特許第6983214号(P6983214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電線ケーブルシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6983214-光ケーブル 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983214
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】光ケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   G02B6/44 346
   G02B6/44 336
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-238232(P2019-238232)
(22)【出願日】2019年12月27日
(65)【公開番号】特開2021-105700(P2021-105700A)
(43)【公開日】2021年7月26日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 純哉
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−174286(JP,A)
【文献】 特開平09−120023(JP,A)
【文献】 特開平10−010380(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/107004(WO,A1)
【文献】 特開2010−139631(JP,A)
【文献】 特開昭61−153610(JP,A)
【文献】 特開2004−117675(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0293228(US,A1)
【文献】 米国特許第08705921(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コードおよびシースがこの順に設置された光ケーブルであって、
前記光コードと前記シースとの間には抗張力繊維が充填され、
前記抗張力繊維の密度が17,182〜24,992dtex/mmであり、
前記光コードの長さ2mにおける引き抜き力が10〜20Nであることを特徴とする光
ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信サービスの開始に伴って、携帯電話の無線基地局として、マクロセルよりも通信エリアが狭い「スモールセル」が設置されている。
スモールセルは、利用者が多い場所(駅や商業施設などの繁華街)や電波が届きにくい場所(地下街など)において、通信品質の劣化を抑制するために設置されている。スモールセルは、ビル街、地下街、ビル内部などの場所に設置されるナノセルおよびピコセルを含むと共に、店舗、事務所、一般家庭などの場所に設置されるフェムトセルを含む。
【0003】
スモールセルの配線作業においては配線スペースに一定の制限があるためフレキシブル性が要求され、ディストリビューション型の光ケーブルが使用される。
たとえば特許文献1の光ケーブルでは、シースの収縮と抗張力繊維の収縮(抗張力繊維の引張伸び特性)とのバランスを考慮し、フレキシブル性を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−015414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の光ケーブルでは上記のとおり、シースの収縮と抗張力繊維の引張伸び特性との2つの要素に基づきフレキシブル性だけに着目しており、フレキシブル性以外の特性、たとえばケーブル端末ではシースを引き裂き光ファイバ心線を口出しする必要がありその特性(口出し性)などは検討されていない。
したがって本発明の主な目的は、フレキシブル性と口出し性との両特性を有する光ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によれば、
光コードおよびシースがこの順に設置された光ケーブルであって、
前記光コードと前記シースとの間には抗張力繊維が充填され、
前記抗張力繊維の密度が17,182〜24,992dtex/mmであり、
前記光コードの長さ2mにおける引き抜き力が10〜20Nであることを特徴とする光
ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抗張力繊維の密度と光コードの引き抜き力とが考慮されており、フレキシブル性と口出し性との両特性を有する光ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光ケーブルの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる光ケーブルについて説明する。なお、本明細書では、数値範囲を示す「〜」の記載に関し下限値および上限値はその数値範囲に含まれる。
【0010】
[光ケーブル]
図1は光ケーブル1の概略構成を示す断面図である。
図1に示すとおり、光ケーブル1は光ファイバ心線2、抗張力繊維3、光コード外被4(これら部材で光コード5が構成される。)およびシース6を有しており、光コード5とシース6との間に抗張力繊維12が充填された構成を有している。
【0011】
光ファイバ心線2は光ファイバ(図示省略)に1次被覆(図示省略)と2次被覆(図示省略)とを順次設けることで構成されている。光ファイバはコアおよびクラッドが石英ガラスで形成されている。1次被覆は紫外線硬化樹脂で形成され、2次被覆は熱可塑性樹脂で形成されている。
【0012】
光コード外被4およびシース6はともに、難燃性(JIS C3521準拠の試験で燃焼しない)のポリエチレンから構成されており、光ファイバ心線2を2重に被覆し保護している。難燃性ポリエチレンには水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムのような金属水酸化物が含有され、その脱水吸熱反応の作用によって自己消化性の効果が発揮される。
光コード外被4とシース6とで、シース6は光コード外被4よりも厚さが大きく、シース6の厚さは好ましくは0.8〜1.2mm程度であり、光コード外被4の厚さは好ましくは0.17〜0.23mm程度である。
【0013】
抗張力繊維3、12は光ファイバ心線2を補強する補強線として設けられており、側圧などの外力が光ケーブル1に加えられたときに、光ファイバ心線2に加わる衝撃を緩和するクッションとして機能し光ファイバ心線2を保護するようになっている。
内側の抗張力繊維3は多数のアラミド繊維が束ねられた繊維体であって、光ファイバ心線2に対し縦添えされ光コード外被4で被覆されている。
外側の抗張力繊維12も多数のアラミド繊維が束ねられた繊維体であって、光コード外被4に対し縦添えされシース6で被覆されている。
特に内側の抗張力繊維3と外側の抗張力繊維12とで、外側の抗張力繊維12は内側の抗張力繊維3よりも繊度(密度)が高く、外側の抗張力繊維12の密度は17,000〜25,000dtex/mmであり、好ましくは17,182〜24,992dtex/mmであり、内側の抗張力繊維3の密度は好ましくは3,400〜4,200dtex/mmである。
【0014】
以上の光ケーブル1では、光コード5の長さ2mにおける引き抜き力が10〜20Nである。当該「引き抜き力」とは、引き抜き力試験を用いて測定される測定値であって、光コード5が長さ2mの光ケーブル1から動き始めるのに必要な力(N)を測定し取得した値である。
【0015】
[光ケーブルの製造方法]
光ファイバ心線2に対し内側の抗張力繊維3を縦添えし被覆し、その外周に対し一定のダイスを使用して難燃性ポリエチレンを押し出し被覆し光コード外被4(光コード5)を形成する。
その後、光コード5に対し外側の抗張力繊維12を縦添えし被覆し、その外周に対し一定のダイスを使用して難燃性ポリエチレンを押し出し被覆しシース6を形成する。
【0016】
以上の光ケーブル1によれば、外側の抗張力繊維12の密度と光コード5の引き抜き力とが考慮されており、フレキシブル性と口出し性との両特性を有する(下記実施例参照)。
【実施例】
【0017】
(1)サンプルの作製
光ファイバ心線に対し3条のアラミド繊維(4,000dtex/mm程度)を縦添えし被覆し、その外周に対し一定のダイスを使用して難燃性ポリエチレンを押し出し被覆し、厚さ0.20mmの光コード外被を有する光コードを形成した。
その後、光コードに対し6条のアラミド繊維を縦添えし被覆し、その外周に対し一定のダイスを使用して難燃性ポリエチレンを押し出し被覆し厚さ1.0mmのシースを形成した。
ここでは、外側のアラミド繊維自体の密度を変動させ、表1のサンプル1〜7を作製した。
【0018】
(2)サンプルの評価
(2.1)引き抜き力の測定
光コードが、長さ2mのサンプル(光ケーブル)から動き始めるのに必要な力(N)を測定した。
【0019】
(2.2)配線作業性
フレキシブル性の一指標として配線作業性を評価した。
具体的には、各サンプルでφ40mmのループ(輪)を作り、100mm/分の速さでその両端を引っ張ったときに、キンクが発生するかどうかを確認した(JIS C 6870-1-21 光ファイバケーブル特性試験方法を参考とした。)。キンクが発生しなければ「〇(合格)」と、キンクが発生すれば「×(不合格)」と判定した。
【0020】
(2.3)口出し性
各サンプルの端末から長さ3mの位置に切り込みを入れ、シースを引き裂き除去したときに、光コードの移動がないかどうかを確認した。光コードの移動がなければ「〇(合格)」と、光コードの移動があれば「×(不合格)」と判定した。
【0021】
【表1】
【0022】
(3)まとめ
表1に示すとおり、サンプル1、2では、外側の抗張力繊維の密度や光コードの引き抜き力が過小で、配線作業性の評価においてキンクが発生した。逆にサンプル6、7では、外側の抗張力繊維の密度や光コードの引き抜き力が過大で、口出し性の評価においてシースの除去時に光コードの移動が認められた。これに対し、サンプル3〜5はサンプル1〜2、6〜7と比較し配線作業性と口出し性との両方で優れており、外側の抗張力繊維の密度と光コードの引き抜き力とを調整することでこれら両特性を満足しうることがわかる。
【符号の説明】
【0023】
1 光ケーブル
2 光ファイバ心線
3 (内側の)抗張力繊維
4 光コード外被
5 光コード
6 シース
12 (外側の)抗張力繊維
図1