界246aと中間膜224の上側取付縁部234aとは、中間膜224の高さに沿って、少なくとも約125mm、少なくとも約150mm、少なくとも約175mm、少なくとも約200mm、少なくとも約225mm、少なくとも約250mm、少なくとも約275mm、又は少なくとも約300mm、及び/又は約750mm以下、約650mm以下、約500mm以下、約450mm以下だけ互いから離隔させることができる。
【0031】
[0056]中間膜の高さに対して平行の方向で上側と下側のHUD取付境界246a、bの間で測定されるHUD区域244の全高は、少なくとも約20mm、少なくとも約25mm、少なくとも約50mm、少なくとも約75mm、少なくとも約100mm、及び/又は約350mm以下、約300mm以下、約250mm以下、約225mm以下、約200mm以下、約175mm以下、又は約150mm以下であってよい。HUD区域244の全高は中間膜224の幅に沿って一定にすることができ、或いはこの高さは、HUD区域の1以上の領域において、HUD区域の1以上の他の領域におけるものと相違させることができる。幾つかの態様においては、中間膜224の上側取付縁部234a及び下側取付縁部234bのそれぞれの間にそれらに対して垂直に引いた線の全長の少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、及び/又は約55%以下、約50%以下、約45%以下、又は約40%以下を、中間膜224のHUD領域244内に含めることができる。
【0032】
[0057]HUD領域244は、中間膜224の全幅の一部又は全部に及ばせることができる。幾つかの態様においては、上側及び/又は下側HUD取付境界は、中間膜224の運転席側取付縁部240aと助手席側取付縁部240bの間の全距離の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%に及ばせることができる。幾つかの態様においては、図2aに示すように、HUD領域244を中間膜224の全体に及ばせて、上側HUD取付境界246a及び下側HUD取付境界246bが、それぞれ、図2aに示すように中間膜224の運転席側取付縁部240a及び助手席側取付縁部240bと交差するようにすることができる。
【0033】
[0058]ここで図3〜11bを参照すると、本発明による少なくとも部分的にテーパー状の厚さプロファイル及びくさび角度プロファイルを有する中間膜の幾つかの態様が与えられている。図3は、変動する厚さのテーパー状の区域を含む代表的なテーパー状中間膜の断面図である。図3に示すように、テーパー状の区域は、テーパー状の区域の第1の境界において測定される最小厚さ:Tmin、及びテーパー状の区域の第2の境界において測定される最大厚さ:Tmaxを有する。幾つかの態様においては、Tminは、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.40mm、又は少なくとも約0.60mm、及び/又は1.2mm以下、約1.1mm以下、又は約1.0mm以下であってよい。幾つかの態様においては、Tmaxは、少なくとも約0.38mm、少なくとも約0.53mm、又は少なくとも約0.76mm、及び/又は2.2mm以下、約2.1mm以下、又は約2.0mm以下であってよい。幾つかの態様においては、TmaxとTminの間の差は、少なくとも約0.13mm、少なくとも約0.15mm、少なくとも約0.20mm、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.30mm、少なくとも約0.35mm、少なくとも約0.40mm、及び/又は1.2mm以下、約0.90mm以下、約0.85mm以下、約0.80mm以下、約0.75mm以下、約0.70mm以下、約0.65mm以下、又は約0.60mm以下であってよい。幾つかの態様においては、テーパー状の区域の第1と第2の境界の間の距離(即ち「テーパー状の区域の幅」)は、少なくとも約5センチメートル(cm)、少なくとも約10cm、少なくとも約15cm、少なくとも約20cm、又は少なくとも約30cm、及び/又は約200cm以下、約150cm以下、約125cm以下、約100cm以下、又は約75cm以下であってよい。
【0034】
[0059]図3に示すように、テーパー状中間膜は、反対側の第1及び第2の外側末端部を含む。幾つかの態様においては、第1と第2の外側末端部の間の距離(即ち中間膜の幅)は、少なくとも約20cm、少なくとも約40cm、又は少なくとも約60cm、及び/又は約400cm以下、約200cm以下、又は約100cm以下であってよい。図3に示す態様においては、テーパー状の区域の第1及び第2の境界は、中間膜の第1及び第2の外側末端部から内側に離隔している。かかる態様においては、中間膜の一部のみがテーパー状である。テーパー状の区域が中間膜の一部のみを形成している場合には、中間膜の幅とテーパー状の区域の幅との比は、少なくとも約0.05:1、少なくとも約0.10:1、少なくとも約0.20:1、少なくとも約0.30:1、少なくとも約0.40:1、少なくとも約0.50:1、少なくとも約0.60:1、又は少なくとも約0.70:1、及び/又は約1:1以下、約0.95:1以下、約0.90:1以下、約0.80:1以下、又は約0.70:1以下であってよい。下記に議論する別の態様においては、中間膜全体がテーパー状である。中間膜全体がテーパー状である場合には、テーパー状の区域の幅は中間膜の幅に等しく、テーパー状の区域の第1及び第2の境界は、それぞれ第1及び第2の末端部に位置する。
【0035】
[0060]図3に示すように、中間膜のテーパー状の区域は、第1及び第2のテーパー状の区域の境界が中間膜の第1の(上)表面と交差する中間膜の2つの点を通って伸びる第1の基準線と、第1及び第2のテーパー状の区域の境界が中間膜の第2の(下)表面と交差する2つの点を通って伸びる第2の基準線との間に形成される角度として規定されるくさび角度(θ)を有する。幾つかの態様においては、テーパー状の区域は、少なくとも約0.10ミリラジアン(mrad)、少なくとも約0.13mrad、少なくとも約0.15mrad、少なくとも約0.20mrad、少なくとも約0.25mrad、少なくとも約0.30mrad、少なくとも約0.35mrad、又は少なくとも約0.40mrad、及び/又は約1.2mrad以下、約1.0mrad以下、約0.90mrad以下、約0.85mrad以下、約0.80mrad以下、約0.75mrad以下、約0.70mrad以下、約0.65mrad以下、又は約0.60mrad以下の少なくとも1つのくさび角度を有していてよい。
【0036】
[0061]テーパー状の区域の第1及び第2の表面がそれぞれ平面状である場合には、テーパー状の区域のくさび角度は、第1の(上)表面と第2の(下)表面の間の角度として規定することができる。しかしながら、下記において更に詳細に議論するように、幾つかの態様においては、テーパー状の区域は、曲線状の厚さプロファイル及び連続的に変化するくさび角度を有する少なくとも1つの変動角度の区域を含んでいてよい。更に、幾つかの態様においては、テーパー状の区域は2以上の一定角度の区域を含んでいてよく、この場合には、一定角度の区域はそれぞれ線状の厚さプロファイルを有するが、一定角度の区域の少なくとも2つは異なるくさび角度を有する。
【0037】
[0062]ここで図4を参照すると、本発明の幾つかの態様において用いるのに好適な可能性がある種々のテーパー状中間膜に関する幾つかの代表的なくさび角度プロファイルが示されている。くさび角度プロファイルは、HUD領域内の位置の関数としての中間膜のくさび角度のグラフ表示である。テーパー状中間膜のくさび角度プロファイルは、HUD領域の少なくとも一部にわたって増加、減少、及び/又は一定に維持することができる。幾つかの態様においては、くさび角度プロファイルはHUD領域の少なくとも一部にわたって増加させることができる。このタイプのくさび角度プロファイルの例を、図4において線206及び208によって示す。くさび角度プロファイルの少なくとも一部が増加する場合には、少なくとも一部は(線206によって示されるように)一定に維持することもでき、又は(線208によって示されるように)プロファイルの一部を減少させることもできる。幾つかの態様(図示せず)においては、くさび角度プロファイルはHUD領域の全体にわたって増加させることができる。
【0038】
[0063]幾つかの態様においては、くさび角度プロファイルはHUD領域の少なくとも一部にわたって減少させることができる。このタイプのくさび角度プロファイルの例を、図4において線202及び204によって示す。中間膜のくさび角度プロファイルの少なくとも一部が減少する場合には、くさび角度プロファイルはまた、HUD領域の一部にわたって増加(図示せず)及び/又は(線204によって示されるように)一定に維持することもできる。幾つかの態様(線202によって示される)においては、くさび角度はHUD領域の全体にわたって減少させることができる。幾つかの態様においては、くさび角度プロファイルは、図4において線200によって示されるように、HUD領域の少なくとも一部にわたって一定に維持することができる。増加、減少、又は一定のくさび角度の複数の領域の他の組合せを有する中間膜も可能であり、本発明の範囲内である。
【0039】
[0064]図5〜10は、本発明の幾つかの態様にしたがって構成される幾つかのテーパー状中間膜のプロファイルを示す。上記で議論したように、HUD投影システムを有する乗物によって利用される与えられたフロントガラスにおいて用いるための中間膜の具体的な構成は、例えば具体的な乗物のデザイン及びHUDシステムの構成などの幾つかのファクターによって定まる。図5〜10は、幾つかの態様に関して好適である可能性がある幾つかの代表的なテーパー状中間膜プロファイルを与えるが、示していない他の中間膜形状は、具体的な用途に応じて等しく好適である可能性がある。ここで議論する中間膜のテーパー状の厚さプロファイル及びくさび角度プロファイルは、他に言及していない限りにおいて、中間膜224の上側取付縁部234aと下側取付縁部234bの間に伸びる線に沿ってとった「縦方向(vertical)」プロファイルを指すことを理解すべきである。幾つかの態様においては、中間膜224は、HUD領域244内で水平方向(即ち水平の厚さプロファイル)においてテーパー状の厚さプロファイル又はくさび角度プロファイルを有していない可能性がある。幾つかの態様においては、中間膜224の最大水平くさび角度は、0.10mrad未満、0.075mrad未満、0.05mrad未満、又は0.025mrad未満であってよい。
【0040】
[0065]まず図5を参照すると、中間膜20の第1の末端部24aから中間膜20の第2の末端部24bに完全に及んでいるテーパー状の区域22を含む中間膜20が示されている。この構造においては、テーパー状の区域の第1及び第2の境界は、中間膜の第1及び第2の末端部24a、bに位置する。図5に示す中間膜20のテーパー状の区域22の全体は、単純に中間膜20の第1(上)の平面状及び第2(下)の平面状の表面の間に形成される角度である一定のくさび角度:θを有する。
【0041】
[0066]図6は、テーパー状の区域32及び水平の端部区域33を含む中間膜30を示す。テーパー状の区域32の第1の境界35aは中間膜30の第1の末端部34aに位置し、一方でテーパー状の区域32の第2の境界35bは、テーパー状の区域32と水平の端部区域33が交わる箇所に位置する。テーパー状の区域32は、一定角度の区域36及び変動角度の区域37を含む。一定角度の区域36は線状の厚さプロファイル及び一定のくさび角度:θを有し、一方で変動角度の区域37は曲線状の厚さプロファイル及び連続的に変化するくさび角度を有する。変動角度の区域37の出発くさび角度は一定のくさび角度:θに等しく、変動角度の区域37の終了くさび角度は0である。図6に示す中間膜30は、テーパー状の区域32全体の全体的なくさび角度よりも大きい一定のくさび角度:θを有する。
【0042】
[0067]図7は、第1及び第2の水平の端部区域43a、bの間に位置するテーパー状の区域42を含む中間膜40を示す。テーパー状の区域42の第1の境界45aは、テーパー状の区域42と第1の水平の端部区域43aが交わる箇所に位置し、一方でテーパー状の区域42の第2の境界45bは、テーパー状の区域42と第2の水平の端部区域43bが交わる箇所に位置する。テーパー状の区域42は、第1及び第2の変動角度の区域47a、bの間に位置する一定角度の区域46を含む。第1の変動角度の区域47aは、第1の水平の端部区域43aと一定角度の区域46の間の遷移区域を形成する。第2の変動角度の区域47bは、第2の水平の端部区域43bと一定角度の区域46の間の遷移区域を形成する。一定角度の区域46は線状の厚さプロファイル及び一定のくさび角度:θを有し、一方で第1及び第2の変動角度の区域47a、bは曲線状の厚さプロファイル及び連続的に変化するくさび角度を有する。第1の変動角度の区域47aの出発くさび角度は0に等しく、第1の変動角度の区域47bの終了くさび角度は一定のくさび角度:θに等しい。第2の変動角度の区域47bの出発くさび角度は一定のくさび角度:θに等しく、第2の変動角度の区域47bの終了くさび角度は0である。図7に示す中間膜40は、テーパー状の区域42全体の全体的なくさび角度よりも大きい一定のくさび角度:θを有する。
【0043】
[0068]図8は、第1及び第2の水平の端部区域53a、bの間に位置するテーパー状の区域52を含む中間膜50を示す。中間膜50のテーパー状の区域52は、一定角度の区域を含まない。それどころか、中間膜50のテーパー状の区域52全体は、曲線状の厚さプロファイル及び連続的に変化するくさび角度を有する変動角度の区域である。上記に記載したように、テーパー状の区域52の全体的なくさび角度:θは、テーパー状の区域52の第1及び第2の境界55a、bが中間膜50の第1の(上)表面と交わる2つの点を通って伸びる第1の基準線「A」と、テーパー状の区域52の第1及び第2の境界55a、bが中間膜50の第2の(下)表面と交わる2つの点を通って伸びる第2の基準線「B」との間の角度として測定される。しかしながら、テーパー状の区域52内において、曲線状の厚さプロファイルは、テーパー状の区域52全体の全体的なくさび角度:θよりも大きいか、小さいか、又は等しくてよい無限数のくさび角度を与える。
【0044】
[0069]図9は、水平の端部を含まない中間膜60を示す。それどころか、中間膜60のテーパー状の区域62は中間膜60全体を形成する。而して、テーパー状の区域60の第1及び第2の境界65a、bは、中間膜60の第1及び第2の末端部64a、bに位置する。中間膜60のテーパー状の区域62は、第1及び第2の変動角度の区域47a、bによって離隔されている第1、第2、及び第3の一定角度の区域46a〜cを含む。第1、第2、及び第3の一定角度の区域46a〜cは、それぞれ線状の厚さプロファイルを有し、それぞれは、それぞれ固有の第1、第2、及び第3の一定のくさび角度:θc1、θc2、θc3を有する。第1の変動角度の区域47aは、第1と第2の一定角度の区域46a、bの間の遷移区域として機能する。第2の変動角度の区域47bは、第2と第3の一定角度の区域46b、cの間の遷移区域として機能する。上記で議論したように、テーパー状の区域62の全体的なくさび角度:θは、第1の基準線「A」と第2の基準線「B」の間の角度として測定される。第1の一定のくさび角度:θc1は、テーパー状の区域62の全体的なくさび角度:θよりも小さい。第2の一定のくさび角度:θc2は、テーパー状の区域62の全体的なくさび角度:θよりも大きい。第3の一定のくさび角度:θc3は、テーパー状の区域62の全体的なくさび角度:θよりも小さい。第1の変動角度の区域47aのくさび角度は、第1の一定のくさび角度:θc1から第2の一定のくさび角度:θc2へ連続的に増加する。第2の変動角度の区域47bのくさび角度は、第2の一定のくさび角度:θc2から第3のくさび角度:θc3へ連続的に減少する。
【0045】
[0070]図10は、第1及び第2の水平の端部区域73a、bの間に位置するテーパー状の区域72を含む中間膜70を示す。テーパー状の区域72の第1及び第2の境界75a、bは、中間膜70の第1及び第2の外側端部74a、bから内側に離隔している。中間膜70のテーパー状の区域72は、第1、第2、第3、及び第4の変動角度の区域77a〜d、並びに第1、第2、及び第3の一定角度の区域76a〜cを含む。第1の変動角度の区域77aは、第1の水平の端部区域73aと第1の一定角度の区域76aの間の遷移区域として機能する。第2の変動角度の区域77bは、第1の一定角度の区域76aと第2の一定角度の区域76bの間の遷移区域として機能する。第3の変動角度の区域77cは、第2の一定角度の区域76bと第3の一定角度の区域76cの間の遷移区域として機能する。第4の変動角度の区域77dは、第3の一定角度の区域76cと第2の水平の端部区域73bの間の遷移区域として機能する。第1、第2、及び第3の一定角度の区域76a〜cは、それぞれ線状の厚さプロファイルを有し、それぞれは、それぞれ固有の第1、第2、及び第3の一定のくさび角度:θc1、θc2、θc3を有する。上記で議論したように、第1、第2、第3、及び第4の変動角度の区域77a〜dは、変動角度の区域77の一方の側における一定角度の区域のくさび角度から、変動角度の区域77の他方の側における一定角度の区域のくさび角度へ連続的に遷移するくさび角度を有する。
【0046】
[0071]上記で議論したように、テーパー状中間膜は、それぞれがテーパー状の区域全体の全体的な幅よりも小さい幅を有する1以上の一定角度のテーパー状の区域を含んでいてよい。それぞれのテーパー状の区域は、テーパー状の区域全体の全体的なくさび角度と同じか又は異なるくさび角度を有していてよい。例えば、テーパー状の区域は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の一定角度のテーパー状の区域を含んでいてよい。複数の一定角度のテーパー状の区域を用いる場合には、一定角度のテーパー状の区域は、隣接する一定角度のテーパー状の区域の間で遷移するように働く変動角度のテーパー状の区域によって互いから離隔していてよい。
【0047】
[0072]幾つかの態様においては、それぞれの一定角度のテーパー状の区域の幅は、少なくとも約2cm、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約15cm、又は少なくとも約20cm、及び/又は約150cm以下、約100cm以下、又は約50cm以下であってよい。幾つかの態様においては、それぞれの一定角度のテーパー状の区域の幅と、テーパー状の区域全体の全体的な幅との比は、少なくとも約0.1:1、少なくとも約0.2:1、少なくとも約0.3:1、又は少なくとも約0.4:1、及び/又は約0.9:1以下、約0.8:1以下、約0.7:1以下、約0.6:1以下、又は約0.5:1以下であってよい。
【0048】
[0073]幾つかの態様においては、それぞれの一定角度のテーパー状の区域のくさび角度は、少なくとも約0.13mrad、少なくとも約0.15mrad、少なくとも約0.20mrad、少なくとも約0.25mrad、少なくとも約0.30mrad、少なくとも約0.35mrad、又は少なくとも約0.40mrad、及び/又は約1.2mrad以下、約1.0mrad以下、約0.90mrad以下、約0.85mrad以下、約0.80mrad以下、約0.75mrad以下、約0.70mrad以下、約0.65mrad以下、又は約0.60mrad以下であってよい。幾つかの態様においては、少なくとも1つの一定角度のテーパー状の区域のくさび角度は、テーパー状の区域全体の全体的なくさび角度よりも少なくとも約0.01mrad、少なくとも約0.05mrad、少なくとも約0.10mrad、少なくとも約0.20mrad、少なくとも約0.30mrad、又は少なくとも約0.40mrad大きい。
【0049】
[0074]幾つかの態様においては、少なくとも1つの一定角度のテーパー状の区域のくさび角度は、テーパー状の区域全体の全体的なくさび角度よりも少なくとも約0.01mrad、少なくとも約0.05mrad、少なくとも約0.10mrad、少なくとも約0.20mrad、少なくとも約0.30mrad、又は少なくとも約0.40mrad小さい。幾つかの態様においては、少なくとも1つの一定角度のテーパー状の区域のくさび角度は、テーパー状の区域全体の全体的なくさび角度よりも約0.40mrad以下、約0.30mrad以下、約0.20mrad以下、約0.10mrad以下、約0.05mrad以下、又は約0.01mrad以下大きい。幾つかの態様においては、少なくとも1つの一定角度のテーパー状の区域のくさび角度は、テーパー状の区域全体の全体的なくさび角度よりも約0.40mrad以下、約0.30mrad以下、約0.20mrad以下、約0.10mrad以下、約0.05mrad以下、又は約0.01mrad以下小さい。
【0050】
[0075]幾つかの態様においては、テーパー状中間膜は少なくとも1つの変動角度の区域を含んでいてよい。変動角度の区域の幅はテーパー状の区域全体の全体的な幅よりも小さくてよく、或いはそれはテーパー状の区域の幅と同じであってよい。それぞれの変動角度のテーパー状の区域の幅は、少なくとも約2cm、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約15cm、又は少なくとも約20cm、及び/又は約150cm以下、約100cm以下、又は約50cm以下であってよい。幾つかの態様においては、それぞれの変動角度のテーパー状の区域の幅とテーパー状の区域全体の全体的な幅との比は、少なくとも約0.1:1、少なくとも約0.2:1、少なくとも約0.3:1、又は少なくとも約0.4:1、及び/又は約0.9:1以下、約0.8:1以下、約0.7:1以下、約0.6:1以下、又は約0.5:1以下であってよい。変動角度の区域は曲線状の厚さプロファイルを有していてよく、或いは場合によっては上記で詳細に記載したように1以上の一定角度の区域を含んでいてよい。中間膜は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は4つ、或いはそれ以上の変動角度の区域を含んでいてよい。
【0051】
[0076]幾つかの態様においては、本明細書に記載するフロントガラスを形成するために用いる中間膜は、単層又はモノリス型中間膜であってよい。幾つかの態様においては、中間膜は、少なくとも第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含む多層中間膜であってよい。中間膜が多層中間膜である場合には、それにはまた第3のポリマー層を含ませて、第2のポリマー層を第1及び第3のポリマー層のそれぞれに隣接してそれぞれと接触させて、それによって第2のポリマー層が第1及び第3のポリマー層の間にサンドイッチされるようにすることもできる。本明細書において用いる「第1」、「第2」、「第3」などの用語は種々の部材を説明するために用いるが、かかる部材はこれらの用語によって不必要に限定すべきではない。これらの用語は1つの部材を他から区別するためだけに用いられ、必ずしも具体的な順番又は更には具体的な部材を与えない。例えば、1つの部材は、矛盾なしに明細書において「第1の」部材、特許請求の範囲において「第2の」部材とみなすことができる。明細書内及びそれぞれの独立請求項に関して一貫性が維持されるが、かかる命名は必ずしもそれらの間で一貫していることを意図していない。このような3層中間膜は、2つの外側「スキン」層の間にサンドイッチされている少なくとも1つの内側「コア」層を有すると説明することができる。幾つかの態様においては、中間膜には、3つより多く、4つより多く、又は5つより多いポリマー層を含ませることができる。
【0052】
[0077]中間膜のそれぞれのポリマー層には、場合によっては1種類以上の可塑剤と混合した1種類以上のポリマー樹脂を含ませることができ、これを任意の好適な方法によってシートに成形している。中間膜中の1以上のポリマー層には更なる添加剤を更に含ませることができるが、これらは必須ではない。本明細書に記載する中間膜を形成するために用いる1種類又は複数のポリマー樹脂には、1種類以上の熱可塑性ポリマー樹脂を含ませることができる。中間膜が1つより多い層を含む場合には、それぞれの層を同じか又は異なるタイプのポリマーで形成することができる。
【0053】
[0078]中間膜を形成するために好適なポリマーの例としては、ポリ(ビニルアセタール)ポリマー、ポリウレタン(PU)、ポリ(エチレン−co−ビニル)アセテート(EVA)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(塩化ビニル−co−メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリレート)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、並びに上記に示した任意のポリマーから誘導されるエチレン/カルボン酸コポリマー及びそのイオノマーのような酸コポリマー、並びにこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、熱可塑性ポリマーは、ポリ(ビニルアセタール)樹脂、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニル)アセテート、及びポリウレタンからなる群から選択することができ、一方で他の態様においては、ポリマーに1種類以上のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含ませることができる。本明細書においては概してポリ(ビニルアセタール)樹脂に関して記載するが、本発明の種々の態様にしたがって、下記に記載するポリ(ビニルアセタール)樹脂に加えて、又はこれに代えて1種類以上の上記のポリマーを含ませることができることを理解すべきである。
【0054】
[0079]中間膜を形成するために用いるポリマーがポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む場合には、ポリ(ビニルアセタール)樹脂には任意のアルデヒドの残基を含ませることができ、幾つかの態様においては少なくとも1種類のC〜Cアルデヒドの残基を含ませることができる。好適なC〜Cアルデヒドの例としては、例えばn−ブチルアルデヒド、i−ブチルアルデヒド、2−メチルバレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。幾つかの態様においては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、主としてn−ブチルアルデヒドの残基を含むポリ(ビニルブチラール)(PVB)樹脂であってよい。好適なタイプのポリ(ビニルアセタール)樹脂の例は、共に継続中の出願14/563,011(現在は米国公開2016−0159041A1)(その全部を本発明と矛盾しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に詳細に記載されている。
【0055】
[0080]幾つかの態様においては、中間膜には、中間膜中に存在する1以上のポリマー層に加えて1以上のポリマーフィルムを含ませることができる。本明細書において用いる「ポリマーフィルム」という用語は、中間膜にある種の機能性又は性能の向上を与える比較的薄く、しばしば硬質のポリマーを指す。「ポリマーフィルム」という用語は、ポリマーフィルムがそれ自体は多層パネルに必要な貫通抵抗及びガラス保持特性を与えないが、むしろ赤外吸収又は反射特性のような性能の向上を与えるという点で、本明細書に記載する「ポリマー層」又は「ポリマーシート」とは異なる。
【0056】
[0081]幾つかの態様においては、ポリ(エチレンテレフタレート)又は「PET」を用いてポリマーフィルムを形成することができ、理想的には種々の態様において用いるポリマーフィルムは光学的に透明である。幾つかの態様において用いるのに好適なポリマーフィルムはまた、種々の金属、金属酸化物、又は他の非金属材料などの他の材料で形成することもでき、被覆又は他の形態で表面処理することができる。ポリマーフィルムは、少なくとも約0.013mm、少なくとも約0.015mm、少なくとも約0.020mm、少なくとも約0.025mm、少なくとも約0.030mm、又は少なくとも約0.040mm、及び/又は約0.060mm以下、約0.050mm以下、約0.045mm以下、又は約0.035mm以下の厚さを有していてよい。
【0057】
[0082]幾つかの態様によれば、ポリマーフィルムは特定の特性を有する再延伸熱可塑性フィルムであってよく、一方で他の態様においては、ポリマーフィルムに、米国特許6,797,396(本発明と矛盾しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に記載されているような、干渉を生起させることなく赤外線を反射するように機能する複数の非金属層を含ませることができる。幾つかの態様においては、ポリマーフィルムは、接着性又は赤外線反射性などのフィルムの1以上の特性を向上させるために、表面処理するか又は機能実行層(functional performance layer)で被覆することができる。ポリマーフィルムの他の例は、PCT出願公開WO88/01230及び米国特許4,799,745、4,017,661、及び4,786,783(これらのそれぞれは本発明と矛盾しない範囲で参照として本明細書中に包含する)に詳細に記載されている。他のタイプの機能性ポリマーフィルムとしては、IR減少層、ホログラフ層、フォトクロミック層、エレクトロクロミック層、抗引裂層、ヒートストリップ、アンテナ、太陽放射線遮断層、装飾層、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0058】
[0083]更に、本明細書に記載する中間膜中の少なくとも1つのポリマー層には、ポリマー層又は中間膜に特定の特性又は特徴を与えることができる1以上のタイプの添加剤を含ませることができる。かかる添加剤としては、染料、顔料、安定剤、例えば紫外線安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、IR吸収剤又は遮断剤、例えばインジウムスズオキシド、アンチモンスズオキシド、六ホウ化ランタン(LaB)、及びセシウムタングステンオキシド、加工助剤、流動向上添加剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、成核剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤、及び充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。更に、層又は中間膜のガラスのシートに対する接着性を制御するために、1以上のポリマー層において種々の接着制御剤(ACA)を用いることもできる。かかる添加剤の具体的なタイプ及び量は、特定の中間膜の最終的な特性又は最終用途に基づいて選択することができ、1種類又は複数の添加剤が特定の用途用に構成される中間膜又は中間膜を用いるフロントガラスの最終特性に悪影響を与えない範囲内で用いることができる。
【0059】
[0084]幾つかの態様によれば、本明細書に記載する中間膜を用いて、例えば積層パネルを通過する際の音響の伝達における減少(即ちその音響伝達損失)によって示される所望の遮音特性を示すフロントガラスを形成することができる。幾つかの態様においては、本明細書に記載する中間膜を用いて形成されるフロントガラスは、ASTM−E90にしたがって20℃において測定して、少なくとも約34dB、少なくとも約34.5dB、少なくとも約35dB、少なくとも約35.5dB、少なくとも約36dB、少なくとも約36.5dB、又は少なくとも約37dB、或いはそれ以上のコインシデンス周波数における音響伝達損失を示すことができる。
【0060】
[0085]中間膜の全体的な平均厚さは、少なくとも約10ミル、少なくとも約15ミル、少なくとも約20ミル、少なくとも約25ミル、少なくとも約30ミル、又は少なくとも約35ミル、及び/又は約100ミル以下、約90ミル以下、約75ミル以下、約60ミル以下、約50ミル以下、約45ミル以下、約40ミル以下、約35ミル以下、約32ミル以下であってよいが、フロントガラス及び中間膜の特定の用途及び特性に応じて他の厚さを所望のように用いることができる。中間膜が2つの基材の間に積層されていない場合には、その平均厚さは、カリパス又は他の同等の装置を用いて中間膜の厚さを直接測定することによって求めることができる。中間膜が2つの基材の間に積層されている場合には、その厚さは、多層パネルの全厚さから基材の合計厚さを減じることによって求めることができる。
【0061】
[0086]本明細書に記載するフロントガラスを形成するのに用いる中間膜は、任意の好適な方法にしたがって形成することができる。代表的な方法としては、溶液キャスト、圧縮成形、射出成形、溶融押出、メルトブロー、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。2以上のポリマー層を含む多層中間膜はまた、例えば共押出、ブローンフィルム、メルトブロー、浸漬被覆、溶液被覆、ブレード塗布、パドル塗布、エアナイフ塗布、印刷、粉末被覆、噴霧被覆、積層、及びこれらの組合せのような任意の好適な方法にしたがって製造することもできる。
【0062】
[0087]中間膜を押出又は共押出プロセスによって形成する場合には、1種類以上の熱可塑性樹脂、可塑剤、及び場合によっては上記に記載の1種類以上の添加剤を予め混合して、押出装置中に供給することができる。押出装置は、押出シートを生成させるために熱可塑性組成物に特定のプロファイル形状を与えるように構成することができる。全体的に上昇した温度及び高粘稠質である押出シートは、次に冷却してポリマーシートを形成することができる。シートを冷却して硬化させたら、それを切断して、その後の中間膜としての貯蔵、輸送、及び/又は使用のために巻き取ることができる。
【0063】
[0088]共押出は、ポリマー材料の複数の層を同時に押出すプロセスである。一般に、このタイプの押出は、一定の体積の処理量の異なる粘度又は他の特性の複数の異なる熱可塑性樹脂溶融体を、溶融し、共押出ダイを通して供給して所望の最終形態にするために2以上の押出機を用いる。共押出プロセスにおいて押出ダイから排出される複数のポリマー層の厚さは、一般に、押出ダイを通る溶融体の相対速度を調節すること、及びそれぞれの溶融した熱可塑性樹脂材料を処理する個々の押出機の寸法によって制御することができる。
【0064】
[0089]幾つかの態様においては、本明細書に記載するフロントガラスを形成するのに用いる中間膜は、中間膜が、HUD領域の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%にわたって、目標中間膜に関する所定又は規定のくさび角度プロファイルから0.10mrad以下、0.075mrad以下、0.05mrad以下変位するくさび角度プロファイルを有するように製造することができる。幾つかの態様においては、形成される中間膜のくさび角度プロファイルは、HUD領域全体にわたって、所定のくさび角度プロファイルから0.10mrad以下、0.075mrad以下、0.05mrad以下だけ変位していてよい。与えられた中間膜に関するくさび角度プロファイルは、一次多項式フィッティングを用いて幅3インチのセグメントにわたってSavitzky-Golayの方法を用いて、下記の実施例において記載するように求められる。
【0065】
[0090]かかる中間膜、又はかかる中間膜を含むフロントガラスを製造する方法は、HUD領域を有する目標中間膜に関する規定くさび角度プロファイルを得て、次に目標中間膜と同様のくさび角度プロファイルを有する中間膜を形成する工程を含む。より詳しくは、中間膜の形成は、形成される中間膜のくさび角度プロファイルが、目標中間膜のHUD領域に関する規定くさび角度プロファイルから、1以上の上記の範囲内の量変動するように実施することができる。かかる変位は、例えば下記の実施例に記載する方法を用いて、形成された中間膜のくさび角度を測定することによって求めることができる。
【0066】
[0091]或いは、又は更には、形成された中間膜の厚さプロファイルを測定することもでき、測定された厚さプロファイルを、中間膜に沿った1以上の点において目標厚さプロファイルと比較することができる。幾つかの態様においては、本明細書に記載するようにして形成される中間膜の測定される厚さプロファイルと、所定の目標厚さプロファイルとの間の最大差は、約0.005mm以下、約0.0025mm以下、約0.0020mm以下、又は約0.0015mm以下であってよい。或いは、又は更には、本明細書に記載するようにして形成される中間膜の測定される厚さプロファイルと、所定の目標厚さプロファイルとの間の差は、与えられた点における目標厚さを基準として少なくとも約0.025%、少なくとも約0.05%、又は少なくとも約0.10%、及び/又は約0.25%以下、約0.20%以下、約0.15%以下、又は約0.10%以下であってよい。
【0067】
[0092]目標くさび角度プロファイル又は目標厚さプロファイルは、例えば積層業者、HUDシステム供給メーカー、又は乗物の製造業者のような第三者の供給業者によって与えることができ、或いは他の形態で決定することができる。幾つかの態様においては、形成される中間膜に関して測定されるくさび角度プロファイルは、形状が目標プロファイルから僅かに変化してよいが、なお、上記の範囲内の目標くさび角度プロファイルからの最大変位を示していてよい。形成される中間膜のくさび角度及び厚さは、下記の実施例において記載するように測定することができる。
【0068】
[0093]フロントガラス及び他のタイプの多層パネルは、任意の好適な方法によって本明細書に記載する中間膜及びグレージングパネルから形成することができる。通常のガラス積層プロセスは、次の:(1)2つの基材及び中間膜を組み立て;(2)IR放射材又は対流装置によってアセンブリを第1の短い時間加熱し;(3)アセンブリを、第1の脱気のために加圧ニップロール中に通し;(4)アセンブリを約60℃〜約120℃へ短時間加熱して、中間膜の縁部を封止するのに十分な一時的接着をアセンブリに与え;(5)アセンブリを第2の加圧ニップロール中に通して、中間膜の縁部を更に封止して更なる取扱いを可能にし;そして(6)アセンブリを、135℃〜150℃の間の温度及び150psig〜200psigの間の圧力において約30〜90分間オートクレーブ処理する;工程を含む。一態様にしたがって上記の工程(2)〜(5)において記載した中間膜−ガラス界面を脱気するための他の方法としては、真空バッグ及び真空リングプロセスが挙げられ、これらの両方とも本明細書に記載するフロントガラス及び他の多層パネルを形成するために用いることができる。
【0069】
[0094]本発明の幾つかの態様にしたがって構成されるフロントガラスは、異なる高さの運転者に関して反射二重像分離を最小にするように設計される。本明細書において用いる「反射二重像分離」という用語は、一次像と、ガラスの内表面及び外表面に反射する際の投影像の位置の差に起因する干渉二次又は「ゴースト」像との間の分離距離を指す。通常は平均又は「標準」の高さの運転者に適応するように最適化されている従来のフロントガラスとは異なり、本発明のフロントガラスは、平均又は標準よりも低位置又は高位置の運転者に関して二重像分離を少ししか示さないか、又は全く示さないようにすることができる。従来の方法で最適化された中間膜に関して、「標準」の高さの運転者と比べた、低位置及び高位置の運転者が経験する二重像分離の例を図12aに与える。図12bに示すように、本発明の幾つかの態様にしたがって構成されるフロントガラスは、全ての運転者の高さに関して反射二重像分離を最小にして、全ての高さにおいてより明確でより判読しやすい虚像を与える。
【0070】
[0095]幾つかの態様においては、本明細書に記載するようにして構成されるフロントガラスは、特定のフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、約2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び約2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示すことができる。本明細書において用いる「アイボックス」という用語は、フロントガラス及びHUD投影システムが取り付けられている乗物に運転者が着座した際に運転者の視点(eye)が位置する三次元領域を指す。通常は、アイボックスは、運転者に多少の頭の動きの自由を許すために視点自体よりも僅かに大きいが、運転者が運転者席に落ち着いて着座している際の運転者の視点の中心点から、50mmより多く上方又は下方、75mmより多く左方又は右方、及び50mmより多く前方又は後方に拡張しない。本明細書において用いる「落ち着いて着座」という用語は、運転者の背中を運転者シートに着け、運転者の足をペダル上に置き、運転者の手をハンドル上に置いて座ることを意味する。
【0071】
[0096]幾つかの態様においては、本明細書に記載するフロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、約2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び約2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の両方を有することができる。幾つかの態様においては、フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、約1.75分未満、約1.5分未満、約1.25分未満、約1分未満、又は約0.5分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び/又は約1.75分未満、約1.5分未満、約1.25分未満、約1分未満、又は約0.5分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示すことができる。上部及び下部アイボックス反射二重像分離距離は、以下の手順にしたがって求められる。
【0072】
[0097]そのフロントガラスに関する上部及び下部アイボックス反射二重像分離距離を測定するためには、与えられたフロントガラスに関する標準取付条件を決定しなければならない。本明細書において用いる「標準取付条件」という用語は、標準の高さの運転者がそのフロントガラスに関して最小の反射二重像分離距離を観察する与えられたフロントガラスに関する取付条件を指す。幾つかの態様においては、標準取付条件における最小反射二重像分離距離は、下記に記載するようにして測定して約1.5分未満、約1分未満、約0.75分未満、約0.5分未満、又は約0.25分未満であってよい。「標準の高さ」の運転者とは、そのアイボックスの中心線が、取り付けた状態のフロントガラスの内部上の最も低い位置から水平に引いた線から134.4mmの高さである運転者である。運転者の高さの測定に関する更なる詳細は直ぐ後に与える。
【0073】
[0098]フロントガラスがHUD投影システムに対してどのように配向しているかなどのフロントガラスの標準取付条件が既知である場合には、フロントガラス及びHUD投影システムを、既知の取付条件にしたがって実験装置内に配置することができる。かかる取付条件は、供給業者又は他の第三者によって与えることができ、乗物から直接測定可能である場合があり、或いは乗物の製造及び設計に関係する参考資料において入手可能な場合がある。
【0074】
[0099]或いは、フロントガラスの標準取付条件が未知である場合には、これらはそのフロントガラスに関する上部又は下部アイボックス反射二重像分離距離を測定する前に求めなければならない。かかる決定は、例えばフロントガラス及びHUD投影システムの幾つかのパラメーターに関する種々の値を試験し、与えられたフロントガラスに関してどのパラメーターの組合せが最小の反射二重像分離を与えるかを求めることによって行うことができる。与えられたフロントガラスについて標準の運転者の高さに関して最小反射二重像分離を与えるように最適化された条件の組が、そのフロントガラスに関する「標準取付条件」とみなされる。
【0075】
[0100]ここで図13a及び13bを参照すると、フロントガラス320の反射二重像分離距離を試験するための実験装置の概要図が与えられている。フロントガラス320は、ホルダー(図示せず)内に配置され、垂直方向から角度β(フロントガラスの「レーキ角」とも呼ばれる)で配向されている。レーキ角に関する好適な値の範囲は45〜60°である。図13a及び13bに示すように、HUD投影システム316は、フロントガラス及び投影システムを乗物内に取り付けた際のように、投影システム316から射出された像が内側ガラスパネル322aの内表面に当たるように据え付けられる。投影像が内側パネル322aの表面に当たる角度は「入射角」と呼ばれ、投影システム316の出口とガラス表面との間の距離は「投影距離」と呼ばれる。図13aにおいて角度γとして示される入射角は30〜45°の範囲であり、図13bにおいて距離「P」として示される入射距離は5〜20cmの間である。虚像距離は、運転者の視点の中心点と投影された虚像350との間の水平距離として定義される。虚像距離は図13bにおいて距離「V」として示され、3〜15mの範囲であってよい。
【0076】
[0101]運転者の高さは、内側パネル322bの下側取付縁部332bから水平に伸ばした直線と、運転者の視点の中心点との間の垂直方向の直線距離として定義される。これは図13aにおいて距離「H」として示される。与えられたフロントガラスに関する標準取付条件を求める際には、運転者の高さHを134.4mmに設定する。Hの値は、運転者の高さにおける変化を反映して変動する。運転者の視点の中心点(又は運転者のアイボックスの中心点)と、内側パネル322aの表面との間の距離は、「運転者の距離」と定義される。この距離は図13aにおいて「D」として示され、運転者の高さに伴って変動する。標準の高さの運転者に関しては、運転者の距離Dは600〜1000mmの範囲になる。より高い位置及びより低い位置の運転者に関して同様の値が予測される。最後に、図13bに示すように、見下ろし角度は、運転者のアイボックスの中心点から引いた水平線と、フロントガラス320のHUD領域の中心を通り、反射虚像350の中心線を通して引いた直線との間の角度として定義される。運転者距離と同様に、図13bにおいてθとして示される見下ろし角度は、運転者の高さに基づいて変動するが、5°〜10°の範囲である。
【0077】
[0102]フロントガラス320に関する標準取付条件を求めるためには、フロントガラス320及びHUD投影システム316を、134.4mmの標準運転者高さ(H)に関して、上記の範囲内のレーキ角、入射角、投影距離、及び虚像距離に関する値の種々の組合せで配置する。次に、それぞれの条件の組に関して、下記において更に詳細に記載する方法にしたがってフロントガラスの二重像分離を求めることができる。与えられたフロントガラスについて二重像分離距離に関する最も低い値を与えるレーキ角、入射角、投影距離、及び虚像距離に関する値の組合せを、そのフロントガラスに関する「標準取付条件」とみなすことができる。
【0078】
[0103]標準の運転者高さに関して運転者の高さ及び見下ろし角度を計算することができるが、これらのパラメーターは上記に記載したように標準取付条件を求める際にはそれ自体は最適化されていない。それどころか、上記に与えるこれらの値の範囲は最適化限界として用いられるので、求められた標準取付条件において計算される運転者距離D、及び見下ろし角度θの両方に関する最終的な値が上記の範囲内になければならない。フロントガラス320は垂直方向からある1つの角度で配向されているので、運転者距離D及び見下ろし角度θは運転者の高さが変化すると変化するが、上記に与えた範囲内、又はその直ぐ外側である。
【0079】
[0104]フロントガラス320の二重像分離距離は、以下の手順にしたがって求めることができる。投影像は、フロントガラス320及び投影システム316を概して図13a及び13bに示すように配向した際に、光をHUD投影システム316からフロントガラス320を通して通過させることによって生成させることができる。フロントガラス320を通過する光に、例えば線、形状、画像、又はグリッドのような像を含ませる。光がフロントガラス320を通過し、その表面に反射したら、フロントガラス320を通して虚像を見ることができる。次に、カメラレンズの中心線をアイボックスの中心線に位置させて配置されているデジタルカメラ又は他の好適な装置を用いて、投影像を撮像することができる。標準フロントガラス取付条件を求めるためには、例えばカメラレンズの中心線を134.4mmの高さに位置させる。次に、カメラによって撮像された得られた像をデジタル化して、複数のピクセルを含むデジタル投影像を形成する。
【0080】
[0105]デジタル化したら、撮像画像を定量分析して、少なくとも1つの一次像指標、及び少なくとも1つの二次像指標を含むプロファイルを形成することができる。分析は、デジタル投影像の少なくとも一部を、像のその部分におけるピクセルの強度を表す数値を含む垂直像マトリクスに変換することによって行うことができる。次に、図14に示すように、マトリクスの列を抽出し、ピクセル数に対してグラフ化してプロファイルを与えることができる。次に、プロファイルに関する一次像指標をプロファイルに関する二次像指標と比較して差を求めることができる。幾つかの態様においては、一次像指標にはグラフのより高強度のピークを含めることができ、一方で二次像指標にはより低い強度のピークを含めることができる。2つの指標の間の任意の好適な差を求めることができ、幾つかの態様においては、これはプロファイルグラフにおける2つの指標の間の位置の差であってよい。
【0081】
[0106]次に、この差に基づいて一次ピークと二次ピークの間の分離距離(ピクセル)を用いて、次式:
【0082】
【化1】
【0083】
にしたがってそれぞれのパネルに関する二重像分離距離(D)(分(アーク分))を計算することができる。
[0107]上記の式は、小さい角度θに関してはtanθ=θという微少角近似に基づいているので、二重像分離距離(D)を虚像距離(mm)で割った値は分離角(ラジアン)に等しい。mm/ピクセルの比は、較正像から計算することによって求めることができる。次に、上部及び下部アイボックス反射二重像分離距離を測定するために、フロントガラスの標準取付条件にしたがって配置されたフロントガラス320及びHUD投影システム316を用いて運転者の高さHを調節する。上部アイボックス反射二重像分離距離を測定する際には、カメラレンズの中心線を182.4mmの高さHに動かし、126.2mmの運転者高さHに配置されたカメラレンズの中心線を用いて下部アイボックス反射二重像分離距離を測定する。カメラを配置したら、運転者距離D及び見下ろし角度θを計算することができる。次に、それぞれの高さに関して反射二重像分離距離を求めることができる。
【0084】
[0108]上記で議論したように、本発明の幾つかの態様にしたがって構成されるフロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、約2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び約2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを有することができる。これは、単一の運転者高さに関してのみ二重像分離距離を最小にするが、より高い位置又はより低い位置の運転者に関しては大きなゴーストを形成する傾向があるが従来のフロントガラスを超える向上である。
【0085】
[0109]本明細書においては自動車用のフロントガラスに関して記載するが、本明細書に記載するフロントガラスなどの多層パネルは、航空機風防ガラス及び窓、並びに船舶用途、鉄道用途、オートバイ用途などの他の輸送用途、及び他のレジャー用自動車のためのフロントガラス及びパネルなどの種々の用途のために用いることができることを理解すべきである。
【0086】
[0110]以下の例は、当業者に本発明を製造及び使用することを教示するために本発明を例示する意図であり、いかなるようにも発明の範囲を不必要に限定することは意図しない。
【0087】
[0111]本発明はまた、下記に示す次の態様1〜31も包含する。
[0112]態様1は、1対のグレージングパネル;及び、グレージングパネルの間に配置されてそれぞれと接触しており、HUD領域を画定し、HUD領域は少なくとも1つの変動角度の区域を含むテーパー状の縦方向の厚さプロファイルを有するポリマー中間膜;を含むフロントガラスであって、フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す上記フロントガラスである。
【0088】
[0113]態様2は、中間膜及びパネルがそれぞれ、上側取付縁部、下側取付縁部、運転席側取付縁部、及び助手席側取付縁部を含み、中間膜の上側及び下側取付縁部は、フロントガラスが取付位置にある際に互いから垂直方向に離隔して互いに対して平行であり、中間膜の運転席側取付縁部及び助手席側取付縁部は、それぞれ中間膜の上側取付縁部及び下側取付縁部と接していて、フロントガラスが取付位置にある際に互いから水平方向に離隔して互いに対して平行であり、HUD領域は、中間膜の上側取付縁部よりも中間膜の下側取付縁部に近接して配置されている、態様1の特徴を含むフロントガラスである。
【0089】
[0114]態様3は、フロントガラスが、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の両方を示す、態様1〜2のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0090】
[0115]態様4は、フロントガラスが、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、1分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び1分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す、態様1〜3のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0091】
[0116]態様5は、HUD領域が、HUD領域の少なくとも一部にわたって増加する縦方向のくさび角度プロファイルを有する、態様1〜4のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0092】
[0117]態様6は、HUD領域が、HUD領域の少なくとも一部にわたって減少する縦方向のくさび角度プロファイルを有する、態様1〜5のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0093】
[0118]態様7は、HUD領域が、HUD領域の少なくとも一部にわたって一定に維持される縦方向のくさび角度プロファイルを有する、態様1〜6のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0094】
[0119]態様8は、テーパー状の縦方向の厚さプロファイルが少なくとも2つの変動角度の区域を含む、態様1〜7のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
[0120]態様9は、テーパー状の縦方向の厚さプロファイルが一定角度の区域を含まない、態様1〜8のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0095】
[0121]態様10は、HUD領域が平坦な水平方向の厚さプロファイルを有する、態様1〜9のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
[0122]態様11は、HUD領域が、中間膜の上側取付縁部から離隔してそれに対して平行の上側取付HUD境界、及び中間膜の下側取付縁部から離隔してそれに対して平行の下側取付HUD境界によって画定されており、上側HUD境界及び下側HUD境界は、フロントガラスの運転席側取付縁部と助手席側取付縁部の間の距離の少なくとも40%に及んでいる、態様1〜10のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0096】
[0123]態様12は、上側取付HUD境界及び下側取付HUD境界が、フロントガラスの運転席側取付縁部と助手席側取付縁部の間の全距離に及んでいる、態様1〜11のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0097】
[0124]態様13は、ポリマー中間膜がポリ(ビニルアセタール)樹脂及び少なくとも1種類の可塑剤を含む、態様1〜12のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
[0125]態様14は、ポリマー中間膜が単層中間膜である、態様1〜13のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0098】
[0126]態様15は、ポリマー中間膜が多層中間膜である、態様1〜14のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
[0127]態様16は、フロントガラスがASTM−E90にしたがって20℃において測定して少なくとも約34dBのコインシデンス周波数における音響伝達損失を有する、態様1〜15のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0099】
[0128]態様17は、中間膜が、染料、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、IR吸収剤、IR遮断剤、加工助剤、流動向上添加剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、成核剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤、及び充填剤からなる群から選択される1種類以上の添加剤を含む少なくとも1つのポリマー層を含む、態様1〜16のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0100】
[0129]態様18は、中間膜が、IR吸収剤、IR遮断剤、及びUV安定剤の少なくとも1つを含む少なくとも1つのポリマー層を含む、態様1〜17のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0101】
[0130]態様19は、中間膜が少なくとも1つのポリマー層及び少なくとも1つのポリマーフィルムを更に含む、態様1〜18のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
[0131]態様20は、少なくとも1つのグレージングパネルが、アルミナ−シリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英又は溶融シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、ポリカーボネート、及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類の材料から形成される、態様1〜19のいずれかの特徴を含むフロントガラスである。
【0102】
[0132]態様21は、態様1〜20のいずれかのフロントガラスを含む乗物である。
[0133]態様22は、中間膜又は中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;そして、(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与える;ことを含み;ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う上記方法である。
【0103】
[0134]態様23は、フロントガラスを製造する方法であって、1対のグレージングパネルの間に形成された中間膜を積層してフロントガラスを形成することを更に含む、態様22の特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0104】
[0135]態様24は、形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも90%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、態様22〜23のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0105】
[0136]態様25は、形成を、形成された中間膜のHUD領域のいずれも、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mradより多く変動する縦方向くさび角度プロファイルを有しないように行う、態様22〜24のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0106】
[0137]態様26は、形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域の規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.075mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、態様22〜25のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0107】
[0138]態様27は、形成された中間膜のHUD領域が少なくとも1つの変動角度の区域を含む、態様22〜26のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0108】
[0139]態様28は、形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも90%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、態様22〜27のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0109】
[0140]態様29は、フロントガラスが、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、1分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び1分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す、態様22〜28のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0110】
[0141]態様30は、中間膜を製造する方法であって、形成の少なくとも一部を押出又は共押出によって行う、態様22〜29のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【0111】
[0142]態様31は、フロントガラスを製造する方法であって、形成された中間膜を1対のグレージングパネルの間に積層してフロントガラスを形成することを更に含む、態様22〜30のいずれかの特徴を含む中間膜又はフロントガラスを製造する方法である。
【実施例】
【0112】
[0143]厚さ2.3mmのガラスの2つのシートの間に遮音3層PVB中間膜を積層することによって、幾つかのフロントガラスW−1〜W−4を調製した。それぞれの中間膜は、テーパー状の厚さプロファイルを含むHUD領域を有していた。フロントガラスW−1を形成するのに用いた1つの中間膜は0.7mradのくさび角度を有する一定角度の区域を有しており、フロントガラスW−2〜W−4を形成するのに用いた他の3つの中間膜は変動角度の区域を有していた。フロントガラスW−2〜W−4を形成するのに用いた中間膜のそれぞれは、単一の目標プロファイルに基づくプロファイルを有していたが、これらのフロントガラスを形成するのに用いたそれぞれの中間膜の実際のプロファイルは、目標プロファイルから異なる量だけ変動していた。
【0113】
[0144]形成したら、層の厚さを計算するために干渉分光法を用いるLumetrics(登録商標)Optigaugeを用いてフロントガラスW−1〜W−4のそれぞれのHUD領域の縦方向の厚さプロファイルを測定した。それぞれのフロントガラスに関してHUD領域の高さに沿って0.1cm毎に厚さの測定値をとって、厚さプロファイルデータを集めた。厚さプロファイルから、それぞれのフロントガラスのHUD領域のくさび角度プロファイルも計算した。これは、まずSavitzky-Golayフィルターを用い、一次多項式フィッティングを用いて幅3インチのセグメントにわたって集めた厚さデータを平滑化して信号雑音比を増加させ、次にHUD領域内の厚さプロファイル線の一次導関数を計算することによって行った。位置の関数として得られたくさび角度データを集めて、それぞれの中間膜に関するくさび角度プロファイルを形成した。フロントガラスW−1〜W−4のそれぞれの中間膜のHUD領域に関して測定されたくさび角度プロファイルを図15に与える。
【0114】
[0145]その後、上記に記載した手順にしたがって、フロントガラスW−1〜W−4のそれぞれに関して、幾つかの運転者高さにおいて二重像分離距離を測定した。それぞれのフロントガラスに関して、標準取付条件において、「低位置」の運転者(H=126.2mm)、「標準位置」の運転者(H=134.4mm)、「高位置」の運転者(H=148.8mm)、及び「超高位置」の運転者(H=182.4mm)に関する二重像分離距離を測定した。フロントガラスW−1〜W−4のそれぞれに関する、図16に示すそれぞれの像の中心付近でとった得られた撮像画像の抽出部を、それぞれ図17〜20に与える。
【0115】
[0146]図17図18〜20と比較することによって示されるように、少なくとも1つの変動角度の区域を有するHUD領域を含む中間膜(W−2〜W−4)は、一定角度の区域を有するHUD領域を含む中間膜(W−1)よりも低い二重像分離を示す。更に、図18、19、及び20を比較することによって示されるように、目標プロファイルからの変位量が最も少ないくさび角度プロファイルを有する中間膜を用いて製造したフロントガラスW−4(図20)は、低位置、標準位置、高位置、及び超高位置を含む全ての運転者の位置において最も高品質の像を与えた。下表1は、図17〜20において与えられた像の定量分析結果を与える。
【0116】
【表1】
【0117】
[0147]好ましい態様であると現在考えられているものを含む幾つかの態様の記載に関連して発明を開示したが、詳細な説明は例示の意図であり、本発明の範囲を限定すると理解すべきではない。当業者に理解されるように、本明細書において詳細に記載されているもの以外の態様は本発明に包含される。発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載されている態様の修正及び変更を行うことができる。
【0118】
[0148]更に、本発明の任意の単一の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴は、互換的な場合には、本発明の任意の他の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴と互換的に用いて、本明細書全体にわたって与えられているそれぞれの構成要素に関して規定されている値を有する一態様を形成することができることが理解される。例えば、与えられている任意の範囲の可塑剤を含むことに加えて、与えられている任意の範囲の残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間膜を形成して、本発明の範囲内であるが、列記するのは煩雑である多くの変形体を形成することができる。更に、フタレート又はベンゾエートのような属又はカテゴリーに関して与えられている範囲はまた、他に示していない限りにおいて、ジオクチルテレフタレートのようなそのカテゴリーの属又は構成要素の中の種に適用することもできる。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)1対のグレージングパネル;及び
グレージングパネルの間に配置されてそれぞれと接触しており、HUD領域を画定し、HUD領域は少なくとも1つの変動角度の区域を含むテーパー状の縦方向の厚さプロファイルを有するポリマー中間膜;
を含むフロントガラスであって、
フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す上記フロントガラス。
(2)フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の両方を示す、(1)に記載のフロントガラス。
(3)フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、1分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び1分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す、(1)に記載のフロントガラス。
(4)HUD領域は、HUD領域の少なくとも一部にわたって増加する縦方向のくさび角度プロファイルを有する、(1)に記載のフロントガラス。
(5)HUD領域は、HUD領域の少なくとも一部にわたって減少する縦方向のくさび角度プロファイルを有する、(1)に記載のフロントガラス。
(6)HUD領域は、HUD領域の少なくとも一部にわたって一定に維持される縦方向のくさび角度プロファイルを有する、(1)に記載のフロントガラス。
(7)テーパー状の縦方向の厚さプロファイルは少なくとも2つの変動角度の区域を含む、(1)に記載のフロントガラス。
(8)テーパー状の縦方向の厚さプロファイルは一定角度の区域を含まない、(1)に記載のフロントガラス。
(9)HUD領域は平坦な水平方向の厚さプロファイルを有する、(1)に記載のフロントガラス。
(10)中間膜及びパネルはそれぞれ、上側取付縁部、下側取付縁部、運転席側取付縁部、及び助手席側取付縁部を含み、中間膜の上側及び下側取付縁部は、フロントガラスが取付位置にある際に互いから垂直方向に離隔して互いに対して平行であり、中間膜の運転席側取付縁部及び助手席側取付縁部は、それぞれ中間膜の上側取付縁部及び下側取付縁部と接していて、フロントガラスが取付位置にある際に互いから水平方向に離隔して互いに対して平行であり、HUD領域は、中間膜の上側取付縁部よりも中間膜の下側取付縁部に近接して配置されている、(1)に記載のフロントガラス。
(11)HUD領域は、中間膜の上側取付縁部から離隔してそれに対して平行の上側取付HUD境界、及び中間膜の下側取付縁部から離隔してそれに対して平行の下側取付HUD境界によって画定されており、上側HUD境界及び下側HUD境界は、フロントガラスの運転席側取付縁部と助手席側取付縁部の間の距離の少なくとも40%に及んでいる、(10)に記載のフロントガラス。
(12)中間膜又は中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、
(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;そして
(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与える;
ことを含み;
ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う上記方法。
(13)形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも90%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、(12)に記載の方法。
(14)形成を、形成された中間膜のHUD領域のいずれも、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mradより多く変動する縦方向くさび角度プロファイルを有しないように行う、(12)に記載の方法。
(15)形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.075mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、(12)に記載の方法。
(16)形成された中間膜のHUD領域が少なくとも1つの変動角度の区域を含む、(12)に記載の方法。
(17)フロントガラスを製造する方法であって、1対のグレージングパネルの間に形成された中間膜を積層してフロントガラスを形成することを更に含み;
フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す、(12)に記載の方法。
(18)中間膜を含むフロントガラスを製造する方法であって、
(a)目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルを得て;
(b)中間膜を形成して形成された中間膜を与え、ここで、形成された中間膜はHUD領域を画定しており、形成は、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも50%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行い;そして
(c)形成された中間膜を1対のグレージングパネルの間に積層してフロントガラスを形成し、ここでフロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、2分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び2分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す;
ことを含む上記方法。
(19)形成を、形成された中間膜のHUD領域の少なくとも90%が、目標中間膜のHUD領域に関する規定の縦方向くさび角度プロファイルから0.10mrad以下変動する縦方向くさび角度プロファイルを有するように行う、(18)に記載の方法。
(20)フロントガラスは、そのフロントガラスに関する標準取付条件において測定して、1分未満の上部アイボックス反射二重像分離距離、及び1分未満の下部アイボックス反射二重像分離距離の少なくとも1つを示す、(18)に記載の方法。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20