特許第6983385号(P6983385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KDDI研究所の特許一覧

特許6983385携帯端末、電子決済装置、電子決済システム及び電子決済プロラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983385
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】携帯端末、電子決済装置、電子決済システム及び電子決済プロラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/12 20120101AFI20211206BHJP
   G06Q 20/32 20120101ALI20211206BHJP
【FI】
   G06Q20/12
   G06Q20/32 300
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-190594(P2019-190594)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2021-56980(P2021-56980A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
(72)【発明者】
【氏名】小島 亮一
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中菅 章浩
【審査官】 松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−123224(JP,A)
【文献】 特開2006−209453(JP,A)
【文献】 特開2004−070975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、前記電子決済装置から前記保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知部と、
前記決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実施部と、
前記電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶部と、
前記決済金額以上に至るまでの前記決済可能金額に相当する前記保有機能を制限する機能制限部と、
を備える携帯端末。
【請求項2】
前記機能制限部は、前記保有機能の制限を行った対象機能を識別する識別子を前記決済実施可能金額記憶部に反映させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記決済金額と前記機能制限部が制限した前記保有機能と前記携帯端末を識別する認証情報を前記電子決済装置に通知する精算実施部と、を備え、
前記機能制限部は前記電子決済装置から機能制限の解除通知を受領し、前記保有機能の制限を解除する機能を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記機能制限部は前記保有機能の制限順位を指定する機能を備える、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記機能制限部は前記決済金額を下回らない範囲で制限中の前記保有機能を、制限されていない前記保有機能と交換する機能を備える、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、前記電子決済装置から前記保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知機能と、
前記決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実行機能と、
前記電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶機能と、
前記決済金額以上に至るまでの前記決済可能金額に相当する前記保有機能を制限する機能制限部と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする電子決済プログラム。
【請求項7】
携帯端末から保有機能の情報を受領し、前記保有機能に応じた決済可能金額を算出する決済可能金額算出部と、
前記算出した前記決済可能金額と前記保有機能を紐付けた情報を前記携帯端末に通知する決済可能金額通知部と、
前記携帯端末の電子決済精算方法を認証情報と関連付けて管理する精算方法管理部と、
前記携帯端末の決済金額と前記認証情報を取得し、前記電子決済精算方法に応じた精算処理を行う精算処理部と、
前記精算処理が可能な場合、前記携帯端末に機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示部と、
前記決済可能金額と前記保有機能と前記認証情報を関連付けて記憶する決済可能金額記憶部と、
を備える電子決済装置。
【請求項8】
前記精算処理部は前記携帯端末から前記認証情報と前記機能制限中の前記保有機能の情報を取得し、
前記機能制限解除指示部は、前記精算処理部が行う精算処理により前記決済金額の一部のみ精算可能な場合、前記携帯端末に前記機能制限中の保有機能の内、精算可能金額を超えない範囲で前記決済可能金額に相当する前記保有機能の解除を通知する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子決済装置。
【請求項9】
携帯端末から保有機能の情報を受領し、前記保有機能に応じた決済可能金額を算出する決済可能金額算出機能と、
算出した前記決済可能金額と前記保有機能を紐付けた情報を前記携帯端末に通知する決済可能金額通知機能と、
前記携帯端末の電子決済精算方法を認証情報と関連付けて管理する精算方法管理機能と、
前記携帯端末の決済金額と前記認証情報を取得し、前記電子決済精算方法に応じた精算処理を行う精算処理機能と、
前記精算処理が可能な場合、前記携帯端末に機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示機能と、
前記決済可能金額と前記保有機能と前記認証情報を関連付けて記憶させる決済可能金額記憶機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする電子決済プログラム。
【請求項10】
携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、前記電子決済装置から前記保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知部と、
前記決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実施部と、
前記電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶部と、
前記決済金額以上に至るまでの前記決済可能金額に相当する前記保有機能を制限する機能制限部と、
前記決済金額と前記機能制限部が制限した前記保有機能と前記携帯端末を識別する認証情報を前記電子決済装置に通知する精算実施部と、を備え、
前記機能制限部は前記電子決済装置から機能制限の解除通知を受領し、前記保有機能の制限を解除する機能と、
を備える携帯端末と、
前記携帯端末から前記保有機能の情報を受領し、前記保有機能に応じた前記決済可能金額を算出する決済可能金額算出部と、
前記算出した前記決済可能金額と前記保有機能を紐付けた情報を前記携帯端末に通知する決済可能金額通知部と、
前記携帯端末の電子決済精算方法を前記認証情報と関連付けて管理する精算方法管理部と、
前記携帯端末の前記決済金額と前記認証情報を取得し、前記電子決済精算方法に応じた精算を行う精算処理部と、
前記精算が可能な場合、前記携帯端末に前記機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示部と、
を備える電子決済装置と、
を備える電子決済システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子決済に係り、例えば、店舗での料金支払いにおける電子決済技術に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、店舗での商品購入やサービスの提供に対する支払手段として、紙幣や硬貨等の実物の貨幣を用いずに電子的に決済を行う電子決済と呼ばれる決済手段が普及してきている。この電子決済は、顧客が電子決済に対応した情報端末や専用のカード等を用いて、同様の電子決済に対応した店舗のレジなどで代金の引き落としに係る決済処理を行うことにより実現されている。
例えば、店舗のレジは、顧客の情報端末や専用カード等から、電子決済に必要となる決済先の電子決済提供会社の情報や、顧客の認証情報などの情報を取得する。次に店舗のレジは電子決済提供会社の管理サーバに、顧客の銀行口座情報やクレジットカード情報、入金情報の問合せを行うことで所定の銀行口座や電子マネーの管理口座などから引き落としがなされる。これによりキャッシュレスに決済を行うことできる。(非特許文献1)
【0003】
一方、上記の電子決済の仕組みでは、店舗のレジが電子決済提供会社の管理サーバとの間で顧客の認証情報や決済情報を送受信する必要があるが、災害による停電などで店舗のレジがそれら電子決済に必要となるデータを送受信できない場合には、電子決済が行えないという課題があった。
【0004】
そのため、電子決済提供会社と通信が行えない場合は、一旦、電子決済提供事業者との間では電子決済に関するデータの送受信を行わずに、電子決済を顧客と店舗との間のみで仮決済しておき、その後通信が回復した後に店舗と電子決済事業者との間で決済情報を送受信し、決済を本完了させるという“オフラインモード決済”という仕組みが存在する。(非特許文献2)
【0005】
しかし、上記の方法では、仮決済時に顧客の電子決済の引き落とし口座に関する情報や与信に関する情報を電子決済提供事業者に問合せをすることができないため、本決済時に、顧客の口座に残高が不足していることがある場合や、クレジットカードが支払い停止になっている場合があるなど、貸し倒れが発生するリスクがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】電子決済、[online]、2019年9月19日検索、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%B1%BA%E6%B8%88>
【非特許文献2】オフラインモードでの決済受付、[online]、2019年9月19日検索、インターネット<URL:http://squareup.com/help/jp/ja/article/5095−>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通信インフラが利用できない場合であっても、貸し倒れリスクの低い電子決済を利用することが可能な技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の特徴は、携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、電子決済装置から保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知部と、決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実施部と、電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶部と、決済金額以上に至るまでの決済可能金額に相当する前記保有機能を制限する機能制限部と、を備える携帯端末の提供にある。
【0008】
本発明の第二の特徴は、機能制限部は、保有機能の制限を行った対象機能を識別する識別子を決済実施可能金額記憶部に反映させる、ことを特徴とする携帯端末の提供にある。
【0009】
本発明の第三の特徴は、決済金額と機能制限部が制限した保有機能と携帯端末を識別する認証情報を電子決済装置に通知する精算実施部と、を備え、機能制限部は電子決済装置から機能制限の解除通知を受領し、保有機能の制限を解除する機能を備える、ことを特徴とする携帯端末の提供にある。
【0010】
本発明の第四の特徴は、機能制限部は保有機能の制限順位を指定する機能を備える、ことを特徴とする携帯端末の提供にある。
【0011】
本発明の第五の特徴は、機能制限部は決済金額を下回らない範囲で制限中の保有機能を、制限されていない保有機能と交換する機能を備える、ことを特徴とする携帯端末の提供にある。
【0012】
本発明の第六の特徴は、携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、電子決済装置から保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知機能と、決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実行機能と、電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶機能と、決済金額以上に至るまでの決済可能金額に相当する保有機能を制限する機能制限機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする電子決済プログラムの提供にある。
【0013】
本発明の第七の特徴は、携帯端末から保有機能の情報を受領し、保有機能に応じた決済可能金額を算出する決済可能金額算出部と、算出した決済可能金額と保有機能を紐付けた情報を携帯端末に通知する決済可能金額通知部と、携帯端末の電子決済精算方法を認証情報と関連付けて管理する精算方法管理部と、携帯端末の決済金額と認証情報を取得し、電子決済精算方法に応じた精算処理を行う精算処理部と、精算処理が可能な場合、携帯端末に機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示部と、決済可能金額と保有機能と認証情報を関連付けて記憶する決済可能金額記憶部と、を備える電子決済装置の提供にある。
【0016】
本発明の第の特徴は、精算処理部は携帯端末から認証情報と機能制限中の保有機能の情報を取得し、機能制限解除指示部は、精算処理部が行う精算処理により決済金額の一部のみ精算可能な場合、携帯端末に機能制限中の保有機能の内、精算可能金額を超えない範囲で決済可能金額に相当する保有機能の解除を通知する、ことを特徴とする電子決済装置の提供にある。
【0017】
本発明の第の特徴は、携帯端末から保有機能の情報を受領し、保有機能に応じた決済可能金額を算出する決済可能金額算出機能と、算出した決済可能金額と保有機能を紐付けた情報を携帯端末に通知する決済可能金額通知機能と、携帯端末の電子決済精算方法を認証情報と関連付けて管理する精算方法管理機能と、携帯端末の決済金額と認証情報を取得し、前記電子決済精算方法に応じた精算処理を行う精算処理機能と、精算処理が可能な場合、前記携帯端末に機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示機能と、決済可能金額と前記保有機能と前記認証情報を関連付けて記憶させる決済可能金額記憶機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする電子決済プログラムの提供にある。
【0018】
本発明の第十の特徴は、携帯端末の保有機能の情報を電子決済装置に通知し、電子決済装置から前記保有機能毎の決済可能金額を受領し決済実施可能金額記憶部へ記憶させる保有機能通知部と、決済可能金額を上限として電子決済を行う電子決済実施部と、電子決済による決済金額を保持する決済金額記憶部と、決済金額以上に至るまでの決済可能金額に相当する保有機能を制限する機能制限部と、決済金額と機能制限部が制限した保有機能と携帯端末を識別する認証情報を電子決済装置に通知する精算実施部と、を備え、機能制限部は電子決済装置から機能制限の解除通知を受領し、保有機能の制限を解除する機能と、を備える携帯端末と、携帯端末から前記保有機能の情報を受領し、保有機能に応じた決済可能金額を算出する決済可能金額算出部と、算出した決済可能金額と保有機能を紐付けた情報を携帯端末に通知する決済可能金額通知部と、携帯端末の電子決済精算方法を認証情報と関連付けて管理する精算方法管理部と、携帯端末の決済金額と認証情報を取得し、電子決済精算方法に応じた精算を行う精算処理部と、精算が可能な場合、携帯端末に機能制限の解除を通知する、機能制限解除指示部と、を備える電子決済装置と、を備える電子決済システムの提供にある。
【発明の効果】
本発明によれば、通信インフラが利用できない環境での電子決済であっても、携帯端末の保有機能を制限することで、貸し倒れのリスクを減らすことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電子決済システムの概要図である。
図2】携帯端末の機能構成図である。
図3】電子決済装置の機能構成図である。
図4】店舗端末の機能構成図である。
図5】決済可能金額の算出手順の例を示すシーケンス図である。
図6】店舗での電子決済の実施手順の例を示すシーケンス図である。
図7】携帯端末における精算処理の手順の例を示すシーケンス図である。
図8】店舗端末における精算処理の手順の例を示すシーケンス図である。
図9】保有機能と決済可能金額の関係を示すテーブルである。
図10】保有機能が制限状態であること状態を示すテーブルである。
図11】保有機能と制限順位の関係を示すテーブルである。
図12】制限順位の変更例を示すテーブルである。
図13】保有機能制限中の制限順位変更の例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明における好適な実施の形態について、図1から図10を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
電子決済システムSは、顧客が保持している携帯端末1の保有機能を担保として、その保有機能に相当する金額を顧客がオフラインで電子決済に利用することができるシステムである。
携帯端末1は、保有機能の情報を電子決済装置2に通知し、電子決済システム2は、各保有機能に応じた決済可能金額を算出する。顧客は、その決済可能金額に相当する金額を、店舗端末3が設置している店舗で、オフラインでの電子決済を行うことができる。オフラインでの電子決済を利用すると、決済金額に応じて携帯端末1の保有機能が制限される。顧客が電子決済の決済金額を、電子決済装置2を介して支払いをしない限り保有機能の制限が継続するため、顧客が電子決済の支払いを完了させる動機付けを高めることができる。
これにより、オフラインでの決済であっても貸し倒れが発生するリスクを軽減することができる。
【0021】
(2)実施形態の詳細
図1を参照して、電子決済システム全体の構成概要を説明する。
電子決済システムSは、携帯端末1と、電子決済装置2と、店舗端末3により構成される。
携帯端末1は、顧客がオフラインでの電子決済を行う際に用いる情報端末であり、例えばスマートフォンや、フィーチャーフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータである。(以下の説明では、携帯端末1はスマートフォンを例として扱う。)
電子決済装置2は電子決済提供事業者が、オフラインでの決済を提供するために設置する情報処理装置であり、サーバやメインフレーム、パーソナルコンピュータなどの情報処理が可能な装置である。電子決済装置2は、携帯端末1の保有機能から、顧客がオフラインで決済可能な金額を算出する。また顧客がオフラインで行った決済に基づき、顧客と店舗のそれぞれの間で精算処理を実施する装置である。ここで、図1では、携帯端末1と店舗端末3がそれぞれ1台ずつ記載されているが、電子決済端末2は、複数の携帯端末1と複数の店舗端末3に関する情報を管理し、電子決済処理を実施することができる。
店舗端末3は店舗でのオフライン決済に用いる装置であり、店舗に設置してあるPOS対応レジなどの決済端末である。顧客とオフラインで行った決済情報をレジの内部に保存しておき、電子決済装置2と通信が可能となった時点で、決済情報をもとに精算処理を実施する。
ここで、「決済」とは、携帯端末1と店舗端末3の間のみで実施される売買取引であり、実際に顧客や店舗側への入金処理は行わない状態を示す。また「精算」とは決済の金額について、実際に顧客の口座からの引き落としや、店舗側への入金処理を示すものである。
【0022】
以下、図1を参照して、電子決済システムSによる電子決済処理の流れを説明する。
図1の(1)は、オフラインでの電子決済を行うための準備処理である。顧客は、電子決済装置2へ、携帯端末1が保有する保有機能の情報と、携帯電話1を識別する認証情報を送信する。「保有機能」とは例えば、通話機能や、メールやインターネット接続等の通信機能、カメラ機能などである。
電子決済装置2は、携帯端末1から受信した保有機能に応じて、オフラインでの決済可能金額を算出する。決済可能金額は、保有機能の重要度に応じて保有機能ごとに定められる。例えば、通信機能など、スマートフォンの主要な機能については、金額を高めに設定する。一方、カメラ機能など、補助的な機能については算出額を低めに設定する。これにより、機能制限後に顧客が支払いを行う動機を高めることができる。また、電子決済装置2は認証情報をもとに携帯端末1を特定する。これにより、オフラインでの電子決済を利用できる顧客か否かの特定をすることができる。なお、顧客の認証を行わず、保有機能の算出のみを行ってもよい。
電子決済装置2は、保有機能と算出した決済可能金額とを関連付けて携帯端末1に送信する。携帯端末1は受信した保有機能と決済可能金額とを関連付けて保存する。
【0023】
図1の(2)は、オフラインでの決済処理である。ここでは、携帯端末1と店舗端末3の存在するエリアAが停電などでオンライン決済を利用できない場合に、顧客が店舗端末3の設置された商店でオフライン決済をする場合を例に説明を行う。なお、携帯端末1または店舗端末3の何れかがオンライン決済を利用できない場合に対しても本システムを活用することができる。
はじめに、店舗端末3は、顧客が購入する商品の決済金額を携帯端末1に送信する。携帯端末1は、店舗端末から通知された決済金額が、図1の(1)の処理で電子決済端末2から通知された決済可能金額の合計金額内であるかを判定する。決済金額が決済可能金額を超過している場合は、決済不可である通知を店舗端末3へ送信し処理を終了する。一方、決済可能金額内であれば、店舗端末3へ決済可能である通知と携帯端末1の認証情報を送信する。店舗端末3は、送信された認証情報と決済金額を紐付けて保存し、決済処理を完了する。携帯端末1は、決済金額を保存し、決済金額に応じた保有機能の制限を行う。保有機能の制限は、保有機能に紐づけられた決済可能金額の合計が、決済金額以上に至るまで行われる。
【0024】
図1の(3)はオフラインでの決済実施後、携帯端末1と電子決済端末2との間の通信が回復した後に実施する携帯端末1と電子決済端末2の精算処理である。
携帯端末1は、電子決済装置2と通信が行える状態になると、電子決済端末2と精算処理を実施する。携帯端末1はオフライン決済の決済金額と制限した保有機能、認証情報を電子決済装置2に送信する。
電子決済装置2は受信した認証情報から、携帯電話1に紐づけられた精算方法を取得する。この精算方法は、顧客の銀行口座や、クレジットカード番号、請求書の郵送先など、料金の支払いが行える支払手段が登録されていればよい。精算方法は電子決済装置2に事前に登録を行う。
電子決済装置2は、取得した精算方法に従って、顧客が利用したオフライン決済の決済金額の精算処理を実施する。電子決済装置2は引き落とし口座の残額不足など、精算処理が不可であれば、その旨を携帯端末1に通知し、精算処理を終了する。携帯端末1は精算処理が不可の通知を受けると、保有機能の制限を継続する。精算処理が可能であれば、電子決済装置2は携帯端末1に機能制限解除を通知する。携帯端末1は機能制限解除の通知を受けると、制限していた保有機能の制限を解除する。
【0025】
図1の(4)は、オフラインでの決済実施後、電子決済端末2と店舗端末3との間で通信が回復した後に実施する店舗端末3と電子決済端末2の間での精算処理である。
店舗端末3は、電子決済装置2と通信が行える状態になると、電子決済端末2と精算処理を実施する。店舗端末3は、顧客と行ったオフライン決済の決済金額と携帯端末1の認証情報とを電子決済装置2に送信する。
電子決済装置1は、送信された決済金額に基づき精算処理を実施する。精算処理は、あらかじめ登録された店舗端末3の銀行口座などに振り込むが、これに限らず所定の精算方法により店舗端末3側に決済金額の入金処理を行ってもよい。
また、電子決済装置2は、顧客側の精算が完了したか否かに関わらず、店舗端末3側の精算処理を進めてもよい。顧客側は、携帯端末1が機能制限されており、機能制限を解除するために決済金額の支払いを行う確度が高いため、顧客側での精算完了を待たずに店舗側への支払いを行った場合でも、貸し倒れが発生するリスクが少ないためである。
【0026】
図2から4を用いて、電子決済システムSの機能構成を説明する。
図2は、携帯端末1の機能構成図である。図2に示すとおり、携帯端末1は、通信部11、制御部12、記憶部13を備えている。
【0027】
通信部11は、データの送受信を行う装置であり、制御部12は通信部11を介して電子決済端末2、店舗端末3との間で電子決済を行う上で必要な情報の送受信を行う。具体的には通信部11は、インターネット等のネットワークを介して電子決済端末2とデータを送受信するための通信インターフェースである。保有機能に関する決済可能金額の情報、決済実施後の精算処理に関する情報、機能制限解除に関するデータの送受信を行う。
また、通信部11は、非接触通信やBluetooth(登録商標)の様な近距離通信用モジュールなどの通信インターフェースも備える。これにより、店舗端末3との間で電子決済に関する決済情報の送受信を行う。
【0028】
制御部12は、例えばCPUであり、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、保有機能通知部121、電子決済実施部122、精算実施部123、機能制限部124として機能する。制御部12の各部の動作の詳細については後述する。
【0029】
記憶部13は、ROMやRAM、ハードディスク等の外部記憶媒体も含む記憶媒体である。外部記憶媒体にはICカード等の半導体記憶媒体、CD−ROM等の光学的に情報が読み取られる光学記憶媒体等も含まれる。記憶部13は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部13は、決済実施可能金額記憶部131、決済金額記憶部132、認証情報記憶部133に関するデータを記憶している。
決済実施可能金額記憶部131は、電子決済装置2から受領した各保有機能ごとの決済可能金額や、機能制限状態を示すフラグ等を記憶する。
決済金額記憶部132は、携帯端末1が店舗端末3との間で実施した電子決済の決済金額を保持する。
認証情報記憶部133は、携帯端末1を識別するための認証情報が記憶されており、認証情報としては例えば、携帯電話番号やIMSIなどの情報であるが、これに限られず携帯端末1を一意に識別することができる情報であればよい。
【0030】
図3は、電子決済装置2の機能構成図である。図3に示すとおり、電子決済装置2は、通信部21、制御部22、記憶部23を備えている。
【0031】
通信部21は、データの送受信を行う装置であり、制御部22は、通信部21を介して携帯端末1、店舗端末3と電子決済を行う上で必要な情報の送受信を行う。具体的には、通信部21は、インターネット等のネットワークを介して携帯端末1及び店舗端末3それぞれとの間でデータを送受信するための通信インターフェースである。携帯端末1との間では、保有機能に関する決済可能金額の情報、決済実施後の精算処理に関する情報、機能制限解除に関するデータの送受信を行う。また、店舗端末3との間では、決済実施後の精算処理に関する情報等の送受信を行う。
【0032】
制御部22は、例えばCPUであり、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することにより、決済可能金額算出部221、決済可能金額通知部222、精算方法管理部223、精算処理部224、機能制限解除指示部225として機能する。制御部22の各部の動作の詳細については後述する。
【0033】
記憶部23は、ROMやRAM、ハードディスク等の外部記憶媒体も含む記憶媒体である。外部記憶媒体には、ICカード等の半導体記憶媒体、CD−ROM等の光学的に情報が読み取られる光学記憶媒体等も含まれる。記憶部23は、制御部22が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部23は、決済可能金額記憶部231、精算方法記憶部232、制限機能記憶部233、認証情報記憶部234、店舗端末情報記憶部235、決済金額記憶部236に関するデータを記憶している。
決済可能金額記憶部231は、電子決済装置2が算出した各保有機能ごとの決済可能金額を各保有機能と紐付けて記憶する。
精算方法記憶部232は、携帯端末1の精算方法を認証情報と紐付けて記憶する。
制限機能記憶部233は、携帯端末1で制限されている機能(以下「制限機能」という)を記憶する。
認証情報記憶部234は、携帯端末1の認証情報を記憶している。携帯端末1から送信される認証情報と照合し、各処理の対象を特定する際に利用する。
店舗端末情報記憶部235は、店舗端末3に関する情報を記憶する。店舗端末3との間での精算処理の際に用いる精算方法などが記憶される。また、店舗端末3の識別情報も記憶される。店舗端末情報記憶部235に記憶されるこれらの情報は、オフライン決済の利用申し込み時などに登録される。
決済金額記憶部236は、携帯端末1と店舗端末3のそれぞれとの間で行った精算処理の金額の情報を、認証情報または識別情報と紐付けて管理する。これにより、携帯端末1と店舗端末3のどちらと精算処理を実施したかを管理することができる。特に店舗端末3との精算処理は、携帯端末1の精算完了を待って実施するなどの手順とすることができる。
【0034】
図4は、店舗端末3の機能構成図である。図4に示すとおり、店舗端末3は、通信部31、制御部32、記憶部33を備えている。
【0035】
通信部31は、データの送受信を行う装置であり、制御部32は、通信部31を介して携帯端末1または電子決済端末2との間で電子決済を行う上で必要な情報の送受信を行う。具体的には、通信部31は、インターネット等のネットワークを介して電子決済装置2とデータを送受信するための通信インターフェースである。決済実施後の精算処理に関する情報等の送受信を行う。
また、通信部31は、非接触通信やBluetooth(登録商標)の様な近距離通信用モジュールなどの通信インターフェースも備える。これにより、携帯端末1との間で電子決済に関する決済情報の送受信を行う。
【0036】
制御部32は、例えばCPUであり、記憶部33に記憶されたプログラムを実行することにより、電子決済実施部321、精算実施部322として機能する。制御部32の各部の動作の詳細については後述する。
【0037】
記憶部33は、ROMやRAM、ハードディスク等の外部記憶媒体も含む記憶媒体であり、外部記憶媒体にはICカード等の半導体記憶媒体、CD−ROM等の光学的に情報が読み取られる光学記憶媒体等も含まれる。記憶部33は、制御部32が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部33は、決済金額記憶部331、識別情報記憶部332に関するデータを記憶している。
決済金額記憶部331は、店舗端末3が携帯端末1と実施した電子決済の決済金額を携帯端末1から送信された認証情報と紐付けて記憶する。
識別情報記憶部332は、店舗端末3を識別するための情報が記憶されている。かかる識別情報は、例えば、店舗ごとに割り振られた番号や、住所情報、IPアドレスの情報など、店舗端末3を一意に識別できる情報であればよい。
【0038】
制御部12の各部の動作の詳細について説明する。
保有機能通知部121は、携帯端末1のオペレーティングシステムの情報や記憶部13に格納されているアプリケーションの情報を参照し、携帯端末1が保有する保有機能を収集する。保有機能とは、例えば、通話機能や、メールやインターネット接続等の通信機能、カメラ機能、アプリ機能などである。また、これらに限られず、携帯端末1が利用可能なショートメッセージやSNSの送信機能のような特定アプリケーションの実行機能など、顧客が携帯端末1で利用し得る各種機能やサービスなども保有機能とすることができる。他にも、携帯端末1が契約している毎月利用可能なデータ通信量の残量を保有機能としたり、通信速度を保有機能としたりすることもできる。例えば、通信速度であれば、通信速度を1Mbpsに制限することを条件に500円の決済可能金額を付与する、等である。収集した保有機能の情報は、電子決済装置2に通知する。
【0039】
保有機能通知部121は、通知した保有機能をもとに電子決済装置2が保有機能ごとに算出した決済可能金額を電子決済装置2から受信し、受信した情報を記憶部13に決済実機可能金額記憶部131に記憶させる。ここで図9は、決済実施可能金額記憶部131として記録されるデータベースの一例である。保有機能のデータベースへの格納は電子決済装置2からの通知順としても良いが、決済可能金額順など、所定の規則に従って並べ替えて格納しても良い。
【0040】
電子決済実施部122は、店舗端末3との間でオフラインでの電子決済を実行する。電子決済実施部122は、店舗端末3から通知された決済金額と決済実施可能金額記憶部131に格納されている決済可能金額の合計とを比較する。決済金額が決済可能金額の合計値より高い場合は、決済不可である通知を行う。一方、決済金額が決済可能金額の合計値以下の場合は決済可能であると判定し、店舗端末3に、決済が可能である旨の通知と、認証情報記憶部133に記憶されている携帯端末1を識別する認証情報とを送信する。電子決済実施部122は、決済金額を決済金額記憶部132に記憶させ、あわせて機能制限部124に電子決済を実施した旨を通知する。
電子決済実施部122は、店舗端末3との電子決済の実行時において、かかる決済可能金額の対象として、0043段落で後述する機能制限部124により機能制限中であるフラグが設定されている機能の決済可能金額を、決済可能金額の合計から除外する。これにより、複数回の電子決済を行った場合であっても、機能制限がされていない保有機能のみを決済可能金額の対象とすることができる。なお、この場合、かかる除外する金額については、機能制限中の機能の決済可能金額のうち、それまでに実際に決済された金額(まだ精算処理が完了していないもの)を対象とすることでもよい。
【0041】
精算実施部123は、電子決済装置2に、決済実施可能金額記憶部131に記憶している制限機能の情報と、認証方法記憶部133に記憶している認証情報と、決済金額記憶部132に記憶されている決済金額、情報とを送信し精算処理を実施する。
精算実施部123は、電子決済装置2から機能制限解除の通知を受信すると、決済金額記憶部132に記憶している決済金額の情報を削除し、精算処理を終了する。
【0042】
機能制限部124は、電子決済実施部122から電子決済を実施した旨の通知を受領すると、決済金額記憶部132を参照し、決済金額を取得する。さらに決済実施可能金額記憶部131を参照し、機能制限を実施する保有機能を選定する。選定される保有機能は、決済実施可能金額記憶部131のデータベースに登録されている保有機能の順に選定され、保有機能に紐づけられた決済可能金額の合計が、決済金額に達するまで行われる。選定された保有機能の制限は、携帯端末1のオペレーティングシステムやBIOS,アプリケーションなどを介して行われる。機能制限が実施されると、機能制限部124は、決済実施可能金額記憶部131を更新し、機能制限対象となった保有機能に機能制限中であるフラグを設定する。
ここで複数回の電子決済を行った場合、新たに選定された機能制限の対象となった保有機能について機能制限を実施し、機能制限実施後、決済実施可能金額記憶部131を更新し、新たに機能制限対象となった保有機能に機能制限中であるフラグを設定する。
【0043】
図10は、決済金額が1,000円の場合の決済実施可能金額記憶部131のデータベースの例である。機能制限部124は、データベースの上位から決済可能金額の合計が1,000を超えるまで保有機能を制限するため、通話機能とXXアプリが機能制限の対象となり、機能制限中であるフラグが設定されている。また、機能制限を行う保有機能の選定では、機能制限中であるフラグが設定されている対象は除外する。
【0044】
また、機能制限部124は、電子決済装置2から機能制限解除の通知を受信すると、オペレーティングシステム等を介して携帯端末1の保有機能の機能制限を解除する。機能制限の解除が実施されると、機能制限部124は、決済実施可能金額記憶部131を更新し、機能制限中であるフラグを解除する。
【0045】
制御部22の各部の動作の詳細について説明する。
決済可能金額算出部221は、携帯端末1から送信された保有機能の情報から、各保有機能ごとの決済可能金額を算出する。決済可能金額は、保有機能の重要度に応じて設定される。保有機能ごとの重要度の設定とそれに対応する決済可能金額は、電子決済装置2に設定情報として記憶されており、算出時にその設定を参照する。
【0046】
決済可能金額算出部221は、携帯端末1から送信される認証情報が認証情報記憶部234に記憶されているか否かを判定し、携帯端末1の認証処理を行う。また、特定された情報から、過去の支払状況や契約内容を参照し、顧客の信用度を算出することで、信用度に応じた決済金額の増減を行うことも可能である。具体的には、携帯端末1が携帯電話である場合に、加入年数に応じて決済可能金額を増加させる。例えば、通信機能であれば加入1年目は決済金額を1,000円と設定し、加入2年目であれば2,000円の設定にする。他にも携帯端末1の機種の情報や加入している料金プランなどを基に決済可能金額を変更させてもよい。
決済可能金額算出部221は、算出した決済可能金額を、各保有機能に紐づけて決済可能金額通知部222に通知し、あわせて決済可能金額記憶部231に記憶させる。
【0047】
決済可能金額通知部222は、決済可能金額算出部221から通知された決済可能金額と保有機能の紐づけ情報を携帯端末1に送信する。
【0048】
精算方法管理部223は、携帯端末1の精算方法を認証情報と紐づけて精算方法記憶部232に記憶させて管理する。精算方法は、電子決済装置2に事前に登録を行うものであり、例えば、オフライン決済の利用申し込み時などに登録を行う。また、これに限らず、スマートフォンなどの通信料金の支払先が自動で設定されてもよい。
精算方法管理部223は、店舗端末3との精算方法の管理も行い、店舗端末3の精算方法と識別情報を店舗情報記憶部235に記憶させ管理する。
【0049】
精算処理部224は、携帯端末1から、認証情報と、制限した制限機能と、決済金額の情報とが送信されると、精算処理を実施する。精算処理部224は、携帯端末1から送信された制限機能に関する情報を制限機能記憶部233に記憶させる。合わせて、送信された認証情報を基に、精算方法管理部223が管理する携帯端末1の認証情報を取得する。精算処理部224は取得した精算方法に従い、決済金額の精算処理を実施する。例えば精算方法に銀行口座の引き落としが指定されている場合は、指定の銀行口座から引き落としを行い、引き落とし結果を取得する。また窓口払いが指定されている場合は指定の住所に振込用紙を送付し入金を依頼するなどの処理を行い、入金結果を取得する。精算処理の結果は機能制限解除指示部225に通知し、精算処理が完了した場合は、決済金額記憶部236に精算金額を認証情報と関連付けて記憶させる。
【0050】
精算処理部224は、店舗端末3から、識別情報と、携帯端末1の認証情報が紐づけられた決済金額の情報とが送信されると、精算処理を実施する。精算処理部224は、送信された識別情報を基に、店舗端末情報記憶部235から店舗端末3の識精算方法を取得する。取得した精算方法に従い、指定の口座等に入金処理を実施する。入金処理完了後、精算金額を決済金額記憶部236に記憶させる。
【0051】
機能制限解除指示部225は、精算処理部224から送信された精算結果をもとに、携帯端末1に機能制限解除に関する通知を送信する。
精算結果が精算不可であった場合は、携帯端末1に保有機能の制限解除が不可である旨を通知する。精算可能であった場合は、携帯端末1に保有機能の機能制限解除の通知を送信し、機能制限記憶部233に記憶してある携帯端末1の機能制限に関する情報を削除する。
【0052】
制御部32の各部の動作の詳細について説明する。
電子決済実施部321は、携帯端末1との間でオフラインでの電子決済を実行する。商品の購入代金など、顧客に支払を請求する決済金額を算出し、携帯端末1に送信する。電子決済実施部321は、携帯端末1から請求した決済金額の決済可否の通知を受信する。決済が不可である旨の通知を受信した場合は、決済不可として処理を終了する。決済可能である旨の通知と認証情報を受信した場合は、受信した認証情報を決済金額と関連付けて決済金額記憶部331に記憶させる。
【0053】
精算実施部322は、電子決済装置2に決済金額記憶部331に記憶している決済金額とそれに紐づく携帯端末1の認証情報と、識別情報記憶部332に記憶している識別情報を送信する。
電子決済端末2から精算完了の通知を受信すると、決済金額記憶部331に記憶している決済金額の情報を削除する。
【0054】
以上の様に構成された電子決済システムSによる電子決済処理について、以下説明する。
図5は、携帯端末1と電子決済装置2との間での決済可能金額の算出に関する動作を表した動作シーケンス図である。
(ステップ11) 保有機能通知部121は、電子決済装置2に携帯端末1が保有する各保有機能の情報と、認証情報記憶部133に記憶されている認証情報を送信する。
(ステップ12) 決済可能金額算出部221は、認証情報をもとに、認証情報記憶部234に格納された携帯端末1の情報と照合し、認証を行う。その後、携帯端末1から送信された各保有機能から、それらの各保有機能に応じた決済可能金額を算出する。
(ステップ13) 決済可能金額通知部222は、ステップ12で算出した決済可能金額を各保有機能と紐付けて、携帯端末1に送信する。
(ステップ14) 保有機能通知部121は、受信した各保有機能に紐づけられた決済可能金額を決済実施可能金額記憶部131に記憶する。
【0055】
図6は、携帯端末1と店舗端末3との間でのオフラインでの電子決済に関する動作を表した動作シーケンス図である。
(ステップ21) 電子決済実施部321は、顧客からの決済依頼を受けると、電子決済の対象金額を算出し、決済金額を携帯端末1に送信する。
(ステップ22) 電子決済実施部122は、決済実施可能金額記憶部131に格納されている決済可能金額を参照し、各保有機能ごとに設定された決済可能金額の合計値を算出する。決済可能金額の算出は、機能制限中のフラグが設定されている保有機能を除外して行う。なお、この場合、機能制限中のフラグが設定されている保有機能であっても、それまでに実際に決済した決済金額(まだ精算処理が完了していないもの)を超える金額部分については、決済可能金額の算出に含んでもよい。次に、決済金額が、算出した決済可能金額の合計値以下であるかを判定する。合計値以下であれば、ステップ23に移行する。
合計値を超えている場合は、店舗端末3に決済不可を通知し、処理を終了する。
(ステップ23) 電子決済実施部122は、店舗端末3に決済可能である通知と携帯端末1の認証情報を送信する。あわせて、電子決済実施部122は、機能制限部124に電子決済を実施した旨を通知する。
(ステップ24) 電子決済実施部122は、決済を行った金額を決済金額記憶部132に格納する。
(ステップ25) 機能制限部124は、決済実施可能金額記憶部131に記憶されている各保有機能であって既に機能制限中のフラグが設定されていない対象を順に制限する。さらに機能制限状態であることを示すフラグを、決済実施可能金額記憶部131に追記する。機能制限は、保有機能の決済可能金額の合計が、決済金額を上回るまで行う。
(ステップ26) 電子決済実施部321は、携帯端末1から決済可能である旨の通知を受信すると、決済金額と認証情報を決済金額記憶部331に記憶させる。
【0056】
図7は携帯端末1との間での電子決済装置2の精算処理に関する動作を表した動作シーケンス図である。
(ステップ31) 精算実施部123は、電子決済装置2との通信が行える状態を検知すると、電子決済装置2に、決済実施可能金額記憶部131に記憶されている制限機能と、決済金額記憶部132に記憶されている決済金額と、認証情報記憶部133に記憶されている認証情報の情報とを送信する。
(ステップ32) 精算処理部224は、送信された認証情報を参照し認証情報記憶部234に格納されている携帯端末1の認証情報とそれに紐付く精算方法を取得する。
(ステップ33) 精算処理部224は、ステップ32で取得した精算方法に従い決済金額の精算処理を実施し、精算結果を取得する。
(ステップ34) 精算処理が不可である場合は、携帯端末1に精算処理が完了しなかった旨と機能制限の解除が不可である旨を通知する。精算処理が可能であった場合は、ステップ35に移行する。精算処理の結果は、機能制限解除指示部225に通知する。
(ステップ35) 機能制限解除指示部225は、携帯端末1に機能制限解除の通知を行い、あわせて精算金額を決済金額記憶部236に記憶する。
(ステップ36) 機能制限部124は、機能制限解除の通知を受信すると、制限してあった制限機能を解除し、決済実施可能金額記憶部131に記憶されている各保有機能ごとの機能制限中のフラグを削除する。
(ステップ37) 機能制限部124は、決済金額記憶部132に記憶されている決済金額を削除する。
ここで、本処理は、携帯端末1からの通信を契機に処理を開始する前提で説明を行ったが、電子決済端末2から携帯端末1に精算処理開始の依頼を送信し、精算処理を実施する手順としてもよい。
【0057】
図8は、電子決済装置2と店舗端末3との間での精算処理に関する動作を表した動作シーケンス図である。
(ステップ41) 精算実施部322は、電子決済装置2との間で通信が行える状態を検知すると、電子決済装置2に、決済金額記憶部331に記憶している決済金額と、それに紐づく携帯端末1の認証情報と、識別情報記憶部332に記憶している識別情報とを送信する。
(ステップ42) 精算処理部224は、送信された識別情報を参照し、店舗端末情報記憶部235に格納されている店舗端末の精算方法を取得する。取得した精算方法に従い、決済金額の入金処理を実施する。
ここで精算処理部224は、決済金額記憶部236を参照し、店舗端末3が通知した決済金額と認証情報が記憶されているか判断する構成としてもよい。具体的には、決済金額記憶部236に該当の情報が記憶されていない場合、携帯端末1との精算処理が未完了である通知を店舗端末3に送信し、精算処理を行わない。これにより電子決済提供事業者が貸倒れるリスクを軽減することができる。
(ステップ43) 精算処理部224は、精算金額を決済金額記憶部236に記憶し店舗端末3に精算完了通知を送信する。
(ステップ44) 精算実施部322は、精算完了通知を受信すると決済金額記憶部331に記憶されている決済金額を削除する。
ここで本処理は、店舗端末3からの通信を契機に処理を開始する前提で説明を行ったが電子決済端末2から店舗端末3に精算処理開始の依頼を送信し、精算処理を実施する手順としてもよい。
【0058】
以上説明したように、電子決済システムSは、電子決済を利用する顧客の携帯端末1の機能を担保とし、オフラインでの電子決済を行った後は、電子決済金額の精算が完了するまで担保とした機能の利用を制限することで、決済金額の貸し倒れの発生リスクを低減することが可能となる。
【0059】
また、説明した実施形態では携帯端末1と店舗端末3は近距離通信用モジュールを用いるとしているが、これに限られず、例えば、電子決済に関する情報をQRコードで作成し、読み取ることで情報の送受信を行ってもよい。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
携帯端末1の機能制限の対象となる保有機能の順位を変更する構成としてもよい。顧客が携帯端末1から、決済実施可能金額記憶部131に記憶されている保有機能の一覧を参照し、機能制限の順位を指定する。
例えば、決済実施可能金額記憶部131のデータベースを図11の構成とし、機能制限の順位と指定する項目を設ける。顧客は、図12に示すように制限される順位を任意に変更することができる。
機能制限部124は、機能制限を実施する保有機能を選定する際に、制限順位の数値が低い項目から選定を行う。
これにより、機能制限状態となっても顧客が使用し続けたい保有機能を残すことができ、利便性が向上する。
【0061】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
携帯端末1が機能制限状態になった後に、顧客が機能制限の対象となる機能を変更できる構成としてもよい。
図13を用いて、機能制限対象の変更について例示する。
図13(a)は、機能制限対象の変更前のデータベースの状態である。携帯端末1は、1,000円分の電子決済を行っており、制限順位1位のXXアプリと2位の通話機能が制限されている。
図13(b)は、機能制限対象の変更後のデータベースの状態である。顧客は、制限順位を変更し、制限順位1位のXXアプリと3位のカメラ機能を入れ替える。機能制限部124は、入れ替えられた制限順位をもとに再度機能制限の対象となる保有機能を選定する。選定後、決済金額1,000円に相当する制限順位1位のカメラ機能のみが制限対象となる。
これにより、機能制限の対象となっている機能の制限を解除することができる。一方、機能制限がかかっていても機能制限対象を任意に変更することができるため、顧客が決済金額の支払いを行う動機付けが弱まる可能性がある。そのため、機能制限の回数と制限するなどの機能を追加してもよい。
【0062】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
携帯端末1と電子決済装置2との間での精算処理において、顧客の指定する精算方法によって支払が完了しないと、機能制限を解除しない構成としたが、一部のみ入金が確認された場合、その金額に応じた機能制限のみの解除を通知する構成としてもよい。
具体的には、精算処理部224が精算処理を行い、一部のみの入金を確認すると、その入金結果を機能制限解除指示部225に通知する。機能制限開錠指示部225は、制限機能記憶部233と決済可能金額記憶部231を参照し、顧客からの入金で機能制限が解除可能となる機能制限中の保有機能を選定する。選定した保有機能と、一部のみ機能制限を解除する通知を携帯端末1に送信し、制限機能記憶部233から選定した保有機能を削除する。
機能制限部124は、送信された保有機能の機能制限を解除し、決済実施可能金額記憶部131から機能制限が解除された保有機能について機能制限中のフラグ設定を削除する。
【0063】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。
携帯端末1または店舗端末3のいずれかがインターネット等への接続機能を有してない構成としてもよい。
以下に、携帯端末1がインターネット接続機能を有しておらず、電子決済端末2との通信ができない場合を例に説明を行う。
携帯端末1は、電子決済端末2とのデータの送受信を、店舗端末3を経由して行う。具体的には、顧客は、インターネット接続の出来ない携帯端末1を店舗端末3の設置している店舗などに持ち込み、店舗端末3を経由して、電子決済端末2との間で、保有機能や決済可能金額、精算処理等の各種の情報の送受信を行う。同様に、店舗端末3がインターネットへの接続機能がない場合に、店舗端末3と電子決済端末2との間での送受信が必要な情報を、携帯端末1を経由して送受信することができる。
この実施形態では、携帯端末1が通信契約をしていない端末であっても、例えば、近距離通信用モジュールを有している情報端末(携帯電話・スマートフォンや、音楽プレーヤ、デジタルカメラ等)であれば、オフラインでの電子決済が利用可能である。
これにより、災害時以外であっても保有機能を担保に電子決済を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
S 電子決済システム
A エリア
1 携帯端末
11 通信部
12 制御部
121 保有機能通知部
122 電子決済実施部
123 精算実施部
124 機能制限部
13 記憶部
131 決済実施可能金額記憶部
132 決済金額記憶部
133 認証情報記憶部
2 電子決済装置
21 通信部
22 制御部
221 決済可能金額算出部
222 決済可能金額通知部
223 精算方法管理部
224 精算処理部
225 機能制限解除指示部
33 記憶部
231 決済可能金額記憶部
232 精算方法記憶部
233 制限機能記憶部
234 認証情報記憶部
235 店舗情報記憶部
236 決済金額記憶部
3 店舗端末
31 通信部
32 制御部
321 電子決済実施部
322 精算実施部
33 記憶部
331 決済金額記憶部
332 識別情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13(a)】
図13(b)】