(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アミノ酸復帰突然変異は、W47Y、V71R、G27Y、I48M、V67L、F78Y、S30TおよびQ39Kからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異であり、または
アミノ酸復帰突然変異は、T74K、R72V、M48I、M70L、R38Q、L83F、V68AおよびV79Aからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異である、
請求項8に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
軽鎖FR配列が、Y91F、T22SおよびG72E、ならびにN85Eに脱グリコシル化変異を導入したものからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を有する、
請求項12に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体の重鎖が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含み、ヒト化抗体の軽鎖が、ヒトκ鎖、ヒトλ鎖、またはそれらの変異体に由来する定常領域をさらに含む、
請求項17に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い親和性、高い選択性および高い生物活性を有する抗PD-L1抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記から選ばれるCDR領域配列またはその変異配列のいずれか1つを含む、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
重鎖可変領域HCDR配列は、配列番号10〜12、配列番号16〜18に示され、軽鎖可変領域LCDR配列は、配列番号13〜15、配列番号19〜21に示される;
具体的には以下の通りである:
HCDR1は、NDYWX
1(配列番号10)またはSYWMH(配列番号16)から選ばれ;
HCDR2は、YISYTGSTYYNPSLKS(配列番号11)またはRI X
4PNSG X
5TSYNEKFKN(配列番号17)から選ばれ;
HCDR3は、SGGWLAPFDY(配列番号12)またはGGSSYDYFDY(配列番号18)から選ばれ;
LCDR1は、KSSQSLFYX
2SNQKX
3SLA(配列番号13)またはRASESVSIHGTHLMH(配列番号19)から選ばれ;
LCDR2は、GASTRES(配列番号14)またはAASNLES(配列番号20)から選ばれ;
LCDR3は、QQYYGYPYT(配列番号15)またはQQSFEDPLT(配列番号21)から選ばれ;
X
1は、NまたはTから選ばれ、X
2は、RまたはHから選ばれ、X
3は、NまたはHから選ばれ、X
4は、HまたはGから選ばれ、X
5は、GまたはFから選ばれる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号16、配列番号17および配列番号18からなる群より選ばれる重鎖可変領域HCDR配列またはその変異配列を含む。
【0012】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号19、配列番号20および配列番号21からなる群より選ばれる軽鎖可変領域LCDR配列またはその変異配列を含む。
【0013】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、その抗体軽鎖可変領域が、マウスκ鎖もしくはその変異体に由来する軽鎖FR領域、またはマウスλ鎖もしくはその変異体に由来する軽鎖FR領域をさらに含み;その抗体重鎖可変領域が、マウスIgG1もしくはその変異体に由来する重鎖FR領域、マウスIgG2もしくはその変異体に由来する重鎖FR領域、またはマウスIgG3もしくはその変異体に由来する重鎖FR領域をさらに含む。
【0014】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、そのマウス由来FR領域を含む抗体重鎖可変領域が、配列番号6および8ならびにそれらの変異配列からなる群より選ばれ;そのマウス由来FR領域を含む抗体軽鎖可変領域が、配列番号7および9ならびにそれらの変異配列からなる群より選ばれる。
【0015】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、その抗体軽鎖が、マウスκ鎖もしくはその変異体に由来する軽鎖定常領域、またはマウスλ鎖もしくはその変異体に由来する軽鎖定常領域をさらに含み;その抗体重鎖が、マウスIgG1もしくはその変異体に由来する重鎖定常領域、マウスIgG2もしくはその変異体に由来する重鎖定常領域、またはマウスIgG3もしくはその変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含む。
【0016】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、キメラ抗体である。本明細書で提供される抗PD-L1キメラ抗体またはそのフラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、ヒトIgG2もしくはIgG4、またはアミノ酸変異によってADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性)を持たないIgG1に由来する重鎖定常領域を含む。
【0017】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体またはそのフラグメントである。好ましくは、本明細書で提供されるヒト化抗体は、ヒト化抗体9-2またはヒト化抗体24D5であり、本明細書で提供されるヒト化抗体の重鎖可変領域上の重鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列重鎖に由来する。ここで、ヒト化抗体9-2の重鎖可変領域上の重鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV4-30-4*01とhjh2との組み合わせ配列に由来し、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV4-30-4*01からのFR1、FR2およびFR3ならびにhjh2からのFR4を含む。ヒト化抗体24D5の重鎖可変領域上の重鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-46*01とhjh6.1との組み合わせ配列に由来し、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-46*01からのFR1、FR2およびFR3ならびにhjh6.1からのFR4を含む。より好ましくは、本明細書で提供されるヒト化抗体9-2の重鎖FR配列は、0〜10個のアミノ酸復帰突然変異を有し、好ましくは、W47Y、V71R、G27Y、I48M、V67L、F78Y、S30TおよびQ39Kからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を有し、より好ましくは、W47YおよびV71Rのアミノ酸復帰突然変異を有する。本明細書で提供されるヒト化抗体24D5の重鎖FR配列は、0〜10個のアミノ酸復帰突然変異を有し、好ましくは、T74K、R72V、M48I、M70L、R38Q、L83F、V68AおよびV79Aからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を有する。さらに好ましくは、ヒト化抗体の重鎖可変領域配列は、以下に示される:すなわち、ヒト化抗体9-2の重鎖可変領域配列は、配列番号22またはその変異体で示され、ヒト化抗体24D5の重鎖可変領域配列は、配列番号24またはその変異体で示される。
【0018】
本発明の他の好ましい実施態様において、本発明による抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体またはそのフラグメントである。好ましくは、本明細書で提供されるヒト化抗体は、ヒト化抗体9-2またはヒト化抗体24D5であり、本明細書で提供されるヒト化抗体の軽鎖可変領域上の軽鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列軽鎖に由来する。ここで、ヒト化抗体9-2の軽鎖可変領域上の軽鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV4-1*01とhjk4.1との組み合わせ配列に由来し、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV4-1*01からのFR1、FR2およびFR3ならびにhjk4.1からのFR4を含む。ヒト化抗体24D5の軽鎖可変領域上の軽鎖FR配列は、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV7-3*01とhjh2.1との組み合わせ配列に由来し、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV7-3*01からのFR1、FR2およびFR3ならびにhjk2.1からのFR4を含む。好ましくは、本明細書で提供されるヒト化抗体9-2の軽鎖FR配列は、0〜10個のアミノ酸復帰突然変異を有し、好ましくは、P49S変異から選ばれるアミノ酸復帰突然変異を有する。本明細書で提供されるヒト化抗体24D5の軽鎖FR配列は、0〜10個のアミノ酸復帰突然変異を有し、好ましくは、Y91F、T22SおよびG72E、ならびにN85Eに脱グリコシル化変異を導入したものからなる群より選ばれる1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を有する。さらに好ましくは、本明細書で提供されるヒト化抗体の軽鎖可変領域配列は、以下に示される:すなわち、ヒト化抗体Ab-1の軽鎖可変領域配列は、配列番号23またはその変異体で示され、ヒト化抗体Ab-2の軽鎖可変領域配列は、配列番号25またはその変異体で示される。
【0019】
本発明の他の好ましい実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、そのヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントが、親和性増強設計を受ける。
【0020】
本発明の他の好ましい実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、X
1がTであり、X
2がHであり、X
3がHであり、X
4がGであり、X
5がFである。
【0021】
本発明の他の好ましい実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のようにヒト化抗体可変領域配列を含む:
ヒト化抗体9-2の重鎖可変領域配列は、配列番号26で示され、ヒト化抗体9-2の軽鎖可変領域配列は、配列番号27で示される;
ヒト化抗体24D5の重鎖可変領域配列は、配列番号28で示され、ヒト化抗体24D5の軽鎖可変領域配列は、配列番号29で示される。
【0022】
本発明の他の好ましい実施態様において、本明細書で提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体またはそのフラグメントである。ここで、ヒト化抗体の重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、ヒトIgG2またはIgG4に由来する重鎖定常領域を含み、より好ましくは、F234AおよびL235A変異を伴うIgG4重鎖Fc領域を含む。ヒト化抗体は、ヒトκ鎖、ヒトλ鎖またはそれらの変異体に由来する軽鎖定常領域をさらに含む。
【0023】
本発明の他の好ましい実施態様において、本明細書で提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体9-2またはヒト化抗体24D5である。ここで、ヒト化抗体9-2は、配列番号30で示される重鎖抗体配列および配列番号32で示される軽鎖抗体配列を含み、ヒト化抗体24D5は、配列番号34で示される重鎖抗体配列および配列番号36で示される軽鎖抗体配列を含む。
【0024】
本発明は、さらに、本明細書に記載される抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの治療的有効量、および1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、前記の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするDNA分子を提供する。
本発明は、さらに、前記の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするDNA分子を含む発現ベクターを提供する。
本発明は、さらに、前記の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、細菌、酵母および哺乳類細胞からなる群より選ばれ、好ましくは、哺乳類細胞である。
【0026】
本発明の他の好ましい実施態様において、本明細書に記載される宿主細胞は細菌であり、好ましくは大腸菌(E.coli)である。
本発明の他の好ましい実施態様において、本明細書に記載される宿主細胞は酵母であり、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
本発明の他の好ましい実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが本明細書で提供され、抗原結合フラグメントはFab、Fv、scFvまたはF(ab’)2である。
【0027】
本発明は、さらに、PD-L1介在性の疾患または障害を治療するための薬物の製造における上記の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または、これらと同一のものを含む医薬組成物の使用を提供する。ここで疾患は、好ましくは、がんであり、より好ましくは、PD-Llを発現しているがんであり;がんは、好ましくは、乳がん、肺がん、胃がん、腸がん、腎がん、メラノーマおよび膀胱がんからなる群より選ばれ;最も好ましくは、非小細胞肺がん、メラノーマ、膀胱がんおよび腎がんからなる群より選ばれる。
【0028】
本発明は、さらに、本発明による抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはそれらと同一のものを含む医薬組成物の治療的有効量を、それが必要な患者に投与することを含む、PD-l介在性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供する。ここで疾患は、好ましくは、がんであり、より好ましくは、PD-Llを発現しているがんであり;がんは、好ましくは、乳がん、肺がん、胃がん、腸がん、腎がん、メラノーマおよび膀胱がんからなる群より選ばれ;最も好ましくは、非小細胞肺がん、メラノーマ、膀胱がんおよび腎がんからなる群より選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔用語〕
本発明をより理解しやすくするため、専門用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の場所で具体的に定義される場合を除き、本明細書で使用される他のすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般に理解される意味を持つ。
【0031】
本明細書で用いられるアミノ酸の1文字記号および3文字記号は、J. Biol. Chem, 243, (1968) p.3558に記載されているものである。
【0032】
本明細書では、「抗体」は、2本の同一の重鎖と2本の同一の軽鎖との間でジスルフィド結合により相互に結合されたテトラペプチド鎖構造の免疫グロブリンを指す。異なる免疫グロブリン重鎖定常領域は、異なるアミノ酸組成および順位序列を示し、そのため異なる種類の抗原性を示す。その結果、免疫グロブリンは5つのカテゴリーに分類され、免疫グロブリンアイソタイプ、すなわちIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと呼ばれるが、対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖およびε鎖である。重鎖ヒンジ領域のアミノ酸組成および重鎖ジスルフィド結合の数と位置に従って、同一のアイソタイプのIgは、異なるサブカテゴリーに分類することができる。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類することができる。軽鎖は、異なる定常領域を考慮して、κ鎖またはλ鎖に分類することができる。
【0033】
本発明において、明細書で言及される抗体軽鎖可変領域は、さらに、ヒトまたはマウス由来のκ鎖、λ鎖またはそれらの変異体を含む軽鎖定常領域からなる。
【0034】
本発明において、明細書で言及される抗体重鎖可変領域は、さらに、ヒトまたはマウス由来のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体を含む重鎖定常領域からなる。
【0035】
抗体重鎖および軽鎖のN末端に隣接する約110個のアミノ酸配列は、高度に変化しやすく、可変領域(Fv領域)として知られている。C末端に近い残りの部分のアミノ酸配列は、相対的に安定であり、定常領域として知られている。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と相対的に保存された4つのフレームワーク領域(FR)を備える。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)としても知られている。各軽鎖可変領域(LCVR)および各重鎖可変領域(HCVR)は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の連続した順番で、3つのCDR領域および4つのFR領域からなる。3つの軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を指し、また3つの重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を指す。本明細書において、抗体または抗原結合フラグメントのLCVRおよびHCVR領域におけるCDR領域のアミノ酸残基の数と位置は、周知のKabat番号付け基準に従うか(LCDR1〜3、HCDE2〜3)、またはKabatおよびchothia番号付け基準に従う(HCDR1)。
【0036】
本発明の抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体を含み、好ましくはヒト化抗体である。
【0037】
本発明における「マウス由来抗体」の用語は、この領域の知識と技術に従って調製されるヒトPD-L1に対するモノクローナル抗体を指す。調製中、被験対象にPD-L1抗原を注射した後、所望の配列および機能的特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離した。本発明の好ましい実施態様において、マウス由来抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウスκ鎖もしくはλ鎖またはそれらの変異体に由来する軽鎖定常領域をさらに含み、または、マウスIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含む。
【0038】
「キメラ抗体」の用語は、マウス由来抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合して形成される抗体であり、キメラ抗体は、マウス由来抗体により誘導される免疫反応を軽減することができる。キメラ抗体を確立するため、最初に、特異的マウス由来モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマが樹立される。可変領域遺伝子は、マウスハイブリドーマ細胞からクローン化された後、ヒト抗体の定常領域遺伝子が所望の通りクローン化される。マウス可変領域遺伝子はヒト定常領域遺伝子と連結され、キメラ遺伝子を形成する。次に、キメラ遺伝子はヒトベクターに挿入され、最終的にキメラ抗体分子が真核生物または原核生物工業システムにより発現される。本発明の好ましい実施態様において、抗PD-L1キメラ抗体の軽鎖可変領域は、ヒトκ鎖、λ鎖またはそれらの変異体に由来する軽鎖Fc領域をさらに含む。抗PD-L1キメラ抗体の重鎖可変領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域をさらに含む。ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4またはそれらの変異体に由来する重鎖定常領域から選ばれ、好ましくは、ヒトIgG2もしくはIgG4、またはアミノ酸変異によってADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性)を持たないIgG4に由来する重鎖定常領域を含む。
【0039】
「ヒト化抗体」の用語は、CDR移植抗体としても知られるが、マウスCDR配列をヒト抗体の可変領域フレームワーク、すなわち、異なる種類のヒト生殖細胞系列抗体フレームワークの配列中に移植することにより作成された抗体を指す。ヒト化抗体は、マウスタンパク質成分を多量に保有するキメラ抗体により誘導される、不都合なほどの強い抗体反応を克服する。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を取り扱う公共DNAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列配列データベースである「VBase」(ウェブwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで入手可能)およびKabat, EAら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版で見いだすことができる。免疫原性が低下することにより引き起こされる活性低下を避けるため、ヒト抗体の可変領域フレーム配列は、最小限の復帰突然変異を行うか、または、活性を維持するための変異を繰り返す。本発明のヒト化抗体は、CDR親和性がファージディスプレイを用いてさらに成熟したヒト化抗体も含む。
【0040】
本明細書で用いられる「抗原結合フラグメント」は、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびヒトPD-L1と結合するFvフラグメント、scFvフラグメントを指し、配列番号10〜21からなる群より選ばれる、本発明で記載される抗体の1つ以上のCDR領域を含む。Fvフラグメントは、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および定常領域を持たないすべての抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。一般に、Fv抗体は、VHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。また、異なるリンカーが、2つの抗体の可変領域を連結するのに用いられ、単鎖抗体または単鎖Fv (scFv)と名付けられたポリペプチドを形成する。本明細書では、「PD-L1と結合する」という用語は、ヒトPD-L1と相互作用する能力があることを意味する。本明細書では、本発明の「抗原結合部位」は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントにより認識される、抗原上の不連続の3次元部位を指す。
【0041】
本明細書では、「ADCC」、すなわち抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性の用語は、抗体のFcセグメントを認識することにより、抗体に覆われている標的細胞を直接殺傷するFc受容体を発現している細胞を指す。抗体のADCCエフェクター機能は、IgGのFcセグメントを修飾することにより、減少または除去することができる。修飾とは、IgG1におけるN297A、L234A、L235A、IgG2/4キメラまたはIgG4におけるL234A/E235A変異から選ばれる変異等の、抗体重鎖定常領域における変異を指す。
【0042】
本明細書では、本発明において記載される融合タンパク質は、組換えDNA技術によって2つの遺伝子を共発現することにより得られるタンパク質産物である。組換えPD-L1細胞外ドメインFc融合タンパク質は、組換えDNA技術によって、PD-L1細胞外ドメインとヒト抗体Fcフラグメントとを共発現することにより得られる。PD-L1細胞外ドメインは、細胞膜外側のPD-L1部分を指し、その配列は下記の配列番号4の下線を施した領域である。
【0043】
抗体および抗原結合フラグメントの産生方法および精製方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Antibody Experimental Technology Guide of Cold Spring Harbor、第5〜8および15章で見い出すことができる。例えば、当技術分野で周知の従来法を用いて、マウスをヒトPD-L1またはそのフラグメントで免疫した後、得られた抗体を復元し、精製し、そして配列決定することができる。抗原結合フラグメントは、従来法により調製することができる。本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、遺伝子操作し、1つ以上のヒト・フレームワーク領域(FR)を非ヒト由来CDRに導入される。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ウェブサイトhttp://imgt.cines.frまたはThe Immunoglobulin FactsBook、2001ISBN012441351を介して、ImMunoGeneTics(IMGT)から入手できる遺伝子データベースおよびMOEソフトウェアから、ヒト抗体可変領域を整列させることにより得ることができる。
【0044】
本発明の設計された抗体または抗原結合フラグメントは、従来法を用いて調製し、精製することができる。例えば、重鎖(配列番号30)および軽鎖(配列番号32)をコードするcDNA配列は、クローン化し、GS発現ベクターに組み換えることができる。次に、組換え免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞に安定的に遺伝子導入することができる。より推奨される方法は、当技術分野で周知であり、哺乳類発現系は、通常は、Fc領域の高度に保存されたN末端でグリコシル化された抗体をもたらす。安定クローンは、ヒトPD-L1に特異的に結合する抗体の発現を手段として得ることができる。陽性クローンは、バイオリアクターによる抗体産生のために、無血清培養液で増やすことができる。抗体が培養液中に分泌されるが、この培養液は、従来法により精製することができる。例えば、培養液は、適合する緩衝液で平衡化されたプロテインAまたはGセファロースFFカラムに簡便に添加することができる。カラムは、非特異的に結合する成分を除くため洗浄する。結合した抗体はpH勾配により溶出し、抗体フラグメントをSDS-PAGEにより検出した後、プールする。抗体は、一般的な方法によりろ過し、濃縮する。可溶性の凝集体および多量体は、分子ふるいまたはイオン交換を含む一般的な方法により、効率的に除去することができる。得られた産物は、例えば−70℃で直ちに凍結するか、または凍結乾燥してもよい。
【0045】
動物、ヒト、実験対象者、細胞、組織、臓器または体液に対して適用される場合、「投与」および「処置」は、外因的な医薬品、治療薬または組成物を、動物、ヒト、被験者、細胞、組織、臓器または体液と接触させることを指す。「投与」および「処置」は、例えば、治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法および実験方法を指す。細胞の処置は、試薬を細胞と接触させること、および試薬を液体と接触させることを含み、液体は、細胞と接触している。また、「投与」および「処置」は、インビトロおよびエクスビボ処置をも意味する。例えば、試薬、診断薬、結合化合物または他の細胞による細胞の処置である。ヒト、動物または研究対象者に適用される場合、「処置」は、研究および診断応用のための治療的処置または予防的測定を指す。
【0046】
「治療する」は、本発明の結合化合物のいずれかを含む組成物などの治療薬を、薬剤が既知の治療活性を有する1つ以上の疾患症状を有する患者に、内服的にまたは外部から投与することを意味する。通常は、薬剤は、治療される患者または集団において、測定可能な程度に疾患症状の軽減を誘導するか、または進行を抑制するかにより、1つ以上の疾患症状を軽減するのに有効な量を投与する。ある特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療薬の量(「治療的有効量」とも呼ばれる)は、疾患状態、年齢、患者の体重、また患者において所望の反応を引き出す薬物の能力などの要因に応じて変化する。疾患症状が軽減されたかどうかは、医師または他の熟練したヘルスケア提供者により、症状の重症度または進行状況を評価するために通常用いられる臨床的測定により評価することができる。本発明の一実施態様(例えば、治療方法または製造品目)が、対象となる疾患症状の軽減においてすべての患者に有効ではないとしても、スチューデントt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーのU検定、クラスカルウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タプストラ検定およびウィルコクソン検定等の当技術で周知の統計検定によって判定される場合、統計学的に有意な数の患者において、対象の標的疾患症状を軽減する。
【0047】
「保存的修飾」または「保存的置換」は、タンパク質において、アミノ酸を類似した特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格の高次構造および強剛性など)を有する他のアミノ酸と置換することを指す。かかる変更は、タンパク質の生物活性を変化させることなく、頻繁に行うことができる。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸の置換は、実質的には生物活性を変化させないことを認識する(例えば、Watsonら、(1987) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p.224 (4.sup.th Ed.)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似するアミノ酸の置換は、生物活性を破壊する可能性は低い。
【0048】
「有効量」は、医学的状態の症状や徴候を回復または防止するのに十分な量を含む。有効量は、診断を可能にする、または容易にするのに十分な量をも意味する。特定の患者または被験動物に対する有効量は、治療される疾患、患者の全体的な健康、投与経路および投与量、ならびに副作用の重症度などの要因に応じて変動する。有効量は、最大投与量または著しい副作用や毒性作用を避けるための投与計画であってもよい。
【0049】
「外因性」は、文脈に応じて、生物体、細胞または人体の外部で産生される物質を指す。「内因性」は、文脈に応じて、細胞、生物体または人体の内部で産生される物質を指す。
【0050】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド間の配列類似性を指す。比較する2つの配列の両方の位置が、同一の塩基またはアミノ酸単量体サブユニットにより占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンにより占められた場合、該分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性のパーセントは、2つの配列により共有される整合または相同する位置の数を、比較される位置の数により除算した後、100を乗算した関数である。例えば、配列が最適に整列されている場合に、2つの配列における10個の位置のうち6個が整合または相同するとすれば、2つの配列は60%相同である。通常、2つの配列が整列されている場合、比較は最大のパーセント相同性を与える。
【0051】
本明細書では、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」の語句は区別しないで使用され、すべての係る呼称は、子孫を含む。従って、「形質転換体」および「形質転換細胞」の単語は、それらに由来する初代患者細胞および細胞培養を含み、継代数を考慮しない。すべての子孫が、計画的または偶発性の変異に起因して、DNA量が正確に同一というわけではないということも理解される。元々形質転換された細胞において、選別したものとして同一の機能または生物活性を有する変異子孫が含まれる。区別される呼称が意図される場合は、文脈から明確になる。
【0052】
本明細書では、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、微量の核酸、RNAおよび/またはDNAの特定の部分を増幅する方法または技術を指し、例えば、米国特許第4,683,195号明細書に記載されている。通常、対象領域の末端またはそれを越えた配列情報が得られることが必要であり、そこからオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。これらのプライマーは、増幅すべき鋳型の対応する鎖に、配列が同一または類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と同一である。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞性RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などを増幅するために使用される。一般に、Mullisら、1987、Cold Spring Harbor Symp. Ouant. Biol. 51:263;Erlich編集、1989、PCR TECHNOLOGY (Stockton Press, N.Y.) が参照される。本明細書では、PCRは、プライマーとして既知の核酸および核酸ポリメラーゼの使用を含み、核酸の特定の部分を増幅または産生する、核酸の試験サンプルを増幅する核酸ポリメラーゼ反応法のひとつの、しかしながら唯一の例として見なされる。
【0053】
「任意の」または「任意に」は、次に起きる現象または状況が発生する可能性があるが、必ずしも発生するわけではないことを意味し、この記載は、現象または状況が発生する、または発生しない実例を含む。例えば、「任意に、1-3抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列を有する抗体重鎖可変領域が存在するが、必ずしも存在するわけではないことを意味する。
【0054】
「医薬組成物」は、本発明による1種以上の化合物またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを、他の化学成分および生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの付加的成分と共に含む混合物を指す。医薬組成物は、生物体への投与を促進し、有効成分の吸収を容易にし、それによって生物学的効果を発揮することを目的とする。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を、実施例を参照してさらに説明する。しかしながら、本発明の範囲は、実施例に限定されない。本発明の実施例または試験例において、具体的な条件が記載されていない場合、実験は、通常、Antibody Technology Laboratory Manual and Molecular Cloning Manual of Cold Spring Harborに記載されている従来の条件に従って、または材料もしくは製品の製造者により提案された条件に従って実施される。試薬の供給源が具体的に示されていない場合、該試薬は、市販の従来試薬である。
【実施例1】
【0056】
〔PD-L1抗原および検出タンパク質の調製〕
タンパク質の設計と発現
Sino Biological Inc.からの全長ヒトPD-L1遺伝子(UniProt Programmed Cell Death1 Ligand1(PD-L1)アイソフォーム1(配列番号1)(HG10084-M))を、本発明のPD-L1に対する鋳型として使用し、本発明の抗原および検出タンパク質をコードする遺伝子配列を得た。任意に、抗体重鎖Fcフラグメント(例えば、ヒトIgG1)を組み換え、pTT5ベクター(Biovector、カタログ番号102762)またはpTargeTベクター(promega、A1410)にそれぞれクローン化し、293F細胞(Invitrogen、R79007)に一過性に発現させ、またはCHO-S細胞(Invitrogen、k9000-20)に安定的に発現させ、精製して、本発明の抗原および検出タンパク質を得た。ヒトPD-1遺伝子は、ORIGENEから購入した(番号SC117011、NCBI参照配列:NM_005018.1)。
【0057】
1.ヒトPD-L1全長アミノ酸配列
MRIFAVFIFM TYWHLLNAFT VTVPKDLYVV EYGSNMTIEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EEDLKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDPVTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TTNSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEENH TAELVIPELP LAHPPNERTH LVILGAILLC LGVALTFIFR LRKGRMMDVK KCGIQDTNSK KQSDTHLEET
配列番号1
(注記)
二重下線部分はシグナルペプチド(シグナルペプチド:1〜18)を示し;
下線部分は、PD-L1の細胞外ドメイン(細胞外ドメイン:19〜238)を示し、ここで、19〜127はIg-like V-type Domainを示し、133〜225はIg-like C2-type Domainを示し;
点線部分は膜貫通領域(膜貫通領域:239〜259)を示し;
イタリック体部分は細胞質領域(細胞質領域:260〜290)を示す。
【0058】
2.免疫原:His、PADREタグを持つPD-L1:PD-L1(細胞外ドメイン、ECDなし)‐PADRE-His6
FT VTVPKDLYVV EYGSNMTIEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EEDLKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDPVTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TTNSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEENH TAELVIPELP LAHPPNERGS G
AKFVAAWTL KAAAHHHHHH
配列番号2
(注記)
下線部分はPD-L1の細胞外ドメインを示し;
点線部分はPADREタグを示示し;
イタリック体部分はHis6タグを示す。
【0059】
3.FLAGおよびHISタグを持つPD-L1(PD-L1 (ECD)-Flag-His6)が得られ、本発明の抗体の性能試験に用いた。
FT VTVPKDLYVV EYGSNMTIEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EEDLKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDPVTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TTNSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEENH TAELVIPELP LAHPPNERDY KDDDDKHHHH HH
配列番号3
(注記)
下線部分はPD-L1の細胞外ドメインを示し;
点線部分はFlag-Tagを示し;
イタリック体部分はHis6-tagを示す。
【0060】
4.PD-L1 Fc融合タンパク質:PD-L1 (ECD)-Fcは、本発明の免疫抗原または検出試薬として使用した。
VKL-PD-L1 (ECD)-Fc (human IgG1)
FTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号4
(注記)
下線部分はPD-L1の細胞外ドメインを示し;
イタリック体部分はヒトIgG Fcを示す。
【0061】
5.PD-1 Fc融合タンパク質:PD-1 (ECD)-Fcは、本発明の抗体の性能試験に用いた。
PGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号5
(注記)
下線部分はPD-1の細胞外ドメインを示し;
イタリック体部分はhFc(ヒトIgG1)を示す。
【実施例2】
【0062】
〔PD-L1、PD-1組換えタンパク質、ハイブリドーマ抗体および組換え抗体の精製〕
1.HisおよびPADREを持つ組換えタンパク質PD-L1:PD-L1 (ECD)-PADRE-His6(配列番号2)の精製手順
発現細胞を含む上清サンプルを高速遠心分離して混入物を除去し、緩衝液をPBSに交換して、イミダゾールを終濃度5 mMで添加した。ニッケルカラムは、5 mMイミダゾールを含むPBS溶液で平衡化し、カラム体積の2〜5倍量で洗浄した。その後、上清サンプルをNiカラム(GE、17-5318-01)に添加した。カラムは、A280測定値がベースラインに戻るまで、5 mMのイミダゾールを含むPBS溶液で洗浄した。次に、カラムを、10 mMイミダゾールを加えたPBSで洗浄して、非特異的に結合したタンパク質を除去し、溶出液を集めた。標的タンパク質は、300 mMイミダゾールを含むPBS溶液を用いて溶出させ、溶出ピークを集めた。集められた溶出液を濃縮し、クロマトグラフィーゲル・スーパーデックス(Superdex)200(GE)によりさらに精製した。移動相はPBSとした。不適正なピークを除去し、溶出ピークを集めた。得られたタンパク質は、電気泳動、ペプチドマッピング(Agilent、6530 Q-TOF)およびLC-MS(Agilent、6530-TOF)により同定し、誤りのないサンプルを使用のために分取した。HisおよびPADREタグを持つPD-L1タンパク質((PD-L1 (ECD)-PADRE-His6 E(配列番号2))を取得し、本発明の抗体のための免疫源として使用した。
【0063】
2.HisおよびFlagタグを持つ組換えタンパク質PD-L1:PD-L1 (ECD)-Flag-His6(配列番号3)の精製手順
サンプルは、高速遠心分離して混入物を除去し、適当な量まで濃縮した。前述の通り、IMACカラムから溶出されたタンパク質は、0.5×PBSで平衡化したflagアフィニティーカラム(Sigma、A2220)に添加し、カラムは、カラム体積の2〜5倍量で洗浄した。上清サンプルは、混入物を除去した後、カラムに添加した。カラムは、A280測定値がベースラインに低下するまで、0.5×PBSで洗浄した。次に、カラムを0.3 M NaClを含むPBSで洗浄し、不純物のタンパク質を洗い流し、集めた。標的タンパク質は、0.1 M 酢酸(pH 3.5〜4.0)で溶出し、集め、pHを中性に調整した。集めた溶出液を濃縮し、クロマトグラフィーゲル・スーパーデックス(Superdex)200(GE)によりさらに精製した。移動相はPBSとした。不適正なピークを除去し、溶出ピークを集めた。得られたタンパク質は、電気泳動、ペプチドマッピング(Agilent、6530 Q-TOF)およびLC-MS(Agilent、6530-TOF)により同定し、誤りのないサンプルを使用のために分取した。HisおよびFlagタグを持つPD-L1タンパク質(PD-L1 (ECD)-Flag-His6(配列番号3)を取得し、本発明の抗体の性能試験に使用した。
【0064】
3.PD-L1およびPD-1のFc融合タンパク質の精製手順
発現細胞を含む上清サンプルを高速遠心分離して混入物を除去し、適当な量まで濃縮した後、Protein Aカラム(GE、17-5438-01)に添加した。カラムは、A280測定値がベースラインに低下するまで、0.5×PBSで洗浄した。標的タンパク質は、100 mM酢酸ナトリウム(pH 3.0)で溶出させた。標的タンパク質を中和するために、1 M Tris HClを用いた。次に、中和したタンパク質を、PBSで平衡化したゲルクロマトグラフィースーパーデックス(Superdex)200(GE)によりさらに精製した。不適正なピークを除去し、溶出ピークを集めた後、誤りのないサンプルを使用のために分取した。この方法は、PD-L1 (ECD)-Fc(配列番号4)およびPD-1 (ECD)-Fc(配列番号5)の精製に使用した。PD-1 (ECD)-Fcは、本発明の免疫抗原または検出試薬として使用することができ、またPD-1 (ECD)-Fcは、本発明の抗体の性能試験に使用する。
【実施例3】
【0065】
〔抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の調製〕
1.免疫化
抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体を、マウスを免疫することにより製造した。実験用のSJL白色マウス、雌性、6週齢(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.、動物生産許可番号:SCXK (Beijing) 2012-0001)。飼育環境:SPFレベル。
マウスを購入した後、この動物を実験室で、12/12時間の明暗サイクル、温度20〜25℃、湿度40〜60%で1週間飼育した。環境に馴化したマウスを、2種のスキーム(AおよびB)に従って免疫した。各グループは6〜10匹とした。免疫抗原は、HisおよびPADREタグを持つPD-L1(PD-L1 (ECD)-PADRE-His6(配列番号2))であった。
【0066】
スキームAにおいて、フロイントアジュバント(Sigma、ロット番号:F5881/F5506)を乳化に用いた。初回免疫は、フロイント完全アジュバント(CFA)を用いて行い、他の追加免疫は、フロイント不完全アジュバント(IFA)を用いて行った。抗原とアジュバントとの比率は1:1であり、100 μg/マウス(初回免疫)、50 μg/マウス(追加免疫)とした。第0日に、マウスに対して乳化した抗原を100 μg/マウスで腹腔内投与(i.p.)し、その後に、2週間に1回、合計で6〜8週間、免疫化を続けた。
【0067】
スキームBにおいて、別法として交差免疫化を、Titermax(Sigma、ロット番号:T2684)およびAlum(Thremo、ロット番号:77161)を用いて行った。抗原とアジュバント(Titermax)との比率は1:1、抗原とアジュバント(Alum)との比率は3:1であり、10〜20 μg/マウス(初回免疫)、5 μg/マウス(追加免疫)とした。第0日に、マウスに対して乳化した抗原を20/10 μg/マウスで腹腔内投与(i.p.)し、その後に、1週間に1回、免疫化を続けた。TitermaxおよびAlumは、選択的に合計で6〜11週間使用した。免疫化の4週間後、抗原を、背部のしこりおよび腹部の腫脹状態に応じて背部または腹腔内注射により投与した。
【0068】
2.細胞融合
高い血清抗体力価および構築基盤(試験例1に記載されたELISA試験を参照)に役立つ力価を有するマウスを、脾細胞融合のために選抜した。ショック免疫化は、脾細胞融合の72時間までに、10 μg/マウスのPD-L1-Hisをi.p.投与することにより行った。ハイブリドーマ細胞は、最適化されたPEG介在融合手順を用いて、脾臓リンパ細胞をミエローマSp2/0細胞(ATCC(登録商標)、CRL-8287TM)と融合することにより得た。ハイブリドーマ細胞は、HAT完全培地(20%FBS、1×HATおよび1×OPIを含むRPMI-1640培養液)に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレート(1×10
5/150 μL/ウェル)で、37℃、5%CO
2でインキュベートした。融合後第5日に、HAT完全培地を、50 μL/ウェルで細胞に添加した後、5%CO
2および37℃でインキュベートした。融合後7〜8日に、増殖細胞の密度に従って、すべての培養液を、200 μL/ウェルでHT完全培地(20%FBS、1×HTおよび1×OPIを含むRPMI-1640培養液)に交換した後、5%CO
2および37℃でインキュベートした。
【0069】
3.ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
融合後第10〜11日に、増殖細胞の密度に従って、PD-L1結合についてELISAアッセイを行った(試験例1を参照)。ELISAアッセイ(試験例1)で検出された陽性細胞について、PD-L1/PD-1結合の遮断を、ELISA分析(試験例2を参照)により検出した。陽性ウェル中の培養液を交換し、陽性細胞を、細胞密度に応じて24ウェルプレートで増やした。再試験後、24ウェルプレートに移された細胞を、育種保存および初回サブクローニング用とした。初回サブクローンスクリーニング(試験例1を参照)間の陽性細胞は育種保存用であり、2回目のサブクローニングを行った。2回目のサブクローニング(試験例1を参照)間の陽性細胞は、育種保存およびタンパク質発現用とした。PD-L1とPD-1との結合に対する遮断効果(試験例2を参照)を有するハイブリドーマ細胞は、複数の細胞融合により得られた。
【0070】
ハイブリドーマクローン9-2および24D5は、遮断実験および結合実験により取得し、さらに抗体は、腹水法または無血清細胞培養法により調製した後、試験に使用するため、実施例に示された精製手順により精製した。
【0071】
ハイブリドーマクローン9-2のマウス抗体可変領域配列は以下に示される:
>9-2 mVH:ハイブリドーマクローン9-2のマウス抗体重鎖可変領域配列
EVQLQESGPGLAKPSQTLSLTCSVAGYSIT
NDYWNWIRKFPGNKLEYMG
YISYTGSTYYNPSLKSRLSITRDTSKNQYYLQLNSVTAEDTAIYYCAR
SGGWLAPFDYWGRGTTLTVSS
配列番号6
>9-2 mVL:ハイブリドーマクローン9-2のマウス抗体軽鎖可変領域配列
DIVMSQSPSSLVVSVGEKVIMSC
KSSQSLFYRSNQKNSLAWYQQKPGQSPKLLIY
GASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTVTISSVKAEDLAVYYC
QQYYGYPYTFGGGTKLEIK
配列番号7
(注記)
順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体部分はFR配列を示し、また下線部分はCDR配列を示す。
【0072】
ハイブリドーマクローン24D5のマウス抗体可変領域配列は以下に示される:
24D5-VH:ハイブリドーマクローン24D5のマウス抗体重鎖可変領域配列
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFT
SYWMHWVQQRPGQGLEWIG
RIHPNSGGTSYNEKFKNRATLTVDKSSSTAYMQFSSLTSEDSAVYYSAR
GGSSYDYFDYWGQGTTLTVSS
配列番号8
24D5-VL:ハイブリドーマクローン24D5のマウス抗体軽鎖可変領域配列
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISC
RASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIY
AASNLESGVPARFSGSGSETDFTLNIHPVEEEDATTYFC
QQSFEDPLTFGAGTKLELK
配列番号9
(注記)
順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体部分はFR配列を示し、また下線部分はCDR配列を示す。
【0073】
重鎖および軽鎖CDR配列は以下の通りである。
ここで、配列番号10のX
1がNである場合、配列は、配列番号38と名付けられ;
配列番号17のX
4がHであり、配列番号17のX
5がGである場合、配列は、配列番号39と名付けられ;
配列番号13のX
2がRであり、配列番号13のX
3がNである場合、配列は、配列番号40と名付けられる。
【実施例4】
【0074】
〔ヒト抗PD-L1ハイブリドーマモノクローナル抗体のヒト化〕
1.ハイブリドーマクローン9-2に対するヒト化フレームワーク配列の選択
IMGTヒト抗体重鎖および軽鎖可変領域遺伝子データベースおよびMOEソフトウェアを用いて整列した後、9-2および24D5に高い相同性を有する重鎖および軽鎖可変領域遺伝子を鋳型として選択し、この2つのマウス抗体のCDRを、対応するヒト由来鋳型に移植して、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序で可変領域配列を形成した。
【0075】
マウス由来抗体9-2に対するヒト化軽鎖鋳型はIGKV4-1*01およびhjk4.1であり、ヒト化重鎖鋳型はIGHV4-30-4*01およびhjh2であり、ヒト化可変領域の配列は以下の通りである。
>9-2 hVH-CDRグラフト
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSIS
NDYWNWIRQHPGKGLEWIG
YISYTGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAR
SGGWLAPFDYWGRGTLVTVSS
配列番号22
>9-2 hVL CDRグラフト
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC
KSSQSLFYRSNQKNSLAWYQQKPGQPPKLLIY
GASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC
QQYYGYPYTFGGGTKVEIK
配列番号23
(注記)
順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体部分はFR配列を示し、また下線部分はCDR配列を示す。
【0076】
2.ハイブリドーマクローン9-2に対する鋳型および復帰突然変異設計の選択。以下の表1を参照のこと。
【0077】
【表1】
(注記)
例えば、P49Sは、Kabat付番方式に従う49位での、PからSへの復帰突然変異を示す。
「Grafted」は、マウス抗体CDRが、ヒト生殖細胞系列FR配列中に移植されたことを示す。
【0078】
【表2】
(注記)
この表は、種々の変異についての様々な配列組み合わせを示す。例えば、9_2-2は、ヒト化マウス抗体9-2に、2箇所の変異(軽鎖h9_2_VL1および重鎖h9_2-VH.1A)があることなどを示す。
【0079】
3.ハイブリドーマクローン24D5に対するヒト化フレームワークの選択
PD-L1ハイブリドーマモノクローナル抗体24D5の96位にセリンが位置しており、一方で、保存されたシステインが生殖細胞系列遺伝子のFR3に位置している。このことと、22位のシステインから、鎖内ジスルフィド結合が形成される。発明者らは、96位でセリンからシステインへの復帰突然変異を有する24D5キメラ抗体および24D5の他のキメラ抗体を構築した。2つの形式のキメラ抗体の親和性は、ハイブリドーマ抗体の親和性と一致する。24D5の96位での変異は骨格で生じ、設計スキームに影響を与えないため、ヒト化抗体はCDR移植戦略により仕上げた。
【0080】
マウス由来抗体24D5に対するヒト化軽鎖鋳型はIGKV7-3*01およびhjk2.1であり、ヒト化重鎖鋳型はIGHV1-46*01およびhjh6.1であり、ヒト化可変領域の配列は以下の通りである。
>24D5 ヒト化重鎖可変領域VH.1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT
SYWMHWVRQAPGQGLEWMG
RIHPNSGGTSYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR
GGSSYDYFDYWGQGTTVTVSS
配列番号24
>24D5 ヒト化軽鎖可変領域VL.1
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITC
RASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIY
AASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEANDTANYYC
QQSFEDPLTFGQGTKLEIK
配列番号25
(注記)
順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体部分はFR配列を示し、また下線部分はCDR配列を示す。
【0081】
4.ハイブリドーマクローン24D5に対する鋳型および復帰突然変異設計の選択。以下の表3を参照のこと。
【0082】
【表3】
(注記)
例えば、Y91Fは、Kabat付番方式に従う91位での、YからFへの復帰突然変異を示す。
「Grafted」は、マウス抗体CDRが、ヒト生殖細胞系列FR配列中に移植されたことを示す。
【0083】
【表4】
(注記)
この表は、種々の変異についての様々な配列組み合わせを示す。例えば、5は、ヒト化マウス抗体5に、2箇所の変異(重鎖h24D5_VH.1Aおよび軽鎖h24D5_VL.1)があることなどを示す。
【実施例5】
【0084】
〔ヒト化クローンの構築〕
プライマーを設計し、また各ヒト化抗体のVH/VK遺伝子フラグメントをPCRにより構築した後、相同組換えによって発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)中に挿入し、抗体発現ベクター:VH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrの全長を構築した。
【0085】
1.プライマー設計:
オンラインソフトウェアアDNAWorks(バージョン3.2.2)(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて、組換えに必要なVH/VK遺伝子フラグメント:5’-30bpシグナルペプチド+VH/VK+30bp CH1/CL-3’を合成するための複数のプライマーを設計する。プライマー設計の規則:標的遺伝子2と標的遺伝子1との間に2つの異なるaaがある場合、
図1に示されるように、変異部位を含む他のプライマーを設計した。
2.フラグメントスプライシング:
TaKaRa社プライマーSTAR GXLからのDNAポリメラーゼに対する操作説明書に従い、上記で設計されたプライマーを使用して、必要な組換え遺伝子を含むVH/VK遺伝子フラグメントを、二段階PCRにより増幅した。
3.発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/L)フラグメントを有する)の構築および酵素消化:
発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)を設計し、
図2に示されるように、認識する配列が制限酵素部位とは異なるBsmBIなどの特殊な制限エンドヌクレアーゼを用いることにより構築した。BsmBIでベクターを消化し、ゲルは抽出して、使用のために保存した。
4.発現ベクターVH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrの組換え構築:
BsmBI により消化された組換え発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)に必要である遺伝子フラグメントを含むVH/VKを、3:1の比率でDH5Hコンピテント細胞に添加し、氷上0℃で30分間インキュベートし、42℃で90秒間熱ショックを与え、5倍量のLB培養液を加え、37℃で45分間インキュベートし、LB-Ampプレート上にコートし、そして37℃で一晩培養した。単一のクローンを配列決定のために拾い上げ、興味の持てるクローンを取得した。
5.プラスミドを本実施例の設計に従って構築した後、純化タンパク質を実施例2に従って発現させた。得られたタンパク質の親和性は、検出例SPRにより測定した。
6.結果:
9_2-2の親和性をBIACORE(試験例4)により測定した。その親和性はキメラ抗体と類似しており、さらに復帰突然変異が増えると親和性のわずかの増加が観察された。良好な親和性は、抗体24D5のCDRをヒト化鋳型に直接組み込むことにより得られたが、キメラ抗体自体の親和性は、ハイブリドーマ抗体より弱かった。脱グリコシル化のためのN85Eの軽鎖への導入は、産生物の均一性を改善し、親和性には影響を与えなかった。
最終的に、ヒトPD-L1-hisまたはハイブリドーマ抗体への復帰突然変異を有するヒト化変異体の親和性を検査するために、BIACOREを使用した。ヒト化復帰突然変異部位および配列組み合わせは、表5に示されるように選択した。
【0086】
【表5】
【実施例6】
【0087】
〔ヒト化抗PD-L1抗体の親和性増強〕
1.ヒト化9-2-2および24D5ファージミドベクターの構築
ヒト化9-2-2および24D5は、野生型配列(すなわち、親和性増強スクリーニングから得られた変異配列と比較して本来または最初の配列)として、scFv型のファージミドベクター(VH-3 (GGGGS)-VL)中にそれぞれ構築した。オーバーラップPCRを用いて、VH, 3リンカー(GGGGS)およびVLをスプライスした後、NcoIおよびNotI切断部位を用いてファージミドベクター中に連結した。
2.ファージディスプレイライブラリーの構築
変異体ライブラリーを、構築された野生型scFvを鋳型として用い、またコドンに基づくプライマーを用いて構築した。プライマー合成の過程において、変異領域における各コドンは、野生型コドンの50%を、また50%のNNK(逆方向プライマーに対するMNN)を持ち、すべてのCDR領域に導入した。PCRフラグメントは、NcoIおよびNotIを用いて消化し、ファージミドベクター中に連結して、最終的には、E.coli TG1に電気的に形質転換した。コドンに基づく各プライマーは、独立したライブラリーとして確立し、その中で、9-2-2は7ライブラリーに分けられ、24D5は8ライブラリーに分けられた。
3.ライブラリーパニング
ビオチン標識ヒトPD-L1 (ECD) 抗原およびストレプトアビジン磁気ビーズを、液相パニングに対して使用した。ライブラリーの救済によって、スクリーニングで使用された相粒子をまとめた後、スクリーニングの各ラウンドにおいて、抗原濃度をその前ラウンドに対して下げた。3ラウンドのパニング後、9-2-2抗体および24D5抗体の250クローンをそれぞれ拾い上げ、次に、ファージELISAを行って結合活性を検知し、陽性クローンを配列決定した。
4.親和性の検出のための表面プラズモン共鳴法(SPR)
配列決定するクローンに関して配列分析後、非重複配列を、重複性配列の除去後、哺乳類細胞発現のために全長IG(γ1、κ)中に形質転換した。アフィニティー精製後、全長IGを、親和性アッセイ用のBIAcore(登録商標)X-100装置(GE Life Sciences)により測定した。
【0088】
選択された可変領域配列の確認:
>9-2 hVH (T)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSIS
NDYWTWIRQHPGKGLEYIG
YISYTGSTYYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAR
SGGWLAPFDYWGRGTLVTVSS
配列番号26
ここで、X
1がTの場合、CDR1は配列番号10である。
>9-2 hVL (H)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC
KSSQSLFYHSNQKHSLAWYQQKPGQPPKLLIY
GASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC
QQYYGYPYTFGGGTKVEIK
配列番号27
ここで、X
2がTであり、X
3がHである場合、CDR1は配列番号13である。
親和性増強:
>24-D5 hVH (GF)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT
SYWMHWVRQAPGQGLEWMG
RIGPNSGFTSYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR
GGSSYDYFDYWGQGTTVTVSS
配列番号28
ここで、X
4がGであり、X
5がFである場合、CDR2は配列番号17である。
>24-D5 hVL
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITC
RASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIY
AASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYC
QQSFEDPLTFGQGTKLEIK
配列番号29
(注記)
順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体部分はFR配列を示し、また下線部分はCDR配列を示す。二重下線部位は、スクリーニング後、親和性増強により得られた。
【実施例7】
【0089】
〔抗PD-L1ヒトIgG4型の構築と発現〕
PD-L1は活性化T細胞にも発現するため、野生型IgG1定常領域の使用は、ADCCやCDCなどのFc介在性作用を誘導し、活性化T細胞の減少に至る。D265A、N297A、L234A/L235AまたはL234F/L235AなどのIgG1 Fcにおける変異はADCCを低下させ、またP331Sまたは331位付近の変異はCDCを低下させる。IgG2およびIgG2/4 Fcハイブリダイゼーション抗体の変異も、ADCCやCDC効果を低下させる。本明細書においては、IgG4変異体を選択し、ADCCおよびCDCのない抗体を取得した。従って、親和性増強により得られたクローンはIgG4型に変換され、IgG4のコアヒンジ領域は、S228P変異を含む。この変異は、コアヒンジ領域におけるジスルフィド結合の結鎖を強化し、それによって、IgG4 Fabアームの交換を防止し、半分子抗体の形成を大幅に減らす。また、F234AおよびL235Aの変異(mAbs 4: 3, 310-318; 2012年5月/6月)をさらに導入した。IgG4変異抗体のこの型は、CH2ドメインを変え、Fc受容体との相互作用を減らして、ADCC活性の低下効果を実現する。本実施例によれば、純化された9-2 H2L10抗体が発現され、HRP00049と命名された。また、発現された24D5 29H1 GFは、HRP00052と命名された。これらのタンパク質は、試験例においてさらに確認される。
【0090】
IgG4型変異体とヒトPD-L1-hisまたはアカゲザルPD-L1-hisとの親和性試験は、試験例4および表6に示される。
HRP00049:9-2 (H2/L10) IgG4 (AA) (S228P)
重鎖:HRP00049抗体の重鎖配列
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSISNDYWTWIRQHPGKGLEYIGYISYTGSTYYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARSGGWLAPFDYWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号30
【0091】
HRP00049抗体重鎖をコードする遺伝子配列:
CAGGTGCAACTGCAGGAGAGCGGCCCCGGACTCGTGAAACCCTCCCAGACCCTGAGCCTGACCTGTACCGTGAGCGGCGGCAGCATCAGCAACGACTACTGGACTTGGATCAGGCAGCACCCCGGCAAAGGCCTGGAGTACATCGGCTACATCAGCTACACCGGCTCCACCTACTACAACCCCAGCCTGAAGTCCAGGGTGACCATCAGCCGGGACACCAGCAAGAACCAGTTCAGCCTGAAGCTGAGCAGCGTGACCGCTGCCGACACAGCCGTGTACTATTGTGCCAGAAGCGGCGGATGGCTGGCCCCTTTCGACTACTGGGGCAGAGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGCGCTTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCATGCCCAGCACCTGAGGCTGCTGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAATGA
配列番号31
【0092】
軽鎖:HRP00049抗体の軽鎖配列
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFYHSNQKHSLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYGYPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号32
【0093】
HRP00049抗体軽鎖をコードする遺伝子配列:
GACATCGTGATGACCCAGAGCCCTGATAGCCTGGCTGTGAGCCTGGGCGAGAGAGCCACCATCAACTGCAAGAGCAGCCAGAGCCTGTTCTACCATAGCAACCAGAAGCACAGCCTCGCCTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCCAACCCCCCAAGCTGCTGATCTACGGCGCCAGCACAAGAGAGAGCGGAGTGCCCGATAGGTTCAGCGGCAGCGGATCCGGCACCGATTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGGCCGAGGATGTGGCCGTGTACTACTGCCAGCAGTACTACGGCTACCCTTACACCTTCGGCGGCGGCACCAAGGTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTGA
配列番号33
【0094】
HRP00052:24D5 (GF) IgG4 (AA) (S228P)
重鎖:HRP00052抗体の重鎖配列
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRIGPNSGFTSYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
配列番号34
【0095】
HRP00052抗体重鎖をコードする遺伝子配列:
CAGGTGCAACTGGTGCAGAGCGGTGCCGAGGTGAAGAAGCCTGGCGCAAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCCCCTGGACAGGGCCTGGAGTGGATGGGCAGGATCGGGCCCAACAGTGGTTTCACTAGCTACAATGAAAAGTTCAAGAACAGGGTAACCATGACCAGGGACACCTCCACCAGCACAGTGTATATGGAGCTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGTGCCAGAGGCGGCAGCAGCTACGACTACTTCGACTATTGGGGCCAGGGCACCACCGTGACCGTGAGCAGTGCTTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCATGCCCAGCACCTGAGGCTGCTGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAATGA
配列番号35
【0096】
軽鎖:HRP00052抗体の軽鎖配列
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号36
【0097】
HRP00052抗体軽鎖をコードする遺伝子配列:
GACATCGTGCTGACCCAGAGTCCCGCCTCACTTGCCGTGAGCCCCGGTCAGAGGGCCACCATCACCTGTAGGGCCAGCGAGAGCGTGAGCATCCACGGCACCCACCTGATGCACTGGTATCAACAGAAACCCGGCCAGCCCCCCAAACTGCTGATCTACGCCGCCAGCAACCTGGAGAGCGGCGTGCCCGCCAGGTTCAGCGGCTCCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTCACTATCAACCCCGTGGAGGCCGAGGACACCGCCAACTACTACTGCCAGCAGAGCTTCGAGGACCCCCTGACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTGA
配列番号37
(注記)
下線部分は、抗体重鎖もしくは軽鎖の可変領域配列または同一のものをコードするヌクレオチド配列である;無線部分は、抗体定常領域配列およびそれに対応するコードされたヌクレオチド配列である。
【0098】
本発明の能力と利点は、以下に示されるように、生化学試験により検証される。
【0099】
〔PD-L1に対する結合ELISA〕
マイクロタイトレーションプレートを、1 μg/mL(100 μg/ウェル)のPD-L1 (ECD)-Fc(配列番号4)で直接コートし、4℃で一晩インキュベートした。次に、プレートを、150 μL/ウェルの5%スキムミルク(BD、232100)を含むPBSでブロックし、4℃で一晩インキュベートした;プレートは2回洗浄し、細胞上清を50 μL/ウェルで各ウェルに添加した。プレートは、37℃で2時間インキュベートした;プレートを3回洗浄し、KPLミルク(KPL、50-82-01)で1:5000の比率で希釈したペルオキシダーゼ-AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(Jackson、115-035-003)を、50 μL/ウェルで各ウェルに添加した。プレートは、37℃で1時間インキュベートした;プレートを4回洗浄し、TMBを50 μL/ウェルで各ウェルに添加して、プレートを37℃で10分間インキュベートした。反応は、1 M H
2SO
4を50 μL/ウェルで各ウェルに添加することにより停止した;波長450 nmでのOD値を、ELISAマイクロプレートリーダー(BMG Labtech、NOVOStar)で読み取った。
【0100】
〔PD-L1とPD-1との結合に対する結合ELISAアッセイ〕
ビオチン(同仁化学、LK03:3サンプル)およびアビジン(Sigma、S2438-250UG)の希釈は、6%BSA(0.1%ツイーン20を含むPBSで希釈)で行い、PBSはコーティング溶液として使用した;マイクロタイトレーションプレートを、1 μg/mL(100 μg/ウェル)のPD-L1 (ECD)-Fc(配列番号4)で直接コートし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを3回洗浄し、3%BSA(0.1%ツイーン20を含むPBSで希釈)を用いて37℃で2時間ブロックした。プレートを3回洗浄し、細胞上清を50 μL/ウェルで各ウェルに添加した。次に、bio-PD-1-Fc(ビオチン標識PD-1-Fc、配列番号5、2 μg/mL、PD-1-FCは、同仁化学キットであるビオチン標識キット-NH2、LK03:3サンプルの方法に準じて標識した。)を、50 μL/ウェルで各ウェルに添加した。これをボルテックスにより十分に混合し、37℃で1時間インキュベートした;プレートを6回洗浄した後、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼポリマー(S2438-250UG、Sigma、本品は1:400の比率で希釈した。)を50 μL/ウェルで添加し、室温で50分間、シェーカー上でインキュベートした。プレートを6回洗浄した後、TMBを100 μL/ウェルで添加し、37℃で5〜10分間展開させた。次に、反応を、1 M H
2SO
4を100 μL/ウェルで添加することにより停止した。450 nmの吸光度値を、マイクロプレートリーダー(BMG Labtech、NOVOStar)で読み取り、PD-1抗体とリガンドPD-L1との結合を遮断するIC
50値を算出した。PD-L1/PD-1結合における本発明のヒト化抗体の遮断活性は、以下の表6に示される。
同様の一点遮断アッセイは、ハイブリドーマ抗体の選抜においても使用した。
【0101】
〔抗PD-L1抗体によるPD-L1とB7.1との結合の遮断〕
このアッセイは、PD-L1とPD-1との結合に関する抗PD-L1抗体の遮断アッセイ(試験例2)と同類であった。試験例2でのBio-ヒトPD-1 (ECD)-FCを、bio-ヒト-B7.1(ヒトB7.1、Sino Biological、10698-H03H-200)と置き換え、他の手順は同一であった。さらに、発明者らは、PD-L2-Fc(Q9BQ51、細胞外ドメイン(aa20〜aa220))における抗PD-L1抗体の特異的な遮断および抗PD-1抗体結合を同様に検出した。また、被験抗体は、PD-L2とPD-1との結合は遮断しないことを見い出した。
同様の一点遮断アッセイは、ハイブリドーマ抗体の選抜においても使用した。
PD-L1とB7.1との結合およびPD-L2とPD-1との結合に対する本発明のヒト化抗体の遮断活性は、以下の表6に示される。
【0102】
【表6】
(注記)NAは、遮断活性がないことを示す。
【0103】
〔ビアコア(Biacore)アッセイによる抗PD-L1抗体HRP00049およびHRP00052のPD-L1抗原に対する親和性の測定〕
抗ヒト捕捉抗体は、本発明の抗PD-L1抗体を親和性捕捉するために、抗ヒトトラッピングキット(GE、BR-1008-39)使用説明書に記載された方法に従って、CM5バイオチップ(GE、BR-1000-12)に共有結合させた。次に、一連の濃度のヒトPD-L1抗原(Sino biological、10084-H08H-200)をバイオチップ表面に流し、ビアコア装置(GE、BiacoreX100)を用いて、リアルタイムで反応シグナルを検出し、結合解離曲線を得た。最終的に、フィッティングにより親和性値を得た。実験における解離の各サイクルが終了した後、バイオチップを洗浄し、抗ヒト捕獲キット(GE)の再生溶液を用いて再生した。得られたデータは、GEのBIA評価ソフトウェアにより、1:1(ラングミュア)結合モデルを用いて分析した。Ka値(kon)、kd値(koff)およびKD値をアッセイにより決定した。ハイブリドーマ抗体およびヒト化抗体の親和性は、他の実施例において要約した。以下の表7は、ヒトPD-L1抗原(huPD-L1-his、Sino biological、10084-H08H-200)、カニクイザルPD-L1抗原(Cyno PD-L1-his、Sino biological、90251-C08H-100)およびマウスPD-L1抗原(Mouse PD-L1-his、Sino biological、50010-M08H-100)に対する、親和性増強を行った抗体および対照抗体の親和性を示す。
【0105】
〔インビトロ細胞学試験〕
抗体により影響を受ける新鮮ヒト末梢血単核球(PBMC)増殖アッセイを行い、抗PD-L1抗体に関する細胞活性を検出した。
新鮮ヒトPBMC(健康人から無作為に採取した)を2×10
6/mLの密度に調整し、6ウェルプレートに2 mL/ウェルで播種して、5%CO
2、37℃で6時間インキュベートした。懸濁細胞を捨てた後、各ウェルの接着細胞を、100 ng/mLのGM-CSF(顆粒球コロニー刺激生物学的因子、Peprotech、AF-300-03)および100 ng/mLのIL-4(Peprotech、AF-200-04)を含むRPMIl640培養液2 mLと混合した。インキュベーション後2日で、100 ng/mLのGM-CSF および100 ng/mLのIL-4を含むRPMIl640培養液1 mLをさらに添加し、その後細胞を継続して2日間培養した後、100 ng/mLのTNF-α(腫瘍壊死因子-α、Peprotech、AF-300-01A)を各ウェルに添加し、さらに2日間培養して成熟樹状細胞を得た。樹状細胞および同種T細胞を遠心分離し、それぞれ1×10
6/mLおよび1×10
5/mLの濃度で再懸濁し、100 μL/ウェルで96ウェルプレートに分注した。次に、PBSで種々の濃度に連続的に希釈した抗体を、20 μL/ウェルで添加した後、5%CO
2、37℃、インキュベーター中で培養した。その後、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイキットを用いる細胞増殖の検出のために100 μLを採取した。同時に、サイトカインIFN-γ(インターフェロン-γ)の分泌を測定した。
【0106】
HRP00052とHRP00049の両方とも、サイトカインIFN-γの分泌を効果的に刺激することができる。同一の方法は、ヒト化抗体によるPBMC増殖(
図3)に関する刺激およびサイトカインIFN-γの分泌(表8)に関する刺激の検出にも使用した。
図3および表8から、本発明のヒト化抗体は、PBMCの増殖およびサイトカインIFN-γの分泌の刺激において、陽性対照MPDL3280A(アテゾリズマブ(Atezolizumab)、WHO Drug Information、28巻4号、2014年、488頁)より効果的である
【0108】
〔ツベルクリン刺激PBMC増殖に対する抗体の活性〕
ツベルクリン刺激PBMC増殖に対する被験抗体HRP00052およびHRP00049ならびに参照抗体の活性を、インビトロで測定した。
15 mLの新鮮PBMC、約3×10
7を、20 μLのツベルクリン(Shanghai Biyou Biotechnology、カタログ番号97-8800)に添加し、混合物をインキュベーター中で、5%CO
2、37℃で5日間インキュベートした。第6日に、培養した細胞を遠心分離し、5×10
5細胞/mLに調整した密度で、新鮮培養液に再懸濁した。190 μLの再懸濁した細胞を96ウェルプレートに添加し、また、ヒト化抗体HRP00052またはHRP00049を10 μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートの対応するウェルに添加し、10 μLのPBSを対照およびブランク群にそれぞれ添加した。次に、細胞培養プレートを、インキュベーター中で、5%CO
2、37℃でインキュベートし、72時間後に、PBMC増殖(Promega、カタログ番号G7571)およびIFN-γ分泌(Neo Bioscience、カタログ番号EHC102g)を測定した。結果は以下の表9に示される。
【0110】
結果:この実験により、本発明のヒト化抗体は、外因性抗原により予め刺激されたPBMC増殖に対してより強い刺激作用を有し、この特性は、腫瘍治療に適用された場合、予期されない効果を持つことが示される。
【0111】
〔U87MG腫瘍移植マウスにおける腫瘍細胞増殖に対する抗PD-L1抗体HRP00052の抑制効果〕
本試験では、ヒト神経膠芽腫U87MG細胞を、免疫不全マウスに播種した。腫瘍が形成された後、抗CD3抗体により活性化したヒトPBMCを腫瘍組織に注入し、神経膠芽腫U87MG腫瘍を皮下注射したマウスの治療における、抗PD-L1抗体の効果を評価した。
PBMCは、二人の志願者から提供された血液から単離し、培養し、抗CD3抗体(Miltenyi Biotec、130-093-387)により活性化した。U87MG細胞は、SCIDマウス(Vital River 11400700081219)の右肋骨部皮下に播種し、2週間後、腫瘍体積≧40 mm
3となったときに、体重または腫瘍サイズが過大または過少となったマウスを除外した。残りのマウスを、腫瘍体積に従って無作為に群分けした。二人の志願者に由来するPBMCを、抗CD3抗体で刺激した後、1:1の比率で混合し、腫瘍組織に注入した。これと同時に、抗体またはブランクベクター(5%グルコース溶液)の皮下注射を開始した。投与は、第0、7、14および21日に、それぞれ1回、合計で4回行った。
結果を表10に示すが、投与量3 mg/kgの抗PD-L1抗体HRP00052は、ヒト悪性神経膠腫U87MGの皮下腫瘍の増殖を、有意に抑制することが示された。