特許第6983339号(P6983339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983339
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】光通信装置及び光通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20211206BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20211206BHJP
【FI】
   H04B10/80
   H04B10/079 150
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-564502(P2020-564502)
(86)(22)【出願日】2019年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2019000728
(87)【国際公開番号】WO2020144858
(87)【国際公開日】20200716
【審査請求日】2020年11月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今城 勝治
(72)【発明者】
【氏名】西野 祐一
【審査官】 対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181871(WO,A1)
【文献】 特開2004−159032(JP,A)
【文献】 特開平07−099480(JP,A)
【文献】 特開2012−156685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信光を水中に出射する光送信部と、
前記光送信部から水中に出射された送信光をモニタ光として受信する送信光モニタ部と、
前記光送信部から水中に出射される送信光の光量に対する前記送信光モニタ部により受信されたモニタ光の光量の減衰率を算出する減衰率算出部と、
送信光の帯域と、光量の減衰率と、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離と、前記通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の前記受信光の信号対雑音比との対応関係を記憶しているテーブル部と、
前記テーブル部により記憶されている対応関係を参照することで、前記減衰率算出部により算出された減衰率と、送信光の帯域と、受信光の信号対雑音比とから、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離を求め、前記通信が可能な距離が、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間の通信距離の要求値よりも短ければ、前記自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、前記自らの光通信装置を前記通信相手の光通信装置に近づける移動体制御部と
を備えた光通信装置。
【請求項2】
前記テーブル部により記憶されている対応関係を参照することで、前記減衰率算出部により算出された減衰率と、送信光の帯域と、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間の通信距離の要求値とから、前記通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の前記受信光の信号対雑音比を推定し、推定した信号対雑音比に基づいて、前記送信光の特性を制御する特性制御処理部を備えたことを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項3】
前記特性制御処理部は、前記信号対雑音比が閾値以上になるように、前記送信光の特性を制御することを特徴とする請求項2記載の光通信装置。
【請求項4】
前記光送信部は、変調信号に従って変調光を生成し、前記変調光を送信光として水中に出射し、
前記特性制御処理部は、前記信号対雑音比に基づいて、前記送信光の特性として、前記変調光の変調速度を制御することを特徴とする請求項2記載の光通信装置。
【請求項5】
前記特性制御処理部は、前記信号対雑音比に基づいて、前記送信光の特性として、前記光送信部から出射される送信光のビーム拡がり角を制御することを特徴とする請求項2記載の光通信装置。
【請求項6】
前記光送信部は、変調信号に従って変調光を生成し、前記変調光を送信光として水中に出射し、
前記特性制御処理部は、前記信号対雑音比に基づいて、前記送信光の特性として、前記変調信号に含める誤り訂正符号を制御することを特徴とする請求項2記載の光通信装置。
【請求項7】
前記通信相手の光通信装置から、前記通信相手の光通信装置の位置を示す位置情報を含む音信号を受信する音信号受信部と、
前記音信号受信部により受信された音信号に含まれている位置情報から、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間の距離を算出する距離算出部とを備え、
前記移動体制御部は、前記通信距離の要求値の代わりに、前記距離算出部により算出された距離を受けると、前記通信が可能な距離が、前記距離算出部により算出された距離よりも短ければ、前記自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、前記自らの光通信装置を前記通信相手の光通信装置に近づけることを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項8】
音信号を水中に出射して、前記通信相手の光通信装置に反射された前記音信号の反射信号を受信する音信号送受信部と、
前記音信号送受信部から音信号が出射されてから、前記音信号送受信部により反射信号が受信されるまでの時間から、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間の距離を算出する距離算出部とを備え、
前記移動体制御部は、前記通信距離の要求値の代わりに、前記距離算出部により算出された距離を受けると、前記通信が可能な距離が、前記距離算出部により算出された距離よりも短ければ、前記自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、前記自らの光通信装置を前記通信相手の光通信装置に近づけることを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項9】
前記光送信部は、変調信号に従って連続発振光の位相を変調することで変調光を生成し、前記変調光を送信光として水中に出射することを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項10】
前記光送信部は、変調信号に従って連続発振光の強度を変調することで変調光を生成し、前記変調光を送信光として水中に出射することを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項11】
前記通信相手の光通信装置から通信データを含む光信号が水中に出射されると、水中に出射された光信号を受信する光信号受信部と、
前記光信号受信部により受信された光信号に含まれている通信データを復調する復調部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の光通信装置。
【請求項12】
1つの光アンテナが、前記送信光モニタ部が備える光アンテナと、前記光信号受信部が備える光アンテナとを兼ねており、
前記1つの光アンテナが、前記送信光及び前記光信号のそれぞれを受信することを特徴とする請求項11記載の光通信装置。
【請求項13】
光送信部が、送信光を水中に出射し、
送信光モニタ部が、前記光送信部から水中に出射された送信光をモニタ光として受信し、
減衰率算出部が、前記光送信部から水中に出射される送信光の光量に対する前記送信光モニタ部により受信されたモニタ光の光量の減衰率を算出し、
移動体制御部が、テーブル部によって記憶されている、送信光の帯域と、光量の減衰率と、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離と、前記通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の前記受信光の信号対雑音比との対応関係を参照することで、前記減衰率算出部により算出された減衰率と、送信光の帯域と、受信光の信号対雑音比とから、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離を求め、前記通信が可能な距離が、前記自らの光通信装置と前記通信相手の光通信装置との間の通信距離の要求値よりも短ければ、前記自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、前記自らの光通信装置を前記通信相手の光通信装置に近づける
光通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号対雑音比の増減に影響する送信光の特性を制御する光通信装置及び光通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、光受信帯域制御部が、信号レベル検出部により検出された受光信号の信号レベルに従って光無線区間の帯域変更要求を通信相手の光無線伝送装置に送信する光無線伝送装置が開示されている。
また、特許文献1に開示されている光無線伝送装置は、通信相手の光無線伝送装置から送信された帯域変更要求を受信すると、受信した帯域変更要求に従ってクロック生成部により生成される変調クロックを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−218802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている光無線伝送装置は、光無線区間の環境が劣悪であるために、通信相手の光無線伝送装置との間で通信が確立できていない状態では、通信相手の光無線伝送装置との間で光無線区間の帯域変更要求を送受信することができない。特許文献1に開示されている光無線伝送装置は、帯域変更要求を送受信することができない場合、受光信号の信号レベルに応じた帯域に変更することができない。
したがって、特許文献1に開示されている光無線伝送装置は、受光信号の信号対雑音比(SNR:Signal−to−Noise Ratio)として、所望のSNRを得ることができないことがあるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、通信相手の光通信装置との間で通信が確立できていない状態でも、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光のSNRを制御することができる光通信装置及び光通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る光通信装置は、送信光を水中に出射する光送信部と、光送信部から水中に出射された送信光をモニタ光として受信する送信光モニタ部と、光送信部から水中に出射される送信光の光量に対する送信光モニタ部により受信されたモニタ光の光量の減衰率を算出する減衰率算出部と、送信光の帯域と、光量の減衰率と、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離と、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光の信号対雑音比との対応関係を記憶しているテーブル部と、テーブル部により記憶されている対応関係を参照することで、減衰率算出部により算出された減衰率と、送信光の帯域と、受信光の信号対雑音比とから、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離を求め、通信が可能な距離が、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離の要求値よりも短ければ、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づける移動体制御部とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、移動体制御部が、テーブル部により記憶されている対応関係を参照することで、減衰率算出部により算出された減衰率と、送信光の帯域と、受信光の信号対雑音比とから、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離を求め、通信が可能な距離が、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離の要求値よりも短ければ、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるように、光通信装置を構成した。したがって、この発明に係る光通信装置は、通信相手の光通信装置との間で通信が確立できていない状態でも、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光の信号対雑音比を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る光通信装置を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る光通信装置における減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20及び移動体制御部21のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図3】光通信装置の一部がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図4】光通信装置の処理手順である光通信方法を示すフローチャートである。
図5】水中の濁度と減衰率Atとの関係を示す説明図である。
図6】送信光の帯域Bと、減衰率Atと、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離Lと、光信号受信部12により受信される受信光のSNRとの対応関係を示す説明図である。
図7】移動体制御部21の処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に係る光通信装置を示す構成図である。
図9】実施の形態2に係る光通信装置における減衰率算出部11、復調部17、特性制御部18、移動体制御部21及び距離算出部59のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図10】実施の形態3に係る光通信装置を示す構成図である。
図11】実施の形態4に係る光通信装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光通信装置を示す構成図である。
図2は、実施の形態1に係る光通信装置における減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20及び移動体制御部21のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図1及び図2において、光送信部1は、基準光源2、変調信号生成部3、変調器4及び光アンテナ5を備えている。
光送信部1は、送信光を水中に出射することで、送信光を送信光モニタ部6及び通信相手の光通信装置のそれぞれに送信する。
基準光源2は、連続発振光(CW:Continuous Wave)光を、光ファイバを介して、変調器4に出力する。
【0011】
変調信号生成部3は、通信対象の通信データと、誤り訂正符号とを含む変調信号を生成し、生成した変調信号を変調器4に出力する。なお、変調信号生成部3は、特性制御処理部20から出力された制御信号に従って、変調信号に含める誤り訂正符号を変更する。
変調器4は、光ファイバを介して、基準光源2と接続されている。
変調器4は、変調信号生成部3から出力された変調信号に従って、基準光源2から出力されたCW光の位相を変調することで変調光を生成し、生成した変調光を、光ファイバを介して、光アンテナ5に出力する。なお、変調器4は、変調光を生成する際、特性制御処理部20から出力された制御信号に従って変調光の変調速度を変更する。しかし、これは一例に過ぎず、変調器4は、基準光源2から出力されたCW光の強度を変調するものであってもよいし、さらに基準光源2の出力を電気信号によって直接変調する構成であってもよい。
【0012】
光アンテナ5は、例えば、レンズを備える光望遠鏡によって実現される。光アンテナ5は、光ファイバを介して、変調器4と接続されている。光アンテナ5は、変調器4から出力された変調光を送信光として水中に出射する。なお、光アンテナ5は、送信光を水中に出射する際、特性制御処理部20から出力された制御信号に従って送信光のビーム拡がり角を調整する。
【0013】
送信光モニタ部6は、光アンテナ7、光検出器8、電流電圧変換器(以下、「IV変換器」と称する)9及びアナログデジタル変換器(以下、「ADC」と称する)10を備えている。送信光モニタ部6は、光送信部1から水中に出射された送信光をモニタ光として受信する。
光アンテナ7は、例えば、レンズを備える光望遠鏡によって実現される。光アンテナ7は、光送信部1から水中に出射された送信光をモニタ光として受信し、受信したモニタ光を、光ファイバを介して、光検出器8に出力する。
【0014】
光検出器8は、光ファイバを介して、光アンテナ7と接続されている。光検出器8は、光アンテナ7から出力されたモニタ光を電流信号に変換し、電流信号をIV変換器9に出力する。
IV変換器9は、光検出器8から出力された電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号をADC10に出力する。
ADC10は、IV変換器9から出力された電圧信号をアナログ信号からディジタル信号に変換し、ディジタル信号を減衰率算出部11に出力する。
【0015】
減衰率算出部11は、例えば、減衰率算出回路31によって実現される。減衰率算出部11は、光送信部1から水中に出射される送信光の光量に対する送信光モニタ部6により受信されたモニタ光の光量の減衰率を算出する。減衰率算出部11は、算出した減衰率を特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力する。
送信光モニタ部6により受信されたモニタ光の光量は、ADC10から出力されたディジタル信号と正比例している。
図1に示す光通信装置では、光送信部1から水中に出射される送信光の光量が、既値として、減衰率算出部11の内部メモリに格納されているものとする。しかし、これは一例に過ぎず、光アンテナ5から出射される送信光の光量の計測値が、外部から減衰率算出部11に与えられるものであってもよい。
【0016】
光信号受信部12は、光アンテナ13、光検出器14、IV変換器15及びADC16を備えている。
光信号受信部12は、通信相手の光通信装置から通信データを含む光信号が水中に出射されると、水中に出射された光信号を受信光として受信する。
光アンテナ13は、例えば、レンズを備える光望遠鏡によって実現される。光アンテナ13は、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信し、受信した受信光を、光ファイバを介して、光検出器14に出力する。
【0017】
光検出器14は、光ファイバを介して、光アンテナ13と接続されている。光検出器14は、光アンテナ13から出力された受信光を電流信号に変換し、電流信号をIV変換器15に出力する。
IV変換器15は、光検出器14から出力された電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号をADC16に出力する。
ADC16は、IV変換器15から出力された電圧信号をアナログ信号からディジタル信号に変換し、ディジタル信号を復調部17に出力する。
【0018】
復調部17は、例えば、復調回路32によって実現される。復調部17は、光信号受信部12により受信された光信号に含まれている通信データを復調する。
【0019】
特性制御部18は、テーブル部19及び特性制御処理部20を備えている。
特性制御部18は、減衰率算出部11により算出された減衰率から、光信号受信部12が、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光の信号対雑音比(SNR:Signal−to−Noise Ratio)を推定する。
特性制御部18は、SNRに基づいて、SNRの増減に影響する送信光の特性を制御する。
テーブル部19は、例えば、記憶回路33によって実現される。テーブル部19は、送信光の帯域と、減衰率と、通信距離と、光信号受信部12により受信される受信光のSNRとの対応関係を記憶している。
【0020】
特性制御処理部20は、例えば、特性制御処理回路34によって実現される。特性制御処理部20は、テーブル部19により記憶されている対応関係を参照して、減衰率算出部11により算出された減衰率、送信光の帯域及び通信距離の要求値から、受信光のSNRを推定する。通信距離の要求値は、ユーザが要求している通信距離であり、当該通信距離は、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の通信距離である。通信距離の要求値は、外部から特性制御処理部20に与えられるものであってもよいし、特性制御処理部20の内部メモリに格納されているものであってもよい。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRと、SNRの閾値とを比較する。SNRの閾値は、外部から特性制御処理部20に与えられるものであってもよいし、特性制御処理部20の内部メモリに格納されているものであってもよい。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値よりも小さければ、受信光のSNRが大きくなるように、変調速度を下げる旨を示す制御信号を変調器4に出力する。
あるいは、特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値よりも小さければ、受信光のSNRが大きくなるように、送信光のビーム拡がり角を狭くする旨を示す制御信号を光アンテナ5に出力する。
あるいは、特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値よりも小さければ、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号を変調信号生成部3に出力する。
【0021】
移動体制御部21は、例えば、移動体制御回路35によって実現される。移動体制御部21は、減衰率算出部11により算出された減衰率に基づいて、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離を求める。移動体制御部21は、通信が可能な距離が、通信距離の要求値よりも短ければ、自らの光通信装置を搭載している図示せぬ移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるようにする。通信距離の要求値は、外部から特性制御処理部20に与えられるものであってもよいし、移動体制御部21の内部メモリに格納されているものであってもよい。
移動体は、光通信装置を搭載した状態で、水中を移動できるものであればよく、潜水艦又は水中ドローンなどが該当する。
【0022】
図1では、光通信装置の一部の構成要素である減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれが、図2に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、光通信装置の一部が、減衰率算出回路31、復調回路32、記憶回路33、特性制御処理回路34及び移動体制御回路35によって実現されるものを想定している。
【0023】
ここで、記憶回路33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいは、DVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
また、減衰率算出回路31、復調回路32、特性制御処理回路34及び移動体制御回路35のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0024】
光通信装置の一部の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではない。例えば、減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20又は移動体制御部21のいずれか1つ以上が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0025】
図3は、光通信装置の一部がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
光通信装置の一部がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、テーブル部19がコンピュータのメモリ41上に構成される。減衰率算出部11、復調部17、特性制御処理部20及び移動体制御部21の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ41に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
図4は、光通信装置の処理手順である光通信方法を示すフローチャートである。
【0026】
また、図2では、光通信装置の一部の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、光通信装置の一部がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、光通信装置における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0027】
次に、図1に示す光通信装置の動作について説明する。
光信号受信部12により受信される受信光のSNRの増減に影響する送信光の特性に関する項目として、変調器4により生成される変調光の変調速度V、光アンテナ5から出力される送信光のビーム拡がり角θ、及び、変調信号生成部3により生成される変調信号が含む誤り訂正符号などが考えられる。
図1に示す光通信装置では、特性制御部18が、送信光の特性として、変調光の変調速度V、送信光のビーム拡がり角θ及び誤り訂正符号のうち、少なくとも1つ以上を制御する。
ここでは、説明の便宜上、通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値以上であるものとする。通信が可能な距離Lは、SNRが0[dB]以上となる、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の距離の中で、最長の距離である。通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値以上であっても、所望のSNRが得られるとは限らないため、特性制御部18が、送信光の特性を制御する。
【0028】
基準光源2は、CW光を、光ファイバを介して、変調器4に出力する。
変調信号生成部3は、通信対象の通信データと、誤り訂正符号とを含む変調信号を生成し、生成した変調信号を変調器4に出力する。
【0029】
変調器4は、変調信号生成部3から出力された変調信号に従って、基準光源2から出力されたCW光の位相を変調することで、変調光を生成する。変調器4は、生成した変調光を、光ファイバを介して、光アンテナ5に出力する。
光アンテナ5は、変調器4から変調光を受けると、変調光を送信光として水中に出射する。
【0030】
光アンテナ7は、光送信部1から水中に出射された送信光をモニタ光として受信する(図4のステップST1)。光アンテナ7は、受信したモニタ光を、光ファイバを介して、光検出器8に出力する。
光検出器8は、光アンテナ7から出力されたモニタ光を電流信号に変換し、電流信号をIV変換器9に出力する。
IV変換器9は、光検出器8から出力された電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号をADC10に出力する。
ADC10は、IV変換器9から出力された電圧信号をアナログ信号からディジタル信号Dに変換し、ディジタル信号Dを減衰率算出部11に出力する。
【0031】
減衰率算出部11は、ADC10からディジタル信号Dを受けると、以下の式(1)に示すように、ディジタル信号Dから送信光モニタ部6により受信されたモニタ光の光量Pを算出する。
=c×D (1)
式(1)において、cは、比例定数である。
減衰率算出部11は、モニタ光の光量Pを算出すると、以下の式(2)に示すように、光アンテナ5から水中に出射される送信光の光量Pに対するモニタ光の光量Pの減衰率Atを算出する(図4のステップST2)。
【0032】
ここでは、減衰率算出部11が、式(2)に従って減衰率Atを算出している。しかし、これは一例に過ぎず、減衰率算出部11が、減衰率Atとして、例えば、以下の式(3)に示すように、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量を算出するようにしてもよい。
式(3)において、Lは、通信距離の要求値である。通信距離Lの要求値は、外部から減衰率算出部11に与えられるものであってもよいし、減衰率算出部11の内部メモリに格納されているものであってもよい。図1に示す光通信装置では、通信距離Lの要求値が、外部から減衰率算出部11に与えられる旨の記載を省略している。
【0033】
減衰率算出部11は、算出した減衰率Atを特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力する。
自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の距離が一定であるとすれば、減衰率Atは、図5に示すように、水中の濁度と正比例する。濁度は、水の濁りを表す指標である。したがって、減衰率Atは、水の濁りが大きい程、大きくなり、モニタ光の光量Pが増大する。
図5は、水中の濁度と減衰率Atとの関係を示す説明図である。
【0034】
テーブル部19は、図6に示すように、送信光の帯域Bと、減衰率Atと、通信距離Lと、受信光のSNRとの対応関係を記憶している。
図6は、送信光の帯域Bと、減衰率Atと、通信距離Lと、光信号受信部12により受信される受信光のSNRとの対応関係を示す説明図である。
ただし、図6では、減衰率Atとして、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が記述されている。
【0035】
特性制御処理部20は、減衰率算出部11から減衰率Atを受けると、テーブル部19により記憶されている図6に示す対応関係を参照して、減衰率算出部11により算出された減衰率At、送信光の帯域B及び通信距離Lの要求値から、光信号受信部12により受信される受信光のSNRを推定する(図4のステップST3)。
特性制御処理部20は、例えば、送信光の帯域Bが500[MHz]、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が5[dB/m]及び通信距離Lの要求値が15[m]であれば、受信光のSNRが10[dB]であると推定する。
特性制御処理部20は、例えば、送信光の帯域Bが50[MHz]、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が2[dB/m]及び通信距離Lの要求値が30[m]であれば、受信光のSNRが44[dB]であると推定する。
【0036】
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRと、SNRの閾値ThSNRとを比較する(図4のステップST4)。SNRの閾値ThSNRは、0[dB]よりも大きな値である。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値ThSNRよりも小さければ(図4のステップST4:YESの場合)、受信光のSNRが大きくなるように、変調速度Vを下げる旨を示す制御信号cntを変調器4に出力する(図4のステップST5)。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば(図4のステップST4:NOの場合)、変調速度Vを下げる旨を示す制御信号cntを変調器4に出力しない。
【0037】
変調器4は、上述したように、変調信号生成部3から出力された変調信号に従って、基準光源2から出力されたCW光の位相を変調することで、変調光を生成する。
変調器4は、変調光を生成する際、特性制御処理部20から変調速度Vを下げる旨を示す制御信号cntを受けていれば(図4のステップST6:YESの場合)、前回生成した変調光よりも、変調速度Vが低い変調光を生成する(図4のステップST7)。
変調器4は、特性制御処理部20から変調速度Vを下げる旨を示す制御信号cntを受けていなければ(図4のステップST6:NOの場合)、前回生成した変調光と変調速度Vが同じ変調光を生成する(図4のステップST8)。
【0038】
変調器4は、生成した変調光を、光ファイバを介して、光アンテナ5に出力する。
光アンテナ5は、変調器4から変調光を受けると、変調光を送信光として水中に出射する(図4のステップST9)。
【0039】
図4に示すフローチャートでは、特性制御処理部20が、SNRの増減に影響する送信光の特性として、変調光の変調速度Vを制御している。特性制御処理部20は、SNRの増減に影響する送信光の特性として、送信光のビーム拡がり角θを制御するようにしてもよい。
特性制御処理部20は、送信光のビーム拡がり角θを制御する場合、推定した受信光のSNRが閾値ThSNRよりも小さければ、受信光のSNRが大きくなるように、送信光のビーム拡がり角θを狭くする旨を示す制御信号cntを光アンテナ5に出力する。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば、送信光のビーム拡がり角θを狭くする旨を示す制御信号cntを光アンテナ5に出力しない。
【0040】
光アンテナ5は、特性制御処理部20から送信光のビーム拡がり角θを狭くする旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回出射した送信光よりも、ビーム拡がり角θが狭い送信光を水中に出射する。
光アンテナ5は、特性制御処理部20から送信光のビーム拡がり角θを狭くする旨を示す制御信号cntを受けていなければ、前回出射した送信光とビーム拡がり角θが同じ送信光を水中に出射する。
なお、光アンテナ5は、送信光を出射する光ファイバと、光ファイバから出射された送信光のビーム拡がり角θを調整するためのレンズとを備えており、送信光の出力端とレンズとの間の距離を変えることで、送信光のビーム拡がり角θを調整することができる。
【0041】
図4に示すフローチャートでは、特性制御処理部20が、SNRの増減に影響する送信光の特性として、変調光の変調速度Vを制御している。特性制御処理部20は、SNRの増減に影響する送信光の特性として、変調信号に含める誤り訂正符号を制御するようにしてもよい。
特性制御処理部20は、変調信号に含める誤り訂正符号を制御する場合、推定した受信光のSNRが閾値ThSNRよりも小さければ、例えば、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力する。
特性制御処理部20は、推定した受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力しない。
【0042】
変調信号生成部3は、上述したように、通信対象の通信データと、誤り訂正符号とを含む変調信号を生成し、生成した変調信号を変調器4に出力する。
変調信号生成部3は、変調信号を生成する際、特性制御処理部20から変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回生成した変調信号が含んでいる誤り訂正符号よりも、多くの誤り訂正符号を含む変調信号を生成する。変調信号生成部3が、例えば、誤り訂正符号としてパリティビットを用いる場合、パリティビットのビット数を増やすことで、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やすことができる。
変調信号生成部3は、特性制御処理部20から変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを受けていなければ、前回生成した変調信号が含んでいる誤り訂正符号と同じ数の誤り訂正符号を含む変調信号を生成する。
【0043】
ここでは、推定した受信光のSNRが閾値ThSNRよりも小さければ、特性制御処理部20が、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力している。しかし、これは一例に過ぎず、特性制御処理部20が、前回よりも誤り訂正能力が高い誤り訂正符号を変調信号に含める旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力するようにしてもよい。
変調信号生成部3は、特性制御処理部20から、前回よりも誤り訂正能力が高い誤り訂正符号を変調信号に含める旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回生成した変調信号が含んでいる誤り訂正符号よりも、誤り訂正能力が高い誤り訂正符号を含む変調信号を生成する。
【0044】
図1に示す光通信装置では、特性制御処理部20が、SNRの増減に影響する送信光の特性として、変調光の変調速度V、送信光のビーム拡がり角θ、又は、変調信号に含める誤り訂正符号を制御している。
特性制御処理部20は、変調光の変調速度V、送信光のビーム拡がり角θ及び変調信号に含める誤り訂正符号のうち、いずれか1つ以上を制御することで、SNRの増減を制御することができる。
変調光の変調速度V、送信光のビーム拡がり角θ及び変調信号に含める誤り訂正符号のうち、いずれを制御するかは、特性制御処理部20に設定されていてもよいし、外部から特性制御処理部20に指示されるようにしてもよい。
【0045】
なお、受信光のSNRと、変調光の変調速度V及び送信光のビーム拡がり角θとの関係は、以下の通りであり、変調速度V又はビーム拡がり角θが変わると、受信光のSNRが変化することが分かる。
式(4)〜(8)において、c,cは、比例定数、Pは、受信光の受信電力、Pshotは、受信光の雑音電力である。
また、Sdetは、光検出器8の感度、Rは、光検出器8に内蔵されているアンプの抵抗値、eは、電子の電荷量、Areは、光アンテナ7が備えるレンズの表面積である。
なお、光検出器8は、アンプを内蔵しており、例えば、アンプが、光アンテナ7から出力されたモニタ光を増幅し、増幅後のモニタ光を電流信号に変換する。
【0046】
ここまでの説明では、通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値以上であるものとしている。
しかし、実際には、通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値よりも短いことがある。通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値よりも短い場合、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置とが、光信号の通信を実施することができない。
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lが、通信距離Lの要求値よりも短い場合、光信号の通信を実施できるようにするために、自らの光通信装置を搭載している図示せぬ移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるようにする。
【0047】
図7は、移動体制御部21の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図7を参照しながら、移動体制御部21の動作について説明する。
移動体制御部21は、減衰率算出部11から減衰率Atを受けると、減衰率Atに基づいて、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離Lを求める(図7のステップST21)。
移動体制御部21は、例えば、図6に示す対応関係を参照することで、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離Lを求めることができる。
【0048】
具体的には、移動体制御部21は、例えば、送信光の帯域Bが500[MHz]であり、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が5[dB/m]であれば、通信が可能な距離Lが16[m]であると特定する。
移動体制御部21は、例えば、送信光の帯域Bが500[MHz]であり、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が2[dB/m]であれば、通信が可能な距離Lが40[m]であると特定する。
【0049】
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lと、通信距離Lとを比較する(図7のステップST22)。
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lが、通信距離Lよりも短ければ(図7のステップST22:YESの場合)、自らの光通信装置を搭載している図示せぬ移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるようにする(図7のステップST23)。図1に示す光通信装置では、移動体制御部21において、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αは、既値である。
自らの光通信装置が通信相手の光通信装置に近づくことで、通信が可能な距離Lが、通信距離L以上になれば、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置とが、光信号の通信を実施することができる。
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lが、通信距離L以上であれば(図7のステップST22:NOの場合)、自らの光通信装置を搭載している図示せぬ移動体を制御しない。
【0050】
ここでは、移動体制御部21が、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけることで、通信が可能な距離Lを通信距離L以上にして、光信号の通信を実施できるようにしている。しかし、これは一例に過ぎず、移動体制御部21が、例えば、送信光の帯域Bを変えることで、通信が可能な距離Lを通信距離L以上にして、光信号の通信を実施できるようにしてもよい。
例えば、送信光の帯域Bが500[MHz]であり、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が5[dB/m]であるとき、移動体制御部21が、送信光の帯域Bを50[MHz]に変更すると、通信が可能な距離Lが16[m]から17[m]に延びる。
例えば、送信光の帯域Bが500[MHz]であり、1[m]の距離当りの光量Pの減衰量が2[dB/m]であるとき、移動体制御部21が、送信光の帯域Bを50[MHz]に変更すると、通信が可能な距離Lが40[m]から43[m]に延びる。
通信が可能な距離Lが延びれば、通信が可能な距離Lが通信距離L以上になることがある。
【0051】
通信が可能な距離Lが通信距離L以上になると、送信光モニタ部6、減衰率算出部11、特性制御部18及び光送信部1が、図4のステップST1〜ST9に示す処理を繰り返し実施する。
【0052】
光アンテナ13は、通信が可能な距離Lが通信距離L以上であるとき、通信相手の光通信装置が光信号を水中に出射すると、通信相手の光通信装置から出射された光信号を受信光として受信する。光アンテナ13は、受信した受信光を、光ファイバを介して、光検出器14に出力する。
光検出器14は、光アンテナ13から受信光を受けると、受信光を電流信号に変換し、電流信号をIV変換器15に出力する。
IV変換器15は、光検出器14から電流信号を受けると、電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号をADC16に出力する。
特性制御処理部20は、通信相手の光通信装置から放射される光信号の帯域を、通信相手の光通信装置から知らされている場合、光信号の帯域を示す帯域パラメータをIV変換器15に出力する。
通信相手の光通信装置から放射される光信号の帯域が変化すると、光アンテナ13で受信される受信光のSNRが変化する。IV変換器15は、特性制御処理部20から帯域パラメータを受けていれば、受信光の帯域が変化しても、SNRの変化が小さくなるように、帯域パラメータが示す光信号の帯域に基づいて、電圧信号の大きさを調整する。
【0053】
ADC16は、IV変換器15から電圧信号を受けると、電圧信号をアナログ信号からディジタル信号に変換し、ディジタル信号を復調部17に出力する。
復調部17は、光信号受信部12からディジタル信号を受けると、ディジタル信号から、光アンテナ13により受信された光信号に含まれている通信データを復調する。
【0054】
以上の実施の形態1は、特性制御部18が、減衰率算出部11により算出された減衰率から、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光のSNRを推定し、SNRに基づいて、SNRの増減に影響する送信光の特性を制御するように、図1に示す光通信装置を構成した。したがって、図1に示す光通信装置は、通信相手の光通信装置との間で通信が確立できていない状態でも、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信した際の受信光のSNRを制御することができる。
【0055】
図1に示す光通信装置では、受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば、特性制御処理部20が、変調速度Vを下げる旨を示す制御信号cntを変調器4に出力しないようにしている。あるいは、受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば、特性制御処理部20が、送信光のビーム拡がり角θを狭くする旨を示す制御信号cntを光アンテナ5に出力しないようにしている。あるいは、受信光のSNRが閾値ThSNR以上であれば、特性制御処理部20が、変調信号における誤り訂正符号の割合を増やす旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力しないようにしている。
しかし、これは一例に過ぎず、受信光のSNRが、閾値ThSNRよりも大きいSNRの上限用の閾値ThSNR−up(ThSNR<ThSNR−up)よりも大きければ(SNR>ThSNR−up)、特性制御処理部20が、変調速度Vを上げる旨を示す制御信号cntを変調器4に出力するようにしてもよい。
変調器4は、特性制御処理部20から変調速度Vを上げる旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回生成した変調光よりも、変調速度Vが高い変調光を生成する。
受信光のSNRが閾値ThSNR以上であり、かつ、受信光のSNRが上限用の閾値ThSNR−up以下であれば(ThSNR≦SNR≦ThSNR−up)、特性制御処理部20は、制御信号cntを変調器4に出力しない。
なお、SNRの上限用の閾値ThSNR−upは、外部から特性制御処理部20に与えられるものであってもよいし、移動体制御部21の内部メモリに格納されているものであってもよい。
【0056】
また、受信光のSNRが、SNRの上限用の閾値ThSNR−upよりも大きければ(SNR>ThSNR−up)、特性制御処理部20が、送信光のビーム拡がり角θを広くする旨を示す制御信号cntを光アンテナ5に出力するようにしてもよい。
光アンテナ5は、特性制御処理部20から送信光のビーム拡がり角θを広くする旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回出射した送信光よりも、ビーム拡がり角θが広い送信光を水中に出射する。
受信光のSNRが閾値ThSNR以上であり、かつ、受信光のSNRが上限用の閾値ThSNR−up以下であれば(ThSNR≦SNR≦ThSNR−up)、特性制御処理部20は、制御信号cntを光アンテナ5に出力しない。
【0057】
また、受信光のSNRが、SNRの上限用の閾値ThSNR−upよりも大きければ(SNR>ThSNR−up)、特性制御処理部20が、変調信号における誤り訂正符号の割合を減らす旨を示す制御信号cntを変調信号生成部3に出力する。
変調信号生成部3は、特性制御処理部20から変調信号における誤り訂正符号の割合を減らす旨を示す制御信号cntを受けていれば、前回生成した変調信号が含んでいる誤り訂正符号よりも、少ない誤り訂正符号を含む変調信号を生成する。
受信光のSNRが閾値ThSNR以上であり、かつ、受信光のSNRが上限用の閾値ThSNR−up以下であれば(ThSNR≦SNR≦ThSNR−up)、特性制御処理部20は、制御信号cntを変調信号生成部3に出力しない。
【0058】
図1に示す光通信装置では、特性制御処理部20が、受信光のSNRと比較する閾値ThSNRを固定している。
しかし、これは一例に過ぎず、例えば、送信光の帯域Bに応じて、特性制御処理部20が、閾値ThSNRを変更するようにしてもよい。特性制御処理部20は、例えば、送信光の帯域Bが低いときの閾値ThSNRよりも、送信光の帯域Bが高いときの閾値ThSNRを低くする。
【0059】
図1に示す光通信装置では、通信が可能な距離Lが、通信距離L以上であれば、移動体制御部21が、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御しないようにしている。
しかし、これは一例に過ぎず、通信が可能な距離Lが、通信距離Lよりも大きい上限用の閾値ThL−up(L<ThL−up)よりも大きければ(L>ThL−up)、移動体制御部21が、移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置から遠ざけるようにしてもよい。
通信が可能な距離Lが通信距離L以上であり、かつ、通信が可能な距離Lが上限用の閾値ThL−up以下であれば(L≦L≦ThL−up)、移動体制御部21は、移動体を制御しない。
【0060】
実施の形態2.
図1に示す光通信装置では、移動体制御部21が、外部から通信距離Lの要求値が与えられている。
実施の形態2では、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出し、算出した距離Lを移動体制御部21に出力する距離算出部59を備える光通信装置について説明する。
【0061】
図8は、実施の形態2に係る光通信装置を示す構成図である。
図9は、実施の形態2に係る光通信装置における減衰率算出部11、復調部17、特性制御部18、移動体制御部21及び距離算出部59のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図8及び図9において、図1及び図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
【0062】
音響通信部50は、位置座標取得部51、変調信号生成部52、音源53、変調器54、放音部55及び音信号受信部56を備えている。
位置座標取得部51は、例えばGPS(Global Positioning System)衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信機によって実現される。位置座標取得部51は、自らの光通信装置を搭載している移動体の位置座標を取得し、位置座標を示す位置情報を変調信号生成部52及び距離算出部59のそれぞれに出力する。
【0063】
変調信号生成部52は、位置座標取得部51から出力された位置情報を含む変調信号を生成し、生成した変調信号を変調器54に出力する。
音源53は、音を発生する装置であり、発生した音を変調器54に出力する。
変調器54は、変調信号生成部52から出力された変調信号に従って、音源53から出力された音の位相を変調することで変調音を生成し、生成した変調音を放音部55に出力する。
放音部55は、例えば、スピーカによって実現される。放音部55は、変調器54から出力された変調音を音信号として水中に出射することで、音信号を通信相手の光通信装置に送信する。
【0064】
音信号受信部56は、取音部57及び復調部58を備えている。音信号受信部56は、通信相手の光通信装置から送信された音信号を受信する。通信相手の光通信装置から送信された音信号には、通信相手の光通信装置の位置座標を示す位置情報を含んでいる。
取音部57は、例えば、マイクによって実現される。取音部57は、通信相手の光通信装置から送信された音信号を受信し、受信した音信号を復調部58に出力する。
復調部58は、取音部57から出力された音信号に含まれている位置情報を復調し、復調した位置情報を距離算出部59に出力する。
【0065】
距離算出部59は、例えば、図9に示す距離算出回路36によって実現される。距離算出部59は、位置座標取得部51から出力された位置情報が示す位置座標と、復調部58から出力された位置情報が示す位置座標とから、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出する。また、距離算出部59は、位置座標取得部51から出力された位置情報が示す位置座標と、復調部58から出力された位置情報が示す位置座標とから、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αを算出する。距離算出部59は、算出した距離Lを特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力し、算出した方位αを移動体制御部21に出力する。
【0066】
図8では、光通信装置の一部の構成要素である減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20、移動体制御部21及び距離算出部59のそれぞれが、図9に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、光通信装置の一部が、減衰率算出回路31、復調回路32、記憶回路33、特性制御処理回路34、移動体制御回路35及び距離算出回路36によって実現されるものを想定している。
【0067】
減衰率算出回路31、復調回路32、特性制御処理回路34、移動体制御回路35及び距離算出回路36のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0068】
光通信装置の一部の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではない。例えば、減衰率算出部11、復調部17、テーブル部19、特性制御処理部20、移動体制御部21又は距離算出部59のいずれか1つ以上が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
光通信装置の一部がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、テーブル部19が図3に示すコンピュータのメモリ41上に構成される。減衰率算出部11、復調部17、特性制御処理部20、移動体制御部21及び距離算出部59の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ41に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
【0069】
次に、図8に示す光通信装置の動作について説明する。
ただし、音響通信部50、距離算出部59及び移動体制御部21以外は、図1に示す光通信装置と同様であるため、ここでは、音響通信部50、距離算出部59及び移動体制御部21の動作のみを説明する。
【0070】
位置座標取得部51は、自らの光通信装置を搭載している移動体の位置座標(x,y,z)を取得する。
位置座標取得部51は、移動体の位置座標(x,y,z)を取得すると、取得した位置座標(x,y,z)を示す位置情報を変調信号生成部52及び距離算出部59のそれぞれに出力する。
変調信号生成部52は、位置座標取得部51から位置情報を受けると、位置情報を含む変調信号を生成し、生成した変調信号を変調器54に出力する。
【0071】
音源53は、音を発生し、発生した音を変調器54に出力する。
変調器54は、変調信号生成部52から出力された変調信号に従って、音源53から出力された音の位相を変調することで変調音を生成し、生成した変調音を放音部55に出力する。
放音部55は、変調器54から出力された変調音を音信号として水中に出射することで、音信号を通信相手の光通信装置に送信する。
【0072】
通信相手の光通信装置は、位置座標(x,y,z)を示す位置情報を含んでいる音信号を水中に出射し、例えば、大容量のデータ又は秘匿性のデータを含んでいる光信号を水中に出射する。
光信号は、大容量のデータ等の送信に適しているが、水の濁りが大きい場合、減衰が大きくなる。
音信号は、光信号と比べて、大容量のデータ等の送信には適していない。しかし、音信号は、光信号と比べて、水の濁りが大きい場合でも、減衰が小さいため、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間の距離が長くても、送受信することができる。
取音部57は、通信相手の光通信装置から送信された音信号を受信し、受信した音信号を復調部58に出力する。
復調部58は、取音部57から音信号を受けると、音信号に含まれている位置情報を復調し、復調した位置情報を距離算出部59に出力する。
【0073】
距離算出部59は、位置座標取得部51から出力された位置情報が示す位置座標(x,y,z)と、復調部58から出力された位置情報が示す位置座標(x,y,z)とから、以下の式(9)に示すように、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離である通信距離Lを算出する。
また、距離算出部59は、位置座標(x,y,z)と位置座標(x,y,z)とから、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αを算出する。方位αの算出処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
距離算出部59は、算出した距離Lを特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力し、算出した方位αを移動体制御部21に出力する。
なお、移動体制御部21において、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αが既値であれば、距離算出部59は、方位αを移動体制御部21に出力する必要がない。
【0074】
移動体制御部21は、減衰率算出部11から減衰率Atを受けると、実施の形態1と同様に、減衰率Atに基づいて、自らの光通信装置と通信相手の光通信装置との間で通信が可能な距離Lを求める。
移動体制御部21は、距離算出部59から通信距離Lを受けると、通信が可能な距離Lと通信距離Lとを比較する。
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lが、通信距離Lよりも短ければ、実施の形態1と同様に、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるようにする。
ただし、移動体制御部21は、距離算出部59から方位αを受けているので、移動体が方位αの方向に移動するように、移動体を制御する。
移動体制御部21は、通信が可能な距離Lが、通信距離L以上であれば、実施の形態1と同様に、移動体を制御しない。
【0075】
図8に示す光通信装置では、通信が可能な距離Lが、通信距離L以上であれば、移動体制御部21が、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御しないようにしている。
しかし、これは一例に過ぎず、通信が可能な距離Lが、通信距離Lよりも大きい上限用の閾値ThL−upよりも大きければ(L>ThL−up)、移動体制御部21が、移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置から遠ざけるようにしてもよい。
通信が可能な距離Lが通信距離L以上であり、かつ、通信が可能な距離Lが上限用の閾値ThL−up以下であれば(L≦L≦ThL−up)、移動体制御部21は、移動体を制御しない。
【0076】
以上の実施の形態2は、通信相手の光通信装置から、通信相手の光通信装置の位置を示す位置情報を含む音信号を受信する音信号受信部56と、音信号受信部56により受信された音信号に含まれている位置情報から、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出する距離算出部59とを備え、移動体制御部21が、通信が可能な距離Lが、距離算出部59により算出された距離Lよりも短ければ、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるように、図8に示す光通信装置を構成した。したがって、図8に示す光通信装置は、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lが変化しても、実施の形態1と同様に、受信光のSNRを制御することができる。
【0077】
実施の形態3.
図8に示す光通信装置では、音信号受信部56が、通信相手の光通信装置の位置を示す位置情報を含む音信号を受信している。
実施の形態3では、音信号を水中に出射して、通信相手の光通信装置に反射された音信号の反射信号を受信する音信号送受信部61を備える光通信装置について説明する。
【0078】
図10は、実施の形態3に係る光通信装置を示す構成図である。
図10において、図1及び図8と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
音信号送受信部61は、音源53、変調器54、放音部55及び取音部57を備えている。音信号送受信部61は、音信号を水中に出射して、通信相手の光通信装置に反射された音信号の反射信号を受信する。
図10に示す光通信装置では、音信号送受信部61が、音信号を送受信することができればよく、音信号送受信部61が、変調器54を備えずに、音源53が、直接、音を放音部55に出力するようにしてもよい。
一方、音信号送受信部61が変調器54を備える場合には、変調信号生成部52が音信号送受信部61に含まれていてもよい。
【0079】
距離算出部62は、例えば、図9に示す距離算出回路36によって実現される。距離算出部62は、変調器54から放音部55に変調音が出力されてから、取音部57が音信号の反射信号を受信するまでの時間Tを計測する。距離算出部62は、計測した時間Tから、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出し、算出した距離Lを特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力する。
【0080】
次に、図10に示す光通信装置の動作について説明する。
ただし、音信号送受信部61及び距離算出部62以外は、図1及び図8に示す光通信装置と同様であるため、ここでは、音信号送受信部61及び距離算出部62の動作のみを説明する。
変調器54は、変調信号生成部52から出力された変調信号に従って、音源53から出力された音の位相を変調することで変調音を生成し、生成した変調音を放音部55及び距離算出部62のそれぞれに出力する。
放音部55は、変調器54から出力された変調音を音信号として通信相手の光通信装置に向けて水中に出射する。
【0081】
放音部55から出射された音信号は、通信相手の光通信装置に反射し、光通信装置に反射された音信号は、反射信号として、自らの光通信装置に戻ってくる。
取音部57は、光通信装置に反射された音信号を反射信号として受信し、受信した反射信号を距離算出部62に出力する。
【0082】
距離算出部62は、変調器54から放音部55に変調音が出力されてから、取音部57が音信号の反射信号を受信するまでの時間Tを計測する。変調器54から変調音が放音部55に出力されると、直ちに、放音部55が変調音を音信号として出射するものであり、変調器54による変調音の出力時刻と、放音部55による音信号の出力時刻とは、概ね同時刻である。
距離算出部62は、時間Tを計測すると、以下の式(10)に示すように、計測した時間Tから、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出し、算出した距離Lを特性制御処理部20及び移動体制御部21のそれぞれに出力する。
式(10)において、εは、音速である。
音速εは、水中の温度によって変化するため、距離算出部62が、水中の温度を取得し、取得した温度に従って音速εを補正するようにしてもよい。
距離算出部62は、取音部57が音信号を出射する方向に基づいて、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αを求めるようにしてもよい。距離算出部62は、方位αを求めた場合、方位αも移動体制御部21に出力する。
なお、移動体制御部21において、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置への方位αが既値であれば、距離算出部62は、方位αを移動体制御部21に出力する必要がない。
【0083】
以上の実施の形態3は、通信相手の光通信装置から、音信号を水中に出射して、通信相手の光通信装置に反射された音信号の反射信号を受信する音信号送受信部61と、音信号送受信部61から音信号が出射されてから、音信号送受信部61により反射信号が受信されるまでの時間から、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lを算出する距離算出部62とを備え、移動体制御部21が、通信が可能な距離Lが、距離算出部62により算出された距離Lよりも短ければ、自らの光通信装置を搭載している移動体を制御して、自らの光通信装置を通信相手の光通信装置に近づけるように、図10に示す光通信装置を構成した。したがって、図10に示す光通信装置は、自らの光通信装置から通信相手の光通信装置までの距離Lが変化しても、実施の形態1と同様に、受信光のSNRを制御することができる。
【0084】
実施の形態4.
図1に示す光通信装置は、受信系の光アンテナとして、光アンテナ7及び光アンテナ13を備えている。
実施の形態4では、受信系の光アンテナとして、光アンテナ71のみを備える光通信装置について説明する。
【0085】
図11は、実施の形態4に係る光通信装置を示す構成図である。図11において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
光アンテナ71は、図1に示す送信光モニタ部6が備える光アンテナ7と、図1に示す光信号受信部12が備える光アンテナ13とを兼ねている。光アンテナ71は、光送信部1から水中に出射された送信光をモニタ光として受信し、受信したモニタ光を、光ファイバを介して、波長分離部72に出力する。また、光アンテナ71は、通信相手の光通信装置から水中に出射された光信号を受信光として受信し、受信した受信光を、光ファイバを介して、波長分離部72に出力する。
【0086】
波長分離部72は、光ファイバを介して、光アンテナ71と接続され、光ファイバを介して、光検出器8と接続されている。また、波長分離部72は、光ファイバを介して、光検出器14と接続されている。波長分離部72は、光アンテナ71から出力されたモニタ光を、光ファイバを介して、光検出器8に出力し、光アンテナ71から出力され受信光を、光ファイバを介して、光検出器14に出力する。
図11に示す光通信装置では、光アンテナ71から出力されたモニタ光の波長と、光アンテナ71から出力され受信光の波長とは、互いに異なっている。
【0087】
次に、図11に示す光通信装置の動作について説明する。
ただし、光アンテナ71及び波長分離部72以外は、図1に示す光通信装置と同様であるため、ここでは、光アンテナ71及び波長分離部72の動作のみを説明する。
光アンテナ71は、光送信部1から送信光が水中に出射されると、送信光をモニタ光として受信し、受信したモニタ光を、光ファイバを介して、波長分離部72に出力する。
また、光アンテナ71は、通信相手の光通信装置から光信号が水中に出射されると、光信号を受信光として受信し、受信した受信光を、光ファイバを介して、波長分離部72に出力する。
【0088】
波長分離部72は、光アンテナ71から出力されたモニタ光と、光アンテナ71から出力され受信光とを波長分離する。
波長分離部72は、波長分離した後のモニタ光を、光ファイバを介して、光検出器8に出力し、波長分離した後の受信光を、光ファイバを介して、光検出器14に出力する。
図11に示す光通信装置では、図1に示す光通信装置よりも、受信系の光アンテナの個数を減らすことができる。
【0089】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
この発明は、信号対雑音比の増減に影響する送信光の特性を制御する光通信装置及び光通信方法に適している。
【符号の説明】
【0091】
1 光送信部、2 基準光源、3 変調信号生成部、4 変調器、5 光アンテナ、6 送信光モニタ部、7 光アンテナ、8 光検出器、9 IV変換器、10 ADC、11 減衰率算出部、12 光信号受信部、13 光アンテナ、14 光検出器、15 IV変換器、16 ADC、17 復調部、18 特性制御部、19 テーブル部、20 特性制御処理部、21 移動体制御部、31 減衰率算出回路、32 復調回路、33 記憶回路、34 特性制御処理回路、35 移動体制御回路、36 距離算出回路、41 メモリ、42 プロセッサ、50 音響通信部、51 位置座標取得部、52 変調信号生成部、53 音源、54 変調器、55 放音部、56 音信号受信部、57 取音部、58 復調部、59 距離算出部、61 音信号送受信部、62 距離算出部、71 光アンテナ、72 波長分離部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11