特許第6983238号(P6983238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983238TNF活性のモジュレーターとしての置換ベンゾイミダゾール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983238
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】TNF活性のモジュレーターとしての置換ベンゾイミダゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20211206BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20211206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   C07D403/04CSP
   A61P27/02
   A61P29/00
   A61P37/06
   A61P25/00
   A61P25/04
   A61P9/00
   A61P3/00
   A61P35/00
   A61K31/506
   A61P25/02 101
   A61P43/00 111
   A61K45/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-529481(P2019-529481)
(86)(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公表番号】特表2020-502081(P2020-502081A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017082092
(87)【国際公開番号】WO2018104534
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】1620948.8
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘール、ジャグ ポール
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/186229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
治療において使用するための、2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
TNFα機能のモジュレーターの適症である障害の治療及び/又は予防における使用のための、2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
炎症性障害若しくは自己免疫障害、神経障害若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防における使用のための、2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項6】
追加の薬学的に活性な成分をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
TNFα機能のモジュレーターの適症である障害の治療及び/又は予防のための薬物を製造するための、2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
炎症性障害若しくは自己免疫障害、神経障害若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防のための薬物を製造するための、2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
TNFα機能のモジュレーターの適症である障害の治療及び/又は予防のための、請求項5又は6に記載の医薬組成物
【請求項10】
炎症性障害若しくは自己免疫障害、神経障害若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防のための、請求項5又は6に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換縮合イミダゾール誘導体、及び治療におけるその使用に関する。さらに詳細には、本発明は、薬理学的に活性な置換1H−ベンゾイミダゾール誘導体に関する。この化合物は、TNFαのシグナル伝達のモジュレーターとして働き、したがって、薬剤として、特に有害な炎症性及び自己免疫障害、神経及び神経変性障害、痛み及び侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、並びに腫瘍学的障害の治療において有益である。
【背景技術】
【0002】
TNFαは、細胞生存及び細胞死を制御する主要な機能を共有するタンパク質の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのプロトタイプメンバーである。TNFスーパーファミリーの公知メンバーすべてに共通の1つの構造的特徴は、特異的TNFスーパーファミリー受容体に結合し、活性化する三量体複合体の形成である。例として、TNFαは可溶性及び膜貫通性の形で存在し、機能的エンドポイントが異なるTNFR1及びTNFR2と呼ばれる2つの受容体を通してシグナル伝達する。
【0003】
TNFα活性を調節することができる様々な製品が既に市販されている。すべて、関節リウマチやクローン病などの炎症性及び自己免疫障害の治療用に認可されている。現在認可されている製品はすべて、高分子であり、ヒトTNFαとその受容体の結合を阻害することによって働く。典型的な高分子TNFα阻害剤としては、抗TNFα抗体;及び可溶性TNFα受容体融合タンパク質が挙げられる。市販の抗TNFα抗体の例としては、アダリムマブ(Humira(登録商標))やゴリムマブ(Simponi(登録商標))などの完全ヒト抗体、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))などのキメラ抗体、及びセルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))などのペグ化Fab’フラグメントが挙げられる。市販の可溶性TNFα受容体融合タンパク質の例は、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))である。
【0004】
TNFα自体を含めてTNFスーパーファミリーメンバーは、医学的にかなり重要な様々な病態において役割を果たすと考えられる様々な生理学的及び病理学的機能に関与している(例えば、M.G. Tansey及びD.E. Szymkowski、Drug Discovery Today、2009年、14巻、1082〜1088頁;並びにF.S. Carneiroら、J. Sexual Medicine、2010年、7巻、3823〜3834頁を参照のこと)。
【0005】
本発明による化合物は、ヒトTNFα活性の強力なモジュレーターであり、したがって様々なヒト病気の治療及び/又は予防において有益である。これらの病気としては、自己免疫性及び炎症性障害;神経及び神経変性障害;痛み及び侵害受容性障害;心血管系障害;代謝障害;眼障害;並びに腫瘍学的障害が挙げられる。
【0006】
さらに、本発明による化合物は、新しい生物学的試験の開発及び新しい薬理学的作用剤の探索における使用のための薬理学的標準として有益であり得る。したがって、一実施形態において、本発明の化合物は、薬理学的に活性な化合物を検出するためのアッセイにおける放射性リガンドとして有用であり得る。代替実施形態において、本発明の化合物は、フルオロフォアにカップリングして、薬理学的に活性な化合物を検出するためのアッセイ(例えば、蛍光偏光アッセイ)において利用することができる蛍光性コンジュゲートを提供するのに有用であり得る。
【0007】
WO2013/186229には、有害な炎症性及び自己免疫障害、神経及び神経変性障害、痛み及び侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、並びに腫瘍学的障害の治療において有益なTNFαシグナル伝達のモジュレーターであると述べられているベンゾイミダゾール誘導体群が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(I)
【化1】

の2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
本発明による化合物は、WO2013/186229の包括的範囲内に包含されている。しかし、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、その文献に具体的に開示されていない。
【0010】
本発明は、治療において使用するための、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0011】
本発明は、TNFα機能のモジュレーターの投与が適応となる障害の治療及び/又は予防における使用のための、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、炎症性若しくは自己免疫障害、神経若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防における使用のための、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
本発明は、TNFα機能のモジュレーターの投与が適応となる障害の治療及び/又は予防のための薬物を製造するための、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、炎症性若しくは自己免疫障害、神経若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防のための薬物を製造するための、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0015】
本発明は、TNFα機能のモジュレーターの投与が適応となる障害の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量の以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む上記方法も提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、炎症性若しくは自己免疫障害、神経若しくは神経変性障害、痛み若しくは侵害受容性障害、心血管系障害、代謝障害、眼障害、又は腫瘍学的障害の治療及び/又は予防のための方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量の以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む上記方法を提供する。
【0017】
医薬における使用では、式(I)の化合物の塩は、薬学的に許容される塩である。しかし、他の塩は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の調製において有用であり得る。薬学的に許容される塩の選択及び調製の根底をなす標準原則は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use、P.H. Stahl及びC.G. Wermuth編、Wiley−VCH、2002年に記載されている。式(I)の化合物の適当な薬学的に許容される塩としては、例えば、式(I)の化合物の溶液と薬学的に許容される酸の溶液を混合することによって形成することができる酸付加塩が挙げられる。
【0018】
以降に示す式(I)(単数又は複数)中に存在している原子はそれぞれ個別に、その天然由来の同位体のいずれかの形で実際は存在することができ、最も大量に存在する同位体(単数又は複数)が好ましいと理解されるものとする。したがって、例として、以降に示す式(I)(単数又は複数)中に存在している水素原子はそれぞれ個別に、H、H(ジュウテリウム)又はH(トリチウム)原子、好ましくはHとして存在することができる。同様に、例として、以降に示す式(I)(単数又は複数)中に存在している炭素原子はそれぞれ個別に、12C、13C又は14C原子、好ましくは12Cとして存在することができる。
【0019】
本発明による化合物は、様々なヒト病気の治療及び/又は予防において有益である。これらの病気としては、自己免疫性及び炎症性障害;神経及び神経変性障害;痛み及び侵害受容性障害;心血管系障害;代謝障害;眼障害;並びに腫瘍学的障害が挙げられる。
【0020】
炎症性及び自己免疫障害としては、全身性自己免疫障害、自己免疫性内分泌障害及び臓器特異的自己免疫障害が挙げられる。全身性自己免疫障害としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、乾癬性関節症、血管炎、炎症性ミオパチー(多発性筋炎、皮膚筋炎及び封入体筋炎を含む)、強皮症、多発性硬化症、全身性硬化症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、非特異的炎症性関節炎、若年性炎症性関節炎、若年性特発性関節炎(その少数関節型及び多関節型を含む)、慢性疾患性貧血(ACD)、スチル病(若年及び/又は成人発症型)、ベーチェット病及びシェーグレン症候群が挙げられる。自己免疫性内分泌障害としては、甲状腺炎が挙げられる。臓器特異的自己免疫障害としては、アジソン病、溶血性又は悪性貧血、急性腎傷害(AKI;シスプラチン誘導性AKIを含む)、糖尿病性腎症(DN)、閉塞性尿路疾患(シスプラチン誘導性閉塞性尿路疾患を含む)、糸球体腎炎(グッドパスチャー症候群、免疫複合体介在性糸球体腎炎及び抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連糸球体腎炎を含む)、ループス腎炎(LN)、微小変化型ネフローゼ症候群、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、非定型的大腸炎及び回腸嚢炎を含む)、天疱瘡、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性間質性肺炎、自己免疫性心筋炎、重症筋無力症、自然不妊症、骨粗鬆症、骨減少症、びらん性骨疾患、軟骨炎、軟骨変性及び/又は破壊、線維性障害(肝及び肺線維症の様々な形を含む)、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸窮迫症候群、敗血症、発熱、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)、臓器移植拒絶反応(腎同種移植片拒絶を含む)、強膜炎(巨細胞性動脈炎による強膜炎を含む)、高安動脈炎、化膿性汗腺炎、壊疽性膿皮症、サルコイドーシス、リウマチ性多発筋痛及び体軸性脊椎関節炎が挙げられる。
【0021】
神経及び神経変性障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、頭部外傷、発作及び癲癇が挙げられる。
【0022】
心血管系障害としては、血栓症、心肥大、高血圧、(例えば、心不全時における)不規則な心収縮、及び性的障害(勃起不全及び女性性機能不全を含む)が挙げられる。TNFα機能のモジュレーターは、心筋梗塞の治療及び/又は予防においても有用であり得る(J.J. Wuら、JAMA、2013年、309巻、2043〜2044頁を参照のこと)。
【0023】
代謝障害としては、糖尿病(インスリン依存性糖尿病及び若年性糖尿病を含む)、脂質異常及びメタボリックシンドロームが挙げられる。
【0024】
眼障害としては、網膜症(糖尿病網膜症、増殖網膜症、非増殖網膜症及び未熟児網膜症を含む)、黄斑浮腫(糖尿病性黄斑浮腫を含む)、加齢黄斑変性(ARMD)、血管形成(角膜血管形成及び新血管形成を含む)、網膜静脈閉塞症、並びに様々な形のブドウ膜炎(虹彩炎を含む)及び角膜炎が挙げられる。
【0025】
急性又は慢性であり得る腫瘍学的障害としては、増殖性障害、特にがん、及びがん関連合併症(骨格合併症、カヘキシー及び貧血を含む)が挙げられる。特定カテゴリーのがんとしては、血液学的悪性腫瘍(白血病及びリンパ腫を含む)及び非血液学的悪性腫瘍(固形腫瘍がん、肉腫、髄膜腫、多形膠芽腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、胃癌及び腎細胞癌を含む)が挙げられる。慢性白血病は、骨髄性又はリンパ性であり得る。多様な白血病としては、リンパ芽球性T細胞白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性/リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、慢性好中球性白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、形質細胞腫、免疫芽細胞性大細胞性白血病、外套細胞白血病、多発性骨髄腫、急性巨核芽球性白血病、急性巨核球性白血病、前骨髄球性白血病及び赤白血病が挙げられる。多様なリンパ腫としては、悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALT1リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫が挙げられる。多様な非血液学的悪性腫瘍としては、前立腺、肺、乳房、直腸、結腸、リンパ節、膀胱、腎臓、膵臓、肝臓、卵巣、子宮、頸部、脳、皮膚、骨、胃及び筋肉のがんが挙げられる。TNFα機能のモジュレーターを使用して、TNFの強力な抗がん効果の安全性を増加させることができる(F.V. Hauwermeirenら、J. Clin. Invest.、2013年、123巻、2590〜2603頁を参照のこと)。
【0026】
本発明は、以上に示した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1種又は複数の薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物も提供する。
【0027】
本発明による医薬組成物は、経口、頬側、非経口、経鼻、局所、点眼若しくは直腸投与に適した形、又は吸入若しくは吹送による投与に適した形をとることができる。
【0028】
経口投与では、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプン又はグリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤を用いて通常の手段によって調製される、例えば錠剤、ロゼンジ剤(口中錠)又はカプセル剤の形をとることができる。錠剤は、当技術分野において周知の方法でコーティングしてもよい。経口投与用の液状製剤は、例えば液剤、シロップ剤又は懸濁剤の形をとることができ、或いは乾燥製品として提供し、使用前に水又は他の適当な媒体で構成することができる。そのような液状製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性媒体又は保存剤などの薬学的に許容される添加剤を用いて通常の手段によって調製することができる。調製物は、緩衝塩、矯味剤、着色剤又は甘味剤も適宜含有してもよい。
【0029】
経口投与用の調製物を適当に製剤化して、活性化合物の放出制御をもたらすことができる。
【0030】
頬側投与では、組成物は、通常の方式で製剤化される錠剤又はロゼンジ剤(口中錠)の形をとることができる。
【0031】
式(I)の化合物は、注射、例えばボーラス注射又は輸注による非経口投与のために製剤化することができる。注射用の製剤は、単位剤形、例えばガラスアンプル又は多回投与容器、例えばガラスバイアルで提供することができる。注射用の組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁剤、液剤液又は乳剤のような形をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、保存剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有することができる。或いは、活性成分は粉末の形であり、使用前に適当な媒体、例えば無菌パイロジェンフリー水で構成することができる。
【0032】
上記の製剤以外に、式(I)の化合物をデポ製剤としても製剤化することができる。そのような長時間作用型の製剤は、埋め込み又は筋肉内注射により投与することができる。
【0033】
経鼻投与又は吸入による投与では、本発明による化合物は、適当な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当なガス若しくはガスの混合物を使用して、加圧パック又はネブライザーのエアロゾルスプレーの提示の形で好都合に送達することができる。
【0034】
組成物は、望むなら、活性成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含有することができるパック又はディスペンサー装置で提示してもよい。パック又は分注装置には、投与のための指示書を添付することができる。
【0035】
局所投与では、本発明において有用な化合物は、1種又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適当な軟膏剤で好都合に製剤化することができる。特定の担体としては、例えば、鉱油、液体石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ロウ及び水が挙げられる。或いは、本発明において有用な化合物は、1種又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適当なローション剤の形態で製剤化することができる。特定の担体としては、例えば、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、ベンジルアルコール、2−オクチルドデカノール及び水が挙げられる。
【0036】
点眼では、本発明において有用な化合物は、殺細菌剤又は殺真菌剤などの保存剤、例えば硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム又は酢酸クロルヘキシジンを用いて又は用いずに、pH調整無菌等張生理食塩水中の微粒子化懸濁剤として好都合に製剤化することができる。或いは、点眼では、化合物をワセリンなどの軟膏剤の形態で製剤化することができる。
【0037】
直腸投与では、本発明において有用な化合物は、坐剤として好都合に製剤化することができる。これらは、活性成分と適当な非刺激性賦形剤を混合することによって調製することができる。この非刺激性賦形剤は、室温で固体であるが、直腸温で液体であり、したがって直腸において融解して、活性成分を放出する。そのような材料としては、例えば、カカオバター、ミツロウ及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0038】
特定の病態の予防又は治療のために必要とされる本発明において有用な化合物の量は、選択された化合物及び治療対象の患者の病態に応じて変化する。しかし、一般に、1日投与量は、約10ng/kg〜1000mg/kg、典型的には100ng/kg〜100mg/kgの範囲、例えば経口又は頬側投与では、体重1kg当たり約0.01mg〜40mgの範囲、非経口投与では、体重1kg当たり約10ng〜50mgの範囲、経鼻投与又は吸入若しくは吹送による投与では、約0.05mg〜約1000mg、例えば約0.5mg〜約1000mgの範囲であることができる。
【0039】
望むなら、本発明による化合物を、別の薬学的に活性な物質、例えば抗炎症性分子と共投与することができる。
【0040】
上記の式(I)の化合物は、遷移金属触媒の存在下で式(III)の化合物と式(IV)の化合物を反応させるステップを含む方法によって調製することができる。
【化2】

[式中、Lは適当な脱離基を表し、Mは、ボロン酸部分−B(OH)又は有機ジオール、例えばピナコール、1,3−プロパン−ジオール若しくはネオペンチルグリコールを用いて形成されたその環状エステルを表す]
【0041】
脱離基Lは、典型的にはハロゲン原子、例えばブロモである。
【0042】
化合物(III)と(IV)の間の反応において有用な遷移金属触媒は、適当に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム(0)、又はビス[3−(ジフェニルホスファニル)シクロペンタ−2,4−ジエン−1−イル]鉄−ジクロロパラジウム−ジクロロメタン錯体である。反応は、塩基、例えば炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム、又はリン酸カリウムなどの無機塩基の存在下で適当に行われる。反応は、適当な溶媒、例えば1,4−ジオキサンなどの環状エーテル中、高温で好都合に実施される。
【0043】
上記の式(IV)の中間体は、(i)式(V)
【化3】

[式中、Lは以上に定義した通りである]
の化合物中のニトロ基を還元するステップと、(ii)それによって得られたアミン誘導体と酢酸を反応させるステップとを含む2ステップ方法によって調製することができる。
【0044】
前述の手順のステップ(i)は、化合物(V)を炭素担持パラジウムなどの水素化触媒の存在下に気体水素で処理するステップを典型的には含む、化合物(V)の接触水素化によって好都合に達成することができる。
【0045】
或いは、化合物(V)の還元は、典型的には高温で酢酸の存在下に元素鉄又は亜鉛での処理によって達成することができる。
【0046】
或いは、化合物(V)の還元は、典型的には高温で塩酸などの鉱酸の存在下に塩化スズ(II)での処理によって達成することができる。
【0047】
前述の手順のステップ(ii)は、得られたアミン誘導体を酢酸中で加熱することによって好都合に達成される。
【0048】
上記の式(V)の中間体は、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物を反応させることによって調製することができる。
【化4】

[式中、Lは以上に定義した通りであり、Lは置換可能な基を表す]
【0049】
置換可能な基Lは、典型的にはハロゲン原子、例えばフルオロである。
【0050】
反応は、塩基、例えば炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下で適当に行われる。反応は、適当な溶媒、例えば1−メチル−2−ピロリジノンなどの環状アミン中、高温で好都合に実施される。
【0051】
式(III)、(VI)及び(VII)の出発物質は市販されていない場合、附随する実施例に記載されているのと類似している方法、又は当技術分野から周知の標準方法によって調製することができる。
【0052】
本発明による化合物の調製について以上に記載された方法のいずれかから、生成物の混合物が得られる場合、その混合物から、適切な段階で所望の生成物を分取HPLC;又は例えばシリカ及び/若しくはアルミナを適切な溶媒系と一緒に利用するカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法によって分離することができる。
【0053】
上記の一連の合成経路のいずれかにおいて、当該分子のいずれかに存在する感受性又は反応性基を保護することが必要且つ/又は望ましいことであり得る。これは、Protective Groups in Organic Chemistry、J.F.W. McOmie編、Plenum Press社、1973年;並びにT.W. Greene及びP.G.M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons社、第3版、1999年に記載されているものなど通常の保護基によって達成することができる。保護基は、好都合なその後のいずれかの段階で当技術分野から公知の方法を利用して除去することができる。
【0054】
本発明による化合物は、HEK−Blue(商標) CD40Lと呼ばれる市販のHEK−293由来レポーター細胞系においてTNFαの活性を強力に中和する。これは、5つのNF−κB結合部位に縮合しているIFNβミニマルプロモーターの制御下においてSEAP(分泌型胚性アルカリホスファターゼ)を発現する安定なHEK−293トランスフェクト細胞系である。これらの細胞によるSEAPの分泌は、TNFαによって濃度依存的に刺激される。本明細書ではレポーター遺伝子アッセイとも呼ばれるHEK−293バイオアッセイで試験されると、本発明の化合物は、50nMよりよいIC50値を示す。
【0055】
本発明による化合物は、本明細書に記載される蛍光偏光アッセイで試験されると、蛍光コンジュゲートとTNFαの結合を強力に阻害する。実際、そのアッセイで試験されると、本発明の化合物は、20nMよりよいIC50値を示す。
【0056】
蛍光偏光アッセイ
化合物(A)の調製
1−(2,5−ジメチルベンジル)−6−[4−(ピペラジン−1−イルメチル)フェニル]−2−(ピリジン−4−イル−メチル)−1H−ベンゾイミダゾール(以降「化合物(A)」と呼ぶ)は、WO2013/186229の実施例499に記載されている手順;又はそれに類似した手順によって調製することができる。
【0057】
蛍光コンジュゲートの調製
化合物(A)(27.02mg、0.0538mmol)をDMSO(2mL)に溶解した。5(−6)カルボキシ−フルオレセインスクシニミルエステル(24.16mg、0.0510mmol)(Invitrogenカタログ番号:C1311)をDMSO(1mL)に溶解して、明黄色溶液を得た。2つの溶液を室温で混合すると、混合物は赤色に変化した。混合物を室温で撹拌した。混合の直後に、一定分量の20μLを取り出し、AcOH:HOの80:20混合物に希釈し、1200RR−6140 LC−MSシステムでLC−MS分析を行った。クロマトグラムは、保持時間1.42及び1.50分に、接近した2本の溶離ピークを示し、両ピークとも質量(M+H)+=860.8amuであり、5−及び6−置換カルボキシフルオレセイン基で形成された2つの生成物に一致するものであった。保持時間2.21分の別のピークは、(M+H)+=502.8amuの質量を有し、化合物(A)に一致するものであった。未反応の5(−6)カルボキシフルオレセインスクシニミルエステルのピークは認められなかった。3本のシグナルのピーク面積は22.0%、39.6%及び31.4%であった。これは、その時点における所望の蛍光コンジュゲートの2つの異性体への変換率が61.6%であることを示唆した。さらに、一定分量の20μLを数時間後に抜き取り、次いで終夜撹拌した後、前の場合と同様に希釈し、LC−MS分析にかけた。これらの時点における変換の百分率をそれぞれ、79.8%及び88.6%と決定した。混合物をUVダイレクト分取HPLCシステムで精製した。プールした精製画分を凍結乾燥して、過剰の溶媒を除去した。凍結乾燥した後、0.027mmolの蛍光コンジュゲートに等しい橙色固体(23.3mg)を回収し、これは、反応及び分取HPLC精製の全収率53%と一致した。
【0058】
蛍光コンジュゲートとTNFαの結合の阻害
化合物は、最終アッセイ濃度5%DMSO中25μMから10の濃度で試験した。蛍光コンジュゲートを添加する前に、20mMのTris、150mMのNaCl、0.05%Tween 20中、周囲温度でTNFαとのプレインキュベーションを60分間行い、さらに周囲温度でインキュベーションを20時間行うことによって試験した。TNFα及び蛍光コンジュゲートの最終濃度は、全アッセイ体積25μL中、それぞれ10nM及び10nMであった。プレートは、蛍光偏光を検出することができるプレートリーダー(例えば、Analyst HTプレートリーダー;又はEnvisionプレートリーダー)で読み取った。ActivityBaseにおいてXLfit(商標)(4パラメータロジスティックモデル)を使用して、IC50値を算出した。
【0059】
蛍光偏光アッセイで試験すると、附随する実施例の化合物は、20nMよりよいIC50値を示すことが明らかになった。
【0060】
したがって、蛍光偏光アッセイで試験すると、附随する実施例の化合物は、0.1nMと20nMの間のIC50値を示すことが明らかになった。
【0061】
レポーター遺伝子アッセイ
TNFα誘導性NF−κB活性化の阻害
HEK−293細胞のTNFαによる刺激は、NF−κB経路の活性化を引き起こす。TNFα活性を決定するのに使用したレポーター細胞系は、InvivoGen社から購入した。HEK−Blue(商標) CD40Lは、5つのNF−κB結合部位に縮合しているIFNβミニマルプロモーターの制御下においてSEAP(分泌型胚性アルカリホスファターゼ)を発現する安定なHEK−293トランスフェクト細胞系である。これらの細胞によるSEAPの分泌は、TNFαによって用量依存的に刺激され、ヒトTNFαではEC50が0.5ng/mLである。化合物を10mMのDMSOストックから希釈して(最終アッセイ濃度0.3%DMSO)、10点3倍段階希釈曲線を作製した(例えば、30,000nMから最終濃度2nM)。希釈した化合物をTNFαと60分間プレインキュベートした後に、384ウェルのマイクロタイタープレートに添加し、18時間インキュベートした。アッセイプレート中の最終TNFα濃度は0.5ng/mLであった。発色基質、例えばQUANTI−Blue(商標)又はHEK−Blue(商標) Detection培地(InvivoGen社)を使用して、上澄液中のSEAP活性を決定した。化合物希釈液の阻害(百分率)を(超過対照化合物により)DMSO対照と最大阻害の間で算出し、ActivityBaseにおいてXLfit(商標)(4パラメータロジスティックモデル)を使用して、IC50値を算出した。
【0062】
レポーター遺伝子アッセイで試験すると、附随する実施例の化合物は、50nMよりよいIC50値を示すことが明らかになった。
【0063】
したがって、レポーター遺伝子アッセイで試験すると、附随する実施例の化合物は、0.5nMと50nMの間のIC50値を示すことが明らかになった。
【0064】
以下の実施例によって、本発明による化合物の調製を説明する。
【実施例】
【0065】
略語
DCM:ジクロロメタン EtOAc:酢酸エチル
DMSO:ジメチルスルホキシド h:時間
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
GCMS:ガスクロマトグラフィー質量分析
M:質量 RT:保持時間
【0066】
命名法
化合物は、ACD/Name Batch(Network)バージョン12.0、及び/又はAccelrys Draw 4.0の助けによって名付けた。
【0067】
分析条件
LCMS
方法1
Waters Acquity−SQD、Waters Acquity UPLC BEH C18、2.1×50mm、1.7μmのカラム
移動相A:10mMのギ酸アンモニウム+0.1%アンモニア
移動相B:95%アセトニトリル+5%HO+0.1%アンモニア
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
勾配プログラム 時間 A% B%
0.00 95 5
0.50 95 5
1.75 5 95
2.00 5 95
2.25 95 5
【0068】
LCMS SC_ACID
カラム:Waters XSelect(C18、30×2.1mm、3.5μm) バルブ:1
流速:1mL/分
カラム温度:35℃
溶離液A:アセトニトリル中0.1%ギ酸
溶離液B:水中0.1%ギ酸
直線勾配:t=0分、A5%、t=1.6分、A98%、t=3分、A98%
検出:DAD(220〜320nm)
検出:MSD(ESIポジティブ/ネガティブ) 質量範囲:100〜800
検出:ELSD(PL−ELS 2100):ガスフロー1.2mL/分、ガス温度:70℃、ネブライジング:50℃
【0069】
LCMS AN_ACID
カラム:Waters XSelect(C18、50×2.1mm、3.5μm) バルブ:2
流速:0.8mL/分
カラム温度:35℃
溶離液A:アセトニトリル中0.1%ギ酸
溶離液B:水中0.1%ギ酸
直線勾配:t=0分、A5%、t=3.5分、A98%、t=6分、A98%
検出:DAD(220〜320nm)
検出:MSD(ESIポジティブ/ネガティブ) 質量範囲:100〜800
検出:ELSD(PL−ELS 2100):ガスフロー1.2mL/分、ガス温度:70℃、ネブライジング:50℃
【0070】
GCMS
方法S
装置:Agilent 6890N
カラム:RXi−5MS 20m、ID 180μm、df 0.18μm
平均速度:50cm/秒 キャリヤーガス:He
初期温度:60℃ 初期時間:1.0分 溶媒遅延:1.3分
速度:50℃/分 最終温度:250℃ 最終時間:3.5分
スプリット比:20:1 インジェクター温度:250℃ インジェクション容量:1μL
検出:MSD(EI−ポジティブ) 検出器温度:280℃ 質量範囲:50〜550
検出:FID 検出器温度:300℃
【0071】
中間体1
2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンゾニトリル
2−フルオロ−6−ヒドロキシベンゾニトリル(14.78g、108mmol)の1,4−ジオキサン(120mL)溶液に、水(120mL)中水酸化ナトリウム(25.9g、647mmol)を添加した。混合物を65℃で加熱し、クロロジフルオロメタン(13.98g、162mmol)をフィルターキャンドルを介して溶液に通した。反応混合物を室温まで放冷し、形成した沈澱物を濾別した。濾液層を分離し、有機相を、2−フルオロ−6−ヒドロキシベンゾニトリル(20.0g、146mmol)を出発物として、同じ実験を繰り返した有機層と組み合わせた。合わせた有機層を塩水(2回×100mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮した。得られた懸濁液をジエチルエーテル(80mL)で希釈し、水(3回×40mL)及び塩水(2回×40mL)で洗浄し、次いで乾燥し(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮すると、黄色油の表題化合物(34.2g、68%)が得られ、それを、さらに精製することなく使用した。δH (300 MHz, DMSO-d6) 7.88 (td, J 8.6, 6.8 Hz, 1H), 7.50 (t, J 72.0 Hz, 1H), 7.43 (t, J 8.8 Hz, 1H), 7.34 (d, J 8.6 Hz, 1H). GCMS (方法S) [M]+ 187, RT 3.40分 (95.5%).
【0072】
中間体2
[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロフェニル]メタンアミン
アルゴン雰囲気中、鋼製オートクレーブにおいて、ラネーニッケル(約8g、水中50重量%のスラリー)を、中間体1(44.5g、214mmol、純度90%)のメタノール性アンモニア(7M、400mL)溶液に添加した。反応混合物を水素10バールの雰囲気中で、水素のさらなる消費が認められなくなるまで激しく撹拌した。反応混合物を珪藻土層で濾過し、次いで濾液を部分濃縮すると(>225mbar、40℃)、緑色液体の表題化合物(146.1g)が得られ、それを、さらに精製することなく使用した。GCMS(方法S)[M−H] 190、RT 3.35分(純度87%)。
【0073】
中間体3
5−ブロモ−N−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−ニトロアニリン
炭酸カリウム(22.11g、160mmol)を、1−メチル−2−ピロリジノン(320mL)中4−ブロモ−2−フルオロ−1−ニトロベンゼン(32g、145mmol)及び中間体2(30.6g、160mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を80℃で5時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物を酢酸エチル(約750mL)及び水(約750mL)で希釈した。層を分離し、水性相を酢酸エチル(500mL)で抽出した。合わせた有機層を水(7回×200mL)及び塩水(2回×250mL)で洗浄し、次いで乾燥し(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮し、ジエチルエーテルから共蒸発させると、暗黄色/橙色固体の表題化合物(68.6g)が得られ、それを、さらに精製することなく使用した。δH (300 MHz, CDCl3) 8.35 (br s, 1H), 8.02 (d, J 9.1 Hz, 1H), 7.44-7.23 (m, 2H), 7.02 (t, J 8.8 Hz, 2H), 6.78 (dd, J 9.1, 1.9 Hz, 1H), 6.63 (t, J 72.8 Hz, 1H), 4.58 (d, J 5.8 Hz, 2H). LCMS (SC_ACID) [M+H]+ 391/393 (Brパターン), RT 2.31分 (85%純度).
【0074】
中間体4
6−ブロモ−1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール
亜鉛末(34.4g、527mmol)を、中間体3(68.68g、176mmol)の酢酸(350mL)溶液に添加した。得られた混合物を還流させながら1時間撹拌し、それから追加の亜鉛(34.4g、527mmol)を注意深く添加した。反応混合物を還流させながらさらに18時間加熱し、次いで撹拌せずに室温まで冷却した。濃厚な懸濁液をガラスフィルターで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、油性残渣をエタノール(500mL)中で2時間撹拌した。結晶化した白色固体を濾過により回収し、DCM(600mL)に懸濁した。有機層を水で洗浄し(3回×200mL)、乾燥し(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮して、白色固体の表題化合物(31.1g、45%)を得た。δH (300 MHz, DMSO-d6) 7.57 (d, J 1.8 Hz, 1H), 7.55-7.43 (m, 2H), 7.35 (t, J 72.7 Hz, 1H), 7.25 (dd, J 8.5, 1.8 Hz, 1H), 7.23-7.15 (m, 1H), 7.15-7.09 (m, 1H), 5.46 (s, 2H), 2.53 (s, 3H). LCMS (AN_ACID) [M+H]+385/387 (Brパターン), RT 1.79分 (98%純度).
【0075】
(例1)
2−(5−{1−[2−(ジフルオロメトキシ)−6−フルオロベンジル]−2−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル}−ピリミジン−2−イル)プロパン−2−オール
1,4−ジオキサン(250mL)及び水(25mL)の混合物中の中間体4(12.88g、33.4mmol)、2−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリミジン−2−イル]プロパン−2−オール(9.72g、36.8mmol)及び炭酸ナトリウム(10.63g、100mmol)の溶液をアルゴンでフラッシュした。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.819g、1.003mmol)を添加し、得られた混合物を還流させながら1時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を、中間体4(18.26g、47.4mmol)及び2−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリミジン−2−イル]プロパン−2−オール(13.77g、52.1mmol)を出発物として、同じ実験を繰り返した反応混合物と組み合わせ、次いで終夜撹拌した。水含有量の大部分を含む固体(塩)をデカンテーションで除去し、ジエチルエーテルで洗浄した。合わせた有機層をジエチルエーテルで約1000mLの体積に希釈し、次いで乾燥し(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカ(ヘプタン中50〜100%EtOAc)栓で濾過することにより精製し、生成物を含有する画分を真空中で約100〜200mLの体積に濃縮すると、生成物が結晶化し始めた。固体を濾別し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥して、クリーム状白色固体の表題化合物(24.8g、69%)を得た。合わせた濾液を真空中で濃縮し、終夜ジエチルエーテルから粉末にした。沈澱物を濾過し、乾燥して、2次回収物であるベージュ色固体の表題化合物(5.82g、16%)を得た。δH (300 MHz, DMSO-d6) 9.03 (s, 2H), 7.78 (br s, 1H), 7.65 (d, J 8.3 Hz, 1H), 7.56 (dd, J 8.4, 1.7 Hz, 1H), 7.54-7.45 (m, 1H), 7.37 (t, J 73.1 Hz, 1H), 7.24-7.11 (m, 2H), 5.55 (s, 2H), 5.11 (s, 1H), 2.58 (s, 3H), 1.55 (s, 6H). LCMS (AN_ACID) [M+H]+ 443, RT 2.26分 (99%純度).