【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、少なくとも部分的に、本出願の特許請求の範囲の主題によって達成される。
【0014】
第1の実施形態では、本発明が、プラスチック構成要素、特にスポーツアパレル用の緩衝要素の製造方法を提供する。この方法は、型を所定の量だけ開いて装填ポジション(loading position)にするステップを含み、この型は少なくとも2つの型部品(mold part)を含み、型を開く量は、型の使用可能な装填容積に影響し、この方法はさらに、発泡粒子を含む材料を装填容積に装墳するステップと、型を閉じて閉ポジション(closed position)にするステップとを含み、型を閉じる間、型部品を互いに、型の異なるエリアにおいて異なる距離にわたって移動させ、この方法はさらに、型を閉じることによって発泡粒子を圧縮するステップと、発泡粒子の少なくとも表面を融合させて、プラスチック構成要素を成形するステップとを含む。
【0015】
発泡粒子は時に、「フォーム粒子(foam particle)」とも呼ばれ、その結果として、成形されたプラスチック構成要素は時に「粒子フォーム構成要素(particle foam component)」と呼ばれる。このような発泡粒子を指すことがある他の用語には例えば「ビーズ(bead)」または「ペレット(pellet)」などがある。
【0016】
この方法は例えば、プラスチック構成要素の製造中の発泡粒子の局所圧縮の制御を、プラスチック構成要素が優れた材料特性を示すように改良することを可能にする。プラスチック構成要素の密度および/または圧縮剛性などの材料特性を、特定の用途または使用法に合わせて調整することができる。例えば、運動競技用シューズに使用されるプラスチック構成要素の局所密度/圧縮剛性を、異なるタイプの運動競技活動、例えばテニス、ランニング、フットボール、バスケットボールなどに対して最適化し、適合させることができ、かつ/または異なる表面、例えば森林コース、アスファルト、コンクリート、砂地、芝生、硬木材などに対して最適化することができ、かつ/または個々の装用者の解剖学的特徴および/もしくは歩き方に対して最適化することができる。
【0017】
さらに、このような強化されたプラスチック構成要素は、他のタイプのスポーツアパレル、例えば緩衝要素が組み込まれた衣類、および/またはサンダル、スキーブーツ、スノーボードブーツ、ゴルフシューズに容易に組み込むことができ、保護目的のあらゆる種類のスポーツ用具、例えばグローブ、特に野球グローブ、ゴールキーパーグローブおよび/またはボクシンググローブ、すね当て、ひざおよび/またはひじプロテクタ、ヘルメット、背面プロテクタならびにその他の多くのスポーツ用具に容易に組み込むことができる。
【0018】
さらに、このような強化されたプラスチック構成要素は、スキー板、スノーボード、スケートボード、サーフボード、パンチングターゲット、フィットネスギヤおよびその他の多くのスポーツ用具など、幅広いさまざまなスポーツ用具に組み込むこともできる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、型部品を互いに移動させる異なる距離が、発泡粒子の圧縮の度合い(degree of compression)(以後、圧縮度)に局所的に影響する。
【0020】
別の実施形態では、少なくとも型の1つのセクションに関して、型部品を互いに移動させる異なる距離が、成形されたプラスチック構成要素の厚さ分布に関係し、好ましくはこの厚さ分布に本質的に比例する。
【0021】
例えば、成形されたプラスチック構成要素の本質的に一定の圧縮度、したがって本質的に一定の密度を保証することが可能であることがある。この点に関して、本出願の残りの部分について、用語「本質的に」は、「典型的な製作公差(typical manufacturing tolerance)の範囲内で」と定義される。
【0022】
例えば、例えばシューズソールとしてのくさび形の構成要素などの厚さが不均一なプラスチック構成要素であって、さらに、密度に依存するある物理的材料特性が本質的に均質である必要があるプラスチック構成要素に対して、密度を一定にしたいことがある。
【0023】
本発明の別の実施形態では、発泡粒子を、加熱された水蒸気および/または電磁放射によって互いに少なくとも部分的に融合させる。
【0024】
例えば、この実施形態は、接着剤(adhesive)または粘着剤(gluing agent)に頼ることなくプラスチック構成要素を成形すること、さらに、発泡粒子の表面を融合させるのに必要な熱を型の容積全体にわたって均質に分布させることを可能にする。
【0025】
電磁放射が使用される場合には、発泡粒子が、加熱された水蒸気中に存在する水分にさらされない。ある種の実施形態ではこのことが望まれることがある。さらに、電磁放射で発泡粒子を加熱した方が、エネルギー効率がよくなり、融合過程の動態(dynamics)をより精密に制御することができる。
【0026】
当業者には明白になることだが、本発明はさらに、圧縮成形および他の多くの成形などの他の従来の成形技法と両立する。
【0027】
本発明の別の実施形態では、型を閉じる間、型部品のうちの少なくとも1つの型部品を、偏心配置された旋回軸(eccentrically arranged swivel axis)周りでピボット回転させ、旋回軸は、好ましくは取付け板(mounting plate)に接続されており、好ましくは、取付け板と少なくとも1つの型部品との間に長さの異なる変形可能なスペーサ要素が配置される。
【0028】
この点に関して、用語「偏心」は、型の横断中心線(transversal center line)に対して定義される。
【0029】
例えば、この実施形態は、型を閉じる間、これらの少なくとも2つの型部品を互いに、型の異なるエリアにおいて所望の異なる距離にわたって移動させることを実現する単純な手法を提供する。
【0030】
本発明の別の実施形態では、これらの型部品のうちの少なくとも1つの型部品が、いくつかの個別のサブ部品(sub−part)を含み、型部品を互いに移動させる異なる距離が、サブ部品ごとに個別に制御される。
【0031】
この実施形態は、型の異なる部分に存在する発泡粒子に異なる圧縮計画(compression scheme)を適用することを可能にする。例えば、型の1つの部分では均一な圧縮を所望し、第2の部分では不均一な圧縮を所望することができる。このことは、足中央セクション(midfoot section)および足後部(rearfoot)セクションに本質的にくさび形の部分を含み、足前部(forefoot)セクションに本質的に均一な部分を含むシューズのミッドソールを製作するのに適切でありうる。
【0032】
本発明の別の実施形態では、この方法の残りのステップが、型に装填するステップとは異なる場所で実行されてもよいように、発泡粒子を型容積に装填するステップの後に型が密封される。
【0033】
例えば、この実施形態は、プラスチック構成要素のマルチステーション製造ラインの専用装填ステーションで型に装填することを可能にする。前記装填ステーションを、発泡粒子を型に装填するように個別に最適化することができる。装填後、密封された型を、製造ラインの別の加工ステーション、例えば電磁融合ステーションに輸送することができる。この電磁融合ステーションを、発泡粒子を効率的に電磁溶融するように個別に最適化することができる。後続の製造ステップを場所的に分離し、型を1つの加工ステーションから次の加工ステーションに輸送することにより、本発明によって提供される方法を実施する製造ラインをさらに最適化することができる。
【0034】
別の実施形態では、本発明が、プラスチック構成要素、特にスポーツアパレル用の緩衝要素を提供する。このプラスチック構成要素は、発泡粒子を含み、プラスチック構成要素の局所密度および/または局所圧縮剛性が、プラスチック構成要素を成形する間の発泡粒子の局所圧縮度によって決まる。
【0035】
例えば、発泡粒子を含むこのようなプラスチック構成要素の密度に依存する機械的特性が、異なる種類の運動競技用シューズ用のミッドソール、例えばバスケットボールシューズ、テニスシューズおよび/または屋外ランニングシューズ用のミッドソールなど、特定の用途に対する適切な仕様に従って設計されることがある。
【0036】
本発明のより具体的な実施形態は、プラスチック構成要素の局所密度および/または局所圧縮剛性が、プラスチック構成要素の少なくとも一部分で、好ましくはプラスチック構成要素の全体で本質的に一定である、強化されたプラスチック構成要素に関する。
【0037】
追加の実施形態は、プラスチック構成要素の局所密度および/または局所圧縮剛性が、プラスチック構成要素の少なくとも一部分の厚さ分布に関係し、好ましくはこの厚さ分布に本質的に比例する、強化されたプラスチック構成要素に関する。
【0038】
例えば、このようにすると、均質な機械的特性、例えば均質な圧縮剛性および密度を示すプラスチック構成要素を製造することができる。さらに、スポーツシューズの改良されたミッドソールを製作する望ましい手法でプラスチック構成要素を製造することができる。
【0039】
別の実施形態では、本発明が、以下の材料のうちの1つまたは複数の材料を含むプラスチック構成要素を提供する:発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU);発泡ポリアミド(ePA);発泡ポリエーテルブロックアミド(ePEBA);発泡ポリ乳酸(ePLA);発泡ポリエチレンテレフタレート(ePET);発泡ポリブチレンテレフタレート(ePBT);発泡熱可塑性ポリエステルエーテルエラストマー(eTPEE)。
【0040】
発泡ポリマーペレットなどの発泡粒子に関する追加の詳細が、本出願の出願人の独国特許出願公開第102014216992号明細書、国際公開第2016/030026号パンフレットおよび国際公開第2016/030333号パンフレットに出ている。
【0041】
例えば、eTPU(または同様の発泡粒子)の優れた材料特性は、スポーツアパレル用の強化された緩衝要素を設計することを可能にする。例えば、eTPUを含むスポーツシューズ用のミッドソールは、強化された履き心地および優れたランニング特性を提供する。特に、このようなミッドソールは、eTPU材料のレジリエンスによって決まるその大きな反発性(rebound)により、衝撃後に直ちに緩和して、その元の形態に戻る。その結果として、ミッドソールの弾性変形に蓄積された衝撃エネルギーは装用者の脚に再び投じられ、それによってランニング性能を強化する。
【0042】
別の実施形態では、本発明が、シューズ用、特にスポーツシューズ用のミッドソールを提供する。このミッドソールは、本発明に基づくプラスチック構成要素を含み、本発明によって提供されたいずれかの方法に従って製作される。
【0043】
別の実施形態では、本発明が、シューズ用、特にスポーツシューズ用のミッドソールを提供する。このミッドソールは、発泡粒子を含み、ミッドソールの大きさの本質的に全体にわたって、ミッドソールの局所密度の変動が20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、よりいっそう好ましくは5%未満である。
【0044】
このミッドソールの異なるセクションの局所密度は例えば、発泡TPUなどの発泡粒子を含むプラスチック構成要素の密度を再現可能に決定することも可能にする当技術分野で知られているいずれかの関連方法によって決定することができる。
【0045】
それに加えてまたはその代わりに、このミッドソールは、ミッドソールの大きさの本質的に全体にわたって、20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、よりいっそう好ましくは5%未満だけ変動する圧縮剛性を示すことができる。
【0046】
それに加えてまたはその代わりに、このミッドソールは、本発明によって提供されたいずれかの方法に従って製造されたプラスチック構成要素を含むことができる。
【0047】
このミッドソールの異なるセクションの圧縮剛性は、発泡TPUなどの発泡粒子を含むプラスチック構成要素の圧縮剛性を再現可能に決定することも可能にする当技術分野で知られているいずれかの関連方法によって決定することができる。そのような1つの例が、ISO 844:2014「Rigid cellular plastics--Determination of compression properties」に基づく試験方法である。
【0048】
別の実施形態では、本発明が、上述の本発明の実施形態に基づくミッドソールを含むシューズ、特にスポーツシューズを提供する。
【0049】
このようなスポーツシューズは例えば、優れた反発性、履き心地および緩衝性を提供し、その結果として、装用者が経験する疲労の軽減、ならびに使用中のランニング性能および/または跳躍性能の向上を保証する。
【0050】
以下では、添付図を参照することによって本発明の実施形態をより詳細に説明する。