(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量%で、C:0.07〜0.2%、N:0.15〜0.4%、Si:0.8〜2%、Mn:16〜22%、S:0.01%以下(0を除く)、Cr:12.5〜20%、Cu:1〜3%、残部Feおよびその他不可避の不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
(1)Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+12.6C+33.6N≧40
ここで、Ni、Cr、Mn、Si、C、Nは、各元素の重量%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、上記の問題点を解決するため、Ni添加なしに構成元素を制御して塑性誘起マルテンサイトを抑制し、凝固時にδ−フェライト含量を制御して、強度、表面伝導性が向上した非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.07〜0.2%、N:0.15〜0.4%、Si:0.8〜2%、Mn:16〜22%、S:0.01%以下(0を除く)、Cr:12.5〜20%、Cu:1〜3%、残部Feおよびその他不可避の不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
(1)Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+12.6C+33.6N≧40
ここで、Ni、Cr、Mn、Si、C、Nは、各元素の重量%である。
【0006】
前記オーステナイト系ステンレス鋼は、下記式(2)で表される降伏強度が450MPa以上であることがよい。
(2)降伏強度(MPa)=185+1977C+605N+3.65Cu−3.63Mn
ここで、C、N、Cu、Mnは、各元素の重量%である。
また、前記オーステナイト系ステンレス鋼は、70%冷間加工後に測定されたフェライト含量が0.1%以下であることが好ましい。
【0007】
前記オーステナイト系ステンレス鋼は、70%冷間加工でも透磁率が1.005以下であることができる。
また、前記オーステナイト系ステンレス鋼は、下記式(3)で表される積層欠陥エネルギー(SFE)が41mJ/m
2以上であることがよい。
(3)SFE(mJ/m
2)=25.7+1.59(Ni+Cu)−0.85Cr+0.001Cr
2+38.2N
0.5−2.8Si−1.34Mn+0.06Mn
2
ここで、Ni、Cu、Cr、N、Si、Mnは、各元素の重量%である。
【0008】
前記オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間圧延材の硬度(Hv)値が215以上であることができる。
また、前記オーステナイト系ステンレス鋼は、不動態被膜2nm以内領域内Cu+Mn含量が0.2%以上であることが好ましい。
また、前記オーステナイト系ステンレス鋼は、表面抵抗が10mΩcm
2未満であることがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Ni添加なしに含量元素を制御して塑性誘起マルテンサイトを抑制し、凝固時にδ−フェライト含量を制御することにより、強度、表面伝導性が向上した非磁性オーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
また、本発明の強度、表面伝導性が向上した非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、各種機器または装置に使用される非磁性部品用に多様な適用が可能である。
さらに、δ−フェライトによる磁性を除去するために、長時間素材を熱処理する追加工程を必要としないので、製造工程が簡単な非磁性オーステナイト系ステンレス鋼の製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例による強度、表面伝導性が向上した非磁性オーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.07〜0.2%、N:0.15〜0.4%、Si:0.8〜2%、Mn:16〜22%、S:0.01%以下(0は除く)、Cr:12.5〜20%、Cu:1〜3%、残部Feおよびその他不可避の不純物からなり、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
(1)Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+12.6C+33.6N≧40
ここで、Ni、Cr、Mn、Si、C、Nは、各元素の重量%である。
【0012】
以下では、本発明の実施例を添付の図面を基にして詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものである。本発明は、ここで提示した実施例に限定されず、他の形態に具体化されることもできる。図面は、本発明を明確にするために説明と関係ない部分を省略し、理解を助けるために構成要素のサイズを多少誇張して表現することができる。
明細書全体で、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
単数の表現は、文脈上明白に例外がない限り、複数の表現を含む。
【0013】
以下では、鋼の微細組織内に存在するδ−フェライト含量を制御して、δ−フェライトを分解するための追加工程を必要としないので、通常の工程で製造しても、非磁性特性を確保することができると共に、通常使用されるSTS304系ステンレス鋼に比べ向上した強度および表面伝導性を有する非磁性オーステナイト系ステンレス鋼について説明する。
【0014】
具体的に、本発明は、熱処理追加工程を経なくても、高価なNi添加なしに、合金元素成分系の制御だけで優れた非磁性特性を示すオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
本発明の一態様によるオーステナイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.07〜0.2%、N:0.15〜0.4%、Si:0.8〜2%、Mn:16〜22%、S:0.01%以下(0は除く)、Cr:12.5〜20%、Cu:1〜3%、残部Feおよびその他不可避の不純物からなり、下記式(1)を満たす。
(1)0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+12.6C+33.6N≧40
ここで、Ni、Cr、Mn、Si、C、Nは、各元素の重量%である。
【0015】
以下、本発明の実施例における合金成分含量の数値限定理由について説明する。以下では、特別な言及がない限り、単位は、重量%である。
Cの含量は、0.07〜0.2%である。
炭素(C)は、強力なオーステナイト相安定化元素であり、固溶強化による材料強度の増加のために0.07%以上添加することが好ましい。ただし、その含量が多すぎる場合、耐食性に有効なCrのような炭化物形成元素と容易に結合して、結晶粒界の周囲のCr含量を低減して耐食性を低下させるため、その上限を0.2%に限定する。
【0016】
Nの含量は、0.15〜0.4%である。
窒素(N)は、強力なオーステナイト相安定化元素であり、Niを添加しない鋼では必須に添加される元素であって、本発明では、0.15%以上添加することが好ましい。ただし、その含量が多すぎる場合、窒化物析出および窒素ポア(pore)による表面欠陥を発生させるため、その上限を0.4%に限定する。
【0017】
Siの含量は、0.8〜2%である。
ケイ素(Si)は、脱酸に有用な元素であり、Niを添加しない場合、耐食性の向上に寄与する効果があるので、0.8%以上添加することが好ましい。ただし、その含量が多すぎる場合、衝撃靭性と関連した機械的特性を低下させるため、その上限を2%に限定する。
【0018】
Mnの含量は、16〜22%である。
マンガン(Mn)は、Niを添加しない場合、オーステナイト相の安定化に必須的に添加される重要な元素であって、16%以上添加することが好ましい。ただし、その含量が多すぎる場合、表面欠陥が発生するため、その上限を22%に限定する。
【0019】
Sの含量は、0.01%以下である。
硫黄(S)は、MnSを形成し、このMnSは、腐食の基点となって耐食性を減少させるので、0.01%以下に制限する。
【0020】
Crの含量は、12.5〜20%である。
クロム(Cr)は、ステンレス鋼の耐食性向上元素のうち最も多く含有されて基本となる元素であり、耐食性の発現のために12.5%以上添加することが好ましい。しかしながら、Crは、フェライト安定化元素であって、Cr含量が高まれば、フェライト分率が増加してオーステナイト安定化を阻害するため、その上限を20%に限定する。
【0021】
Cuの含量は、1〜3%である。
銅(Cu)は、Mnのように本発明において必須に添加される元素であって、オーステナイト相の安定性を増加させ、耐食性を向上させることはもちろん、Mnと共に添加されて、不動態被膜内固溶されて表面伝導性を増加することができるため、1%以上添加することが好ましい。ただし、その含量が多すぎる場合、成形性を低下させるため、その上限を3%に限定する。
【0022】
ニッケル(Ni)は、微量添加時にかえって溶出および成形性が低下するため、本発明では、不純物として管理する。
本発明の残りの成分は、鉄(Fe)である。ただし、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入されることがあるので、これを排除することはできない。これらの不純物は、通常の製造過程の技術者であれば、誰でも知ることができるものであるため、そのすべての内容を特に本明細書で言及しない。
【0023】
一般的に、電子部品用途に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼は、板材成形、ディップドローイングなどの工程が要求され、成形完成品では、変形量が約50%以上である変形組織が形成され、このような変形部でも非磁性特性が維持されなければならない。
鋼の非磁性特性を用いた電子部品用素材において、正常な作動のためには、部品に適用された鋼の透磁率(magnetic permeability,μ)は1.005以下でなければならない。これを満たすためには、鋼の凝固時に形成されるδ−フェライトの含量を制御しなければならない。
【0024】
一般的に、オーステナイト系ステンレス鋼の微細組織内に存在するδ−フェライトは、体心立方形構造(Body Centered Cubic Structure,BCC)を有する組織の特性によって磁性を呈することになり、オーステナイトは、面心立方形構造(Face Center Cubic Structure,FCC)を有し、磁性を呈しない。したがって、δ−フェライトの分率を制御して所望の大きさの磁性特性を得ることができ、非磁性鋼の場合には、δ−フェライトの分率を最大限低くするか、なくすことが必要である。
特にオーステナイト安定化元素を添加することによって、δ−フェライト分率を減少させることができるが、一般的に他の物性が低下することなくオーステナイトを安定化させるのに有用なNi含量を制御して、δ−フェライトの形成を抑制する。
【0025】
ただし、Niは、非常に高価な元素であるから、その使用範囲が制限される場合がある。このため、本発明者らは、Ni添加なしにMn、Si、C、Nの含量を制御してオーステナイト系ステンレス鋼の非磁性特性を確保することを目的とした。非磁性特性は、オーステナイト安定化度を示すNi当量(Nieq)値で表現することができる。
Ni当量(Nieq)は、与えられた組成成分系でδ−フェライトが形成されないようにする最小Ni含量を意味し、下記のように表現することができる。
Nieq=Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+12.6C+33.6N
ここで、Ni、Cr、Mn、Si、C、Nは、各元素の重量%である。
本発明者らは、Ni当量値が40以上である場合に、実際苛酷成形部を模写して70%冷間加工後に測定されたフェライト含量が0.1%以下を満たす場合、透磁率が1.005以下として示され、非磁性特性を満足することができることを発見した。
【0026】
図1は、Ni当量と透磁率の相関関係を示すグラフである。
図1に示したとおり、Ni当量値が40以上の場合に、オーステナイト系ステンレス鋼の70%冷間変形後に透磁率が1.005以下を満たすことが分かる。
本発明の一実施例によれば、オーステナイト系ステンレス鋼の冷延焼なまし板は、下記式(2)で表される降伏強度が450Mpa以上および硬度(Hv)値が215以上を満たすことができる。
(2)降伏強度(Mpa)の予測式=185+1977C+605N+3.65Cu−3.63Mn
ここで、C、N、Cu、Mnは、各元素の重量%である。
【0027】
電子部品用素材において、多様な加工環境に対する強度を確保する必要がある。本発明は、Niを添加せず、降伏強度の増大に効果的なC、NおよびCuの含量を制御してオーステナイト系ステンレス鋼の高強度化を実現ししたものである。
本発明者らは、式(2)で表現される、C、NおよびCu含量を含む降伏強度の予測式が、鋼の強度をよく反映していることに気づき、式(2)の範囲が450以上である場合、目的とする強度を確保することができることを発見した。
【0028】
図2は、Ni当量と降伏強度の予想式との相関関係を示すグラフである。
図2に示したとおり、Ni当量値が40以上である場合に、オーステナイト系ステンレス鋼の冷延焼なまし板の降伏強度が450Mpa以上を満たすことが分かる。
本発明の一実施例によれば、オーステナイト系ステンレス鋼は、下記式(3)で表される積層欠陥エネルギーが41mJ/m
2以上を満たすことができる。
(3)SFE(mJ/m
2)=25.7+1.59(Ni+Cu)−0.85Cr+0.001Cr
2+38.2N
0.5−2.8Si−1.34Mn+0.06Mn
2
ここで、Ni、Cu、Cr、N、Si、Mnは、各元素の重量%である。
【0029】
高強度と共に、板材成形、ディップドローイングなどの工程容易性を考慮してオーステナイト系ステンレス鋼の軟性を確保する必要がある。
オーステナイト相の積層欠陥エネルギー(SFE,mJ/m
2)は、オーステナイト相の変形機構を制御することが知られている。通常、オーステナイト相の積層欠陥エネルギーは、単相のオーステナイト系ステンレス鋼である場合、外部で付加した塑性変形エネルギーがオーステナイト相の変形に寄与する程度を示す。
【0030】
一般的に、積層欠陥エネルギーが低いほどオーステナイト相でイプシロンマルテンサイト相の形成後に鋼の加工硬化に寄与する塑性誘起マルテンサイト相が形成される程度が増加する。
積層欠陥エネルギーが中間程度である場合、オーステナイト相で機械的双晶が形成される。中間程度の積層欠陥エネルギーである場合、これら双晶の交差点で塑性誘起マルテンサイト相が形成されて、加えられた塑性変形エネルギーが機械的に相変化を招いて、オーステナイト相からマルテンサイト相に変態を起こす。したがって、ステンレス鋼の場合、非常に広範囲な範囲で中間相(イプシロンマルテンサイト相または機械的双晶)の差異点だけを除いて、塑性誘起マルテンサイト相が形成されることが知られている。したがって、積層欠陥エネルギーが41mJ/m
2未満の場合は、オーステナイト相でイプシロンマルテンサイト相が形成された後、塑性誘起マルテンサイト相が形成されたり、オーステナイト相で機械的双晶が形成された後、塑性誘起マルテンサイト相が形成される。
【0031】
しかしながら、積層欠陥エネルギーが41mJ/m
2以上である場合には、機械的双晶やイプシロンマルテンサイト相の形成なしに電位移動により変形が進行されるので、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態が抑制されることが知られている。
本発明者らは、式(3)で表されるオーステナイト相の積層欠陥エネルギーが41mJ/m
2以上である場合は、透過電子顕微鏡を用いて調査した結果、塑性変形後にマルテンサイト相の形成が観察されないことを確認することができた。
【0032】
本発明の一実施例によれば、オーステナイト系ステンレス鋼は、表層から2nm以内領域で、Cu+Mn含量が0.2%以上であることがよい。
電子部品用途に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼で表面伝導性は、重要な因子である。本発明では、CuとMnの含量を制御して、不動態被膜の厚さ2nm以内領域内でCu+Mn含量が0.2%以上であるとき、表面抵抗が10mΩcm
2以下であることを確認することができた。これは、CuとMnがCr酸化物層から構成される不動態被膜に一部置換固溶されることによって、電子移動度が増加して表面伝導性が増加するものと考えられた。
【0033】
以下、本発明の好ましい実施例を通じてさらに詳細に説明する。
実施例
表1のとおり鋼の各成分の含量を変更して50kgインゴット(Ingot)キャスティングを通じてステンレス鋼材を生産した。インゴットを1250℃で3時間加熱後、熱間圧延を実施して、厚さ4mmの熱延材を生産した。熱延材は、冷間圧延を実施して最終厚さ2.5mmに加工して、1100℃で大気中に30秒間焼なましを実施した後、酸洗した。
このような方法で製造された試験片に対して引張試験を通じて降伏強度(YS、Mpa)を測定して、降伏強度の予測式と比較した。また、ビッカース硬さ試験を通じて硬度(Hv)を測定した。
【0035】
表1に示した発明鋼および比較鋼を実験に使用した。
2.5mm冷間圧延が施された試験片は、実際電子部品素材の成形品内の非磁性、表面抵抗特性を模写するために、70%冷間圧下率で冷間圧延して、厚さ0.75mmの冷間圧延板材を製造した。フェライトスコープ装備を活用して製造された冷間圧延板材のフェライト含量(%)を測定し、透磁率測定装備(FERROMASTER)を活用して透磁率を測定した。
また、GDS(Glow Discharge Spectrometer)分析装備を活用して冷間圧延板材の表層部から2nm地点での不動態被膜内のMn+Cu(重量%)を分析した。
【0036】
表面抵抗は、金がメッキされたCu−plate(面積2cm
2)を冷間圧延板材の上/下面に配置し、圧力を10N/cm
2印加してDC4端子法で抵抗を測定して、表面抵抗値で示した。表面抵抗の測定基準は、10mΩcm
2未満は良好、それ以上は不十分なものと評価した。
それぞれの成分でオーステナイト系ステンレス鋼の積層欠陥エネルギー(SFE)、フェライト含量、透磁率、降伏強度の予想値および実際値、硬度、表層部2nm地点のMn+Cu含量および表面抵抗の評価結果を下記表2に示した。
【0038】
図1は、Ni当量と透磁率の相関関係を示すグラフである。
図1および表2に示したとおり、実施例の場合、比較例と比較して式(1)で表されるNieq値が40以上を満たし、透磁率は、1.005以下として示されて、非磁性特性を満たすことを確認することができる。
【0039】
図2は、Ni当量と降伏強度(MPa)の予測値との相関関係を示すグラフである。
図1および表2に示したとおり、実施例の場合、比較例と比較して式(1)で表されるNieq値が40以上を満たし、降伏強度は450MPa以上、硬度は215Hv以上を満たすことを確認することができる。また、表2に示したとおり、発明鋼の場合、降伏強度の予測式と降伏強度の実測値間の差異が極微で、式(2)がオーステナイト系ステンレス鋼の強度をよく反映していることが分かる。
【0040】
また、実施例の場合、比較例と比較して積層欠陥エネルギー(SFE)値が41mJ/m
2以上と示され、塑性変形後にマルテンサイト相の形成を抑制して軟性を確保することができると共に、表層から2nm以内領域でCu+Mn含量が0.2%以上であってCuおよびMnの濃縮が発生して、表面抵抗は10mΩcm
2以下と測定された。すなわち、表面伝導性が向上することが確認された。
これに比べて、比較例1では、Niを8.1%含むが、Mn含量が1.5%と過度に低く、Nieq値は、40に達しなかった。具体的に、表1および表2に示したとおり、比較例1の場合、Nieq値が23.745であって、本発明の範囲を外れており、透磁率が5.2であって、磁性だけでなく、450MPa以上の高強度および目的とする表面伝導性も確保することができなかった。
【0041】
表1および表2に示したとおり、比較例2の場合には、C、Si、Mn含量が本発明の範囲を満たすが、Nieq値が38.45であって、40に達しておらず、透磁率が1.1であって、目的とする非磁性特性を確保することができずに、450MPa以上の高強度および目的とする表面伝導性を確保することができなかった。
表1および表2に示したとおり、比較例3の場合にもNieq値が30.38であって、40に達せず、透磁率が2.5であって、目的とする非磁性特性を確保することができず、450MPa以上の高強度特性も確保することができなかった。
また、比較例3の場合には、Mnと共に不動態被膜内に固溶されるべきCuが添加されず、表層から2nm以内領域でCu+Mn含量が0.0001%であり、これに伴い、表面抵抗は、45mΩcm
2と測定され、目的とする表面伝導性を確保することができなかった。
【0042】
本発明の一実施例によるオーステナイト系ステンレス鋼は、Niの添加なしに含量元素を制御して、塑性誘起マルテンサイトを抑制し、凝固時にδ−フェライト含量を制御して強度、表面伝導性を高めながら、非磁性特性を確保することができる。
【0043】
以上、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず、該当技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない範囲内で多様な変更および変形が可能であることを理解することができる。