【実施例】
【0042】
以下、実施例を介して、本発明について詳細に説明する。
ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の内容は、下記実施例によって限定されるものではない。
【0043】
実施例1.本発明の化合物の合成
<1−1>ペプチドの合成
<1−1−1>配列番号1のペプチドの合成
クロロトリチルクロリド樹脂(CTL(chloro trityl chloride) resin;Nova biochem[0064]Cat No.01−64−0021)700mgを反応容器に入れ、塩化メチレン(MC)10mlを加え、3分間撹拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れて3分間撹拌した後、更に溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れ、Fmoc−His(Trt)−OH(Bachem、スイス)200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)400mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かし、1時間撹拌しながら反応させた。反応後に洗浄し、メタノールとDIEA(2:1)とをジクロロメタン(DCM)に溶かし、10分間反応させ、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れ、3分間撹拌した後、更に溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れ、10分間常温で撹拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れ、更に10分間反応を維持した後、溶液を除去し、それぞれ3分ずつDMFで2回、MCで1回、DMFで1回洗浄し、His(Trt)−CTL樹脂を製造した。
【0044】
新たな反応器に、10mlのDMF溶液を入れ、Fmoc−Thr(tBu)−OH(Bachem、スイス)200mmole、HoBt 200mmole、及びBop 200mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かした。反応器に、400mmole DIEAを分画して2回にわたって入れた後、全ての固体が溶けるまで、少なくとも5分間撹拌した。溶けたアミノ酸混合溶液を、脱保護された樹脂がある反応容器に入れ、1時間常温で撹拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で3回5分間ずつ撹拌した後、除去した。反応樹脂を少量取り、カイザーテスト(Nihydrin Test)を利用し、反応程度を点検した。脱保護溶液で、前述のように、同一に2回脱保護反応させ、Thr(tBu)−His(Trt)−CTL樹脂を製造した。DMFとMCとで十分に洗浄し、更に1回カイザーテストを行った後、前述と同様に、以下のアミノ酸付着実験を行った。
【0045】
選定されたアミノ酸配列に基づいて、Fmoc−Trp、Fmoc−Gly、Fmoc(Gly)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Lys(Boc)、Fmoc−Ser(tBu)、Fmoc−Lys(Boc)、及びFmoc−Tyr(tBu)の順序で連鎖反応をさせた。Fmoc保護基を、脱保護溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。無水酢酸、DIEA、及びHoBtを入れ、1時間アセチル化を行った後、製造されたペプチジル樹脂を、DMF、MC、及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥させた後、P
2O
5下で真空に減圧し、完全に乾燥させた後、脱漏溶液[トリフルオロ酢酸95%、蒸溜水2.5%、チオアニソール(Thioanisole)2.5%]30mlを入れた後、常温で時々攪拌しながら、2時間反応を維持した。フィルタリングを行い、樹脂を濾過し、樹脂を少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用し、全体体積が半分ほど残るように蒸溜し、50mlの冷たいエーテルを加え、沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、2回更に冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去し、窒素下で十分に乾燥させ、精製前のAc−YKSKKGGWTHペプチド(配列番号1)1.15gを合成した(収率:89.5%)。分子量測定器を利用して測定するとき、分子量1,233.3(理論値:1233.4)を得ることができた。
【0046】
<1−1−2>配列番号2乃至配列番号4のペプチドの合成
前記実施例<1−1−1>と同一方法を利用し、配列番号2のペプチド(Tyr−Ile−Ser−Lys−Lys−His−Ala−Gly−Lys−Asn−Trp−Phe:YISKKHAGKNWF)、配列番号3のペプチド(Lys−Leu−Lys−Lys−Thr−Glu−Thr−Gln:KLKKTETQ)、及び配列番号4のペプチド(Glu−Leu−Ile−Glu−His−Gly−Gly−Gly−Arg−Pro−Ala−Asp:ELIEHGGGRPAD)を合成した。
【0047】
【表1】
【0048】
<1−2>本発明の化合物の合成
ペブチド反応器に、ペプチジルレジン(1mmol)と1−メチル−2−ピロリドン(NMP)10mlとを入れ、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)270mg(2.0当量)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート又はO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート759mg(2.0当量)と、サリチル酸277mg(2.0当量)とを添加し、30分間反応させた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)388mg(3当量)を添加し、常温で24時間〜72時間反応させ、濾過して反応されたペプチジル樹脂を得た。得られた樹脂を、切断溶液(cleavage solution)を使用し、常温で2時間反応させ、レジン及び保護基を除去し、ジエチルエーテル10ml(10mmol)を使用して再結晶を行い、ハイブリッドペプチドを得た。
【0049】
実験例1.本発明の化合物の溶解度テスト
前記実施例<1−2>で製造されたサリチル酸−ペプチド1化合物(化合物1)、サリチル酸−ペプチド2化合物(化合物2)、サリチル酸−ペプチド3化合物(化合物3)、サリチル酸−ペプチド4化合物(化合物4)、及びサリチル酸を、それぞれ10mg/mlの濃度で蒸溜水に溶解させた。
【0050】
その結果、サリチル酸自体は、水にほとんど溶解されていないということと対照的に、本発明の化合物1乃至化合物4の化合物は、いずれも水に完全に溶解されるということを確認した(
図1)。
【0051】
実験例2.本発明の化合物の角質細胞成長効果
実施例<1−2>で合成された化合物に対する成長因子の類似効能及び抑制効能を分析するために、リジノらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res. 48: 4266 (1988))を参照し、HaCaT角質細胞株(韓国細胞株バンク)を利用したSRB(スルホドーダミンB,Sigma)比色法を利用して測定した。
【0052】
HaCaT角質細胞株を、96ウェルプレートに、各ウェル当たり3,000細胞ずつ接種した後、10%牛胎児血清(FBS;fetal bovine serum、Sigma)を含むDulbecco’s modied Eagle’s medium(DMEM,Gibco、米国)で、37℃、5% CO
2の条件下で24時間培養した。培養された細胞株を、1%トリプシン溶液で、培養容器底から引き離した後、遠心分離し、細胞沈殿物のみを集めた。それを、FBSが含有されていないDMEM培養液に更に懸濁した後、37℃、5% CO
2の条件下で24時間培養した。24時間後、血清を完全に除去した同一培養液に培地を交換した後、標準化のための10% DMSOに滅菌状態で溶かした供試料、本発明の化合物1乃至化合物4(50μM)、及びサリチル酸(50μM)、並びに陽性対照群として使用されたEGF(100nM)を処理し、前述と同一条件で72時間培養した。培養が完了した後、培養上澄み液を除去し、エタノールを利用して細胞を固定させた後、PBS(phosphate buffer saline)で3回洗浄した。洗浄溶液を除去した後、比色SRB溶液で処理し、1%酢酸で十分に洗浄した後、顕微鏡で細胞を観察し、生存細胞の状態を観察し、紫外線560nm波長で吸光度を測定し、細胞の生存状態を測定した。
【0053】
前述のように、角質細胞に本発明の化合物を処理した後、72時間後、細胞の形態変化を顕微鏡で観察した結果、本発明の化合物が、角質細胞の成長及び形態学的様相を変化させたことを確認した(
図2A)。また、陽性対照群として使用されたサリチル酸は、毒性により、角質細胞の成長を抑制したこととは対照的に、本発明の化合物を処理した場合においては、角質細胞の成長が大きく増大されたことを確認した(
図2B)。
【0054】
実験例3.本発明の化合物の抗菌効果
実施例<1−2>で合成された化合物の抗菌効果を、にきび菌(
Propionibacterium acnes)を利用して確認した。そのために、まず、にきび菌を寒天培地で培養した。紙ディスクを、実施例<1−2>で合成された化合物1乃至化合物4とサリチル酸とをそれぞれ200mMの濃度で浸した後、にきび菌が育った前記寒天培地に、試料が浸された紙ディスクを載せた後、培養した。3日間後、微生物が育たず、透明になった区域の大きさを測定することにより、各化合物の抗菌効果を確認した。
【0055】
その結果、本発明の化合物は、陽性対照群として使用されたサリチル酸が有している抗菌効果を低減させず、特に、化合物1及び化合物3は、サリチル酸と比較し、にきび菌に対する抗菌効果が顕著に上昇したことを確認した(
図3A及び
図3B)。
【0056】
実験例4.本発明の化合物の抗酸化効果
HHDPC、NIH3T3線維芽細胞、及びHaCaT角質細胞を利用し、本発明の化合物の抗酸化効果を確認した。そのために、前記3種の細胞株を、実験例2と同一方式で96ウェルプレートにそれぞれ培養した後、紫外線処理1時間前、それぞれ50μMの濃度で、本発明の化合物1、化合物3、及びサリチル酸を処理した。HHDPC、NIH3T3線維芽細胞、及びHaCaT角質細胞に、それぞれ50mJのUVB、5JのUVA、及び16mJのUVBを照射した後、DCFH−DAを処理し、30分間培養後、細胞を回収した。該細胞をPBSに分散させた後、FACSを利用し、FL1値を測定し、それを利用し、細胞内活性酸素種の変化を確認した。
【0057】
その結果、本発明の化合物は、陽性対照群として使用されたサリチル酸が有している抗酸化効果を低減させず、特に、紫外線の処理によって発生した細胞内活性酸素種の濃度を、サリチル酸と同一であるか、あるいはむしろ低い濃度に顕著に低減させたことを確認した(
図4A乃至
図6B)。
【0058】
実験例5.本発明の化合物が細胞外基質の発現に及ぼす影響
NIH3T3線維芽細胞を利用し、本発明の化合物が、細胞外基質発現に及ぼす影響を測定した。そのために、6ウェルプレートの各ウェルに、NIH3T3線維芽細胞を300,000細胞ずつ接種した後、10% FBSを含むDMEM培養液(Gibco、米国)で、37℃、5% CO
2の条件下で24時間培養した。培養された細胞株を、1%トリプシン溶液で、培養容器底から引き離した後、遠心分離し、細胞沈殿物のみを集めた。それを、FBSが含有されていないDMEM培養液に更に懸濁した後、37℃、5% CO
2の条件下で24時間培養した。24時間後、血清を完全に除去した同一培養液に培地を交換した後、標準化のための10% DMSOに滅菌状態で溶かした供試料、本発明の化合物1及び化合物3、及び陽性対照群として使用されたサリチル酸を50μMの濃度で処理し、前述と同一条件で、72時間培養した。その後、細胞免疫染色を介したコラーゲン、エラスチン、フィブロネクスチンの発現程度を確認するために、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定させ、0.5% Triton X−100で浸透させた後、3% BSAを利用し、ブロッキング(blocking)した。コラーゲン、エラスチン、フィブロネクスチンに対する一次抗体を1:100処理した後、4℃で一晩反応させた。二次抗体を1:500処理し、常温で2時間反応させた後、DAPIを利用した核染色及びマウンティング(mounting)し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0059】
一方、前記実験と同一に処理された細胞のRNAを分離した後、cDNA合成キット(Intron、韓国)を利用し、cDNAを合成し、PCRプリミクス(Intron、韓国)、及びコラーゲン、エラスチン、フィブロネクスチンそれぞれの下記表2に示したプライマーを利用してPCRを行った。その後、5%アガロースゲル電気泳動を介して、コラーゲン、エラスチン、及びフィブロネクスチンのmRNAレベルを確認した。
【0060】
【表2】
【0061】
その結果、本発明の化合物1及び化合物3は、陽性対照群として使用されたサリチル酸よりも、細胞外基質を構成するコラーゲン、エラスチン、及びフィブロネクスチンのタンパク質及びmRNA発現を顕著に増大させたことを確認した(
図7A及び
図7B)。
【0062】
実験例6.本発明の化合物の抗炎症効果
にきび菌を利用し、本発明の化合物の抗炎症効果を確認した。そのために、6ウェルプレートの各ウェルに、角質細胞を300,000細胞ずつ接種した後、10% FBSを含むDMEM培養液(Gibco、米国)で、37℃、5% CO
2の条件下で24時間培養した。新鮮な培地に交換した後、50μg/mlの濃度で、にきび菌を処理し、処理されたにきび菌に、本発明の化合物1及び化合物3と、陽性対照群として使用されたサリチル酸とを50μMの濃度で処理した後、前述と同一条件で、24時間培養した。細胞のRNAを分離した後、cDNA合成キット(Intron、韓国)を利用し、cDNAを合成し、PCRプレミックス(Intron、韓国)、及びTNF−a、IL−6、IL−1b、COX−2それぞれの下記表3に示したプライマーを利用し、PCRを行った。5%アガロースゲル電気泳動を介して、TNF−a、IL−6、IL−1b、及びCOX−2のmRNAレベルを確認した。
【0063】
【表3】
【0064】
その結果、本発明の化合物1及び化合物3は、にきび菌によって誘導される多様な炎症性サトカインの発現を顕著に低減させたことと対照的に、陽性対照群として使用されたサリチル酸は、炎症性サトカインの発現をほとんど抑制させることができなかったということを確認した(
図8)。
【0065】
剤形例1:柔軟化粧水
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる柔軟化粧水を、一般的な化粧水の製造方法によって製造した。
【0066】
【表4】
【0067】
剤形例2.栄養クリーム
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる栄養クリームを、一般的な栄養クリームの製造方法によって製造した。
【0068】
【表5】
【0069】
剤形例3.栄養化粧水
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる栄養化粧水を、一般的な化粧水の製造方法によって製造した。
【0070】
【表6】
【0071】
剤形例4.エッセンス
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなるエッセンスを、一般的なエッセンスの製造方法によって製造した。
【0072】
【表7】
【0073】
剤形例5.へアセラム
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなるへアセラムを、一般的なへアセラムの製造方法によって製造した。
【0074】
【表8】
【0075】
剤形例6.ヘアトナー
前記実施例<1−2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなるへアセラムを、一般的なへアセラムの製造方法によって製造した。
【0076】
【表9】