【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月3日 日本高圧力技術協会平成31年度秋季講演会にて公開 令和1年10月9日 第8回OmegaLandユーザー会にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価ステップにおいて、前記制御部が、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の視認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が視認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の視認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による視認行動の実施時期を評価する
請求項1記載の運転訓練方法。
前記評価ステップにおいて、前記制御部が、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の発声確認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が発声確認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の発声確認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による発声確認行動の実施時期を評価する
請求項3記載の運転訓練方法。
前記制御部が、前記システムの運転に習熟した訓練指導員による前記シナリオに基づいた前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報を基準情報として収集する収集ステップを含み、
前記出力ステップにおいて、前記制御部が収集した前記基準情報と前記運転員による前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報とを比較した評価を出力する
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の運転訓練方法。
訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する確認行動である前記運転員の視認行動に関する第2の評価と、を含む総合評価が得られるように制御を行う制御部と、
前記運転員による前記模擬システムの運転に対して、前記制御部で得られた前記総合評価を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が視認した視認対象物の視認順、及び視認行動の実施時期が前記シナリオで定義された視認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を算出する制御を行う
運転訓練装置。
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の視認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が視認行動を行ってから前記運転員の視認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による視認行動の実施時期を評価する制御を行う
請求項6記載の運転訓練装置。
訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する確認行動である前記運転員の発声確認行動に関する第2の評価と、を含む総合評価が得られるように制御を行う制御部と、
前記運転員による前記模擬システムの運転に対して、前記制御部で得られた前記総合評価を出力する出力部と、
を備え、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が発した声の発声順、及び発声確認行動の実施時期が前記シナリオで定義された発声確認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を算出する制御を行う
運転訓練装置。
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の発声確認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が発声確認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の発声確認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による発声確認行動の実施時期を評価する制御を行う
請求項8記載の運転訓練装置。
前記制御部は、前記システムの運転に習熟した訓練指導員による前記シナリオに基づいた前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報を基準情報として収集すると共に、収集した前記基準情報と前記運転員による前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報とを比較した評価を出力する
請求項6〜請求項9の何れか1項に記載の運転訓練装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばLNG(Liquefied Natural Gas)受入基地におけるプラントのように大規模なシステムの運転制御には、分散型制御システム(Distributed Control System:以降、「DCS」という)が用いられており、運転制御の自動化によって運転員による操作の効率化が実現されている。
【0005】
一方で、システムの運転制御が自動化されている場合であっても、稀に何らかの運転上の異常が発生したり、操作手順の間違いやシステムの状況に適した操作を行わなかったことによりシステムが一時的に不安定な動作を行ったりすることがある。
【0006】
したがって、運転員のシステムに対する操作の定量評価、及び操作の影響を受けて変動するシステム状態の定量評価を行い、評価結果を運転員にフィードバックすることで運転員のシステムに対する運転能力を向上させるため、運転員に対して運転訓練装置を用いたシステムの運転訓練を行う。
【0007】
従来の運転訓練装置には、例えば運転員の操作量、運転の結果として変化するシステムの状態量、DCS等から発報されるアラームの有無といったシステムのプロセス変動から、運転員のシステムに対する運転能力を定量的に評価する機能を提供するものがある。 本来、システムの運転や異常発生時の復旧操作を適切に行っているかを評価するためには、単に運転員がどのような操作を行ったかを評価するだけでなく、運転員がシステムのどのような情報に基づき、どのようなタイミングでどのような操作を行ったのか、また、操作の結果、システムがどのような状況に変化したのかを確認し、その確認結果に応じた操作を行っているかという、システムのプロセス状態を確認する確認行動を含めて運転員の運転能力を評価する必要がある。
【0008】
しかしながらシステムの運転に対して運転員が行った確認行動を客観的に定量評価することはこれまで困難であると考えられていたため、従来の運転訓練装置には、運転員が行う確認行動も含めたシステムに対する操作を総合的に評価するものは存在しなかった。
【0009】
本発明は上記事実を鑑みてなされたものであり、システムの操作と共に行われる運転員の確認行動を含めて、システムに対する運転員の運転能力を評価することができる運転訓練方法、運転訓練装置、運転訓練プログラム、及び運転訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1態様に係る運転訓練方法は、制御部、及び出力部を含む運転訓練装置を用いた運転訓練方法であって、前記制御部が、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する
確認行動である前記運転員の視認行動
に関する第2の評価と、を含む総合評価を行う評価ステップと、前記出力部が、前記運転員による前記模擬システムの運転に対して前記総合評価を出力する出力ステップと、を含み、
前記制御部は、前記評価ステップにおいて、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が視認した視認対象物の視認順、及び視認行動の実施時期が前記シナリオで定義された視認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を行う。
【0011】
第2態様に係る運転訓練方法は、第1態様に係る運転訓練方法
の前記評価ステップにおいて、前記制御部が、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の視認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が視認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の視認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による視認行動の実施時期を評価する。
【0012】
第3態様に係る運転訓練方法は、制御部、及び出力部を含む運転訓練装置を用いた運転訓練方法であって、前記制御部が、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する
確認行動である前記運転員の
発声確認行動
に関する第2の評価と、を含む総合評価を行う評価ステップと、前記出力部が、前記運転員による前記模擬システムの運転に対して前記総合評価を出力する出力ステップと、を含み、
前記制御部は、前記評価ステップにおいて、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が発した声の発声順、及び発声確認行動の実施時期が前記シナリオで定義された発声確認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を行う。
【0013】
第4態様に係る運転訓練方法は、
第3態様に係る運転訓練方法の前記評価ステップにおいて、前記制御部が、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の発声確認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が発声確認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の発声確認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による発声確認行動の実施時期を評価する。
【0014】
第5態様に係る運転訓練方法は、第1態様〜第4態様の何れかの態様に係る運転訓練方法において、
前記制御部が、前記システムの運転に習熟した訓練指導員による前記シナリオに基づいた前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報を基準情報として収集する収集ステップを含み、前記出力ステップにおいて、
前記制御部が収集した前記基準情報と前記運転員による前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報とを比較した評価を出力する。
【0015】
第6態様に係る運転訓練装置は、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する
確認行動である前記運転員の視認行動
に関する第2の評価と、を含む総合評価が得られるように制御を行う制御部と、前記運転員による前記模擬システムの運転に対して、前記制御部で得られた前記総合評価を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が視認した視認対象物の視認順、及び視認行動の実施時期が前記シナリオで定義された視認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を算出する制御を行う。
【0016】
第7態様に係る運転訓練装置は、第6態様に係る運転訓練装置において、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の視認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が視認行動を行ってから前記運転員の視認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による視認行動の実施時期を評価する制御を行う。
【0017】
第8態様に係る運転訓練装置は、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する
確認行動である前記運転員の
発声確認行動
に関する第2の評価と、を含む総合評価が得られるように制御を行う制御部と、前記運転員による前記模擬システムの運転に対して、前記制御部で得られた前記総合評価を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が発した声の発声順、及び発声確認行動の実施時期が前記シナリオで定義された発声確認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を算出する制御を行う。
【0018】
第9態様に係る運転訓練装置は、第
8態様に係る運転訓練装置において、
前記制御部は、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴う前記運転員の発声確認行動の実施時期を前記評価条件に基づいて評価する場合、前記運転員が発声確認行動を行ってから前記制御部で前記運転員の発声確認行動に関する情報を受け付けるまでの遅延時間を考慮して、前記運転員による発声確認行動の実施時期を評価する制御を行う。
【0019】
第10態様に係る運転訓練装置は、第6態様〜第9態様の何れかの態様に係る運転訓練装置において、前記制御部が、前記システムの運転に習熟した訓練指導員による前記シナリオに基づいた前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報を基準情報として収集すると共に、収集した前記基準情報と前記運転員による前記模擬システムの操作手順及び前記確認行動を含む情報とを比較した評価を出力する。
【0020】
第11態様に係る運転訓練プログラムは、コンピュータに、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、運転員による前記システムの動きを模擬した模擬システムの操作手順に関する第1の評価と、前記模擬システムの操作に対する
前記運転員の視認行動、及び発声確認行動の少なくとも一方の確認行動に関する第2の評価と、を含む総合評価を行い、前記運転員による前記模擬システムの運転に対して前記総合評価を出力する処理を実行させ
、前記第2の評価の評価対象に前記運転員による視認行動が含まれる場合、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が視認した視認対象物の視認順、及び視認行動の実施時期が前記シナリオで定義された視認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を行い、前記第2の評価の評価対象に前記運転員による発声確認行動が含まれる場合、前記運転員による前記模擬システムの操作に伴い前記運転員が発した声の発声順、及び発声確認行動の実施時期が前記シナリオで定義された発声確認行動に関する評価条件を満たしているか否かによって前記第2の評価を行う処理を実行させるためのプログラムである。
【0021】
第12態様に係る運転訓練システムは、訓練対象のシステムを制御するために運転員が操作を行うDCSと、第6態様〜第10態様の何れかの態様に係る運転訓練装置と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
第1態様、
第3態様、第6態様、
第8態様、第11態様、及び第12態様によれば、システムの操作と共に行われる運転員の確認行動を含めて、システムに対する運転員の運転能力を評価することができる、という効果を有する。
【0026】
第5態様、及び第10態様によれば、訓練指導員の運転状況を基準にして、運転員の運転能力を評価することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る運転訓練システム1の構成例を示す図である。運転訓練システム1は、DCS10、トレーニー端末20、及びインストラクター端末30を含み、DCS10、トレーニー端末20、及びインストラクター端末30は、それぞれ通信回線2で接続されている。
【0030】
以降において「システム」とは、運転訓練システム1を指しているのではなく、例えばLNG受入検査システムのように、運転訓練システム1を用いて運転の訓練を行う訓練対象となるシステムのことをいう。
【0031】
DCS10は、システムの運転訓練を受ける運転員がシステムを制御するための操作を行い、操作に伴い変化するシステムの各種状態を確認するために必要な機能を備えた分散型制御システムである。DCS10は、例えばシステムの動作を管理するコントロールセンターに設置される。後述するように、DCS10は、システムに対する運転員の操作内容を受け付けると共に、システムの操作に伴う運転員の確認行動も収集する。
【0032】
以降では、システムの運転訓練を受ける運転員を「トレーニー」と称し、システムの各種状態を「プロセス状態」ということにする。
【0033】
通常、DCS10は実際のシステムに接続されているが、システムの運転訓練中は制御対象をトレーニー端末20内にある模擬システムに切り替えている。
【0034】
運転訓練装置の一例であるトレーニー端末20は、通信回線2を通じてDCS10からトレーニーの操作内容、及び確認行動に関する情報を受け付け、システムの動作を模擬的に再現する模擬システムを用いて、トレーニーの操作内容に従ったシステムの動作を再現する。その上で、トレーニー端末20は、模擬システムにおけるプロセス状態を表す情報(以降、「プロセス情報」という)をDCS10に送信する。トレーニーは、トレーニー端末20から送信されたプロセス情報をDCS10で確認しながら、システムの運転訓練を行うことになる。
【0035】
また、トレーニー端末20は、DCS10から受け付けたトレーニーの操作内容、及び確認行動に関する情報を用いて、模擬システムの操作手順に関する評価と、模擬システムの操作に対する確認行動に関する評価を行い、各々の評価を含む総合評価を出力する。
【0036】
インストラクター端末30は、システムの運転に習熟した訓練指導員(以降、「インストラクター」という)が操作する端末である。インストラクターは、システムの運転手順、及びシステムの運転手順に沿ってシステムに対するトレーニーの運転を評価するための評価内容が定義されたシナリオを選択し、選択したシナリオで定義されたシステムの運転内容をトレーニーに体得させる。
【0037】
トレーニーによるシステムの操作内容、操作に伴うプロセス情報の変化、及びトレーニーの確認行動の状況はインストラクター端末30にも表示され、インストラクターが確認することができる。また、模擬システムの操作手順に関する評価、模擬システムの操作に対する確認行動に関する評価、及び総合評価についてもインストラクター端末30に表示される。したがって、インストラクターは、インストラクター端末30に表示される情報に基づいて、システムの運転訓練中、または運転訓練終了後にトレーニーに対してシステムの運転に関する助言を行うことができる。
【0038】
なお、シナリオの選択はインストラクター端末30からだけでなく、トレーニー端末20からも行うことができる。したがって、トレーニーはインストラクターがいない場合であっても、自分で訓練したいシステムの運転内容に対応したシナリオを選択して運転訓練を行うことができる。また、模擬システムの操作手順に関する評価(「第1の評価」に相当する)、模擬システムの操作に対する確認行動に関する評価(「第2の評価」に相当する)、及び総合評価はトレーニー端末20にも出力されるため、トレーニーはインストラクターがいない場合でも、システムの運転に関する自身の問題点を知ることができる。したがって、インストラクター端末30は、運転訓練システム1に必ずしも必要な端末ではない。
【0039】
以降では、模擬システムの操作手順に関する評価、模擬システムの操作に対する確認行動に関する評価、及び総合評価を区別して説明する必要がない場合には、単に「評価」ということにする。
【0040】
DCS10、トレーニー端末20、及びインストラクター端末30を接続する通信回線2には、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)といった公知の通信回線が用いられる。通信回線2は有線であっても無線であってもよい。
【0041】
次に、DCS10、及びトレーニー端末20に関して、更に詳細に説明する。
図2は、DCS10及びトレーニー端末20の機能構成例を示す図である。
【0042】
DCS10は、入力部11、DCS演算部12、及びシステム表示部13を含み、入力部11には操作卓3、アイトラッキング装置4、及びヘッドセット5が接続され、システム表示部13には表示板6が接続される。
【0043】
システムの運転訓練中、トレーニーは表示板6を監視し、表示板6に表示されるアラーム計器が示すプロセス情報の値、プロセス情報の値に対応した色、又は警告音からシステムの状況を判断し、システムの状況に応じた操作を操作卓3から行う。プロセス情報には、例えば温度、圧力、流量、バルブの開閉量、ポンプの動作状態、及び消費電力といったシステムの各種状態が含まれる。
【0044】
システムを安定的に運転するためには、決められた操作手順を正しく行う必要があるが、その前提として、例えばプロセス情報の確認、及び行った操作が自分の行おうとしている操作であるかの確認といった操作に対する確認行動が重要である。そのため、実際のシステムの運転では、操作に必要となるプロセス情報の視認行動、及びプロセス情報や操作内容を言葉にして発声することで確認を行う発声確認行動を行い、操作手順や操作内容の誤りを減らす対応をとっている。
【0045】
したがって、システムの運転訓練中、トレーニーはトレーニーの視線を追跡し、トレーニーが行った視認行動に関する情報、すなわち視認情報を取得するアイトラッキング装置4を装着している。
【0046】
具体的には、アイトラッキング装置4は、視認情報として視認を行ったか(視認行動の有無)、何を見たか(視認対象物)、いつ見たか(視認行動の実施時期)、どのくらいの長さ見たか(視認継続時間)、及びどのような順番で見たか(視認順)といった情報を取得し入力部11に出力する。
【0047】
また、システムの運転訓練中、トレーニーはトレーニーが発した言葉、すなわち音声を電気信号に変換するマイクが付いたヘッドセット5を装着している。ヘッドセット5はマイクで集音した音声の内容を認識する音声認識ユニットを備え、音声認識ユニットで音声の内容を文字に変換し、音声に対応した文字を入力部11に出力する。このようにヘッドセット5は、トレーニーが行った発声確認行動に関する情報、すなわち発声確認情報を取得する。
【0048】
具体的には、ヘッドセット5は、発声確認情報としてトレーニーが模擬システムの操作に対して発声確認を行ったか(発声確認行動の有無)、発声確認時にどのような内容の言葉を発したか(発声内容)、いつ発したか(発声確認行動の実施時期)、どのような順番で発したか(発声順)といった情報を取得し入力部11に出力する。
【0049】
なお、周囲のノイズを拾わずにトレーニーが発した音声だけが集音できるように、ヘッドセット5のマイクは指向性の強いマイクであることが好ましい。
【0050】
入力部11は、操作卓3、アイトラッキング装置4、及びヘッドセット5からそれぞれ操作内容を表す操作情報、視認情報、及び発声確認情報を受け付け、DCS演算部12に通知する。
【0051】
DCS演算部12は、通信回線2を介して後述するトレーニー端末20のインターフェース部21と接続され、入力部11から受け付けた模擬システムの操作情報、視認情報、及び発声確認情報をリアルタイムにインターフェース部21に送信する。
【0052】
また、DCS演算部12は、トレーニーの操作内容に伴い変化する模擬システムのプロセス情報をインターフェース部21から受信し、システム表示部13に通知する。
【0053】
システム表示部13は、DCS演算部12から受け付けたプロセス情報を表示板6に表示する。
【0054】
一方、トレーニー端末20は、インターフェース部21、制御部22、シミュレータ部23、データ格納部24、端末入力部25、及び出力部26の各機能部を含む。
【0055】
インターフェース部21は、トレーニー端末20とDCS10とのインターフェースとして機能し、通信回線2を介してDCS10から操作情報、視認情報、及び発声確認情報を受信すると共に、シミュレータ部23で再現される模擬システムのプロセス情報をDCS10に送信する。DCS10から受信した操作情報、視認情報、及び発声確認情報は制御部22に通知される。
【0056】
制御部22は、インストラクター端末30で選択されたシナリオに従ったシステムの運転訓練を開始し、操作情報に基づいて模擬システムのシーケンス制御を行う。
【0057】
また、制御部22は、シナリオに定義付けられている操作手順に関する評価条件、及び確認行動に関する評価条件を参照して、運転訓練に対するトレーニーの評価を算出する制御を行う。
【0058】
そのため、制御部22は、トレーニーがシナリオに定義された操作項目のどの操作を行っているのかを監視すると共に、トレーニーが行う操作に関してどのような評価条件が設定されているのかを参照しながら評価を行う。シナリオにはプロセス情報に対する評価条件も定義されているため、制御部22は、トレーニーの操作によって変化するプロセス情報を監視し、プロセス情報に対する評価条件から算出したトレーニーの評価も算出することができる。
【0059】
シミュレータ部23は、訓練対象となるシステムの動作を模擬的に再現するプロセスモデル、すなわち模擬システムを用いて、システムのプロセス情報を逐次演算し、プロセス情報を制御部22に通知する。制御部22に通知したプロセス情報はインターフェース部21を介してDCS10に送信される。
【0060】
また、シミュレータ部23は、制御部22から操作情報を受け付けると、操作情報によって表される操作を模擬システムに対して実行し、操作後のプロセス情報を演算する。
【0061】
データ格納部24は、運転訓練やトレーニーの評価に必要となるデータを格納する。具体的には、データ格納部24は、システムの様々な運転手順に対応した複数のシナリオ、及びシミュレータ部23でプロセスモデルを構築するために必要となる各種パラメータを格納する。また、データ格納部24は、DCS10から受信した操作情報、視認情報、及び発声確認情報、並びに、制御部22で算出した運転訓練に対するトレーニーの評価を、それぞれ実行したシナリオと対応付けてトレーニー毎に格納する。
【0062】
端末入力部25にはキーボードやマウスが接続され、例えば実施した運転訓練に対する各種評価の表示を行う指示をトレーニーから受け付け、制御部22に通知する。
【0063】
出力部26には表示装置7が接続され、制御部22の指示に従って、例えば実施した運転訓練に対する各種評価を出力し、表示装置7にトレーニーの評価結果を表示する。
【0064】
制御部22は、運転訓練の開始時に選択されたシナリオを読み込み、模擬システムがシナリオで定義された初期状態となるようにシミュレータ部23を制御すると共に、初期状態に対応したプロセス情報をDCS10に送信して、選択されたシナリオに基づくシステムの運転訓練を開始する。
【0065】
図2に示したトレーニー端末20は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)のようなコンピュータ40を用いて構成される。
図3は、トレーニー端末20における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0066】
コンピュータ40は、
図2に示したトレーニー端末20の各機能部の処理を担うCPU(Central Processing Unit)41、運転訓練プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)42、CPU41の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)43、不揮発性メモリ44、及び入出力インターフェース(I/O)45を備える。CPU41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45はバス46を介して各々接続されている。
【0067】
不揮発性メモリ44は、不揮発性メモリ44に供給される電力が遮断されたとしても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。不揮発性メモリ44は、必ずしもコンピュータ40に内蔵されている必要はなく、例えばメモリカードのようにコンピュータ40に着脱される記憶装置であってもよい。不揮発性メモリ44には、例えばデータ格納部24に格納される各種データが記憶される。
【0068】
I/O45には、例えば通信ユニット47、入力ユニット48、及び出力ユニット49が接続される。
【0069】
通信ユニット47は通信回線2に接続され、通信回線2に接続されるDCS10及びインストラクター端末30と通信を行う通信プロトコルを備える。なお、通信回線2には、DCS10、トレーニー端末20、及びインストラクター端末30以外の外部装置が接続されていてもよく、通信ユニット47は外部装置との通信も行う。
【0070】
入力ユニット48は、トレーニーの指示を受け付けてCPU41に通知する装置であり、既に説明したように、例えばキーボードやマウスが含まれる。
【0071】
出力ユニット49は、CPU41によって処理された各種情報(例えばトレーニーの評価結果)を出力する装置であり、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、及び映像をスクリーンに投影するプロジェクタのような表示デバイスが含まれる。出力ユニット49として、CPU41によって処理された各種情報を用紙等の記録媒体に形成する画像形成ユニットを用いてもよい。
【0072】
次に、本実施形態に係る運転訓練システム1の動作を、トレーニー端末20の動作を中心にして詳細に説明する。
【0073】
図4は、選択されたシナリオに基づくシステムの運転訓練の開始指示を受け付けた場合に、CPU41によって実行される運転訓練処理の流れの一例を示すフローチャートである。運転訓練処理を規定する運転訓練プログラムは、例えばトレーニー端末20のROM42に予め記憶されている。トレーニー端末20のCPU41は、ROM42に記憶される運転訓練プログラムを読み込み、運転訓練処理を実行する。
【0074】
ステップS10において、CPU41は、選択されたシナリオに予め設定されている評価定義50を取得する。
【0075】
評価定義50とは、トレーニーによるシステムの操作内容、及び操作に対する確認行動を評価するための評価条件を定義したテーブルであり、例えばシナリオに規定されるシステムの操作段階毎に、インストラクターによって定義される。
【0076】
評価条件は、評価対象となる項目に対して定義される。本実施形態に係る運転訓練システム1の場合、模擬システムの操作手順、及び模擬システムの操作に対する確認行動を評価することから、評価条件は操作手順、及び確認行動に対して定義される。また、確認行動にはプロセス情報の視認行動、及び発声確認行動が存在することから、視認行動、及び発声確認行動の各々に対して評価条件が定義される。
【0077】
図5は、評価定義50のうち、操作手順、及び視認行動の評価条件を組み合わせて定義した評価定義50Aの一例を示す図である。
【0078】
図5に示すように、評価定義50Aではトレーニーが行う操作手順が、模擬システムの操作段階を表す操作項目毎にまとめて定義されている。
図5に示す評価定義50Aの例では、「ポンプ運転」、「流量調整」、及び「受入れ増加と流量変更」という3つの操作項目が定義されている。
【0079】
また、各々の操作項目に対して、例えば操作項目を識別するための項目ID、1つの操作項目を終了するまでの制限時間であるタイムアウト時間、及びトレーニーが操作項目を終了したとCPU41で判定するための項目終了条件が項目毎定義として定義されている。
【0080】
各操作項目には、トレーニーが行う操作手順が時系列に沿って定義される。トレーニーが操作手順に従って模擬システムの操作を行えば、トレーニーの評価が高く設定されるようになっている。
【0081】
操作手順のうち、トレーニーによる視認行動が必要な操作手順には視認欄に丸印が設定され、視認対操作順定義欄、視認エリア欄、視認評価Gr欄、視認スコア欄、及び視認前後時間制限欄と共に、視認行動に関する評価条件を構成する。
【0082】
視認対操作順定義欄において、“A”は対応する操作、すなわち同じ行に定義されている操作手順に記載の内容を行った後に視認行動を行うことを定義し、“B”は対応する操作を行う前に視認行動を行うことを定義している。
【0083】
また、“RU”は、“RU”が定義されている行から見て上に定義されている直近の操作手順に記載の内容を行った後に、操作対象が指定された状態に変化したことを確認してから視認行動を行うことを定義している。“N”は、時系列に沿った操作手順の流れの中で独立して視認行動を行うことを定義している。
【0084】
視認エリア欄において、“S1”等の各記号は、DCS10の表示板6上の視認すべき領域を定義している。すなわち、DCS10の表示板6は複数の領域に分割され、各々の領域には領域を一意に表す記号が対応付けられている。表示板6に表示される各種計器毎に表示板6を分割し、各々の領域に記号を対応付ければ、視認エリア欄に記号を設定することでトレーニーが視認すべき計器を指定することができる。
【0085】
視認評価Gr欄において、連続する“ANY”の記号は、複数の行に定義されている視認行動の評価条件を1つのグループとして取り扱い、同じグループ内であれば、視認確認の順序は順不同であることを定義している。なお、同じグループの先頭の行の視認評価Gr欄には、同じグループの先頭であることを表すため、例えば“ANY1”のように、“ANY”の後に符号を付加している。
【0086】
視認スコア欄には、視認行動が行われた場合にトレーニーに対して加算する評価スコアが定義される。
【0087】
視認前後時間制限欄には、視認行動を行うべき状況になった時点からの時間制限が定義される。この場合、トレーニーは、視認前後時間制限欄に定義された時間以内に視認行動をとる必要がある。視認前後時間制限欄に定義された時間以内にトレーニーが視認行動をとらなかった場合、次の評価条件が評価されることになる。
【0088】
すなわち、評価定義50Aにおいて、視認欄は、視認行動の有無を定義した評価条件であり、視認エリア欄は、視認対象物を定義した評価条件である。また、評価定義50Aにおける視認行動の定義の上下方向の並びは視認順を定義しており、視認評価Gr欄は、グループ内における視認順の詳細を定義した評価条件である。また、視認対操作順定義欄及び視認前後時間制限欄は、視認行動の実施時期を定義した評価条件である。
【0089】
このように評価定義50Aには、トレーニーに要求される視認行動に関する評価条件が定義されており、トレーニーが評価定義50Aに定義された評価条件を満たした視認行動を行った場合に、視認スコア欄に定義された評価スコアが視認行動毎にトレーニーの評価として加算される。すなわちトレーニーの評価は評価スコアで表され、評価スコアが大きい値であるほどシステムに対するトレーニーの運転能力が高いことを表す。
【0090】
なお、
図5に示した評価定義50Aは一例であり、評価定義50Aで定義される定義内容は、
図5に示した評価定義50Aの定義内容に限定されるものではなく、必要に応じて削除及び追加を行ってもよい。例えば、トレーニーによるシステムの操作内容、及び操作に対する確認行動を評価する上で特に必要がない定義内容(例えば「項目ID」)があれば評価定義50Aから削除してもよい。また、トレーニーによるシステムの操作内容、及び操作に対する確認行動を評価する上で更に必要な定義内容があれば評価定義50Aに追加してもよい。具体的には、視認行動に関する評価条件として、例えば5秒以上視認を行ったかといった視認継続時間を定義した評価条件を追加してもよい。
【0091】
一方、
図6は、評価定義50のうち、操作手順に対応した発声確認行動の評価条件を定義した評価定義50Bの一例を示す図である。評価定義50Bの操作対象変数:値欄には、
図5に示した評価定義50Aの操作手順欄に定義されている操作手順をCPU41で解釈可能な形式で表した内容が定義される。なお、評価定義50Aの左に付された行番号4〜8がポンプ運転の操作手順に対応し、行番号9〜25が流量調整の操作手順に対応し、行番号26〜36が受入れ増加と流量変更の操作手順に対応している。
【0092】
操作手順のうち、トレーニーによる発声確認行動が必要な操作手順には、音声欄に丸印が設定され、音声対操作順定義欄、音声評価Gr欄、音声確認キーワード欄、音声スコア欄、及び音声前後時間制限欄と共に、発声確認行動に関する評価条件を構成する。
【0093】
図5の評価定義50Aにおける視認対操作順定義欄が視認行動の実施時期を定義しているのに対して、音声対操作順定義欄は、発声確認行動の実施時期を定義している。なお、“LU”は、“LU”が定義されている行から見て上に定義されている直近の操作手順において、操作対象が指定された状態に変化したことを確認してから発声確認行動を行うことを定義している。“C”は、“C”が定義されている行から見て隣接した上の行に定義されている発声確認行動が行われた場合に、継続して評価を行う評価条件であることを定義している。
【0094】
図5の評価定義50Aにおける視認評価Gr欄がグループ内における視認順の詳細を定義しているのに対して、音声評価Gr欄は、グループ内における発声確認順の詳細を定義している。音声評価Gr欄において、連続する“ETH”の記号は、複数の行に定義されている発声確認行動の評価条件を1つのグループとして取り扱い、同じグループ内であれば、グループ内の何れか1つに対応した発声確認行動を行えばよいことを定義している。なお、同じグループの先頭の行の音声評価Gr欄には、同じグループの先頭であることを表すため、例えば“ETH1”のように、“ETH”の後に符号を付加している。
【0095】
音声評価Gr欄には、
図5の評価定義50Aの視認評価Gr欄に定義されていた“ANY”が定義されることもある。反対に、評価定義50Aの視認評価Gr欄に“ETH”が定義されることもある。
【0096】
音声確認ワード欄には、トレーニーが発声しなければならない言葉が定義される。具体的には、音声確認ワード欄には確認対象となる装置名やタグ名、行う操作の内容、及び確認したことを意味する用語が定義される。
【0097】
したがって、例えば
図6の評価定義50Bの左に付された行番号12、13の音声評価Gr欄にはそれぞれ“ETH1”、“ETH”が設定されているため、この場合には「流量よし」又は「FC103よし」とトレーニーが発声確認行動をとることが要求されている。
【0098】
なお、音声確認ワード欄には、トレーニーが発声する言葉そのものを定義してもよいが、キーワードを定義してもよい。この場合、例えば音声確認ワードに「流量」と定義されている場合、トレーニーが「流量よし」と発声しても、「流量確認」と発声しても、何れの場合であっても定義した発声確認行動が行われたと判断される。
【0099】
なお、トレーニーが発声した言葉がヘッドセット5の音声認識ユニットで同音異義語に誤変換されると、トレーニーが確認のための正しい言葉を発したにもかかわらず、音声確認ワード欄に定義されていない言葉を発したと評価されてしまうことになる。例えばトレーニーが「ポンプ起動」と発した場合、「ポンプ軌道」、「ポンプ機動」、又は「ポンプ気道」のように同音異義語に誤変換されることがある。
【0100】
したがって、例えばシステムの運転訓練で使用する言葉を予め辞書登録しておく等の前処理を行うことで、トレーニーの評価が正しく行われるようにしてもよい。
【0101】
音声スコア欄には、発声確認行動が行われた場合にトレーニーに対して加算する評価スコアが定義される。
【0102】
音声前後時間制限欄には、発声確認行動を行うべき状況になった時点からの時間制限が定義される。この場合、トレーニーは、音声前後時間制限欄に定義された時間以内に確認行動をとる必要がある。音声前後時間制限欄に定義された時間以内にトレーニーが発声確認行動をとらなかった場合、次の評価条件が評価されることになる。
【0103】
すなわち、評価定義50Bにおいて、音声欄は、発声確認行動の有無を定義した評価条件であり、音声確認ワード欄は、発声確認行動で発する発声内容を定義した評価条件である。また、評価定義50Bにおける発声確認行動の定義の上下方向の並びは発声確認行動の実施順を定義しており、音声評価Gr欄は、グループ内における発声確認行動の実施順の詳細を定義した評価条件である。また、音声対操作順定義欄及び音声前後時間制限欄は、発声確認行動の実施時期を定義した評価条件である。
【0104】
このように評価定義50Bには、トレーニーに要求される発声確認行動に関する評価条件が定義されており、トレーニーが評価定義50Bに定義された評価条件を満たした発声確認行動を行った場合に、音声スコア欄に定義された評価スコアが発声確認行動毎にトレーニーの評価として加算される。
【0105】
なお、視認スコア欄及び発声スコア欄の評価スコアに負の値を設定してもよい。トレーニーが行ってはいけない操作や確認行動を表す評価条件に負の値が設定された評価スコアを設定すれば、トレーニーの操作や確認行動が当該評価条件を満たした場合、評価スコアの合計値を減点することができる。
【0106】
トレーニーの評価は評価対象となる事象、例えば模擬システムの操作、視認行動、及び発声確認行動に対して行われることから、こうした評価対象となる事象を分類したものを評価区分という。
【0107】
図4のステップS10で上記に説明した評価定義50を取得した後、ステップS20において、CPU41は、ステップS10で取得した評価定義50を用いて評価区分別情報51の生成を行う。
【0108】
図7は、評価区分別情報51の一例を示す図である。評価区分別情報51は、評価定義50で操作手順に対応させてそれぞれ並列に定義付けていた視認行動、及び発声確認行動に関する評価条件を、評価順に基づいて時系列に並べ替えて定義し直した情報である。評価区分別情報51の各々の行が独立した評価条件を表す。
【0109】
ステップS30において、CPU41は、ステップS20で生成した評価区分別情報51を用いて評価シナリオ52を生成する。評価シナリオ52は、選択されたシナリオをコンピュータ40で処理するための形式に変換したデータである。評価シナリオ52の一例を
図8に示す。
【0110】
ステップS40において、CPU41は、評価シナリオ52をRAM43に読み込み、運転訓練プログラムで評価シナリオ52の内容を参照しながら、選択されたシナリオに基づき、模擬システムを用いたトレーニーの運転訓練を開始する。すなわち、CPU41は、評価シナリオ52の内容を評価ロジックとして運転訓練システム1に反映する。
【0111】
ステップS50において、CPU41は、トレーニーの操作内容に従い模擬システムのプロセス情報を逐次演算すると共に、評価ロジックに従って、トレーニーの運転が各時点で評価対象となる事象の評価条件を満たすか否かを逐次判定しながら、トレーニーの評価スコアを算出する。
【0112】
既に説明したように、トレーニーは運転訓練中にアイトラッキング装置4、及びヘッドセット5を装着しているため、CPU41には操作情報の他、トレーニーの視認情報、及び発声確認情報が通知される。したがって、CPU41は、操作情報から模擬システムの操作手順に関する評価条件を満たしているか否かを判定し、視認情報から視認行動に関する評価条件を満たしているか否か判定し、発声確認情報から発声確認行動に関する評価条件を満たしているか否か判定する。CPU41は、各々の評価条件の判定結果から、トレーニーの評価スコアを算出する
【0113】
なお、アイトラッキング装置4での視線追跡処理、及びヘッドセット5での音声認識処理に時間を要したり、通信回線2に遅延が発生したりすることがあるため、CPU41は評価期間に制限がある評価条件を判定する場合、操作情報、視認情報、及び発声確認情報の遅延を考慮して評価期間を延長する等の処理を行ってもよい。
【0114】
ステップS60において、CPU41は運転訓練が終了した後、ステップS50で算出したトレーニーの評価スコアを出力ユニット49に出力して、トレーニーに運転訓練の評価を通知する。この場合、CPU41は総合評価の他、総合評価の内容を評価区分毎に細分化してトレーニーに通知してもよい。すなわち、CPU41は、模擬システムの操作手順に関する評価、模擬システムの操作に対する視認行動に関する評価、及び模擬システムの操作に対する発声確認行動に関する評価というように評価区分を細分化してトレーニーに通知する。評価スコアの表示形態に制約はなく、数値の他、グラフの形式で通知される。
【0115】
以上により、
図4に示した運転訓練処理を終了する。
【0116】
このように、本実施の形態に係るトレーニー端末20を用いた運転訓練システム1によれば、模擬システムの操作手順に関する評価だけでなく、これまで客観的に定量評価することが困難であった、システムの運転に対してトレーニーが行った確認行動を含めたトレーニーの運転能力を総合的に評価することができる。
【0117】
なお、トレーニー端末20におけるトレーニーの評価の通知方法には様々な方法が適用される。例えば、上記で説明したトレーニーの評価は、シナリオと対応付けられた評価条件に基づいて通知されるが、更に、インストラクターの運転状況と比較してトレーニーの評価を通知するようにしてもよい。
【0118】
具体的には、システムの運転に習熟したインストラクターに、トレーニーが運転訓練を行うシナリオと同じシナリオに従って模擬システムの操作を事前に行ってもらい、CPU41は、その時のインストラクターによる操作手順及び操作に伴う確認行動を含んだ模擬システムの運転状況を示す基準情報を収集し、不揮発性メモリ44に記憶する。すなわち、CPU41は、インストラクターの操作情報、視認情報、発声確認情報、操作に伴うプロセス情報の変化、及び模擬システムの動作の異常を知らせる警報回数等、模擬システムの運転状況を示す情報を基準情報として収集する。
【0119】
その上で、CPU41は、基準情報と、トレーニーによる同じシナリオを用いた模擬システムの操作手順及び操作に伴う確認行動を示す情報とを比較して、トレーニーの評価を通知する
【0120】
図9は、トレーニーの運転訓練における特定のプロセス情報の変化を示すプロセス変動グラフ53の一例を示す図である。
【0121】
プロセス変動グラフ53において、横軸は時間を表し、縦軸は特定のプロセス情報の値を表す。直線53Aは、インストラクターが運転した場合の各時間におけるプロセス情報の値の上限値を表し、直線53Bは、インストラクターが運転した場合の各時間におけるプロセス情報の値の下限値を表す。また、曲線53Cは、トレーニーが運転した場合の各時間におけるプロセス情報の値の変化を表す。
【0122】
プロセス情報の値の変動はプロセス変動の状況を表す指標であり、プロセス情報の値の変動が小さいほどプロセス変動が少ない運転、すなわち習熟した運転を行っていることを意味する。したがって、インストラクターによるプロセス情報の値の上限値及び下限値を基準情報として、直線53Aよりプロセス情報の値が高い領域53Dと、直線53Bよりプロセス情報の値が低いことを表す領域53Eの合計面積や、直線53Aと直線53Bの間の基準範囲を超えた回数により、トレーニーのプロセス変動に対する評価を行ってもよい。すなわち、CPU41は、領域53D及び領域53Eの合計面積が少なく、かつ、プロセス情報の値が基準範囲を超えた回数が少ないほど、トレーニーのプロセス変動に対する評価を高く算出する。
【0123】
図10は、模擬システムの操作回数と模擬システムで発報された警報回数の時間推移を示す操作グラフ54の一例を示す図である。
【0124】
操作グラフ54において、警報曲線54Aは、インストラクターが運転した場合に発報された警報回数の時間推移を表し、警報曲線54Bは、トレーニーが運転した場合に発報された警報回数の時間推移を表す。また、棒グラフ54Cは、インストラクターが運転した場合の各時間における操作回数を表し、棒グラフ54Dは、トレーニーが運転した場合の各時間における操作回数を表す。
【0125】
この場合、CPU41は、インストラクターが運転した場合に発報された時間毎の警報回数を基準情報として、各時間におけるインストラクターの警報回数とトレーニーの警報回数との差分の合計が小さいほど、安定した操作が行われているとしてトレーニーの操作安定度に対する評価を高く算出する。
【0126】
同様に、CPU41は、時間毎のインストラクターの操作回数を基準情報として、各時間におけるインストラクターの操作回数とトレーニーの操作回数との差分の合計が小さいほど、安定した操作が行われているとしてトレーニーの操作安定度に対する評価を高く算出する。
【0127】
図11は、評価区分毎の評価を組み合わせたトレーニーの総合評価の一例を示す図である。
図11に示すように、トレーニー端末20は、操作手順、プロセス変動、及び操作安定度といった具体的な操作に基づく評価だけでなく、声による確認及び目視による確認といった、操作に対する確認行動に基づく評価も含めて、システムに対するトレーニーの運転能力を評価することができる。
【0128】
この他、以下のようにしてトレーニーの評価を通知してもよい。
【0129】
シナリオに基づいた運転訓練に対するトレーニーの評価はシナリオ毎、かつ、トレーニー毎にデータ格納部24に格納される。したがって、CPU41は、各々のシナリオに対してトレーニー毎の評価を評価区分別に比較しながら出力ユニット49に出力してもよい。この場合、トレーニーは、他のトレーニーよりも優れている評価区分や劣っている評価区分を確認することができる。
【0130】
また、シナリオに基づいた運転訓練の評価は運転訓練実施毎に格納される。したがって、CPU41は、トレーニーによってシナリオに基づいた運転訓練が繰り返し実施された場合、トレーニーの評価を同じシナリオを用いた過去の運転訓練での評価と比較して出力ユニット49に出力してもよい。この場合、トレーニーは、運転訓練を重ねることで、評価区分毎の評価がどのように変化しているのかを確認しながら運転訓練を進めることができる。
【0131】
以上、実施形態を用いて運転訓練システム1の一態様について説明したが、開示した運転訓練システム1の形態は一例であり、運転訓練システム1の形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、
図4に示した運転訓練処理の順序を変更してもよい。
【0132】
また、本開示では、一例としてトレーニー端末20での運転訓練処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、
図4に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、運転訓練処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0133】
このように、トレーニー端末20のCPU41を例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0134】
また、トレーニー端末20の処理は、1つのCPU41によって実現される形態の他、複数のCPU41、又はCPU41とFPGAとの組み合わせというように、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよい。更に、トレーニー端末20の処理は、トレーニー端末20の筐体の外部に位置する、物理的に離れた場所に存在するプロセッサとの協働によって実現されるものであってもよい。
【0135】
実施形態では、トレーニー端末20のROM42に運転訓練プログラムが記憶されている例について説明したが、運転訓練プログラムの記憶先はROM42に限定されない。本開示の運転訓練プログラムは、コンピュータ40で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば運転訓練プログラムをCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)及びDVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)のような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、運転訓練プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM42、不揮発性メモリ44、CD−ROM、DVD−ROM、USB、及びメモリカードは非一時的(non−transitory)記憶媒体の一例である。
【0136】
更に、トレーニー端末20は、通信ユニット47を通じて外部装置から運転訓練プログラムをダウンロードし、ダウンロードした運転訓練プログラムを、例えば不揮発性メモリ44に記憶してもよい。この場合、トレーニー端末20のCPU41は、外部装置からダウンロードした運転訓練プログラムを読み込んで運転訓練処理を実行する。
【解決手段】トレーニー端末は、訓練対象であるシステムの運転手順に沿って運転の評価内容が定義されたシナリオに基づいて、トレーニーによる模擬システムの操作手順に関する評価と模擬システムの操作に対する確認行動に関する評価と、を含む総合評価を算出し、トレーニーによる模擬システムの運転に対して総合評価を出力する。