特許第6983274号(P6983274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983274
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】回転電機の回転子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20211206BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K1/27 501G
   H02K1/27 501K
   H02K15/02 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-76475(P2020-76475)
(22)【出願日】2020年4月23日
(65)【公開番号】特開2021-175249(P2021-175249A)
(43)【公開日】2021年11月1日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 克毅
(72)【発明者】
【氏名】池田 太祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 成志
(72)【発明者】
【氏名】安田 紘平
(72)【発明者】
【氏名】茅野 慎介
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−212589(JP,A)
【文献】 特開2011−259610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心に永久磁石が組み込まれた回転電機の回転子において、前記回転子鉄心には、前記永久磁石が挿入されており、接着剤によって前記永久磁石が固定された磁石挿入穴と、前記磁石挿入穴の前記回転子鉄心における内径側の端部に設けられた内径側フラックスバリア穴と、前記磁石挿入穴の前記回転子鉄心における外径側の端部に設けられた外径側フラックスバリア穴と、前記内径側フラックスバリア穴および前記外径側フラックスバリア穴の少なくとも何れか一方と前記永久磁石の間に配置された円柱形状の柱状部材を備えており、前記柱状部材が配置される前記内径側フラックスバリア穴あるいは前記外径側フラックスバリア穴においては、前記磁石挿入穴に充填されている前記接着剤の量よりも少ない量の接着剤が充填されていることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
前記柱状部材が前記磁石挿入穴の内側において前記回転子鉄心と前記永久磁石のいずれかに当接されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記柱状部材が前記磁石挿入穴の内側において前記回転子鉄心と前記永久磁石の双方に当接されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記柱状部材は前記永久磁石に固定された結合体を構成することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
回転子鉄心を構成する回転子鉄心片が母材である電磁鋼板から打ち抜かれるとともに磁石挿入穴、内径側フラックスバリア穴、外径側フラックスバリア穴を形成する電磁鋼板加工工程と、
電磁鋼板で形成された回転子鉄心片を積層し、回転子鉄心を構成する電磁鋼板積層工程と、
回転子鉄心片を一体化した後、前記磁石挿入穴に前記回転子鉄心の積層方向から内径側柱状部材および外径側柱状部材を挿入する柱状部材挿入工程と、
前記磁石挿入穴に接着剤を充填する接着剤充填工程と、
前記磁石挿入穴に前記回転子鉄心の積層方向から永久磁石を挿入する永久磁石挿入工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子の製造方法。
【請求項6】
回転子鉄心を構成する回転子鉄心片が母材である電磁鋼板から打ち抜かれるとともに磁石挿入穴、内径側フラックスバリア穴、外径側フラックスバリア穴、内径側外周柱状部材挿入溝、外径側外周柱状部材挿入溝を形成する電磁鋼板加工工程と、
電磁鋼板で形成された回転子鉄心片を積層し、回転子鉄心を構成する電磁鋼板積層工程と、
内径側柱状部材および外径側柱状部材を永久磁石に固定して、結合体を形成する永久磁石、柱状部材結合工程と、
前記磁石挿入穴に前記回転子鉄心の積層方向から前記内径側柱状部材および前記外径側柱状部材と前記永久磁石の結合体を挿入する結合体挿入工程と、
前記磁石挿入穴に接着剤を充填する接着剤充填工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回転電機の回転子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両あるいは電気自動車などの車両に搭載されて電動機あるいは発電機として用いられる回転電機は、電磁鋼板が積層された回転子鉄心と、回転子鉄心に固定された永久磁石とで構成される回転子を有している。回転子鉄心には永久磁石を挿入するための磁石挿入穴が設けられおり、回転子は永久磁石を磁石挿入穴に挿入することで製造される。回転電機の運転中の振動によって永久磁石が割れて、回転子鉄心から飛び出す恐れがあるため、回転子鉄心と永久磁石との隙間に接着剤を充填することによって永久磁石を固定する構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−109683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回転電機の回転子は、永久磁石を挿入するための磁石挿入穴の両端に、永久磁石によって発生する磁束が短絡することを防止するためのフラックスバリア穴が設けられており、回転子鉄心と永久磁石の隙間に接着剤を充填するときにフラックスバリア穴にも接着剤が充填されるため、永久磁石の固定に必要な接着剤よりも多くの接着剤を使用することとなり、接着剤の材料費が高くなる問題があった。また接着剤の使用量が多くなるため、接着剤の硬化に時間がかかり生産性が悪化する問題があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、永久磁石を固定するために回転鉄心と永久磁石の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことにより、接着剤の材料費を低減することができる回転電機の回転子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される回転電機の回転子は、回転子鉄心に永久磁石が組み込まれた回転電機の回転子において、回転子鉄心には、挿入された前記永久磁石が接着剤によって固定された磁石挿入穴と、磁石挿入穴の内径側の端部に設けられた内径側フラックスバリア穴と、磁石挿入穴の外形側の端部に設けられた外径側フラックスバリア穴と、内径側フラックスバリア穴および外径側フラックスバリア穴の少なくとも何れか一方と永久磁石の間に配置された円柱形状の柱状部材を備えており、柱状部材が配置される内径側フラックスバリア穴あるいは外径側フラックスバリア穴においては、磁石挿入穴に充填されている接着剤の量よりも少ない量の接着剤が充填されている

【発明の効果】
【0007】
本願に開示される回転電機の回転子によれば、フラックスバリア穴と永久磁石の間に配置された柱状部材によってフラックスバリア穴に接着剤が充填されることを抑制することができるため、永久磁石を固定するために回転子鉄心と永久磁石の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことにより、接着剤の材料費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る回転電機の回転子を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
図3】実施の形態2に係る回転電機の回転子を示す平面図である。
図4】実施の形態2に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
図5】実施の形態3に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
図6】実施の形態4に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
図7】実施の形態5に係る回転電機の回転子を示す平面図である。
図8】実施の形態に係る回転子の製造方法におけるフローチャートの一例を示す図である。
図9】実施の形態に係る回転子の別の製造方法におけるフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る回転電機の回転子に関して、図面に基づいて説明する。各図において、同一または相当部分については、同一符号を付している。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る回転電機の回転子を示す平面図である。図2は実施の形態1に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
回転子1は、回転子鉄心片を積層することで構成される回転子鉄心2と、回転子鉄心2に組み込まれた永久磁石3と、柱状部材として内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4b備えている。
回転子鉄心2には、回転子1の1極を構成する少なくとも1対の磁石挿入穴5がV字配置となるように設けられ、この磁石挿入穴5は回転子1の軸方向に永久磁石3を挿入できる深さを有している。
【0011】
1対の磁石挿入穴5は内周側よりも外周側のほうがお互いの間隔が広くなるようにV字状に形成されており、磁石挿入穴5の回転子鉄心における内径側の端部には内径側フラックスバリア穴6aが、磁石挿入穴5の回転子鉄心における外径側の端部には外径側フラックスバリア穴6bがそれぞれ設けられている。永久磁石3は磁石挿入穴5に挿入されており、熱硬化性の接着剤7が永久磁石3と磁石挿入穴5との隙間に充填されている。
【0012】
柱状部材は内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bで構成されていて、内径側柱状部材4aは内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置されており、外径側柱状部材4bは外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置されていて、接着剤7が内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに流れ込むのを阻止する。
【0013】
上記構成によれば内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置された内径側柱状部材4aによって内径側フラックスバリア穴6aに接着剤7が充填されることが抑制され、また、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置された外径側柱状部材4bによって外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が充填されることが抑制されため、永久磁石3を固定するために回転子鉄心2と永久磁石3の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことが可能となり、接着剤の材料費を低減することおよび接着剤を硬化させる時間を短縮し生産性を向上させることができる。
【0014】
上記の実施の形態では、柱状部材として内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bの両方を設けた構成であるが、内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bの何れか一方を柱状部材として設けるように構成されたものであってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0015】
図8は実施の形態1における回転子を製造する方法を説明するためのフローチャートである。
まず、電磁鋼板加工工程S10において、回転子鉄心2を構成する回転子鉄心片が母材である電磁鋼板から打ち抜かれるとともに磁石挿入穴5、内径側フラックスバリア穴6a、外径側フラックスバリア穴6bが形成される。
【0016】
電磁鋼板積層工程S11において、電磁鋼板で形成された回転子鉄心片を積層し、回転子鉄心2が構成される。積層された電磁鋼板は、かしめ、接着、溶接等により一体化される。
【0017】
回転子鉄心片を一体化した後、柱状部材挿入工程S12において、磁石挿入穴5に回転子鉄心の積層方向から内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bを挿入する。
【0018】
接着剤充填工程S13において、磁石挿入穴5に接着剤7を充填する。このとき内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bが挿入されているため、内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が流れ込むことが抑制される。
【0019】
永久磁石挿入工程S14において、磁石挿入穴5に回転子鉄心2の積層方向から永久磁石3を挿入する。永久磁石3を磁石挿入穴5に挿入することで磁石挿入穴5に充填されていた接着剤の液面が上昇する。接着剤の充填量は、永久磁石3と磁石挿入穴5の隙間に充填されている接着剤の液面が内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bの軸方向の高さよりも低くなるようにする。
【0020】
上記製造方法によれば、磁石挿入穴5から内径側フラックスバリア穴6a、外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が漏れることを抑制することができる。
【0021】
上記の製造方法は、内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bの両方を設けた場合の一例であるが、柱状部材として内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4bの何れか一方を設けるように構成された回転子の製造方法に適用することも可能であって、同様の効果を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
図3は実施の形態2に係る回転電機の回転子を示す平面図である。図4は実施の形態2に係る回転子の一部分を示す部分平面図である。
回転子1は、回転子鉄心片を積層することで構成される回転子鉄心2と、回転子鉄心に組み込まれた永久磁石3と、柱状部材として内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dを備えている。
回転子鉄心2には、回転子1の1極を構成する少なくとも1対の磁石挿入穴5がV字配置となるように設けられ、この磁石挿入穴5は回転子1の軸方向に永久磁石3を挿入できる深さを有している。
【0023】
1対の磁石挿入穴5は内周側よりも外周側のほうがお互いの間隔が広くなるようにV字状に形成されており、磁石挿入穴5の内径側の端部には内径側フラックスバリア穴6aが、磁石挿入穴5の外径側の端部には外径側フラックスバリア穴6bがそれぞれ設けられている。
【0024】
磁石挿入穴5の外周側には内径側外周柱状部材挿入溝8aおよび外径側外周柱状部材挿入溝8bが設けられている。内径側外周柱状部材挿入溝8aは磁石挿入穴5と内径側フラックスバリア穴6aの間の外周側に、外径側外周柱状部材挿入溝8bは磁石挿入穴5と外径側フラックスバリア穴6bの間の外周側にそれぞれ配置されている。永久磁石3は磁石挿入穴5に挿入されており、熱硬化性の接着剤7が永久磁石3と磁石挿入穴5との隙間に充填されている。
【0025】
柱状部材は内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dで構成されている。内径側柱状部材4cは内径側外周柱状部材挿入溝8aに挿入されていて、内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置されており、外径側柱状部材4dは外径側外周柱状部材挿入溝8bに挿入されていて、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置されていて、接着剤7が内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに流れ込むのを阻止する。
【0026】
上記構成によれば内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置された内径側柱状部材4cによって内径側フラックスバリア穴6aに接着剤が充填されることが抑制され、また、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置された外径側柱状部材4dによって外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が充填されることが抑制されるため、永久磁石3を固定するために回転子鉄心2と永久磁石3の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことが可能となり、接着剤の材料費を低減することおよび接着剤を硬化させる時間を短縮し生産性を向上させることができる。
【0027】
上記の実施の形態では、柱状部材として内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dの両方を設けた構成であるが、内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dの何れか一方を柱状部材として設けるように構成されたものであってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0028】
図9は実施の形態2における回転子を製造する方法を説明するためのフローチャートである。
まず、電磁鋼板加工工程S20において、回転子鉄心2を構成する回転子鉄心片が母材である電磁鋼板から打ち抜かれるとともに磁石挿入穴5、内径側フラックスバリア穴6a、外径側フラックスバリア穴6b、内径側外周柱状部材挿入溝8a、外径側外周柱状部材挿入溝8bが形成される。
【0029】
電磁鋼板積層工程S21において、電磁鋼板で形成された回転子鉄心片を積層し、回転子鉄心2が構成される。積層された電磁鋼板は、かしめ、接着、溶接等により一体化される。
【0030】
永久磁石、柱状部材結合工程S22において、内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dを、篏合、接着、溶着等の固定方法によって永久磁石3に固定して、結合体を形成する。
【0031】
結合体挿入工程S23において、磁石挿入穴5に回転子鉄心2の積層方向から内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dと永久磁石3の結合体を挿入する。
内径側柱状部材4cは回転子鉄心2の積層方向から内径側外周柱状部材挿入溝8aに挿入して嵌合することによって積層方向に垂直な平面で位置決めされる。外径側柱状部材4dは、外径側外周柱状部材挿入溝8bに回転子鉄心2の積層方向から挿入して篏合することによって位置決めされる。
【0032】
接着剤充填工程S24において、磁石挿入穴5に接着剤7を充填する。このとき内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dが磁石挿入穴5、内径側外周柱状部材挿入溝8a、外径側外周柱状部材挿入溝8bに挿入されているため、内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が流れ込むことが抑制される。
接着剤の充填量は、永久磁石3と磁石挿入穴5の隙間に充填されている接着剤の液面が内径側柱状部材4aおよび外径側柱状部材4dの軸方向の高さよりも低くなるようにする。
【0033】
上記の製造方法によれば、磁石挿入穴5から内径側フラックスバリア穴6a、外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が漏れることを抑制することができる。
【0034】
上記の製造方法は、内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dの両方を設けた場合の一例であるが、柱状部材として内径側柱状部材4cおよび外径側柱状部材4dの何れか一方を設けるように構成された回転子の製造方法に適用することも可能であって、同様の効果を得ることができる。
【0035】
実施の形態3.
図5は実施の形態3に係る回転電機の回転子の一部分を示す部分平面図である。
回転子鉄心2には、回転子1の1極を構成する少なくとも1対の磁石挿入穴5がV字配置となるように設けられ、この磁石挿入穴5は回転子1の軸方向に永久磁石3を挿入できる深さを有している。
【0036】
1対の磁石挿入穴5は内周側よりも外周側のほうがお互いの間隔が広くなるようにV字状に形成されており、磁石挿入穴5の内径側の端部には内径側フラックスバリア穴6aが、磁石挿入穴5の外径側の端部には外径側フラックスバリア穴6bがそれぞれ設けられている。
【0037】
磁石挿入穴5の内周側には内径側内周柱状部材挿入溝8cおよび外径側内周柱状部材挿入溝8dが設けられている。内径側内周柱状部材挿入溝8cは磁石挿入穴5と内径側フラックスバリア穴6aの間の内周側に、外径側内周柱状部材挿入溝8dは磁石挿入穴5と外径側フラックスバリア穴6bの間の内周側にそれぞれ配置されている。永久磁石3は磁石挿入穴5に挿入されており、熱硬化性の接着剤7が永久磁石3と磁石挿入穴5との隙間に充填されている。
【0038】
柱状部材は内径側柱状部材4eおよび外径側柱状部材4fで構成されている。内径側柱状部材4eは内径側内周柱状部材挿入溝8cに挿入されていて、内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置されており、外径側柱状部材4fは外径側内周柱状部材挿入溝8dに挿入されていて、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置されていて、接着剤7が内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに流れ込むのを阻止する。
【0039】
上記構成によれば内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置された内径側柱状部材4eによって内径側フラックスバリア穴6aに接着剤が充填されることが抑制され、また、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置された外径側柱状部材4fによって外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が充填されることが抑制されるため、永久磁石3を固定するために回転子鉄心2と永久磁石3の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことが可能となり、接着剤の材料費を低減することおよび接着剤を硬化させる時間を短縮し生産性を向上させることができる。
【0040】
上記の実施の形態では、柱状部材として内径側柱状部材4eおよび外径側柱状部材4fの両方を設けた構成であるが、内径側柱状部材4eおよび外径側柱状部材4fの何れか一方を柱状部材として設けるように構成されたものであってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0041】
上記の実施の形態3においても、実施の形態2と同様に図9のフローチャートに示す製造方法において回転子を製造することができる。
【0042】
実施の形態4.
図6は実施の形態4に係る回転電機の回転子の一部分を示す部分平面図である。
回転子鉄心2には、回転子1の1極を構成する少なくとも1対の磁石挿入穴5がV字配置となるように設けられ、この磁石挿入穴5は回転子1の軸方向に永久磁石3を挿入できる深さを有している。
【0043】
1対の磁石挿入穴5は内周側よりも外周側のほうがお互いの間隔が広くなるようにV字状に形成されており、磁石挿入穴5の内径側の端部には内径側フラックスバリア穴6aが、磁石挿入穴5の外径側の端部には外径側フラックスバリア穴6bがそれぞれ設けられている。
【0044】
磁石挿入穴5の外周側には内径側外周柱状部材挿入溝8aおよび外径側外周柱状部材挿入溝8bが設けられおり、磁石挿入穴5の内周側には内径側内周柱状部材挿入溝8cおよび外径側内周柱状部材挿入溝8dが設けられている。内径側外周柱状部材挿入溝8aは磁石挿入穴5と内径側フラックスバリア穴6aの間の外周側に、外径側外周柱状部材挿入溝8bは磁石挿入穴5と外径側フラックスバリア穴6bの間の外周側にそれぞれ配置されている。また、内径側内周柱状部材挿入溝8cは磁石挿入穴5と内径側フラックスバリア穴6aの間の内周側に、外径側内周柱状部材挿入溝8dは磁石挿入穴5と外径側フラックスバリア穴6bの間の内周側にそれぞれ配置されている。永久磁石3は磁石挿入穴5に挿入されており、熱硬化性の接着剤7が永久磁石3と磁石挿入穴5との隙間に充填されている。
【0045】
柱状部材は内径側柱状部材4gおよび外径側柱状部材4hで構成されている。内径側柱状部材4gは、内径側外周柱状部材挿入溝8aおよび内径側内周柱状部材挿入溝8cに挿入されていて、内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置されており、外径側柱状部材4hは外径側外周柱状部材挿入溝8bおよび外径側内周柱状部材挿入溝8dに挿入されていて、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置されており、接着剤7が内径側フラックスバリア穴6aおよび外径側フラックスバリア穴6bに流れ込むのを阻止する。
【0046】
上記構成によれば内径側フラックスバリア穴6aと永久磁石3の間に配置された内径側柱状部材4gによって内径側フラックスバリア穴6aに接着剤が充填されることが抑制され、また、外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3の間に配置された外径側柱状部材4hによって外径側フラックスバリア穴6bに接着剤が充填されることが抑制されるため、永久磁石3を固定するために回転子鉄心2と永久磁石3の隙間に充填する接着剤の使用量を減らすことが可能となり、接着剤の材料費を低減することおよび接着剤を硬化させる時間を短縮し生産性を向上させることができる。
【0047】
上記の実施の形態では、柱状部材として内径側柱状部材4gおよび外径側柱状部材4hの両方を設けた構成であるが、内径側柱状部材4gおよび外径側柱状部材4hの何れか一方を柱状部材として設けるように構成されたものであってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0048】
上記の実施の形態4においても、実施の形態2、実施の形態3と同様に図9のフローチャートに示す製造方法によって回転子を製造することができる。
【0049】
実施の形態5.
図7は実施の形態5に係る回転電機の回転子を示す平面図である。
前記の各実施の形態では、柱状部材として内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6bと磁石挿入穴5の領域間を区画する仕切りとして機能するように角柱形状の柱状部材を設けた構成であるが、図7に例示したとおり、軸方向に長手方向を有した円柱形状の柱状部材である内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jを概ね内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6bの領域にかかり、磁石挿入穴5との間の領域に設けた構成としても良い。
このような構成とした場合、円柱形状の内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jは内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6bと永久磁石3との領域間を完全に区画する仕切りとしては機能しないものの、例えば図9における接着剤充填工程S24にて磁石挿入穴5に接着剤7が充填される際において、円柱形状の内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jが配されることにより、内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6b内に接着剤が充填されることについて、ある程度のレベルにおいて抑制される。従って、接着剤7の配される領域の具体的な図示は省略するが、内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6b内に接着剤が充填されることが抑制されることになり、結果として、磁石挿入穴5に充填されている接着剤7の量(若しくは体積あたりの充填率)よりも、内径側フラックスバリア穴6aあるいは外径側フラックスバリア穴6b内に充填されている接着剤の量(若しくは体積あたりの充填率)のほうが少ない状態が得られる。
つまり、内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jの両側で比較した場合において、永久磁石3に近い側の領域に比べて、永久磁石3から遠い側の領域での接着剤の量(若しくは体積あたりの充填率)が少ない状態、あるいは永久磁石3から遠い側の領域において接着剤が充填されてない状態が得られる。
上記の実施の形態では、柱状部材として内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jの両方を設けた構成であるが、内径側柱状部材4iおよび外径側柱状部材4jの何れか一方を柱状部材として設けるように構成されたものであってもよく、同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態5においても、前記各実施の形態と同様に図8図9のフローチャートに示す製造方法を適宜選択して回転子を製造することができる。
【0050】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0051】
1 回転子、2 回転子鉄心、3 永久磁石、4a 内径側柱状部材、 4b 外径側柱状部材、5 磁石挿入穴、6a 内径側フラックスバリア穴、6b 外径側フラックスバリア穴、7 接着剤、8a 内径側外周柱状部材挿入溝、8b 外径側外周柱状部材挿入溝、8c 内径側内周柱状部材挿入溝、8d 外径側内周柱状部材挿入溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9