(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄電池の充電率を推定充電率として推定する蓄電池状態推定装置であって、前記蓄電池の充放電電流を検出電流として検出する電流検出部、前記蓄電池の端子間電圧を検出電圧として検出する電圧検出部、前記検出電流と前記検出電圧とに基づいてOCV推定法充電率を算出するOCV推定法SOC推定部、前記検出電流と前記OCV推定法充電率に基づいて、容量維持率と電流オフセットとを推定し、電流積算法パラメータとして出力する電流積算法パラメータ推定部、および前記検出電流と前記OCV推定法充電率と前記電流積算法パラメータに基づいて推定充電率を算出する補正SOC推定部を備え、前記補正SOC推定部が、前記検出電流と前記電流積算法パラメータに基づいて修正電流積算法充電率を算出する修正電流積算法SOC推定部、前記OCV推定法充電率から前記修正電流積算法充電率を減算した値を出力する減算部、前記減算部の出力する値から高周波成分を除去した値を出力するローパスフィルタ、および前記修正電流積算法充電率に前記ローパスフィルタの出力値を加算して推定充電率を算出する加算部を備え、前記蓄電池の充電率の変化を算出し、前記電流積算法パラメータの推定誤差と、前記電流積算法パラメータ推定部で推定しなかった電流積算法の誤差要因による修正電流積算法充電率の推定誤差を補正するように構成され、前記電流積算法パラメータ推定部が、前記検出電流に基づいて第1の係数ベクトルを生成する係数ベクトル生成部、前記係数ベクトル生成部の出力する前記第1の係数ベクトルに基づいて第2の係数ベクトルを出力する積分忘却フィルタ、前記OCV推定法SOC推定部の出力する前記OCV推定法充電率に基づいて参照信号を出力する微分積分忘却フィルタ、および前記積分忘却フィルタが出力する前記第2の係数ベクトルと前記微分積分忘却フィルタが出力する前記参照信号に基づいて前記電流積算法パラメータを出力する逐次推定部を備えたことを特徴とする蓄電池状態推定装置。
蓄電池の充電率を推定充電率として推定する蓄電池状態推定装置であって、前記蓄電池の充放電電流を検出電流として検出する電流検出部、前記蓄電池の端子間電圧を検出電圧として検出する電圧検出部、前記検出電流と前記検出電圧とに基づいてOCV推定法充電率を算出するOCV推定法SOC推定部、前記検出電流と前記OCV推定法充電率に基づいて、容量維持率と電流オフセットとを推定し、電流積算法パラメータとして出力する電流積算法パラメータ推定部、および前記検出電流と前記OCV推定法充電率と前記電流積算法パラメータに基づいて推定充電率を算出する補正SOC推定部を備え、前記補正SOC推定部が、推定充電率を算出する修正電流積算法SOC推定部、前記OCV推定法SOC推定部の出力する前記OCV推定法充電率から前記推定充電率を減算した値を出力する減算部、前記減算部の出力する値から高周波成分を除去した値を出力するローパスフィルタ、および前記ローパスフィルタの出力する値に正の実数ゲインを乗算した値を出力するゲイン乗算部を備え、前記修正電流積算法SOC推定部は、前記検出電流と前記電流積算法パラメータ推定部が出力する前記電流積算法パラメータと前記ゲイン乗算部が出力する値に基づいて前記推定充電率を算出するように構成され、前記電流積算法パラメータ推定部が、前記検出電流に基づいて第1の係数ベクトルを生成する係数ベクトル生成部、前記係数ベクトル生成部の出力する前記第1の係数ベクトルに基づいて第2の係数ベクトルを出力する積分忘却フィルタ、前記OCV推定法SOC推定部の出力する前記OCV推定法充電率に基づいて参照信号を出力する微分積分忘却フィルタ、および前記積分忘却フィルタが出力する前記第2の係数ベクトルと前記微分積分忘却フィルタが出力する前記参照信号に基づいて前記電流積算法パラメータを出力する逐次推定部を備えたことを特徴とする蓄電池状態推定装置。
蓄電池の充電率を推定充電率として推定する蓄電池状態推定装置であって、前記蓄電池の充放電電流を検出電流として検出する電流検出部、前記蓄電池の端子間電圧を検出電圧として検出する電圧検出部、前記検出電流と前記検出電圧とに基づいてOCV推定法充電率を算出するOCV推定法SOC推定部、前記検出電流と前記OCV推定法充電率に基づいて、容量維持率と電流オフセットとを推定し、電流積算法パラメータとして出力する電流積算法パラメータ推定部、および前記検出電流と前記OCV推定法充電率と前記電流積算法パラメータに基づいて推定充電率を算出する補正SOC推定部を備え、前記補正SOC推定部が、前記電流検出部が出力する前記検出電流と前記電流積算法パラメータ推定部が出力する前記電流積算法パラメータに基づいて修正電流積算法充電率を算出する修正電流積算法SOC推定部、前記修正電流積算法SOC推定部の前記修正電流積算法充電率を受けて推定充電率を出力する加算部と、前記OCV推定法SOC推定部の出力する前記OCV推定法充電率から、前記加算部が出力する前記推定充電率を減算した値を出力する減算部、前記減算部が出力する値から高周波成分を除去した値を出力するローパスフィルタ、および前記ローパスフィルタの出力する値に正の実数ゲインを乗算した値を出力するゲイン乗算部を備え、前記加算部は、前記修正電流積算法SOC推定部が出力する前記修正電流積算法充電率と前記ゲイン乗算部の出力する値とを加算した値を推定充電率として出力するように構成され、前記電流積算法パラメータ推定部が、前記検出電流に基づいて第1の係数ベクトルを生成する係数ベクトル生成部、前記係数ベクトル生成部の出力する前記第1の係数ベクトルに基づいて第2の係数ベクトルを出力する積分忘却フィルタ、前記OCV推定法SOC推定部の出力する前記OCV推定法充電率に基づいて参照信号を出力する微分積分忘却フィルタ、および前記積分忘却フィルタが出力する前記第2の係数ベクトルと前記微分積分忘却フィルタが出力する前記参照信号に基づいて前記電流積算法パラメータを出力する逐次推定部を備えたことを特徴とする蓄電池状態推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明による電池状態推定装置を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。ここで、この発明による蓄電池状態推定装置は、運用中の電池の内部状態を推定するものである。
また、説明のなかで登場する「微分」や「積分」という語については、それぞれ「差分」「積算」の意味においても用いることとする。
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1における蓄電池状態推定装置100の構成図である。なお、
図1には蓄電池状態推定装置100に接続される蓄電池101も併せて図示している。
【0012】
ここで、蓄電池状態推定装置100について説明するにあたり、蓄電池101として、リチウムイオン電池を考えることとする。ただし、蓄電池101は、充放電可能な蓄電システム一般を含み、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池または電気二重層キャパシタなどであってもよい。また、蓄電池101として、セルを考えることとする。ただし、蓄電池101は、複数セルの直列接続または並列接続、あるいはその両方の組合せによって構成されるモジュールであってもよい。
【0013】
図1において、蓄電池状態推定装置100は、電流検出部102、電圧検出部103、OCV推定法SOC推定部104、電流積算法パラメータ推定部105、補正SOC推定部106を備えて構成される。
電流検出部102は、電流検出処理を実行する。すなわち、電流検出部102は、蓄電池101の充放電電流を検出電流I[A]として検出する。
電圧検出部103は、電圧検出処理を実行する。すなわち、電圧検出部103は、蓄電池101の充放電時の端子関電圧を、検出電圧V[V]として検出する。
【0014】
OCV推定法SOC推定部104は、OCV推定法によるSOC推定処理を実行する。すなわち、電流検出部102が出力する検出電流Iと、電圧検出部103が出力する検出電圧Vに基づいて、OCV推定法充電率SOCvを算出する。
ここでいうOCV推定法とは、電流と電圧と電池モデルに基づいてOCVを推定し、電池のOCVとSOCの対応関係を利用してSOCを推定するという公知の技術である。
なお、OCVを推定する過程で、OCV推定法パラメータを推定する過程を含んでいてもよい。OCV推定法パラメータとは、OCV推定法で用いられるパラメータのことを指す。例えば、蓄電池モデルとして等価回路モデルを用いた場合の回路パラメータや、蓄電池モデルとして詳細な物理化学モデルを用いた場合の物理化学パラメータや、SOCとOCVの対応関係およびそのヒステリシス特性や温度依存性、劣化依存性を表わすパラメータや、電流センサや電圧センサの計測誤差パラメータ(たとえばオフセット誤差)、などを指す。典型的には、蓄電池等価回路モデルの回路パラメータである抵抗値やコンデンサ容量値などである。
【0015】
また、OCV推定法パラメータの推定や、OCV自体の推定において、公知の推定技術が用いられていても良い。たとえば、逐次最小二乗法(RLS:Recursive Least Squares)や逐次全体最小二乗法(RTLS:Recursive Total Least Squares)、逐次部分最小二乗法(RPLS:Recursive Partial Least Squares)、カルマンフィルタ(KF:Kalman Filtering)など、様々な公知の推定技術を利用することができる。
【0016】
電流積算法パラメータ推定部105は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvに基づいて電流積算法パラメータを推定する。
電流積算法パラメータ推定部105においては、OCV推定法充電率SOCvあるいはその値をフィルタ処理した値を参照信号として、推定技術を用いて電流積算法パラメータを推定する。
【0017】
電流積算法パラメータ推定部105の具体的な構成例について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、この発明の実施の形態1における電流積算法パラメータ推定部105の構成図である。
図2に示すように、電流積算法パラメータ推定部105は、係数ベクトル生成部201と、積分忘却フィルタ202と、微分積分忘却フィルタ203と、逐次推定部204を有している。
【0018】
係数ベクトル生成部201は、電流検出部102が出力する検出電流Iに基づき、式(1)で表わされる係数ベクトルφ(第1の係数ベクトル)を算出する。
【数1】
ここで、tsはサンプリング周期、FCCnは蓄電池公称容量である。FCCnは、定格容量や蓄電池101の新品時計測容量などであってもよい。
なお、kは、サンプル時間であり、k=0からの経過時間をtkとしたとき、tk=ktsの関係が成り立つ。
【0019】
積分忘却フィルタ202は、係数ベクトル生成部201が出力する係数ベクトルφ(第1の係数ベクトル)に基づき、係数ベクトルφ(第1の係数ベクトル)に対し忘却積分(忘却係数付きの積分)操作を加えることで係数ベクトルψ(第2の係数ベクトル)を算出する。すなわち、式(2)の更新式に従って係数ベクトルψ(第2の係数ベクトル)を算出する。
【数2】
ここで、μは忘却係数であり、0<μ≦1を満たす。
微分積分忘却フィルタ203は、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvに基づき、SOCvの微分値に対し忘却積分操作を加えることで参照信号zを算出する。すなわち、式(3)の更新式に従って参照信号zを算出する。
【数3】
逐次推定部204は、ある逐次推定手法に基づき、容量維持率SOHと電流オフセットIoffを推定し、電流積算法パラメータとして出力する。
【0020】
逐次推定手法としては、典型的には、ψを係数ベクトル、zを参照信号として逐次最小二乗法を用いる。すなわち、式(4)のように表される。
【数4】
ここで、式(4)における推定パラメータ数をNとしたとき、θはN×1推定値ベクトル、ψはN×1係数ベクトル、PはN×N共分散行列、εは誤差信号、λ(0<λ≦1)は忘却係数である。
【0021】
ただし、推定値ベクトルθは、電流積算法パラメータを推定するため、以下のように定める。
【数5】
次に、電流積算法パラメータ推定部105による電流積算法パラメータの推定の原理的な部分について、数式を交えて説明する。
まず、一般に、充電率SOCは、検出電流Iを用いると以下のように表わすことができる。
【数6】
【0022】
式(6)においては、検出電流Iに電流オフセットIoffが含まれていることを考慮して、検出電流Iから電流オフセットIoffを差し引いた値を積算するというモデルとなっており、修正された電流積算法(修正電流積算法)といえる。充電率の変化を表わす式(6)の右辺第二項において、容量維持率SOHと電流オフセットIoffの精確な値が分かっていれば、通常の電流積算法よりも高精度なSOC推定が可能となる。
【0023】
一方、OCV推定法による推定法充電率SOCvは、おもに電圧情報を利用して、蓄電池のSOCとOCVの対応関係から毎時刻のSOCを推定する手法であることから、原理的に電流オフセット誤差をほとんど蓄積せず、かつ、容量維持率SOHを推定に利用しないためSOH誤差の影響を受けることもない。ゆえに、OCV推定法充電率SOCvは、長時間の時間平均では真値に近い値をとる。
【0024】
そこで、OCV推定法充電率SOCvを利用して、電流積算法パラメータ推定値ベクトルである式(5)の容量維持率SOHと電流オフセットIoffを推定することを考える。時刻k−1の容量維持率推定値SOH(k−1)および電流オフセット推定値Ioff(k−1)を用い、式(6)に基づき式変形すると、次の式(7)に示すようになる。
【数7】
そこで、左辺の参照信号ΔSOC(k)としてΔSOCv(k)(:=SOCv(k)―SOCv(k−1))を用い、右辺のφとして式(1)を用い、逐次最小二乗法を適用すれば、原理的には電流積算法パラメータ推定値ベクトルθを推定することができる。
【0025】
しかしながら、現実的には、ΔSOCvは高周波誤差が大きいため、安定した推定値を得ることが難しい場合が多い。もともと、OCV推定法充電率SOCvはその特性上、電圧計測誤差や蓄電池モデルの誤差による高周波誤差が大きいうえ、このようなOCV推定法充電率SOCvをさらに微分したΔSOCvを用いるとなると、高周波誤差はさらに大きなものとなり、SN比の問題でパラメータ推定が困難となってしまうからである。
【0026】
そこで、ΔSOCvおよび係数ベクトルφ(第1の係数ベクトル)に対し忘却積分演算を加えることで、高周波誤差を除去する。すなわち、式(2)および式(3)の計算を行なう。なお、ΔSOCvを積分忘却フィルタに通した出力値は、SOCvを微分積分忘却フィルタに通した出力値に等しい。式(2)および式(3)の忘却係数μの値は、高周波誤差の大きさや推定パラメータの変動の速さ、逐次最小二乗法の忘却係数の値などに応じて定めればよい。忘却積分とは、過去のデータを徐々に忘却しながら値を積分していくような操作であり、μの値が大きいほど忘却速度は遅くなり、μ=1のとき通常の積分器となる。
【0027】
最後に、算出したψを係数ベクトルとし、zを参照信号として、逐次最小二乗法を適用する。
逐次最小二乗法を適用する前に、積分忘却フィルタによる処理を加えることで、積分の効果により高周波誤差を低減してSN比を改善しつつ、忘却係数の効果により推定パラメータの変動にも対応することが可能となる。また、忘却係数の効果により、係数ベクトルの各要素の絶対値が時間の経過とともに際限なく増大するという積分操作よって生じる問題を回避している点にも注意する。
【0028】
以上の原理に従う演算を実現する構成とすることで、電流積算法パラメータ推定部105は、電流積算法パラメータを安定的かつ高精度に推定することができる。
補正SOC推定部106は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvと、電流積算法パラメータ推定部105が出力する電流積算法パラメータに基づいて、推定充電率SOCestを推定し、出力する。
【0029】
補正SOC推定部においては、電流積算法パラメータ推定部105で推定した電流積算法パラメータを利用した修正電流積算法を基本としつつ、電流積算法パラメータ推定部105で推定しなかった電流積算法の誤差要因による修正電流積算法充電率推定誤差を、OCV推定法充電率SOCvを利用して取り除くことで、修正電流積算法充電率SOCiおよびOCV推定法充電率SOCvよりも高精度な推定充電率SOCestを算出する。
【0030】
補正SOC推定部106の具体的な構成例について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、この発明の実施の形態1における電流積算法パラメータ推定部105の構成図である。
図3において、補正SOC推定部106は、修正電流積算法SOC推定部301と、減算部302と、ローパスフィルタ303と、加算部304とを有する。
修正電流積算法SOC推定部301は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、電流積算法パラメータ推定部105が出力する電流積算法パラメータに基づき、電流積算法により修正電流積算法充電率SOCiを算出する。ただし、修正電流積算法充電率SOCiの算出においては、式(6)の更新則を利用する。なお、修正電流積算法充電率SOCiの初期値は、予めマップデータとして保存しておいたSOCとOCVの対応関係を利用して、推定開始時の検出電圧VをSOCに変換することで算出する。あるいは、前回の推定充電率SOCestの値を利用しても良い。
【0031】
減算部302は、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvから、修正電流積算法SOC推定部301が出力する修正電流積算法充電率SOCiを、減算した値を出力する。
ローパスフィルタ303は、減算部302が出力した値をローパスフィルタに通した値を出力する。
【0032】
ローパスフィルタ303としては、入力値をu、出力値をyとしたとき、たとえば、以下の式で表わされるものを用いる。
【数8】
ここで、w1とw2は忘却係数であり、0<w1<1、w2=1−w1とすれば指数移動平均フィルタ、0<w1=w2<1とすれば忘却積分器、w1=w2=1とすれば通常の積分器となる。忘却係数の性質として、w1を大きくするほど、yに含まれる過去のuの値の情報を忘れにくくなる。本実施の形態1においては、典型的には、ローパスフィルタとして指数移動平均フィルタを用いる。なお、w1やw2の値は時変パラメータとして設計してもよい。
【0033】
加算部304は、修正電流積算法SOC推定部301が出力する修正電流積算法充電率SOCiと、ローパスフィルタ303が出力する値とを加算して、推定充電率SOCestを算出する。
減算部302とローパスフィルタ303と加算部304との効果により、算出された推定充電率SOCestは、修正電流積算法充電率SOCiよりも、さらに高精度な充電率推定値となる。
【0034】
修正電流積算法充電率SOCiは、初期充電率推定誤差や、検出電流Iに含まれる電流オフセット以外の高周波誤差や、推定した電流積算法パラメータに含まれるわずかな推定誤差などの蓄積による定数に近い低周波誤差を含んでいる。そこで、時間平均が真値に近いOCV推定法充電率SOCvを参照信号として、この軌道に修正電流積算法充電率SOCiの軌道を近づけることで、推定充電率SOCestを算出すれば、SOCestはSOCiよりも高精度なものとなる。
ただし、OCV推定法充電率SOCvは、高周波成分による誤差を含むため、SOCvとSOCiの差分値をローパスフィルタに通すことで、高周波成分を低減させたうえで、その値をSOCiに加算する。減算部302とローパスフィルタ303と加算部304により、この操作が実現される。
【0035】
次に、本実施の形態1における蓄電池状態推定装置100が蓄電池101の充電率を推定する場合に実行する一連の動作について、
図4から
図6のフロー図を参照しながら説明する。
図4は、本実施の形態1における蓄電池状態推定装置100が実行する一連の動作を示すフロー図である。
図5は、本実施の形態1における電流積算法パラメータ推定部105が実行する一連の動作を示すフロー図である。
図6は、本実施の形態1における補正SOC推定部106が実行する一連の動作を示すフロー図である。
【0036】
なお、
図4に示すステップS102からステップS106までの一連の演算処理が、蓄電池状態推定装置100の一周期分の演算処理となっており、この演算処理がサンプリング周期tsごとに繰り返される。
また、
図5に示すステップS201からステップS204までの一連の演算処理は、
図4に示すステップS105で実行される演算処理である。さらに、
図6に示すステップS301からステップS304までの一連の演算処理は、
図4に示すステップS106で実行される演算処理である。
【0037】
ここで、
図4から
図6のそれぞれのフロー図の各ステップの番号は、蓄電池状態推定装置100の各構成部に対応している。すなわち、前述したように、蓄電池状態推定装置100の各構成部は、
図4から
図6のそれぞれのフロー図の各ステップの番号と同じ番号のステップを実行することとなる。
図4に示すように、蓄電池状態推定装置100は、サンプリング周期tsごとに、ステップS102からステップS106までの一連の演算処理を実行する。
また、蓄電池状態推定装置100は、ステップS105では、
図5に示すステップS201からステップS204までの一連の演算処理を実行する。さらに、蓄電池状態推定装置100は、ステップS106では、
図6に示すステップS301からステップS304までの一連の演算処理を実行する。
【0038】
なお、
図4から
図6のそれぞれのフロー図の各ステップについて、蓄電池状態推定装置100によって実行される順序は、各図に図示された順序に限定されず、各ステップの依存関係を壊さない限り、実行順序の入れ替えは許容される。
以上、本実施の形態1によれば、電流積算法パラメータ推定部105の効果により、容量維持率SOHを電流オフセットIoffの誤差と切り分けて推定することを可能とし、補正SOC推定部106の効果により、電流積算法の誤差要因である容量維持率SOHと電流オフセットIoffの誤差と初期SOC誤差の全てを補正した高精度な充電率の推定が可能となる。これは、この発明の蓄電池状態推定装置に共通する特徴である。
【0039】
さらに、
図1の構成が全てフィードフォワード構成となっている。すなわち、下流の信号を上流にフィードバックすることの無い構成であるため、下流の推定値の乱れが上流に波及することが無いという利点を有する。さらに、このフィードフォワード構成により、従来技術であるOCV推定法の構成を変えることなく、下流に電流積算法パラメータ推定部105と補正SOC推定部106を追加するだけで本実施の形態1を実現できるという意味で、実装が容易であるという利点を有する。これは、本実施の形態1および後述する実施の形態2、3に共通する特徴である。
【0040】
本実施の形態1の特徴は、補正SOC推定部106において、その内部構成も全てフィードフォワード構成となっている点である。これにより、フィードバック構成の場合のように推定値の振動現象や発散現象が発生する恐れがない。さらに、減算部302、ローパスフィルタ303、加算部304によるフィードフォワード補正は、後述する実施の形態2、3のようなゲイン加算部を持たないため、ゲインチューニングが不要であるという利点がある。
【0041】
実施の形態2.
この発明に係る実施の形態2の蓄電池状態推定装置について説明する。実施の形態2の基本構成は、実施の形態1と同様に
図1で表わされ、補正SOC推定部106の内部構成が
図7に示すように相違している。その他の構成は、実施の形態1において説明したものと同様である。
補正SOC推定部106の具体的な構成例について、
図7を参照しながら説明する。
【0042】
図7において、補正SOC推定部106は、修正電流積算法SOC推定部401と、減算部402と、ローパスフィルタ403と、ゲイン乗算部404とを有する。
修正電流積算法SOC推定部401は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、電流積算法パラメータ推定部105が出力する電流積算法パラメータと、後述するゲイン乗算部404が出力する値Lに基づき、推定充電率SOCestを算出する。
【0043】
ただし、推定充電率SOCestの算出においては、以下の更新則を利用する。
【数9】
減算部402は、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvから、修正電流積算法SOC推定部401が出力する推定充電率SOCestを、減算した値を出力する。
ローパスフィルタ403は、減算部402が出力する値にローパスフィルタを通した値を出力する。
【0044】
ローパスフィルタ403としては、たとえば、式(8)で表わされるものを用いればよい。
ゲイン乗算部404は、ローパスフィルタ403が出力した値に正の実数のゲインKを乗算した値Lを出力する。
【0045】
次に、本実施の形態2における蓄電池状態推定装置100が蓄電池101の充電率を推定する場合に実行する一連の動作について、
図4、
図5、
図8のフロー図を参照しながら説明する。ただし、
図4、
図5の動作は実施の形態1と同じであるため省略し、以下では実施の形態1との相違点のみ説明する。
図8は、本実施の形態2における補正SOC推定部106が実行する一連の動作を示すフロー図である。
図8に示すステップS401からステップS404までの一連の演算処理は、
図4に示すステップS106で実行される演算処理である。
【0046】
ここで、
図4から
図6のそれぞれのフロー図の各ステップの番号は、蓄電池状態推定装置100の各構成部に対応している。すなわち、前述したように、蓄電池状態推定装置100の各構成部は、
図4、
図5、
図8のそれぞれのフロー図の各ステップの番号と同じ番号のステップを実行することとなる。
蓄電池状態推定装置100は、ステップS106では、
図8に示すステップS401からステップS404までの一連の演算処理を実行する。
【0047】
なお、
図4、
図5、
図8のそれぞれのフロー図の各ステップについて、蓄電池状態推定装置100によって実行される順序は、各図に図示された順序に限定されず、各ステップの依存関係を壊さない限り、実行順序の入れ替えは許容される。
以上、本実施の形態2によれば、修正電流積算法の推定充電率SOCestの誤差補正を、フィードバック構成により実現することが可能である。
【0048】
実施の形態3.
この発明に係る実施の形態3の蓄電池状態推定装置について説明する。実施の形態3の構成図は、実施の形態1および実施の形態2と同様に
図1で表わされ、補正SOC推定部106の内部構成にのみ相違点が存在するため、その他の構成に関する説明は省略する。
補正SOC推定部106の具体的な構成例について、
図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、補正SOC推定部106は、修正電流積算法SOC推定部501と、加算部502と、減算部503と、ローパスフィルタ504と、ゲイン乗算部505とを有する。
【0049】
修正電流積算法SOC推定部501は、修正電流積算法SOC推定部301と同様の処理により、修正電流積算法充電率SOCiを出力する。
加算部502は、修正電流積算法SOC推定部501が出力する修正電流積算法充電率SOCiと、後述するゲイン乗算部505が出力する値Lとを加算して推定充電率SOCestを出力する。
減算部503は、OCV推定法SOC推定部104が出力するOCV推定法充電率SOCvから、加算部502が出力する推定充電率SOCestを減算した値を出力する。
ローパスフィルタ504は、減算部503が出力した値をローパスフィルタに通した値を出力する。
【0050】
ローパスフィルタ504としては、たとえば、式(8)で表わされるものを用いればよい。
ゲイン乗算部505は、ローパスフィルタ504が出力する値に正の実数のゲインKを乗算した値Lを出力する。
次に、本実施の形態3における蓄電池状態推定装置100が蓄電池101の充電率を推定する場合に実行する一連の動作について、
図4、
図5、
図10のフロー図を参照しながら説明する。ただし、
図4、
図5の動作は実施の形態1および実施の形態2と同じであるため省略し、以下では実施の形態1および実施の形態2との相違点のみ説明する。
図10は、本実施の形態3における補正SOC推定部106が実行する一連の動作を示すフロー図である。
【0051】
図10に示すステップS501からステップS505までの一連の演算処理は、
図4に示すステップS106で実行される演算処理である。
ここで、
図4、
図5、
図10のそれぞれのフロー図の各ステップの番号は、蓄電池状態推定装置100の各構成部に対応している。すなわち、前述したように、蓄電池状態推定装置100の各構成部は、
図4、
図5、
図10のそれぞれのフロー図の各ステップの番号と同じ番号のステップを実行することとなる。
蓄電池状態推定装置100は、ステップS106では、
図10に示すステップS501からステップS505までの一連の演算処理を実行する。
【0052】
なお、
図4、
図5、
図10のそれぞれのフロー図の各ステップについて、蓄電池状態推定装置100によって実行される順序は、各図に図示された順序に限定されず、各ステップの依存関係を壊さない限り、実行順序の入れ替えは許容される。
以上、本実施の形態3によれば、修正電流積算法SOC推定部における操作を変更することなく、推定法充電率SOCvの誤差補正を、部分的なフィードバック構成により実現することが可能である。
【0053】
実施の形態4
この発明に係る実施の形態4の蓄電池状態推定装置について説明する。実施の形態4の構成図は、
図11で表わされる。
図11において、蓄電池状態推定装置100は、電流検出部102、電圧検出部103、電流積算法パラメータ推定部105、補正SOC推定部106、OCV推定法SOC推定部601、OCV推定法パラメータ推定部602、SOC−OCV変換部603、を備えて構成される。
図11は、
図1と共通の構成部を含むため、その部分に関する説明は省略する。
OCV推定法SOC推定部601は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、電圧検出部103が出力する検出電圧Vと、後述するOCV推定法パラメータ推定部が出力するOCV推定法パラメータに基づいて、OCV推定法充電率SOCvを出力する。
【0054】
OCV推定法パラメータ推定部602は、電流検出部102が出力する検出電流Iと、電圧検出部103が出力する検出電圧Vと、SOC−OCV変換部603が出力する推定開回路電圧OCVestに基づいて、OCV推定法パラメータを算出する。
OCV推定法パラメータ推定部602においては、OCV推定法パラメータの算出に逐次最小二乗法など公知の技術を利用することが可能である。
【0055】
推定開回路電圧OCVestを利用せずに電流と電圧からOCV推定法パラメータを推定する場合、OCV推定法パラメータだけでなく開回路電圧OCVも推定する必要があるが、推定開回路電圧OCVestを利用する場合、開回路電圧OCVを既知と考えて蓄電池過電圧からOCV推定法パラメータを推定すればよいため、推定パラメータを削減することができるうえ、推定値がより安定的かつ/または高精度なものとなる可能性があるという利点を有する。
【0056】
SOC−OCV変換部603は、補正SOC推定部106が出力する推定充電率SOCestを推定開回路電圧OCVestに変換する。充電率から開回路電圧への変換においては、予め測定しておいた両者の対応関係をマップデータとして利用すればよい。
次に、本実施の形態4における蓄電池状態推定装置100が蓄電池101の充電率を推定する場合に実行する一連の動作について、
図5から
図12のフロー図を参照しながら説明する。
図12は、本実施の形態1における蓄電池状態推定装置100が実行する一連の動作を示すフロー図である。
【0057】
なお、
図12に示すステップS102からステップS603までの一連の演算処理が、蓄電池状態推定装置100の一周期分の演算処理となっており、この演算処理がサンプリング周期tsごとに繰り返される。
また、ステップS105においては、既に説明した
図5のフロー図に従って演算処理が実行される。ステップS106においては、既に説明した
図6、
図8または
図10のフロー図に従って演算処理が実行される。
【0058】
ここで、
図5から
図12のそれぞれのフロー図の各ステップの番号は、蓄電池状態推定装置100の各構成部に対応している。すなわち、前述したように、蓄電池状態推定装置100の各構成部は、
図5から
図12のそれぞれのフロー図の各ステップの番号と同じ番号のステップを実行することとなる。
図12に示すように、蓄電池状態推定装置100は、サンプリング周期tsごとに、ステップS102からステップS603までの一連の演算処理を実行する。
また、蓄電池状態推定装置100は、ステップS105では、
図5に示すステップS201からステップS204までの一連の演算処理を実行する。さらに、蓄電池状態推定装置100は、ステップS106では、
図6に示すステップS301からステップS304または
図8に示すステップS401からステップS404または
図10に示すステップS501からステップS505までの一連の演算処理を実行する。
【0059】
なお、
図5から
図12のそれぞれのフロー図の各ステップについて、蓄電池状態推定装置100によって実行される順序は、各図に図示された順序に限定されず、各ステップの依存関係を壊さない限り、実行順序の入れ替えは許容される。
以上、本実施の形態4によれば、推定開回路電圧OCVestを利用してOCV推定法パラメータを推定し、OCV推定法パラメータをOCV推定法SOC推定部で利用してSOCvを算出するため、OCVestを利用しない場合と比較して、より安定的かつ/または高精度にOCV推定法パラメータを推定することができる可能性があり、これにより、その他の推定値もより安定的かつ/または高精度に推定することができる可能性がある。
【0060】
なお、
図1、
図2、
図3、
図7、
図9および
図11に示した機能ブロックのそれぞれは、
図13に示すハードウェアによって実現される。すなわち、プロセッサ700と、プログラムおよびデータを蓄積するメモリ701と、センサなどの入出力デバイス702とをデータバス703によって接続し、プロセッサ700による制御によって、データの処理とデータの伝送を行っている。
また、この発明は、その発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素を適宜、変更または省略することが可能である。