【実施例1】
【0013】
(紙幣取扱装置の構成)
図1は、実施例の紙幣取扱装置全体を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施例の紙幣取扱装置を説明するための模式的な断面図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、実施例に係る紙幣取扱装置1は、紙幣2を入出金する入出金部3と、入出金部3に入金された紙幣2を一時的に収容する第1の一時収容部4と、第1の一時収容部4から搬送された紙幣2を鑑別する鑑別部5と、鑑別部5から搬送された紙幣2を一時的に収容する第2の一時収容部6と、を備える。また、紙幣取扱装置1は、鑑別部5から搬送された紙幣2を収容すると共に出金することで紙幣2を還流する還流部7と、厚みや長さが異常な紙幣2や劣化(破損)した紙幣2を格納するリジェクト部8と、を備える。
【0015】
図2に示すように、紙幣取扱装置1において、入出金部3から入金された紙幣2は、第1の一時収容部4に収容された後、鑑別部5で鑑別される。鑑別部5で鑑別された紙幣2は、第2の一時収容部6に収容されて集積される。このとき、入金された紙幣2を返却処理する場合、第2の一時収容部6に収容された紙幣2は、入出金部3に搬送され、入出金部3から返却される。一方、入金された紙幣2を入金処理する場合、第2の一時収容部6から、再度、第1の一時収容部4に搬送し、第1の一時収容部4から鑑別部5に搬送した後、鑑別部5から還流部7の収容カセット7aに紙幣2の種類毎に収容する。
【0016】
次に、還流部7に収容された紙幣2を出金する場合、還流部7から鑑別部5に搬送した後、鑑別部5から第2の一時収容部6に搬送して収容する。続いて、第2の一時収容部6に収容された紙幣2は、入出金部3に搬送され、入出金部3から出金される。また、入出金部3から入金された紙幣2は、鑑別部5によって厚みや長さや劣化状態が検知され、異常と検知された紙幣2は、鑑別部5からリジェクト部8に搬送されて格納される。
【0017】
以上のように構成された紙幣取扱装置1に組み込まれた第1の一時収容部4は、
図2に示すように、実施例の紙幣分離装置11を含んでいる。また、第1の一時収容部4と同様に、紙幣取扱装置1の還流部7も、実施例の紙幣分離装置11を含んでいる。以下の実施例では、第1の一時収容部4に含まれる紙幣分離装置11を一例として説明する。
【0018】
説明の便宜上、
図1において紙幣取扱装置1を入出金部3側から見て、紙幣取扱装置1の幅方向をX方向、紙幣取扱装置1の前後方向をY方向、紙幣取扱装置1の上下方向をZ方向と称する。
図1以降の図面においても、
図1と同様にX、Y、Z方向をそれぞれ示す。また、本実施例では、紙葉類の一例として紙幣2を用いるが、紙幣2に限定するものではない。紙葉類には、例えば、手形、小切手、商品券、各種証券、株券等の有価証券も含まれる。
【0019】
(紙幣分離装置の構成)
図3は、実施例の紙幣分離装置11を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、実施例の紙幣分離装置11は、収容カセット13と、ピックアップローラ15と、一組の分離ローラ16及び繰り出しローラ17と、一対のガイド部材18と、を備える。
【0020】
収容カセット13は、
図3に示すように、紙幣2が一時的に集積された収容される集積部14を有する。紙幣分離装置11に搬入された紙幣2は、集積部14内の上下方向(Z方向)に沿って積層されて収容される。また、集積部14には、分離ローラ16に隣接する位置に、集積された紙幣2を送り出すための送出口14aが設けられている。送出口14aは、紙幣2の厚み及び長辺方向の長さよりも大きく形成されており、集積部14内から紙幣2をスムーズに送り出すことが可能になっている。送出口14aを通過した紙幣2は、搬送路14bに沿って送られる。
【0021】
また、収容カセット13は、集積部14内に集積された複数枚の紙幣2を、厚み方向に対して押圧するステージ13aを有する。ステージ13aは、集積部14内に、上下方向に対して移動可能に設けられている。また、ステージ13aは、図示しない押圧機構の押圧力によって、集積された複数枚の紙幣2の厚み方向において、ピックアップローラ15が配置された下方側に向かって付勢されている。
【0022】
ピックアップローラ15は、集積部14の底部に隣接して配置されており、回転軸21に支持されている。集積部14内に集積された複数枚の紙幣2のうち、最下位に位置する紙幣2(繰り出し側の紙幣2)は、ピックアップローラ15の周面が接している。ピックアップローラ15は、図示しない駆動機構によって回転されることで、集積部14の最下位に位置する紙幣2を、分離ローラ16と繰り出しローラ17とが接する接点P0側へ移送する。また、
図3に示すように、ピックアップローラ15は、コイルバネ22を介して、集積部14内に積層された複数枚の紙幣2の厚み方向、すなわちステージ13aの移動方向に対して移動可能に支持されている。
【0023】
また、コイルバネ22には、ピックアップローラ15に加わる押圧力を検知する圧力センサ23が設けられている。ステージ13aを押圧する押圧機構は、圧力センサ23が検知した押圧力に基づいて、制御部(不図示)によって制御されている。これにより、集積部14内に集積された紙幣2の枚数に応じた適正な押圧力がピックアップローラ15に加わるように制御されている。その結果、ピックアップローラ15は、集積部14内の複数枚の紙幣2のうち、最下位に位置する1枚の紙幣2のみを適切に移送することが可能になっている。
【0024】
(分離ローラ及びガイド部材の構成)
図4は、実施例1の紙幣分離装置11が有する分離ローラ16と繰り出しローラ17を示す斜視図である。
図5は、実施例1の紙幣分離装置11が有する分離ローラ16と繰り出しローラ17を拡大して示す斜視図である。
図6は、実施例1の紙幣分離装置11が有する分離ローラ16と繰り出しローラ17を示す断面図である。
【0025】
図4、
図5及び
図6に示すように、紙幣分離装置11には、一組の分離ローラ16と繰り出しローラ17が、集積部14側から短辺方向に沿って進行する紙幣2の長辺方向に対して所定の間隔をあけて二組配置されている。
図6に示すように、分離ローラ16の回転軸25の軸方向から見たとき、一組の分離ローラ16と繰り出しローラ17は、互いに接する接点(分離点)P0を有する。なお、実際には、分離ローラ16と繰り出しローラ17が、分離ローラ16の周面16aの軸方向に沿って線接触するが、以下、説明の便宜上、接点P0と称する。そして、分離ローラ16には、紙幣2が集積された集積部14から送られた紙幣2が接する。繰り出しローラ17は、停止した分離ローラ16に対して回転することによって、分離ローラ16との接点P0で、紙幣2を1枚ずつ分離して搬送する。
【0026】
分離ローラ16の周面16aは、ゴム材料によって形成されており、紙幣2の分離動作を行うために適切な摩擦力を有する。分離ローラ16は、繰り出しローラ17に対して上方に配置されており、回転軸25に支持されている。分離ローラ16は、集積部14内の紙幣2を分離して搬送するとき、回転せずに停止している。なお、分離ローラ16は、送出口14a付近でジャムが発生したときに、紙幣2を集積部14側へ戻す向きに逆転する繰り出しローラ17の回転に従動して、繰り出しローラ17と共に回転するように構成されてもよい。この構成の場合、分離ローラ16の回転状態と停止状態は、例えばクラッチ機構によって切り替えられる。
【0027】
また、分離ローラ16は、圧縮コイルバネ等の付勢部材(図示せず)によって、繰り出しローラ17に接する方向に付勢されている。このため、分離ローラ16は、接点P0を通って紙幣2が繰り出されるときに、繰り出しローラ17に対して離れる方向に弾性変位する。このとき、分離ローラ16は、繰り出しローラ17との間の接点P0で、1枚の紙幣2の厚みに相当する間隙をあけるように設定されている。
【0028】
また、集積部14と分離ローラ16との間には、
図5及び
図6に示すように、分離ローラ16の上方側を覆うカバー部材27が設けられており、カバー部材27によって、集積部14から送られた紙幣2が、分離ローラ16側へ案内される。カバー部材27は、樹脂材料によって形成されており、集積部14内から分離ローラ16側に向かって延びている。また、カバー部材27は、
図6に示すように、分離ローラ16側の端部が、分離ローラ16の周面16aに近づくように湾曲された曲面27aを有する。これにより、集積部14内に積層された紙幣2は、ピックアップローラ15によって送られると共に、カバー部材27の曲面27aに沿って滑ることで、分離ローラ16側に向かってスムーズに進行する。
【0029】
図7は、実施例1の紙幣分離装置11が有する分離ローラ16及びガイド部材18を示す斜視図である。
図8は、実施例1の紙幣分離装置11が有する分離ローラ16及びガイド部材18を、分離ローラ16へ紙幣2が進入する側から示す正面図である。
【0030】
図5、
図7及び
図8に示すように、分離ローラ16の軸方向(X方向)における両側には、集積部14から送られた紙幣2の前端を接点P0へ向かって案内する一対のガイド部材18が設けられており、一対のガイド部材18の間に分離ローラ16の周面16aが挟み込まれている。一対のガイド部材18は、例えば、POM(ポリアセタール)、PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂材料によって略円板状に形成されている。ガイド部材18は、集積部14から送られた紙幣2の前端が摺接するガイド面18aと、分離ローラ16の回転軸25に支持される軸穴18bと、後述する付勢部材19を支持する支持ピン18cと、を有する。
【0031】
円板状のガイド部材18の外径は、分離ローラ16の外径よりも大きく形成されており、ガイド部材18の外周面がガイド面18aとして機能する。したがって、ガイド面18aは、分離ローラ16の径方向において、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の外側へ突出して設けられている。また、一対のガイド部材18の各ガイド面18aは、分離ローラ16の全周にわたって、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の径方向における外側へ突出している。ガイド部材18は、樹脂材料によって形成されているので、ゴム製の分離ローラ16と比べて、ガイド面18aの摩擦係数が分離ローラ16の周面16aの摩擦係数よりも小さい。
【0032】
なお、分離ローラ16の径方向において、分離ローラ16の周面16aに対するガイド面18aの突出量は、例えば、高温、多湿時の使用環境下における分離ローラ16のゴム材料の膨張量と、ガイド部材18の樹脂材料の膨張量との差分よりも大きく設定されている。これにより、ガイド面18aは、分離ローラ16の周面16aが分離ローラ16の径方向へ膨張した場合であっても、分離ローラ16の周面16aから突出した状態に保たれている。
【0033】
ガイド面18aは、分離ローラ16の周面16aに沿う円周面状に形成されており、ガイド部材18が分離ローラ16の径方向へ移動したときにガイド面18aが分離ローラ16の周面16aに揃うように形成されている。なお、ガイド面18aは、分離ローラ16の周方向に対して円周面状に形成されたが、必要に応じて、直線状に延ばされた部分を部分的に含んでもよい。また、本実施例1では、回転軸25の軸方向(X方向)における分離ローラ16の周面16aの幅が、6[mm]程度に設定されており、回転軸25の軸方向に対するガイド部材18の各ガイド面18aの幅が、1[mm]程度に設定されている。
【0034】
また、ガイド部材18のガイド面18aを形成する材料は、樹脂材料に限定するものではなく、分離ローラ16を形成するゴム材料よりも摩擦係数を小さくする材料であればよい。ガイド面18aとしては、例えば、摩擦係数を小さくするメッキ膜等の被覆膜によって形成されてもよく、ガイド面18aを形成する低摩擦部材がガイド部材18に組み込まれてもよい。
【0035】
ガイド部材18の軸穴18bは、上下方向(Z方向)に延びる長穴であり、回転軸25が上下方向に移動可能に挿通されている。これにより、一対のガイド部材18の各ガイド面18aは、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0に対して接離する方向(Z方向)へ、それぞれ独立して移動可能に支持されている。したがって、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0でガイド面18aが、分離ローラ16の径方向における内側へ移動可能に支持されている。また、軸穴18bには、ガイド部材18の回転を規制する規制片(図示せず)が、軸穴18bの長径方向に沿って形成されてもよい。
【0036】
ガイド部材18の支持ピン18cには、ガイド部材18を、繰り出しローラ17側へ、すなわち、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0側へ付勢する付勢部材19の一端側が取り付けられている。付勢部材19の他端側は、例えば、カバー部材27に形成された支持部(図示せず)に固定されている。付勢部材19としては、例えば、圧縮コイルバネが用いられている。
【0037】
繰り出しローラ17は、分離ローラ16に対して下方に配置されており、回転軸26に支持されている。また、繰り出しローラ17は、ピックアップローラ15を駆動する駆動機構と連結されており、ピックアップローラ15の回転と連動して回転駆動する。なお、このとき、分離ローラ16は、回転せずに停止している。
【0038】
繰り出しローラ17は、樹脂材料によって形成された基部17aと、ゴム材料によって形成された弾性部17bとを有しており、基部17aに弾性部17bが嵌め込まれて構成されている。したがって、繰り出しローラ17は、
図6に示すように、周方向における一部分のみに、弾性部17bが設けられている。また、繰り出しローラ17の弾性部17bを形成するゴム材料としては、分離ローラ16を形成するゴム材料に比べて、摩擦係数が大きく、かつ硬度が低い材料が用いられている。例えば、繰り出しローラ17の弾性部17bを形成するゴム材料には、シリコンゴムが用いられている。シリコンゴムは、分離ローラ16を形成するウレタンゴムと比べて、粘着力が大きく、摩擦力が大きい材料である。また、繰り出しローラ17の直径は、分離ローラ16全体の直径よりも大きく形成されている。
【0039】
そして、繰り出しローラ17は、回転駆動されたときに、分離ローラ16の周面16aとの接点P0において弾性部17bと分離ローラ16の周面16aとが接したときに、分離ローラ16によって紙幣2が1枚ずつ分離される。
【0040】
また、
図3に示すように、接点P0に対して、紙幣2の搬送方向における下流側には、接点P0を通過した紙幣2の枚数をカウントし、紙幣2の斜行を検知するための光学センサ28が配置されている。光学センサ28は、検知光を発する発光部28aと、発光部28aが発した検知光を受光する受光部28bとを有する。発光部28aと受光部28bは、接点P0を通過する紙幣2と検出光とが交差するように、紙幣2の搬送経路を挟んで対向して配置されている。また、発光部28a及び受光部28bは、制御部と電気的に接続されており、受光部28bから検知信号が制御部に送られる。制御部は、検知信号に基づいて、集積部14内から繰り出された紙幣2の枚数をカウントし、紙幣2の斜行を検知する。
【0041】
また、収容カセット13には、集積部14から繰り出される紙幣2の搬送方向において、接点P0に対する下流側に搬送ローラ29群が回転可能に配置されている。搬送ローラ29は、繰り出しローラ17の周面に接触して配置されており、繰り出しローラ17の回転に従動して、繰り出しローラ17と共に回転される。搬送ローラ29は、繰り出しローラ17との間に紙幣2を挟んで搬送することで、紙幣2を紙幣分離装置11の外部へ搬送する。また、収容カセット13の外側に隣接して配置された搬送ローラ29の近傍には、紙幣2の搬送経路を切り替える切り替え部材30が回動可能に設けられている。
【0042】
なお、本実施例では、集積部14内に集積された複数枚の紙幣2が鉛直下方に向かって押圧されると共に、分離ローラ16が繰り出しローラ17に対して上方側に配置されて構成されたが、このような上下方向の配置に限定するものではない。例えば、分離ローラ16が繰り出しローラ17に対して下方側に配置されてもよい。
【0043】
(紙幣分離装置におけるガイド部材の動作)
図9は、実施例1の紙幣分離装置11におけるガイド部材18の動作を説明するための断面図である。
図10は、実施例1における紙幣分離動作を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図9及び
図10に示すように、ピックアップローラ15によって集積部14から紙幣2が繰り出され(ステップS1)、紙幣2の前端が分離ローラ16側へ向かって進行する。このとき、例えば、前端が上方へ折り曲がった紙幣2が送られた場合であっても、紙幣2がガイド面18aに沿って摺動し(ステップS2)、紙幣2の前端が、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0に向かってスムーズに案内される。このため、紙幣2の前端の変形が抑えられ、紙幣2のジャムや斜行が抑えられる。紙幣2の前端が接点P0に到達したとき、前端が接点P0へ進入することにより、接点P0で紙幣2によってガイド面18aが移動され(ステップS3)、ガイド部材18が軸穴18bに沿って持ち上げられる。
【0045】
ガイド部材18が持ち上げられたことにより、ガイド面18aが分離ローラ16の周面16aと揃うので、紙幣2の前端が分離ローラ16の周面16aに接触し(ステップS4)、分離ローラ16によって1枚ずつに分離される(ステップS5)。すなわち、紙幣2の前端は、接点P0までガイド面18aに沿ってスムーズに案内され、接点P0から、分離ローラ16の周面16aによって適正に分離されて送られる。
【0046】
2枚以上の紙幣2が接点P0に進入した場合には、ガイド面18aが、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の内側へ退避することで、接点P0近傍で複数の紙幣2のジャムが生じることが抑えられる。また、実施例1における一対のガイド部材18のガイド面18aは、互いに独立して移動可能であるので、集積部14から送られた紙幣2の挙動への追従性が高く、接点P0近傍での紙幣2のジャムが抑えられる。
【0047】
(紙幣分離方法)
以上のように構成された紙幣分離装置11を用いた紙幣分離方法について説明する。紙幣分離方法は、集積部14から送られた紙幣2の前端を、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0までガイド部材18のガイド面18aに沿って摺動させ、接点P0で、紙幣2によってガイド面18aを分離ローラ16の径方向における内側へ移動させることにより、紙幣2を分離ローラ16の周面16aに接触させ、分離ローラ16と繰り出しローラ17とによって紙幣2を分離する。
【0048】
上述のように実施例1の紙幣分離装置11は、集積部14から送られた紙幣2の前端が摺接するガイド面18aを有し、分離ローラ16の軸方向(X方向)における両側に設けられた一対のガイド部材18を備えており、ガイド面18aの摩擦係数が分離ローラ16の周面16aの摩擦係数よりも小さく、ガイド面18aが、分離ローラ16の径方向において分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の外側へ突出して設けられると共に、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0でガイド面18aが、分離ローラ16の径方向における内側へ移動可能に支持されている。これにより、ガイド面18aに沿って紙幣2の前端を接点P0側へスムーズに案内することができるので、紙幣2の前端の折れ曲がり等の変形の発生を抑えることができる。また、ガイド面18aが分離ローラ16の周面16aよりも突出されているので、高温、多湿時の使用環境下での分離ローラ16の膨張による悪影響を抑えることができる。したがって、紙幣分離装置11によれば、分離動作時に紙幣2のジャムや斜行が生じることが抑えられ、紙幣2の分離動作の信頼性を高めることができる。
【0049】
紙幣分離装置11によれば、特に、集積部14から紙幣2が繰り出される際、前端が上方(分離ローラ16側)へ折れた紙幣2が繰り出された場合であっても、紙幣2の前端が分離ローラ16の周面16aに引っ掛かることが抑えられ、紙幣2を接点P0までスムーズに案内することが可能になる。
【0050】
加えて、紙幣分離装置11によれば、一対のガイド部材18が、互いに独立して移動することにより、集積部14から送られた紙幣2の挙動への追従性が高められ、接点P0近傍での紙幣2のジャムを抑えることができる。
【0051】
また、実施例1の紙幣分離装置11は、一対のガイド部材18を接点P0側へ付勢する付勢部材19を備えており、一対のガイド部材18が、分離ローラ16の回転軸25の径方向に移動可能に設けられている。これにより、例えば、一対のガイド部材18が回転軸25に移動可能に支持されることで、簡素な構成により、一対のガイド部材18を移動可能に支持することが可能になり、紙幣分離装置11全体の大型化を抑えることができる。
【0052】
以下、実施例2について図面を参照して説明する。実施例2において、実施例1と同一の構成部材には、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。実施例2は、ガイド部材の構成が実施例1と異なる。
【実施例2】
【0053】
図11は、実施例2の紙幣分離装置が有するガイド部材を示す斜視図である。
図12は、実施例2におけるガイド部材のガイド面を説明するための側面図である。
図11に示すように、実施例2における紙幣分離装置31は、集積部14から送られた紙幣2の前端を接点P0へ向かって案内するガイド部材35を備える。実施例2におけるガイド部材35は、実施例1における一対のガイド部材18に相当する一対のガイド部36と、一対のガイド部36を連結する連結する連結部37と、を有する。
【0054】
ガイド部36は、集積部14から送られた紙幣2の前端が摺接するガイド面36aと、分離ローラ16の回転軸25に支持される軸穴36bと、付勢部材19を支持する支持ピン36cと、を有する。
【0055】
図12に示すように、一対のガイド部36の各ガイド面36aは、集積部14側から、分離ローラ16の周面16aに沿って分離ローラ16と繰り出しローラ17の接点P0に向かって延ばされている。各ガイド面36aは、集積部14側において、分離ローラ16の周面16aよりも、分離ローラ16の径方向における外側へ突出している。分離ローラ16の径方向において、ガイド面36aの突出量は、接点P0側へ向かうに従って徐々に小さくなるように形成されている。ガイド面18aの突出量の最小値においても、例えば、高温、多湿時の使用環境下における分離ローラ16のゴム材料の膨張量と、ガイド部材18の樹脂材料の膨張量との差分よりも大きく設定されている。
【0056】
また、各ガイド面36aは、接点P0近傍が、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の径方向における内側(中心側)に位置している。また、各ガイド面36aは、紙幣2の送り方向における、接点P0よりも下流が、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の径方向における内側へ延びている。ここで、接点P0近傍とは、紙幣2の送り方向における、例えば、接点P0よりも上側(集積部14側)に位置する数[mm]程度の範囲を指す。
【0057】
したがって、実施例2のガイド部材35は、実施例1のガイド部材18と比べて、接点P0近傍で、ガイド面18aが周面16aよりも分離ローラ16の内側へ退避しており、周面16aがガイド面36aから外方へ突出するように形成されている。分離ローラ16の径方向において、接点P0での周面16aの、ガイド面36aに対する突出量は、例えば、1枚の紙幣2の厚み程度に設定されている。また、ガイド面36aは、
図12に示すように、集積部12側から接点P0近傍に向かって直線状に延びる部分を含んでおり、紙幣2の前端が直線状のガイド面36aに沿ってスムーズに接点P0まで案内される。
【0058】
ガイド部36の軸穴36bは、上下方向(Z方向)に延びる長穴であり、回転軸25が上下方向に移動可能に挿通されている。これにより、連結部37を介して連結された一対のガイド部36の各ガイド面36aは、分離ローラ16と繰り出しローラ17との接点P0に対して接離する方向(Z方向)へ、一体的に移動可能に支持されている。
【0059】
連結部37は、集積部14側に臨む分離ローラ16の周面16aを覆うように、分離ローラ16の軸方向(X方向)に延ばされており、一対のガイド部36と一体に形成されている。また、連結部37は、集積部14側(Y方向)へ膨出して形成されており、実施例1におけるカバー部材27の下端部としての機能も兼ねている。また、連結部37には、集積部14から送られた紙幣2の前端が摺接するガイド面37aを有する。ガイド面37aは、ガイド部36のガイド面36aと滑らかに連続するように形成されている。
【0060】
(紙幣分離装置におけるガイド部材の動作)
実施例1では、1枚の紙幣2が接点P0へ正常に送られた場合にも、接点P0に進入する紙幣2の前端によってガイド面18aが持ち上げられる。一方、実施例2では、接点P0において、分離ローラ16の周面16aが、ガイド部材35のガイド面36aから、接点P0側、すなわち、繰り出しローラ17側へ突出されている。このため、1枚の紙幣2が接点P0へ正常に送られた場合には、紙幣2によってガイド面36aが移動されることなく、接点P0で紙幣2の前端が分離ローラ16の周面16aに接する。
【0061】
図13は、実施例2におけるガイド部材35の動作を説明するための断面図である。
図13に示すように、実施例2では、2枚以上の紙幣2が接点P0へ送られた場合には、紙幣2群の前端部分の厚みが大きくなることにより、紙幣2群によってガイド面36aが持ち上げられる。このように、2枚以上の紙幣2が接点P0側へ進入したときに、ガイド面36aが上方へ退避することによって、接点P0近傍でジャムが生じることが抑えられる。
【0062】
なお、図示しないが、理想的なガイド面18aの形状としては、集積部14側から接点P0に向かって延ばされており、接点P0を通過すると共に分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の径方向における内側へ延ばされる形状であることが望ましい。この形状によれば、集積部14から送られた紙幣2の前端を接点P0まで案内し、紙幣2によってガイド面18aを持ち上げることなく、紙幣2を分離ローラ16の周面16aに接触させることが可能になり、紙幣2のジャムや斜行を更に抑えると共に分離動作の信頼性を更に高めることができる。
【0063】
実施例2の紙幣分離装置31によれば、一対のガイド部36が連結されたガイド部材35を備えることで、構成の簡素化を図ることができる。また、実施例2によれば、紙幣2の前端が接点P0へ進入する際のガイド部材35の移動が抑えられると共に、接点P0でのガイド面36aと紙幣2との接触が抑えられるので、ガイド部材35の耐久性を高めることができる。また、実施例2においても、実施例1と同様に、分離動作時に紙幣2のジャムや斜行が生じることが抑えられ、紙幣2の分離動作の信頼性を高めることができる。
【0064】
なお、上述した実施例1、2におけるガイド部材18、35のガイド面18a、36aは、回転軸25の径方向に対して移動可能に回転軸25に支持されたが、この構成に限定されるものではない。ガイド部材18、35は、分離ローラ16と繰り出しローラ17の接点P0に進入した紙幣2の前端によって、分離ローラ16の周面16aよりも分離ローラ16の径方向の内側へ持ち上げることが可能であればよく、例えば、図示しない搖動軸まわりに搖動可能に支持されてもよい。