【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって、
解決される。本発明の本質は、水素ガスを提供(準備)するために必要な方法工程を、高純度の水素をロバストで経済的な条件下で、特には液体有機水素担体(液体有機水素キャリア(LOHC:Liquid Organic Hydrogen Carrier))としても知られている有機的な液体、水素担体材料から解放出来るように組み合わせることである。本発明に従い、水素化された水素担体材料(水素キャリア材料)の少なくとも部分的な予加熱が、方法全体にとってエネルギー効率的であることが発見された。反応条件及び水素担体材料のチャージに依存して、完全な又は略完全なディスチャージ(水素脱離)、すなわち脱水素が可能である。特に、供給されるLOHC材料は、完全には水素化されていない。水素化率は通常50%から100%の間の値を取り、好ましくは80%から95%の間の値を取る。脱水素工程の後では、水素化率は例えば0%から50%の間の値を取るが、それよりも大きな値であってもよい。
【0007】
放出された水素ガスの精製により、特には水素ガスの純度といった質が向上されている。少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料の調整及び冷却は、水素担体材料の保存及び処理の際の向上された安全性を保証する。特には、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料は、60℃未満の目的温度まで、特には50℃未満の目的温度まで、特には40℃まで冷却される。この温度では、特にはLOHCといった水素担体材料のより安全な取り扱い及び貯蔵がリスク無しで可能である。安全リスクは減少されている。調整は、物理的に溶解した残留水素の水素担体材料からの分離を含んでいる。本発明に従う方法は、特には小型設備においても、経済的に利益の上がる様態で実行可能である。この種の小型設備は分散的に駆動され得る。以下においては、特には搬送コンテナ内部の持ち運び可能(搬送可能)な設備が、小型設備として理解される。その種の小型設備は、最大でも5MWの出力を有するものである。小型設備への水素担体材料の供給はトラック輸送で行われ、特には船舶、列車、又はパイプラインを用いて行われるものではない。水素担体材料は道路網上で地理的及び時間的に柔軟に搬送可能である。本方法は、特には、既知の搬送コンテナ内に配設可能である1つの脱水素反応器を用いて、実行することが可能である。搬送コンテナを用いて、脱水素反応器を、柔軟且つ簡潔に、分散している使用地へと搬送しまたそこで駆動させることが出来る。
【0008】
請求項2に従う予加熱は、効率的且つ直接的な熱の供給を可能とする。少なくとも部分的に水素化された水素担体材料が流れ出る脱水素の生成物流(プロダクトフロー)を用いて予加熱される場合が有利である。脱水素の生成物流は、解放された水素ガス及び少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料を含んでいる。生成物流内に潜在的に存在している熱は水素担体材料を予加熱するために直接的に使用される。本方法の効率は向上される。解放された水素ガス、及び、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料は、約300℃程である反応温度において使用可能な状態にある。反応物流(リアクタントフロー)が直接、複数の反応物流のうちの少なくとも1つと、特には向流ウォッシャー又は噴射復水器(インジェクションコンデンサ)の形態で、直接接触されることによって、効率を向上させるための効率的な熱回収に加え、解放された水素ガス及び/又は少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料の不純物(汚染物質)の分離も可能となる。予加熱は、生成物流の直接的又は間接的な接触によって行うことが出来る。予加熱は、解放された水素ガスとの接触、又は、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料との接触、又は両者の混合物との接触によって、行うことが出来る。
【0009】
請求項3に従う水素ガスの放出は特に有利に実現可能である。それらの反応条件は効率的な放出を支援する。
【0010】
請求項4に従う解放された水素ガスの精製は効果的である。それにより、特に燃料電池に関連する又は食料品工業のための水素ガスの使用のために要求される水素ガスの要求される純度は、99.999%まで保証される。本発明に従い、解放された水素ガスの後の使用目的に応じて純度を可変的に定めることが出来ることが明らかになった。特にはメタン不純物は、燃料電池における水素ガスの使用にとっては、比較的問題とならない。
反対に、一酸化炭素不純物は、水素ガスを燃料電池で使用する場合には、避けられるべきものである。炭化水素不純物は燃焼ガスとして水素ガスを用いる場合にはほとんど問題とならないが、炭化水素不純物は食料品工業においては受け入れられない。除去されるべき不純物は、固体状、液体状又は気体状の凝集状態で存在し得る。ある不純物は例えば水素ガス内のエアロゾル滴の形態でもたらされ得る。
【0011】
少なくとも1つの分離段階における分離は、複数の不純物の狙った分離を、それらの凝集状態に応じて行うことを可能とする。それにより特には、不純物のそれぞれの凝集状態に関して、すなわち個体状態、液体状態、又は気体状態の凝集状態に関して、別々の分離段階を提供することが可能である。存在する複数の不純物についての知見の中で、水素ガスの効率的な精製が可能となる。分離は特には多段階的に(マルチステップで)、すなわち、特には相前後して連続した複数の分離工程と共に、行わる。固体状不純物は例えばコークス、すなわち、多くの炭素を含有し高い比表面積を有する燃料、であり得る。液状の不純物はLOHC滴及び/又はエアロゾル滴の形態で存在し得る。ガス状の不純物は一酸化炭素、メタン、二酸化炭素、及び/又は水蒸気の形態、並びに、例えばトルエン又はシクロヘキサンのような揮発性の炭化水素の形態で、存在し得る。
【0012】
請求項5に従う気相(ガス相)の圧力上昇は、本方法の全体効率の改善を可能とする。用いられる物質の量、すなわちLOHCの量が多いほど、より多くの使用可能な水素ガスが提供され得ることによって、向上された効率がもたらされる。圧力スイング吸着の際の圧力が高いほど、使用可能な生成物ガスの収量は大きい。解放された水素ガスの圧力上昇が見込まれる場合が、特に有利であることが分かった。圧力上昇は、イオン的、熱的、及び/又は機械的な圧縮による中間圧縮として行われ得る。
【0013】
請求項6に従う分離方法は有利な精製を保証する。ガス状の不純物を分離するためには、特には、吸着法又は化学的な反応を介してのガス状の不純物の転換が、用いられる。
【0014】
とりわ、特には圧力スイング吸着法といった吸着法がガス圧が高い場合には特に効果的に実行可能であることが発見された。
【0015】
圧力スイング吸着の際には、ガスは少なくとも5barの、特には少なくとも10barの、特には少なくとも15barの上昇された圧力下で、特には固定床リアクタといった、吸着剤で満たされているリアクタへと供給される。いわゆる重質成分であるガスの1つ又は複数の構成成分は吸収される。リアクタの出口部分では吸着されなかったいわゆる軽質成分を濃縮した様態で取り出すことが出来る。吸着剤が飽和した後に、圧力スイングによって、吸着された重質成分を解放することが出来る、すなわち、脱離し、また別々に送出(排出)することが出来る。
【0016】
更に、吸着的な分離は、圧力スイング吸着及び/又は温度スイング吸着の様態で実施され得る。可能な温度スイング吸着の際の温度は、例えば100℃未満、特には60℃未満、特には30℃未満の値を取る。それにより水素ガスの純度を向上させることが出来る。吸着剤の再生は、少なくとも100℃で、特には少なくとも150℃で、特には少なくとも200℃で、行われる。吸着剤の再生中に排出される水素を含むガス混合物は、プロセスの効率を更に向上させるために、特には燃焼といった熱的な利用に供給され得る。
【0017】
請求項7に従う分離は、生成物流内に組み入れられた触媒的に活性な材料に基づくガス状の不純物の有利な転換を可能とする。生成物流内に存在する反応条件は、例えば一酸化炭素のメタン化のような触媒的な気相反応の反応条件に対応することが発見された。それにより、水素ガスの格別に効率的な後調整が可能である。解放された水素ガスを調整するための追加的な別のリアクタは不要である。
【0018】
特には水素ガスの精製は、水素ガスを準備する際の統合的なプロセス工程として、企図され得る。例えばエアロゾルといった液状の不純物の分離は、多段階的な分離方法において効果的に行うことが可能である。合体フィルタ(コアレッセンスフィルタ)を用いて、エアロゾルの滴体サイズを先ず増大させ、そしてそれに続くラメラ分離(ラメラセパレーション)を用いて生成物流のガス状相から効果的に分離することが出来る。
【0019】
請求項8に従う制御された精製は、要求される純度の水素ガスの提供を保証する。純度は、効果的に変更して調整可能であり得る。一方では、水素ガスが要求される純度を有していることが保証される。また他方では、過度な精製すなわち技術的に必要とされていない純度までの精製は行われないことが保証される。過精製、すなわち要求される純度を超えた精製は避けられる。精製のために必要とされるコストは調整可能である。特には、適切なセンサを用いて最新の純度を連続的に監視すること及び制御ユニットを用いて制御することが有利である。一般的な純度は水素ガスのためには99.999%の値を取り得る。
【0020】
請求項9に従う冷却は格別に効率的であり得る。特には生成物流との直接的又は間接的な接触による冷却のみでは不十分であり得るケース、又は十分迅速でないことがあり得るケースのために、追加的な冷却ユニットを用いることが可能である。
【0021】
請求項10に従う、特には物理的に溶けて少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料に存在している水素ガスの取り出しは、水素担体材料の貯蔵条件を向上させる。それにより、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料用の保存タンク内の爆発性の水素雰囲気のリスクは低減され得る。保存タンク内の爆発性の水素雰囲気は、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料を長期間貯蔵する際に十分に換気することなく液相の上部で水素をガス放出する(脱ガスする)ことによって、発生する。物理的に溶解した水素ガスの分離は、単段的又は多段的に、分離工程によって行うことが出来る。第一段階では、スプレーノズルのような分配ユニット(分布ユニット)を用いることが可能であり、当該分配ユニットは、ストリップ塔(ストリッピングコラム)又はスプレータワーに接続されている。コラム内で水素ガスを取り出すため、追加的に又は代替的に、特には窒素又はアルゴンのような不活性ガス(イナートガス)といった浄化ガス、又は、圧縮空気を用いることも出来る。浄化ガスに対して追加的に又は代替的に、水素ガスを取り出すために、特には真空といった負圧(陰圧)をかけてもよい。水素担体材料内に残る水素含有量が0.1から10重量ppmの間の値を取る場合が有利である。水素担体材料の長期間に渡る貯蔵の際に水素ガスをガス放出する場合でさえ、それにより獲得される貯蔵タンク内の水素濃度は、空気中の水素の爆発限界よりも、及び/又は、LOHCの成分を含む空気中の水素の爆発限界よりも、低い。ガス放出される水素による爆発の危険性は、貯蔵タンク内のエアクッション(エアポケット)が比較的大きく設計されており、その中に最大の許容充填率が、通常タンク体積の80%で制限されることによっても低減され得る。それにより、水素ガスを脱ガスする場合でも臨界的な爆発限界には到らないことが保証される。水素担体材料の調整は、その長期に渡り確実な貯蔵を保証する。
【0022】
特には触媒材料の消耗(劣化)として、個体状態の不純物に対する分離段階を設けることも考えられる。
【0023】
以下の構成要素aから構成要素eを有する脱水素反応器、すなわちa.リアクタハウジング、b.リアクタハウジング内に配設されている少なくとも1つの触媒ホルダであって、そこに触媒材料を備える触媒担体が配設されている触媒ホルダ、c.少なくとも1つの触媒ホルダを加熱するための加熱ユニット、d.少なくとも1つの触媒ホルダにて、少なくとも部分的に水素化された水素担体材料の供給流を均一に分配するための分配ユニット、及びe.水素ガス及び少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料を脱水素反応器から連続的に排出するための少なくとも1つの排出口、を有する脱水素反応器は、本方法の有利な実行を可能とする。その脱水素反応器の利点は基本的にここで指摘される本方法の利点に対応する。触媒材料が有利にはリアクタハウジング内に配設された少なくとも1つの触媒ホルダに配設されていてもよいことが分かった。触媒ホルダとしては、パイプ、プレート、又はそれらの組み合わせを用いることが出来る。分配ユニットは有利には、毛細管、フローブレーカー、及び/又は分配ベースを有していてもよい。少なくとも1つの排出口は、水素ガス及び水素担体材料の連続的な排出を可能とする。2つの排出口が設けられていてもよく、その際には、排出時に生成物流のガス状相及び液状相に関する大まかな分離を区別することが出来る。特には、少なくとも部分的に脱水素された水素担体材料を分配的に供給するために用いられる相分離器(フェーズセパレータ)は、取り付けられた分配ユニットを取り囲んでいてもよく、当該分布ユニットは高い比表面積を生み出すために用いられる。分配ユニットは、ストリッピングコラムとして、押出機として、スプレータワーとして、又はそれらのユニットの組み合わせとして、設計されていてもよい。
【0024】
触媒担体に関連して、特には不活性触媒担体に関連して、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、及び/又は、ルテニウムが、それぞれ0.1%から10%の重量比で触媒材料として利用されるという触媒材料の使用は、水素ガスの効率的な解放を可能とする。
【0025】
酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、及び/又は、活性炭を含んでいる触媒担持体(触媒キャリア)は触媒材料の有利な取り付けを可能とする。触媒担体材料は脱水素反応器内での強い吸熱的な脱水素反応を支援する。
【0026】
触媒担体材料が不活性材料である場合が有利である。更に、例えばガラス球の形態、金属球の形態、又は、パイプやネット又は格子といった金属構造の形態の追加材料が、ホルダの内部又は外部に設けられていてもよい。不活性な追加材料は例えば、触媒材料を薄め拡げるために及び/又は触媒担体材料を保持するために、利用される。触媒材料を薄め拡げるための複数のガラス球が設けられている不活性な追加材料からなるネットを備える構成も考えられ、その際、ガラス球には触媒材料が配されている。例えば、不活性な触媒担体材料及び不活性な追加材料が同種のものであり、また特には同一のものであることが考えられる。特には、不活性な触媒担体材料は金属的なコーティングによって不活性な追加材料とは異なっている。
【0027】
液体、蒸気、及び/又は、ガスで満たされた外殻部、及び/又は、電気ヒータを有している加熱ユニットは効率的な加熱を保証する。加熱ユニットは、脱水素反応器内での強い吸熱的な脱水素反応を支援する。
【0028】
前記脱水素反応器が配設されている搬送コンテナは、適応性が高く、場所によらず、また、分散的な、水素を提供するための本発明の使用を可能にする。
【0029】
本発明のその他の有利な構成、追加的な特徴、及び詳細は、図面を用いての以降の実施例の説明から明らかになる。