特許第6983220号(P6983220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイドロ−ケベックの特許一覧 ▶ トランスフェール プリュス, エス.ウー.セー.の特許一覧

特許6983220電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス
<>
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000002
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000003
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000004
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000005
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000006
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000007
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000008
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000009
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000010
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000011
  • 特許6983220-電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983220
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20211206BHJP
   H01M 6/52 20060101ALI20211206BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20211206BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01M10/54
   H01M6/52
   H01G11/84
   H01G11/36
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-503276(P2019-503276)
(86)(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公表番号】特表2019-523528(P2019-523528A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】CA2017050880
(87)【国際公開番号】WO2018014136
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年6月26日
(31)【優先権主張番号】62/365,441
(32)【優先日】2016年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ−ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】517409273
【氏名又は名称】トランスフェール プリュス, エス.ウー.セー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラポルト, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】オッソノン, ディビー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
(72)【発明者】
【氏名】ベランンジェ, ダニエル
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−272720(JP,A)
【文献】 特開2009−242209(JP,A)
【文献】 特開平11−185802(JP,A)
【文献】 特開2012−126988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0227153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 −10/48
H01M 10/54
H01M 6/52
H01G 11/84
H01G 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料をリサイクルするためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)任意の順序で、水および非混和性溶媒を前記電極材料に加え、それによって有機相および水相を含む二相系を形成させるステップと;
(ii)前記有機相および前記水相を分離するステップと;
(iii)前記有機相を濾過して、グラフェンを回収するステップと
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記非混和性溶媒が、炭酸エステルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記炭酸エステルが、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、またはこれらの少なくとも2つの混合物である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記二相系が、約3:1から約1:2の間に含まれる水/溶媒比を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(ii)が、ステップ(iii)の前に前記有機相を脱イオン水で洗浄して、残留する極微量の電気化学的活物質を除去することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスが、ステップ(i)の前に、溶媒を使用して前記電極材料を洗浄し、グラフェンおよび電気化学的活物質の懸濁物を得るステップと、前記懸濁物を濾過するステップとをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電極材料を洗浄し、前記懸濁物を得るステップが、前記懸濁物を超音波浴において処理することをさらに含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記懸濁物を濾過するステップの後で、溶媒によるさらなる洗浄ステップをさらに含む、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(i)の前に、約400℃〜約550℃の温度で少なくとも20分間行われる熱処理ステップをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記熱処理ステップが、約500℃の温度で20〜60分間の期間にわたって行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記熱処理ステップの前に、事前乾燥するステップをさらに含む、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記電気化学的活物質が、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組合せ、LiM’PO(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、ならびにこれらの組合せから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記電気化学的活物質が、リチウムチタン酸塩またはリチウム金属リン酸塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記電気化学的活物質が、LiTi12、LiFePO、または炭素コーティングされたLiFePOである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記水相を分離するステップと、前記電気化学的活物質を再生するステップとをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年7月22日に出願された米国仮出願第62/365,441号の優先権を適用法の下、主張し、この米国仮出願の内容は、その全体があらゆる目的で本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本技術分野は一般に、電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセス、例えば、Liイオン電池において使用されるグラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極から、グラフェンをリサイクルするためのプロセスに関する。本技術はまた、電気化学セルにおいて使用される電極の調製におけるこのようにリサイクルされたグラフェンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
グラフェンは高価な材料であることが公知であり、Liイオン電池からグラフェンをリサイクルする従来の方法は、バインダー(例えば、PVDF)を可溶化する溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用し、グラフェンフィルムを集電体から分離する。この可溶化ステップは一般に、熱処理が後に続く(Contestabileら、J. Power Sources、2001年、92巻、65〜69頁を参照されたい)。有害な溶媒または強酸もしくは強塩基をまた、このような従来の方法において使用し得る。また、集電体材料、例えば、アルミニウムをリサイクルするための工業的方法は、経済的ではなく、エネルギー効率も良くない(Gaines L.、Sustainable Material and Technologies、2001年、1〜2巻、2〜7頁)。
【0004】
したがって、現在使用されているプロセスの欠点の少なくとも1つを回避しながら、グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料からグラフェンをリサイクルする新しい方法が必要とされている。例えば、このような新しい方法は、簡易化されたステップを含み、環境に優しい溶媒を使用し、かつ/またはより低いエネルギー消費を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Contestabileら、J. Power Sources、2001年、92巻、65〜69頁
【非特許文献2】Gaines L.、Sustainable Material and Technologies、2001年、1〜2巻、2〜7頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本技術は、グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料をリサイクルするためのプロセスであって、
(i)任意の順序で、水および非混和性溶媒を電極材料に加え、それによって有機相および水相を含む二相系を形成させるステップと;
(ii)有機相および水相を分離するステップと;
(iii)有機相を濾過して、グラフェンを回収するステップと
を含む、プロセスに関する。
【0007】
一実施形態では、プロセスは、ステップ(i)の前に、溶媒を使用して電極材料を洗浄して、グラフェンおよび電気化学的活物質の懸濁物を得るステップと、前記懸濁物を濾過するステップとをさらに含む。例えば、洗浄ステップは、懸濁物を超音波浴において処理することをさらに含む。懸濁物の濾過から得られる濾液は、溶媒、例えば、洗浄ステップに使用したものと同じ溶媒を使用したさらなる洗浄ステップをさらに含み得る。
【0008】
一実施形態では、プロセスは、ステップ(i)の前に、約400℃〜約550℃の温度で少なくとも20分間、例えば、約500℃の温度で20〜60分間の期間にわたって行われる熱処理ステップをさらに含む。別の実施形態では、プロセスは、熱処理ステップの前に事前乾燥するステップをさらに含む。
【0009】
別の実施形態では、本明細書において定義するプロセスの二相系において使用される非混和性溶媒は、炭酸エステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルまたは炭酸エチルメチルである。二相系において、水/非混和性溶媒比は、約3:1〜約1:2、または約2:1〜約1:1の範囲であり得る。二相系からの2つの相の分離の後、電気化学的活物質の残存している極微量を除去するために、任意選択で、有機相を脱イオン水で洗浄する。プロセスは、水相を回収し、電気化学的活物質を再生する任意選択のステップをさらに含む。
【0010】
さらなる実施形態では、電極材料中に存在する電気化学的活物質は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTi、またはこれらの組合せ、LiM’PO(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組合せから選択される。一例によると、電極材料中に存在する電気化学的活物質は、リチウムチタン酸塩またはリチウム金属リン酸塩、例えば、LiTi12、LiFePO、または炭素コーティングされたLiFePOである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料をリサイクルするためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)任意の順序で、水および非混和性溶媒を前記電極材料に加え、それによって有機相および水相を含む二相系を形成させるステップと;
(ii)前記有機相および前記水相を分離するステップと;
(iii)前記有機相を濾過して、グラフェンを回収するステップと
を含む、プロセス。
(項目2)
前記非混和性溶媒が、炭酸エステルである、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記炭酸エステルが、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、またはこれらの少なくとも2つの混合物である、項目2に記載のプロセス。
(項目4)
前記二相系が、約3:1から約1:2の間に含まれる水/溶媒比を有する、項目1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目5)
ステップ(ii)が、前記濾過ステップ(iii)の前に前記有機相を脱イオン水で洗浄して、残留する極微量の電気化学的活物質を除去することをさらに含む、項目1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目6)
前記プロセスが、ステップ(i)の前に、溶媒を使用して前記電極材料を洗浄し、グラフェンおよび電気化学的活物質の懸濁物を得るステップと、前記懸濁物を濾過するステップとをさらに含む、項目1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目7)
前記洗浄ステップが、前記懸濁物を超音波浴において処理することをさらに含む、項目6に記載のプロセス。
(項目8)
前記濾過ステップの後で、溶媒によるさらなる洗浄ステップをさらに含む、項目6または7に記載のプロセス。
(項目9)
ステップ(i)の前に、約400℃〜約550℃の温度で少なくとも20分間行われる熱処理ステップをさらに含む、項目1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目10)
前記熱処理が、約500℃の温度で20〜60分間の期間にわたって行われる、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
前記熱処理ステップの前に、事前乾燥するステップをさらに含む、項目9または10に記載のプロセス。
(項目12)
前記電気化学的活物質が、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組合せ、LiM’PO(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、ならびにこれらの組合せから選択される、項目1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目13)
前記電気化学的活物質が、リチウムチタン酸塩またはリチウム金属リン酸塩である、項目1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目14)
前記電気化学的活物質が、LiTi12、LiFePO、または炭素コーティングされたLiFePOである、項目13に記載のプロセス。
(項目15)
前記水相を分離するステップと、前記電気化学的活物質を再生するステップとをさらに含む、項目1から14のいずれか一項に記載のプロセス。

【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本技術の一実施形態によるグラフェンをベースとする電極をリサイクルする方法の概略図である。
【0012】
図2図2は、一実施形態によるLTO粉末からのグラフェンの分離を示す写真である。
【0013】
図3図3は、LiFePO/C(LFP)粉末およびグラフェン(EG)粉末の熱重量曲線を示す。
【0014】
図4図4は、一実施形態によるリサイクル方法を適用する前(EG)および後(リサイクルされたEG)のグラフェン粉末の熱重量曲線を示す。
【0015】
図5図5は、a)自立グラフェン層、b)Celgard(登録商標)セパレーター上の一実施形態によるリサイクルされたグラフェンの層、c)Celgard(登録商標)セパレーター上の酸化物層、およびd)Celgard(登録商標)セパレーター単独のX線回折パターンを示す。酸化物粒子に割り当てられるピークは、丸(●)によって識別する。
【0016】
図6図6は、一実施形態による、a)250×、b)1000×、c)5000×およびd)10000×で得られた、リサイクルされたグラフェン層の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。丸は、可能な残留する酸化物粒子を示す。
【0017】
図7図7は、a)250×、b)1000×、c)5000×およびd)10000×で得られた、Celgard(登録商標)セパレーター上に堆積した酸化物フィルムのSEM画像を示す。酸化物フィルムの光学的写真をまた提供する。
【0018】
図8図8は、50〜1000mA/gの範囲の速度でサイクル動作する(cycled)自立グラフェン電極の充電(四角)および放電(丸)比容量を示す。
【0019】
図9図9は、50〜1000mA/gの範囲の速度でサイクル動作するリサイクルされたグラフェンアノードの充電(四角)および放電(丸)比容量を示す。
【0020】
図10図10は、a)250×、b)1000×およびc)5000×で得られた自立グラフェン層のSEM画像を示す。
【0021】
図11図11は、自立グラフェン電極についての50〜1000mA/gの範囲の速度での充電/放電プロファイルを示し、それぞれの電流密度についての第2のサイクルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書において、用語「約」は、その後に測定値または数値が続くとき、当業者が決定するような実験誤差の許容できる限度内を意味し、これは数値がどのように測定または計算されるか、すなわち、測定装置の限度に一部依存する。この値はまた、表す有効桁数および数値の丸めを考慮に入れる。代わりに、他に示さない限り、用語「約」が本明細書または特許請求の範囲において使用されるとき、これは、誤差限界、例えば、記載された値のおおよそ10%、またはおおよそ5%、またはおおよそ1%を想定しなければならないことを意味する。
【0023】
グラフェンのより広範に亘る使用は、その高い価格によってなお限定されている。したがって、使用済み電池中に含有されるグラフェンを回収するリサイクルプロセスが開発されてきた。このプロセス(その実施形態が図1において例示されている)は、単純であり、環境に優しい溶媒を使用し、バインダーを可溶化しかつ電池の様々な成分および材料を分離する大量のNMPの使用を回避する。さらに、周囲空気下での短い熱処理のみを、炭素コーティングされた電気化学的活物質粒子に必要とし得る。
【0024】
第1の態様によれば、この技術は、グラフェン、および任意選択で、電気化学的活物質を含む電極材料をリサイクルするためのプロセスに関する。例えば、電極材料がポリマーバインダー(例えば、PVDF)を含まないとき、本プロセスを適用し得る。
【0025】
一実施形態では、プロセスは、任意の順序で、水および非混和性溶媒を電極材料に加えることからなるステップを含む。「非混和性溶媒」はここでは、使用の比率および条件(例えば、室温)において水に非混和性である有機溶媒を意味する。水および非混和性溶媒の添加は、有機相および水相を含む二相の系の形成をもたらす。次いで、グラフェンは、有機相中に存在し、一方で、電気化学的活物質は、水相中に見出される。
【0026】
非混和性溶媒は、炭酸エステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルまたは炭酸エチルメチルであり得る。溶媒は、二相系の生成を可能とする比率で使用される。例えば、二相系は、約3:1〜約1:2の範囲(両端を含む)の比で水および非混和性溶媒を含有し得る。好ましい実施形態では、溶媒は、炭酸ジメチルであり、水/溶媒比は、約2:1〜約1:1であるか、または約2:1である。
【0027】
一実施形態では、電気化学的活物質は、チタネート、リチウムチタン酸塩、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、および適切な場合これらの組合せからなる群から選択される材料を含む。例えば、電気化学的活物質は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組合せ、LiM’PO(式中、M’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(式中、M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、ならびにこれらの組合せから選択され得る。一例によると、電気化学的活物質は、リチウムチタン酸塩およびリチウム金属リン酸塩、例えば、LiTi12またはLiFePOから選択される。
【0028】
リサイクルプロセスは、有機相を水相から分離するステップをさらに含み得る。液−液抽出を使用して、グラフェンを電極材料からこのように回収する。グラフェンを含む有機相は、電気化学的活物質の残存している極微量を除去するために、脱イオン水でさらに洗浄し得る。次いで、得られた有機相を濾過して、グラフェンを回収する。次いで、本リサイクルプロセスを使用して回収したグラフェンを、電極材料の製造において使用し得る。また、水相を回収してもよく、電気化学的活物質を、電極材料の製造における可能性のある用途のために再生してもよい。
【0029】
リサイクルされる電極材料中に存在する電気化学的活物質粒子はまた、炭素コーティングされてもよい。例えば、電気化学的活物質は、炭素コーティングされたリチウム金属リン酸塩(本明細書に定義されているようなLiM’PO)、例えば、炭素コーティングされたLiFePO(本明細書中で、以下、LiFePO/Cと称される)であり得る。電気化学的活物質が炭素コーティングされている場合、電極材料からグラフェンをリサイクルするためのプロセスは、水および非混和性溶媒の添加(二相性処理)の前にさらなるステップを含み得る。
【0030】
一実施形態では、プロセスは、溶媒を使用して電極材料を洗浄し、それによって、グラフェンおよび電気化学的活物質の混合物を回収するステップを含む。溶媒は、炭酸エステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルまたは炭酸エチルメチルであり得る。例えば、電極材料を、溶媒と混合し、超音波浴において処理し得る。
【0031】
一実施形態では、従前の洗浄ステップの結果として生ずるグラフェンおよび電気化学的活物質を含む混合物を濾過して、溶媒を除去し、グラフェンおよび電気化学的活物質を含む粉末を回収する。濾過した粉末は、過剰な塩または任意の他の可溶性不純物を除去するために溶媒でさらに洗浄し得る。溶媒は、前の洗浄ステップにおいて使用したものと同じ溶媒、または当業者には公知の任意の他の適切な溶媒であり得る。
【0032】
一実施形態では、粉末は、さらに熱処理される。熱処理は、約400℃〜約550℃(両端を含む)の温度にて達成し得、少なくとも20分間持続し得る。例えば、熱処理の温度は、約500℃である。熱処理は、20〜60分間の期間にわたって持続し得る。このような熱処理は、炭素コーティングした電気化学的活物質粒子からのコーティングの除去を可能とし、かつ/または電気化学的活物質の酸化を可能とする。
【0033】
一実施形態では、事前乾燥するステップは、粉末を熱処理する前に行われ得る。例えば、グラフェンおよび電気化学的活物質粉末は、空気流または任意の他の公知の技術によって事前乾燥され得る。
【0034】
一実施形態では、上記のような、水および非混和性溶媒をグラフェンおよび電気化学的活物質粉末に加えるステップ、ならびに有機相を分離および濾過するステップは、熱処理ステップの後に行われる。
【実施例】
【0035】
下記の非限定的実施例は例示的な実施形態であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。これらの実施例は、添付の図を参照することによってより良好に理解される。
【0036】
実施例1
グラフェンをベースとする電極および電気化学セルの調製
a)グラファイト箔の電気化学的剥離
グラフェン粉末は、グラファイト箔(Alfa Aesar、7.5cm×2cm×0.05cm)の電気化学的剥離によって得た(カナダ特許出願第2,803,772号明細書を参照されたい)。例えば、グラファイト箔は、アノード(直流電源の正端子に接続されている)として使用される。次いで、対電極は白金メッシュ(4cm)からなる。グラファイト箔および対電極の両方を0.1MのHSO電解液に浸漬し、4cmの一定の距離で分離する。2つの電極の間に6V、8Vまたは10VのDC電圧を印加することによって電気化学的剥離を行った。約1時間の電気分解の後、剥離したグラフェンを含有する溶液を、ブフナー型アセンブリー、および0.47μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブランフィルターを使用して真空濾過した。次いで、本明細書の図面においてEGと称される、得られた剥離したグラフェンの粉末を、Nanopure(登録商標)水で数回洗浄して、残留する酸を除去し、その後、10分間の超音波処理によってジメチルホルムアミド(DMF)中に分散させた。分散物を集め、得られた材料を5%水素化アルゴン下、1000℃で1時間処理し、次いで、下記のようなアノードおよびカソードの両方を作製するために使用した。
【0037】
b)自立グラフェン電極の調製
自立グラフェン電極の調製のために、100から400mg/Lの間に含まれる濃度を得るように選択した、ある測定量の、ステップa)からの剥離したグラフェンの粉末を、50mLのDMF中に分散させ、超音波浴に30分間入れた。レギュラーの(または「新鮮な」)グラフェンおよびリサイクルされたグラフェンを両方とも使用した。次いで、得られた混合物を、Nylon(登録商標)フィルター上で数時間濾過した。十分に乾燥したとき、グラフェン層をフィルターから取り出し、真空下、80℃で24時間さらに乾燥させた。次いで、グラフェンの層を、管状炉において5%水素化アルゴン下、1000℃で2時間熱処理し、添加物、バインダーまたは集電体を用いずに電極として使用した。
【0038】
c)電気化学セルの調製
様々なグラフェン電極を、負極として金属リチウム、炭酸エチレン(EC)/炭酸ジエチル(DEC)/炭酸ジメチル(DMC)の混合物(体積で1:1:1)中の1MのLiPF電解質を含浸させたCelgard(登録商標)−2320セパレーター、および正極として剥離したグラフェンまたは100%リサイクルされた剥離したグラフェンを有する、2電極コインセルにおいて特性決定した。セルを、乾燥アルゴンを充填したグローブボックスにおいて組み立てた。セルを、VMP3TMポテンシオスタットで制御し、開路電圧(OCV)での1時間の静置の後、異なる電流密度でLi/Liに対して0.01〜1.5Vで定電流モードにて充電/放電サイクル動作手順を行った。50mA/g〜1A/gの範囲の各電流密度について、10サイクルを記録した。
【0039】
実施例2
Liイオン電池のリサイクルおよびグラフェンの回収
a)グラフェン/LFP電極のリサイクル
図1において例示するように、グラフェンおよび電気化学的活物質(LFPcelgard)を含むLFP電極を、実施例1の方法によって作製し、ここでバインダーも集電体も使用せず、グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料をポリマーセパレーター上で濾過して、電極として作用する電極材料の層を形成させた。20:80のグラフェン/LiFePO比で使用されるグラフェンおよび電気化学的活物質(LiFePO/C)は、超音波浴において様々な成分を炭酸ジメチル(DMC)で洗浄することによって回収した。混合物を濾過し、DMCで再び洗浄して、過剰な塩を除去した。短い事前乾燥の後、LiFePO/Cおよびグラフェンから構成される得られた粉末を、500℃で30分間熱処理して、炭素コーティングを除去し、LiFePO粒子を酸化した。このステップの後で、グラフェンを、水/DMC(2:1の体積比)混合物中への分散によって、LiFePO/Cの酸化および分解生成物から分離した。有機相は、グラフェンの大部分を含有した。(最上部の)水相は橙色であり、これによって酸化された種(例えば、LiFe(POおよびFe)の存在が確認された。次いで、有機相を分離し、脱イオン水で2回洗浄して、酸化された生成物の残留する極微量を除去した。最終的に、DMC相を濾過し、リサイクルされたグラフェン粉末を約80%の収率で得た。
【0040】
b)グラフェン/LTO電極のリサイクル
電極材料中に存在するLTO活物質粒子は、炭素層で事前にコーティングしなかった。したがって、図2の画像において例示するように、熱処理は必要なかった。電気化学的活物質(LiTi12およびグラフェン)を、DMC中にこのように分散させ、濾過し、DMCで洗浄して、残ったリチウム塩を除去した。次いで、得られた粉末を、脱イオン水およびDMCに懸濁させた。より具体的には、LTO(水相中に存在する)を、グラフェン(有機相中に存在する)から分離した。有機相を脱イオン水で2回洗浄して、グラフェンに富んだ有機相、およびLTOを含有する水相を得た。相を分離し、グラフェン粉末を濾過によって単離した。
【0041】
実施例3
電極およびグラフェン材料の特性決定
a)熱重量分析
レギュラーのグラフェンおよびリサイクルされたグラフェンの粉末の熱安定性を、TGA(Q500TM)/Discovery MSTM機器を使用して、90mL/分の一定の空気流量下、30〜1000℃の温度および10℃/分の加熱速度で行った熱重量分析(TGA)によって評価した。
【0042】
LiFePO/Cおよびグラフェン粉末の熱重量曲線を図3に示す。いくつかの注目すべき差異が、300℃超にて2つの材料の間で観察される。第1に、グラフェンは約550℃まで安定なままであり、この温度で、燃焼の開始が観察された。他方、LiFePO/C粉末について概ね2.3%の重量増加が300〜400℃で観察された。この重量増加は、LiFe(POおよびFeを形成させるLiFePO/C酸化の結果であり、この酸化はまた炭素コーティングの分解を伴う可能性がある(Belharouakら、Electrochem. Commun.、2005年、7巻、983〜988頁;Hameletら、J. Mater. Chem.、2009年、19巻、3979〜3991頁)。したがって、500℃の温度を、第1の洗浄ステップの後に回収したグラフェンおよびLiFePO/C混合物の実施例2における熱処理のために選択した。次いで、LiFePO/C酸化生成物を、その後のステップにおいてグラフェンシートから分離した。約80%の収率が、様々な電池において使用されるグラフェンの重量、およびプロセスの終わりにおいて回収されたグラフェンの重量に基づいて得られた。
【0043】
リサイクルプロセスの効率を検証するために、リサイクルされたグラフェン粉末をまた、熱重量分析によって特性決定した。図4は、リサイクルの前(図4において「EG」と称される曲線)およびリサイクルの後(図4において「リサイクルされたEG」と称される曲線)の、グラフェン粉末についての熱重量曲線を示す。両方の曲線は同様であるようであり、観察される唯一の差異は、新鮮なグラフェンと比較してリサイクルされたグラフェン粉末の燃焼の開始が僅かに低い温度(約25℃低い)で起こっていることであるようである。この挙動は、グラフェンシートのサイズにおける差異によって説明することができた。実際に、さらなる熱および超音波処理は、より小さな粒子から構成されるリサイクルされたグラフェン粉末をもたらした可能性がある。
【0044】
b)X線回折分析
LFP電極からのグラフェンを本リサイクルプロセスによって回収し、薄い酸化物フィルムもまた得られた。酸化物フィルム、レギュラーのグラフェンフィルムおよびリサイクルされたグラフェンフィルムは、Cu Kα、α放射線(λ=1.5405Å、λ=1.5443Å)を用いるPhilips X’PertTM回折計θ−2θ、およびKβ放射線の存在を回避するためのモノクロメーターを使用してX線回折(XRD)によって特性決定した。両方のフィルムを、単結晶Si(400)プレート上に配置した(2θ=69において単一のピーク)。データは、X’CeleratorTM検出器で、0.02°の増加および増加毎の1.3sの積分時間を使用して5°〜60°で集めた。
【0045】
100%リサイクルされたグラフェン層が、Celgard(登録商標)セパレーター上で形成された。酸化物層もまた、酸化された種を含有する水溶液の濾過によって別のCelgard(登録商標)セパレーター上で調製した。これらのグラフェンおよび酸化物の層を、図5に示すようにX線回折(XRD)によって特性決定した。
【0046】
自立グラフェン層およびCelgard(登録商標)セパレーター単独のXRDパターンもまた、図5に提示する。図5aは、自立グラフェン層について概ね2θ=27°において非対称の鋭いピークを示すが、これはグラファイト材料の(002)面に割り当てた。さらに、グラフェン粉末について一般に観察される概ね2θ=55°における低強度ピークもまた存在する(Yuqinら、J. Power Sources、1997年、68巻、187〜190頁)。最終的に、約2θ=10〜15°における広範なピークは、グラファイト箔の電気化学的剥離の間に生じるグラファイト酸化物材料に割り当てられる(Vargasら、Electrochim. Acta、2015年、165巻、365〜371頁;Wangら、J. Phys. Chem. C、2008年、112巻、8192〜8195頁;Guoら、ACS nano、2009年、3巻、2653〜2659頁)。
【0047】
図5dにおいて、Celgard(登録商標)セパレーター単独のXRDパターンは、12°から27°の間に5つのピークを示す。酸化物フィルムについては、Celgard(登録商標)サポートの5つのピークに加えて、20°から27°の間にいくつかの小さなピークが観察され、図5cにおいて丸によって識別した。リサイクルされたグラフェン層(図5b)については、XRDパターンは、Celgard(登録商標)およびグラフェンの存在、ならびに酸化物の不存在と一致する。これらの結果は、本明細書に記載のようなリサイクルプロセスの有効性を裏付ける。
【0048】
c)走査型電子顕微鏡
異なる電極フィルムの形態学的研究は、Oxford Instruments X−Max 80TM EDS検出器を備えた走査型電子顕微鏡JEOL JSM−7600FTMを使用して行った。
【0049】
リサイクルされたグラフェン層はまた、走査型電子顕微鏡(SEM)によって特性決定した。SEM画像を、図6に異なる拡大率で提示する。比較目的で、新鮮なグラフェンを有する自立層のSEM画像を図10にさらに提示し、これは、数マイクロメートルのグラフェンシートのアセンブリーを示す。リサイクルされたグラフェンシートのテクスチャーおよびサイズは、図10に提示する自立グラフェンフィルムについて観察されるものと異なる。この結果はまた、リサイクルされたグラフェン粉末についての僅かにより低い燃焼温度を示した熱重量分析と一致する。この結果は、この効果がさらなる熱処理および超音波処理に起因するグラフェンシートのサイズの差異によるものであり得るという仮説を実証する。さらに、フィルム中の残留酸化物粒子の存在の明らかな証拠は存在しない。図6において丸で識別した小さく不規則な粒子が観察されたが、酸化物の存在に起因する可能性はなかった。
【0050】
酸化物層は走査型電子顕微鏡によって特性決定した。図7は、異なる拡大率でのSEM画像を提示する。その白黒バージョンでは示されていないが、図7aにおけるセパレーターの挿入画像は、濾過した粉末について橙色を示し、これはLiFePO/C材料が500℃での熱処理の間に完全に酸化されたことを示唆する。これらの観察は、図1に記載されている分離および脱イオン水による洗浄ステップが、酸化物粉末からのグラフェンの効率的な分離を可能にしたことを示す。
【0051】
実施例4
剥離したグラフェンおよびリサイクルされた剥離したグラフェンを含む電極の電気化学的性能
自立グラフェン電極の電気化学的性能を、対電極としてリチウム金属を有するコインセルにおいて評価した。レギュラーの(新鮮な)グラフェン粉末もまた使用して、自立グラフェンフィルムを調製し、これを、集電体も、バインダーも、炭素添加物も添加することなく、Liイオン電池における電極として使用した。自立グラフェン電極の充電および放電比容量を、図8に提示する。概ね250〜275mAh/gの放電容量が、50〜200mA/gの印加電流に対して得られた。容量は連続的に減少し、一方で、サイクル速度は増加した。高い速度において、放電容量は、安定化したようであり、85mAh/gの平均容量が1A/gにおいて得られた。
【0052】
図11は、50〜1000mA/gの範囲の異なる電流密度でサイクル動作する自立グラフェン電極についての充電および放電プロファイルを例示する。曲線は、典型的にはグラファイト電極について観察される電圧プロファイルを示す(Endoら、Carbon、2000年、38巻、183〜197頁)。低い電流密度(50〜200mA/g)で、曲線は、分極の有意な増加を伴わずに非常に類似していた。より高い抵抗および分極によって、サイクル速度の増加と共に、充電電圧は相当増加した。その結果、高い充電および放電電流において回収された比容量はより小さかった。
【0053】
本明細書に定義されているようなリサイクルプロセスによって得たリサイクルされたグラフェンを用いて調製した電極もまた、コインセルにおいて試験した。リサイクルされたグラフェンフィルム電極の充電および放電比容量を、図9に示す。電気化学的性能は、図8に提示する自立グラフェン電極について得られたものと同様であった。興味深いことに、第1の充電/放電サイクルの間の不可逆的容量は、おそらく、さらなる熱処理およびまた異なる粒子形態に起因して、リサイクルの後により小さかった(Zhengら、J. Electrochem. Soc.、1999年、146巻、4014〜4018頁)。さらに、200mA/g超の電流密度は、リサイクルの後で僅かに高い比容量をもたらした。この増強は、リサイクル後のより小さなグラフェンシートによって説明され得、したがって高い電流密度でのリチウム貯蔵を推進し得る。
【0054】
実施例1のプロセスによって調製するとき、Liイオン電池において使用するためのグラフェンを含む電極を、電極組成物を調製するために通常使用される集電体、バインダーおよび有害な溶媒を用いることなく生成した。グラファイト箔の電気化学的剥離によって得られるグラフェン粉末は、Liイオン電池電極の製造のための活物質(LiFePO/CまたはLiTi12)への添加物として使用した。
【0055】
次いで、グラフェンおよび電気化学的活物質を含む電極材料をリサイクルして、本明細書に記載されているプロセスによってグラフェンを回収した。この環境に優しく急速なプロセスの主要な利点の1つは、NMPおよび/または強酸/強塩基処理が遷移金属またはグラフェンを回収するのに必要とされないことである。炭酸エステル溶媒(例えば、炭酸ジメチル)および水のみを、洗浄および分離ステップに使用し得る。電気化学的活物質、またはその酸化されたバージョンを含有する水相が得られ、この水相は、電池の製造におけるさらなる使用のために、処理されて、電気化学的活物質を再生し得る。さらに、リサイクルされたグラフェン粉末を少なくとも80%の収率で単離した。また、この収率をさらに最適化することができた。続いて、回収されたグラフェンはまた、新しい電池を製造するために使用し得る。単純で低エネルギーのリサイクルプロセスは、使用済みリチウムまたはリチウムイオン電池中に存在するグラフェンを再利用するために開発された。
【0056】
電気化学的活物質が炭素でコーティングされていないとき、熱処理が回避され、プロセスコストを相当低減させる。最終的に、単純で環境に優しい本プロセスを用いて、グラフェン粉末および電極活物質は、回収され、最終的に複合電極の製造において再利用することができる。
【0057】
リサイクルされたグラフェン電極の性能はまた、電気化学的に剥離させたグラフェンを用いて作製されたフィルムの性能と少なくとも同様であることが実証された。これらの結果はまた、本プロセスを使用したグラフェンのリサイクルが、電極のグラフェンの大部分の回収、およびグラフェンの電気化学的特性の保存を可能とすることを示している。これは、Liイオン電池におけるグラフェンの使用を促進し得る。
【0058】
多数の改変を、本発明の範囲から逸脱することなしに上記の実施形態のいずれかに行うことができる。本明細書において参照される任意の参考文献、特許、または学術文献は、その全内容があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11