特許第6983363号(P6983363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983363
(24)【登録日】2021年11月25日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】配線基板用基材の再利用方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20211206BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   G03F7/42
   H05K3/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2021-520239(P2021-520239)
(86)(22)【出願日】2020年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2020037012
(87)【国際公開番号】WO2021065951
(87)【国際公開日】20210408
【審査請求日】2021年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2019-181057(P2019-181057)
(32)【優先日】2019年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】韋 瀟竹
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−028646(JP,A)
【文献】 特開2008−224872(JP,A)
【文献】 特開2002−033257(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/208300(WO,A1)
【文献】 特開2016−095388(JP,A)
【文献】 国際公開第03/077291(WO,A1)
【文献】 特開平11−145594(JP,A)
【文献】 特開2003−017834(JP,A)
【文献】 特表2007−521501(JP,A)
【文献】 特開平07−115048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/42
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に形成された硬化被膜を備えた配線基板から硬化被膜の一部または全部を除去して前記基材を再利用する方法であって、
前記硬化被膜は、感光性樹脂組成物の硬化物からなり、
前記硬化被膜の一部または全部に、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種を照射する工程と、
前記硬化被膜が形成された基材を溶剤で洗浄して、活性エネルギー線照射された部分の硬化被膜を前記基材から除去する工程と、
を含んでなり、
前記溶剤が非プロトン性極性溶剤である、配線基板用基材の再利用方法。
【請求項2】
前記硬化被膜は、前記基材上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成するか、または感光性樹脂組成物を支持フィルムに塗布、乾燥して形成した樹脂層を有するドライフィルムを、前記基材と前記樹脂層とが接するように前記ドライフィルムを貼り合わせ、次いで、前記乾燥塗膜または前記ドライフィルムの樹脂層を露光、現像して、パターニングすることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線は、波長100〜255nmの電離放射線を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化被膜が除去された配線基板を加熱する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂組成物が、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)熱硬化性成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂層の露光、現像の後、かつ、前記硬化被膜への活性エネルギー線照射の前に、加熱および紫外線照射の少なくともいずれかを行う、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化被膜の厚さが1〜1000μmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板用基材の再利用方法に関し、より詳細には、基材表面に形成された硬化被膜を備えた配線基板から硬化被膜の一部または全部を除去して基材を再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路の保護やはんだ付けが必要な箇所以外へのはんだ付着の防止等を目的に、プリント配線用基板の表面の所望部分にのみ硬化被膜を形成した回路板を製造することが行われている。硬化被膜を形成するための方法として、基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に露光、現像し、基板表面の所望部分にのみ硬化被膜を形成する手法や、いわゆるドライフィルムと呼ばれる感光性樹脂層を備えたフィルムを基材に貼り合わせ、露光・現像により基材表面の所望部分にのみ硬化被膜を形成する手法が主流となっている。
【0003】
ところで、基材上に硬化被膜を形成する工程において、製品の品質低下につながる何らかの不具合が発生する場合がある。例えば、ソルダーレジストインキと呼ばれる感光性樹脂組成物を基材に塗布する際の印刷不良、露光時の位置ずれ、色わかれ(色むら)、乾燥塗膜のピンホール、異物の混入、マーキングインキの印刷不良等の不具合が発生する場合がある。このような硬化被膜形成工程における不具合において、露光前であれば、現像液によって塗布を容易に除去することが可能である。また、露光、現像後であっても加熱処理による塗膜硬化を行う前であれば、現像後の塗膜を適当な溶剤を用いて剥離し、再び基材上に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させた後に露光、現像処理を行うことによって不具合を是正することができる。一方、現像後の塗膜を加熱処理して硬化被膜を形成してしまうと、溶剤によって基材から硬化被膜を完全に剥離することは容易ではない。その理由は、感光性樹脂組成物に含まれている光硬化性成分の架橋反応により架橋構造が形成されるからである。
【0004】
上記したような不具合が硬化被膜の形成工程中で生じた場合に、不具合のある製品を廃棄してしまうと基材が無駄になってしまい、製品の生産性(歩留まり)が低下する。最近では、付加価値の高い基材を使用した回路配線基板が製造されるようになってきているため、不具合が生じた場合に基材を再利用したいという潜在的な希求がある。
【0005】
そのため、硬化被膜の形成工程中に不具合が生じた場合に、基材を再利用する方法が提案されている。例えば特許文献1には、現像、露光後の塗膜(加熱処理による塗膜硬化前)に不具合が見つかった場合には、塗膜を設けた基材を特定のアルカリ水溶液からなる剥離液に浸漬し、基材から塗膜を剥離することで基材を再利用できることが提案されている。しかしながら、この手法では、露光、現像後の硬化処理を経た硬化塗膜に不具合が発見された場合には、基材から硬化塗膜を剥離することができない。そこで、現像後の塗膜を硬化させた後であっても、基材の再利用を可能とする剥離液も種々の検討がなされている。例えば、特許文献2にはアルカリ金属水酸化物と非プロトン性溶剤(例えば、N−メチルピロリドン)との混合液からなる剥離液を使用することで、現像後に塗膜を硬化させた後であっても、硬化塗膜を基材から剥離できる方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、近年は、基材と硬化被膜との密着性などの硬化被膜特性の向上がより一層求められており、感光性樹脂組成物中にエポキシ系樹脂等の熱硬化性成分を配合したものが使用され始めている。そのため、不具合が見つかった硬化被膜を基材から剥離することが益々困難な状況になってきている。このような状況のもと、例えば特許文献3には、感光性樹脂組成物に特定のポリエステル由来の硬化性成分を配合することにより、アルカ
リ水溶液によっても硬化被膜を基材から剥離できることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−115048号公報
【特許文献2】特開平11−145594号公報
【特許文献3】特開2015−28646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献2において提案されている方法では、硬化被膜を形成した配線基板を剥離液に浸漬して硬化被膜を除去するため、硬化被膜のごく一部に不具合がある場合であっても硬化被膜全体を剥離することになり、材料の無駄が生じる。例えば、不具合のある箇所のみ硬化被膜を除去することができれば、効率的に基材を再利用することができるといえる。
【0009】
また特許文献3において提案されている基材の再利用方法は、感光性樹脂組成物の組成に着目して、特定の成分を配合することによって基材から硬化被膜を剥離し易くしたものである。しかしながら、近年使用され初めている一般的な感光性樹脂組成物(熱硬化性成分を含むソルダーレジストインキ等)によっては組成を変更することが難しく、特許文献3の手法を適用できない場合がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、基材上に硬化被膜を設けた配線基板を製造する際に硬化被膜の一部に不具合が発見された場合に、不具合部分のみ硬化被膜を基材から除去できるとともに、感光性樹脂組成物の組成によらず、その硬化被膜を基材から除去できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に対して、本発明者らは、露光、現像後の硬化処理を経て形成された硬化被膜であっても、硬化被膜に所定の活性エネルギー線を酸素存在下で照射することにより、汎用溶剤によって容易に硬化被膜を基材から剥離できる、との知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
[1] 基材表面に形成された硬化被膜を備えた配線基板から硬化被膜の一部または全部を除去して前記基材を再利用する方法であって、
前記硬化被膜は、感光性樹脂組成物の硬化物からなり、
前記硬化被膜の一部または全部に、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種を照射する工程と、
前記硬化被膜が形成された基材を溶剤で洗浄して、活性エネルギー線照射された部分の硬化被膜を前記基材から除去する工程と、
を含む、配線基板用基材の再利用方法。
[2] 前記硬化被膜は、前記基材上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成するか、または感光性樹脂組成物を支持フィルムに塗布、乾燥して形成した樹脂層を有するドライフィルムを、前記基材と前記樹脂層とが接するように前記ドライフィルムを貼り合わせ、次いで、前記乾燥塗膜または前記ドライフィルムの樹脂層を露光、現像して、パターニングすることにより形成される、[1]に記載の方法。
[3] 前記活性エネルギー線は、波長100〜255nmの電離放射線を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記硬化被膜が除去された配線基板を加熱する工程をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記溶剤が非プロトン性極性溶剤である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記感光性樹脂組成物が、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)熱硬化性成分を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記樹脂層の露光、現像の後、かつ、前記硬化被膜への活性エネルギー線照射の前に、加熱および紫外線照射の少なくともいずれかを行う、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記硬化被膜の厚さが1〜1000μmである、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化被膜であっても、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種を硬化被膜に照射することにより、感光性樹脂組成物の組成によらず、その硬化被膜を基材から除去することができる。また、活性エネルギー線の照射を硬化被膜の不具合のある箇所にのみ照射することができるため、配線基板を製造する際に硬化被膜の一部に不具合が発見された場合に、不具合部分のみ硬化被膜を基材から除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による配線基板用基材の再利用方法は、基材表面に形成された硬化被膜を備えた配線基板から硬化被膜の一部または全部を除去して前記基材を再利用する方法であって、(1)前記硬化被膜の一部または全部に、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種を照射する工程と、
(2)前記硬化被膜が形成された基材を溶剤で洗浄して、活性エネルギー線照射された部分の硬化被膜を前記基材から除去する工程と、
を含むものである。
【0015】
本発明においては、基材上に形成された感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化被膜の一部または全部に、上記した特定の活性エネルギー線を照射することによって、活性エネルギー線照射された部分のみ、硬化被膜を溶剤によって容易かつ簡便に除去することができる。すなわち、感光性樹脂組成物中に光重合性モノマー等の架橋成分が含まれていたり、エポキシ樹脂等の熱硬化性成分が含まれている場合であっても、当該感光性樹脂組成物を硬化させた硬化被膜に、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線やC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線を照射することによって、硬化被膜(感光性樹脂組成物の重合物)を構成する高分子鎖のC−C炭素結合が切断され、あるいは活性エネルギー線の照射によって発生した活性酸素により硬化物を構成する高分子鎖のC−C炭素結合が切断される。その結果、切断された炭化水素ラジカルの一部は酸素存在下で酸素と結合し、二酸化炭素等となり気化する。また、炭化水素ラジカルどうしが再結合し低分子化合物が生成する場合もあり、これら低分子化合物の一部は気化する。さらに、高分子鎖中のC−C炭素結合が切断されると分子量が低下するため、硬化被膜自体も脆化する。さらに、硬化被膜中の架橋構造が形成されている高分子鎖であっても、活性エネルギー線の照射や活性酸素によって架橋部分のC−C炭素結合が切断されるため、溶剤に可溶な状態となる。従来技術においては、剥離し易い溶剤を調製するか、あるいは溶剤で剥離し易い硬化被膜が得られる感光性組成物を調製することに着目されていたが、本発明は、従来技術の何れとも異なる全く新しい手法を見出したものである。本発明によれば、感光性樹脂組成物の組成によらず、その硬化被膜を基材から除去することができるとともに、活性エネルギー線の照射を硬化被膜の不具合のある箇所にのみ照射することができるため、配線基板を製造する際に硬化被膜の一部に不具合が発見された場合に、不具合部分のみ硬化被膜を基材から除去できる。以下、本発明による配線基板用基材の再利用方法の各工程について説明する。
【0016】
[配線基板]
本発明は、上記したように、基材表面に形成された硬化被膜を備えた配線基板から硬化被膜の一部または全部を除去して前記基材を再利用する方法を提供するものである。すなわち、硬化被膜を形成する配線基板の製造工程において、硬化被膜の一部に不具合が発見された場合に、当該不具合のある硬化被膜のみを除去する方法を提供する。先ず、基材上に硬化被膜を形成して配線基板について説明する。
【0017】
基材上に硬化被膜を形成して配線基板を作製する工程としては、ソルダーレジスト層を形成したプリント配線板等、塗膜の露光、現像の後に塗膜を硬化させて硬化被膜を形成する方法を制限なく適用することができる。以下、基材上に硬化被膜を形成する一般的な手法を説明する。
【0018】
先ず、基材上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成するか、または感光性樹脂組成物を支持フィルムに塗布、乾燥して形成した樹脂層を有するドライフィルムを、前記基材と前記樹脂層とが接するように前記ドライフィルムを貼り合わせる。次いで、乾燥塗膜またはドライフィルムの樹脂層を露光、現像して、基材上に硬化被膜を形成する。ドライフィルムを用いて硬化被膜を形成する場合、露光の前後のいずれかにおいて樹脂層から支持フィルムを剥離することが好ましい。
【0019】
<基材>
基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他、ウェハ基板、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウェハ板等を挙げることができる。このなかでも、特に銅張積層板が好ましい。
【0020】
また銅張積層板等を基材として用いる場合、基材と硬化被膜との密着性を向上させるため、銅箔の表面を研磨することが好ましい。研磨としてはバフ、スクラブ、ブラシ等の物理研磨、CZ8101等の化学研磨等が挙げられる。なお、研磨後の銅箔表面の算術平均表面粗さ(Ra)は50〜1000nmが好ましい。本発明の方法によれば、このような基材への密着性が増した硬化被膜であっても、溶剤により容易に除去することができる。
【0021】
<感光性樹脂組成物>
感光性樹脂組成物は、露光、現像することによってパターニングされ、基材上に設けられた硬化被膜となるものである。このような感光性樹脂組成物としては、例えば、従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明において好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0022】
本発明においては、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、および(D)熱硬化性成分を含む感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0023】
(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種感光性樹脂を使用できる。感光性樹脂組成物が、(A)カルボキシル基含有樹脂を含むことにより、感光性樹脂組成物に対しアルカリ現像性を付与することができる。特に、分子中に(メタ)アクリロイル基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。(メタ)アクリロイル基は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基およびそれらの混合物を総称する用語で他の類似の表現についても同様である。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0025】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0027】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0028】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0029】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0032】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0034】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0035】
(12)前記(1)〜(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0036】
本発明に使用できる(A)カルボキシル基含有樹脂は、上記列挙したものに限られない。また。上記列挙した(A)カルボキシル基含有樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0037】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000の範囲であり、5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上の(A)カルボキシル基含有樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下の(A)カルボキシル基含有樹脂を用いることにより現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。
【0038】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂および(D)熱硬化性成分の合計量を100質量部としたときに、50〜90質量部であることが好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量を上記範囲内とすることで、塗膜表面の経時による状態変化が適度なものとなり、基材との密着性をより改善することができる。本発明の方法によれば、このような基材への密着性が増した硬化被膜であっても、溶剤により容易に除去することができる。
【0039】
感光性樹脂組成物に含まれる(B)光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。(B)光重合性モノマーとしては、例えば、公知慣用のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような(B)光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0040】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを(B)光重合性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系化合物は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0041】
(B)光重合性モノマーの配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシ含有樹脂100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましく、15〜45質量部であることがより好ましい。(B)光重合性モノマーの配合量を10質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を50質量部以下とすることにより、硬化被膜の解像性を向上させることができる。
【0042】
(B)光重合性モノマーは、特にエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有非感光性樹脂を使用した場合、組成物を光硬化性とするために(B)光重合性モノマーを併用する必要があるため、有効である。
【0043】
感光性樹脂組成物に含まれる(C)光重合開始剤は、上記した(A)カルボキシル基含有樹脂や(B)光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。(C)光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。(C)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(C)光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0045】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、 379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad TPO H、819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N−1919、アデカアークルズ NCI−831、NCI−831E、常州強力電子新材料社製TR−PBG−304などが挙げられる。
【0046】
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0047】
(C)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。1質量部以上の場合、感光性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の被膜特性も良好となる。また、20質量部以下の場合、アウトガスの低減効果が得られ、さらに硬化被膜表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。より好ましくは2〜15質量部である。
【0048】
また、本発明においては、(C)光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、(C)光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、(C)光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
これら(C)光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは感光性樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0050】
感光性樹脂組成物には(D)熱硬化性成分が含まれていることが好ましい。(D)熱硬化性成分を含むことにより、後工程での硬化被膜のバリアー性(例えば、エッチング耐性等)が向上するとともに、解像性と剥離性とを高次元で両立させることができる。(D)熱硬化性成分としては、公知のものをいずれも用いることができる。例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の化合物を使用できる。特に好ましくは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する化合物を使用することができる。これらの熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0052】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD−128、YDF−170、ZX−1059、ST−3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N−730A、N−695、および日本化薬株式会社製のRE−306等が挙げられる。
【0054】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0055】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0056】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0057】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートおよび2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0058】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0059】
(D)熱硬化性成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂の含有するカルボキシル基1.0molあたりに対し、反応する(D)熱硬化性成分の官能基数が0.8〜2.5molが好ましく、より好ましくは1.0〜2.0molである。
【0060】
特に、(D)熱硬化性成分としてエポキシ樹脂を使用する場合は、エポキシ樹脂のエポキシ基は、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1.0molあたり1.0〜2.0molであることが好ましい。1mol以上とすることで、硬化被膜におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。また、上記配合量を2mol以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化被膜の強度等を良好に確保することができる。
【0061】
感光性樹脂組成物には、上記した(D)熱硬化性成分の硬化を促進するための(E)熱硬化触媒を含んでいてもよい。(E)熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0062】
上記した化合物に限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の(E)熱硬化触媒となるもの、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基との反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を(E)熱硬化触媒と併用する。
【0063】
上記した(E)熱硬化触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。(E)熱硬化触媒の配合量は、感光性樹脂組成物の保存安定性や硬化被膜の耐熱性の観点から、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。
【0064】
感光性樹脂組成物には、硬化被膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0065】
上記したフィラーのなかでも、球状シリカを好ましく使用することができる。球状シリカとしては、平均粒子径が1nm〜100nmの球状シリカを用いることが好ましく、より好ましくは、平均粒径が2nm〜50nmである。上記したような平均粒子径を有する球状シリカを配合することによっても、上記した硬化被膜の表面状態Ra1およびRa2を調整することができる。なお、平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製のMicrotrac MT3300EXII)を用いて平均粒子径を求めることができる。
【0066】
また、上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0067】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0068】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0069】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ−インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0070】
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0071】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0072】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0073】
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
【0074】
感光性樹脂組成物中の着色剤の配合量は特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物全体量の0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する成分に応じ適宜変更することができ、例えば、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して30〜300質量部とすることができる。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0079】
<ドライフィルム>
本発明においては、上記感光性樹脂組成物を、支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。ここで本発明における支持フィルムとは、基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するようにラミネートする際には少なくとも硬化性樹脂層に接着しているものをいう。支持フィルムはラミネート後の工程において、硬化性樹脂層から剥離しても良い。ドライフィルム化に際しては、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持フィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0080】
支持フィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を支持フィルムとして使用することもできる。
【0081】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0082】
支持フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm〜150μmとすることができる。
【0083】
支持フィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護(カバー)フィルムを積層することが好ましい。ここで本発明における保護フィルムとは、基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するようにラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。剥離可能な保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、保護フィルムを剥離するときに樹脂層と支持フィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0084】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm〜150μmとすることができる。
【0085】
上記した感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。なお、感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0086】
一方、ドライフィルムを使用する場合には、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するようにドライフィルムを基材上に貼り合わせた後、後述する露光工程の前後のいずれかにおいて支持フィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。なお、保護フィルムを備えたドライフィルムを使用する場合は、保護フィルムをドライフィルムから剥離した後に、基材への貼合を行う。ドライフィルムの基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1〜2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40〜120℃であることが好ましい。
【0087】
基材上に感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成するか、ドライフィルムを用いて樹脂層を形成した後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから支持フィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから支持フィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。
【0088】
さらに、本発明においては、上記した露光、現像の後、かつ、後記する活性エネルギー線の照射前に、現像後の樹脂層に加熱および紫外線照射の少なくともいずれかを行ってもよい。例えば、露光、現像により形成された樹脂層を加熱硬化(100〜220℃)もしくは光照射するか、または加熱硬化および光照射の併用で最終仕上げ硬化(本硬化)することにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化被膜を形成する。本発明の方法によれば、このような基材への密着性が増した硬化被膜であっても、溶剤により容易に除去することができる。
【0089】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10〜1000mJ/cm、好ましくは20〜800mJ/cmの範囲内とすることができる。なお、ここでの活性エネルギー線は、波長の観点から、後記する酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種とは区別され得るものである。なお、酸素存在下とは、雰囲気中の酸素流量が少なくとも0.2sccm以上であることを意味し、一般的には0.5sccm以上である。
【0090】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0091】
形成される硬化被膜の厚さは、配線基板の用途に応じて適宜設定してよいが、1〜1000μmの範囲であることが好ましい。硬化被膜が厚すぎると、後記する硬化被膜の除去に時間を要する場合がある。また硬化被膜が形成されたか否かの確認方法は、以下の方法で確認できる。すなわち、25℃50%RHの環境下で、硬化被膜の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間静置した後に、ウエスをはがし、ウエスの硬化被膜と接触していた面に樹脂層の全部または一部が付着していない状態を「硬化している状態」であると判断する。
【0092】
上記のようにして基材上に形成された硬化被膜は基材と密着している。基材と硬化被膜との密着性の程度は、硬化被膜が設けられる基材の表面状態や感光性樹脂組成物の組成、硬化条件にもよるが、JIS−C−6481の銅張積層版試験方法、ピール強度の測定方法(試験片幅10mm、90°方向、速度50mm/min)に準拠して測定されたピール強度が、3N/cm以上であることが好ましく、5N/cm以上であることがより好ましい。また上限としては、10N/cm以下であることが好ましい。本発明の方法によれば、基材と硬化被膜との密着性が高い場合であっても、溶剤により硬化被膜を容易に除去することができる。
【0093】
[活性エネルギー線の照射工程]
上記のようにして得られた硬化被膜は、場合によっては不具合が発生することがある。例えば、ソルダーレジストインキのような感光性樹脂組成物を基材に塗布する際の印刷不良、露光時の位置ずれ、色わかれ(色むら)、乾燥塗膜のピンホール、異物の混入、マーキングインキの印刷不良等の不具合が発生する場合がある。このような場合においても、本発明の方法によれば、不具合のある箇所のみ硬化被膜を基材から剥離して、基材を再利用することができる。
【0094】
本発明において使用する活性エネルギー線は、酸素存在下において活性酸素を発生し得る活性エネルギー線およびC−C炭素結合を切断し得る活性エネルギー線の少なくともいずれか1種であり、波長100〜255nmの電離放射線を好ましく使用することができる。波長100〜255nmの電離放射線は、酸素存在下で照射されると雰囲気中の酸素分子の一部は活性酸素(オゾンも含む)となる。活性酸素により硬化物を構成する高分子鎖のC−C炭素結合が切断される。その結果、切断された炭化水素ラジカルの一部は酸素と結合し、二酸化炭素等となり気化する。また、炭化水素ラジカルどうしが再結合し低分子化合物が生成する場合もあり、これら低分子化合物の一部は気化する。また、波長100〜255nmの電離放射線は、C−C炭素結合エネルギーよりも高いエネルギーを有する電離放射線であるため、硬化被膜を構成する高分子鎖を切断し、低分子化することができる。その結果、基材上に残存する残渣(気化せずに残存した炭化水素等)を溶剤等によって容易に除去することができる。
【0095】
波長100〜255nmの電離放射線を照射できる装置としては、例えば、UVオゾンクリーナー(UVランプ光源から照射面までの距離が1cm、種類:低圧水銀ランプ(溶融石英)、形状:高密度高出力グリッド型ランプ、紫外線強度:28mW/cm)等の装置が挙げられる。また、電離放射線が紫外線である場合、その強度としては、3〜50mW/cmが好ましい。
【0096】
[硬化被膜の除去工程]
次いで、硬化被膜が形成された基材を溶剤で洗浄して、活性エネルギー線照射された部分の硬化被膜を基材から除去する。基材上の硬化被膜を洗浄する方法としては、浸漬法、噴霧法及び、枚葉方式を用いた方法等によることができる。特に、不具合のある箇所のみ硬化被膜を除去する場合は、噴霧法等が適している。
【0097】
溶剤としては、種々の有機溶剤を使用することができるが、なかでも製造した配線基板への影響を考慮すると、非プロトン性極性溶剤を好適に使用することができる。非プロトン性極性溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルプロピレンウレア、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンなどが挙げられ、これらは1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでもN−メチルピロリドンを好適に使用することができる。
【0098】
基材上面の残渣を溶剤で洗浄した場合であっても、残渣が極微量、基材上に残存する場合もあることから、本発明の方法においては、硬化被膜が除去された配線基板を加熱することが好ましい。加熱温度は80〜200℃の範囲内にあることが好ましく、100〜150℃の範囲内にあることがより好ましい。
【0099】
本発明の方法は、プリント配線板等の電子部品を製造する際に使用され得る。感光性樹脂組成物の組成によらず、その硬化被膜を基材から除去することができるため、付加価値の高い基材を使用している場合等に特に有益である。また、活性エネルギー線の照射を硬化被膜の不具合のある箇所にのみ照射することができるため、配線基板を製造する際に硬化被膜の一部に不具合が発見された場合に、不具合部分のみ硬化被膜を基材から除去でき、生産効率(歩留まり)を改善することができる。
【実施例】
【0100】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0101】
[感光性樹脂組成物に調製]
まず、感光性樹脂組成物の調製を行った。感光性樹脂組成物は、下記のカルボキシル基含有樹脂ワニス1を13部(固形分としての値)、下記のカルボキシル基含有樹脂ワニス2を30部(固形分としての値)、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad TPO H、IGM Resins社製)を4部、光重合性モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A−DCP、新中村工業株式会社製)を11部、熱硬化性成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER 828、三菱ケミカル株式会社製)を27部、および熱硬化触媒としてイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤(キュアゾール 1B2PZ、四国化成株式会社製)を0.3部配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0102】
<カルボキシル基含有樹脂ワニス1>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルフォスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させた。このようにして、固形分酸価88mgKOH/g、固形分71%、重量平均分子量2,000のカルボキシル基含有感光性樹脂の樹脂溶液を得た。これをカルボキシル基含有樹脂ワニス1とする。
【0103】
<カルボキシル基含有樹脂ワニス2>
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γ−ブチロラクトン848.8gとMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)57.5g(0.23モル)、DMBPDI(4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル)59.4g(0.225モル)とTMA(無水トリメリット酸)67.2g(0.35モル)とTMA−H(シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物)29.7g(0.15モル)を仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して80℃に昇温し、この温度で1時間かけて溶解、反応させ、さらに2時間かけて160℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。このようにして、25℃での粘度が7Pa・sの固形分17%で溶液酸価が5.3(KOHmg/g)のカルボキシル基含有アミドイミド樹脂の溶液(樹脂がγ−ブチロラクトンに溶解した樹脂組成物)を得た。なお、樹脂の固形分酸価は31.2(KOHmg/g)、重量平均分子量は34,000であった。これをカルボキシル基含有樹脂ワニス2とする。
【0104】
FR−4銅張積層板(100mm×150mm×0.8mmt、両面銅箔、銅箔の厚みは両面ともに18μm)表面をメック株式会社製のCZ8101により算術平均表面粗さ(Ra)が400nmになるように化学研磨し、基板の化学研磨された表面に、上記のようにして得られた感光性樹脂組成物を、スクリーン印刷により乾燥後の膜厚が20〜25μmになるように全面塗布し、80℃で30分乾燥し、室温まで放冷した。
【0105】
次いで、塗膜に、L/S=100/100、80/80、60/60、40/40、20/20、10/10、7/7、5/5、4/4、3/3、2/2、1/1(単位はいずれもμm)のラインパターンが形成されたフォトマスクを介して、メタルハライドランプを用いて、露光量1,000mJ/cmで波長365nmの紫外線を大気雰囲気下で照射し、その後30℃、1wt%のNaCO水溶液を用いて180秒間の現像を行い、硬化被膜を形成した。硬化被膜が形成されたかは、25℃50%RHの環境下で、硬化被膜の表面に、イソプロピルアルコール(IPA)を含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間静置した後に、ウエスをはがし、ウエスの硬化被膜と接触していた面に樹脂層の全部または一部が付着していない状態であることにより判断した。また、形成した硬化被膜において、JIS−C−6481の銅張積層版試験方法、ピール強度の測定方法(試験片幅10mm、90°方向、速度50mm/min)に準拠して測定されたピール強度が、3N/cm以上10N/cm以下であることを確認した。
【0106】
[実施例1]
上記のようにして得られた硬化被膜が形成された基板を2枚準備した。一方の硬化被膜形成基板については、硬化被膜の形成面の全面に、UVオゾンクリーナー(UVランプ光源から照射面までの距離が1cm、種類:低圧水銀ランプ(溶融石英)、形状:高密度高出力グリッド型ランプ、紫外線強度:28mW/cm)を用いて、25.2J/cmの露光量で波長185nm(10%)+254nm(90%)の活性エネルギー線を酸素存在下(酸素流量が0.5sccmの大気雰囲気下)で照射した。
他方の硬化被膜形成基板については、フォトマスクによりラインパターンが形成された箇所のみに照射されるように遮光マスクを介して、上記と同様の条件にて活性エネルギー線を照射した。
続いて、全面照射した硬化被膜形成基板については、当該基板をN−メチルピロリドン溶剤に浸漬し、55℃で20分間放置した後、溶剤を除去した。また、一部照射した硬化被膜形成基板については、当該基板の活性エネルギー線照射箇所にN−メチルピロリドン溶剤を滴下し、55℃で20分間放置した後、溶剤を除去した。
得られた基板を目視にて確認したところ、いずれの基板においても、活性エネルギー線を照射した箇所の硬化被膜は完全に除去されていた。
【0107】
[比較例1]
低圧水銀ランプによる活性エネルギー線の照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、2枚の硬化被膜形成基板のそれぞれについて、N−メチルピロリドン溶剤を用いて処理を行った。得られた基板を目視にて確認したところ、いずれの基板においても、硬化被膜は基板から剥離しなかった。
【0108】
[比較例2]
低圧水銀ランプによる活性エネルギー線の照射を酸素存在下(大気雰囲気下)から窒素雰囲気下に代えた以外は、実施例1と同様にして、2枚の硬化被膜形成基板のそれぞれについて、N−メチルピロリドン溶剤を用いて処理を行った。得られた基板を目視にて確認したところ、いずれの基板においても、活性エネルギー線を照射した部分の硬化被膜は部分的に基板から剥離したものの、完全には基材から剥離せず、硬化被膜が残存していた。
実施例1ならびに比較例1および2の実験結果から、酸素存在下で活性エネルギー線を照射することによって硬化被膜が効果的に剥離できることがわかる。
【0109】
[比較例3]
低圧水銀ランプから高圧水銀ランプを用いたUVコンベア(株式会社オーク製作所 型式:QRM−2082、紫外線強度:80mW/cm)による活性エネルギー線(主波長365nm)の照射に代えた以外は、実施例1と同様にして、2枚の硬化被膜形成基板のそれぞれについて、N−メチルピロリドン溶剤を用いて処理を行った。得られた基板を目視にて確認したところ、いずれの基板においても、活性エネルギー線を照射した部分の硬化被膜は部分的に基板から剥離したものの、完全には基材から剥離せず、硬化被膜が残存していた。
実施例1および比較例3の実験結果から、高圧水銀ランプを用いた紫外線照射では、活性酸素は発生せず、C−C炭素結合も切断していないことがわかる。