特許第6983230号(P6983230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983230
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】最適化されたRF入力部
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/02 20060101AFI20211206BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H01P5/02 603D
   H01P3/00 100
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-516284(P2019-516284)
(86)(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公表番号】特表2019-517761(P2019-517761A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】GB2017051623
(87)【国際公開番号】WO2017212237
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年6月5日
(31)【優先権主張番号】1609816.2
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505318606
【氏名又は名称】ルメンタム・テクノロジー・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フラヴィオ・デロルト
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・バルサモ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ボナッツォーリ
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−233044(JP,A)
【文献】 特開2008−191614(JP,A)
【文献】 特開平10−142567(JP,A)
【文献】 TINUS STANDER,BROADBAND EFFECT OF LINEAR TAPERED TRANSITIONS BETWEEN PROBE PADS AND GCPW SIGNAL LINES ON-CHIP,2017 IEEE RADIO FREQUENCY INTEGRATED CIRCUITS SYMPOSIUM (RFIC),米国,IEEE,2017年,pp. 136-139,Authorized licensed use limited to: Japan Patent Office. Downloaded on May 10,2021 at 00:07:51 UTC from IEEE Xplore. Restrictions apply.,RMO2B-3, Conference Paper
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/035
H01P 1/00− 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップと外部伝送線とを備える装置であって、前記チップが、
第一インピーダンスを有するボンディングパッド領域であって、前記外部伝送線に接続されたボンディングパッド領域と、
前記ボンディングパッド領域から離れるように延伸する伝送部であって、第二インピーダンスを有する伝送部とを備え、
前記ボンディングパッド領域が前記ボンディングパッド領域と前記外部伝送線との間の電場整合と電場閉じ込めとを可能にするように構成されていて、
前記外部伝送線が前記第二インピーダンスに等しいインピーダンスを有し、
前記第二インピーダンスが前記第一インピーダンスに等しくない、装置
【請求項2】
前記伝送部が、信号電極と、接地電極と、前記信号電極と前記接地電極との間の第一非導電性ギャップとを備え、前記ボンディングパッド領域が、前記信号電極に電気的に接続された信号パッドと、前記接地電極に電気的に接続された接地パッドと、前記信号パッドと前記接地パッドとの間の第二非導電性ギャップとを備え、前記第二非導電性ギャップの幅が前記信号パッド又は前記接地パッドのいずれかの幅よりも小さい、請求項1に記載の装置
【請求項3】
チップと外部伝送線とを備える装置であって、前記チップが、
信号パッドと接地パッドとを備えるボンディングパッド領域であって、第一インピーダンスを有し、前記外部伝送線に接続されたボンディングパッド領域と、
前記ボンディングパッド領域から離れるように延伸する伝送部であって、前記信号パッドに電気的に接続された信号電極と、前記接地パッドに電気的に接続された接地電極とを備え、第二インピーダンスを有する伝送部とを備え、
前記伝送部が前記信号電極と前記接地電極との間の第一非導電性ギャップを備え、前記ボンディングパッド領域が前記信号パッドと前記接地パッドとの間の第二非導電性ギャップを備え、
前記第二非導電性ギャップの幅が前記信号パッド又は前記接地パッドのいずれかの幅よりも小さく、
前記外部伝送線のインピーダンスが前記第二インピーダンスに等しく、
前記第二インピーダンスが前記第一インピーダンスに等しくない、装置
【請求項4】
前記第二非導電性ギャップの幅が前記第一非導電性ギャップの幅に等しい、請求項2又は3に記載の装置
【請求項5】
前記第二非導電性ギャップの幅が前記信号パッド又は前記接地パッドの幅の50%未満である、請求項2又は3に記載の装置
【請求項6】
前記第二非導電性ギャップの幅が80マイクロメートル以下、好ましくは50マイクロメートル以下、より好ましくは25マイクロメートル以下である、請求項2から5のいずれか一項に記載の装置
【請求項7】
前記伝送部が前記信号電極の両側に等間隔で位置する二つの接地電極を備え、前記ボンディングパッド領域が前記信号パッドの両側に等間隔で位置する二つの接地パッドを備え、各接地パッドが対応する接地電極に電気的に接続されている、請求項2から6のいずれか一項に記載の装置
【請求項8】
前記伝送部が無線周波数信号を処理するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置
【請求項9】
前記第一インピーダンスが前記第二インピーダンスよりも小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置
【請求項10】
前記ボンディングパッド領域の長さが略100マイクロメートル以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置
【請求項11】
前記チップがLiNbOチップである、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置を備える変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部RF(無線周波数)伝送線に接続するチップの入出力部に関する。特に、本発明はRF伝送線と基板との間のボンディング部に関する。
【背景技術】
【0002】
変調器等の多くのRF部品において、外部伝送線をチップに接続する必要がある。これは、典型的には、外部伝送線に対する電気接続用のチップ上の一組のボンディングパッドを用いて行われる。接続はボンディングワイヤを用いて得ることができるものであるが、例えばフリップチップ等の他の方法を用いてもよい。典型的には、チップ上の伝送部は、その接続部から離れて、チップ上の電気部品に向かって延伸し得る。ボンディングパッドを備えるチップの縁領域の例示的な上面図が図1に示されている。RF回路は、本体領域101(チップの縁から離れた伝送用)と、ボンディングパッド領域102と、ボンディングパッド領域102と本体領域101との間の移行部のテーパ103とを備える。本体領域はそれ自体が効果的に信号電力112とその両側の接地電極111とを備える平坦な伝送線である。ボンディングパッド領域102は外部伝送線104(図1に模式的に示す)に接続する。外部伝送線は同軸や平坦なものであり得る。ボンディングパッド領域のパッド121、122は本体領域の電極111、112よりも幅広であり、外部伝送線への接続を確実にする。接続は、チップの縁領域から離れて行われてもよい。
【0003】
本体部と実質的に同じインピーダンスを維持するためには(ボンディングパッドを伝播する信号の損失を減らすためには)、チップの信号パッド122と接地パッド121との間のギャップを、本体部の信号電極112と接地電極111との間の対応するギャップよりも大きくして、ボンディング領域用の幅広の断面を生じさせる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波(例えば、>40GHz)では、ボンディング領域の幅広のギャップが望ましくない高周波ロールオフを生じさせることが分かった。高周波では、大きなギャップに起因する幅広の電場分布が、電磁放射による顕著な損失をもたらす。こうした損失は、ボンディング領域におけるインピーダンス不整合に関連する損失よりも驚くべき程に大きいことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一態様によると、ボンディングパッド領域と伝送部とを備えるチップが提供される。ボンディングパッド領域は、第一インピーダンスを有し、外部伝送線に電気接続するように構成される。伝送部は、ボンディングパッド領域から離れるように延伸し、第二インピーダンスを有する。ボンディングパッド領域は、ボンディングパッド領域と外部伝送線との間の電場整合と電場閉じ込めとを可能にするように構成され、第二インピーダンスは第一インピーダンスに等しくない。
【0006】
伝送部は、信号電極と、接地電極と、信号電極と接地電極との間の第一非導電性ギャップとを備え得て、ボンディングパッド領域は、信号電極に電気的に接続された信号パッドと、接地電極に電気的に接続された接地パッドと、信号パッドと接地パッドとの間の第二非導電性ギャップとを備え得て、第二非導電性ギャップの幅は信号パッド又は接地パッドのいずれかの幅よりも小さい。
【0007】
更なる態様によると、ボンディングパッド領域と伝送部とを備えるチップが提供される。ボンディングパッド領域は、信号パッドと接地パッドとを備え、第一インピーダンスを有し、外部伝送線に電気接続するように構成される。伝送部はボンディングパッド領域から離れるように延伸し、信号パッドに電気的に接続された信号電極と、接地パッドに電気的に接続された接地電極とを備える。伝送部は第二インピーダンスを有する。伝送部は信号電極と接地電極との間の第一非導電性ギャップを備え、ボンディングパッド領域は信号パッドと接地パッドとの間の第二非導電性ギャップを備える。第二非導電性ギャップの幅は信号パッド又は接地パッドのいずれかの幅よりも小さく、第二インピーダンスは第一インピーダンスに等しくない。
【0008】
更なる実施形態は請求項2以降に与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来技術に係るボンディングパッドを備えるチップの縁領域の模式的上面図を示す。
図2】一実施形態に係るボンディングパッドを備えるチップの縁領域の模式的上面図を示す。
図3図1及び図2に係るボンディング部の性能の比較を示す。
図4】一実施形態に係るボンディングパッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
高周波においては、チップとボンディング領域と伝送線とにわたって一定のインピーダンスを維持するという「常識的な」手法が、実際には、放射と、チップの電場の閉じ込めの欠如とに起因して高い損失をもたらすことがわかった。
【0011】
その代わりに、「電場整合」による放射損失を最小するようにボンディング領域を構築することができ、つまり、チップと外部伝送線との間のインターフェースにおける電場の閉じ込めを改善するようにボンディング領域を構築することができる。これは、典型的には、インピーダンスの不整合をもたらすが、放射損失の減少がインピーダンス不整合からの損失を上回る。線とチップとのインピーダンスを確実に整合させることによって、また、ボンディング領域を短く維持する、例えば100マイクロメートル未満の長さに維持することによって、インピーダンス損失を減少させることができる。
【0012】
一例では、このような構築は、図2に示されるように、ボンディング領域におけるギャップの幅を減少させることによって行われ得る。伝送部101は、接地電極幅Eg、信号電極幅Es、ギャップ幅Gc、インピーダンスZcを有する。ボンディング領域202は、ギャップ幅Gb、長さLb、インピーダンスZb、パッド幅Pbのパッド221、222を有する。外部伝送線(図2に示さず)は、Zcとほぼ同じインピーダンスZtを有する。図1に示されるもの等の従来の接続では、Zb=Zt=Zcである。このようにするためには、Gb≒Ebとなる。しかしながら、外部伝送線への接続を良好にするためには、Ebは比較的大きくなければならず、これは、放射損失が顕著になるのに十分な程にボンディングパッドの全体的なサイズを大きくする。これは、図2の構成では、Gb<<Eb、例えばGb≒Gcとすることで解消されている。結果として、Zb<<Zcとなる。ボンディングパッド領域202と伝送線本体101との間のテーパ203は、ボンディングパッド幅Pbと電極幅Eg及びEsとの間で、また、ギャップ幅GbとGcとの間で移行する。
【0013】
一例では、Lbは100マイクロメートル以下、例えば略80マイクロメートルとなり得る。Gbは小さいことが望ましく、80マイクロメートル未満、例えば略50マイクロメートルや、更には25マイクロメートルとなり得る。Pbは130マイクロメートル程度となり得るが、175マイクロメートル等のより大きな幅も可能である。大型パッドはダブルボンディング接続を可能にする。しかしながら、例示的な寸法として以下のものが挙げられる:
Pb 80マイクロメートル、Gb 25マイクロメートル
Pb 80マイクロメートル、Gb 50マイクロメートル
Pb 130マイクロメートル、Gb 50マイクロメートル
Pb 175 マイクロメートル、Gb 80マイクロメートル
【0014】
これらの寸法は、ボンディングパッド領域と外部伝送線との間の電場整合と電場閉じ込めとを確実なものにするように一般的には設計される。
【0015】
この配置構成は典型的なワイヤボンディング接続で使用可能なものであるが、フリップチップ接続に関しても使用可能であることは明らかである。本願における「ボンディング領域」との用語は、これら両方の種類の接続に適用可能である。
【0016】
図3は、従来技術のボンディング部31と図2に係るボンディング部30とについての周波数応答のグラフである。見て取れるように、高周における性能の低下は新規配置構成において小さい。その差は20GHz程度で明らかとなり、高周波における低下が顕著に少ない。インピーダンス整合が重要であるという当該分野の一般的な検討事項にもかかわらず、いずれの点においても、インピーダンス不整合に起因して、新規ボンディング部が従来技術のボンディング部よりも顕著に悪い性能を有するようにはなっていない。
【0017】
放射損失とインピーダンス損失との間のバランスは、チップの物質に部分的に依存する。図3の結果はLiNbO基板について得られたものである。大抵の場合、放射損失とインピーダンス損失との間にはある程度のトレードオフがある傾向にあり、図2に示される配置形状では、Gb<5マイクロメートルの場合にインピーダンス損失が顕著になる傾向にある。しかしながら、これは、部品の工学的許容範囲によって定められる制限と同程度のものである。
【0018】
図3に見て取れるように、放射損失を減らす整合が高周波装置にとっては特に重要であるが、これは低周波応用にも当てはまる(利得効率は小さくなるが)。
【0019】
外部伝送線は、信号電極とその両側の接地電極とを備える平坦な伝送線、又は、信号電極を取り囲む単一の接地電極を備える同軸伝送線であり得る。当業者には理解されるように、他の配置形状も可能である。上述のように、外部伝送線は、平坦な場合には、フリップチップ接続によってボンディング部に接続可能である。
【0020】
図4は、チップの伝送部の模式図である。伝送部は、インピーダンスZcの本体領域401と、インピーダンスZbのボンディングパッド領域402とを有する。ボンディングパッド領域402は、本体401に電気的に接続されて、また、インピーダンスZtの外部伝送線403に電気的に接続するように構成される。Zbのボンディングパッドは、ボンディングパッドと外部伝送線との間の電場整合を可能にするように、つまり、ボンディングパッド領域と外部伝送線との間の接続部における放射損失を減少させるように構成される。ZbはZcに等しくない。
【0021】
ボンディング部は通常チップの縁又はその近傍に存在するが、他の構成も可能である。
【符号の説明】
【0022】
101 伝送部(本体領域)
102、202 ボンディングパッド領域
103、203 テーパ
104 外部伝送線
111 接地電極
112 信号電極
121、221 接地パッド
122、222 信号パッド
図1
図2
図3
図4