(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
(熱伝導性シートの構成例)
図1は、本技術が適用された熱伝導性シートの一例を示す図である。
図1に示す熱伝導性シート1は、シート本体2と、樹脂被覆層5を有する。シート本体2は、少なくとも高分子マトリックス成分と繊維状の熱伝導性充填剤とを含むバインダ樹脂が硬化されたものである。樹脂被覆層5は、シート本体2から滲み出た高分子マトリックス成分の未硬化成分によって形成されている。シート本体2の一方の面2aには、第1剥離フィルム3が貼り付けられ、シート本体2の他方の面2bは、第2剥離フィルム4が貼り付けられている。
【0014】
熱伝導性シート1は、一方の面2aおよび他方の面2bに樹脂被覆層5が形成されることによりタック(粘着性)を有し、使用の際に第1剥離フィルム3と第2剥離フィルム4を剥離することにより、シート本体2を所定の位置に貼付可能とされている。これにより、熱伝導性シート1は、作業性、取り扱い性に優れる。また、熱伝導性シート1は、電子部品と放熱部材との組み立て時の位置ズレを修正したり、一旦組み立てた後に何らかの事情で解体し、再度組み立てることを可能としたりするなどのリワーク性に優れる。
【0015】
(高分子マトリックス成分)
シート本体2を構成する高分子マトリックス成分は、熱伝導性シート1の基材となる高分子成分のことである。その種類については、特に限定されず、公知の高分子マトリックス成分を適宜選択することができる。例えば、高分子マトリックス成分の一つとして、熱硬化性ポリマーが挙げられる。
【0016】
前記熱硬化性ポリマーとしては、例えば、架橋ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
なお、前記架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、これら熱硬化性ポリマーの中でも、成形加工性および耐候性に優れるとともに、電子部品に対する密着性および追従性の点から、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてシリコーン樹脂の種類を適宜選択することができる。
【0019】
上述した成形加工性、耐候性、密着性等を得る観点からは、前記シリコーン樹脂として、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーン樹脂であることが好ましい。そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0020】
前記付加反応型液状シリコーン樹脂としては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを硬化剤とした、2液性の付加反応型シリコーン樹脂等を用いることが好ましい。
【0021】
ここで、液状シリコーン成分は、主剤となるシリコーンA液成分と硬化剤が含まれるシリコーンB液成分を有し、シリコーンA液成分とシリコーンB液成分とが所定の割合で配合されている。シリコーンA液成分とシリコーンB液成分との配合割合は適宜調整できるが、シート本体2に柔軟性を付与するとともに、面2aと第1剥離フィルム3との間と、面2bと第2剥離フィルム4との間に高分子マトリックス成分の未硬化成分をブリードさせ、樹脂被覆層5を形成できる配合割合とすることが好ましい。
【0022】
また、熱伝導性シート1における前記高分子マトリックス成分の含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、シートの成形加工性や、シートの密着性等を確保する観点からは、15体積%〜50体積%程度であることが好ましく、20体積%〜45体積%であることがより好ましい。
【0023】
(繊維状熱伝導性充填剤)
熱伝導性シート1に含まれる繊維状の熱伝導性充填剤は、シートの熱伝導性を向上させるための成分である。熱伝導性充填剤の種類については、熱伝導性の高い繊維状の材料であれば特に限定はされないが、より高い熱伝導性を得られる点からは、炭素繊維を用いることが好ましい。
【0024】
なお、熱伝導性充填剤については、一種単独でもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、二種以上の熱伝導性充填剤を用いる場合には、いずれも繊維状の熱伝導性充填剤であってもよいし、繊維状の熱伝導性充填剤と別の形状の熱伝導性充填剤とを混合して用いてもよい。別の形状の熱伝導性充填剤としては、銀、銅、アルミニウム等の金属、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト等のセラミックス等が挙げられる。
【0025】
前記炭素繊維の種類について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ピッチ系、PAN系、PBO繊維を黒鉛化したもの、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらの中でも、高い熱伝導性が得られる点から、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、ピッチ系炭素繊維がより好ましい。
【0026】
また、前記炭素繊維は、必要に応じて、その一部又は全部を表面処理して用いることができる。前記表面処理としては、例えば、酸化処理、窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理等が挙げられる。前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0027】
また、前記炭素繊維は、少なくともその表面の一部を絶縁物で被覆しても良い。被覆に用いる材料としては、SiO2などの絶縁性の無機物や、エポキシ樹脂や(メタ)アクリル樹脂、ジビニルベンゼンなどの熱硬化性又は紫外線硬化性樹脂が挙げられる。被覆の方法としては、例えば、絶縁物が無機物であればゾルゲル法による炭素繊維表面への析出が挙げられる。熱硬化性樹脂の場合には、モノマーと重合開始剤または硬化剤を溶解させた溶液中に炭素繊維を加え、攪拌しながら重合反応を行い、溶剤に不溶なポリマーを炭素繊維表面に析出させて被覆する方法などが挙げられる。熱硬化性樹脂の場合は、2官能以上のモノマーを用いる事が好ましい。
【0028】
さらに、前記炭素繊維の平均繊維長(平均長軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、50μm〜300μmの範囲であることが好ましく、75μm〜275μmの範囲であることがより好ましく、90μm〜250μmの範囲であることが特に好ましい。
【0029】
さらにまた、前記炭素繊維の平均繊維径(平均短軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、4μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜14μmの範囲であることがより好ましい。
【0030】
前記炭素繊維のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)については、確実に高い熱伝導性を得る点から、8以上であることが好ましく、9〜30であることがより好ましい。前記アスペクト比が8未満であると、炭素繊維の繊維長(長軸長さ)が短いため、熱伝導率が低下してしまうおそれがあり、一方、30を超えると、熱伝導性シート1中での分散性が低下するため、十分な熱伝導率を得られないおそれがある。
【0031】
ここで、前記炭素繊維の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって測定し、複数のサンプルから平均を算出することができる。
【0032】
また、熱伝導性シート1における前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4体積%〜40体積%であることが好ましく、5体積%〜35体積%であることがより好ましい。前記含有量が、4体積%未満であると、十分に低い熱抵抗を得ることが困難になるおそれがあり、40体積%を超えると、熱伝導性シート1の成型性および前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向性に影響を与えてしまうおそれがある。また、熱伝導性シート1における繊維状の熱伝導性充填剤を含む熱伝導性充填剤の含有量は、15体積%〜75体積%であることが好ましい。
【0033】
なお、繊維状の熱伝導性充填剤は、シート本体2の面2aと面2bに露出し、電子部品等の熱源やヒートシンク等の放熱部材と熱的に接触する。熱伝導性シート1は、シート本体2の面2aと面2bに露出する繊維状熱伝導性充填剤が高分子マトリックス成分の未硬化成分で被覆される場合、電子部品等に搭載した際に繊維状熱伝導性充填剤と電子部品等との接触熱抵抗を下げることができる。
【0034】
(無機物フィラー)
熱伝導性シート1は、熱伝導性充填剤として、無機物フィラーをさらに含有させてもよい。無機物フィラーを含有させることにより、熱伝導性シート1の熱伝導性をより高め、シートの強度を向上できる。前記無機物フィラーとしては、形状、材質、平均粒径等については特に制限がされず、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状等が挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
【0035】
前記無機物フィラーの材料としては、例えば、窒化アルミニウム(窒化アルミ:AlN)、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコーン)、酸化珪素、金属粒子等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点から、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。
【0036】
また、前記無機物フィラーは、表面処理が施されたものを用いることができる。前記表面処理としてカップリング剤で前記無機物フィラーを処理すると、前記無機物フィラーの分散性が向上し、熱伝導性シート1の柔軟性が向上する。
【0037】
前記無機物フィラーの平均粒径については、無機物の種類等に応じて適宜選択することができる。前記無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましく、4μm〜5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがある。一方、前記平均粒径が10μmを超えると、熱伝導性シート1の熱抵抗が大きくなるおそれがある。
【0038】
さらに、前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm〜6.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.0μmであることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがあり、6.0μmを超えると、熱伝導性シート1の熱抵抗が大きくなるおそれがある。
【0039】
なお、前記無機物フィラーの平均粒径は、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0040】
なお、前記繊維状熱伝導性充填剤に替えて、前記無機物フィラーを用いても良い。この場合、厚み方向に熱伝導性を発揮させやすいことから、その形状は針状、鱗片状が好ましく、特に鱗片状が好ましい。鱗片状の無機物フィラーの材料としては窒化ホウ素が好ましい。
【0041】
(その他の成分)
熱伝導性シート1は、上述した、高分子マトリックス成分および繊維状熱伝導性充填剤、適宜含有される無機物フィラーに加えて、目的に応じてその他の成分を適宜含むこともできる。その他の成分としては、例えば、磁性粉、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等が挙げられる。また、磁性粉の含有量を調整することにより、熱伝導性シート1に電磁波吸収性能を付与してもよい。
【0042】
(磁性粉)
熱伝導性シート1は、磁性粉の含有量を調整することにより、熱伝導性シート1に電磁波吸収性能を付与してもよい。
【0043】
前記磁性粉の種類については、磁性性を有すること以外は、特に限定されず、公知の磁性粉を適宜選択することができる。例えば、アモルファス金属粉や、結晶質の金属粉末を用いることができる。アモルファス金属粉としては、例えば、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系のもの等が挙げられ、結晶質の金属粉としては、例えば、純鉄、Fe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系のもの等が挙げられる。さらに、前記結晶質の金属粉としては、結晶質の金属粉に、N(窒素)、C(炭素)、O(酸素)、B(ホウ素)等を微量加えて微細化させた微結晶質金属粉を用いてもよい。
【0044】
なお、前記磁性金属粉については、材料が異なるものや、平均粒径が異なるものを二種以上混合したものを用いてもよい。
【0045】
また、前記磁性金属粉については、球状、扁平状等の形状を調整することが好ましい。例えば、充填性を高くする場合には、粒径が数μm〜数十μmであって、球状である磁性金属粉を用いることが好ましい。このような磁性金属粉末は、例えばアトマイズ法や、金属カルボニルを熱分解する方法により製造することができる。アトマイズ法とは、球状の粉末が作りやすい利点を有し、溶融金属をノズルから流出させ、流出させた溶融金属に空気、水、不活性ガス等のジェット流を吹き付けて液滴として凝固させて粉末を作る方法である。アトマイズ法によりアモルファス磁性金属粉末を製造する際には、溶融金属が結晶化しないようにするために、冷却速度を1×106(K/s)程度にすることが好ましい。
【0046】
上述したアトマイズ法により、アモルファス合金粉を製造した場合には、アモルファス合金粉の表面を滑らかな状態とすることができる。このように表面凹凸が少なく、比表面積が小さいアモルファス合金粉を磁性金属粉として用いると、高分子マトリックス成分に対して充填性を高めることができる。さらに、カップリング処理を行うことで充填性をより向上できる。
【0047】
(熱伝導性シートの製造方法)
次いで、熱伝導性シート1の製造工程について説明する。本技術が適用された熱伝導性シート1の製造工程は、高分子マトリックス成分に繊維状の熱伝導性充填剤等が含有された熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導性成形体を形成する工程(工程A)と、前記熱伝導性成形体をシート状にスライスし、成形体シートを形成する工程(工程B)と、成形体シートを第1剥離フィルム3と第2剥離フィルム4とで挟持しプレスすることにより、成形体シート表面を平滑化するとともに樹脂被覆層5を形成する工程(工程C)とを有する。なお、ここでは、繊維状の熱伝導性充填剤を用いた場合について説明するが、繊維状の熱伝導性充填剤に替えて鱗片状の無機物フィラーを用いる場合も同様の製造工程が利用でき、以下の工程に於いても適宜読み替えが可能である。
【0048】
(工程A)
この工程Aでは、上述した高分子マトリックス成分および繊維状熱伝導性充填剤、適宜含有される無機物フィラー、その他の成分を配合し、熱伝導性樹脂組成物を調製する。なお、各成分を配合、調製する手順については特に限定はされず、例えば、高分子マトリックス成分に、繊維状熱伝導性充填剤、適宜、無機物フィラー、磁性粉、その他成分を添加し、混合することにより、熱伝導性樹脂組成物の調製が行われる。
【0049】
次いで、炭素繊維等の繊維状の熱伝導性充填剤を一方向に配向させる。この充填剤の配向方法は、一方向に配向させることができる手段であれば特に限定はされない。例えば、中空状の型内に前記熱伝導性樹脂組成物を高剪断力下で押し出すこと又は圧入することによって、比較的容易に繊維状の熱伝導性充填剤を一方向に配向させることができ、前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向は同一(±10°以内)となる。
【0050】
上述した、中空状の型内に前記熱伝導性樹脂組成物を高剪断力下で押し出すことまたは圧入する方法として、具体的には、押出し成型法または金型成型法が挙げられる。前記押出し成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは前記金型成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、前記熱伝導性樹脂組成物が流動し、その流動方向に沿って繊維状熱伝導性充填剤が配向する。この際、ダイの先端にスリットを取り付けると繊維状熱伝導性充填剤がより配向されやすくなる。
【0051】
中空状の型内に押出しまたは圧入された前記熱伝導性樹脂組成物は、当該型の形状、大きさに応じたブロック形状に成型され、繊維状の熱伝導性充填剤の配向状態を維持したまま前記高分子マトリックス成分を硬化させることによって、熱伝導性成形体が形成される。熱伝導性成形体とは、所定のサイズに切断して得られる熱伝導性シート1の元となるシート切り出し用の母材(成形体)のことをいう。
【0052】
中空状の型および熱伝導性成形体の大きさおよび形状は、求められる熱伝導性シート1の大きさ、形状に応じて決めることができ、例えば、断面の縦の大きさが0.5cm〜15cmで横の大きさが0.5cm〜15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。
【0053】
前記高分子マトリックス成分を硬化させる方法や条件については、高分子マトリックス成分の種類に応じて変えることができる。例えば、前記高分子マトリックス成分が熱硬化樹脂の場合、熱硬化における硬化温度を調整することができる。さらに、該熱硬化性樹脂が、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とを含有するものである場合、80℃〜120℃の硬化温度で硬化を行うことが好ましい。また、熱硬化における硬化時間としては、特に制限はないが、1時間〜10時間とすることができる。
【0054】
(工程B)
図2に示すように、熱伝導性成形体6をシート状にスライスし、成形体シート7を形成する工程Bでは、配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、0°〜90°の角度となるように、より好ましくは45°〜90°の角度となるように、熱伝導性成形体6をシート状に切断する。これにより、繊維状熱伝導性充填剤は、シート本体2の厚み方向に配向される。
【0055】
また、熱伝導性成形体6の切断については、スライス装置を用いて行われる。スライス装置については、前記熱伝導性成形体6を切断できる手段であれば特に限定はされず、公知のスライス装置を適宜用いることができる。例えば、超音波カッター、かんな(鉋)等を用いることができる。
【0056】
熱伝導性成形体6のスライス厚みは、熱伝導性シート1のシート本体2の厚みとなり、熱伝導性シート1の用途に応じて適宜設定することができ、例えば0.5〜3.0mmである。
【0057】
なお、工程Bでは、熱伝導性成形体6から切り出された成形体シート7に切れ込みを入れることにより、複数の成形体シート7に小片化してもよい。
【0058】
(工程C)
工程Cでは、成形体シート7の一方の面に第1剥離フィルム3を貼り付け、成形体シート7の他方の面に第2剥離フィルム4を貼り付けてプレスする。このプレスにより、成形体シート7の表面を平滑化するとともに高分子マトリックス成分の未硬化成分をブリードさせ、成形体シート7の一方の面と第1剥離フィルム3との間と、成形体シート7の他方の面と第2剥離フィルム4との間に樹脂被覆層5を形成する。ここで、熱伝導性シート1の面2aと面2bは、スライスされた面であり、スライスされた後にプレスされた面である。これにより、熱伝導性シート1が形成され、シート表面の凹凸を低減させるとともに、露出する繊維状の熱伝導性充填剤を被覆させ、熱源や放熱部材との密着性を向上し、軽荷重時の界面接触抵抗を軽減させ、熱伝導効率を向上させることができる。
【0059】
なお、前記プレスについては、例えば、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用して行うことができる。また、ピンチロールを使用してプレスを行ってもよい。
【0060】
前記プレスの際の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低すぎるとプレスをしない場合と熱抵抗が変わらない傾向があり、高すぎるとシートが延伸する傾向があるため、0.1MPa〜100MPaの圧力範囲とすることが好ましく、0.5MPa〜95MPaの圧力範囲とすることがより好ましい。
【0061】
成形体シート7の両面に貼付される第1剥離フィルム3および第2剥離フィルム4としては、例えばPETフィルムやポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。この場合、第1剥離フィルム3および第2剥離フィルム4は、成形体シート7の表面への貼付面にワックス処理やフッ素処理等の剥離処理を施してもよい。また、第1剥離フィルム3および第2剥離フィルム4は、エンボス加工が施されていてもよい。
【0062】
また、第1剥離フィルム3および第2剥離フィルム4は、厚さおよび/または材質を異ならせることにより、シート本体2からの剥離強度(N)が異なるように形成される。例えば、30mm×30mmの熱伝導性シート1において、第1剥離フィルム3としてワックス処理が施された厚さ25μmのPETフィルムを使用し、第2剥離フィルム4としてエンボス処理された厚さ80μmのポリエチレンフィルムを使用した場合、引張・圧縮試験機において、ロードセルが50(N)、速度が300mm/minの条件で180度剥離試験を行うと、シート本体2からの剥離強度(N)は、第1剥離フィルム3が0.03(N)(屈曲半径3mm)、第2剥離フィルム4が0.05(N)(屈曲半径0.5mm以下)となる。
【0063】
(熱伝導性シートの実装工程)
実使用時においては、熱伝導性シート1は、例えば、半導体装置等の電子部品や、ヒートシンク等の各種放熱部材に実装される。このとき、熱伝導性シート1は、シート本体2からの剥離強度が小さい方の剥離フィルム、例えば上述した例で言えば、第1剥離フィルム3から剥離する。これにより、第1剥離フィルム3に付着してシート本体2の全部が第2剥離フィルム4から剥離することがなく、第2剥離フィルム4に支持された状態でシート本体2の一方の面2aを露出させることができる。熱伝導性シート1は、樹脂被覆層5が露出したシート本体2の一方の面2aを半導体装置等の電子部品またはヒートシンク等の放熱部材に貼り付け、その後、第2剥離フィルム4をシート本体2の他方の面2bから剥離する。
【0064】
熱伝導性シート1は、例えば、
図3に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、熱源と放熱部材との間に挟持される。
図3に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1とを少なくとも有し、熱伝導性シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。また熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【0065】
電子部品51としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU、MPU、グラフィック演算素子、イメージセンサ等の各種半導体素子、アンテナ素子、バッテリーなどが挙げられる。ヒートスプレッダ52は、電子部品51の発する熱を放熱する部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導性シート1を用いることによって、半導体装置50は、高い放熱性を有し、またシート本体2中の磁性粉の含有量に応じて電磁波抑制効果にも優れる。
【0066】
なお、熱伝導性シート1の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できることは勿論である。また、放熱部材としては、ヒートスプレッダ52やヒートシンク53以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
【0067】
(実施例1)
本実施例では、下記の表1に示すように、まず、シリコーン樹脂(バインダの一例):34体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm):25体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm):19体積%と、球状アルミナ粒子(D50が5μm):19体積%と、酸化亜鉛(D50が1μm):1体積%と、水酸化アルミ(D50が8μm):1体積%と、カップリング剤:1体積%と、を均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。
【0068】
次に、押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロック(
図2に示す熱伝導性成形体6)を形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。次に、表1に示すように、得られた成形体ブロックを超硬刃物でシート状にスライスすることにより、鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シート1を得た。その際、表1に示すように、当該熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが3.442μmかつSzが40.990μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。
【0069】
(実施例2)
本実施例では、まず、ガラス容器に、平均繊維径:9μm、平均繊維長:110μmのピッチ系炭素繊維を100g、エタノールを450g投入し、撹拌翼にて混合してスラリー液を得た。流量:160mL/minで窒素をスラリー液に加えてイナート化を行いながら、スラリーにジビニルベンゼン(93%ジビニルベンゼン)を25g加えた。ジビニルベンゼンを加えた10分後に、予め50gのエタノールに溶解させておいた0.500gの重合開始剤(油溶性アゾ重合開始剤)をスラリー液に投入した。投入後、5分間撹拌した後に、窒素によるイナート化を停止させた。
【0070】
その後、撹拌しながら昇温を開始し70℃で温度を保持し、40℃まで降温した。なお、昇温開始から降温開始までを反応時間とした。降温後、15分間静置し、スラリー液中に分散している固形分を沈降させた。沈降後、デカンテーションにて上澄みを除去し、再度溶媒を750g加えて15分間撹拌して固形分を洗浄した。洗浄後、吸引濾過にて固形分を回収し、回収した固形分を、100℃にて6時間乾燥することで、DVB絶縁被膜炭素繊維(表面を絶縁物で被覆した炭素繊維の一例)を得た。
【0071】
次に、本実施例では、表1に示すように、シリコーン樹脂:28体積%と、球状アルミナ粒子(D50が15μm):30体積%と、粒状窒化アルミ(D50が1.5μm):33体積%と、水酸化アルミ(D50が8μm):1体積%と、平均繊維長が110μmのDVB絶縁被膜炭素繊維:6体積%と、カップリング剤:1体積%を混合し、シリコーン組成物を調製した。
【0072】
次いで、押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、100℃のオーブンで6時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。次に、表1に示すように、得られた成形体ブロックを超硬刃物で所望の厚みにスライスすることにより、炭素繊維がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シート1を得た。その際、表1に示すように、当該熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが4.225μmかつSzが45.880μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。
【0073】
(実施例3)
本実施例では、まず、ポリエチレン製容器に、平均繊維径9μm、平均繊維長110μmのピッチ系炭素繊維を100g、テトラエトキシシラン(TEOS)200g、エタノール900gを投入し、撹拌翼にて混合した。その後、50℃まで加温しながら、反応開始剤(10%アンモニア水)176gを5分かけて投入した。溶媒の投入が完了した時点を0分として、3時間撹拌を行った。撹拌終了後、降温させ、吸引濾過して固形分を回収し、固形分を水とエタノールを用いて洗浄し、再度吸引濾過を行い、固形分を回収した。回収した固形分を100℃にて2時間乾燥後、更に200℃で8時間焼成を行うことで、SiO2絶縁被覆炭素繊維(表面を絶縁物で被覆した炭素繊維の一例)を得た。
【0074】
次に、本実施例では、シリコーン樹脂:28体積%と、球状アルミナ粒子(D50が15μm):30体積%と、球状アルミナ粒子(D50が5μm):1体積%と、水酸化アルミ(D50が8μm):1体積%と、粒状窒化アルミ(D50が1.5μm):33体積%と、平均繊維長が110μmのSiO2絶縁被膜炭素繊維:6体積%と、カップリング剤:1体積%を混合し、シリコーン組成物を調製した。
【0075】
次に、押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、100℃のオーブンで6時間加熱させて成形体ブロックを形成した。ここで、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。次に、表1に示すように、得られた成形体ブロックを超硬刃物で所望の厚みにスライスすることにより、炭素繊維がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シート1を得た。その際、表1に示すように、当該熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが3.982μmかつSzが49.784μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。
【0076】
(実施例4)
本実施例では、下記の表1に示すように、シリコーン樹脂:28体積%と、炭素繊維:6体積%、球状アルミナ粒子(D50が15μm):30体積%と、球状アルミナ粒子(D50が5μm):1体積%と、粒状窒化アルミ(D50が1.5μm):33体積%と、水酸化アルミ(D50が8μm):1体積%と、カップリング剤:1体積%と、を混合し、シリコーン組成物を調製した。
【0077】
次に、押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、100℃のオーブンで6時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。次に、表1に示すように、得られた成形体ブロックを超硬刃物で所望の厚みにスライスすることにより、炭素繊維がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シート1を得た。その際、表1に示すように、当該熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが4.989μmかつSzが46.879μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。
【0078】
(比較例1〜4)
比較例1〜4では、実施例1〜4で得られた成形体ブロックをカッターナイフ(合金工具鋼)でスライスすることにより、炭素繊維が厚み方向に配向した熱伝導性シート1を得た。その際、比較例1では、表1に示すように、熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが5.687μmかつSzが71.652μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。また、比較例2では、表1に示すように、熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが5.899μmかつSzが65.050μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。また、比較例3では、表1に示すように、熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが5.680μmかつSzが57.380μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。また、比較例4では、表1に示すように、熱伝導性シート1のいずれか一方の面のSaが7.761μmかつSzが65.230μmとなるように、成形体ブロックを超硬刃物でスライスして熱伝導性シート1を得た。
【0079】
(熱特性の確認)
実施例1〜4および比較例1〜4のそれぞれで得られた熱伝導性シート1の熱抵抗は、以下の手順で測定した。上記の厚みの熱伝導性シート1を直径20mmの円形になるように加工し、テストピースを得た。次いで、得られたテストピースを銅の間に挟み、熱抵抗[℃・cm2/W]を1kgf/cm2の荷重で測定した。横軸に測定時厚み、縦軸に熱抵抗値としてプロットし、切片から接触熱抵抗を求めた。
【0080】
(表面粗さ)
実施例1〜4および比較例1〜4のそれぞれで得られた熱伝導性シート1の表面粗さは、株式会社キーエンス製ワンショット3D形状機VR5200で測定した。Sa(算術平均高さ)は、Ra(線の算術平均高さ)を面に拡張したパラメーターであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。Saは、面粗さを評価する際に一般的に利用する。Sz(最大高さ)は、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。そして、表1に示すように、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、および実施例4と比較例4を比較すると、比較例の熱伝導性シート1と比較すると、実施例の熱伝導性シート1の熱伝導率および絶縁破壊電圧が高くなった。これにより、バインダと違法性熱伝導フィラーを含み、当該異方性熱伝導フィラーが厚み方向に配向した熱伝導性シート1のSaが5μm以下かつSzが50μm以下であり、絶縁破壊電圧が0.5kV/mm以上とすることにより、絶縁性を有しながらも低熱抵抗の熱伝導性シート1を得ることができることが分かる。すなわち、絶縁性材料を用いてもSaとSzを所定の値以下とすることで厚み方向に良好に伝熱させることが可能な熱伝導性シート1が得られる。そして、電子機器において、実施例1〜4の熱伝導性シート1を、当該電子機器を構成する電子部品51(発熱体の一例)と、放熱ファンや放熱板等(放熱部材の一例)と、の間に挟むことにより、放熱部材に対する熱伝導率を向上させることができ、効率良く放熱させることができる。
【表1】
【解決手段】本発明にかかる熱伝導性シートは、バインダと異方性熱伝導フィラーとを含み、前記異方性熱伝導フィラーが厚み方向に配向した熱伝導性シートであり、当該熱伝導性シートのいずれか一方の面のSaが5μm以下、Szが50μm以下であり、絶縁破壊電圧が0.5kV/mm以上である。