(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983174
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】プリントヘッドにおいて電気クロストークをキャンセルする方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20211206BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/01 451
B41J2/01 403
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-552681(P2018-552681)
(86)(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公表番号】特表2019-513584(P2019-513584A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017058275
(87)【国際公開番号】WO2017178335
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】16165297.9
(32)【優先日】2016年4月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518238104
【氏名又は名称】キャノン プロダクション プリンティング ホールディング べー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,ヨハネス エム.エム.
【審査官】
小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−113915(JP,A)
【文献】
特開2005−297560(JP,A)
【文献】
特開2006−027036(JP,A)
【文献】
米国特許第06050679(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動信号によって駆動される少なくとも3つの電気機械トランスデューサを有するデバイスにおいて、モニタされる第1電気機械トランスデューサからのモニタリング信号から電気的なクロストーク寄与をキャンセルする方法であって、前記クロストーク寄与が、前記モニタされるトランスデューサ以外の他のトランスデューサの作動により生じる、前記方法において、
(a)前記第1トランスデューサに関連する第2トランスデューサを選択するステップであり、第3トランスデューサの作動によって引き起こされる電気的なクロストークが前記第1トランスデューサ及び前記第2トランスデューサにおいて等しい、前記選択するステップと、
(b)前記第1トランスデューサを作動させ、前記第2トランスデューサを作動させないステップと、
(c)前記第1トランスデューサ及び前記第2トランスデューサから同時にモニタリング信号を測定するステップと、
(d)前記第1トランスデューサのモニタリング信号から前記第2トランスデューサのモニタリング信号を減算して、前記第1トランスデューサからの不要なものが取り除かれたモニタリング信号を取得するステップと
を有し、
前記ステップ(a)は、前記第1トランスデューサを、コンパレータの第1入力部へ接続し、前記第2トランスデューサを、前記コンパレータの第2入力部へ自己平衡回路を介して接続することを有し、
前記ステップ(d)は、前記第1トランスデューサのモニタリング信号から前記第2トランスデューサのモニタリング信号を減算して得られた結果を前記自己平衡回路へフィードバックすることを有する、
方法。
【請求項2】
前記デバイスは、噴射ユニットのアレイを有するインクジェットプリントヘッドであり、
噴射ユニットは、電気機械トランスデューサに取り付けられた圧力チェンバを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された第2トランスデューサを、前記第1トランスデューサに関連するトランスデューサとしてセーブする更なるステップを有する
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1トランスデューサを作動させる作動信号は、非噴射作動信号である、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記不要なものが取り除かれたモニタリング信号は、前記第1トランスデューサに関連する前記噴射ユニットのステータスを決定するために使用される、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第3トランスデューサは、噴射作動信号により作動される、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
夫々が電気機械トランスデューサを有する複数の噴射ユニットと、前記トランスデューサを駆動し且つ前記トランスデューサからモニタリング信号を受信する電子制御回路とを有する噴射デバイスであって、
前記制御回路が、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成される、
ことを特徴とする噴射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、作動信号によって駆動される少なくとも3つの電気機械トランスデューサを有するデバイスにおいて、モニタされる電気機械トランスデューサからのモニタリング信号から電気的なクロストーク寄与をキャンセルする方法であって、前記クロストーク寄与が、前記モニタされるトランスデューサ以外の他のトランスデューサの作動により生じる、前記方法に関係がある。より具体的には、本発明は、インクジェットプリントヘッドのような噴射デバイスのトランスデューサからのモニタリング信号において電気的なクロストークをキャンセルする方法であって、トランスデューサによって生成される電気信号が噴射デバイスの状態をモニタするために使用される、前記方法に関係がある。本発明はまた、噴射デバイス、より具体的には、方法が実装されるインクジェットプリントヘッドに関係がある。
【0002】
2.関連技術の説明
欧州特許出願第1584474(A1)号(特許文献1)及び欧州特許第2328756(B1)号(特許文献2)には、印刷された画像を形成するために液体インクを記録媒体の上に噴射する複数の噴射ユニットを具備する圧電インクジェットプリントヘッドの実施形態が記載されている。夫々の噴射ユニットは、液体インクで満たされた圧力チェンバに接続されたノズルを具備する。ノズル及び、結果として、噴射ユニットは、プリントヘッドの高い空間分解能を達成するために、狭い間隔で配置される。夫々の圧力チェンバは、圧電トランスデューサに取り付けられている。圧電トランスデューサは、電気信号又はパルスによって給電される場合に、圧力チェンバの体積の変化を引き起こすように変形する。結果として、音圧波が圧力チェンバ内の液体インクにおいて発生し、この波はノズルに伝わる。それにより、噴射作動信号であることができるほどパルスが十分に強い場合には、インク液滴がノイズから噴射される。
【0003】
逆に言えば、圧力波が圧力チェンバ内の液体内を伝わっているときに、この波は、電気機械トランスデューサの変形を引き起こし、変形に応答して電気信号(電圧及び電流信号)を生成することになる。結果として、上記の文献で教示されているように、トランスデューサから取得される信号をモニタすることによって、圧力チェンバ内の音圧波を検出することが可能である。圧力チェンバの液体内の圧力波は、噴射作動信号が印加されて結果としてノズルからの液滴噴射が起こった後の残留波、又は結果として液滴噴射が起こることなく液体内で波を引き起こす非噴射作動信号の印加後のモニタリング波のいずれかであってよい。後者の作動は、モニタリング目的、すなわち、インク及び/又は圧力チェンバのステータスの確認、のために知られている。一般に、残留波又はモニタリング波のいずれかを検出することに関連する電気信号の振幅は、噴射又は非噴射作動信号の振幅よりも大いに小さい。
【0004】
トランスデューサが作動された場合に、噴射作動によって、又は非噴射作動によって、このトランスデューサによって生成される圧力波は、時間の経過とともに圧力チェンバ内で徐々に衰えていく。例えば、気泡が圧力チェンバ内又はノズル内に閉じ込められている場合には、これは、特徴的な方法で、圧力波が衰えるパターンを変えうる。それにより、気泡の存在は、圧力波の減衰をモニタすることによって検出され得る。
【0005】
同様に、トランスデューサから得られるモニタリング信号は、噴射ユニットの他の状態、例えば、ノズルが部分的に又は完全に汚染物質によって詰まっている状態、を検出するために使用されてよい。このようにしてモニタされ得る他の条件及び/又はインク特性の例は、インクの粘度及びノズル内の空気/液体メニスカスのポジションである。このポジションは、圧力チェンバ内の音波の共鳴周波数を変える。
【0006】
噴射デバイスの複数のトランスデューサは、共通の作動及びモニタリング回路の部分を形成し、この回路の導線は、デバイス内で比較的に密接して詰め込まれているので、プリントヘッドの噴射ユニットの密集に起因して、アクチュエータ間には必然的に一定量の電気クロストークが存在することになる。結果として、噴射ユニットが動作中であるときに1つのアクチュエータがモニタされる場合に、モニタリング信号は、モニタされている噴射ユニット内の圧力波のみを反映するのではなく、同時に作動されている他のトランスデューサからの一定量のクロストークも含むことになる。これは、噴射ユニットの状態の決定の精度を危うくする可能性がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、モニタリング信号が処理及び解釈可能であるように、モニタリング信号からクロストーク寄与をキャンセルすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願第1584474(A1)号
【特許文献2】欧州特許第2328756(B1)号
【発明の概要】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に従う方法は、(a)モニタされる第1トランスデューサに関連する第2トランスデューサを選択するステップであり、第3トランスデューサの作動によって引き起こされる電気的なクロストークが前記第1トランスデューサ及び前記第2トランスデューサにおいて等しい、前記選択するステップと、(b)前記第1トランスデューサを作動させ、前記第2トランスデューサを作動させないステップと、(c)前記第1トランスデューサ及び前記第2トランスデューサから同時にモニタリング信号を測定するステップと、(d)2つの前記モニタリング信号を減算して、前記第1トランスデューサからの不要なものが取り除かれたモニタリング信号を取得するステップとを有する。
【0010】
第1トランスデューサ及び第2トランスデューサにおける瞬時に受け取られるクロストークが等しいことは、第2トランスデューサからのクロストーク信号が第1トランスデューサにおけるクロストーク信号に比例することを意味し、アナログ−デジタル変換(ADC)が行われる前でさえ、モニタリング信号からクロストーク寄与を直接に減じる可能性を与える。電気的なクロストークは、圧力チェンバ内で音波によって引き起こされる信号と同じか又はそれよりも(ずっと)大きいことがあり得るので、この直接減算は、ADCの必要なダイナミックレンジ又はビット数を減らす。クロストーク寄与をそのとき以前にリファレンスとしてセーブすることと比べて、発明された方法は、より正確であり、クロストーク信号のドリフトを補償するより良い能力がある。
【0011】
更なる実施形態において、方法は、噴射ユニットのアレイを有するインクジェットプリントヘッドにおいて適用され、噴射ユニットは、電気機械トランスデューサに取り付けられた圧力チェンバを有する。電気機械トランスデューサはしばしば、インクを充てんされた圧力チェンバに接続されている圧電性物質である。インクは、十分に強い電気パルス、すなわち、噴射作動信号が圧電トランスデューサに印加される場合に、圧力チェンバの端部にあるノズルからインク液滴の形で噴射される。プリントヘッド内で導線を密集して詰め込まれている高密度の噴射ユニットは、様々な噴射ユニットにおける電気信号間で高いレベルの電気的なクロストークを引き起こす。発明された方法を適用することによって、1つのユニットからのモニタリング信号は、他の噴射ユニットからのより少ない干渉で決定され得る。
【0012】
更なる実施形態において、前記第1トランスデューサを作動させる作動信号は、非噴射作動信号である。非噴射作動信号は、噴射ユニットからインク液滴を発生させるほどには十分に強くないが、依然として圧力チェンバ内のインクにおいて圧力波を引き起こす。これは、少なくとも他の噴射ユニットのための噴射作動信号のクロストークと比較して、むしろ小さい電気信号を生じさせる。この小信号は、発明された方法による測定のためにアクセス可能にされる。
【0013】
更なる実施形態において、前記不要なものが取り除かれたモニタリング信号は、前記第1トランスデューサに関連する前記噴射ユニットのステータスを決定するために使用される。噴射ユニットのステータスは、モニタリング信号に含まれる詳細から決定され得る。それらの詳細は、クロストークによって引き起こされるノイズにおいて失われる可能性があり、それによって、噴射ユニットの様々なとり得る状態間の相違を分かりにくくする。
【0014】
更なる実施形態において、前記第3トランスデューサは、噴射作動信号により作動される。動作中に、如何なる第3噴射ユニットも、その噴射ユニットの適用に関連した意図されたスキームに従って作動されてよい。クロストークは直ちに減じられるので、噴射動作が完了するのを待つ必要はない。2つの関連するトランスデューサが利用可能であるや否や、このことは、それらがモニタリング信号を記録する準備ができていることを意味し、本発明に従う方法は適用され得る。よって、方法は、デバイス、例えば、プリントヘッドが動作中であるときに実行され得、それにより、噴射デバイスの特性は、デバイスの動作中に準連続的にモニタされ得る。
【0015】
本発明のより具体的な任意的特徴は、従属請求項で示されている。
【0016】
本発明は、夫々が電気機械トランスデューサを有する複数の噴射ユニットと、前記トランスデューサを駆動し且つ前記トランスデューサからモニタリング信号を受信する電子制御回路とを有する噴射デバイスであって、前記制御回路が、上記の方法のうちの1つを実行するよう構成される、ことを特徴とする前記噴射デバイスとして具現化されてよい。方法は更に、音響及び電気クロストークを抑制するための他の手段と組み合わされてよく、このようにして、より一層高い精度を得る。
【0017】
本発明の適用性の更なる範囲は、以降で与えられている詳細な説明から明らかになるだろう。なお、本発明の適用範囲内の様々な変更及び改良は、この詳細な説明から当業者に明らかになるだろうから、詳細な説明及び具体例は、本発明の好適な実施形態を示しながら、単なる実例として与えられている点が理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
実施形態の例は、これより、図面と併せて説明される。
【0019】
【
図1】本発明が適用されるデバイスの例としてのインクジェットプリントヘッドの部分断面透視図である
【
図2】
図1に示されるデバイスの電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示されるように、例えば、インクジェットプリンタの部分を形成し得る液滴噴射デバイスは、平坦なノズル面14に形成されている複数のノズル12を備えたノズルヘッド10を有する。ノズルヘッド10は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)テクノロジによって形成されてよい。
【0021】
夫々のノズル12は、液体インクで満たされているダクト16の一端へ接続されている。ダクト16の反対の端部は、ノズルヘッド全体の全てのノズル12及びダクト16に共通であるインク供給ライン18へ接続されている。夫々のダクト16の1つの壁は、可とう性膜20によって形成されており、可とう性膜20には、電気機械トランスデューサ22が、ダクト16の外側面上で取り付けられている。トランスデューサ22は多数の電極24を具備し、そのうちの2つしかここでは示されていない。トランスデューサ22は、積み重ねられた圧電材料の複数の層と、それらの間に位置する内部電極とを備えた圧電トランスデューサであってよい。圧電材料の中にある内部電極は、その場合に交互に、上面において電極24と、底面において電極26と接続されることになる。電圧が電極に印加される場合に、これは、トランスデューサ22を屈曲モードにおいて曲げさせて、膜20の変形を生じさせる。
【0022】
例えば、電圧パルスが活性化パルスとして電極24及び26に印加される場合に、膜20は、パルスの立ち上がり時にダクト16内の体積を増大させるように、下方に曲がり得る。それにより、インクは、インク供給ライン18から吸い込まれることになる。次いで、パルスの終わりの立ち下がり時に、膜20は元の状態に戻るよう曲がり、それによってダクト16内のインクを圧縮する。それにより、音圧波が液体インク内で発生する。この圧力波は、ノズル12に接続されているダクト16の端部に伝わり、インク液滴をノズルから発射させる。
【0023】
ノズル12の1つ、関連するダクト16及び関連するトランスデューサ22によって構成されるアセンブリは、以降、噴射ユニット28として指定される。
【0024】
示されている例では、ノズル12は、2つの平行な列及びそれらのノズルの夫々において配置されている。単一のノズル30が、
図1の左部分において断面で示されており、他の噴射デバイス28の部分を形成する。噴射デバイス28は、全て同じ設計を有しており、ノズル12の2つの列について鏡面対称的に配置されている。夫々の噴射ユニット28の電極24及び26は、信号線34、36を介して電子制御回路32へ接続されている。信号線34、36は、
図1では概略的にしか示されておらず、且つ、噴射ユニット28の1つに対してしか示されていない。
【0025】
制御回路32は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)の形をとってよく、夫々の噴射ユニットのトランスデューサ22の電極に印加される活性化パルスを生成するよう配置される。
【0026】
トランスデューサ22の1つが、例えば、同じ噴射ユニット又は隣接するユニットの前の活性化パルスによって引き起こされた圧力変動を受ける場合に、これは圧電材料のわずかな変形を引き起こすことがある。それにより、電圧が電極24、26において引き起こされる。この誘導電圧は、信号線34、36を介して制御回路32へも送信される検出信号を形成し、噴射ユニットでの圧力変動を解析及び評価するために使用され得る。噴射ユニットが正常に動作する場合に、減衰する圧力波の特徴的なパターンが、夫々の活性化パルスの後で検出される。しかし、何らかの種類の異常が噴射ユニットで起こる場合に(例えば、ノズル12の完全又は部分的な詰まり、ノズル又はダクトにおいて閉じ込められている気泡、あるいは、トランスデューサ22又は膜20の機械的な損傷)、これは、圧力変動のパターンを特徴的な方法で変化させる。結果として、検出された圧力変動を解析することによって、異常が起こったことを示すことが可能であり、更には、異常の性質を特定することも可能である。
【0027】
制御回路32は、活性化パルスが供給されるべきである噴射ユニット28、及び検出信号が受信されるべきである噴射ユニットをプロセッサユニット40の制御下で決定するFPGA(Field Programmable Gate Array)38と通信する。このようにして、ノズルヘッド10は、ノズル面14の下で前進される印刷基板(図示せず。)の上に所望の画像が形成されるように制御可能であり、噴射ユニット28の働きは、印刷工程の間に連続してモニタ可能である。
【0028】
噴射ユニット28のトランスデューサ22の電極24及び26で引き起こされる電圧は、ダクト16内の液体における音波に依存するのみならず、プリントヘッドの噴射ユニットの密集に起因して、必然的に、隣接する噴射ユニットに同時に与えられる作動信号によっても影響を与えられることになる。これは、比較的に密集して詰められている導線を有している共通の作動及びモニタリング回路から生じる電気的なクロストークである。更に、誘導電圧はまた、例えば、トランスデューサの温度、トランスデューサ及び膜の機械特性の経年変化(エイジング)、などを含むいくつかの他の要因によっても影響を及ぼされる。その上、ノズルヘッドは、ノズルヘッドの固体材料において振動を引き起こす外部衝撃を受けることがある。そのような振動は、膜20を介してトランスデューサへ伝えられ、電極においてノイズ信号を生じさせる。
【0029】
それらの要因のほとんどは、本質的に同じようにしていくつかの噴射ユニットの電極24、26及び46、48での電圧に作用する。他のトランスデューサがアクティブにされる場合に同様のモニタリング信号を示す一対のトランスデューサが選択され得ることが確認されている。1つのトランスデューサ22は、そのトランスデューサ22及び第2トランスデューサ44が第3トランスデューサの作動に対して等しい応答を示す場合に、第2トランスデューサと関連付けられる。この選択の後、第1トランスデューサ22は、噴射又は非噴射のいずれにせよ活性化信号の印加によってモニタされ、そして同時に、第2の関連するトランスデューサ44はアクティブにされない。両方のトランスデューサからのモニタリング信号が測定され、それら2つの信号は、第1トランスデューサ22についての純粋なモニタリング信号を取得するよう減算される。この信号は、ダクト16内の液体における圧力変動及び音波、すなわち、実際に関心が持たれている情報、のみを表し、一方、全ての外部擾乱因子は本質的に相殺する。
【0030】
図2は、電子的にキャパシタと見なされ得るトランスデューサ22及び関連するトランスデューサ44を含む制御回路32のより詳細な回路図である。
【0031】
制御回路32は、波形発生部54と、出力段56と、検出回路58とを含む。波形発生部54は、FPGA38の制御下で噴射ユニットのトランスデューサ22の夫々を個々に制御するために、活性化パルスから成る波形を有する制御信号を生成する。そのために、波形発生部は、夫々のトランスデューサ22に対して別個の出力を有している。出力段56は、トランスデューサ22の夫々を直接に又は検出回路58を介して間接的に波形発生部54の対応する出力へ接続するよう配置されたスイッチ60、62、64、66の回路網を含む。示されている例では、スイッチ60及び62は閉じられており、それにより、対応するトランスデューサは、波形発生部54へ直接に接続され、検出回路58からは切り離されている。対照的に、スイッチ64及び66は、直接接続が中断され、代わりに、波形発生部54の出力が検出回路58の入力へ(スイッチ64を介して)接続され、検出回路の出力が関連するトランスデューサ22へ(スイッチ66を介して)接続されている状態で示されている。
【0032】
検出回路58の入力は2つのブランチに分けられ、各ブランチは夫々キャパシタ68及び70を含む。キャパシタ68は、自己平衡回路74を介してコンパレータ72の1つの入力へ接続され、更には、関連するトランスデューサ44の一方の電極46へ接続されている。この関連するトランスデューサも、スイッチの回路網を通じて選択され得るが、これは、明りょうさのために
図2からは省略されている。キャパシタ70は、コンパレータ72の他の入力へ、そして、閉じられたスイッチ66を介して関連するトランスデューサ22の一方の電極24へ接続されている。トランスデューサ22及び関連するトランスデューサ44の他方の電極26及び48は接地されている。
【0033】
キャパシタ68、70と、検出回路58へ接続されているトランスデューサ22と、関連するトランスデューサ44とは、圧力波がダクト内に存在しない場合にはコンパレータ72の出力がゼロになるように、自己平衡回路74を用いて平衡を保たれるブリッジ回路を構成する。アナログ出力はA/Dコンバータ76でデジタル化され、デジタル化された出力はFPGA38を介してプロセッサユニット40へ送られ、更には、自己平衡回路74へフィードバックされる。キャパシタ68及び70は、この回路においてブリッジ平衡素子として働き、それらが関連する周波数範囲においてブリッジ回路の平衡を保つことができる限り、抵抗、又は受動電子部品の組み合わせとしても実装されてよい。
【0034】
コンパレータ72の両方の入力はキャパシタ68及び70を介してスイッチ64へ接続されているので、コンパレータの出力は、スイッチ64を介して出力される電圧信号のレベルが変化する場合に変化しない。
【0035】
活性化パルスがこの出力で起こる場合に、電圧パルスはキャパシタ70及び閉じられたスイッチ66を介してトランスデューサ22へ送られ、関連するノズル12は始動する。この時間中に、及び、活性化パルスが再び落とされているその後の時間インターバル中に、このトランスデューサ22からの検出信号は、検出回路58によって絶えず測定される。圧力変動が、トランスデューサ22に関連するダクト16内の液体内で起こる場合に、電圧がトランスデューサ22の電極24において引き起こされ、この電圧は、コンパレータ72の入力で不平衡を引き起こし、対応する検出信号はA/Dコンバータ76からプロセッサユニット40へ送られる。
【0036】
スイッチ60〜66は、プロセッサユニット40によって、又は制御回路32の内部コントローラによって制御されてよい。それにより、全ての噴射ユニット28のトランスデューサ22は、所定の時間パターンに従って順々に測定回路58へ接続され得、全ての噴射ユニットの働きは、高い時間分解能でモニタ可能である。
【0037】
本発明はこのようにして記載されてきたが、これは多くの点で変更可能であることは明らかである。そのような変更は、本発明の適用範囲からの逸脱とは見なされず、当業者に明らかである全てのそのような変更は、続く特許請求の範囲の適用範囲内に含まれるよう意図される。