【文献】
I−SCAN圧力分布測定システムシステムマニュアル,ニッタ株式会社,2013年04月,6, 9, 11,https://www.nitta.co.jp/resources/images/product/sensor/pdf_manual/i_scan.pdf
【文献】
圧力分布測定システムユーザーズマニュアル,ニッタ株式会社,2013年03月,表紙、目次、1−1測定システムとは、5−,https://www.nitta.co.jp/resources/images/product/sensor/pdf_manual/system.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状の感圧部を先端に有する支持ロッドと、前記感圧部の表面に作用する圧力を検出するセンサーと、前記センサーと電気的に接続されたモニターと、前記支持ロッド及び前記モニターが設けられた片手支持可能な把持体と、を備え、前記センサーで検出される圧力の最大値が前記モニターに表示されるように構成されている調整補助装置を使用して、版胴の多数のセルが形成されている外周面に鋭利な先端部が塗液の塗布時に圧接される、帯板形状を有するドクター刃の当該版胴への接触量を調整する、ドクター刃の調整方法であって、
前記版胴の中心に沿って離れた複数カ所で、当該版胴の外周面への前記ドクター刃の圧接部位に、当該圧接部位に差し込み可能に構成された板状の支持ベースに前記センサーを取り付けることによって構成された前記感圧部を差し込むことにより、当該感圧部の表面に作用する圧力を計測する計測ステップと、
前記複数カ所の各々で前記モニターに表示される圧力の最大値に基づいて、前記版胴に対する幅方向および径方向における前記ドクター刃の接触量を、前記版胴に近接して位置するドクター装置を操作することによって調整する調整ステップと、を含むドクター刃の調整方法。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷装置や塗工装置などの塗布装置には、版胴の周面に付着した過剰な塗液を掻き取るために、長くて厚みの薄い帯板状のドクター刃が取り付けられている。
【0003】
具体的には、この種の塗布装置は、走行する幅広なウエブ等のシートに、連続して塗液が塗布できるように構成されている。そして、横長なグラビアロール等の版胴が、シートに回転した状態で圧接されるようになっており、塗布は、版胴の周面に付着したインキ等の塗液をシートに転写することによって行われる。
【0004】
その塗液の転写量を一定にするために、転写前の版胴の周面に、ドクター刃の先端が圧接されていて、版胴の周面に付着した過剰な塗液がドクター刃によって掻き取られるようになっている。従って、ドクター刃の先端が版胴に接触する量は、塗布品質や耐久性の面で重要である。
【0005】
すなわち、版胴へのドクター刃の接触量が少な過ぎると、塗液の転写量が不安定になって塗布品質の悪化を招くし、版胴へのドクター刃の接触量が多過ぎると、ドクター刃や版胴が摩耗し易くなって耐久性の低下を招く。そのため、ドクター刃の接触量は、バランスよく適量に調整する必要がある。
【0006】
特に、版胴の横幅は1m以上あるのが普通であり、その幅方向の全域で、ドクター刃の接触量を均一に調整することが求められる。それに対し、現状は、目視によるドクター刃の撓み具合から、作業者が経験で調整している場合が多いため、ドクター刃の接触量の調整は手間と熟練を要する作業となっている。
【0007】
そのようなドクター刃の接触量の調整を簡便化するために、特許文献1には、ドクター刃を支持するドクターホルダーに、ドクター刃との間の隙間の変化からドクター刃の撓み具合を検出するセンサーを設け、その検出値に基づいてドクター刃の幅方向の接触量を調整する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法は、ドクター刃の接触量を間接的に検出しているため、正確性に欠けるという不利がある。
【0010】
例えば、ドクターホルダーは、塗液の掻き取り部位に近接しているため、塗布時には塗液が付着し易い。そのため、センサーとドクター刃との間の隙間に塗液が入り込むおそれがある。隙間に入り込んだ塗液が固化すると、ドクター刃が固着して撓み難くなったり隙間自体が狭くなったりするため、隙間の変化とドクター刃の撓み具合との相関関係が崩れて、正確な接触量が得られなくなってしまう。しかも、その隙間で固化した塗液は、分解洗浄等を行わなければ容易には除去できない。
【0011】
更に、特許文献1の方法では、塗布装置ごとにセンサーを設置しなければならないため、汎用性に欠け、コストの面でも不利がある。
【0012】
そこで本発明の目的は、汎用性に優れ、簡便かつ手軽な方法でドクター刃の接触量の調整が正確に行える調整補助装置及びその調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発
明は、版胴の外周面に圧接されるドクター刃の当該版胴への接触量を調整する調整補助装置に関するものであり、前記調整補助装置は、シート状の感圧部を先端に有する支持ロッドと、前記感圧部の表面に作用する圧力を検出するセンサーと、前記センサーと電気的に接続されたモニターと、を備えている。そして、前記センサーで検出される圧力の最大値が前記モニターに表示されるようになっている。
【0014】
すなわち、この調整補助装置によれば、表面に作用する圧力が検出できるシート状の感圧部が備えられている。従って、版胴へのドクター刃の圧接部位に、感圧部を円滑に差し込んで、版胴へのドクター刃の接触圧を検出することができる。感圧部は、支持ロッドの先端に設けられているので、圧接部位に通じる版胴とドクター刃との間の隙間が狭い場合であっても、その隙間に支持ロッドを挿入することにより、感圧部を圧接部位に支障無く簡単に差し込むことができる。
【0015】
感圧部を圧接部位に差し込むに従って、センサーで検出される圧力は変化するが、モニターには、その圧力の最大値が表示されるようになっているので、安定した数値が得られる。その数値に基づいてドクター刃の接触量の調整を行うことができる。
【0016】
従って、この調整補助装置を用いれば、簡便かつ手軽な方法でドクター刃の接触量の調整が正確に行える。また、この調整補助装置は、ドクター刃を備えた塗布装置であれば使用でき、一台で複数の塗布装置に使用できるので、汎用性に優れる。
【0017】
具体的には、前記支持ロッド及び前記モニターが設けられた片手支持可能な把持体を更に備えるハンディな形態にすることができ、その場合、前記版胴の外周面と前記ドクター刃との隙間の外側に前記把持体を位置させた状態で、前記版胴の中心に直交した方向から、前記版胴の外周面への前記ドクター刃の圧接部位に前記感圧部が差し込み可能に構成するのが好ましい。
【0018】
そうすれば、広いスペースで把持体を片手支持しながら、ドクター刃の接触圧を適切な状態で計測できるので、ドクター刃の接触量の調整が、簡易かつ安全に行える。
【0019】
また、前記モニターに前記ドクター刃の調整作業の手順を表示させる調整補助手段と、前記調整補助手段が表示する手順に従って計測される前記圧力の最大値に基づいて、前記ドクター刃の接触量が適切か否かを判定する接触量判定手段と、を更に備えるようにしてもよい。
【0020】
そうすれば、作業者は、モニターに表示される手順に従って、ドクター刃の調整作業が行えるので、簡単にミス無く行えるうえに、ドクター刃の接触量が適切か否かも判定されるので、習熟しなくても正確な調整が行える。
【0021】
本発明は、版胴の外周面に圧接されるドクター刃における当該版胴への接触量の調整方法に関するものであり、前記版胴の中心に沿って離れた複数カ所で、当該版胴の外周面への前記ドクター刃の圧接部位にシート状の感圧部を差し込むことにより、当該感圧部の表面に作用する圧力を計測する計測ステップと、前記計測ステップで計測される複数の圧力に基づいて、前記版胴に対する前記ドクター刃の接触量を調整する調整ステップと、を含む調整方法である。
詳細には、シート状の感圧部を先端に有する支持ロッドと、前記感圧部の表面に作用する圧力を検出するセンサーと、前記センサーと電気的に接続されたモニターと、前記支持ロッド及び前記モニターが設けられた片手支持可能な把持体と、を備え、前記センサーで検出される圧力の最大値が前記モニターに表示されるように構成されている調整補助装置を使用して、版胴の多数のセルが形成されている外周面に鋭利な先端部が塗液の塗布時に圧接される、帯板形状を有するドクター刃の当該版胴への接触量を調整する、ドクター刃の調整方法であって、前記版胴の中心に沿って離れた複数カ所で、当該版胴の外周面への前記ドクター刃の圧接部位に、当該圧接部位に差し込み可能に構成された板状の支持ベースに前記センサーを取り付けることによって構成された前記感圧部を差し込むことにより、当該感圧部の表面に作用する圧力を計測する計測ステップと、前記複数カ所の各々で前記モニターに表示される圧力の最大値に基づいて、前記版胴に対する幅方向および径方向における前記ドクター刃の接触量を、前記版胴に近接して位置するドクター装置を操作することによって調整する調整ステップと、を含むドクター刃の調整方法である。
【0022】
すなわち、この調整方法では、上述したような調整補助装置を使用することにより、胴の中心に沿って離れた複数カ所で、シート状の感圧部を差し込んでドクター刃の圧接部位に作用する圧力を計測する。従って、感圧部を圧接部位に差し込むだけなので、簡単に計測できる。
【0023】
そして、計測された圧力に基づいて、ドクター刃の接触量を調整するので、数値に基づいて調整でき、熟練を要さず、簡単かつ手軽に正確な調整が行える。ドクター刃を備えていれば、型式や構造が異なる塗布装置でも調整できるし、複数の塗布装置で調整できるので、汎用性に優れる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のドクター刃の調整補助装置等によれば、汎用性に優れ、簡便かつ手軽な方法でドクター刃の接触量の調整が正確に行えるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0027】
<版胴、ドクター刃>
図1A、
図1Bに、本発明の調整補助装置が適用され得る塗布装置の一例を示す。この塗布装置1は、開放型のグラビア塗布装置であり、版胴2、圧胴3、ドクター装置4、インキパン5などで構成されている。
【0028】
版胴2は、細長い円柱形状を有するグラビアロールであり、その外周面には、多数の細かなセル(凹み)が形成されている。版胴2は、水平方向に延びる回転軸Jを中心に回転可能に支持されており、塗布時には、所定の方向にモータで回転駆動されるように構成されている。
【0029】
版胴2の下方にはトレイ状のインキパン5が配置されていて、インキパン5に溜まる塗液に版胴2の下部が浸漬するようになっている。版胴2の上方には圧胴3が平行に配置されていて、塗布時には、圧胴3と版胴2との間に、所定の方向に搬送されるウエブWが挟持される。
【0030】
ドクター装置4は、支持台41、ドクター刃42、ドクターホルダー43、接触量調整機構44等で構成されている。支持台41は、版胴2と平行に延びた横長な部材からなり、版胴2に近接する使用位置と、版胴2から離れる待機位置とに変位可能に構成されている。この塗布装置1では、使用位置の支持台41は、版胴2に対し、版胴2の外周面が、塗液に浸漬された後にウエブWに接する部位(転写部位2a)に向う側(版胴2の外周面に塗液が付着している側)の、斜め上方に位置するようになっている。
【0031】
ドクターホルダー43は、版胴2と平行に延びる支持面を有するホルダー受部43aと、複数のボルトでホルダー受部43aの支持面に締結して固定される細長い角柱状の部材からなるホルダー43bとを有し、支持台41の上部に組み付けられている。
【0032】
ドクター刃42は、細長く薄い可撓性を有する帯板形状の部材(通常は鋼板)からなり、その長手方向の一方の側縁が鋭利な先端部となっている。ドクター刃42は、その先端部を版胴2に向けた状態で、ホルダー受部43aの支持面とホルダー43bとでその基端部が挟持され、所定の傾斜角でドクターホルダー43から突出した状態で使用される。
【0033】
支持位置の支持台41は、ドクター刃42が突出する方向に変位可能であり、支持台41を版胴2に向かって変位させることにより、ドクター刃42の先端部が、撓んで版胴2の外周面に圧接されるようになっている。支持台41を版胴2に近づけるほど、その圧接部位2bでのドクター刃42の接触量や接触圧は大きくなる。すなわち、支持台41は、版胴2の径方向におけるドクター刃42の接触量を調整する機能を有している。
【0034】
一方、接触量調整機構44は、版胴2の幅方向におけるドクター刃42の接触量を調整する機能を有しており、ドクターホルダー43の一端側を、ドクター刃42が突出する方向に進退可能に支持する操作部45と、ドクターホルダー43の他端側を進退不能に支持する非操作部46とを有している。
【0035】
操作部45は、支持台41に設けられてネジ孔が形成された軸支部45a、ネジ孔にねじ込まれてドクターホルダー43に先端が連結された軸部45b、軸支部45aから突出した軸部45bの末端に取り付けられたハンドル45c、一定の回転角度ごとに発生するクリック動作によって軸部45bの回動を規制するラチェット機構(図示せず)などで構成されている。
【0036】
ハンドル45cを操作し、軸部45bを回転させることで、ドクターホルダー43は、版胴2に対して傾動する。それにより、ドクター刃42の一端側と他端側とで、版胴2への接触量を大小に変化させることができる。従って、この塗布装置1では、支持台41による変位と接触量調整機構44による傾動との組み合わせにより、版胴2へのドクター刃42の接触量を、その圧接部位2bの全域で調整できるようになっている。
【0037】
ドクター刃42は、消耗品であり、定期的に交換される。ドクター刃42の交換は、支持台41を待機位置に変位させた状態で行われ、摩耗したドクター刃42に代えて、新たなドクター刃42がドクターホルダー43に取り付けられる。そうして、塗布装置1の運転を開始する前に、支持台41を使用位置に変位させた後、版胴2へのドクター刃42の接触量の調整が行われる。
【0038】
ドクター刃42の版胴2への接触量は、塗布品質や耐久性の面で重要であり、バランスよく適量に調整する必要がある。特に、版胴2の幅方向の全域で、ドクター刃42の接触量を均一に調整することが求められるが、現状は、目視によるドクター刃42の撓み具合から、作業者が経験に基づいて調整している場合が多い。そのため、ドクター刃42の接触量の調整は、熟練を要し、ばらつき易い作業となっている。
【0039】
そこで、そのようなドクター刃42の接触量の正確な調整が、簡便かつ手軽に行えるように、調整補助装置50を工夫した。
【0040】
<ドクター刃の調整補助装置>
図2に、ドクター刃の調整補助装置の一例を示す。この調整補助装置50は、手軽に扱えるハンディなタイプであり、把持体51、支持ロッド52、感圧部53等で構成されている。
【0041】
把持体51は、片手で握りしめて支持できる縦長なケース51aと、ケース51aに収容された電子基板51bやバッテリー51c等で構成されており、ケース51aの外面には、電子基板51bと接続されたスイッチ51dやモニター51eが設けられている。ケース51aの長手方向の一端には、棒状の支持ロッド52が突き出すように設けられている。支持ロッド52は、断面が矩形の角棒状や板棒状のほか、断面が円形や楕円形の丸棒状等であってもよい。その支持ロッド52の先端に、シート状の感圧部53が設けられている。
【0042】
図3に示すように、感圧部53には、金属の薄板などからなる支持ベース53aと、その表面に取り付けられた圧力センサー53bとが設けられている。支持ベース53aは、撓んでも折れ曲がり難い適度な剛性と弾性とを有し、圧接部位2bに差し込み可能に構成されている。
【0043】
圧力センサー53bは、薄膜状の公知のセンサーであり、その厚み方向に作用する圧力に応じて、所定の電圧を出力するように構成されている。圧力センサー53bは、支持ベース53aの先端側に設けられており、感圧部53は、その支持ベース53aの基端側(支持ロッド52の側)に、圧力が検知できない無検知領域53cを有している。
【0044】
圧力センサー53bは、支持ロッド52に沿って設けられた電気配線53dを通じて、ケース51aの内部に設置された電子基板51bと接続されている。それにより、圧力センサー53bは、電子基板51bから入力される電圧を利用して、感圧部53の表面に作用する圧力に応じた電圧を電子基板51bに出力する。
【0045】
スイッチ51dを操作し、調整補助装置50を作動させると、感圧部53で検出された圧力が、モニター51eに数値化されて出力されるようになっている。モニター51eに表示される圧力は、圧力そのものの値でなくてもよく、電圧値でもよい。単に電圧に応じた数値であってもよい(この調整補助装置50では、電圧から変換された圧力値が表示されるものとする)。
【0046】
ドクター刃42の接触量の調整時には、最初に、ある程度、ドクター刃42が版胴2に圧接するように、支持台41の位置が仮決めされる。そうして、版胴2の幅方向の中央部位において、センター合わせが行われる。
【0047】
センター合わせでは、
図4に示すように、版胴2の外周面とドクター刃42との隙間のうち、狭い方の隙間(断面方向から見て鋭角な隙間、挿入隙間54ともいう)に、版胴2の中心に直交した方向から支持ロッド52が挿入され、版胴2の外周面へのドクター刃42の圧接部位2bに感圧部53が差し込まれる。
【0048】
このとき、挿入隙間54の外側に把持体51を位置させた状態で、感圧部53を無理なく圧接部位2bに差し込めるように、感圧部53や支持ロッド52の長さ及び剛性が設計されている。従って、把持体51を片手で支持しながら、適切な方向から、シート状の感圧部53を円滑に圧接部位2bに差し込むことができ、極めて簡単に圧力の計測が行える。
【0049】
感圧部53が圧接部位2bに差し込まれるに従って、圧力センサー53bで検出される検出値は変化する。具体的には、
図5に示すように、感圧部53が圧接部位2bに差し込まれていくと、感圧部53の表面に作用する圧力が次第に増加するため、それに応じて圧力センサー53bの電圧値も増加し、圧力センサー53bが圧接部位2bを通過することで、その電圧値は低下する。
【0050】
圧力の計測が開始されると、モニター51eには、検出される圧力の最大値が表示される。すなわち、スイッチ51dを操作して圧力の計測が開始されると、圧力値がピークに達するまでは、表示される圧力値は次第に増加するが、ピークを過ぎると、そのピークの圧力値(最大圧力値V
0)の表示が保持される。表示がリセットされるまで、モニター51eには最大圧力値が表示されるので、感圧部53を複数回、抜き差しすることで、より正確な圧力の計測が行える。
【0051】
最大圧力値は、版胴2へのドクター刃42の接触量と相関関係があるため、最大圧力値に基づいて、ドクター刃42の接触量を正確に調整することができる。
【0052】
作業者は、その最大圧力値を、実験や試運転等に基づいて予め設定されている所定の基準値と比較し、適正値となるように支持台41を変位させる。そうすることでセンター合わせが終わると、作業者は、版胴2の横幅方向の一方の端部において、同様に圧力の計測を行う(エンド合わせ)。
【0053】
具体的には、スイッチ51dを操作して圧力の計測を開始し、モニター51eの表示をリセットした後、版胴2の横幅方向の一方の端部において、感圧部53を圧接部位2bに差し込む。そうして得られる最大圧力値を、予め設定されている所定の基準値と比較し、適正値となるように、ハンドル45cを操作してドクターホルダー43を傾動させる。
【0054】
作業者は、その後も、版胴2の横幅方向の他方の端部等、版胴2の中心に沿って離れた複数の箇所で圧力を計測し、これら計測値が適正値となるように、支持台41の変位量やドクターホルダー43の傾動量を調整する。そうすることで、ドクター刃42の全幅領域において、略均一な接触量が得られるようになる。数値で判断できるため、熟練を要さず、正確に調整することができる。
【0055】
ドクター刃を備えていれば、型式や構造が異なる塗布装置であっても、この調整補助装置50を用いて調整ができる。調整補助装置50が1つあれば、複数の塗布装置にも使用できるので、汎用性に優れる。
【0056】
<ドクター刃の調整補助装置の応用例>
図6に、調整補助装置の応用例を示す。この調整補助装置50’は、更に簡便かつ手軽にドクター刃の接触量が調整できるように工夫されている。
【0057】
この調整補助装置50’は、上述した調整補助装置50と同様に、把持体51や支持ロッド52、感圧部53等が備えられている(同様の構成には同じ符号を用いてその説明は省略する)。この調整補助装置50’では、ハンディな把持体51とは別に、モニター61を有する装置本体60が備えられていて、把持体51と装置本体60とが、ケーブル62(無線通信でもよい)によって電気的に接続されている。
【0058】
装置本体60は、タブレット型の端末やパソコンなど、携帯可能な形態が好ましいが、塗布装置1の制御装置等に、一体に組み込んであってもよい。装置本体60には、ドクター刃42の接触量の調整を補助するプログラムが実装されている。具体的には、
図7に示すように、調整補助プログラム63、接触量判定プログラム64、調整量指示プログラム65等が実装されている。
【0059】
接触量判定プログラム64には、計測値と比較される各種基準値や、判断の基準となる比較条件等が予め設定されている。また、調整量指示プログラム65には、各計測値と、接触量判定プログラム64の判断結果とに基づいて、具体的な調整量を演算する調整量演算プログラムが組み込まれている。
【0060】
調整補助プログラム63は、モニター61にドクター刃42の調整作業の手順を表示させるプログラムであり、作業の工程に応じた具体的な手順が、モニター61に表示されるように構成されている。
図6のモニター61には、センター合わせの工程での表示が例示されている。
【0061】
モニター61の中央には、計測箇所を示すために、版胴2及びドクター刃42の模式
図61aが表示されている。模式
図61aは、計測箇所が容易に理解できるように図示されている。計測ポイントは、その作業順にアルファベットで示されており、計測する方向は矢印で示されている。本例では、横幅方向の中央部とその両端部の3箇所が計測ポイントに設定されている。
【0062】
モニター61の上部には、具体的な手順の説明文61b「最初に位置Aにて計測、調整してください」が表示されている。そして、モニター61の右下側には、計測値(最大圧力値)を示す計測値表示部61cと、調整レベルを示すレベルメーター61dと、が表示されている。接触量が適正値に近づくに従って、レベルメーター61dのメモリが上昇し、適正値に至ることでメモリが上限に達するように設定されている。作業者は、これら表示を見て、支持台41を操作することにより、センター合わせを行う。
【0063】
このモニター61は、いわゆるタッチパネルであり、モニター61の左下側には、計測の終了時に押圧操作し、次の工程に進むためのボタン61eが表示されている。例えば、センター合わせの作業が終了し、作業者が、
図6に表示されているボタン61eを押圧操作すると、エンド合わせの工程での作業手順に表示が切り替わる。
【0064】
具体的には、
図8に示すように、計測する方向を示す矢印が計測ポイント「B」に移動し、説明文61bは「次に位置Bにて計測してください」に切り替わる。計測値やレベルメーター61dのメモリはリセットされて新たな表示が行われる。
【0065】
同様に、位置Bでの計測が終了して、作業者がボタン61eを押圧操作すると、計測する方向を示す矢印が計測ポイント「C」に移動し、説明文61bは「最後に位置Cにて計測してください」に切り替わる。位置Cでの計測が終了して、作業者がボタン61eを押圧操作すると、接触量判定プログラム64により、接触量の判定が行われる。
【0066】
接触量判定プログラム64は、調整補助プログラム63が表示する各手順に従って計測される最大圧力値に基づいて、ドクター刃42の接触量、詳しくは版胴2に接している全領域での接触量、が適切か否かを判定するプログラムである。接触量判定プログラム64は、予め設定されている基準値、例えば、接触量の基準値(最大圧力値として許容可能な数値範囲)や、振れ量の基準値(幅方向の両端での最大圧力値の差の許容可能な数値範囲)等と、計測された最大圧力値とを比較することにより、ドクター刃42の全域での接触量が適切か否かを判定する。
【0067】
判定の結果、ドクター刃42の接触量が適切であった場合、モニター61には、その判定結果として「正常な接触状態です。運転可能です。」等の説明文61bが表示される。一方、判定の結果、ドクター刃42の接触量が適切でなかった場合、調整量指示プログラム65により、具体的な調整量の調整内容が、モニター61を通じて指示される。
【0068】
具体的には、調整量演算プログラムが、各計測ポイントA,B,Cで計測された最大圧力値と、接触量判定プログラム64の判断結果とに基づいて、ドクター刃42の接触量が最適化(幅方向の接触量が均一化)されるように、操作部45のハンドル45cの回転量を演算する。上述したように、例示の塗布装置1では、ハンドル45cが、一定の回転角度ごとに、クリック動作によって回動が規制されるようになっている。従って、ドクターホルダー43の傾きの変位量は、
図9に示すように、ハンドル45cの回転クリック数に応じて定量的に変化する。
【0069】
調整量演算プログラムは、修正すべき変位量に対応したハンドル45cの回転クリック数を演算し、その回転クリック数に基づいて、調整量指示プログラム65は、「位置C側での接触量が少ないようです。ハンドル45cを12クリック分、時計回りに回転させてください」などの説明文61bを表示する。
【0070】
作業者は、その指示に従って、ハンドル45cを操作すればよい。そうするだけで、ドクター刃42の接触量を適正に修正することができる。従って、この調整補助装置50’を使用すれば、未熟な作業者であっても、簡単に操作でき、ドクター刃42の接触量を正確に調整できるようになる。
【0071】
なお、本発明にかかるドクター刃の調整補助装置等は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0072】
例えば、実施形態では、本発明に係る調整補助装置が適用され得る塗布装置として、開放チャンバー型の塗布装置を示したが、塗液が循環供給されるチャンバーを有する密閉型の塗布装置であってもよい。本発明は、ドクター刃があれば適用可能である。
【0073】
ドクター刃の接触量を調整する機構は、一例に過ぎない。例えば、非操作部46は、操作部45であってもよい。定量的に調整できるのが好ましいが、単に、ドクターホルダー43に支持されているドクター刃の支持位置をずらして調整するものであってもよい。調整補助プログラム63等は、装置本体ではなく、把持体に直接組み込んであってもよい。