(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造物の仕切り部に設けられた区画を貫通する貫通孔に挿通した状態で固定され、配管を挿通可能な筒形状に構成された枠部材と、該枠部材の配管挿通方向一端部に挿入して前記枠部材と該枠部材に挿通された前記配管との間の隙間を埋める阻止部材と、を備え、
前記枠部材は、前記配管挿通方向一端部に前記阻止部材の挿入方向奥側ほど小径となる縮径部と、前記配管の周囲を覆うことで前記貫通孔の一方側で発生した火災による火炎が該貫通孔の他方側へ移動することを防止するための熱膨張性の耐火材と、を備え、
前記阻止部材は、該阻止部材の前記枠部材への挿入により前記縮径部で縮径されるように構成された前記配管挿通方向を中心とする周方向全周に連続した環状の変形部を備えていることを特徴とする壁への貫通孔形成部材。
前記変形部は、前記阻止部材の前記枠部材への挿入により、挿入方向奥側の部分が径方向内側へ移動して縮径されることを特徴とする請求項1に記載の壁への貫通孔形成部材。
前記阻止部材は、前記変形部に対して前記挿入方向手前側に配置され、前記阻止部材を挿入操作するべく板状かつリング状に構成される把持部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の壁への貫通孔形成部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、発泡体に、円柱体の中心の貫通孔から放射線状に多数の切欠きが形成されているため、挿通される配管の外径によっては、装着後の発泡体の変形度合いが異なるため、全ての切欠きを完全に塞ぐことが難しい。そのため、多数の切欠きが形成された発泡体では、一部の切欠きを通して区画の一方側で火災が発生した時の煙が貫通孔を通して他方側へ移動してしまう不都合があり、早期改善が要望されている。
【0006】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、区画の一方側で火災が発生した時の煙が貫通孔を介して他方側へ移動することを確実に阻止することができる壁への貫通孔形成部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の壁への貫通孔形成部材は、前述の課題解決のために、構造物の仕切り部に設けられた区画を貫通する貫通孔に挿通した状態で固定され、配管を挿通可能な筒形状に構成された枠部材と、該枠部材の配管挿通方向一端部に挿入して前記枠部材と該枠部材に挿通された前記配管との間の隙間を埋める阻止部材と、を備え、前記枠部材は、前記配管挿通方向一端部に前記阻止部材の挿入方向奥側ほど小径となる縮径部を備え、前記阻止部材は、該阻止部材の前記枠部材への挿入により前記縮径部で縮径されるよう構成された変形部を備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、枠部材に配管を挿通した状態において、枠部材の一端端部に阻止部材を挿入することによって、阻止部材に備えた変形部が縮径部で縮径される。この縮径された変形部が枠部材と配管との間の隙間を良好に埋めることができる。よって、区画の一方側で火災が発生した時の煙が貫通孔を介して他方側へ移動することを変形部で確実に阻止することができる。
【0009】
又、本発明の壁への貫通孔形成部材は、前記阻止部材は、回転させながら前記枠部材に挿入するように構成され、前記変形部は、前記回転させながらの挿入により前記縮径部に対して回転方向に摺動しながら縮径されるような構成であってもよい。
【0010】
本発明によれば、阻止部材を回転させながら枠部材に挿入することにより変形部が回転方向で摺動しながら縮径するので、変形部が縮径部の形状に馴染むように変形され易くなり、枠部材と配管との間の隙間を良好に埋めることができる。
【0011】
又、本発明の壁への貫通孔形成部材は、前記阻止部材及び前記枠部材のうちの一方に雌螺子部を備え、前記阻止部材及び前記枠部材のうちの他方に前記雌螺子部に螺合する雄螺子部を備え、前記阻止部材は、前記雌螺子部と前記雄螺子部が螺合するよう前記枠部材に対して回転させることで該枠部材に挿入するよう構成され、前記変形部は、前記阻止部材の前記枠部材に対する回転による螺合により、前記縮径部に対して回転方向に摺動しながら縮径されるように構成されていてもよい。
【0012】
上記のように、阻止部材を回転させることにより枠部材に螺合させることで、阻止部材を枠部材にスムーズに挿入することができる。よって、変形部がスムーズに回転方向で摺動しながら縮径するので、変形部が縮径部の形状に全体的に良く馴染むように変形され易くなり、枠部材と配管との間の隙間を良好に埋めることができる。
【0013】
又、本発明の壁への貫通孔形成部材は、前記縮径部は、前記阻止部材の挿入方向奥側ほど小径となるテーパー面を備えていてもよい。
【0014】
上記のように、縮径部が、前記阻止部材の挿入方向奥側ほど小径となるテーパー面を備えていれば、阻止部材をテーパー面に沿って移動させることで、阻止部材を枠部材にスムーズに挿入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、枠部材の両端部それぞれに、阻止部材を挿入することによって、縮径部で縮径された変形部が枠部材と配管との間の隙間を良好に埋めることができる。よって、区画の一方側で火災が発生した時の煙が貫通孔を介して他方側へ移動することを確実に阻止することができる壁への貫通孔形成部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の壁への貫通孔形成部材の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図9に示すように、壁への貫通孔形成部材1は、配管2を挿通可能な筒形状に構成された枠部材3と、枠部材3の配管挿通方向両端部それぞれに挿入して枠部材3と枠部材3に挿通された配管2との間の隙間を埋める一対の阻止部材4,4と、を備えている。なお、
図1の正面視において、左側を左側とし、右側を右側とし、上側を上側とし、下側を下側とし、紙面方向の手前側を前側とし、紙面方向奥側を後側として、以下において説明する。
【0019】
枠部材3は、
図1に示すように、配管挿通方向視(前後方向視)において外形が矩形状(
図1の正面視において正方形であるが、長方形でもよい)で内側が円形に構成され、上側に位置する上側部材31と、上側部材31に連結及び連結解除自在な下側部材33と、を備えている。この実施形態では、上側部材31及び下側部材33を合成樹脂から形成しているが、金属等で構成してもよく、材料は限定されない。
【0020】
上側部材31は、
図1〜
図3及び
図6〜
図7に示すように、天壁部311と天壁部311の左右方向両端から下方に延びる左右の側壁部312,313と左右の側壁部312,313の前後端をそれぞれ連結する前後の側壁部314,315とを備えている。
【0021】
天壁部311は、平坦な上面(天面)311A(
図1〜
図3参照)を有し、前後方向における中央部の内面側に天壁部311から左右の側壁部312,313にかけて前後方向に間隔を置いて前後一対のアーチ状の板部316,317が下方に突出するように形成されている(
図7参照)。前後一対の板部316,317と天壁部311と左右の側壁部312,313とで囲まれた空間内に平面視略矩形状の上側耐火材5Aを備えている。前側の側壁部314側に位置する一方(前側)の板部316から前側の側壁部314に向かって配管2を支持する複数(3本)のリブ318を備えている。また、後側も同様に、後側の側壁部315側に位置する他方(後側)の板部317から後側の側壁部315に向かって配管2を支持する複数(3本)のリブ319を備えている。これら複数(全部で6本)のリブ318,319は、
図6及び
図7に示すように、前後方向に沿って形成され、しかも円形の配管2の上側を確実に支持できるように左右方向外側に位置するリブほど下端が下方に位置している。複数のリブ318,319が前後方向に沿って形成されているので、壁への貫通孔形成部材1内を移動する配管2との接触抵抗を低減することができる。
【0022】
また、天壁部311の前側端部の左右方向一端部及び天壁部311の後側端部の左右方向他端部のそれぞれには、上下方向に積み重ねた下側の壁への貫通孔形成部材1と上側の壁への貫通孔形成部材1とをビス(締結部材、図示せず)により連結するための貫通孔形成用の薄膜部320(
図6参照)が形成されている。また、後述するように、下側部材33にも、上側部材31の薄膜部320,320に対応する位置に貫通孔340,340が形成されている。したがって、上下方向に壁への貫通孔形成部材1,1を積み重ねた場合には、薄膜部320,320をビスで開口させて、上側の壁への貫通孔形成部材1の下側部材33の貫通孔340,340と下側の壁への貫通孔形成部材1の上側部材31に開口させた貫通孔とに亘ってビスを貫通することにより、上下の壁への貫通孔形成部材1,1を固定することができる。下側部材33は、主として床面に取り付けることになるため、貫通孔340,340が形成されていても、貫通孔340,340を通して塵等が壁への貫通孔形成部材1の内部に入り込むことが少ないため、問題にならない。これに対して、上側部材31の天壁部311に貫通孔を形成すると、上下方向に複数の壁への貫通孔形成部材1を積み重ねない場合に、上側部材31の天壁部311に形成の貫通孔から塵等が壁への貫通孔形成部材1の内部に入り込むため、薄膜部320,320で覆っている。
【0023】
図6及び
図7に示すように、上側部材31の前後の側壁部314,315のそれぞれは、配管2を挿通可能な挿通孔を形成する半円状の上側挿通部321と、上側挿通部321の外側端から外側に向かって径が大きくなるテーパー面322Aを有する上側縮径部322と、を備えている。また、上側部材31の前後の側壁部314,315からそれぞれ、前後方向外側に向かって延びるとともに半円よりも少し小さな弧状に形成された上側延出部323を備え、上側延出部323の内面に雌螺子部323Aが形成されている。テーパー面322Aは、内側に凸となる湾曲面から構成しているが、フラットな平面から構成してもよい
【0024】
下側部材33は、
図1〜
図5に示すように、底壁部331と底壁部331の左右方向両端から上方に延びる左右の側壁部332,333と左右の側壁部332,333の前後端をそれぞれ連結する前後の側壁部334,335とを備えている。下側部材33は、上側部材31とほぼ同一寸法に構成されているが、左右の側壁部332,333の上下寸法が、上側部材31の左右の側壁部312,313の上下寸法よりも長くなっているが、同一の上下寸法であってもよい。
【0025】
底壁部331は、平坦な底面331A(
図1〜
図3参照)を有し、前後方向における中央部の内面側に底壁部331から左右の側壁部332,333にかけて前後方向に間隔を置いて前後一対のアーチ状の板部336,337が上方に突出するように形成されている(
図5参照)。一対の板部336,337と底壁部331と左右の側壁部332,333とで囲まれた空間内に平面視略矩形状の下側耐火材5Bを備えている。下側部材33に上側部材31が連結されることで、上側耐火材5Aと下側耐火材5Bとで配管2の周囲を覆うことができる。また、前側の側壁部334側に位置する一方(前側)の板部336から前側の側壁部334に向かって配管2を支持する複数(3本)のリブ338を備えている(
図4参照)。また、後側も同様に、後側の側壁部335側に位置する他方(後側)の板部337から後側の側壁部335に向かって配管2を支持する複数(3本)のリブ339を備えている(
図4参照)。これら複数(全部で6本)のリブ338,339は、
図4及び
図5に示すように、前後方向に沿って形成され、しかも円形の配管2の下側を確実に支持できるように左右方向外側に位置するリブほど高さ(上端)が高くなっている。複数のリブ338,339が前後方向に沿って形成されているので、壁への貫通孔形成部材1内を移動する配管2との接触抵抗を低減することができる。尚、
図4では、紙面の下側が前側で、紙面の上側が後側である。
【0026】
また、底壁部331の前側端部の左右方向一端部及び底壁部331の後側端部の左右方向他端部のそれぞれには、上下方向に積み重ねた下側の壁への貫通孔形成部材1と上側の壁への貫通孔形成部材1とをビス(締結部材)により連結するための貫通孔340が形成されている。これら貫通孔340,340は、床(又は天井)に下側部材33を固定するための貫通孔として使用することもできる。また、後述する下側第1延出部344,344の左右方向中央部に、床(又は天井)に下側部材33を固定するための貫通孔形成用の薄膜部341,341が形成されている。したがって、上下方向に壁への貫通孔形成部材1,1を積み重ねた場合には、底壁部331の貫通孔340,340を通したビスで天壁部311の薄膜部320,320を開口させて上下の壁への貫通孔形成部材1,1を固定することができる。また、貫通孔形成用の薄膜部341,341及び底壁部331の貫通孔340,340のうちの一部又は全部を用いて下側部材33を床(又は天井)にビス止めすることができる。
【0027】
下側部材33の前後の側壁部334,335のそれぞれは、
図4に示すように、配管2を下方から支持するとともに挿通孔を形成する半円状の下側挿通部342と、下側挿通部342の外側端から外側に向かって径が大きくなるテーパー面343Aを有する下側縮径部343と、を備えている。また、下側部材33の前後の側壁部334,335は、該側壁部334,335から前後方向外側に向かって延びるとともに半円よりも小さな弧状に形成された下側第1延出部344を備え、その下側第1延出部344の周方向のうちの下端部を除く2箇所から更に軸方向外側に向かって延びる一対の円弧状の下側第2延出部345,345を備えている。下側第2延出部345,345の内面のそれぞれに、雌螺子部345Aが形成されている。前記上側部材31の上側縮径部322と前記下側部材33の下側縮径部343とから、後述する阻止部材4の変形部43を縮径させる縮径部Sを構成する。テーパー面343Aは、内側に凸となる湾曲面から構成しているが、フラットな平面から構成してもよい
【0028】
配管2としては、給湯管、給水管、排水管、電線管等が挙げられる。ここでは、締結部材としてビスを示しているが、床又は天井に備えた孔に差し込んで固定するピンや床又は天井に取り付けた固定部に壁への貫通孔形成部材1を締め付け固定するバンドであってもよい。
【0029】
上側耐火材5A及び下側耐火材5Bとしては、熱膨張性の耐火材を用いている。この熱膨張性の耐火材は、熱膨張性(加熱により体積が増加する性質)と耐火性(熱に耐えやすい性質、溶融温度が高く燃えにくい性質)とを有する部材である。熱膨張性の耐火材としては、公知の材質のものを特に制限なく用いることができ、例えばパテ状部材(熱膨張性パテ状耐火材)を用いることができる。熱膨張性の耐火材は、例えば所定温度(例えば200℃)以上に加熱された際に、その厚み方向に膨張して配管2の外面と壁への貫通孔形成部材1の内面との間の隙間を埋めることで貫通孔6Aの一方側で発生した火炎が貫通孔6Aの他方側へ移動することを防止する。
【0030】
上側部材31と下側部材33とを固定する構成について説明すれば、
図6及び
図7に示すように、上側部材31の左右の側壁部312,313の下端のそれぞれには、左右方向外側に突出し、前後方向に長い前後一対の突起部312T,312Tが前後端部に形成されている。尚、
図6では、紙面の上側が前側で、紙面の下側が後側である。また、
図4及び
図5に示すように、下側部材33の左右の側壁部332,333の上端の前後方向中央部には、前記上側部材31の前側又は後側の左右の突起部312T又は312Tが下方に入り込むための切欠き332K,333Kが形成されるとともに、切欠き332K,333Kに入り込んだ前側又は後側の左右の突起部312T,312Tを下方から当接支持する支持部332U,333Uが下側部材33の前後方向全域に形成されている。また、前側又は後側の左右の突起部312T,312Tが切欠き332K,333Kに上方から入り込んで支持部332U,333Uで支持された状態において、上側部材31を前後方向一方に移動させる際に、突起部312T,312Tの上端を当接案内すべく内側に突出する当接部332T,333Tが、切欠き332K,333Kを挟んだ前後両側に前後方向に延びるように形成されている。当接部332T,333Tは、断面形状矩形状で前後方向に長い突起部から構成され、上側部材31を前後方向一方に移動させる際に、上側に位置する当接部332T,333Tと下側に位置する支持部332U,333Uとの間に挟持された状態で突起部312T,312Tが前後方向に移動する。また、前側に位置する当接部332T,333Tの内側面の前端部には、前記上側部材31を前後方向一方に移動させた時に、上側部材31に備える凹部31A(
図2参照)に係止して下側部材33に対して上側部材31を固定する凸部33A(
図4、
図5参照)を備えている。また、後側に位置する当接部332T,333Tの内側面の後端部にも、前側の当接部332T,333Tと同様に、前記上側部材31を前後方向一方に移動させた時に、上側部材31に備える凹部31A(
図2参照)に係止して下側部材33に対して上側部材31を固定する凸部33A(
図4、
図5参照)を備えている。したがって、上側部材31を前後方向一方に移動させた時に、4個の凹部31Aに4個の凸部33Aが係止することによって、下側部材33に対して上側部材31を固定することができる。なお、4個の凹部31Aと4個の凸部33Aとの係止を解除することによって、下側部材33と上側部材31との固定を解除できる。
【0031】
図9に示すように、一対の阻止部材4,4を、枠部材3の前後方向両端部それぞれに挿入することによって、貫通孔6Aの一方側で火災が発生した時の煙が貫通孔6Aの他方側へ移動してしまうことを壁への貫通孔形成部材1で阻止することができる。
【0032】
各阻止部材4は、
図8に示すように、枠部材3への挿入方向Hの手前側に位置し、阻止部材4を回転させるための板状でリング状の把持部41と、把持部41の挿入方向奥側の端面から挿入方向奥側へ延びる把持部41よりも小さな外径を有する円筒部42と、円筒部42の挿入方向奥側の端面に固定されるドーナツ状の変形部43と、を備えている。
【0033】
把持部41及び円筒部42は、合成樹脂により一体形成され、周方向で2つの半円弧部材44,45から構成されている。2つの半円弧部材44,45は、周方向一端部同士がピン(図示せず)により連結されており、開放した状態と閉じた状態とに切り替え可能に構成されている。したがって、閉じた状態において、周方向他端部が一方の半円弧部材44に形成された輪っか部44Aに他方の半円弧部材45に備えた一対の爪部45A,45Aが入り込んで係止することによって、閉じた状態を保持する。
【0034】
把持部41の外周面には、指が引っ掛かり易くするための多数の円弧部41Aが周方向に沿って形成されている。また、円筒部42の外面には、枠部材3の雌螺子部323A,345A(
図5及び
図6参照)に螺合する雄螺子部42Nが形成されている。
【0035】
変形部43は、円筒部42の挿入方向奥側の端面に両面テープや接着剤などにより固定され、合成ゴム発泡シートから構成されている。この合成ゴム発泡シートは、EPDMゴムを主成分とした発泡シール材であるが、阻止部材4を枠部材3に挿入した時に、枠部材3の縮径部Sで縮径可能なものであれば、他の材料から構成されていてもよい。
【0036】
図10(a)に、阻止部材4を枠部材3に挿入する直前の状態を示し、この状態から阻止部材4を回転させることにより阻止部材4の雄螺子部42Nを枠部材3の雌螺子部323A,345Aに螺合させることで、阻止部材4を枠部材3にスムーズに挿入することができる。その挿入する際に、テーパー面322A,343Aに沿って変形部43が移動することで変形部43の挿入方向奥側が内側へ移動して縮径される。よって、変形部43がスムーズに回転方向で摺動しながら縮径するので、変形部43が縮径部Sの形状に全体的に良く馴染むように変形され易くなり、
図10(b)に示すように、枠部材3と配管2との間の隙間Dを良好に埋めることができる。
図10(b)では、変形部43は、配管2の外面2Aに当接する変形部43の内面43Aの形状を平面に保ちつつ縮径部Sで縮径される。また、変形部43は、変形部43の先端面43B(阻止部材4の挿入方向奥側の面)の形状を配管挿通方向と直交する方向(略直交する方向でもよい)に保ちつつ縮径部Sで縮径される。よって、配管2の外面2Aに変形部43の内面43Aが満遍なく密着している状態となる。尚、阻止部材4の雄螺子部42Nを枠部材3の雌螺子部323A,345Aに螺合させることにより阻止部材4を枠部材3に締め付け固定しているが、螺合完了時に両者を係止する係止機構を両者に設けて実施することもできる。
【0037】
次に、前記のように構成された壁への貫通孔形成部材1により配管2を配置する作業工程について説明する。
【0038】
図2に示すように、床Fに下側部材33を配置して前述のように下側部材33に形成の貫通孔にビスを用いて固定する。この固定する際に、床Fに下側部材33を固定する位置、つまり後述する壁6,6が設けられる位置がマーカーやテープ等により予め記されていて、壁6,6の位置に合わせて下側部材33を固定することになる。下側部材33の固定が完了すると、配管2を下側部材33に配置(載置)した後、上側部材31を下側部材33に前述のように係止固定する。続いて、
図9に示すように、阻止部材4,4を前述のように枠部材3の前後方向両端に螺合させる。この状態から、一対の壁6,6を設置する。なお、壁6,6の設置後は、壁6,6の貫通孔6A,6A(
図9参照)と壁への貫通孔形成部材1との間に発生する隙間にパテやモルタル等の充填材(図示せず)により塞ぐことになる。
【0039】
前記のように、壁6,6を形成する前に、床F(又は天井でもよい)の壁6,6が形成される位置に壁への貫通孔形成部材1を固定しておけば、固定した壁への貫通孔形成部材1に配管2を挿通可能な筒形状(ここでは円筒形状)の貫通孔が形成されるので、壁6,6が形成されていない場合であっても、配管2を固定した壁への貫通孔形成部材1に挿通して配置することができる。ここでは、床F(又は天井)への下側部材(一方の部材)33の固定で約半周分の貫通孔が形成される。
【0040】
この実施形態では、固定した壁への貫通孔形成部材1に配管2を配置してから壁6,6を形成したが、固定した壁への貫通孔形成部材1に壁6,6を形成してから配管2を壁6,6に固定された壁への貫通孔形成部材1に挿通させてもよい。
【0041】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
前記実施形態では、壁への貫通孔形成部材1の外形を断面矩形状に構成したが、
図11及び
図12に示すように、壁への貫通孔形成部材1の外形を断面円形状に構成してもよい。また、この壁への貫通孔形成部材1は、前後方向において分割された2個の部材からなり、前側に位置する前側部材51と、後側に位置する後側部材52と、を備えている。尚、
図11及び
図12では、実施形態で説明した阻止部材4,4を取り付けていない状態を示している。前側部材51は、円筒状の本体部511と、本体部511の前端部の外面に備える円環状のフランジ部512と、を備えている。本体部511の前端部の内面には、実施形態で説明した阻止部材4の雄螺子部42Nが螺合する雌螺子部511Aが形成され、前端部よりも後側の内面に阻止部材4の変形部43が縮径される縮径部Sを備えている。縮径部Sは、後側ほど小径となるテーパー面511Tを備えている。フランジ部512には、
図15に示す壁6,6にビス止めするための複数の貫通孔512Aが形成されている。後側部材52は、前側部材51と同様に、円筒状の本体部521と、本体部521の前端部に有する円環状のフランジ部522と、を備えている。フランジ部522は、
図15に示す壁6に当接されてビス止めするための複数の貫通孔522Aが形成されている。本体部521の後端部の内面には、実施形態で説明した阻止部材4の雄螺子部42Nが螺合する雌螺子部521Aが形成され、後端部よりも前側に阻止部材4の変形部43が縮径される縮径部Sを備えている。縮径部Sは、後側ほど小径となるテーパー面521Tを備えている。また、前側部材51の後側端部の内側と後側部材52の前側端部の内側のそれぞれには、円環状の耐火材7を備えている。また、前側部材51と後側部材52とが突き合わされる端部には、互いに嵌合して両者の間隔を調整可能な嵌合部(図示せず)を備えている。
【0043】
図13及び
図14に、
図9で示した阻止部材4を前側部材51及び後側部材52に螺合により挿入した状態を示している。そして、壁への貫通孔形成部材1に配管2を配置する場合には、
図15に示すように、一方(図の左側)の壁6に前側部材51の本体部511を貫通孔6Aに差し込み、前述のように壁6に当接したフランジ部512を壁6にビス止めする。続いて、他方(図の右側)の壁6に後側部材52の本体部521を貫通孔6Aに差し込み、前述のように壁6に当接したフランジ部522を壁6にビス止めする。なお、壁6に後側部材52の本体部521を差し込んだ時に、前側部材51と後側部材52との突き合せ端部が嵌合する。続いて、2つの阻止部材4,4を前側部材51及び後側部材52に螺合して挿入することによって、作業が終了する。
【0044】
また、
図16では、
図13で示したリング状のフランジ部512,522を、複数(図では2個しか示していないが、実際には3個)の舌片513,523から構成している。これら舌片513,523は、前側部材51の本体部511及び後側部材52の本体部521の外面の周方向に所定間隔を置いて径方向外側に延びる板状部から構成されている。説明していない他の部分は、
図13及び
図14と同様であり、説明を省略する。
【0045】
また、前記実施形態では、縮径部Sが、阻止部材4の挿入方向奥側ほど小径となるテーパー面を備えた構成であったが、阻止部材4の挿入方向奥側ほど小径となるように凹凸を有する波型面から縮径部を構成してもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、阻止部材4を回転させながら枠部材3に挿入することによって、阻止部材4をよりスムーズに枠部材3に挿入させることができるが、阻止部材4を枠部材3にスライドさせて挿入する構成であってもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、阻止部材4を回転させて枠部材3に螺合させる構成であったが、螺合ではなく阻止部材4の回転を案内するテーパー状の案内面を備えた構成であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、枠部材3に縮径部Sを備え、阻止部材4に縮径部Sで縮径される変形部43を備えたが、阻止部材4に縮径部を備え、枠部材3に縮径部で縮径される変形部を備えて実施してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、阻止部材4を枠部材3の配管挿通方向両端部に挿入したが、阻止部材4を枠部材3の配管挿通方向一端部にのみ挿入してもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、下側部材33に対して上側部材31を水平方向に移動させることにより係止固定したが、下側部材33に対して上側部材31を上方から下方に向けて移動させることにより、係止固定可能に構成してもよいし、ビス等の締結部材を用いて下側部材と上側部材とを固定してもよい。