特許第6983381号(P6983381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6983381カントリーエレベータまたはライスセンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983381
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】カントリーエレベータまたはライスセンタ
(51)【国際特許分類】
   B02B 5/02 20060101AFI20211206BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20211206BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20211206BHJP
【FI】
   B02B5/02 Z
   A23L3/00
   A23L3/40 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-61178(P2018-61178)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-171262(P2019-171262A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一信
(72)【発明者】
【氏名】波光 勉
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−200749(JP,A)
【文献】 特開2005−309902(JP,A)
【文献】 特開2018−014028(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/033877(WO,A1)
【文献】 特開2013−212106(JP,A)
【文献】 特開2012−239539(JP,A)
【文献】 特開昭62−058951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カントリーエレベータまたはライスセンタであって、
穀物を前記カントリーエレベータまたはライスセンタへ受け入れるための荷受設備(21)と、
前記荷受設備(21)よりも後工程に設けられ、前記穀類の外皮を除去するための脱殻機(26)と、
前記脱殻機(26)よりも後工程に設けられ、前記穀物を貯留するための製品タンク(28)と、
前記荷受設備(21)よりも後工程、かつ、前記製品タンク(28)よりも前工程に設けられ、前記穀物を殺菌処理する殺菌装置(30)
を備え
前記荷受設備(21)よりも後工程、かつ、前記脱殻機(26)よりも前工程に設けられ、前記穀物を貯留するためのサイロ(25)を備え
前記殺菌装置(30)は、前記サイロ(25)よりも後工程に設けられており、
前記殺菌装置(30)の処理能力が、前記カントリーエレベータ(10)への平均搬入量に基づいて設定できる、
カントリーエレベータまたはライスセンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のカントリーエレベータまたはライスセンタであって、
前記殺菌装置は、過熱蒸気式殺菌装置である
カントリーエレベータまたはライスセンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物の処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カントリーエレベータまたはライスセンタにおいて、籾摺りを行った後の穀物を、搬出のための袋詰めの直前に殺菌することが知られている(例えば、下記の特許文献1)。これによって、脱ぷ後の穀物に害虫の卵が付着していても、卵がふ化しないようになるので、その後の流通過程において穀物が害虫に汚染されることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−58951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カントリーエレベータまたはライスセンタに穀物が搬入されてから搬出されるまでの間に、穀物に付着する菌の増殖・繁殖が行われるので、増殖・繁殖が最も発達した搬出の直前において殺菌を行っても、殺菌が不完全になる恐れがあった。あるいは、それらの菌を完全に殺菌するために、過剰な能力または性能を有する殺菌装置が必要となる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、カントリーエレベータまたはライスセンタが提供される。このカントリーエレベータまたはライスセンタは、穀物を前記カントリーエレベータまたはライスセンタへ受け入れるための荷受設備と、荷受設備よりも後工程に設けられ、穀類の外皮を除去するための脱殻機と、脱殻機よりも後工程に設けられ、穀物を貯留するための製品タンクと、荷受設備よりも後工程、かつ、製品タンクよりも前工程に設けられ、穀物を殺菌処理する殺菌装置と、を備えている。
【0007】
かかるカントリーエレベータまたはライスセンタによれば、穀物が、製品タンクで貯留される前に殺菌される。このため、製品タンク内で穀物中の菌が増殖・繁殖することを防止できる。換言すれば、製品タンク内で増殖・繁殖する前の量の菌を殺菌することになるので、搬出の直前で(増殖・繁殖が最も発達した段階で)殺菌する場合と比べて、より確実に殺菌することができる。あるいは、殺菌装置の能力または性能が過剰になることを抑制できる。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、カントリーエレベータまたはライスセンタは、荷受設備よりも後工程、かつ、脱殻機よりも前工程に設けられ、穀物を貯留するための貯留設備を備えている。
【0009】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、殺菌装置は、貯留設備よりも前工程に設けられる。かかる形態によれば、カントリーエレベータまたはライスセンタに搬入された穀物を、貯留する前に殺菌処理することができる。したがって、第1の形態の効果を最大限高めることができる。
【0010】
本発明の第4の形態によれば、第2または第3の形態において、殺菌装置は、貯留設備よりも後工程に設けられる。かかる形態によれば、第3の形態と比べて、殺菌装置の処理能力を低減することができる。具体的には、殺菌装置が貯留設備よりも前工程に設けられる場合、殺菌装置の処理能力は、カントリーエレベータまたはライスセンタへの搬入量の変動に対応できるように、当該変動のピーク値に基づいて設定される。一方、第4の形態によれば、当該変動を貯留設備で吸収できるので、殺菌装置の処理能力をカントリーエレベータまたはライスセンタへの平均搬入量に基づいて設定することができる。
【0011】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、殺菌装置は、過熱蒸気式殺菌装置である。かかる形態によれば、高い殺菌効果を得ることができる。しかも、穀物の酸化を抑制できる。
【0012】
本発明の第6の形態によれば、第2の形態において、カントリーエレベータまたはライスセンタは、荷受設備よりも後工程、かつ、貯留設備よりも前工程に設けられ、穀物を乾燥するための乾燥機を備えている。殺菌装置は、過熱蒸気式殺菌装置である。殺菌装置は、乾燥機よりも前工程に設けられる。かかる形態によれば、過熱蒸気式殺菌装置において過熱蒸気で殺菌することによって上昇した穀物の水分を、その後工程に設置された乾燥機で調節することができるので、過熱蒸気式殺菌装置が乾燥設備(過熱蒸気で殺菌した後に水分調整を行う設備)を備えている必要がない。このため、設備構成を簡素化できる。
【0013】
本発明の第7の形態によれば、穀物の処理方法が提供される。この穀物の処理方法は、穀物を受け入れる第1の工程と、第1の工程よりも後工程で、穀類の外皮を除去する第2の工程と、第2の工程よりも後工程で、穀物を貯留する第3の工程と、第1の工程よりも後工程、かつ、第3の工程よりも前工程で、穀物を殺菌処理する第4の工程と、を備えている。かかる穀物の処理方法によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による精米工場のブロック図である。
図2】殺菌装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるカントリーエレベータ10のブロック図であり、カントリーエレベータ10における処理工程の流れも同時に示している。カントリーエレベータ10に搬入される籾は、まず、荷受設備としての荷受ホッパ21によってカントリーエレベータ10へ受け入れられる。そして、受け入れられた籾は、粗選機22で処理される。粗選機22では、回転型スクリーンによって、玄米中に混入する粗ゴミ(例えば、石、ワラ、紙紐、糸くず)が取り除かれる。次いで、籾は計量機23によって計量される。次いで、籾は、乾燥機24によって、貯蔵に適した所定の水分値になるまで乾燥される。乾燥された籾は、サイロ(貯留設備)25に貯留される。
【0016】
次いで、籾は、サイロ25から適宜切り出され、殺菌装置30によって処理される。本実施形態では、殺菌装置30は、過熱蒸気式である。過熱蒸気式殺菌装置を用いることによって、高い殺菌効果が得られる。本明細書中において、「殺菌」には、穀物に付着する細菌等の殺菌の他、穀物に混入する害虫の殺虫や、穀物の表面または内部に産卵された害虫の卵の殺卵が含まれ得る。過熱蒸気式殺菌装置は公知であり、例えば、WO2017/033877に記載の装置を使用することができる。ただし、殺菌装置30は、任意の形式であってもよく、例えば、紫外線方式であってもよい。
【0017】
図2は、殺菌装置30のブロック図である。過熱蒸気式の殺菌装置30は、加温部31と冷却部32と仕上調整部33とを備えている。加温部31は、籾を撹拌しつつ、当該籾に約250℃の過熱蒸気を照射する。冷却部32は、籾に冷却風を供給することによって、籾の冷却・水分調整を行う。仕上調整部33は、籾に冷却風を供給することによって、さらに厳密に冷却・水分調整を行う。
【0018】
この殺菌装置30によれば、籾に付着する細菌(例えば、大腸菌群)や真菌が効果的に殺菌される。また、殺虫・殺卵効果も期待できる。さらに、加熱処理によって加水分解酵素が失活するので、籾、および、籾摺りによって得られる玄米の鮮度低下を抑制できる。しかも、米の糠層についても加水分解酵素が失活するので、カントリーエレベータ10からの搬出後、精米工場での精米によって得られる糠の酸化を抑制できる。その結果、精米工場から油脂会社への糠の輸送を計画的かつ効率的に行うことができるとともに、糠からの搾油率が向上する。あるいは、糠を食用に使用することができるようになる。さらに、加温・加湿によって糠層が軟化するので、カントリーエレベータ10からの搬出後、精米工場において精米を行いやすい。
【0019】
ここで説明を図1に戻す。殺菌処理された籾は、次いで、籾摺機(脱殻機)26によって脱ぷされる。脱ぷによって得られた玄米は、選別機27によって選別処理され、異物等が除去される。選別機27としては、例えば、篩い式選別機、石抜機、流下式選別機、光選別機などが使用され得る。選別処理された玄米は、製品タンク28に貯留される。この貯留された玄米は、適宜切り出され、計量包装機29によって、計量・包装された後、カントリーエレベータ10から搬出される。
【0020】
上述したカントリーエレベータ10によれば、殺菌装置30が製品タンク28と計量包装機29との間に設置される従来のカントリーエレベータと比べて、カントリーエレベータ10の処理工程におけるより上流側で殺菌処理が行われる。このため、当該従来のカントリーエレベータと比べて、菌の増殖・繁殖を早い段階で防止し、より確実に殺菌することができる。あるいは、殺菌装置30の能力または性能が過剰になることを抑制できる。
【0021】
また、殺菌装置30がサイロ25よりも後工程に設置されているので、殺菌装置30の処理能力を大幅に小さくすることができる。具体的には、殺菌装置30がサイロ25よりも前工程に設けられる場合には、殺菌装置30の処理能力は、カントリーエレベータ10への搬入量の変動に対応できるように、当該変動のピーク値に基づいて設定される。一方、殺菌装置30がサイロ25よりも後工程に設置される場合には、当該変動をサイロ25で吸収できるので、殺菌装置30の処理能力を、カントリーエレベータ10への平均搬入量に基づいて設定することができる。
【0022】
殺菌装置30は、図1に示した例に代えて、処理工程における荷受ホッパ21と製品タンク28との間の任意の箇所に設置されてもよい。例えば、殺菌装置30は、サイロ25よりも前工程に設置されてもよい。この場合、カントリーエレベータ10に搬入された玄米が貯留されることなく速やかに殺菌処理されるので、より確実に殺菌する効果を最大限に高めることができる。また、工場内での虫の発生を防止できる。さらに、殺菌装置30は、乾燥機24よりも前工程に設置されてもよい。この場合、殺菌装置30の加温部31で処理された籾の水分調整を乾燥機24で行うことができる。つまり、殺菌装置30の冷却部32や仕上調整部33を省略して、設備構成を簡素化することができる。
【0023】
あるいは、殺菌装置30は、籾摺機26よりも後工程に設置されてもよい。この場合、籾摺機26によって脱ぷされた玄米を、その水分が20〜25%になるように加水処理した後に、過熱蒸気式の殺菌装置30によって殺菌処理すれば、GABA富化効果も期待できる。
【0024】
カントリーエレベータ10は、複数の殺菌装置を備えていてもよい。例えば、殺菌装置30が、計量機23とサイロ25との間と、サイロ25と製品タンク28との間と、の両方に設置されてもよい。この場合、複数の殺菌装置は、互いに異なる方式であってもよい。
【0025】
例えば、上述したカントリーエレベータ10の設備構成は一例であり、上述した各装置の一部に代えて、または、加えて、他の任意の装置が設置されてもよい。また、上述した実施形態は、ライスセンタにも適用可能である。ライスセンタは、周知の通り、カントリーエレベータよりも小規模な穀物調製施設であり、サイロ25を備えていない(あるいは、サイロ25に代えて、小規模な貯留設備を備えている)点が、主にカントリーエレベータと異なっている。
【0026】
カントリーエレベータおよびライスセンタが扱う穀物は、米に限らず、広義の任意の穀物であってもよく、例えば、麦、胡椒、蕎麦、ウコンなどであってもよい。この場合、籾摺機26に代えて、これらの穀物の外皮を除去する脱殻機が設置されてもよい。
【0027】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…カントリーエレベータ
21…荷受ホッパ
22…粗選機
23…計量機
24…乾燥機
25…サイロ
26…籾摺機
27…選別機
28…製品タンク
29…計量包装機
30…殺菌装置
31…加温部
32…冷却部
33…仕上調整部
図1
図2