特許第6983331号(P6983331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983331無線周波数(RF)送信機及びRF送信の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983331
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】無線周波数(RF)送信機及びRF送信の方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   H04B1/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-544691(P2020-544691)
(86)(22)【出願日】2019年1月9日
(65)【公表番号】特表2021-515469(P2021-515469A)
(43)【公表日】2021年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2019001163
(87)【国際公開番号】WO2019239622
(87)【国際公開日】20191219
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】16/006,101
(32)【優先日】2018年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】マ、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ダ・コスタ・ディニス、ダニエル・アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】テオ、クーン・フー
(72)【発明者】
【氏名】オーリック、フィリップ
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0192229(US,A1)
【文献】 特表2016−530739(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105814801(CN,A)
【文献】 特表2017−529023(JP,A)
【文献】 特表2017−535221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のための無線周波数(RF)送信機であって、
一組のディスジョイント周波数帯域上で送信される信号のベースバンドサンプルを受信する一組の入力ポートであって、各入力ポートは、対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスを受信する、一組の入力ポートと、
一組のフィルタバンクであって、入力ポートごとに1つのフィルタバンクが存在し、各フィルタバンクは、対応する前記ベースバンドサンプルのシーケンスのシフトされた位相をサンプリングし、サンプリングされた位相を補間して、前記シフトされた位相を有する補間されたベースバンド位相サンプルの複数のシーケンスを生成する複数のデジタル多相補間フィルタを備える、一組のフィルタバンクと、
一組の発振器バンクであって、フィルタバンクごとに1つの発振器バンクが存在し、各発振器バンクは、デジタル波形のサンプルの複数のシーケンスを生成する、前記複数のデジタル多相補間フィルタに対応する複数の多相デジタルダイレクトシンセサイザ(DDS)を備え、前記補間されたベースバンド位相サンプルのそれぞれにデジタル波形のサンプルの1つのシーケンスが存在し、前記デジタル波形のサンプルのシーケンスは、対応する前記補間されたベースバンド位相サンプルと位相同期され、前記デジタル波形の実効周波数は、RFサンプリングレートを前記複数の補間されたベースバンド位相サンプルの数によって除算したものに等しい、一組の発振器バンクと、
一組のミキサバンクであって、フィルタバンクごとに1つのミキサバンクが存在し、各ミキサバンクは、デジタル波形のサンプルの対応するシーケンスと、補間されたベースバンド位相サンプルとを混合し、補間されたベースバンド位相サンプルの各シーケンスを前記実効周波数にアップコンバートする複数の並列デジタルミキサを備える、一組のミキサバンクと、
異なる周波数帯域の補間されたベースバンド位相サンプルの同相シーケンスを結合して、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを生成する並列デジタルコンバイナと、
前記マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを変調及び符号化して、複数の符号化されたマルチバンド信号を生成するパルスエンコーダと、
前記複数の符号化されたマルチバンド信号をRFビットストリームに変換するシリアライザと、
前記RFビットストリームを増幅する電力増幅器と、
増幅されたRFビットストリームをフィルタリングしてRFアナログ信号を生成するマルチバンドRFフィルタと、
前記RFアナログ信号を放射する少なくとも1つのアンテナと、
を備える、RF送信機。
【請求項2】
各デジタル多相補間フィルタは、補間器と直列に結合されたポリフェーザフィルタを含む、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項3】
前記パルスエンコーダはマルチバンドパルス幅変調器である、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項4】
前記パルスエンコーダはデルタシグマ変調器である、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項5】
前記パルスエンコーダは2レベル符号化信号を出力する、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項6】
前記パルスエンコーダはマルチレベル符号化信号を出力し、レベルの数は2よりも大きい、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項7】
前記RF送信機は、前記複数の周波数帯域にわたり、各周波数帯域を用いて前記信号の2次元並列化を行う、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項8】
多相デジタルダイレクトシンセサイザが、クロック刻みごとにM個の位相にわたって分配されるコサインサンプル及びサインサンプルを生成する、請求項1に記載のRF送信機。
【請求項9】
無線通信のための無線周波数(RF)送信の方法であって、
一組のディスジョイント周波数帯域上で送信される信号のベースバンドサンプルを受信することであって、各入力ポートが、対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスを受信することと、
複数のデジタル多相補間フィルタを用いて対応するRF周波数帯域上で送信される前記ベースバンドサンプルのシーケンスのシフトされた位相をサンプリングし、サンプリングされた位相を補間して、前記シフトされた位相を有する補間されたベースバンド位相サンプルの複数のシーケンスを生成することと、
デジタル波形のサンプルの複数のシーケンスを生成することであって、前記補間されたベースバンド位相サンプルのそれぞれにデジタル波形のサンプルの1つのシーケンスが存在し、前記デジタル波形のサンプルのシーケンスは、対応する前記補間されたベースバンド位相サンプルと位相同期され、前記デジタル波形の実効周波数は、RFサンプリングレートを複数の前記補間されたベースバンド位相サンプルの数によって除算したものに等しいことと、
デジタル波形のサンプルの対応するシーケンスと、補間されたベースバンド位相サンプルとを混合し、補間されたベースバンド位相サンプルの各シーケンスを前記実効周波数にアップコンバートすることと、
異なる周波数帯域の補間されたベースバンド位相サンプルの同相シーケンスを結合して、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを生成することと、
前記マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを変調及び符号化して、複数の符号化されたマルチバンド信号を生成することと、
前記複数の符号化されたマルチバンド信号をRFビットストリームに変換することと、
前記RFビットストリームを増幅することと、
増幅されたRFビットストリームをフィルタリングしてRFアナログ信号を生成することと、
前記RFアナログ信号を放射することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、信号送信に関し、具体的には、同時連続/不連続キャリアアグリゲーション(CA:Carrier-Aggregation)動作に適した完全デジタル並列RF送信機を生成するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信は現代の情報インフラストラクチャの重要な部分である。この10年間は、スマートフォン等のハンドセット、タブレット、及び新たなネットワーク依存デバイスの指数関数的な広がりによって特徴付けられてきた。高データレート通信リンクに関する厳しい要件は、歴代の規格を、より高いスループット、モビリティサポート並びに向上したサービス品質(QoS:Quality-of-Service)及び体感品質(QoE:Quality-of-Experience)を有するものにしてきた。それでもなお、全ての更なる進歩は、運用支出(OPEX:Operational Expenditure)/資本支出(CAPEX:Capital Expenditure)コストの増加を伴うことなく、円滑かつ効率的な方法で行わなければならない。
【0003】
さらに、上記のことは、無線リソースを効率的に利用しなければならないことと同時に、より高いデータレートの無線アクセス技術を開発しなければならないことを意味する。データレート要件を効率的な方法で満たすために、最初のステップで、3Gシステムにおける利用可能な帯域幅の増強を行ってきた。次に、スペクトル配分制約を伴わずに拡張可能なより広い帯域幅の達成を試みて、ロングタームエボリューション(LTE:Long-Term Evolution)Advanced等のCAの概念が4Gシステムにおいて導入された。
【0004】
連続CA及び不連続CAの機能を標準化することによって、複数の周波数帯域を組み合わせて高速データ送信を行うことが可能になった。LTE−Advancedの特徴の商業的成功によって、それらの特徴は、5G技術の一部として発展し続けていくことが期待される。コンパクトで効率的な方法で無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)の期待を実現するには、複数の帯域及び複数の規格を根本的にサポートするフレキシブルで、アジャイルかつ再構成可能な無線送受信機の開発が必要である。これらの特徴を統合することによって、全てのRANパーティー間で複数の同時かつ周波数アジャイルのデータリンクを確立するための効率的な回答を得ることができる。
【0005】
オールデジタル送信機(ADT:All-Digital Transmitter)の概念は、次世代の無線周波数(RF:Radio-Frequency)送受信機の開発に向けた前途有望な道筋として目標とされてきた。コンパクトで多用途の無線通信送受信機を設計することができる高い可能性は、多くの注目を集めている。幾つかの方法は、ベースバンド(BB:Baseband)からRFステージに至るまで完全デジタルデータパスを表している。これは、複雑度が低くかつフレキシブルな送信機の設計を可能にする。基礎となるアイデアは、mビットデジタル信号の2レベル表現への量子化し、定包絡を有する信号を生成することである。所望の搬送周波数へのデジタルアップコンバージョンの後、このパルス表現をスイッチングモード電力増幅器(SMPA:Switched-Mode Power Amplifier)等の高効率非線形増幅器によって増幅することができる。増幅後、アンテナによる放射前の信号に復元するために、帯域通過フィルタが必要とされる。それらの完全デジタル動作によって、本質的に、この作業についてアジャイル、フレキシブル、再構成可能、マルチスタンダード、及び重要で最低限の外部フロントエンドを有するマルチバンドRFフロントエンドを得ることができる。
【0006】
それでも、マルチバンド機能の明らかで理想的な根本的サポートにもかかわらず、不連続CA送信に関連した設計の難題が、マルチバンドソリューションの提案を妨げてきた。マルチバンド送信は、変調器サンプリング周波数の整数倍又は削減されたサンプリングレートトポロジーを用いて達成することができる。他の方法では、送信前に、バルキーで非効率的な電力コンバイナを用いて異なる帯域を結合する。マルチバンド送信を設計する際の難題のうちの幾つかは、パルス符号化後にデジタルアップコンバージョン(DUC:Digital Up-Conversion)を配置することによって生じる。この手法によると、符号化された信号は、スペクトル全体にわたって分布したかなりの量の帯域外雑音を有するので、異なる帯域へのアップコンバージョンは、通常、システム性能の劣化をもたらす。帯域間により大きなスパンを達成する1つの方法論は、異なるナイキストゾーン(NZ:Nyquist Zone)からのレプリカを利用することに基づいている。しかしながら、関与する全てのサンプリングレート/周波数において整数倍を維持する必要があることに伴う信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)の本質的な低下は、性能の低下に至る。加えて、パルス符号化の前にDUCを配置することは、通常、サンプリングレートが搬送周波数の少なくとも2倍であることを意味する。これは、パルスエンコーダ及びアナログフロントエンドの双方に困難な要件を課す。したがって、連続マルチバンド送信及び不連続マルチバンド送信に適したデジタル送信機が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施の形態の目的は、連続マルチバンド信号及び不連続マルチバンド信号の送信を可能にする並列アーキテクチャを提供することである。別の実施の形態の目的は、デジタルマルチバンド無線周波数(RF)送信機を可能にするデジタル領域において実施することができるアーキテクチャを提供することである。そのような送信機は、オールデジタル送信機(ADT)と呼ばれることがある。
【0008】
デジタルRF送信機は、通常、信号をベースバンド周波数から無線周波数にアップコンバートするデジタルアップコンバータ(DUC:digital up-converter)と、増幅及び送信のために信号を符号化するパルスエンコーダとを備える。幾つかの実施の形態は、DUCの前にパルス符号化を配置することによって、パルスエンコーダが制限された低サンプリングレートを用いて動作することが可能になる利点があるという理解に基づいている。しかしながら、そのような配置は、帯域制限のない信号を生成する高度に非線形な動作をパルスエンコーダに行わせる。そのような非線形性によって、種々のアップコンバージョンステージが帯域外雑音を目的の送信信号と結合させるので、ADTは同時マルチバンド送信をサポートするには不適切なものとなる。
【0009】
そのため、マルチバンド送信を可能にするために、幾つかの実施の形態は、パルスエンコーダの前にDUCを配置することを目標とする。しかしながら、この配置は、厳格なサンプリングレートが必要とされるため、パルスエンコーダで課題が発生する。したがって、パルスエンコーダにおけるサンプリングレートの望ましくない増加を伴うことなく、RF信号の連続マルチバンド送信及び不連続マルチバンド送信を可能にするアーキテクチャが必要とされている。
【0010】
幾つかの実施の形態は、送信信号のマルチバンド並列化及び直列化を可能にするマルチバンドRF送信機の各サブシステムについて並列/多相の同等のものを見つけることができるという理解に基づいている。具体的には、マルチバンド信号を2つの次元において、すなわち、各帯域内において及び帯域間にわたって、並列化することができることが理解されている。そのようにして、並列化は、個々の帯域だけでなく、帯域を組み合わせたものについても実現することができる。マルチバンド並列化に起因して、クロック刻みごとの時間連続性は、垂直ライン(位相間タイミング連続性)において広がる。したがって、必要とされる搬送周波数の少なくとも2倍よりも高い所与のサンプリングレートでクロック制御される1つの位相のみを有するのではなく、幾つかの実施の形態では、各位相の最大サンプリングレートは、各帯域の並列プロセスの数に等しい数をMとすると、M分の1に低減される。
【0011】
したがって、1つの実施の形態は、無線通信のための無線周波数(RF)送信機を開示する。RF送信機は、一組のディスジョイント周波数帯域上で送信される信号のベースバンドサンプルを受信する一組の入力ポートであって、各入力ポートは、対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスを受信する、一組の入力ポートと、一組のフィルタバンクであって、入力ポートごとに1つのフィルタバンクが存在し、各フィルタバンクは、対応するベースバンドサンプルのシーケンスのシフトされた位相をサンプリングし、サンプリングされた位相を補間して、シフトされた位相を有する補間されたベースバンド位相サンプルの複数のシーケンスを生成する複数のデジタル多相補間フィルタを備える、一組のフィルタバンクと、一組の発振器バンクであって、フィルタバンクごとに1つの発振器バンクが存在し、各発振器バンクは、デジタル波形のサンプルの複数のシーケンスを生成する、複数のデジタル多相補間フィルタに対応する複数の多相デジタルダイレクトシンセサイザ(DDS:Digital Direct Synthesizer)を備え、補間されたベースバンド位相サンプルのそれぞれにデジタル波形のサンプルの1つのシーケンスが存在し、デジタル波形のサンプルのシーケンスは、対応する補間されたベースバンド位相サンプルと位相同期され、デジタル波形の実効周波数は、RFサンプリングレートを複数の補間されたベースバンド位相サンプルの数によって除算したものに等しい、一組の発振器バンクと、一組のミキサバンクであって、フィルタバンクごとに1つのミキサバンクが存在し、各ミキサバンクは、デジタル波形のサンプルの対応するシーケンスと、補間されたベースバンド位相サンプルとを混合し、補間されたベースバンド位相サンプルの各シーケンスを実効周波数にアップコンバートする複数の並列デジタルミキサを備える、一組のミキサバンクと、異なる周波数帯域の補間されたベースバンド位相サンプルの同相シーケンスを結合して、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを生成する並列デジタルコンバイナと、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを変調及び符号化して、複数の符号化されたマルチバンド信号を生成するパルスエンコーダと、複数の符号化されたマルチバンド信号をRFビットストリームに変換するシリアライザと、RFビットストリームを増幅する電力増幅器と、増幅されたRFビットストリームをフィルタリングしてRFアナログ信号を生成するマルチバンドRFフィルタと、RFアナログ信号を放射する少なくとも1つのアンテナとを備える。
【0012】
別の実施の形態は、無線通信のための無線周波数(RF)送信の方法を開示する。方法は、一組のディスジョイント周波数帯域上で送信される信号のベースバンドサンプルを受信することであって、各入力ポートが、対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスを受信することと、複数のデジタル多相補間フィルタを用いて対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスのシフトされた位相をサンプリングし、サンプリングされた位相を補間して、シフトされた位相を有する補間されたベースバンド位相サンプルの複数のシーケンスを生成することと、デジタル波形のサンプルの複数のシーケンスを生成することであって、補間されたベースバンド位相サンプルのそれぞれにデジタル波形のサンプルの1つのシーケンスが存在し、デジタル波形のサンプルのシーケンスは、対応する補間されたベースバンド位相サンプルと位相同期され、デジタル波形の実効周波数は、RFサンプリングレートを複数の補間されたベースバンド位相サンプルの数によって除算したものに等しいことと、デジタル波形のサンプルの対応するシーケンスと、補間されたベースバンド位相サンプルとを混合し、補間されたベースバンド位相サンプルの各シーケンスを実効周波数にアップコンバートすることと、異なる周波数帯域の補間されたベースバンド位相サンプルの同相シーケンスを結合して、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを生成することと、マルチバンドアップコンバートサンプルの複数のシーケンスを変調及び符号化して、複数の符号化されたマルチバンド信号を生成することと、複数の符号化されたマルチバンド信号をRFビットストリームに変換することと、RFビットストリームを増幅することと、増幅されたRFビットストリームをフィルタリングしてRFアナログ信号を生成することと、RFアナログ信号を放射することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】種々の実施形態によって用いられる幾つかの原理を示す概略図である。
図2】幾つかの実施形態による無線通信用のRF送信機のブロック図である。
図3A】幾つかの実施形態によるデジタル多相補間フィルタによって用いられる原理の概略図である。
図3B】幾つかの実施形態によるデジタル多相補間フィルタによって用いられる原理の概略図である。
図4】幾つかの実施形態によるフィルタバンクに対応する発振器バンクの概略図である。
図5】幾つかの実施形態の送信機によって用いられるデジタルアップコンバージョンステージの概略図である。
図6】幾つかの実施形態による3つの帯域の信号を結合する一例示的なコンバイナの概略図である。
図7A】1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるPWM概念を示す概略図である。
図7B】1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるデルタシグマ変調器の概略図である。
図7C】1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるデルタシグマ変調器の概略図である。
図7D】1つの実施形態によるコーナーベンダー行列転置器(Corner Bender Matrix Transposer)の概略図である。
図8】符号化された信号を直列化するために1つの実施形態によって用いられるシリアライザの概略図である。
図9】実施形態のうちの1つを検査するのに用いられる一例示的な装置構成を示す図である。
図10】1つの実施形態による信号送信の一例示的なフローチャートであり、これはN個の帯域に拡張可能である。
図11】幾つかの実施形態による同時不連続マルチバンド送信機のスペクトルの概略図である。
図12】4Gbpsのシリアライザ周波数を用いて組み込まれた幾つかの実施形態の送信機から測定されたスペクトルの概略図である。
図13】1つの実施形態によるマルチレベルデジタル送信機アーキテクチャの概略図である。
図14A】幾つかの実施形態による増幅器ステージとしてHブリッジSMPAを用いたマルチビットADTの応用例の概略図である。
図14B】1つの実施形態による7レベルのRFinを表す8つのMGT(0〜7)のマッピング関係を与える表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、種々の実施形態によって用いられる幾つかの原理を示す概略図を示している。例えば、無線周波数(RF)オールデジタル送信機(ADT)システム100は、同相(I)成分及び直交(Q)成分を有するベースバンドサンプル105をベースバンドインターフェース101から受信し、その後、デジタルアップステージコンバータ110を用いてこれらのサンプル105をRF周波数帯域にデジタル方式でアップコンバートする。例えば、アップステージコンバージョン110は、ベースバンドサンプルとRF周波数信号との乗算によって行うことができる。アップコンバートされた信号115は、その後、例えば、パルス幅変調、デルタシグマ変調、及び/又はハイブリッド変調を用いるパルスエンコーダ120によって符号化され、パルス列信号125とも呼ばれる符号化された信号125が生成される。幾つかの実施態様では、パルス列信号125は、パルスエンコーダ120のタイプに応じて2レベル信号波形(1ビット)又はマルチレベル波形である。符号化された信号125は、電力増幅器130によって増幅される。この電力増幅器は、高効率を達成するためにスイッチングモード(ON/OFFステータスのみ)で動作することが好ましい。フィルタ140は、アンテナ145によって自由空間に放射される前に増幅器130の出力信号135の帯域外放射をフィルタリング除去する帯域通過フィルタである。符号化された信号における帯域外放射は、主としてパルスエンコーダ120によってもたらされ、増幅器130によって更に歪められる。そのために、帯域外放射は、近傍周波数のユーザーとの干渉を低減するために可能な限り低く維持されるべきである。例えば、信号125について、マルチレベル信号の方が、通常、2レベル信号よりも放射が少ない。
【0015】
そのようなアーキテクチャは、搬送周波数アジリティに関してより良好な性能を提供する。しかしながら、このアーキテクチャは、設計において、パルスエンコーダがRF搬送周波数の少なくとも2倍の周波数でクロック制御されるという過酷な要件ももたらす。そのために、幾つかの実施形態は、送信信号のマルチバンド並列化直列化200を設けて、パルスエンコーダ130の動作の複雑さを低減する。具体的には、マルチバンド信号を2つの次元において、すなわち、各帯域内において及び帯域間にわたって、並列化することができることが理解されている。そのようにして、並列化は、個々の帯域だけでなく、帯域を組み合わせたものについても達成することができる。マルチバンド並列化に起因して、クロック刻みごとの時間連続性は、垂直ライン(位相間タイミング連続性)において広がる。したがって、必要とされる搬送周波数の少なくとも2倍よりも高い所与のサンプリングレートでクロック制御される1つの位相のみを有するのではなく、幾つかの実施形態では、各位相の最大サンプリングレートは、各帯域の並列プロセスの数に等しい数をMとすると、M分の1に低減される。
【0016】
図2は、幾つかの実施形態による無線通信用のRF送信機201のブロック図を示している。このRF送信機は、一組のジョイント(joint:統合)周波数帯域及び/又はディスジョイント(disjoint:互いに素な)周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプル400を受信するベースバンドインターフェース401の一組の入力ポートを備える。ベースバンドサンプルは、ベースバンド信号をデジタル領域に離散化したものである。
【0017】
幾つかの実施形態では、各入力ポートは、対応するRF周波数帯域上で送信されるベースバンドサンプルのシーケンスを受信する。例えば、入力ポート401は1つの周波数帯域のサンプル400を受信し、入力ポート401aは、サンプル400の周波数帯域とディスジョイントにすることができる別の周波数帯域のサンプル400aを受信する。複数の周波数帯域のサンプルの複数の入力ポートが、2次元並列化の第1の次元を提供する。
【0018】
2次元並列化の第2の次元を可能にするために、RF送信機は、入力ポートごとに1つのフィルタバンク405、すなわち、周波数帯域ごとに1つのフィルタバンクが存在するように、一組のフィルタバンクを備える。各フィルタバンクは、ベースバンドサンプルの対応するシーケンスの回転可能にシフトされた位相をサンプリングし、サンプリングされた位相を補間して、回転可能にシフトされた位相を有する補間されたベースバンド位相サンプルの複数のシーケンスを生成する複数のデジタル多相補間フィルタを備える。
【0019】
各デジタル多相補間フィルタは、補間器と直列に結合されたポリフェーザ(polyphaser)フィルタを備える。多相は、サンプリングレート変換を行う方法である。ポリフェーザフィルタは、マルチレート設定においてフィルタを用いることを可能にするとともに、マルチレート設定においてサンプリングレート変換を行うことを可能にする構造体である。そのようにして、一組のフィルタバンク405は、ディスジョイント周波数帯域を表すベースバンドサンプル400のそれぞれ1つを補間する。サンプルが補間されるのと同時に、サンプルは、あらゆるクロック刻みにおいて位相間の時間連続性も確保しながら、M個の位相410にわたって分配される。410における位相は、同相/直交(I/Q)サンプルの双方を表す。
【0020】
2次元並列化の原理に従って、RF送信機は、フィルタバンク405ごとに1つの発振器バンク415が存在するように一組の発振器バンク415を備える。各発振器バンクは、デジタル波形420のサンプルの複数のシーケンスを生成する複数のデジタル多相補間フィルタに対応する複数の多相デジタルダイレクトシンセサイザ(DDS)を備える。補間されたベースバンド位相サンプルのそれぞれについて、デジタル波形のサンプルの1つのシーケンスがある。例えば、フィルタ405がM個の補間されたベースバンド位相サンプルを生成する場合、発振器バンクはM個のデジタル波形を生成する。デジタル波形のサンプルのシーケンスは、対応する補間されたベースバンド位相サンプルと位相同期されている。この構成方法によると、デジタル波形の実効周波数は、RFサンプリングレートを、複数の補間されたベースバンド位相サンプルの個数Mによって除算したものに等しい。
【0021】
周波数帯域ごとの複数のデジタル波形によって、2次元並列化を維持しながら、マルチバンド信号410のアップコンバージョンが可能になる。そのために、RF送信機は、フィルタバンクごとに1つのミキサバンクが存在するように一組のミキサバンク425を備える。各ミキサバンクは、デジタル波形420のサンプルの対応するシーケンスと、補間されたベースバンド位相サンプル410とを混合し、補間されたベースバンド位相サンプルの各シーケンスを実効周波数の信号430にアップコンバートする複数の並列デジタルミキサを備える。
【0022】
RF送信機は、異なる周波数帯域の補間されたベースバンド位相サンプルの同相シーケンスを結合して、マルチバンドアップコンバートサンプル440の複数のシーケンスを生成する並列デジタルコンバイナ435を備え、マルチバンドアップコンバートサンプル440の複数のシーケンスを変調及び符号化して複数の符号化されたマルチバンド信号450を生成するマルチバンドパルスエンコーダ445を備え、複数の符号化されたマルチバンド信号をRFビットストリーム460に変換するシリアライザ455を備える。
【0023】
コンバイナ435は、異なる周波数帯域の同相サンプルを結合し、それによって、2次元並列化を1次元並列化に削減する。例えば、サンプルは同相であるが、異なる周波数帯域に属するので、幾つかの実施形態におけるサンプルの結合は数学的和である。そのような次元数削減によって、実効周波数における単一の帯域符号化に適したパルスエンコーダ445を用いることが可能になり、これによって、パルスエンコーダの実施が簡素化される。
【0024】
加えて、RF送信機は、RFビットストリームを増幅する増幅器130等の電力増幅器と、増幅されたRFビットストリームをフィルタリングしてRFアナログ信号を生成するフィルタ140等のマルチバンドRFフィルタと、RFアナログ信号を放射する少なくとも1つのアンテナ145とを備える。
【0025】
図3A及び図3Bは、幾つかの実施形態によるデジタル多相補間フィルタによって用いられる原理の概略図を示している。入力サンプル、例えば、サンプル400aは、低レートで動作する各サブフィルタh[n]、例えば、210、220、及び230に進む。図3Aに見ることができるように、各サンプルは送信信号の位相に対応するので、各サブフィルタは、サンプル400aによって表される信号のシフトされた位相をサンプリングする。フィルタリングされたサンプルは、図3Bに示すように、フィルタリング後に補間される。例えば、サブフィルタ210、220、及び230の出力間の交番切り替え240によって得られる出力225は、補間された信号の値330を用いて補間される。補間は、サンプル400及び400aによって表される信号のタイプに依存し、補間は、サブフィルタによって出力されたサンプルの中間値を得るためにその信号の値を推定する。例えば、補間は、正弦曲線補間、多項式補間、及び/又はスプライン補間とすることができる。
【0026】
ポリフェーザ補間は、サンプルをM個の異なる位相に分割して、サンプリングレートをベースバンドサンプルレートFsBBからRFサンプルレートFsRFに増加させる。多相フィルタは、非常に効率的な実施をもたらすサンプルレート変換を行うアーキテクチャである。その結果得られる離散時間信号は、元のサンプリングレートのM倍のサンプルレートを有し、各パスは低レートで動作しているが、出力信号は、ポリフェーザアーキテクチャに起因して高レートを有する。より低いサンプリングレートによるフィルタリングによって、計算の省力化が達成される。
【0027】
図4は、幾つかの実施形態によるフィルタバンクに対応する発振器バンクの概略図を示している。具体的には、多相デジタルダイレクト合成部(DDS:Digital Direct Synthesis)415のN(RF搬送周波数の数)個の複製が動作して、所望のRF周波数帯域420からコサインサンプル250及びサインサンプル255を生成するように、405のポリフェーザ補間フィルタバンクごとに1つの発振器バンクが存在する。ここでも同様に、サンプルは、クロック刻みごとに異なる位相間のM個の位相にわたって分配される。補間されたベースバンド位相サンプル410のそれぞれについて、デジタル波形420のサンプルの1つのシーケンスがある。
【0028】
幾つかの実施形態は、ハードウェアの速度限界に起因してシリアライザのサンプリング周波数(FsRF)に等しいサンプリングレートを達成するのは困難であるので、この特定の場合に単一レートDDSを用いるのは困難であるという認識に基づいている。この問題を克服するために、幾つかの実施形態は、ポリフェーザを用いて、単一レートDDSと同等のサンプリングレートを達成する。DDSはフィードフォワードシステムであるので、多相技法は、クリティカルパスに大きな影響を与えない。要するに、多相はM個の単一レートDDSモジュールを結合する。各DDSは、特定の位相アキュムレータと、サイン波形及びコサイン波形を含む2つのリードオンリーメモリとを有する。DDSモジュールは並列に動作し、必要とされるRF搬送周波数(ωc)波形のM個のサンプルを同時に生成する。DDSのそれぞれは、実際には、同等の全体のサンプリングレートよりもM倍低いレートで動作している。したがって、M個の異なる位相がFsBBでクロック制御されていても、シリアライザのサンプリング周波数FsRFに等しい全体のサンプリングレートを達成することが可能である。
【0029】
幾つかの実施態様では、位相計算ブロック416は、所望の搬送周波数、位相ステップ、及びそれぞれのDDS位相オフセットの間のマッピングを実行する。最小周波数分解能(Δf)が従来の単一レートDDSと同様に計算されるが、ここでは、サンプリングレートはN倍高い。
【数1】
この式において、Lは、各位相アキュムレータ417からのビットの数である。
【0030】
図5は、幾つかの実施形態の送信機によって用いられるデジタルアップコンバージョンステージの概略図を示している。補間されたベースバンドサンプル410の実部Re[XINT(n)]及び虚部Im[XINT(n)]は、搬送周波数(ωc)におけるRF周波数サンプルのコサイン及びサイン420と乗算され、その後、減算される。減算結果は、RFサンプルXRF(n)430である。これは、各RF搬送周波数帯域用に複製される。
【0031】
式(2)は、DUC(デジタルアップコンバージョンステージ)の動作のアーキテクチャを説明している。
【数2】
【0032】
2N個の乗算器及びN個の減算器を備える並列DUC425は、式(2)に与えられているように、410のI成分及びQ成分からのM個の位相間で要素ごとの演算を実行する。M個の位相は、420のサイン波形及びコサイン波形からのものである。この演算は、DCから所望のRF搬送周波数へのデジタルアップコンバージョンと形式的に同等である。これらの演算は、RF搬送周波数のN個の全ての帯域について並列に実行される。
【0033】
図6は、幾つかの実施形態による、N=3個の帯域の信号430を結合する一例示的なコンバイナ435の概略図を示している。これらの実施形態は、各単一帯域の並列/ポリフェーザアーキテクチャを利用し、まず、各帯域の多相サンプルを結合し、次に、1つのマルチバンドパルス符号化をこれらの結合されたサンプルに適用する。これによって、雑音シェーピングをマルチバンド送信に効果的に行うことが可能になる。これらは、単一の帯域と比較して固有の課題である。
【0034】
N個の各帯域のM個の全ての位相サンプルは、並列デジタルコンバイナ435の数学加算器620によって結合された同相のサンプルである。その結果の信号440は、N個の全てのRF帯域からの情報を有する。
【0035】
異なる実施形態は、異なる方法を用いてパルス符号化を実行する。例えば、異なる実施形態は、デルタシグマ変調、パルス幅変調、パルス位置変調、又はそれらの或る組み合わせを用いてパルス符号化を実行する。異なる実施形態は、これらの設計技法を用いて異なる方法を拡張し、必要とされる全体的なサンプリングレートを達成するために並列化を行うことができることを確保する。
【0036】
図7Aは、1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるPWMの概念を示す概略図を示している。この実施形態は、2つのmビット信号、すなわち、所望の信号x(n)720と、一様な振幅分布を有する基準波形r(n)710との間の比較730に基づくパルス幅変調を用いて、出力信号y(n)740を生成する。
【0037】
図7Bは、1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるDSM(デルタシグマ変調器)の概念を示す概略図を示している。この実施形態は、時変信号x(n)760のオーバーサンプリング及び量子化に基づいており、この信号を2レベル又はマルチレベルに量子化された信号y(n)770に符号化する。フィードバック信号は、量子化された信号を入力信号760から減算したものを含む。780は、量子化誤差e(n)を表す。790は、信号伝達関数である式(3)である。
【数3】
【0038】
DSMの伝達関数を説明する。STF(信号伝達関数)はZ−1であり、NTF(雑音伝達関数)は(1−Z−1)である。量子化雑音はフィルタリングされて、信号から除去され、信号対雑音比が高められる。実際には、伝達関数の次数に応じてDSMの様々な実施態様も存在する。
【0039】
図7Cは、1つの実施形態によってパルス符号化に用いられるデルタシグマ変調器750の概略図を示している。この実施形態では、パルスエンコーダは、結合された信号を符号化するデルタシグマ変調器の並列表現として実施される。この実施形態は、フレキシブルなRF搬送周波数の生成を可能にするために、デルタシグマ変調が、上記で説明したように帯域外放射を最小にするその量子化雑音シェーピングの特徴及びオーバーサンプリングの性質に起因して、パルス符号化を実行するのにより好ましい方法であるという理解に基づいている。
【0040】
M個のデルタシグマ変調器(マルチコアデルタシグマ変調器448)の並列化に加えて、デルタシグマ変調445が選択されるとき、幾つかの実施態様は、追加のモジュール、すなわち、デインターリーブモジュール446及びインターリーブモジュール447を用いる。デインターリーブモジュール446及びインターリーブモジュール447は、多くの場合に、実際的な実施態様におけるハードウェアリソースの課題に対応するように最適化する必要がある。デインターリーブモジュール446及びインターリーブモジュール447は、入力/出力データを適応させ、再配置するように構成されている。目的は、各デルタシグマ変調器からのフィードバックループが入力信号の連続サンプルを処理することを確保することである。例えば、コーナーベンダー行列転置器等の技法を適用して、446及び447のブロックに一時的に格納しなければならないサンプルの量を削減することができる。図7Cに示すようなこの技法は、N個の入力及び出力の独立した(サイズKの)スライスの転置器を示している。この設計は、FIFO(先入れ先出し)を用いず、完全に同期し、固定サイズのシフトレジスタ遅延のみを用いる。同じモジュールが446及び447の双方に用いられる。このモジュールを含めることによって、ブロックランダムアクセスメモリ(BRAM:Block Random-Access Memory)リソースの使用の徹底した削減が可能になる。Kサイズのスライスの数は、並列位相の数(M)に対応する。
【0041】
図8は、並列パルスエンコーダ445からの符号化された信号450を直列化するために1つの実施形態によって用いられるシリアライザ455の概略図を示している。この例示的なシリアライザは、ビットをインターリーブすることによって低速の並列信号(1.25Gbps)810を高速の直列信号(5Gbps)820に変換するように構成されている。出力送信クロックレートは、入力信号の並列クロックの倍数である。現代のFPGAプラットフォームは、超高速シリアライザモジュール(10Gbpsを超える)を提供し、これに基づいて、本実施形態は、RF搬送周波数の生成周波数範囲のフレキシビリティを提供することができる。上限周波数範囲は、通常、シリアライザの最大クロックレートの2分の1である。
【0042】
図8のシリアライザは、符号化された信号の2つの出力レベル用に設計されている。しかしながら、異なる実施形態は、マルチビットバス用に設計されたシリアライザを用いる。例えば、1つの実施形態は、この高速シリアライザを、結合されるとマルチビット信号を表すことができる複数の高速シリアライザに置き換える。
【0043】
図9は、実施形態のうちの1つの実施されたADTを検査するのに用いられる一例示的な装置構成200を示す図を示している。外部クロックジェネレータ901は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array))902のクロックを微分形式(CLK DIFF)で与える。FPGA902は、ADTアルゴリズムを実施するプラットフォームであり、通常、902のMGT(マルチギガビット送受信機)インターフェース、並びにその後に続くRF増幅器130及びフィルタ140が、高速の符号化されたRFビットストリーム125を生成するのに用いられる。VSA(ベクトル信号アナライザ(Vector signal analyzer))903は、RFビットストリーム125の周波数領域を測定するのに用いられる機器である。ホストPC904は、USB(ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus))を介したFPGAの制御及びFPGAとの通信、並びに、イーサネット(ETH)を通じたVSA903による測定に用いられる。通常、基準信号、例えば10MHzも、同期のために901〜903によって与えられる。検査装置構成900は、様々な実施形態によるRF−ADTの実現可能性を検証する。
【0044】
図10は、1つの実施形態による信号送信の一例示的なフローチャートを示し、これはN個の帯域に拡張可能である。複数のディスジョイント周波数帯域を表す複数のベースバンド帯域300は、個別に補間することができ(モジュール305による)、与えられた搬送周波数にアップコンバートすることができ(モジュール315による)、信号320が得られる。しかしながら、タイミング要件を緩和するために、サンプルは、320においてM個の位相にわたって分配される。その後、各ベースバンド帯域に対応するM個の位相は、同じ数の位相を維持しながら並列デジタルコンバイナ325内に加えられる。その後、パルスエンコーダの並列版335が、330のM個の位相を操作し、より少ない数の出力レベルを有する等価な出力340を生成する。この出力もM個の位相にわたって分割され、これらの位相は、その後、高速シリアライザ350によって直列化される。出力レベルの通常の数は2である。ただし、この実施形態は、マルチレベルバスに有効である。マルチレベルバスの場合、この高速シリアライザは、結合されるとマルチレベル信号を表すことができる複数の高速シリアライザに置き換えることができる。
【0045】
図11は、幾つかの実施形態による同時不連続マルチバンド送信機のスペクトルの概略図を示している。この事例は、2つの帯域1100が送信されるデュアルバンドのシナリオを報告する。パルスエンコーダ1110からの歪及び量子化雑音は、干渉問題を最小にするために放射前に帯域通過フィルタによってフィルタリングされる。
【0046】
図12は、4Gbpsのシリアライザ周波数を用いて組み込まれた幾つかの実施形態の送信機から測定されたスペクトルの概略図を示している。トリプルバンドは、18.75MHzの帯域幅を用いて16直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)で変調された信号を有する。この実施態様は、4Gbpsで動作するシリアライザを有するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)内に組み込まれる。全ての論理サブシステムは、62.5MHzでクロック制御されている。特に、同じスペクトルを達成するために、単一レートアーキテクチャは、全てのサブシステムが少なくとも4GHzでクロック制御されるべきである。
【0047】
幾つかの実施形態は、マルチレベル出力用のオールデジタル送信機のスペクトル性能が、改善された量子化レベルに起因して、2レベルの場合よりも優れているという理解に基づいている。システム性能(隣接チャネル電力比(ACPR:Adjacent-Channel Power Ratio)、エラーベクトル振幅(EVM:Error-Vector Magnitude)及びSNRによって評価される)を高めるために、マルチレベル出力への拡張を行う最終ステージが導入される。このマルチレベル出力の合成は、パルス列の結合に基づいている。
【0048】
図13は、1つの実施形態によるマルチレベルデジタル送信機アーキテクチャの概略図を示している。出力1301は、ビットストリームの高速読み出しを可能にする幾つかの高速インターフェース、例えば、FPGAプラットフォームにおいて利用可能なMGT(マルチギガビット送受信機(multi-gigabit transceiver))インターフェースを有する。各マルチギガビット送受信機インターフェースは、2レベルRFビットストリームを生成している。概略図1303は、送信機201の図と同様のシステムブロック図を示している。ただし、この場合、パルスエンコーダは、マルチレベル振幅を用いるデルタシグマ変調器1304を用いる。そのために、この送信機は、1301の各送受信機の動作を制御するマッパ1302を備える。
【0049】
図14Aは、幾つかの実施形態による増幅器ステージとしてHブリッジSMPAを用いたマルチビットADTの応用例の概略図を示している。例えば、2レベルの単一ビットの1つのみのMGTの代わりに、7つの異なるマルチギガビット送受信機(MGT)が用いられ、ルックアップテーブルマッパ1402がMGTの前に含まれる。このルックアップテーブルマッパは、マルチレベル入力信号を、7つの異なるパルス列シーケンスを結合したものに変換する。このマッパは、用いられるアナログ結合ネットワークに従って設計される。例えば、デュアルHブリッジSMPA1410が、増幅機能及び結合機能の双方として用いられる。帯域通過フィルタ後の結合されたRF出力は、マルチRF帯域において信号を送信するアンテナに接続される。
【0050】
図14Bは、1つの実施形態による7レベルのRFinを表す8つのMGT(0〜7)のマッピング関係を与える表を示している。この実施形態において、表における1又は0は、ON又はOFFである1410の8つのトランジスタの動作条件を示す。例えば、3レベル出力(暗い灰色の背景)、5レベル出力(暗い灰色及び明るい灰色の背景)、又は7レベル出力(全ての表の要素を用いる)が示されている。
【0051】
上述した本開示の実施形態は、数多くの方法のうちの任意のもので実施することができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。請求項の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」等の序数の使用は、それ自体で、1つの請求項の要素の別の請求項の要素に対する優先順位も、優位性も、順序も暗示するものでもなければ、方法の動作が実行される時間的な順序も暗示するものでもなく、請求項の要素を区別するために、単に、或る特定の名称を有する1つの請求項の要素を、同じ(序数の用語の使用を除く)名称を有する別の要素と区別するラベルとして用いられているにすぎない。
【0052】
また、本開示の実施形態は方法として具現することができ、その一例が提供されてきた。その方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法において順序化することができる。したがって、例示的な実施形態において順次の動作として示される場合であっても、例示されるのとは異なる順序において動作が実行される実施形態を構成することもでき、異なる順序は、いくつかの動作を同時に実行することを含むことができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B