(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベルト長手方向に延びて埋設された心線と、ベルト長手方向に所定の間隔で配設された複数のベルト歯部とを有する歯付ベルト、及び、外周に前記ベルト歯部に相対する複数のプーリ歯部を有し、前記歯付ベルトが巻き掛けられる複数の歯付プーリを備え、自動二輪車の後輪駆動用に使用される、歯付ベルト伝動装置であって、
前記心線は、炭素繊維を含む下撚り糸を複数合わせて上撚りした炭素繊維コードを含み、
前記下撚り糸の下撚りの撚り方向と前記上撚りの撚り方向が同じであり、
前記下撚りの下撚り係数が、0.62〜1.30であり、
前記上撚りの上撚り係数が、2.06〜3.95であり、
前記歯付ベルトの歯ピッチが、当該歯付ベルトが巻き掛けられる前記歯付プーリの歯ピッチに対して、−0.4%〜+0.1%の範囲にあり、±0付近で当該歯付ベルトの耐久性が最も良くなる、歯付ベルト伝動装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(歯付ベルト3及び歯付ベルト伝動装置21)
歯付ベルト3は、
図1及び
図2に示すように、ベルト長手方向(X方向)に沿って所定間隔で配置され、表面が歯布11で被覆された複数の歯部7、及び、心線9がベルト長手方向に延びて埋設された、背部4で構成されている。
【0021】
上記歯付ベルト3は、複数のプーリ間に巻き掛けられ、動力伝達機構として広く使用される。例えば、歯付ベルト3は、自動二輪車の後輪駆動用等の高負荷伝動用途の歯付ベルト伝動装置に使用される。具体的には、
図6及び
図3に示すように、歯付ベルト3が、駆動プーリ22(歯付プーリ)と従動プーリ23(歯付プーリ:
図3では不図示)との間に巻き掛けられた、歯付ベルト伝動装置21として実現される。
【0022】
駆動プーリ22の外周には、
図3に示すように、歯付ベルト3の歯部7(ベルト歯部に相当)に相対する、駆動プーリ歯221(プーリ歯部に相当)が複数設けられている。従動プーリ23の外周にも、歯付ベルト3の歯部7に相対する、従動プーリ歯231(プーリ歯部に相当)が複数設けられている(不図示)。
【0023】
本実施形態の駆動プーリ22は、中型(排気量500cc程度)の自動二輪車用に、外径が67mm〜90mmの範囲の、特許文献1の駆動プーリに対して比較的小さいものを想定している。具体的には、特許文献1の駆動プーリは歯形がH14M、歯数が33歯(外径約144mm)であり、大型の自動二輪車用となっている。それに対して、本実施形態の駆動プーリ22は、中型(排気量500cc程度)の自動二輪車用に、歯形がH11M、歯数は26歯(外径約89mm)の小型プーリを想定している(コンパクト化の要請により、歯ピッチPPおよびプーリの外径が小さい)。
【0024】
なお、従動プーリ23の外径ODは、駆動プーリ22の外径ODよりも大きい。そのため、従動プーリ23の歯231の数は、駆動プーリ22の駆動プーリ歯221の数より多いが、駆動プーリ22のPLD(ピッチラインディファレンス)と従動プーリ23のPLDとは一致しており、また、駆動プーリ22の歯ピッチPPと従動プーリ23の歯ピッチPPとは一致している。
【0025】
ここで、
図2及び
図3を参照して、歯付ベルト3及び駆動プーリ22(従動プーリ23)の構成(寸法)を説明する名称について定義する。
歯付ベルト3の歯ピッチBP:隣接する歯部7と歯部7との間の距離(なお、歯付ベルト3の歯ピッチBPは、引張力や曲げ径により変化するため、『歯付ベルト3の長さ(周長)/歯部7の数(歯数)』で定める)
歯付ベルト3のPL(ピッチライン):歯付ベルト3の心線9の中心位置を結ぶ線
歯付ベルト3のPLD(ピッチラインディファレンス):歯部7の底部から歯付ベルト3のPL(心線9の中心)までの距離
プーリの外径OD:プーリの歯先円直径
プーリピッチ周PPL:プーリに歯付ベルト3を巻き掛けた状態で、プーリの外周上で歯付ベルト3の心線9の中心位置を結んだ線
ピッチ径PD:プーリピッチ周PPLの直径
プーリの歯ピッチPP:プーリピッチ周上での、隣接する歯部と歯部との間の距離(円弧の長さ)
プーリのPLD(ピッチラインディファレンス):プーリの歯先からプーリピッチ周PPLまでの距離(『(ピッチ径PD−プーリの外径OD)/2』で定める)
【0026】
(歯付ベルト3の詳細:心線9)
背部4には、心線9がベルト長手方向に螺旋状に巻き付けられた状態で埋設されており、ベルト幅方向(Y方向)の断面視で、所定間隔で配設されている(
図1参照)。
【0027】
心線9は、下撚りの撚り方向と上撚りの撚り方向とが同じである、ラング撚りの炭素繊維コードを含んでいる。心線9をラング撚りとすることにより、諸撚りまたは片撚りに比較して曲げ剛性が低くなり、優れた耐屈曲疲労性が得られる。炭素繊維は、例えば、東レ株式会社製、商品名「トレカ」等が用いられる。ラング撚りの炭素繊維コードは、次のようにして形成できる。まず、繊度が300〜1000texの炭素繊維のマルチフィラメント糸に、ゴムラテックス及びエポキシ樹脂をトルエン等の溶剤に溶解して得られる処理液を含浸付着させて接着処理糸を作製する。そして、作製した接着処理糸を0.62〜1.30の下撚り係数でSまたはZ方向に下撚りして下撚り糸を作製し、下撚り糸を2〜4本合わせてさらに2.06〜3.95の上撚り係数で下撚りと同方向に上撚りを施す。以上により、ラング撚りの炭素繊維コードが得られる。ここで、撚り係数TFは、TF=(繊度(tex))
1/2×T/960(T:1m当たりの撚り回数)で表される。
【0028】
炭素繊維のマルチフィラメント糸は、フィラメント数の異なる6K、12Kなどのマルチフィラメント糸から選択することができる。6Kはフィラメント数が6000本、12Kはフィラメント数が12000本のマルチフィラメント糸を表している。6Kのマルチフィラメント糸の繊度は約400tex、12Kのマルチフィラメント糸の繊度は約800texである。
【0029】
炭素繊維のマルチフィラメント糸の繊度が1000texより大きいと、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。逆に炭素繊維のマルチフィラメント糸の繊度が300texより小さいものは材料コストが上昇すると共に、十分な引張強力を有する心線9を作製するために必要な下撚り糸の本数が増加するために、作業工数の増加を招いてしまう。そこで、耐屈曲疲労性、及び、コスト・作業工数の適正を十分に確保するために、炭素繊維のマルチフィラメント糸の繊度の範囲としては、下限値として500tex又は700tex、上限値として900texであることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、12Kのマルチフィラメント糸(繊度は約800tex)1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を4本合わせて上撚りした、ラング撚りの炭素繊維コード(12K−1/4)を心線9としている。なお、「12K−1/4」は、12Kのマルチフィラメント糸1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を4本合わせて上撚りした撚りコードであることを表している。同様に、「12K−1/3」は、12Kのマルチフィラメント糸1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を3本合わせて上撚りした撚りコードであることを表している。また、「12K−4/0」は、12Kのマルチフィラメント糸を4本合わせて片撚りした撚りコードであることを表している。
【0031】
ラング撚りの炭素繊維コードを形成する際に用いる処理液におけるゴムラテックスは、背部4及び歯部7を構成するゴム組成物と同種のゴム組成物からなることが好ましい。エポキシ樹脂としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の一種又は二種以上が使用される。
【0032】
心線9の心線径は1.1mm以上2.5mm以下が好ましい。心線径が1.1mm未満では、心線9の伸びが大きくなることにより、歯欠け(歯部7の欠損)が発生しやすくなる。心線径が2.5mmを超えると、心線9の耐屈曲疲労性の低下により、心線切断が発生しやすくなる。また、歯付ベルト3のPLDは
図5(a)のように歯布11の厚さと心線9の心線径との関係で決まる。そのため、心線径が1.1mm未満であると、
図5(b)のように小さいPLDしか設定できず、適正なPLDを得にくい。また、心線径が小さくても、歯布11を厚くすれば、
図5(c)のように大きなPLDが得られるが、歯部7のゴムの容積が減り、その結果、耐歯欠け性が低下する。心線9の心線径の下限値は好ましくは1.2mm以上、より好ましくは1.6mm以上、特に好ましくは1.9mm以上であり、上限値は好ましくは2.4mm以下、より好ましくは2.2mm以下である。
【0033】
ここで、歯付ベルト3のPLDは、耐屈曲疲労性と耐歯欠け性とを両立できることから、0.8〜2.0mmであってもよく、好ましくは0.9〜1.5mm、より好ましくは1.0〜1.2mmであってもよい。また、歯付ベルト3のPLDと駆動プーリ22のPLDとは略一致していることが好ましい。具体的には、歯付ベルト3のPLDは、駆動プーリ22のPLDに対して、−5%〜+5%の範囲にあれば略一致しているといえる。
【0034】
(背部4)
背部4は、JIS−A硬度が80度以上89度以下となる硬度のゴム組成物で構成される。ここで、JIS−A硬度とは、JIS K 6253(2012)に準拠した硬度であり、タイプAデュロメータを用いて測定した、歯付ベルト3の背部4表面の硬度である。背部4のJIS−A硬度を80度以上89度以下とすることにより、背部4の曲げ剛性が低くなり、優れた耐屈曲疲労性が得られる。背部4のJIS−A硬度が80度未満では、異物の衝突等により、背部4にクラックが発生する可能性がある。背部4のJIS−A硬度が89度を超えると耐屈曲疲労性が低下し、背部4にクラックが発生しやすくなる。
【0035】
背部4を構成するゴム組成物(ゴム組成物(B)、以下「背部ゴム」と称する。)は、水素化ニトリルゴム(以下、「HNBR」と称する。)と不飽和カルボン酸金属塩を含む水素化ニトリルゴム(以下、「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」と称する。)との混合物が用いられることが好ましく、硬度の調整は両者の混合比率を変更することによって達成される。具体的には、80度以上89度以下の硬度を得るためには、「HNBR」:「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」の質量比を40:60〜100:0に設定して混合することが好ましい。不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBRとして、例えば、HNBRに不飽和カルボン酸金属塩である、メタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたもの(例えば、日本ゼオン製、商品名「Zeoforte(ZSC)」等)を用いることができる。
【0036】
HNBRとは、従来のニトリルゴムの利点である耐油性を維持しつつ、熱老化中の硫黄の再結合反応によるゴム弾性の老化を防ぐため、従来のニトリルゴムが有する不飽和結合(炭素・炭素二重結合)を化学的に水素化することによって、熱老化中の再結合反応を起こりにくくし、耐熱性を改良したものである。不飽和カルボン酸金属塩とは、1つ又は2つ以上のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸と金属とがイオン結合したものである。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸などのモノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸が例示できる。また、金属としては、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、鉛、ニッケルなどが例示できる。
【0037】
本発明で使用するHNBRは、ヨウ素価が7〜30mg/100mgの範囲、好ましくは11〜28mg/100mgの範囲の不飽和ゴムである。ここで、不飽和ゴムとは、ポリマー分子鎖中に炭素・炭素二重結合(C=C結合)からなる不飽和結合を有するゴムをいう。また、ヨウ素価とは、不飽和結合の量を表す指標であり、ヨウ素価が高いほど、ポリマー分子鎖中に含まれる不飽和結合の量が多いことを表す。ヨウ素価の測定方法としては、測定試料に対して過剰のヨウ素を加えて完全に反応(ヨウ素と不飽和結合との反応)させ、残ったヨウ素の量を酸化還元滴定により定量することで求められる。HNBRのヨウ素価が7mg/100mg未満では、HNBR同士の架橋反応が十分ではなく、歯部の剛性が低くなるため、ベルト走行時に歯欠け等の不具合が発生するおそれがある。一方、HNBRのヨウ素価が30mg/100mgを超えると、不飽和結合の量が過剰に多くなり、歯部の耐熱性の低下や酸化による劣化が進行してベルト寿命が短くなるおそれがある。
【0038】
(歯部7)
歯部7は、JIS−D硬度(タイプDデュロメータを用いて測定した値)で60度以上66度以下となる硬度のゴム組成物で構成される。ここで、JIS−D硬度とは、JIS K 6253(2012)に準拠した硬度であり、タイプDデュロメータを用いて測定した、歯付ベルト3の歯部7側面の硬度である。なお、タイプDデュロメータは、高硬さ用の試験機であり、タイプAデュロメータを用いて測定した値が90度を超える場合は、タイプDデュロメータを用いるのが望ましいとされている。歯部7を構成するゴム組成物の硬度は背部4を構成するゴム組成物の硬度よりも高く、JIS−A硬度は90度を超える。そのため、歯部7を構成するゴム組成物の硬度はタイプDデュロメータを用いて測定した値とする。
【0039】
歯部7を構成するゴム組成物(ゴム組成物(A)、以下「歯部ゴム」と称する。)は、背部4と同様に、HNBRと不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBRとの混合物が用いられることが好ましく、硬度の調整は両者の混合比率を変更することによって達成される。具体的には、「HNBR」:「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」の質量比を50:50〜0:100に設定して混合することが好ましい。
【0040】
さらに、歯部7を構成するゴム組成物には、芳香族ポリアミド等の短繊維5が埋設されるのが好ましい。短繊維5は、歯布11に近い側は歯部7の外形状に沿って配向し、心線9に近づくにつれて短繊維5は心線9とほぼ平行となるように配向して埋設することが好ましい。短繊維5の種類は特に限定されるものではないが、例えばアラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリビニルアルコール繊維、炭素繊維等のモジュラスの高い繊維が好適に使用できる。
【0041】
また、歯部7を構成するゴム組成物には、粉末状の補強性無機充填剤が、HNBR及び不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBRを含むゴム成分の総量100質量部に対し10質量部以下の配合量で配合されることが好ましく、より好ましい範囲は0.1〜8質量部、0.5〜5質量部、1〜3質量部である。粉末状の補強性無機充填剤の配合量がゴム成分の総量100質量部に対し10質量部を超えると、歯部7を構成するゴム組成物の発熱が大きくなり、ゴム組成物の耐熱性が低下するため、熱老化により歯欠けや亀裂が発生するおそれがある。
【0042】
本実施形態では、歯部7を構成するゴム組成物に、カーボンブラックやシリカなどの粉末状の補強性無機充填剤を必ずしも配合する必要はない。特に、カーボンブラックは歯部7を構成するゴム組成物を黒色に着色できる程度に配合されていればよく、好ましくはHNBR及び不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBRを含むゴム成分の総量100質量部に対し10質量部以下であり、より好ましい範囲は0.1〜8質量部、0.5〜5質量部、1〜3質量部である。このカーボンブラックは、着色剤として使用しており、ゴム組成物を黒色に着色するにはカーボンブラックが最適である。
【0043】
また、歯部7を構成するゴム組成物には、非補強性充填剤が配合されることが好ましい。非補強性充填剤としては、例えば、多価金属炭酸塩類(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、多価金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、多価金属硫酸塩(硫酸バリウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのケイ素の一部が多価金属原子で置換された天然又は合成ケイ酸塩;若しくはケイ酸塩を主成分とする鉱物、例えば、ケイ酸アルミニウムを含むクレイ、ケイ酸マグネシウムを含むタルク及びマイカなどのケイ酸塩鉱物など)、リトポン、ケイ砂などが例示できる。これらの非補強性充填剤は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。好ましい非補強性充填剤は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのケイ酸塩、若しくはケイ酸塩鉱物(タルク、クレイ、マイカなど))から選択された少なくとも一種である。さらには、非補強性充填剤は、ベルトの加工性や配合剤の分散性の向上の効果が大きく、配合剤の分散不良を起こしにくい点から、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸マグネシウムを含むタルク、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸アルミニウムを含むクレイから選択された少なくとも一種を含むのが好ましく、特に炭酸カルシウムを含むのが好ましい。非補強性充填剤としては、ゴムの充填剤として市販されている粉末状の充填剤が使用できる。
【0044】
非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば、0.01〜25μm(例えば、0.2〜20μm)、好ましくは0.5〜17μm(例えば、1〜15μm)程度の範囲から選択できる。非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば、0.01〜3μm(例えば、0.02〜2μm)、好ましくは0.05〜1.5μm(例えば、0.1〜1μm)程度であってもよく、比較的大きくてもよい。例えば、非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、0.2〜5μm(例えば、0.3〜3μm)、好ましくは0.5〜2.5μm(例えば、1〜2μm)程度であってもよい。なお、非補強性充填剤の種類、例えば、ケイ酸マグネシウム又はその鉱物などによっては、ゴム成分などとの混練過程で非補強性充填剤が解砕又は破砕される場合がある。このような解砕性又は破砕性を有する非補強性充填剤の平均粒子径は、ゴム成分などとの混練前の平均粒子径であってもよい。非補強性充填剤は、歯部又はそのゴム組成物において、通常、前記範囲の平均粒子径(例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜3μm)を有していてもよい。非補強性充填剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を利用して、体積平均粒子径として測定してもよい。また、ナノメータサイズの充填剤の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真を含む電子顕微鏡写真の画像解析により適当なサンプル数(例えば、50サンプル)の算術平均粒子径として算出してもよい。
非補強性充填剤の割合は、ゴム成分の総量100質量部に対して、3〜50質量部(例えば、5〜40質量部)であり、好ましくは5〜30質量部(例えば、6〜25質量部)、さらに好ましくは7〜20質量部(例えば、8〜15質量部)程度であってもよい。非補強性充填剤の含有量が少なすぎると、ベルトの加工性や配合剤の分散性を十分に向上できない虞があり、非補強性充填剤の含有量が多すぎると配合剤の分散性が不良となる虞がある。
非補強性充填剤を比較的多い割合で使用すると、ゴム練中の各種配合剤(酸化亜鉛、補強性充填剤、短繊維など)の分散性を向上でき、ゴム組成物の均一性を高めることができるとともに、損失係数Tanδを大きく上昇させることがなく、ゴムの変形による発熱を抑制できる。そのため、亀裂の発生と成長との双方を抑制でき、歯付ベルトの耐歯欠け性を大きく向上できる。
【0045】
また、本実施形態の歯部7に使用するゴム組成物の加硫物は、JIS K6394(2007)に準じて測定された70℃雰囲気温度下での貯蔵弾性率(E´)が200〜300MPaであり、かつ、損失係数(Tanδ)が0.1〜0.2の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、歯欠け等の不具合は起こりにくくなり、歯部7の変形が抑制されることで、歯付プーリ(駆動プーリ22、従動プーリ23)とのかみ合いに支障を来たさず、耐久性が向上する。
【0046】
E´とは、周期振動を与える動的状態の試験から得られる弾性率であり、歪と同位相の弾性応力の比率として定義される。E´が高いほど物体は変形しにくくなり、高負荷条件のような強い外部の力でも変形量は小さくなるので、亀裂や切断などは発生しにくい。一方、E´が低くなると物体は変形しやすくなるため、小さな外部力でも物体は容易に切断、破壊が起こる。
Tanδとは、損失弾性率(E´´)をE´で除したものであり、振動1サイクルの間に熱として散逸されるエネルギーと貯蔵される最大エネルギーとの比の尺度となっている。即ち、Tanδはゴム組成物に加えられる振動エネルギーが熱として散逸され易さを表すものであり、Tanδが大きくなるほど外部から加えられるエネルギーの多くが熱に変換されるため、ゴム組成物は自己発熱により温度が高くなり、耐熱性が低下する。一方、Tanδが低いほど発熱量は低く抑えられるため、ゴム組成物の耐熱性は向上する。
【0047】
(歯布11)
歯布11は、ベルト幅方向に延在する経糸6とベルトの長手方向に延在する緯糸8とを織成してなる繊維織物を基材とする。また、この繊維織物は、平織物や綾織物、朱子織物などからなる。この繊維織物を構成する繊維材料としては、例えば、アラミド繊維、ウレタン弾性糸、脂肪族繊維(6ナイロン、66ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等)等を使用できる。なお、歯布11は設けなくてもよい。
【0048】
本実施形態の繊維織物として、2種類の緯糸8と1種類の経糸6とで織成された多重織(2重織)構造のものを採用することもできる。この場合、経糸6をナイロン繊維とし、緯糸8にはフッ素系繊維、ナイロン繊維、及び、ウレタン弾性糸を使用することが好ましい。また、緯糸8のうちの、歯布11の表面側(歯付プーリとのかみ合い側)に位置する(露出する)緯糸8としては、歯布11と歯付プーリとの間の摩擦を低減するために、摩擦係数が低いフッ素系繊維(例えば、PTFE繊維)を使用することが好ましい。一方、歯布11の裏面側(歯部7との接着側)に位置する緯糸8には、フッ素系繊維以外の繊維(ナイロン繊維やウレタン弾性糸)を使用することで、歯布11と歯部7を構成するゴムとの接着力を高めることが可能となる。
【0049】
また、フッ素系繊維の周囲には、ゴムを基材とする歯部7及び背部4の加硫温度で融解する融点を有する低融点繊維が配されていることが好ましい。具体的には、フッ素系繊維と低融点繊維とが混撚されている、又は、フッ素系繊維が低融点繊維によってカバーされているなどの形態が含まれる。なお、歯部7及び背部4の加硫条件(加硫温度及び加硫時間)は、特に限定されるものではなく、加硫剤及び加硫促進剤の種類並びに加硫手段等を考慮して、通常、ムーニー粘度計又はその他の加硫挙動測定機を用いて測定した加硫曲線を参照して決定される。このようにして決定される一般的な加硫条件は、加硫温度100〜200℃で、加硫時間1分〜5時間程度である。必要により二次加硫を行っても良い。
【0050】
この場合、歯部7及び背部4の加硫時に低融点繊維が融解し、歯布11を構成する繊維間に流れ込んだ後、融点以下まで冷却することで低融点繊維が結晶化する。そのため、歯付プーリへのかみ込み時、或いは、歯付プーリからのかみ抜け時に、歯布11の表面に生じる衝撃や摩耗によってフッ素系繊維が切断・飛散するのが抑制される。これにより、歯部7及び背部4をより長期間保護して、ベルトの歯欠けを防止することができ、高負荷走行時の長寿命化が可能となる。
【0051】
ここで、低融点繊維としては、融点が好ましくは165℃未満、より好ましくは150℃未満の、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、又は、オレフィン系繊維を使用することができる。
【0052】
低融点繊維として使用可能なポリアミド系繊維としては、W−アミノカルボン酸成分又はジカルボン成分とジアミンとの組み合わせからなる、共重合ポリアミド類のものがある。
【0053】
低融点繊維として使用可能なポリエステル系繊維としては、融点が歯部7及び背部4の加硫温度よりも高い芯成分のポリエステル系ポリマーと、融点が歯部7及び背部4の加硫温度よりも低い鞘成分の共重合ポリエステル系ポリマーからなる芯鞘型複合繊維が好ましい。融点が歯部7及び背部4の加硫温度よりも高い芯成分のポリエステル系ポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの共重合体が挙げられる。融点が歯部7及び背部4の加硫温度よりも低い鞘成分の共重合ポリエステル系ポリマーは、二塩基酸とジオールとの重縮合反応で得られ、その例としては、テレフタル酸とジエチレングリコールとをベースに、共重合成分として、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ブタンジオール、へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、その組み合わせ及び共重合比率により融点を調整可能である。
【0054】
低融点繊維として使用可能なオレフィン系繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維(例えば、高密度ポリエチレン繊維、中密度ポリエチレン繊維、低密度ポリエチレン繊維、直鎖状低密度ポリエチレン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維)などが挙げられる。
【0055】
また、これらを共重合させたものでも良く、さらには、歯部7及び背部4の加硫温度で融解する繊維であれば、その撚糸方法や構成について特に限定されるものではない。さらに、これら低融点繊維の表面に、接着処理剤との親和性を上げることを目的として、プラズマ処理等がなされても良い。
【0056】
この歯布11は、例えば以下のような工程を含む一連の接着処理を経て、歯部7を構成するゴムに接着される。
【0057】
(1)歯布11を構成する繊維織物を、レゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液(以下、RFL処理液という)に含浸し、乾燥させる。
【0058】
ここで、RFL処理液には、硫黄化合物の水分散物、キノンオキシム系化合物、メタアクリレート系化合物、マレイミド系化合物のうち少なくとも1つの加硫助剤、又は、これらの加硫助剤を水に分散させたものを添加することが好ましい。
【0059】
硫黄化合物の水分散物としては、例えば、硫黄の水分散物やテトラメチルチウラムジスルフィドなどが採用され得る。キノンオキシム系化合物としては、例えば、p−キノンジオキシムなどが採用され得る。メタアクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレートなどが採用され得る。マレイミド系化合物としては、例えば、N,N´−m−フェニレンビスマレイミドやN,N´−(4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド)などが採用され得る。
【0060】
なお、上述した「当該加硫助剤を水に分散させたもの」における「水」は、例えばメタノールなどのアルコールを若干程度含むものであっても良い。これによれば、「当該加硫助剤」が水に対して不溶性の場合であっても、「当該加硫助剤」の水に対する親和性が向上して「当該加硫助剤」が分散し易くなる。
【0061】
このように、RFL処理液に加硫助剤を添加することで以下の効果が期待される。即ち、RFL処理液中に含まれるゴムラテックス成分と外層ゴム(後記(2)のゴム糊処理や(3)のコート処理で使用されるゴム糊又は圧延ゴムを意味する。コート処理が省略される場合は歯部7を構成するゴムを意味する。)との層間の化学的結合力が強化されることで、接着性が向上し、歯布11の剥離が抑制される。更に期待される効果として、RFL処理液中に含まれるゴムラテックス成分自身の化学的結合力(架橋の力)が強化され、その結果、接着層の凝集破壊による剥離(即ち、層間剥離)よりも、接着対象である上記外層ゴムの破壊による剥離が先行すると考えられる。
【0062】
また、RFL処理液に加硫助剤を添加する場合、繊維織物の含浸処理を2回に分けて実行しても良い。この場合、まず、1回目のRFL含浸処理においては、RFL処理液には、前述した何れの加硫助剤も添加しないこととする。これは、1回目の処理工程においては、ゴムラテックス成分の架橋よりもRF成分の熱硬化を優先するためである。
【0063】
一方、2回目のRFL含浸処理においては、1回目のRFL処理液と比較してゴムラテックス成分を多く含み、硫黄化合物の水分散物、キノンオキシム系化合物、メタアクリレート系化合物、マレイミド系化合物のうち少なくとも1つの加硫助剤、又は、加硫助剤を水に分散させたものを添加したRFL処理液を使用する。なお、1回目の含浸処理と2回目の含浸処理とで、RFL処理液のゴムラテックス成分の割合に差を設けるのは、親和性の異なる繊維とゴムの両方に対する、RFL層の接着性を高める為である。
【0064】
(2)繊維織物に、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊からなる接着処理剤を付着させた後にベーキング処理する、2種類のゴム糊処理(P1処理、S1処理)を行う。
【0065】
(3)繊維織物の表面に、ゴム糊と圧延ゴムとをこの順にコーティングする。本工程は、コート処理とも称される。「この順に」とあるのは、詳細には「繊維織物から歯部7へ向かって、この順に」を意味する。ここで、RFL処理液に加硫助剤を添加した場合には、このコート処理で使用するゴム糊と圧延ゴムにも、RFL処理液に添加した加硫助剤と同一のものを添加することが好ましい。これにより、RFL処理液で処理された繊維織物とゴム糊の間の接着力の著しい改善が期待できる。
【0066】
なお、上記(1)〜(3)の処理は、全てを行う必要はなく、必要に応じて、いずれか1つ、或いは、2以上の複数を組み合わせて行って良い。例えば、(1)の処理においてRFL処理液に加硫助剤を添加する場合には、この処理のみで繊維織物とゴム間の接着力がかなり高められることから、(2)のゴム糊処理を省略しても良い。
【0067】
本実施形態に係る歯付ベルト3は、予備成型工法により作製される。予備成型工法とは、まず、歯型を有する金型によって歯布11と歯部7とを予め成型し、予備成形体を得て、次に、得られた予備成形体を金型に巻きつけ、その上に心線9を螺旋状にスピニングする。そして、その上に背部4を構成する未加硫ゴムを巻いた後、全体を加硫缶で加硫する工法のことである。この予備成型工法においては加硫前に歯布11と歯部7が予め成型される為、加硫時に背部4を構成する未加硫ゴムを心線9の間から内側(腹側)へ流動させ、歯布11を伸張させて歯部7を形成する必要がない。そのため、心線間距離(ピッチ)を狭くすることが可能となる。
【0068】
(歯部7の歯形、歯ピッチBP)
歯部7の歯形は、JISB1856(2018)およびISO5294(1989)に規定されている台形歯形(MXL、XXL、XL、L、H、XH、XXH)、JISB1857−1(2015)およびISO13050(2014)に規定されている円弧歯形(H、P、S、R、G)のいずれであってもよいが、歯付ベルト3と歯付プーリ(駆動プーリ22、従動プーリ23)との干渉を低減でき、歯付ベルト3の耐久性を向上できる点から、円弧歯形が好ましい。
【0069】
また、歯部7の歯ピッチBP(ベルトの長手方向(X方向)における歯部7と歯部7との間の距離、
図2参照)は、8mm〜14mmの範囲で選択できる。これに相当する円弧歯形は、H8M、P8M、S8M、R8M、G8M(それぞれ歯ピッチBPが8mm)、H14M、P14M、S14M、G14M(それぞれ歯ピッチBPが14mm)などが挙げられる。また、上記規格には規定のないメーカー独自の歯形、例えば、H11M(歯ピッチBPが11mm)であってもよい。歯ピッチBPが8mmよりも小さいと伝動容量が不足して、歯付ベルト3の耐久性が低下する虞がある。逆に、歯ピッチBPが14mmよりも大きいと、歯付ベルト伝動装置21が大型化してしまうと共に、歯付ベルト3の耐屈曲疲労性が低下する虞がある。歯付ベルト3の耐久性と歯付ベルト伝動装置21の小型化を両立できることから、歯ピッチBPは11mmが好ましく、歯形はH11Mが好ましい。
【0070】
また、歯付ベルト3の歯ピッチBPは、駆動プーリ22の歯ピッチPPに対して、−0.4%〜+0.1%の範囲にある。更には、歯付ベルト3の歯ピッチBPは、駆動プーリ22の歯ピッチPPに対して、−0.2%〜+0.1%(特に、−0.1%〜+0.1%)の範囲にあることがより好ましい。即ち、歯付ベルト3の歯ピッチBPと、駆動プーリ22の歯ピッチPPとは、一致していることが好ましい。なお、歯付ベルト3の歯ピッチBPは、歯付ベルト伝動装置21での使用後の歯付ベルト3の伸びを考慮して、駆動プーリ22の歯ピッチPPよりも小さくしてもよい。
【0071】
上記構成の歯付ベルト3によれば、歯付ベルト3に埋設された心線9が炭素繊維を含むことで引張強力が向上し、高負荷伝動での耐久性が向上する。
また、心線9については、複数の下撚り糸を合わせて上撚りにし、下撚りの撚り方向と上撚りの撚り方向を同じにする(ラング撚り)ことで耐屈曲疲労性が向上する。
【0072】
また、上記歯付ベルト3の心線9の下撚り係数は、0.62〜1.30(好ましくは0.75〜1.15、より好ましくは0.90〜1.00)であり、上撚り係数は、2.06〜3.95(好ましくは2.45〜3.55、より好ましくは2.80〜3.20)である。
これにより、耐屈曲疲労性を確保しながら心線9と歯付ベルト3の伸びを抑制でき、耐久性が向上する。下撚り係数及び上撚り係数が上記範囲よりも小さいと耐屈曲疲労性が低下し、逆に大きいと引張強力が低下するとともに歯付ベルト3の伸びが大きくなって、耐久性が低下する。
【0073】
また、上記歯付ベルト伝動装置21によれば、歯付ベルト3の歯ピッチBPが、駆動プーリ22の歯ピッチPPに対して、−0.4%〜+0.1%の範囲にあるように設計している。この構成によれば、歯付ベルト伝動装置21(自動二輪車の後輪駆動)による高負荷によって歯付ベルト3が伸びた際にも、駆動プーリ22(小径プーリ)と従動プーリ23(大径プーリ)のどちらにおいても歯同士のかみ合いを良好に保つことができ、歯付ベルト3の耐久性を向上させることができる。上記の範囲を外れると、歯付ベルト3の歯部7と駆動プーリ22の駆動プーリ歯221や従動プーリ23の従動プーリ歯231とのかみ合いが悪化して、歯付ベルト3の耐久性が低下する場合がある。
【0074】
また、歯付ベルト3の歯ピッチBPは、駆動プーリ22の歯ピッチPPに対して、−0.2%〜+0.1%(特に、−0.1%〜+0.1%)の範囲に設定し、できるだけ歯付ベルト3の歯ピッチBPと、駆動プーリ22の歯ピッチPPとを、一致させることにより、従来品(歯付ベルトの歯ピッチBPを歯付プーリの歯ピッチPPよりも小さくして、使用による歯付ベルトの伸びに対応しようとする歯付ベルト)よりも大きめの範囲に設定している。これにより、砂噛みによるかみ合いの悪化を抑制でき、歯付ベルト3の耐久性をさらに向上させることができる。
【0075】
また、上記構成によれば、歯付ベルト伝動装置21の駆動プーリ22の外径ODが67mm〜90mmと比較的小さい場合であっても、伝動容量の高さを維持しつつ、歯付ベルト3の耐久性を向上できるため、歯付ベルト伝動装置21を小型化することができる。
【実施例】
【0076】
(歯付ベルト)
実施例1〜6及び比較例1〜7では、下記各部材を用いて、ベルトサイズ120H11M25(歯部数:120歯、歯形:H11M、歯ピッチBP:約11mm、ベルト幅:25mm)の歯付ベルトを作製した。
【0077】
また、実施例7〜10及び比較例8〜9では、下記各部材を用いて、ベルトサイズ144H14M21(歯部数:144歯、歯形:H14M、歯ピッチBP:約14mm、ベルト幅:21mm)の歯付ベルトを作製した。
【0078】
(ゴム組成物:背部 歯部)
【表1】
【0079】
(ゴム組成物の使用材料)
HNBR:日本ゼオン(株)製「Zetpol2010」、ヨウ素価11mg/100mg
不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR:日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC2295CX」、HNBR:不飽和カルボン酸金属塩(質量比)=100:110、ベースHNBRのヨウ素価28mg/100mg
アラミド短繊維:帝人(株)製「コーネックス」、平均繊維長3mm、平均繊維径14μm
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
カーボンブラックSRF:東海カーボン(株)製「シーストS」、平均粒子径66nm、ヨウ素吸着量26mg/g
シリカ:エボニック・デグサ・ジャパン(株)製「ウルトラシルVN−3」、比表面積155〜195m
2/g
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製「スーパー#1500」、平均粒子径1.5μm
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」、平均粒子径0.55μm
可塑剤:(株)ADEKA製「アデカサイザーRS700」
老化防止剤:p,p’−ジオクチルジフェニルアミン(精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」)
有機過酸化物:1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、理論活性酸素量9.45%
【0080】
(心線を構成する炭素繊維のマルチフィラメント糸)
東レ(株)製「トレカT700SC−12000」、引張弾性率230GPa、フィラメント繊度0.67dtex、フィラメント数12000、繊度800tex
【0081】
(心線の処理)
ゴムラテックス及びエポキシ樹脂をトルエンに溶解した処理液に含浸させた。
【0082】
(歯布、および歯布の処理)
歯布の構成は特許文献1と同一とした。また、特許文献1と同じRFL処理(B−1およびB−2)、コート処理を行った。なお、P1処理およびS1処理は行っていない。
【0083】
(歯付ベルトの製造)
実施例1〜6及び比較例1〜7の、予備成型工法による歯付ベルトの作製においては、まず、歯形を有する金型に、歯布と歯部となる未加硫ゴムシート(厚み:2.55mm)を乗せ、120℃、160秒、プレス圧:4.51MPa(面圧)の条件でプレスし、予備成形体を作製する。次に、作製した予備成形体を金型に巻きつけ、その上にスピニングテンション:460〜700N/本、スピニングピッチ:2.2mm/本、スピニング速度:1.5m/sの条件で心線9を螺旋状にスピニングする。その上に、背部を構成する未加硫ゴムシート(厚み:1.35mm)を巻いた後、全体を加硫温度179℃、加硫時間40分、蒸気圧:0.83MPaの条件で加硫缶を使って加硫し、歯付ベルトを作製した。
【0084】
また、実施例7〜10及び比較例8〜9の、予備成型工法による歯付ベルトの作製においては、まず、歯形を有する金型に、歯布と歯部となる未加硫ゴムシート(厚み:2.90mm)を乗せ、120℃、160秒、プレス圧:4.51MPa(面圧)の条件でプレスし、予備成形体を作製する。次に、作製した予備成形体を金型に巻きつけ、その上にスピニングテンション:300〜960N/本、スピニングピッチ:2.2mm/本、スピニング速度:1.5m/sの条件で心線9を螺旋状にスピニングする。その上に、背部を構成する未加硫ゴムシート(厚み:2.10mm)を巻いた後、全体を加硫温度179℃、加硫時間40分、蒸気圧:0.83MPaの条件で加硫缶を使って加硫し、歯付ベルトを作製した。
【0085】
(歯付ベルトのPLDの測定)
歯付ベルトのPLD(歯部の底部から心線の中心までの距離)は以下のように測定した。まず、歯付ベルトを幅方向に平行に切断し、その断面をマイクロスコープで20倍に拡大して観察する。
図4に示すように、歯部の底部から心線の直上までの距離(t1)と、歯部の底部から心線の直下までの距離(t2)とを測定し、これらを平均((t1+t2)/2)して、歯部の底部から心線の中心までの距離(t3)を求めた。この距離(t3)を、断面において切断された全ての心線について求め、さらにこれらの距離(t3)の算術平均値を計算して歯付ベルトのPLDとした。この際、測定の対象となる心線は、断面の全体が観察できる心線に限るものとし、断面の全体が観察できない(一部がベルト端面にかかっている)心線は測定の対象から除いた。
【0086】
(歯付ベルトの歯ピッチBPの測定)
実施例1〜6及び比較例1〜7の歯付ベルトの歯ピッチBPは、検尺機で測定した歯付ベルト全体の長さ(ピッチ周長)を歯付ベルトの歯部数で除して求めた。2つの検尺プーリの歯数は共に30歯とし、検尺荷重は966Nとした。歯付ベルトの長さの測定は、駆動プーリを30rpmで回転させ、回転開始後10秒間経過して歯付ベルトが検尺プーリに馴染んだ後に測定した。
【0087】
実施例7〜10及び比較例8〜9の歯付ベルトの歯ピッチBPは、検尺機で測定した歯付ベルト全体の長さ(ピッチ周長)を歯付ベルトの歯部数で除して求めた。2つの検尺プーリの歯数は共に30歯とし、検尺荷重は1186Nとした。歯付ベルトの長さの測定は、駆動プーリを30rpmで回転させ、回転開始後10秒間経過して歯付ベルトが検尺プーリに馴染んだ後に測定した。
【0088】
(耐久走行試験)
次に、実施例1〜10及び比較例1〜9に係る歯付ベルトに対して、
図6に示す歯付ベルト伝動装置21と同じレイアウトの、2軸高負荷走行試験機を用いた高負荷条件下での走行試験を行って、実施例1〜10に係る歯付ベルトの技術的効果を検証した(試験結果:表2、表3参照)。
【0089】
(試験条件:実施例1〜6及び比較例1〜7(実施例7〜10及び比較例8〜9))
試験機:2軸高負荷走行試験機(
図6参照)
プーリ歯形(駆動プーリ、従動プーリ):H11M(H14M)
プーリのPLD(駆動プーリ、従動プーリ):1.10mm(1.10mm)
プーリの歯ピッチ(駆動プーリ、従動プーリ):11.000mm(14.000mm)
駆動プーリ歯数:26歯(30歯)
従動プーリ歯数:59歯(70歯)
ベルト初張力:1050N(1150N)
【0090】
・駆動プーリ回転数の制御パターン:
(1)25秒で0rpmから3150rpmまで上げる
(2)3150rpmで230秒保持
(3)15秒で3150rpmから0rpmまで下げる
(4)20秒で0rpmから3150rpmまで上げる
(5)20秒で3150rpmから0rpmまで下げる
(6)(4)〜(5)を5回繰り返す。
以上を1つのサイクルとして、繰り返す。
・負荷トルクの制御パターン:
(1)2秒で0N・mから690N・mまで上げる
(2)5秒で690N・mから220N・mまで下げる
(3)220N・mで230秒保持
(4)15秒で220N・mから0N・mまで下げる
(5)2秒で0N・mから690N・mまで上げる
(6)35秒で690N・mから0N・mまで下げる
(7)(5)〜(6)を5回繰り返す。
以上を1つのサイクルとして、繰り返す。
【0091】
砂かけ条件:砂の種類:珪砂とセメント砂のブレンド
砂かけの場所:従動プーリのかみ合い入り口
砂かけの量と頻度:5g/サイクルを5サイクル連続して行い、続く35サイクルは砂かけなし。以降繰り返し。
【0092】
(実施例1)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に32回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製した。作製した4本の下撚り糸を引き揃えてS方向に51回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texのラング撚りコードを作製した。また、撚りコードには前記の方法で接着処理を行い、処理コードを作製した。この処理コードを心線として、前記歯付ベルトの製造方法に記載の方法でスピニングテンションを630N/本として歯付ベルトを製造した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.10mmであった。
【0093】
(実施例2)
スピニングテンションを500N/本とする以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは11.000mm、歯付ベルトのPLDは1.10mmであった。
【0094】
(実施例3)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に44回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製し、作製した4本の下撚り糸を引き揃えてS方向に67回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texのラング撚りコードを作製した以外は実施例2と同様にして歯付ベルトを作製した。
【0095】
(実施例4)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に21回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製し、作製した4本の下撚り糸を引き揃えてS方向に35回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texのラング撚りコードを作製した以外は実施例2と同様にして歯付ベルトを作製した。
【0096】
(実施例5)
スピニングテンションを580N/本とする以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは10.978mmであった。
【0097】
(実施例6)
スピニングテンションを460N/本とする以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは11.011mmであった。
【0098】
(比較例1)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に32回/mで下撚りをかけて、3本の下撚り糸を作製した。作製した3本の下撚り糸を引き揃えてS方向に39回/mで上撚りをかけて、総繊度2400texのラング撚りコードを作製する以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.00mmであった。
【0099】
(比較例2)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に32回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製した。作製した4本の下撚り糸を引き揃えてS方向に34回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texのラング撚りコードを作製する以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを製造した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.10mmであった。
【0100】
(比較例3)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸を4本引き揃えてS方向に16.2回/mで撚りをかけて、総繊度3200texの片撚りコードを作製する以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを製造した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.08mmであった。
【0101】
(比較例4)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に32回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製した。作製した4本の下撚り糸を引き揃えてZ方向に51回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texの諸撚りコードを作製する以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを製造した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.11mmであった。
【0102】
(比較例5)
繊度800texの炭素繊維のマルチフィラメント糸をS方向に32回/mで下撚りをかけて、4本の下撚り糸を作製した。作製した4本の下撚り糸を引き揃えてS方向に107回/mで上撚りをかけて、総繊度3200texのラング撚りコードを作製する以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを製造した。歯付ベルトの歯ピッチは10.964mm、歯付ベルトのPLDは1.11mmであった。
【0103】
(比較例6)
スピニングテンションを700N/本とする以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは10.945mmであった。
【0104】
(比較例7)
スピニングテンションを420N/本とする以外は実施例1と同様にして歯付ベルトを作製した。歯付ベルトの歯ピッチは11.022mmであった。
【0105】
(試験結果)
【表2】
【0106】
(実施例7〜10及び比較例8〜9)
実施例7〜10、及び、比較例8〜9は、上記で説明したように歯形がH14Mの歯付ベルトであり、上撚り係数(3.01)及び下撚り係数(0.94)を固定して、スピニングテンション(歯付ベルトの歯ピッチ)のみ変量した。
【0107】
(実施例7)
心線は実施例1と同じで、スピニングテンションは800N/本、歯付ベルトの歯ピッチは13.944mmとした。
【0108】
(実施例8)
スピニングテンションは940N/本、歯付ベルトの歯ピッチは13.972mmとした。
【0109】
(実施例9)
スピニングテンションは550N/本、歯付ベルトの歯ピッチは14.000mmとした。
【0110】
(実施例10)
スピニングテンションは350N/本、歯付ベルトの歯ピッチは14.014mmとした。
【0111】
(比較例8)
スピニングテンションは960N/本、歯付ベルトの歯ピッチは13.930mmとした。
【0112】
(比較例9)
スピニングテンションは300N/本、歯付ベルトの歯ピッチは14.028mmとした。
【0113】
(試験結果)
【表3】
【0114】
(考察)
実施例1〜6は80時間以上の寿命時間を有しており、故障形態は歯欠けであるために歯付ベルトの交換などの異常処置を行いやすいと言える。一方、比較例1〜7は70時間以下の寿命時間であって、切断という予見の難しい故障形態となった。
比較例1では、下撚り糸の引き揃え本数を3本とした細径の心線を用いているために、引張強力が不足していると考えられる。比較例2では、上撚り係数が小さすぎるために耐屈曲疲労性が不足していると考えられる。比較例3および比較例4では、心線の撚り方法が片撚りまたは諸撚りであるために耐屈曲疲労性が不足していると考えられる。比較例5では、上撚り係数が大きすぎるために引張強力が不足したり、歯付ベルトの伸びが大きくなってかみ合いが悪化したりしていると考えられる。比較例6、7は、実施例1から歯付ベルトの歯ピッチのみ変更したものであるが、歯付ベルトの歯ピッチが歯付プーリの歯ピッチに対して−0.4%〜+0.1%の範囲を外れていることから、寿命時間が低下していた。
【0115】
一方、実施例1は引張強力と耐屈曲疲労性をともに高くすることができ、かみ合いも比較的良好に保たれていると考えられる。また、実施例2では、歯付ベルトの歯ピッチをプーリの歯ピッチと一致させることで、砂噛みによるかみ合いの悪化を抑制することができるために、さらに寿命時間が向上したと考えられる。さらに、実施例5、6では、実施例1から歯付ベルトの歯ピッチのみ変更したものであるが、歯付ベルトの歯ピッチが歯付プーリの歯ピッチに対して−0.2%〜+0.1%の範囲内で良好な結果が得られた。
【0116】
実施例7〜10については、歯付ベルトの歯ピッチが歯付プーリの歯ピッチに対して±0%である実施例9の寿命時間がもっとも長く、その差が大きくなるに従って寿命時間は低下した。一方、比較例8、9については、歯付ベルトの歯ピッチが歯付プーリの歯ピッチに対してー0.4%〜+0.1%の範囲を外れると、寿命時間は大きく低下した。また、故障形態も予見が困難である切断となった。