(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示のいくつかの例示的な実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態における電子素子搭載用基板1は、
図1〜
図4に示された例のように、第1基板11と第2基板12とを含んでいる。電子装置は、電子素子等用基板1と、電子素子搭載用基板の搭載部11aに搭載された電子素子2と、電子素子搭載用基板1が搭載された配線基板とを含んでいる。電子装置は、例えば電子モジュールを構成するモジュール用基板上の接続パッドに接合材を用いて接続される。
【0009】
本実施形態における電子素子搭載用基板1は、第1主面を有し、第1主面に位置し、長手方向の一端部が第1主面の外縁部に位置した矩形状である電子素子2の搭載部11aを有する第1基板11と、第1主面と相対する第2主面に位置し、炭素材料からなり、第2主面と対向する第3主面および第3主面と相対する第4主面を有する第2基板12とを有しており、平面透視において、第3主面または第4主面は、搭載部11aの長手方向の熱伝導より搭載部の長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導が大きくなっている。
図1〜
図4において、電子素子2は仮想のxyz空間におけるxy平面に実装されている。
図1〜
図4において、上方向とは、仮想のz軸の正方向のことをいう。なお、以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際に電子素子搭載用基板1等が使用される際の上下を限定するものではない。
【0010】
金属層13は、
図1(a)に示す例において、ハッチングにて示している。
【0011】
第1基板11は、第1主面(
図1〜
図3では上面)および第2主面(
図1〜
図3では下面)を有している。第1基板11は、単層または複数の絶縁層からなり、平面視において、第1主面および第2主面のそれぞれに対して二組の対向する辺(4辺)を有した方形の板状の形状を有している。第1基板11は、長方形状の電子素子2を支持するための支持体として機能し、第1基板11の第1主面に位置した矩形状の搭載部11a上に電子素子2がAu−Sn等の接合部材3を介して接着され固定される。
【0012】
第1基板11は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス),窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体またはガラスセラミックス焼結体等のセラミックスを用いることができる。第1基板11は、例えば窒化アルミニウム質焼結体である場合であれば、窒化アルミニウム(AlN),酸化エルビニウム(Er
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)等の原料粉末に適当な有機バインダーおよび溶剤等を添加混合して泥漿物を作製する。この泥漿物を、従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法等を採用してシート状に成形することによってセラミックグリーンシートを作製する。必要に応じて、セラミックグリーンシートを複数枚積層し、高温(約1800℃)で焼成することによって、単層または複数の絶縁層からなる第1基板11が製作される。
【0013】
第2基板12は、第3主面(
図1〜
図3では上面)および第4主面(第1〜
図3では下面)を有している。第2基板12は、平面視において、第3主面および第4主面のそれぞれに対して二組の対向する辺(4辺)を有した方形の板状の形状を有している。
【0014】
第2基板12は、例えば、炭素材料からなり、六員環が共有結合でつながったグラフェンが積層した構造体として形成される。各面がファンデルワールス力で結合された材料である。
【0015】
第1基板11は、熱伝導率に優れた窒化アルミニウム質焼結体が好適に用いられる。第1基板11と第2基板12とは、第1基板11の第2主面と第2基板12の第3主面とが、例えば、TiCuAg合金等の活性ろう材からなる接合材により接着される。接合材は、第1基板11と第2基板12との間に、10μm程度の厚みに配置される。
【0016】
第1基板11および第2基板12は、平面視にて、それぞれ方形状をしている。方形状の第1基板11と方形状の第2基板12とを接着することにより、方形状の複合基板が形成される。なお、方形状とは、正方形状、長方形状等の四角形状である。
図1〜
図3に示す例において、第1基板11と第2基板12とは長方形状をしており、長方形状の複合基板が形成される。
【0017】
第1基板11の基板厚みT1は、例えば、50μm〜500μm程度であり、第2基板12の基板厚みT2は、例えば、100μm〜2000μm程度である。第1基板11と第2基板12とは、T2>T1であると、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0018】
第1基板11の熱伝導率κは、
図2に示す例のように、平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、第1基板11の厚み方向におけるZ方向も平面方向におけるX方向とY方向と同等である(κx≒κy≒κz)。例えば、第1基板11として、窒化アルミニウム質焼結体が用いられる場合、第1基板11は、100〜200W/m・K程度の熱伝導率κである基板が用いられる。
【0019】
第2基板12の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向とY方向とで大きさが異なっている。
図2に示す、第2基板12のそれぞれの方向における熱伝導率λx、λy、λzの関係は、「熱伝導率λx≒熱伝導率λz>>熱伝導率λy」である。第2基板12の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向と厚み方向におけるZ方向とが同等である。例えば、第2基板12の熱伝導率λxおよび熱伝導率λzは、1000W/m・K程度であり、第2基板12の熱伝導率λyは、4W/m・K程度である。
【0020】
金属層13は、第1基板11の第1主面に位置している。金属層13は、電子素子11の搭載部11a、あるいはボンディングワイヤ等の接続部材4の接続部として用いられ、電子素子2と配線基板の配線導体とを電気的に接続するためのものである。
【0021】
金属層13は、薄膜層およびめっき層とを含んでいる。薄膜層は、例えば、密着金属層とバリア層とを有している。薄膜層を構成する密着金属層は、第1基板11の第1主面に形成される。密着金属層は、例えば、窒化タンタルやニッケル−クロム、ニッケル−クロムーシリコン、タングステン−シリコン、モリブデン−シリコン、タングステン、モリブデン、チタン、クロム等から成り、蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の薄膜形成技術を採用することにより、第1基板11の第1主面に被着される。例えば真空蒸着法を用いて形成する場合には、第1基板11を真空蒸着装置の成膜室内に設置して、成膜室内の蒸着源に密着金属層と成る金属片を配置し、その後、成膜室内を真空状態(10
-2Pa以下の圧力)にするとともに、蒸着源に配置された金属片を加熱して蒸着させ、この蒸着した金属片の分子を第1基板11に被着させることにより、密着金属層と成る薄膜金属の層を形成する。そして、薄膜金属層が形成された第1基板11にフォトリソグラフィ法を用いてレジストパターンを形成した後、エッチングによって余分な薄膜金属層を除去することにより、密着金属層が形成される。密着金属層の上面にはバリア層が被着され、バリア層は密着金属層とめっき層と接合性、濡れ性が良く、密着金属層とめっき層とを強固に接合させるとともに密着金属層とめっき層との相互拡散を防止する作用をなす。バリア層は、例えば、ニッケルークロムや白金、パラジウム、ニッケル、コバルト等から成り、蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の薄膜形成技術により密着金属層の表面に被着される。
【0022】
密着金属層の厚さは0.01〜0.5μm程度が良い。0.01μm未満では、第1基板11上に密着金属層を強固に密着させることが困難となる傾向がある。0.5μmを超える場合は密着金属層の成膜時の内部応力によって密着金属層の剥離が生じ易くなる。また、バリア層の厚さは0.05〜1μm程度が良い。0.05μm未満では、ピンホール等の欠陥が発生してバリア層としての機能を果たしにくくなる傾向がある。1μmを超える場合は、成膜時の内部応力によりバリア層の剥離が生じ易くなる。
【0023】
めっき層は、電解めっき法または無電解めっき法によって、薄膜層の露出した表面に被着される。めっき層は、ニッケル,銅,金または銀等の耐食性や接続部材との接続性に優れる金属から成るものであり、例えば、厚さ0.5〜5μm程度のニッケルめっき層と0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次被着される。これによって、金属層13が腐食することを効果的に抑制できるとともに、金属層13と配線基板に形成された配線導体との接合を強固にできる。
【0024】
また、バリア層上に、銅(Cu)や金(Au)等の金属層を配置し、めっき層が良好に形成されるようにしても構わない。このような金属層は、薄膜層と同様な方法により形成される。
【0025】
なお、第1基板11の第1主面は、研磨加工等の表面加工により平坦化されてもよい。例えば、第1基板11の第1主面を平坦化した後、第1基板11と第2基板12とを接着しても良いし、第1基板11と第2基板12とを接着した後、第1基板11の第1主面を平坦化しても構わない。これにより、第1基板11の第1主面に金属層13を良好に形成することができ、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0026】
また、第1基板11の第2主面は、研磨加工等の表面加工により平坦化されてもよい。これにより、第1基板11の第2主面と第2基板12の第3主面とを良好に接着することができ、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができる。
【0027】
第1基板11の第1主面と第1基板11の第2主面とは、第1基板11と第2基板12とを接着する前に、予め研磨加工等の表面加工により平坦化されていてもよい。
【0028】
電子素子搭載用基板1の第1主面に位置した搭載部11a上に、長方形状の電子素子2を搭載し、この電子素子搭載用基板1を配線基板もしくは電子素子搭載用パッケージに搭載することによって電子装置を作製できる。電子素子搭載用基板1に搭載される電子素子2は、例えばLD(Laser Diode)等の発光素子やPD(Photo Diode)等の受光素子である。例えば、電子素子2は、Au−Sn等の接合材によって、一方の金属層13の搭載部11a上に固定された後、ボンディングワイヤ等の接続部材4を介して電子素子2の電極と他方の金属層13とが電気的に接続されることによって電子素子搭載用基板1に搭載される。電子素子2の電極と他方の金属層13とは、
図4に示す例では、複数の接続部材4により電気的に接続されている。電子素子搭載用基板1が搭載される配線基板もしくは電子素子搭載用パッケージは、例えば、第1基板11と同様に、セラミックス等の絶縁基体を用いることができ、表面に配線導体を有している。そして、電子素子搭載用基板1の金属層13と配線基板もしくは電子素子搭載用パッケージの配線導体とが電気的に接続される。
【0029】
本実施形態の電子装置によれば、上記構成の電子素子搭載用基板1と、電子素子搭載用基板1の搭載部11aに搭載された電子素子2と、電子素子搭載用基板1が搭載された配線基板または電子素子収納用パッケージとを有していることによって、長期信頼性に優れた電子装置とすることができる。
【0030】
本実施形態の電子装置が、配線導体とモジュール用基板の接続パッドに半田等の接合材6を介して接続されて、電子モジュールとなる。これにより、電子素子2とモジュール用基板の接続パッドとが電気的に接続される。
【0031】
本実施形態の電子モジュールによれば、上記構成の電子装置と、電子装置が接続されたモジュール用基板とを有することによって、長期信頼性に優れたものとすることができる。
【0032】
本実施形態の電子素子搭載用基板1によれば、第1主面を有し、第1主面に位置し、長手方向の一端部が第1主面の外縁部に位置した矩形状である電子素子2の搭載部を有する第1基板11と、第1主面と相対する第2主面に位置し、炭素材料からなり、第2主面と対向する第3主面および第3主面と相対する第4主面を有する第2基板12とを有しており、平面透視において、第3主面または第4主面は、搭載部の長手方向の熱伝導より搭載部の長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導が大きくなっていることにより、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、電子素子2の長手方向に対して異なる方向に放熱しやすくなり、電子素子2から発生する熱による電子素子2の膨張、特に電子素子2の長手方向への膨張を低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0033】
特に電子素子2としてLD等の光素子を搭載する場合には、光を精度よく放出することができる光学装置用の電子素子搭載用基板1とすることができる。
【0034】
特に電子素子2として高出力のLD等の光素子を搭載する場合には、光を精度よく放出することができる光学装置用の電子素子搭載用基板1とすることができる。
【0035】
また、電子素子搭載用基板1は、
図1〜
図4に示される例のように、長方形状の電子素子2に沿って、平面視にて、電子素子2の長手方向側が長くなるような長方形状であると、電子素子2の長手方向に対して垂直に交わる方向における電子素子搭載用基板1の幅が短くなり、電子素子2の長手方向に対して異なる方向に伝熱した熱が外部に良好に放熱されやすくすることができる。
【0036】
本実施形態における電子素子搭載用基板1は、薄型で高出力の電子装置において好適に使用することができ、電子素子搭載用基板1における信頼性を向上することができる。例えば、電子素子2として、LD等の光素子を搭載する場合、薄型で指向性にすぐれた光学装置用の電子素子搭載用基板1として好適に用いることができる。
【0037】
また、平面透視において、第2基板12は、一端部が位置した側に第1側面を有しており、第1側面は、第2基板12の厚み方向に垂直に交わる方向より第2基板12の厚み方向の熱伝導が大きいことにより、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第1側面により厚み方向における第4主面側に放熱しやすくなり、電子素子2から発生する熱による電子素子2の膨張、特に電子素子2の長手方向への膨張をより低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することでより良好に光を放出しやすくすることができる。
【0038】
また、第2基板12は第1側面と相対する第2側面を有しており、第2側面は、第2基板12の厚み方向に垂直に交わる方向より第2基板の厚み方向の熱伝導が大きいことにより、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第2側面により厚み方向における第4主面側に放熱しやすくなり、電子素子2から発生する熱による電子素子2の膨張、特に電子素子2の長手方向への膨張をより低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することでより良好に光を放出しやすくすることができる。更に、上述のように第1側面においても、第2基板12の厚み方向に垂直に交わる方向より第2基板12の厚み方向の熱伝導が大きいと、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第1側面および第2側面により厚み方向における第4主面側に効果的に放熱しやすくなり、電子素子2から発生する熱による電子素子2の膨張、特に電子素子2の長手方向への膨張を効果的に低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することでより良好に光を放出しやすくすることができる。
【0039】
第1の実施形態における電子素子搭載用基板1は、例えば、以下の製造方法により製作することができる。
【0040】
最初に、
図5(a)に示される例のように、第1基板11と第2基板12とを準備する。第1基板11の第2主面と第2基板12の第3主面とは、それぞれの平面度が10μm以下に形成されてもよい。次に、
図5(b)に示される例のように、第1基板11の第2主面と第2基板12の第3主面とをTiCuAg合金からなる活性ろう材等の接合材3により接合して複合基板を形成する。この際、接合材3の厚みは、10μm程度に設けられる。次に、第1基板11の第1主面に金属層13を形成する。この際、金属層13は、複合基板内に設けられた第2基板12のX方向(熱伝導率λx>>熱伝導率λy)と搭載部11aの長手方向とが垂直に交わるように配置して形成することによって、
図5(c)に示される例のように、電子素子搭載用基板1が形成される。
【0041】
なお、第1基板11の第1主面への金属層13となる薄膜層の形成、および薄膜層上へのめっき層の形成の際に、予め第2基板12の露出する表面に、樹脂、セラミックス、金属等からなる保護膜を設けておくと、電子素子搭載用基板1の製作時に炭素材料からなる第2基板12が剥き出しにならないため、薬品等による変質を低減することができる。
【0042】
本実施形態の電子素子搭載用基板1の熱伝導率は、例えば、レーザーフラッシュ法等の分析方法により測定することができる。また、第2基板12の熱伝導率を測定する場合には、第1基板11と第2基板12とを接合する接合材3を除去し、第2基板12に対して、レーザーフラッシュ法等の分析方法により測定することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による電子素子搭載用基板について、
図6〜
図9を参照しつつ説明する。
【0044】
第2の実施形態における電子装置において、上記した実施形態の電子装置と異なる点は、第2基板12の第3主面と第4主面とに第1基板11(111,112)がそれぞれ接合、すなわち、第2基板12が、2枚の第1基板11(111,112)の間に積層されている点である。また、第1基板112の第1主面(
図6〜
図9では、電子素子搭載用基板1の下面)には、接合層14が位置している。金属層13および接合層14は、
図6に示す例において、ハッチングにて示している。
【0045】
第2の実施形態における電子素子搭載用基板1によれば、上記した実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、電子素子2の長手方向の膨張方向に対して、異なる方向に放熱しやすくすることで、電子素子の長手方向への膨張を低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0046】
また、第2基板12が、2枚の第1基板11の間に積層されていることから、第1基板11と第2基板12との熱膨張の違いによる電子素子搭載用基板1の歪みが抑制され、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0047】
第2の実施形態の電子素子搭載用基板1において、第1基板111の第2主面と第2基板12の第3主面、および第1基板112の第2主面と第2基板12の第4主面とがTiCuAg合金からなる活性ろう材等の接合材3により接合されている。
【0048】
第2の実施形態の電子素子搭載用基板1においても、第1の実施形態と同様に、第1基板11(111,112)および第2基板12は、平面視にて、それぞれ方形状をしている。方形状の第1基板11と方形状の第2基板12とを接着することにより、方形状の複合基板が形成される。なお、方形状とは、正方形状、長方形状等の四角形状である。
図6〜
図9に示す例において、第1基板11(111,112)と第2基板12とは長方形状をしており、長方形状の複合基板が形成される。
【0049】
第1基板11(111,112)の基板厚みT1(T11、T12)は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば、50μm〜500μm程度であり、第2基板12の基板厚みT2は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば、100μm〜2000μm程度である。第1基板11(111,112)と第2基板12とは、T2>T1(T11)であると、第1基板111の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0050】
第1基板11(111,112)の熱伝導率κは、
図7に示す例のように、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、それぞれの基板での平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、第1基板11(111,112)の厚み方向におけるZ方向も平面方向におけるX方向とY方向と同等である(κx≒κy≒κz)。例えば、第1基板11(111,112)として、窒化アルミニウム質焼結体が用いられる場合、第1基板11(111,112)は、100〜200W/m・K程度の熱伝導率κである基板が用いられる。
【0051】
第2基板12の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向とY方向とで大きさが異なっている。
図7に示す、第2基板12のそれぞれの方向における熱伝導率λx、λy、λzの関係は、「熱伝導率λx≒熱伝導率λz>>熱伝導率λy」である。第2基板12の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向と厚み方向におけるZ方向とが同等であり、平面方向におけるY方向が異なっている。例えば、第2基板12の熱伝導率λxおよび熱伝導率λzは、1000W/m・K程度であり、第2基板12の熱伝導率λyは、4W/m・K程度である。
【0052】
なお、第2基板12の第3主面と第4主面とに接合される2枚の第1基板11(111,112)は、それぞれ同一材料の基板が用いられてもよい。例えば、第1基板111が、熱伝導率が150W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体の場合、第1基板112は、熱伝導率が150W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体であってもよい。第2基板12の第3主面と第4主面とに接合される第1基板111の材料と第1基板112との材料が同一としておくことにより、電子素子搭載用基板1の歪みを良好に低減することができる。
【0053】
また、第2基板12の第3主面と第4主面とに接合される2枚の第1基板11(111,112)は、それぞれの厚みの差が10%以内(0.9T12≦T11≦1.1T12)であってもよく、同一の厚みの基板(T11=T12)であってもよい。例えば、第1基板111の厚みが、100μmである場合、第1基板112の厚みは、100μmでもよく、90μm〜110μmであってもよい。第2基板12の第3主面と第4主面とに接合される第1基板111の厚みと第1基板112の厚みとを同等にしておくことにより、電子素子搭載用基板1の歪みを良好に低減することができる。
【0054】
また、
図6〜
図9に示す例のように、第4主面側に接合された第1基板112において、下面側に接合層が位置しても構わない。第1基板112の接合層は、例えば、電子素子搭載用基板1と配線基板または電子素子搭載用パッケージに位置した導体層との接合等に用いることができる。接合層は、上述の金属層13と同様な方法により製作することができる。また、第1基板112の金属層13は、第1基板112の下面の略全面に位置しておくことで、電子素子搭載用基板1から配線基板または電子素子搭載用パッケージへの放熱性を良好なものとすることができる。
【0055】
第2の実施形態における電子素子搭載用基板1は、例えば、以下の製造方法により製作することができる。
【0056】
最初に、
図9(a)に示される例のように、第1基板11(111,112)と第2基板12とを準備する。次に、
図9(b)に示される例のように、第1基板111と第2基板12および第1基板112と基板12とをそれぞれTiCuAg合金からなる活性ろう材等の接合材3により接合して複合基板を形成する。第1基板111と第2基板12および第1基板112と基板12とは同時に接合してもよい。この際、接合材3の厚みは、それぞれ10μm程度に設けられる。次に、第1基板11の第1主面に金属層13を形成する。この際、金属層13は、複合基板内に設けられた第2基板12のX方向(熱伝導率λx>>熱伝導率λy)と搭載部11aの長手方向とが垂直に交わるように配置して形成することによって、
図9(c)に示される例のように、電子素子搭載用基板1が形成される。
【0057】
なお、第1基板11の第1主面への金属層13となる薄膜層の形成、および薄膜層上へのめっき層の形成の際に、予め第2基板12の露出する側面に、樹脂、セラミックス、金属等の保護膜を設けておくと、電子素子搭載用基板1の製作時に炭素材料からなる第2基板12が剥き出しにならないため、薬品等による変質を低減することができる。
【0058】
第2の実施形態の電子素子搭載用基板1は、上述の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様の製造方法を用いて製作することができる。
【0059】
また、第2の実施形態の電子素子搭載用基板1は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、長方形状の電子素子2に沿って、平面視にて、電子素子2の長手方向側が長くなるような長方形状であると、電子素子2の長手方向に対して垂直に交わる方向における電子素子搭載用基板1の幅が短くなり、電子素子2の長手方向に対して異なる方向に放熱した熱が外部に良好に放熱されやすくすることができる。
【0060】
また、第2の実施形態の電子素子搭載用基板1は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、第1基板11(111)の第1主面および第2主面を研磨加工等の表面加工により平坦化されてもよい。第1基板11(111)と第2基板12との接着を良好にすることができるとともに、第1基板11(111)の第1主面への金属層を良好に形成することができ、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0061】
また、第1基板11(112)の第1主面および第2主面を研磨加工等の表面加工により平坦化されてもよい。これにより、第1基板11(112)と第2基板12との接着を良好にすることができるとともに、第1基板11(112)と配線基板または電子素子収納用パッケージとの接着を良好なものとすることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態による電子装置について、
図10〜
図13を参照しつつ説明する。
【0063】
第3の実施形態における電子素子搭載用基板1において、上記した実施形態の電子素子搭載用基板1と異なる点は、2枚の第1基板11の間に、複数の第2基板12(121,122,123)が積層されている点である。複数の第2基板12(121,122,123)は、隣接する第2基板12同士(121と122、122と123)が、それぞれの平面方向における熱伝導率λが異なって配置している。金属層13および接合層14は、
図10に示す例において、ハッチングにて示している。
【0064】
第3の実施形態における電子素子搭載用基板1によれば、上記した実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、電子素子2の長手方向の膨張方向に対して、異なる方向に放熱しやすくすることで、電子素子2の長手方向への膨張を低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0065】
また、2枚の第1基板11の間に、平面方向における熱伝導率λが異なる複数の第2基板12が積層されていることから、電子素子搭載用基板1の歪みが抑制され、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0066】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1において、第1基板111の第2主面と第2基板121の第3主面、および第1基板112の第2主面と第2基板123の第4主面とがTiCuAg合金からなる活性ろう材等の接合材3により接合されている。
【0067】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1においても、第1の実施形態と同様に、第1基板11および第2基板12は、平面視にて、それぞれ方形状をしている。方形状の第1基板11と方形状の第2基板12とを接着することにより、方形状の複合基板が形成される。なお、方形状とは、正方形状、長方形状等の四角形状である。
図10〜
図13に示す例において、第1基板11と第2基板12とは長方形状をしており、長方形状の複合基板が形成される。
【0068】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1においても、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、第1基板11(111,112)および第2基板12(121,122,123)は、平面視にて、それぞれ方形状をしている。方形状の第1基板11と方形状の第2基板12とを接着することにより、方形状の複合基板が形成される。なお、方形状とは、正方形状、長方形状等の四角形状である。
図10〜
図13に示す例において、第1基板11(111,112)と第2基板12(121,122,123)とは長方形状をしており、長方形状の複合基板が形成される。
【0069】
第1基板11(111,112)の基板厚みT1は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば、50μm〜500μm程度であり、第2基板12(121,122,123)の基板厚みT2は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば、100μm〜2000μm程度である。第1基板11(111,112)と第2基板12(121,122,123)とは、T2>T1であると、第1基板111の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0070】
第1基板11(111,112)の熱伝導率κは、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、それぞれの基板での平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、第1基板11(111,112)の厚み方向におけるZ方向も平面方向におけるX方向とY方向と同等である(κx≒κy≒κz)。例えば、第1基板11(111,112)として、窒化アルミニウム質焼結体が用いられる場合、第1基板11(111,112)は、100〜200W/m・K程度の熱伝導率κである基板が用いられる。
【0071】
第2基板12(211,212,213)の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向とY方向とで大きさが異なっている。複数の第2基板12(211,212,213)のそれぞれの熱伝導率λは、例えば、
図11に示す例のように、以下のようになっている。
【0072】
第2基板121(上面側) :熱伝導率λx1≒熱伝導率λz1>>熱伝導率λy1
第2基板122(中間) :熱伝導率λy2≒熱伝導率λz2>>熱伝導率λx2
第2基板123(下面側) :熱伝導率λx3≒熱伝導率λz3>>熱伝導率λy3
第2基板121と第2基板123の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向と厚み方向におけるZ方向とで同等であり、平面方向におけるY方向が異なっている。第2基板122の熱伝導率λは、平面方向におけるY方向と厚み方向におけるZ方向とで同等であり、平面方向におけるX方向が異なっている。例えば、第2基板121の熱伝導率λx1および熱伝導率λz1は、1000W/m・K程度であり、第2基板12の熱伝導率λy1は、4W/m・K程度である。第2基板122の熱伝導率λy2および熱伝導率λz2は、1000W/m・K程度であり、第2基板12の熱伝導率λx2は、4W/m・K程度である。第2基板123の熱伝導率λx3および熱伝導率λz3は、1000W/m・K程度であり、第2基板123の熱伝導率λy3は、4W/m・K程度である。
【0073】
第2基板121の第3主面は、第1基板111の第1主面に配置される搭載部11aの長手方向の熱伝導より搭載部11aの長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導が大きくなるように、第1基板111の第2主面に接着されている。
【0074】
隣接する第2基板12同士(第2基板121と第2基板122、または第2基板122と第2基板123)の熱伝導率λは、
図11に示される例のように、少なくとも平面透視にて90度回転しており、隣接する第2基板12同士(第2基板121と第2基板122、または第2基板122と第2
基板123)の熱伝導率が大きくなる方向同士が垂直に交わ
っている。これにより、第2基
板123より第1基板122への伝熱が面全体として放熱できるので、電子素子2の長手方向への膨張を低減し、電子素子2の位置ずれ、または電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで良好に光を放出しやすくすることができる。
【0075】
なお、第2基板121の第3主面と第2基板123の第4主面とに接合される2枚の第1基板11(111,112)は、第2の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、それぞれ同一材料の基板が用いられてもよい。例えば、第1基板111が、熱伝導率が150W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体の場合、第1基板112は、熱伝導率が150W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体であってもよい。第2基板121の第3主面と第2基板123の第4主面とに接合される第1基板111の材料と第1基板112との材料が同一としておくことにより、電子素子搭載用基板1の歪みを良好に低減することができる。
【0076】
また、第2基板12の第3主面と第2基板123の第4主面とに接合される2枚の第1基板11(111,112)は、第2の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、それぞれの厚みの差が10%以内であってもよく、同一の厚みの基板であってもよい。例えば、第1基板111の厚みが、100μmである場合、第1基板112の厚みは、100μmでもよく、90μm〜110μmであってもよい。第2基板121の第3主面と第2基板123の第4主面とに接合される第1基板111の厚みと第1基板112の厚みとを同等にしておくことにより、電子素子搭載用基板1の歪みを良好に低減することができる。
【0077】
また、2枚の第1基板11(111,112)の間に配置される複数の第2基板12(121,122,123)は、それぞれの厚みの差が10%以内(0.9T22≦T21≦1.1T22、0.9T23≦T21≦1.1T23)であってもよく、同一の厚みの基板(T21=T22=T23)であってもよい。例えば、第2基板121の厚みが、1000μmである場合、第2基板122の厚みは、1000μmでもよく、900μm〜1100μmであってもよい。また、第2基板123の厚みは、1000μmでもよく、900μm〜1100μmであってもよい。複数の第2基板12(121,122,123)のそれぞれの厚みを同等にしておくことにより、電子素子搭載用基板1の歪みを良好に低減することができる。
【0078】
また、
図10〜
図13に示す例のように、第4主面側に接合された第1基板112において、下面側に接合層が位置しても構わない。第1基板112の接合層は、例えば、電子素子搭載用基板1と配線基板または電子素子搭載用パッケージに位置した導体層との接合等に用いることができる。接合層は、上述の金属層13と同様な方法により製作することができる。また、第1基板112の金属層13は、第1基板112の下面の略全面に位置しておくことで、電子素子搭載用基板1から配線基板または電子素子搭載用パッケージへの放熱性を良好なものとすることができる。
【0079】
第3の実施形態における電子素子搭載用基板1は、例えば、以下の製造方法により製作することができる。
【0080】
最初に、
図13(a)に示される例のように、第1基板11(111,112)と複数枚からなる第2基板12(121,122,123)とを準備する。なお、複数枚からなる第2基板12は、隣接する第2基板12同士が、それぞれの平面方向における熱伝導率λが異なって配置している。次に、
図13(b)に示される例のように、第1基板111と第2基板12(121,122,123)および第1基板112と基板12(121,122,123)とをそれぞれTiCuAg合金からなる活性ろう材等の接合材3により接合する。第1基板111と第2基板12(121,122,123)および第1基板112と基板12(121,122,123)とは同時に接合してもよい。この際、接合材3の厚みは、それぞれ10μm程度に設けられる。次に、第1基板11の第1主面に金属層13を形成する。この際、金属層13は、複合基板内に設けられた第2基板121のX方向(熱伝導率λx>>熱伝導率λy)と搭載部11aの長手方向とが垂直に交わるように配置して形成することによって、
図13(c)に示される例のように、電子素子搭載用基板1が形成される。
【0081】
例えば、第1基板11(111,112)として、厚みが0.15mmであり、熱伝導率が170W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体を用い、第2基板12(121,122,123)として、厚みがそれぞれの厚みが1mmであるグラフェンが積層した構造体を用いて、総厚みが3.3mmであり、平面視で方形状であり縦および横の大きさが10mmの電子素子搭載用基板1を作製した。この電子素子搭載用基板1に対して、上述のレーザーフラッシュ法により、熱伝導率を測定したところ、第3の実施形態における電子素子搭載用基板1の熱伝導率は、650W/m・Kであった。
【0082】
なお、第1基板11の第1主面への金属層13となる薄膜層の形成、および薄膜層上へのめっき層の形成の際に、予め第2基板12の露出する側面に、樹脂、セラミックス、金属等からなる保護膜を設けておくと、電子素子搭載用基板1の製作時に炭素材料からなる第2基板12が剥き出しにならないため、薬品等による変質を低減することができる。
【0083】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1は、上述の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様の製造方法を用いて製作することができる。
【0084】
また、第3の実施形態の電子素子搭載用基板1は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、長方形状の電子素子2に沿って、平面視にて、電子素子2の長手方向側に長くなるような長方形状であると、電子素子2の長手方向に対して垂直に交わる方向における電子素子搭載用基板1の幅が短くなり、電子素子2の長手方向に対して異なる方向に放熱した熱が外部に良好に放熱されやすくすることができる。
【0085】
また、第3の実施形態の電子素子搭載用基板1は、第1の実施形態の電子素子搭載用基板1および第2の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、第1基板11(111,112)の第1主面および第2主面を研磨加工等の表面加工により平坦化されてもよい。
【0086】
本開示は、上述の実施形態の例に限定されるものではなく、種々の変更は可能である。例えば、第1基板11と第2基板12とを接着させた複合基板の角部に切欠き部または面取り部を有している方形状であっても構わない。
【0087】
第1基板11の第1主面に位置した金属層13は、上述の例では、薄膜法により形成しているが、従来周知のコファイア法またはポストファイア法等を用いた金属層であっても構わない。このような金属層13を用いる場合は、金属層13は、第1基板11と第2基板12との接合前にあらかじめ第1基板11の第1主面に設けられる。なお、第1基板11の平面度を良好なものとするために、上述の第1の実施形態に示されたように、第1基板11の第1主面に位置した金属層13は、薄膜法により形成してもよい。