(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6983300
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】スタータ用補助スイッチ
(51)【国際特許分類】
F02N 11/00 20060101AFI20211206BHJP
F02N 15/00 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
F02N11/00 R
F02N11/00 J
F02N11/00 V
F02N15/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-197872(P2020-197872)
(22)【出願日】2020年11月30日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 佑介
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】亀井 光一郎
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−167967(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103061944(CN,A)
【文献】
特開2009−24545(JP,A)
【文献】
特開平10−18949(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0158078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 1/00−15/10
F02N 19/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、
前記励磁コイルへの通電により励磁されて吸引力を発生する固定鉄心と、
前記固定鉄心とともに磁気回路を構成する継鉄と、
前記継鉄に固定され、スタータへの取付面を構成する支持金具と、
可動鉄心に付勢されて移動するロッドと、
前記ロッドに係合された可動接点と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点と、
前記固定接点と前記可動接点を収容し、接点室を形成するスイッチキャップと、
を備え、
前記支持金具に円筒部と前記円筒部の軸芯に垂直な取付面とを形成し、前記継鉄を前記円筒部に挿入して固定したことを特徴とするスタータ用補助スイッチ。
【請求項2】
前記円筒部及び前記取付面は、鉄板を絞り加工により塑性変形させて成形されていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ用補助スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、スタータ用補助スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バス、あるいはトラック等のエンジンのように、大排気量エンジンを始動させるスタータ用電磁スイッチ装置については、スタータ用電磁スイッチ装置を作動させるために大電流を供給する必要があり、その電流供給手段として補助スイッチと呼ばれるスタータ用電磁スイッチ装置より小型の補助スイッチを使用している。この補助スイッチは、例えば特開平10−18949号公報に開示されているように、スタータ用電磁スイッチ装置の近傍に設置されて、スタータ用電磁スイッチ装置との間で電気回路を構成するように配線で接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−18949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている補助スイッチは、スタータを構成するモータのハウジングに形成される取付座に支持金具により取付けられているが、支持金具の取付座への取付け部に、スタータの中心軸に対して直角する方向に形成されたねじ穴にねじを挿通することにより取付けられている。このため、ハウジングの加工において、補助スイッチを取付けるためのねじ穴加工とハウジングの内周加工とで加工方向が異なるため、加工工数が増え、製造コストが高くなる課題があった。
【0005】
また、エンジンによっては、エンジン室内での補助スイッチの設置空間が少なく、補助スイッチをハウジング側に近づけて取付ける場合があるが、特許文献1に開示された補助スイッチを取付ける支持金具は、取付座への取付け部に一対の曲部を形成し、この曲部において支持金具により取付けられている。このため、曲部の曲げ加工の作業性を考慮すると、曲率半径を小さくするのに限界が生じ、一対の曲部の中心間距離を狭くすることが出来難くなる。即ち、曲部の中心間距離が広くなり、そのため支持金具が補助スイッチを支持できる面積は小さくなって、補助スイッチの振動強度が低下する課題がある。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、スタータのハウジングの生産性を向上させるとともに、レイアウト性と耐振性の良好なスタータ用補助スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示されるスタータ用補助スイッチは、励磁コイルと、前記励磁コイルへの通電により励磁されて吸引力を発生する固定鉄心と、前記固定鉄心とともに磁気回路を構成する継鉄と、前記継鉄に固定され、スタータへの取付面を構成する支持金具と、可動鉄心に付勢されて移動するロッドと、前記ロッドに係合された可動接点と、前記可動接点に対向して配置された固定接点と、前記固定接点と前記可動接点を収容し、接点室を形成するスイッチキャップと、を備え、
前記支持金具に円筒部と前記円筒部の軸芯に垂直な取付面とを形成し、前記継鉄を前記円筒部に挿入して固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示されるスタータ用補助スイッチによれば、スタータのハウジングの生産性を向上させるとともに、レイアウト性と耐振性の良好なスタータ用補助スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチを搭載したスタータの部分断面図である。
【
図2】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチを搭載したスタータの電気回路図である。
【
図3】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチの内部構造を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチの支持金具と継鉄の分解図である。
【
図5】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチとスタータの分解図である。
【
図6】実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチをスタータに取付けた状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願に係るスタータ用補助スイッチの実施の形態について図面を用いて説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同一符号を付しており、対応する各構成部のサイズと縮尺はそれぞれ独立している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチを搭載したスタータの部分断面図であり、
図2は、その電気回路図である。
図1および
図2において、スタータ1は、スタータ用電磁スイッチ装置2、後述するスタータ用補助スイッチ3、モータ4、シフトレバー5、モータ4のシャフト6、および伝達機構(図示せず)によりモータ4の駆動力が伝達されるピニオン7を備えている。なお、モータ4は、スタータ1のハウジング8により支持されており、ピニオン7は、エンジンのリングギア(図示せず)に接離可能に構成されている。また、スタータ用補助スイッチ3は、
図1に示すようにスタータ用電磁スイッチ装置2に並設配置されている。
【0012】
スタータ1は、始動信号に応じてスタータ用電磁スイッチ装置2が付勢されると、シフトレバー5を移動させ、シフトレバー5を介してシャフト6と係合されたピニオン7を前方、即ち、
図1において上方に押し出し、ピニオン7とエンジンのリングギヤとを噛合させる。また、モータ4にもスタータ用電磁スイッチ装置2を介して電流が流れてモータ4が回転するとともに、シャフト6と係合されたピニオン7が回転することにより、エンジンへ動力を伝達し、エンジンを始動させる。
【0013】
次に、スタータ用補助スイッチ3の内部構造について詳細に説明する。
図3は、スタータ用補助スイッチ3の内部構造を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A線方向断面図、(c)図は下面図である。
図3において、スタータ用補助スイッチ3は、ボビン9に巻回された励磁コイル10を備えており、励磁コイル10の両端がボビン9に固定された一対のターミナル11に電気的に接続されている。一対のターミナル11は、スイッチキャップ12に固定された一対のスイッチ端子13に電気的に接続されている。
【0014】
ボビン9の内周には、軸方向の一方に固定鉄心14が配置されており、固定鉄心14に対向して可動鉄心15が配置されている。また、後述するように、固定鉄心14とともに磁気回路を構成する継鉄16が円筒状に形成され、支持金具17の円筒内部に挿入されて溶接または圧入固定されている。なお、支持金具17は、継鉄16に固定されてスタータ1への取付面を構成する。また、継鉄16はボビン9の外周に配置されており、ロッド18は固定鉄心14の中空部内をその軸方向に摺動可能に配置されている。ロッド18には可動接点19が設けられており、ブッシュ20との間にポイントばね21を備えることにより付勢されている。
【0015】
可動接点19に対向して配置された一対の固定接点22は、固定接点22と可動接点19を収容して接点室を形成するスイッチキャップ12の内部に固定されている。スイッチキャップ12には凹部12aが形成されており、この凹部12aにリターンばね23が収納され、ロッド18を介して固定鉄心14と可動鉄心15をそれぞれ引き離す方向へ押圧付勢するように構成されている。パッキン24はスイッチキャップ12と継鉄16によって挟持されている。
【0016】
図4は、スタータ用補助スイッチ3の継鉄16と支持金具17の分解図、
図5はスタータ用補助スイッチ3とスタータ1の分解図、および
図6はスタータ用補助スイッチ3をスタータ1に取付けた状態を示す外観図である。
図4から
図6に示すように、支持金具17には円筒部17aと円筒部17aの軸芯に垂直な取付面17bが形成されている。取付面17bは平板状に形成されており、取付面17bには、円筒部17aの軸芯方向に取付け穴17cが形成され、スタータ1の中心軸方向からねじ25により取付けが可能に構成されている。円筒部17a、及び取付面17bは、一枚の鉄板を絞り加工により塑性変形させて成形されている。
【0017】
また、継鉄16は、支持金具17の円筒部17aに挿入され全周を支持されており、スタータ用補助スイッチ3の位置をハウジング8の側方に近づけても、支持金具17と継鉄16の接触面積は変わらず、スタータ用補助スイッチ3の耐振性を損なうことなく取付けられ、レイアウト性を向上させることができる。
【0018】
このように、実施の形態1に係るスタータ用補助スイッチ3は、スタータ用電磁スイッチ装置2に並設配置され、スタータ1のハウジング8に設けられた取付座にスタータ用補助スイッチ3の取付面17bを当接させて、ねじ25によりスタータ1の中心軸方向から取付けられている。このため、ハウジング8の加工において、スタータ用補助スイッチ3を取付けるためのねじ穴加工とハウジング8の内周加工とを同一加工方向にできるため、加工工数が削減でき、製造コストの高騰を防ぐことができる。
【0019】
また、支持金具17には円筒部17aと円筒部17aの軸芯に垂直な取付面17bが形成されているので、円筒部17aにスタータ用補助スイッチ3の継鉄16を挿入して固定しているので、スタータ用補助スイッチ3の耐振性を損なうことなく取付けられ、レイアウト性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 スタータ、2 スタータ用電磁スイッチ装置、3 スタータ用補助スイッチ、
4 モータ、5 シフトレバー、6 シャフト、7 ピニオン、8 ハウジング、
9 ボビン、10 励磁コイル、11 ターミナル、12 スイッチキャップ、
12a 凹部、13 スイッチ端子、14 固定鉄心、15 可動鉄心、16 継鉄、
17 支持金具、17a 円筒部、17b 取付面、17c 取付け穴、18 ロッド、19 可動接点、20 ブッシュ、21 ポイントばね、22 固定接点、
23 リターンばね、24 パッキン、25 ねじ。
【要約】
【課題】スタータのハウジングの生産性を向上させるとともに、レイアウト性と耐振性の良好なスタータ用補助スイッチを提供する。
【解決手段】スタータ1のハウジング8に支持金具17により取付けられ、スタータ用電磁スイッチ装置2を作動させるための電流を供給するスタータ用補助スイッチ3であって、支持金具17に円筒部17aと円筒部17aの軸芯に垂直な取付面とを形成し、継鉄16を円筒部17aに挿入して固定した。
【選択図】
図5