(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレイ方式部品供給装置は、前記上方検出センサおよび前記下方検出センサを備え、前記異常検出部が前記交換テーブルの上昇動作の途中または終了時に前記異常状態を検出したときに、
前記退避動作部は、前記低速度を用いて前記交換テーブルを前記上位置まで上昇動作させ、
前記較正復帰部は、前記低速度を用いて前記交換テーブルを前記下位置まで下降動作させた後に、前記下位置で前記較正を行う、
請求項1または2に記載のトレイ方式部品供給装置。
前記トレイ方式部品供給装置は、前記上方検出センサ、および、前記上位置と前記下位置との間に設定された基準位置の前記交換テーブルを検出する基準検出センサを備え、前記異常検出部が前記交換テーブルの上昇動作の途中または終了時に前記異常状態を検出したときに、
前記退避動作部は、前記低速度を用いて前記交換テーブルを前記上位置まで上昇動作させ、
前記較正復帰部は、前記低速度を用いて前記交換テーブルを前記基準位置まで下降動作させた後に、前記基準位置で前記較正を行う、
請求項1または2に記載のトレイ方式部品供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.部品装着機1の全体構成
第1実施形態のトレイ方式部品供給装置4について、
図1〜
図9を参考にして説明する。
図1は、トレイ方式部品供給装置4が装備される部品装着機1の全体構成を模式的に示す側面図である。部品装着機1は、トレイ方式部品供給装置4に加えて、基板搬送装置2、部品移載装置3、部品カメラ38、および上位制御装置9を備える。なお、
図1の左右方向は、トレイTpおよび空トレイTeを搬送するY軸方向であり、紙面表裏方向は、Y軸方向と水平面内で直交するX軸方向である。まず、部品装着機1の全体構成の概要について説明する。
【0011】
基板搬送装置2は、2枚の基板Kを並行して搬送できるデュアルレーンタイプに構成されている。基板搬送装置2は、基板Kを搬入し、所定位置に位置決めする。また、基板搬送装置2は、装着作業の終了した基板Kを所定位置から搬出する。基板搬送装置2の各レーンは、一対のガイドレール21、一対のコンベアベルト22、およびクランプ装置23などで構成される。一対のガイドレール21は、基板Kの幅と略同一の距離を隔てて、X軸方向に平行に配置される。一対のコンベアベルト22は、ガイドレール21に沿って輪転し、載置された基板Kを搬送する。クランプ装置23は、一対のガイドレール21の間に設けられる。クランプ装置23は、所定位置で基板Kをクランプして位置決めする。なお、基板搬送装置2は、シングルレーンタイプでもよい。
【0012】
部品移載装置3は、トレイ方式部品供給装置4の供給位置Ppから部品Pを採取して、基板K上の指定された装着位置に装着する。部品移載装置3は、ヘッド駆動機構31、移動台32、装着ヘッド33、吸着ノズル34、および基板カメラ35などで構成される。ヘッド駆動機構31は、移動台32をX軸方向及びY軸方向に駆動する。装着ヘッド33は、移動台32に着脱可能に設けられる。吸着ノズル34は、装着ヘッド33に着脱可能に設けられる。吸着ノズル34は、負圧を利用して部品Pを吸着採取する。基板カメラ35は、装着ヘッド33に設けられる。基板カメラ35は、基板Kに付設された位置基準マークを撮像して、基板Kの正確な位置を検出する。
【0013】
部品カメラ38は、部品移載装置3とトレイ方式部品供給装置4の間に、上向きに設けられる。部品カメラ38は、吸着ノズル34に吸着された部品Pを下方から撮像する。上位制御装置9は、コンピュータ装置を用いて構成される。上位制御装置9の配設位置は、限定されない。上位制御装置9は、基板搬送装置2、部品移載装置3、部品カメラ38、およびトレイ方式部品供給装置4を制御して、部品Pの装着作業を進める。
【0014】
2.トレイ方式部品供給装置4の構成
トレイ方式部品供給装置4は、部品装着機1の前側に着脱可能に装備される。トレイ方式部品供給装置4は、部品Pが配列されたトレイTpを複数保持し、供給位置Ppで部品Pを供給する。また、トレイ方式部品供給装置4は、部品Pを供給した後のトレイである空トレイTeを複数保持できる。トレイ方式部品供給装置4は、筐体51、交換テーブル61、トレイ供給機構64、空トレイ受け取り機構68、搬送部7、駆動部81(
図6に示す)、および制御部82(
図6に示す)などで構成される。
【0015】
図1に示されるように、筐体51は、縦長の直方体状に形成される。筐体51の内部に、4本の支柱52が平行して立設される。後述するように、支柱52には、いくつかの部材が配設される。筐体51の内部空間の上部寄りに、トレイ供給機構64が配設される。筐体51の内部空間の下部寄りに、空トレイ受け取り機構68が配設される。
【0016】
交換テーブル61は、トレイTpよりも一回り大きな矩形板状に形成される。交換テーブル61は、トレイ供給機構64と空トレイ受け取り機構68の間の高さに配置される。交換テーブル61は、下側の左右に3個ずつ、合計6個の下方爪部材62を有する。下方爪部材62は、空トレイTeを保持し、また解放する。交換テーブル61は、後述する駆動部81に駆動され、4本の支柱52に沿って昇降動作する。
【0017】
交換テーブル61は、上昇動作した上位置で、トレイ供給機構64からトレイTpを受け取って上面に載置する。交換テーブル61は、さらに、上位置で搬送部7から空トレイTeを受け取り、下方爪部材62を用いて保持する。上位置は、トレイTpおよび空トレイTeを受け取る受取り位置となっている。また、交換テーブル61は、下降動作した下位置で、搬送部7にトレイTpを受け渡す。交換テーブル61は、さらに、下位置で空トレイ受け取り機構68に空トレイTeを受け渡す。下位置は、トレイTpおよび空トレイTeを受け渡す受渡し位置となっている。
【0018】
交換テーブル61の高さ位置の基準を示す基準位置が、上位置と下位置との間に設定されている。基準位置は、組み立て作業や調整作業の作業性向上、ならびに組立精度および調整精度の向上を目的として設定される。後述するように、基準位置および下位置で交換テーブル61の高さ位置の較正が行われ、上位置での較正は行われない。
【0019】
筐体51の前面の上側から下側へと、上扉531、中扉532、および下扉533が設けられる。上扉531は、トレイ供給機構64にトレイTpを補充する場合に開放される。中扉532は、交換テーブル61に載置されたトレイTpや保持された空トレイTeの状態を確認する場合に開放される。下扉533は、空トレイ受け取り機構68から空トレイTeを取り出す場合に開放される。筐体51の後面の中間辺りの高さに、トレイ出入り口54が開口している。
【0020】
搬送部7は、トレイ出入り口54に臨んで設けられる。搬送部7は、旋回機構71および搬送機構72を有する。搬送機構72は、筐体51の側の第1ローラ73、供給位置Ppの側の第2ローラ74、および2つのローラ間に架け渡されて輪転するコンベアベルト75などで構成される。旋回機構71は、交換テーブル61に載置されたトレイTpをトレイ出入り口54経由で搬送機構72に移し替える。搬送機構72は、トレイTpを供給位置Ppまで搬送する。供給位置Ppで部品Pが供給されて空トレイTeが発生すると、搬送機構72は、空トレイTeを旋回機構71まで搬送する。旋回機構71は、空トレイTeをトレイ出入り口54経由で交換テーブル61の下方爪部材62に移し替える。
【0021】
図2は、トレイ方式部品供給装置4の筐体51の内部の主要な構成を示す斜視図である。
図2において、1枚のトレイTp、および1枚の空トレイTeが破線で示されている。
図3は、トレイ方式部品供給装置4の構成を示す正面図であり、交換テーブル61は基準位置にある。
図4は、トレイ方式部品供給装置4の構成および動作を説明する正面図であり、交換テーブル61は上位置にある。
図5は、トレイ方式部品供給装置4の構成および動作を説明する正面図であり、交換テーブル61は下位置にある。
【0022】
図3〜
図5において、交換テーブル61および空トレイ保持部69は、一点鎖線で示される。また、トレイTpは斑点模様で示され、空トレイTeは網掛け模様で示される。
図6は、トレイ方式部品供給装置4の駆動および制御に関する構成を示すブロック図である。
【0023】
トレイ供給機構64は、トレイ保持部65、上方爪部材66、および上方爪センサ67などで構成される。トレイ保持部65は、筐体51の内部空間のうち4本の支柱52よりも内側の空間が相当する。この空間内に複数のトレイTpが段積みされ、上方爪部材66によって保持される。上方爪部材66は、各支柱52にそれぞれ設けられる。
図3〜
図5に示されるように、上方爪部材66は、支承部66a、爪部66b、規制面66c、および駆動面66dをもつ。
【0024】
支承部66aは、支柱52により揺動可能に支承されている。これにより、上方爪部材66は、保持姿勢(
図3、
図5参照)と解放姿勢(
図4参照)の間で揺動する。爪部66bは、支承部66aよりも下側に配置されている。爪部66bは、内向きに突出する鉤形状に形成されている。規制面66cは、支承部66aの外側に位置する上面で形成される。駆動面66dは、規制面66cの下側に位置する下面で形成される。
【0025】
上方爪部材66の揺動に関して、規制ブロック55、上方解除ブロック63、および駆動ブロック56が設けられる。規制ブロック55は、支柱52に上下動可能に設けられる。規制ブロック55は、図略の付勢部材によって下向きに付勢されており、規制面66cを押し下げる。これにより、上方爪部材66は、通常時に保持姿勢に維持される。保持姿勢の上方爪部材66は、トレイTpの下縁に爪部66bを入れて、トレイTpを保持する。
【0026】
上方解除ブロック63は、交換テーブル61の端部寄りに設けられる。交換テーブル61の上昇動作により、上方解除ブロック63は、付勢に抗して規制ブロック55を押し上げる。これにより、上方爪部材66の保持姿勢が解除される。駆動ブロック56は、支柱52に上下動可能に設けられる。駆動ブロック56は、交換テーブル61の上昇動作に連動して駆動面66dを押し上げる。これにより、上方爪部材66は、保持姿勢から解放姿勢へと揺動する。解放姿勢の上方爪部材66は、トレイTpの下縁から爪部66bを出して、トレイTpを解放する。
【0027】
上方爪センサ67は、
図6に示され、
図2〜
図5では図示省略されている。上方爪センサ67は、上方爪部材66の姿勢を検出して、検出信号を制御部82に送る。上方爪センサ67は、上方爪部材66が保持姿勢から解放姿勢に変化する解放動作を検出できる。上方爪センサ67として、上方爪部材66に向かって検出光を照射し、遮光の有無を検出する遮光検出センサを用いることができる。上方爪センサ67は、上位置の交換テーブル61を検出する上方検出センサを兼ねる。
【0028】
空トレイ受け取り機構68は、前述した交換テーブル61の下方爪部材62、空トレイ保持部69、および下方爪センサ6Aなどで構成される。下方爪部材62は、符号略の支承部、爪部62a、および駆動斜面部62bをもつ。下方爪部材62は、支承部によって揺動可能に支承されており、保持姿勢(
図4参照)と解放姿勢(
図5参照)の間で揺動する。
【0029】
爪部62aは、支承部の下側に配置されて内向きに突出する鉤形状に形成されている。駆動斜面部62bは、爪部62aの下側に形成される。下方爪部材62は、図略の付勢部材によって内向きに付勢され、通常時に保持姿勢に維持される。保持姿勢の下方爪部材62は、空トレイTeの下縁に爪部62aを入れて、空トレイTeを保持する。
【0030】
下方爪部材62の揺動に関して、下方解除ブロック57が支柱52に固設される。下方解除ブロック57は、下方爪部材62の駆動斜面部62bに対向する斜面部57aをもつ。交換テーブル61が下降動作すると、下方爪部材62の駆動斜面部62bは、下方解除ブロック57の斜面部57aに当接して、外側へ押し出される。これにより、下方爪部材62は、保持姿勢から解放姿勢へと揺動する。解放姿勢の下方爪部材62は、空トレイTeの下縁から爪部62aを出して、空トレイTeを解放する。
【0031】
空トレイ保持部69は、交換テーブル61と同程度の大きさの矩形板状に形成される。空トレイ保持部69は、空トレイ用駆動部89によって昇降駆動される。空トレイ保持部69は、下方爪部材62が空トレイTeを解放する以前に予め上昇動作しており、空トレイTeを受け取る。空トレイ保持部69は、複数の空トレイTeを段積みして保持できる。
【0032】
下方爪センサ6Aは、
図6に示され、
図2〜
図5では図示省略されている。下方爪センサ6Aは、下方爪部材62の姿勢を検出して、検出信号を制御部82に送る。下方爪センサ6Aは、下方爪部材62が保持姿勢から解放姿勢に変化する解放動作を検出できる。下方爪センサ6Aとして、上方爪センサ67と同様に、遮光検出センサを用いることができる。下方爪センサ6Aは、下位置の交換テーブル61を検出する下方検出センサを兼ねる。
【0033】
さらに、
図6に示されるように、基準検出センサ6Bが設けられる。基準検出センサ6Bは、基準位置の交換テーブル61を検出して、検出信号を制御部82に送る。基準検出センサ6Bにも、遮光検出センサを用いることができる。
【0034】
次に、トレイ方式部品供給装置4の駆動および制御に関する構成について、
図6を参考にして説明する。制御部82は、駆動部81、空トレイ用駆動部89、および搬送部7を制御する。また、制御部82は、上方爪センサ67、下方爪センサ6A、および基準検出センサ6Bの検出信号を取得する。さらに、制御部82は、上位制御装置9に通信接続されている。制御部82は、通常時に上位制御装置9からの指令にしたがい部品供給動作を制御する。
【0035】
交換テーブル61を駆動する駆動部81には、パルス電圧で動作するパルスモータが用いられる。パルスモータは、印加されるパルス電圧のパルス数に比例する駆動量を出力する。したがって、上位置と下位置との離間距離に対応するパルス数は、一定値の所定パルス数となる。パルス電圧の極性の切り替え、または駆動力伝達経路への反転ギヤの挿入により、交換テーブル61の上昇動作と下降動作とが切り替わる。空トレイ保持部69を駆動する空トレイ用駆動部89も、パルスモータとされているが、別種のモータでもよい。
【0036】
通常時の制御において、制御部82は、所定パルス数のパルス電圧を駆動部81(パルスモータ)に印加して、交換テーブル61を離間距離だけ昇降動作させる。制御部82は、所定パルス数のパルス電圧が印加された後に、上方爪センサ67または下方爪センサ6Aの検出信号を確認する。この確認により、制御部82は、交換テーブル61が上位置または下位置にあることを認識する。つまり、通常時の制御において、交換テーブル61は、上位置と下位置の間を往復動作し、基準位置やその他の途中位置には停止しない。また、制御部82は、交換テーブル61の昇降動作の途中の時点で、センサ(67、6A、6B)の検出信号を逐一確認しない。
【0037】
制御部82は、異常状態を監視し、さらに異常状態から自動で復帰するための機能部として、異常検出部83、退避動作部84、および較正復帰部85を含む。異常検出部83は、交換テーブル61の昇降動作の途中または終了時に、交換テーブル61の高さ位置が不明となった異常状態を検出する。例えば、交換テーブル61の昇降動作中に異物が干渉すると、所定の動作量が維持されず、交換テーブル61の高さ位置が不明となる。また例えば、駆動部81(パルスモータ)の脱調が原因となり、交換テーブル61の高さ位置が不明となる。
【0038】
具体的には、異常検出部83は、所定パルス数のパルス電圧が駆動部81(パルスモータ)に印加されながらも、上方爪センサ67および下方爪センサ6Aが交換テーブル61を検出しなかったときに、異常状態と判定する。これに限定されず、他の異常検出方法を用いてもよい。例えば、異常検出部83は、駆動部81(パルスモータ)に流れる電流の監視を併用してもよい。
【0039】
異常状態に陥ると、交換テーブル61は、動作量が不足して上位置または下位置まで到達しない。異常状態において、仮に、所定パルス数のパルス電圧を印加する通常時の制御を継続すると、交換テーブル61が上位置や下位置を超えて動作するおそれが生じる。換言すると、交換テーブル61の動作に際して安全性が確保されない。
【0040】
このため、退避動作部84は、異常状態が検出されたときに、正常状態で用いる昇降速度よりも遅い低速度を用いて、交換テーブル61を退避位置まで動作させる。低速度は、パルス電圧の周波数(発生頻度)が小さく制御されることにより実現される。また、退避位置は、安全性が確保される位置であって、上位置または下位置が選択的に設定される。
【0041】
交換テーブル61が退避位置まで動作した後、較正復帰部85は、交換テーブル61の高さ位置の較正を行う。異常検出部83、退避動作部84、および較正復帰部85は、上位制御装置9から独立して、自律的に動作する。これにより、トレイ方式部品供給装置4は、自動で正常状態に復帰できる。また、上位制御装置9は、トレイ方式部品供給装置4の異常状態を認識したり、管理したりする必要がない。異常検出部83、退避動作部84、および較正復帰部85の機能については、後述の異常状態に関係する動作の中で、さらに詳述する。
【0042】
3.通常時の動作
次に、トレイ方式部品供給装置4の通常時の動作について説明する。
図4の矢印A1に示されるように、交換テーブル61は、上位置まで上昇動作する。このとき、矢印A2に示されるように、上方解除ブロック63によって規制ブロック55が押し上げられる。さらに、矢印A3に示されるように、駆動ブロック56も上昇動作する。上方爪部材66は、矢印A4に示されるように、保持姿勢から解放姿勢へと揺動する。これにより、段積みされた複数のトレイTpの全体が一時的に解放され、交換テーブル61に載置される。
【0043】
一方、搬送部7から空トレイTeが受け渡される。交換テーブル61は、下方爪部材62を用いて、移し替えられた空トレイTeを保持する。この後、交換テーブル61が下降動作を開始すると、規制ブロック55および駆動ブロック56は下降し、上方爪部材66は保持姿勢へと戻ってゆく。
【0044】
上方爪部材66は、保持姿勢に戻る際に、最下段のトレイTpと下から二段目のトレイTpの間に爪部66bを入れる。これにより、最下段のトレイTpは、交換テーブル61に受け渡される。また、最下段以外のトレイTpは、再び上方爪部材66に保持される。この後、交換テーブル61は、下降動作を継続する。また、空トレイ保持部69は、空トレイTeを受け取る高さまで予め上昇動作する。
【0045】
図5の矢印A5に示されるように、交換テーブル61は、下位置まで下降動作する。このとき、下方爪部材62は、下方解除ブロック57に当接し、矢印A6に示されるように、保持姿勢から解放姿勢へと揺動する。これにより、空トレイTeは、解放されて空トレイ保持部69に受け渡され、その上面に載置される。一方、交換テーブル61に載置されているトレイTpは、搬送部7に受け渡される。以上により、トレイ供給の1サイクルの動作が終了する。以降は、このサイクルが繰り返される。
【0046】
4.異常状態に関係する動作、作用、および効果
次に、トレイ方式部品供給装置4の異常状態に関係する動作、作用、および効果について、交換テーブル61の昇降動作を中心にして説明する。
図7は、異常状態に関係する制御部82の制御動作を示す動作フローの図である。
図7のステップS1で、制御部82は、交換テーブル61の通常時の昇降動作の制御を行う。交換テーブル61の上昇動作または下降動作が終了すると、動作フローの実行は、ステップS2に進められる。
【0047】
ステップS2で、異常検出部83は、異常状態であるか否かを判定する。異常検出部83は、異常状態であるときに動作フローの実行をステップS3に進め、正常状態であるときに動作フローの実行をステップS1に戻す。大多数の場合に、正常状態が維持されており、ステップS1およびステップS2からなる動作ループが繰り返して実行される。
【0048】
異常状態であるときのステップS3で、異常検出部83は、交換テーブル61の上昇動作時の異常状態であるか、それとも下降動作時の異常状態であるかを判定する。異常検出部83は、上昇動作時の異常状態であるときに動作フローの実行をステップS11に進め、下降動作時の異常状態であるときに動作フローの実行をステップS4に分岐させる。
【0049】
図8は、交換テーブル61の下降動作時の異常状態に対する動作を概念的に説明する図である。
図8の破線矢印M1に示されるように、交換テーブル61の下降動作時に、高さ位置が不明となって異常状態に陥った。この場合、安全性が確保される退避位置として、下位置HLが設定される。ステップS4で、退避動作部84は、矢印M2に示されるように、低速度を用いて交換テーブル61を下降動作させる。
【0050】
次のステップS5で、退避動作部84は、下方爪センサ6Aの検出信号を取得して、交換テーブル61が下位置HLにあるか否かを判定する。否の場合、動作フローの実行は、ステップS4に戻される。ステップS4およびステップS5からなる動作ループは、交換テーブル61が下位置HLに下降するまで継続される。つまり、退避動作部84は、交換テーブル61の下降動作の途中で、逐次下方爪センサ6Aの検出信号を確認する。
【0051】
低速度を用いる点、および、逐次検出信号を確認する点は、通常時の制御と異なる。この制御によれば、交換テーブル61の現在の高さ位置が不明であっても、下位置HLを超えるオーバーランが無くなり、有ったとしても微量である。仮に、低速度に代えて正常状態で用いる下降速度を用いた場合、下方爪センサ6Aの検出信号に基づいて駆動部81(パルスモータ)を停止しても、交換テーブル61は、惰性で下降し続ける。このため、交換テーブル61のオーバーランが過大となり、安全性が確保されない。
【0052】
交換テーブル61が下位置HLまで下降すると、動作フローの実行は、ステップS6に進められる。ステップS6で、較正復帰部85は、下位置HLで交換テーブル61の高さ位置の較正を行う。このとき、矢印M2に示される交換テーブル61の下降動作が低速度であったので、下位置HLの交換テーブル61は、高い位置精度を有する。したがって、高さ位置の較正精度が良好となる。較正の実施により、トレイ方式部品供給装置4は、正常状態に復帰する。この後、動作フローの実行がステップS1に戻され、通常時の動作が自動的に再開される。
【0053】
また、
図9は、交換テーブル61の上昇動作時の異常状態に対する動作を概念的に説明する図である。
図9の破線矢印M3に示されるように、交換テーブル61の上昇動作時に、高さ位置が不明となって異常状態に陥った。この場合、安全性が確保される退避位置として、上位置HHが設定される。ステップS11で、退避動作部84は、矢印M4に示されるように、低速度を用いて交換テーブル61を上昇動作させる。
【0054】
次のステップS12で、退避動作部84は、上方爪センサ67の検出信号を取得して、交換テーブル61が上位置HHにあるか否かを判定する。否の場合、動作フローの実行は、ステップS11に戻される。ステップS11およびステップS12からなる動作ループは、交換テーブル61が上位置HHに上昇するまで継続される。つまり、退避動作部84は、交換テーブル61の上昇動作の途中で、逐次上方爪センサ67の検出信号を確認する。
【0055】
低速度を用いる点、および、逐次検出信号を確認する点は、通常時の制御と異なる。この制御によれば、交換テーブル61の現在の高さ位置が不明であっても、上位置HHを超えるオーバーランが無くなり、有ったとしても微量である。
【0056】
交換テーブル61が上位置HHまで上昇すると、動作フローの実行は、ステップS13に進められる。ステップS13で、較正復帰部85は、矢印M5に示されるように、低速度を用いて交換テーブル61を下降動作させる。次のステップS14で、較正復帰部85は、基準検出センサ6Bの検出信号を取得して、交換テーブル61が基準位置HSにあるか否かを判定する。否の場合、動作フローの実行は、ステップS13に戻される。ステップS13およびステップS14からなる動作ループは、交換テーブル61が基準位置HSに下降するまで継続される。
【0057】
交換テーブル61が基準位置HSまで下降すると、動作フローの実行は、ステップS15に進められる。ステップS15で、較正復帰部85は、基準位置HSで交換テーブル61の高さ位置の較正を行う。較正の実施により、トレイ方式部品供給装置4は、正常状態に復帰する。この後、動作フローの実行がステップS1に戻され、通常時の動作が自動的に再開される。
【0058】
図9に示される上昇動作時の異常状態において、較正復帰部85は、上位置HHで交換テーブル61の高さ位置の較正を行わない。その理由は、段積みされた複数のトレイTpの全荷重が上位置HHの交換テーブル61に作用するため、較正精度の低下が懸念されるからである。また、矢印M5に示される交換テーブル61の下降動作が低速度であったので、基準位置HSの交換テーブル61は、高い位置精度を有する。したがって、高さ位置の較正精度が良好となる。
【0059】
なお、正常状態に復帰できない異常状態、換言すると回復不能な装置故障が発生する場合もあり得る。この場合、制御部82は、装置故障が発生した旨を上位制御装置9に通報する。
【0060】
第1実施形態のトレイ方式部品供給装置4では、交換テーブル61の高さ位置が不明となった異常状態のときに、低速度を用いて交換テーブル61を退避位置まで動作させる。この場合、交換テーブル61が退避位置まで動作したことをセンサで検出した後に、駆動部81を停止することになる。それでも、低速度であるがゆえに、交換テーブル61のオーバーランは無いか、有ったとしても微量である。したがって、交換テーブル61の動作に際して安全性が確保される。さらに、安全性が確保された高さ位置で、高さ位置の較正を行うことができるので、トレイ方式部品供給装置4は、自動で正常状態に復帰できる。
【0061】
5.第2実施形態のトレイ方式部品供給装置
次に、第2実施形態のトレイ方式部品供給装置について、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。第2実施形態において、基準位置HSが設定されず、基準検出センサ6Bは省略される。このため、第2実施形態において、交換テーブル61の上昇動作時の異常状態に対する動作は、第1実施形態から変形される。
図10は、第2実施形態において、交換テーブル61の上昇動作時の異常状態に対する動作を概念的に説明する図である。
【0062】
図10の破線矢印M3および矢印M4に示される動作は、第1実施形態と同じである。交換テーブル61が上位置HHまで上昇すると、較正復帰部85は、矢印M6に示されるように、低速度を用いて交換テーブル61を下位置まで下降動作させる。次に、較正復帰部85は、下位置HLで交換テーブル61の高さ位置の較正を行う。このように、較正を実施する高さ位置が変形される。
【0063】
第2実施形態では、基準検出センサ6Bを省略することにより、第1実施形態よりもコストを低減できる。第2実施形態おけるその他の効果は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0064】
6.実施形態の応用および変形
なお、第1および第2実施形態において、パルスモータ以外の駆動部81や、上方爪センサ67および下方爪センサ6A以外の高さ検出センサを用いることができる。また、上方爪センサ67および基準検出センサ6Bを省略して、下方爪センサ6Aのみとすることも可能である。この態様では、退避位置を常に下位置HLに設定し、交換テーブル61の高さ位置の較正を常に下位置HLで実施する。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。