(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロペラ対向部において前記プロペラ部の径方向外端部と対向する部位は、前記先端対向部よりも、前記ロッドの軸方向において前記ロッドから離間する方向に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用ロック構造。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、本発明の車両用ロック構造を、フューエルタンクに燃料を供給するための開口部を開閉するフューエルリッドに適用した場合を例にとり、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、前後、上下、左右といった方向を表す表現は、車両の乗員を基準とする。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用ロック構造1は、車体2の車幅方向外表面を構成するアウタパネル3周りに設けられている。車両用ロック構造1は、ロック部4と、リッド5と、クリップ6と、を備える。
【0011】
<ロック部>
ロック部4は、アウタパネル3の車幅方向内方において、開口部3aに臨む位置に設けられており、クリップ6と係合することによって、リッド5をロックするためのものである。なお、開口部3aに臨む位置には、燃料が貯蔵されるフューエルタンクと接続されたフューエルパイプの端部が設けられている。フューエルパイプの端部は、通常時にはキャップ7によって塞がれている。
図2に示すように、ロック部4は、樹脂製部材(塑性部材。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製)であるロッド10及びプロペラ部20と、回転装置30と、を備える。また、ロック部4は、ロッド10を車幅方向外方に付勢する付勢部(図示せず。例えば、圧縮コイルスプリング等)を備える。
【0012】
≪ロッド≫
ロッド10は、車幅方向に延びる円柱形状を呈する軸部である。ロッド10の先端部は、プロペラ部20から車幅方向外方に突出する凸部11を構成する。凸部11の頂面は、球冠形状に形成されていてもよい。
【0013】
≪プロペラ部≫
プロペラ部20は、ロッド10と一体に形成されているとともに、ロッド10の先端部からロッド10の径方向に延設されている。プロペラ部20は、2枚の羽部21,21を備える。羽部21,21は、180°間隔に設けられており、ロッド10の軸線視で、全体として径方向に長い矩形状を呈する。
【0014】
プロペラ部20の幅方向寸法は、ロッド10におけるプロペラ20の設定部位の直径に略等しい。凸部11の直径は、プロペラ部20の幅方向寸法よりも小さい。
【0015】
≪回転装置≫
回転装置30は、図示しない制御部から入力信号等によって、ロッド10及びプロペラ部20を90°正逆回転させるモータである。
【0016】
<リッド>
図1に示すように、リッド5は、アウタパネル3に形成された開口部3aを開閉可能な蓋部材である。リッド5は、開口部3aの前側周縁部に対して揺動可能に軸支されている。リッド5の閉状態における車幅方向内側面には、金属製又は樹脂製の補強部材5aが設けられている。
【0017】
<クリップ>
クリップ6は、リッド5に車幅方向内側面に設けられており、プロペラ部20と係合可能な係合部である。
図3A及び
図3Bに示すように、クリップ6は、主部材40と、副部材50と、を備える。
【0018】
≪主部材≫
主部材40は、クリップ6の主部を構成する樹脂製部材(塑性部材。例えば、PBT樹脂製)である。主部材40は、車幅方向に薄く、下端部が開放された筐体形状を呈する。主部材40は、リッド5の閉状態において車幅方向外側に位置する外壁部41と、外壁部41と対向し、リッド5の閉状態において車幅方向内側に位置する内壁部42と、を備える。また、主部材40は、外壁部41及び内壁部42の上端部同士を繋ぐ上壁部43と、外壁部41及び内壁部42の前端部同士を繋ぐ前壁部44と、外壁部41及び内壁部42の後端部同士を繋ぐ後壁部45と、を一体に備える。また、主部材40は、外壁部41から車幅方向外方に延設されており、リッド5の補強部材5aに取り付けられるリッド取付部46(
図4A参照)を一体に備える。
【0019】
外壁部41及び内壁部42は、リッド5の閉状態において前後方向及び上下方向に沿うように延在している。外壁部41の前後方向中間部には、後記する副部材50が設けられる副部材設置部41aが形成されている。内壁部42の前後方向中間部には、下端部が開放された開口部42aが形成されている。
【0020】
クリップ6の内部空間の前後方向寸法(前壁部44と後壁部45との間隔)は、プロペラ部20の径方向寸法よりも大きい。クリップ6の上下方向寸法は、プロペラ部20の径方向寸法よりも大きい。クリップ6の内部空間の車幅方向寸法(外壁部41と内壁部42との間隔)は、プロペラ部20の厚みよりも大きい。開口部42aの上下方向寸法は、プロペラ部20の径方向寸法よりも大きい。開口部42aの前後方向寸法は、プロペラ部20の軸線視における幅方向寸法よりも大きく、プロペラ部20の径方向寸法よりも小さい。
【0021】
≪副部材≫
副部材50は、クリップ6のうち、ロッド10の先端部(凸部11)と当接する部位を構成する弾性変形可能な樹脂製部材(弾性部材。例えば、熱可塑性エラストマー製)である。副部材50は、主部材40よりも軟らかく、広い弾性変形域を有する。また、副部材50は、ロッド10及びプロペラ部20よりも軟らかく、広い弾性変形域を有する。副部材50は、副部材設置部41aの車幅方向内側面に沿うように設けられる主壁部51と、主壁部51の上端部、前端部及び後端部並びに車幅方向外面から車幅方向外方に延設される突起部52と、を一体に備える。
【0022】
クリップ6は、予め成形された副部材50を、主部材40用の金型に収容した状態で当該主部材40を成形することによって、副部材50及び主部材40を一体化して形成される(二色成形又はインサート成形)。ここで、副部材50の突起部52は、副部材設置部41a周縁等の孔部に入り込んで外壁部41と一体化される。
【0023】
≪先端対向部≫
クリップ6は、当該クリップ6にプロペラ部20が収容された状態(
図4A〜
図4C参照)で、ロッド10の先端部(凸部11)と対向して当接する先端対向部6aを備える。先端対向部6aは、副部材50における主壁部51の車幅方向内側面に構成されている。
【0024】
先端対向部6aの径方向(ロッド10の径方向)外端部は、後記するプロペラ対向部6bに向かうにつれてロッド10から離間する方向に傾斜する傾斜面6a1となっている。すなわち、先端対向部6aの前端部は、前方に向かうにつれて車幅方向外方にいくように傾斜する。また、先端対向部6aの後端部は、後方に向かうにつれて車幅方向外方にいくように傾斜する。また、先端対向部6aの下端部は、下方に向かうにつれて車幅方向外方にいくように傾斜する。なお、先端対向部6aの下端部は、下に凸となる円弧形状(半円形状)を呈する。本実施形態において、副部材50における先端対向部6aの上側は、ロッド10の軸方向において先端対向部6aと同じ位置(面一)に設定されており、当該部位には、後記するプロペラ対向部6bは形成されていない。かかる構成によると、副部材50及び主部材40を成形(二色成形又はインサート成形)する際において、特に主部材40を成形する際の金型の複雑化を防止することができる。また、かかる構成によると、成形品(副部材50及び主部材40の一体品)の型抜きの容易化を実現することができる。
【0025】
また、先端対向部6aの厚み(ロッド10の軸方向における寸法)は、ロッド10の凸部11の軸方向寸法(プロペラ部20からの突出長さ)よりも大きいことが望ましい。かかる構成によると、凸部11が摩耗せずに先端対向部6aが摩耗した状態においても、リッド5の閉状態における凸部11及び先端対向部6aの当接が確保される。
【0026】
≪プロペラ対向部≫
クリップ6は、先端対向部6aの側方、本実施形態では、閉状態でプロペラ20と対向する前側及び後側、並びに、下側に連続するように設けられており、当該クリップ6にプロペラ部20が収容されたロック状態(
図4(b)(c)参照)で、プロペラ部20と対向するプロペラ対向部6bを備える。プロペラ対向部6bは、主に主部材40における外壁部41の車幅方向内側面に構成されている。前後2つのプロペラ対向部6bは、先端対向部6aの下側において繋がっている。この連結部位は、副部材50によって構成されている。かかる構成によると、クリップ6内に進入した水が、前後のプロペラ対向部6bを伝い、先端対向部6aの下側で合流してクリップ6外へ滴下するので、水の排出を促し、クリップ6の劣化を抑制することができる。
【0027】
プロペラ対向部6bの径方向外端部は、径方向内側に向かうにつれてロッド10から離間する方向に傾斜する傾斜面6b1となっている。すなわち、前側のプロペラ対向部6bの前端部は、前方に向かうにつれてロッド10に近づく方向に傾斜する。また、後側のプロペラ対向部6bの後端部は、後方に向かうにつれてロッド10に近づく方向に傾斜する。かかる構成によると、当該傾斜面6b1によって斜め方向にクリップ6の厚み(
図4Aの両矢印X参照)を確保してクリップ6の強度を向上するとともに、クリップ6の周囲におけるデッドスペース発生を低減することができる。
【0028】
プロペラ対向部6b(先端対向部6aよりもロッド10の軸方向に窪む部位)の径方向外端部は、閉状態におけるプロペラ部20の径方向外端部よりも径方向外方に位置する。また、先端対向部6aの下側におけるプロペラ対向部6b(先端対向部6aよりもロッド10の軸方向に窪む部位)の径方向外端部は、開状態において下側に位置する羽部21の径方向外端部よりも径方向外方に位置しており、半円形状を呈する。なお、プロペラ対向部6bの径方向内端部は、凸部11の径方向外端部よりも径方向外方に位置する。また、プロペラ対向部6bの径方向内端部は、羽部21の基端部(ロッド10におけるプロペラ部20の設定部位の外周部)と径方向において同じ位置に設けられてもよく、羽部21の基端部よりも径方向内方に設けられてもよい。
【0029】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る車両用ロック構造1の動作例について、主に
図4A〜
図4Cを参照して説明する。
【0030】
図4Aに示すように、給油作業の終了後等に、作業者は、リッド5を閉じることによって、開口部42aを介してプロペラ部20をクリップ6内に収容させる。ここで、プロペラ部20の羽部21,21は、上下に延びる姿勢をとっており、クリップ6は、開口部42aを介してプロペラ部20を包み込む。また、先端対向部6aは、ロッド10の先端部である凸部11に当接する。ロッド10及びプロペラ部20は、クリップ6によって、付勢部の付勢力に抗して車幅方向内方へ押し込まれる。これにより、ロッド10の凸部11及び/又はクリップ6の先端対向部6aが摩耗した状態においても、リッド5の閉状態における凸部11及び先端対向部6aの当接が確保される。ここで、先端対向部6aは弾性部である副部材50によって構成されているため、車両用ロック構造1は、ロッド10が当接した際に異音の発生を抑制することができる。
【0031】
続いて、
図4Bに示すように、制御部は、図示しないセンサの検出結果等に基づいて、回転装置30を制御し、ロッド10及びプロペラ部20を回転させる。プロペラ部20の羽部21,21は、前後方向に延びる姿勢をとり、プロペラ対向部6bと対向する。かかるプロペラ部20の径方向先端部は、クリップ6の外壁部41及び内壁部42によって挟み込まれて係合し、ロック部4及びクリップ6は、リッド5をロックするロック状態となる。すなわち、リッド5が開こうとすると、ロック部4のプロペラ部20がクリップ6の内壁部42に当接することによって、リッド5の揺動が規制される。ここで、先端対向部6aは弾性部である副部材50によって構成されているため、車両用ロック構造1は、ロッド10の先端部がクリップ6に当接したまま回転する際に異音の発生を抑制することができる。
【0032】
また、先端対向部6aの径方向外端部は、プロペラ対向部6bに向かうにつれてロッド10から離間する方向に傾斜する傾斜面6a1となっている。かかる構成によると、先端対向部6aの径方向外端部が傾斜面6a1ではなく垂直に切り立っている場合と比較して、ロッド10の回転時における当該ロッド10の先端部と当接した先端対向部6aの捻じれ変形を抑制することができる。
【0033】
かかる状態において、プロペラ対向部6bの少なくとも一部は、先端対向部6aよりも、ロッド10の軸方向においてロッド10及びプロペラ20から離間する方向に設けられている。かかる構造によると、クリップ6内に異物(ゴミ、水等)が進入した場合でも、当該異物がプロペラ20とプロペラ対向部6bとの間に挟まってプロペラ20の回転を阻害することを防止し、回転時の負荷を抑制することができる。また、
図4Cに示すように、ロッド10の先端部である凸部11及び/又は当該凸部11と当接するクリップ6の先端対向部6aが摩耗した場合でも、プロペラ20とプロペラ対向部6bとが干渉する面積を低減し、回転時の負荷を抑制することができる。なお、
図4Cには、凸部11及び先端対向部6aのうち、凸部11のみが摩耗した状態が図示されているが、先端対向部6aが弾性部であって凸部11よりも軟らかい場合には、先端対向部6aの摩耗量が凸部11の摩耗量よりも大きくなる。
【0034】
また、
図4B及び
図4Cに示すように、プロペラ対向部6bにおいてプロペラ部20の径方向外端部と対向する部位、すなわち、プロペラ対向部6bの径方向外端部は、先端対向部6aよりも、ロッド10の軸方向においてロッド10及びプロペラ20から離間する方向に設けられている。かかる構造によると、回転時の負荷が最も大きいプロペラ20の径方向外端部とプロペラ対向部6bとの干渉を防止し、回転時の負荷を好適に抑制することができる。
【0035】
本発明の実施形態に係る車両用ロック構造1は、車体側に設けられた開口部3aを覆うリッド5と、前記リッド5に設けられたクリップ6と、前記クリップ6と係合することによって前記リッド5をロックするロック部4と、を備える車両用ロック構造1であって、前記ロック部4は、ロッド10と、前記ロッド10の先端側に設けられるプロペラ部20と、前記ロッド10及び前記プロペラ部20を、前記ロッド10を回転軸として回転させる回転装置30と、を備え、前記クリップ6は、前記プロペラ部20が収容されることによって当該プロペラ部20と係合可能に構成されており、前記プロペラ部20が収容された状態において前記ロッド10の先端部と対向して当接する先端対向部6aと、前記プロペラ部20が収容されたロック状態において前記プロペラ部20と対向するプロペラ対向部6bと、を備え、前記プロペラ対向部6bの少なくとも一部は、前記先端対向部6aよりも、前記ロッド10の軸方向において前記ロッド10から離間する方向に設けられていることを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、クリップ6内に異物(ゴミ、水等)が進入した場合でも、当該異物がプロペラ20とプロペラ対向部6bとの間に挟まってプロペラ20の回転を阻害することを防止し、回転時の負荷を抑制することができる。また、車両用ロック構造1は、ロッド10の先端部である凸部11及び/又は先端対向部6aが摩耗した場合でも、プロペラ20とプロペラ対向部6bとが干渉する面積を低減し、回転時の負荷を抑制することができる。
【0036】
また、車両用ロック構造1は、前記プロペラ対向部6bにおいて前記プロペラ部20の径方向外端部と対向する部位が、前記先端対向部6aよりも、前記ロッド10の軸方向において前記ロッド10から離間する方向に設けられていることを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、回転時の負荷が最も大きいプロペラ20の径方向外端部とプロペラ対向部6bとの干渉を防止し、回転時の負荷を好適に抑制することができる。
【0037】
また、車両用ロック構造1は、前記クリップ6の前記先端対向部6aが、弾性変形可能な弾性部であることを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、ロッド10が当接した際に異音の発生を抑制することができる。また、車両用ロック構造1は、ロッド10の先端部がクリップ6に当接したまま回転する際に異音の発生を抑制することができる。
【0038】
また、車両用ロック構造1は、前記先端対向部6aの径方向外端部が、前記プロペラ対向部6bに向かうにつれて前記ロッド10から離間する方向に傾斜することを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、ロッド10の回転時における当該ロッド10の先端部と当接した先端対向部6aの捻じれ変形を抑制することができる。
【0039】
また、車両用ロック構造1は、前記プロペラ対向部6bの径方向外端部が、径方向内方に向かうにつれて前記ロッド10から離間する方向に傾斜することを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、当該傾斜面6b1によって斜め方向にクリップ6の厚みを確保してクリップ6の強度を向上するとともに、クリップ6の周囲におけるデッドスペース発生を低減することができる。
【0040】
また、車両用ロック構造1は、前記クリップ6の下端部が開放されており、前記クリップ6は、前記先端対向部6a及び前記プロペラ対向部6bが上下方向に延在するように設けられており、前記プロペラ部20は、2枚の羽部21,21によって構成されており、2枚の前記羽部21,21に対応する2つの前記プロペラ対向部6bは、前記先端対向部6aの下側で繋がっていることを特徴とする。
したがって、車両用ロック構造1は、クリップ6内に進入した水が、前後のプロペラ対向部6bを伝い、先端対向部6aの下側で合流してクリップ6外へ滴下するので、水の排出を促し、クリップ6の劣化を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明の車両用ロック構造1は、フューエルリッド以外のリッド5に対しても適用可能である。また、クリップ6の下端部の開放形状は、クリップ6内に進入した水が滴下して外部に排出可能な形状であればよい。また、先端対向部6aの上側にもプロペラ対向部6bが形成されており、プロペラ対向部6bが先端対向部6aを取り囲む構成であってもよい。また、クリップ6の先端対向部6aではなく、ロッド10の先端部である凸部11が弾性部である構成であってもよい。