(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983395
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】抗加齢剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/074 20060101AFI20211206BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20211206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211206BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20211206BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20211206BHJP
【FI】
A61K36/074
A23L33/105
A61P43/00 105
A61P43/00 111
!A61P37/04
!C12Q1/6876 ZZNA
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-135441(P2017-135441)
(22)【出願日】2017年7月11日
(65)【公開番号】特開2019-19056(P2019-19056A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】高木 寛
【審査官】
池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−029996(JP,A)
【文献】
特開平04−077430(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第106306809(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102485266(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第1751605(CN,A)
【文献】
J. Korean Soc. Food Sci. Nutr. (1997) vol.26, no.1, p.148-153
【文献】
FRAGRANCE JOURNAL (2002) vol.30, no.6, p.21-26
【文献】
Appl. Biochem. Biotechnol. (2010) vol.162, issue 5, p.1403-1413
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/074
A23L 33/105
A61P 43/00
A61P 37/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
霊芝を含有することを特徴とするIL−2応答性低下改善剤(抗加齢剤、免疫機能低下改善剤を除く)。
【請求項2】
霊芝を含有することを特徴とするIL−2応答性低下改善用食品組成物(抗加齢用食品組成物、免疫機能低下改善用食品組成物を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霊芝を含有することを特徴とする抗加齢剤に関する。より詳しくは、加齢に伴う免疫機能の低下、IL−2応答性の低下、NK活性の低下、サイトカイン産生の低下、IL−2受容体産生の低下、グランザイム産生の低下に対する改善剤、及び加齢に伴う機能低下を改善する作用をもつ食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴い、ヒトに備わっている多くの機能は低下する。例えば、神経・内分泌系機能の低下、視力や聴力などの感覚機能の低下、筋力や関節の可動範囲など身体機能の低下、環境変化に対する適応能力の低下、病気に対する抵抗力の低下など、様々な変化が生じる。中でも、癌や感染症に対する防御機構の形成に重要な免疫機能は、加齢に伴い最も大きな変化を示すものと考えられる。近年、免疫機能の加齢変化が、様々な臓器における代謝性疾患や慢性炎症など、多くの加齢関連疾患の発症や病態に影響を与えることが明らかになってきている(非特許文献1)。
【0003】
加齢に伴う免疫機能の低下は、癌の罹患や感染症の発症につながり、それらの疾病による死亡率の増大が、医学的及び社会的な問題となっている。癌は日本における死亡原因の第一位であり、平成28年の死亡数は37万人に達する。加齢と癌発症率との間には正の相関があるといわれており、その理由として、癌原物質の暴露期間の長期化、加齢に伴う遺伝子変化、癌細胞の排除に関わる宿主側の要因などが指摘されているが、最大の要因は宿主における免疫機能低下である。また高齢者は、感染抵抗性も低下することから、老人病院など、高齢者の多い施設においては、癌や脳梗塞を患っていても、その末期には肺炎で亡くなる方も少なくない。こうした事実は、生体防御機構の中核をなす免疫機能が、高齢者になると著明に低下することを示している(非特許文献2〜4)。
【0004】
さらに、免疫機能は癌の罹患や感染症のみならず、心臓病、糖尿病、腎臓病、慢性疲労症候群、認知機能障害など、多くの疾患とも密接に関わっている。他にも、厚生労働省の指定する「難治性疾患(いわゆる難病指定)」135疾患のうちの4分の1が免疫に関わっており、「特定疾患」56疾患についても、3分の1が免疫に関わっていると考えられている。すなわち、加齢に伴う免疫機能低下は、実に多様な疾病の発症や病態に結び付く可能性があるため、これを改善することは、癌の罹患や感染症を防ぐことに加え、幅広い抗加齢効果につながると考えられる。
【0005】
加齢に伴う免疫機能の低下は、NK(ナチュラルキラー)細胞の機能低下がひとつの例である。NK細胞は、自然免疫系の主要因子として働くリンパ球の一種であり、NK活性と呼ばれる癌細胞やウィルス感染細胞などに対する細胞傷害活性を有する。NK細胞による細胞傷害活性は、NK細胞が癌細胞やウィルス感染細胞などの標的細胞を認識・結合して、パーフォリンの重合によって形成されたチャネルを通してグランザイムと呼ばれるプロテアーゼを標的細胞に送り込み、そのグランザイムがプロテアーゼ活性により標的細胞にアポトーシスを誘導させるというメカニズムで働くことが知られている。
【0006】
標的細胞に対する細胞傷害活性は、NK細胞によってもたらされるものであるが、他のリンパ球であるT細胞も、IFNγ(インターフェロンガンマ)やTNFα(腫瘍壊死因子アルファ)などのサイトカインを介して、NK細胞を活性化することで細胞傷害活性に関係している。
【0007】
NK細胞やT細胞などのリンパ球を活性化する因子としてIL−2(インターロイキン−2)が知られているが、加齢に伴う免疫機能の低下は、リンパ球のIL−2に対する応答性の低下が要因であると考えられている。リンパ球のIL−2に対する応答性の低下とは、リンパ球におけるIL−2受容体の減少や、受容体の下流にあるシグナル伝達の異常により、リンパ球の細胞分裂、IFNγやTNFαなどのサイトカイン産生、グランザイム産生など、IL−2刺激によって惹起される細胞の反応が低下あるいは全く起こらないことを指す。
【0008】
しかしながら、加齢によるIL−2受容体の減少や、その遺伝子発現の低下、IL−2との親和性の低下については、詳しく判っていない。以上のことから、加齢に伴う免疫機能の低下を改善するためには、リンパ球のIL−2応答性やIL−2受容体の産生を改善することで、サイトカインやグランザイムの産生を高めるという方法が、非常に有効であると考えられる。
【0009】
ここで、霊芝の薬理作用については、種々の報告がある。免疫機能に関するものでは、TNFαの産生促進を介して免疫機能を向上する食品(特許文献1)、鹿角霊芝の免疫増強作用による医薬品及び食品(特許文献2)、マクロファージ貪食活性とNK細胞活性の増強による免疫系活性物質とその製造方法(特許文献3)、担子菌類の菌糸体の抽出物を含有する免疫活性調節剤(特許文献4)などが開示されている。しかしながら、加齢に伴う免疫機能の低下に対する働きについては全く知られていない。加齢に伴う免疫機能低下においては、リンパ球のIL−2の応答性低下、IL−2受容体の減少が要因となって起こる特徴的なメカニズムにより生じるため、従来の免疫機能の向上作用のみでもって解決することはできない。加齢に伴う免疫機能低下の改善には、従来、開示されている霊芝の薬理作用とは全く異なるアプローチが必要であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−135028号公報
【特許文献2】特開2001−131083号公報
【特許文献3】特許第3128147号公報
【特許文献4】特開2002−371004号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】実験医学5、2017、35(8)、1309−1315
【非特許文献2】磯部健一、日本老年医学会雑誌、2011、48(3)、205−210
【非特許文献3】廣川勝いく、日本老年医学会雑誌、2003、40(6)、543−552
【非特許文献4】新井冨生、日本老年医学会雑誌、2010、47(5)、409−411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、霊芝を含有することを特徴とする抗加齢剤に関する。より詳しくは、加齢に伴う免疫機能の低下、IL−2応答性の低下、NK活性の低下、サイトカイン産生の低下、IL−2受容体産生の低下、グランザイム産生の低下に対する改善剤、及び加齢に伴う機能低下を改善する作用をもつ食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、霊芝が加齢に伴うリンパ球のIL−2の応答性低下を改善し、IL−2受容体の産生低下を改善することで、IL−2の作用を著しく増強させることを見出し、本発明を完成させるに至った。リンパ球のIL−2の応答性低下の改善、IL−2受容体の産生低下の改善は、従来、開示されている免疫機能の改善とは全く異なるアプローチであり、加齢に伴う免疫機能低下の改善や、免疫機能の加齢変化が関与する様々な疾病に対する改善作用など、幅広い抗加齢効果につながると考えられる。
【0014】
本発明に用いる霊芝は、担子菌類のマンネンタケ科(Ganodermataceae)マンネンタケ属(Ganoderma)に属するキノコで、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」によると、霊芝(赤芝)、黒霊芝(黒芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が知られている。本発明では、マンネンタケ科に属する全てのキノコを用いることができるが、好ましくは霊芝、黒霊芝、紫霊芝、青霊芝、黄霊芝、白霊芝であり、更に好ましくは霊芝(赤芝、Ganoderma lucidum)又は黒霊芝(黒芝、Ganoderma sinensis、Ganoderma atrum)を用いることが望ましい。
【0015】
本発明に用いる霊芝は、子実体、胞子、菌糸体、天産物、栽培物、培養物等を問わず使用することができ、広く中国や日本市場等で流通しているものを用いることができる。また、必要に応じてそのままの状態、破砕物、乾燥物等を適宜選択して抽出操作に付することができる。又、破壁胞子を得る方法として、微粒化処理、ロールプレス処理、摩砕処理、超高圧マイクロスチーム処理、通常工業的に用いられるその他機械的方法等が挙げられる。
【0016】
本発明に用いる霊芝には、抽出溶媒として、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール類(1、3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等を用いることができる。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。好ましくは、水、エタノール、あるいはこれらの混合物を用いると良い。
【0017】
本発明に用いる霊芝の摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重等によって異なるが、乾燥物に換算して1〜20000mg/日、好ましくは10〜10000mg/日、より好ましくは50〜5000mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0018】
本発明の抗加齢剤は、食品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができる。その剤形は、経口用として散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等がある。また、非経口用として注射剤、座剤等にすることもできる。
【0019】
本発明の抗加齢剤は、霊芝をそのまま使用しても良く、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて通常の医薬品、医薬部外品又は食品に用いられる賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤、香料等の成分を含有することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の抗加齢剤は、加齢に伴うリンパ球のIL−2応答性の低下、IL−2受容体産生の低下を改善することで、IL−2の作用を著しく増強させることができる。それにより、加齢に伴うNK活性の低下、サイトカイン産生の低下、グランザイム産生の低下を改善することで、免疫機能低下の改善を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
製造例1 霊芝熱水抽出物
霊芝(Ganoderma lucidum)の乾燥物20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して霊芝熱水抽出物を1.4g得た。
【0023】
製造例2 霊芝エタノール抽出物
霊芝(Ganoderma lucidum)の乾燥物100gに900mLのエタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、霊芝エタノール抽出物を1.6g得た。
【0024】
製造例3 黒霊芝熱水抽出物
黒霊芝(Ganoderma sinensis)の乾燥物20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して黒霊芝熱水抽出物を1.1g得た。
【0025】
製造例4 黒霊芝エタノール抽出物
黒霊芝(Ganoderma sinensis)の乾燥物100gに900mLのエタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、黒霊芝エタノール抽出物を1.4g得た。
【0026】
製造例5 霊芝胞子熱水抽出物
霊芝(Ganoderma lucidum)の胞子乾燥物20gを微粒化処理し、400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して霊芝胞子熱水抽出物を1.2g得た。
【0027】
製造例6 霊芝胞子エタノール抽出物
霊芝(Ganoderma lucidum)の胞子乾燥物100gを微粒化処理し、900mLのエタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、霊芝胞子エタノール抽出物を1.5g得た。
【0028】
以下の処方例の%は重量%を示す。
【実施例2】
【0029】
処方例1 軟カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.霊芝熱水抽出物(製造例1) 30.0
2.米胚芽油 60.0
3.ミツロウ 7.0
4.ビタミンE 3.0
<製造方法>
成分1〜4を混合し、ゼラチン、グリセリン、カラメル色素で構成される被膜に、250mg充填し、乾燥後、軟カプセル剤を得る。
<用法>
1日当り4粒摂取する。
【0030】
処方例2 硬カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.霊芝熱水抽出物(製造例1) 20.0
2.コーンスターチ 72.0
3.ショ糖脂肪酸エステル 8.0
<製造方法>
成分1〜3を混合し、2号硬カプセルに250mg充填してカプセル剤を得る。
<用法>
1日当り4粒摂取する。
【0031】
処方例3 飲料
<処方>
成分 含有量(%)
1.黒霊芝熱水抽出物(製造例3) 1.0
2.クエン酸 6.0
3.ショ糖 10.0
4.香料 1.0
5.水 82.0
<製造方法>
成分1〜4を成分5の一部の水に撹拌溶解する。次いで、成分5の残りの水を加えて混合し、殺菌したものを飲料とする。
<用法>
1日当り50mL摂取する。
【0032】
処方例4 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.霊芝エタノール抽出物(製造例2) 8.0
2.乳糖 80.0
3.セルロース 12.0
<製造方法>
成分1〜3を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り1g摂取する。
【0033】
処方例5 錠剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.霊芝胞子熱水抽出物(製造例5) 11.0
2.乳糖 60.0
3.還元麦芽糖水飴 25.0
4.ショ糖脂肪酸エステル 4.0
<製造方法>
成分1〜4を混合して打錠成型し、0.5gの錠剤を得る。
<用法>
1日当り2粒摂取する。
【0034】
処方例6 ゼリー
<処方>
成分 含有量(%)
1.黒霊芝エタノール抽出物(製造例4) 0.001
2.カラギーナン 2.0
3.ゼラチン 1.0
4.砂糖 28.5
5.精製水 68.499
<製造方法>
成分1〜5を混合し、加熱しながら煮詰め、ゼリーの型に流し込み、冷却する。
<用法>
1日当り1個(100g)を摂取する。
【実施例3】
【0035】
次に、実施例1で示した霊芝を用い、リンパ球のIL−2応答性の改善に関する実験例とその結果を示す。
【0036】
実験例1 マウスのリンパ球を用いたNK活性試験とサイトカイン産生試験
若齢マウス(ICRマウス12週齢)と加齢マウス(ICRマウス64週齢)より脾臓を摘出し、それぞれのマウスにおいて、NK細胞やT細胞などを含むリンパ球を調製した。細胞を24ウェルプレートに播種し、IL−2を添加(最終濃度20U/mL)する場合と、IL−2を添加しない場合に分け、製造例1または製造例5の霊芝を添加(最終濃度2μg/mL)し、培養を行った。培養後、細胞と培養上清を回収し、細胞は標的癌細胞YAC−1と24時間共培養を行うことにより、NK活性の測定を行った。培養上清は、ELISAを用いてIFNγ産生量とTNFα産生量を測定した。さらに、NK活性測定後の細胞を回収し、グランザイムA及びBの遺伝子発現解析を行った。遺伝子発現解析に用いたプライマーは次の通りである。
【0037】
グランザイムA用プライマーセット
CACTGTAACGTGGGAAAGAG(配列番号1)
GTGAAGGATAGCCACATTTCTG(配列番号2)
グランザイムB用プライマーセット
CTGCTAAAGCTGAAGAGTAAGG(配列番号3)
TTTAAAGTAGGACTCACACTCCC(配列番号4)
【0038】
試験結果を表1−1、表1−2に示した。数値は、IL−2を添加した場合の、若齢マウスにおける試料未添加群の値を100%とし、他はそれに対する相対値を示した。
【0039】
表1−1に示す様に、IL−2を添加した場合は、NK活性、IFNγ産生量、TNFα産生量はいずれも、加齢により明らかに低下したが、霊芝の添加により、極めて著しい改善が認められた。一方、IL−2未添加の場合は、これら免疫指標の加齢による変化や、霊芝の添加による改善は極めて限定的であった。以上の結果から、霊芝は、NK細胞やT細胞などのリンパ球を直接活性化することよりも、IL−2作用の増強に強く働くものと考えられた。
【0040】
【0041】
次に、グランザイムA及びBの遺伝子発現解析の結果を表1−2に示した。IL−2を添加した場合は、グランザイムA及びBの遺伝子発現は加齢により明らかに低下したが、霊芝の添加により、極めて著しい改善が認められた。一方、IL−2未添加の場合は、グランザイムA及びBの遺伝子発現の加齢による変化や、霊芝の添加による改善は極めて限定的であった。
【0042】
【0043】
また、製造例3の黒霊芝においても、NK活性、IFNγ産生量、TNFα産生量、グランザイムA及びBの遺伝子発現について、同様の改善効果が認められた。
【0044】
実験例2 自然加齢マウスを用いた有効性試験
12週齢のHR−1ヘアレスマウスを用い、製造例1の霊芝を2%添加した飼料による飼育を12ヶ月間行った。比較として、普通飼料による飼育を12ヶ月間行う群と、若齢マウス群(12週齢)を設定した。脾臓を摘出してリンパ球を調製し、IL−2を添加(最終濃度20U/mL)して、標的癌細胞YAC−1と24時間共培養を行うことによりNK活性の測定を行った。培養上清は、ELISAを用いてサイトカイン(IFNγ、TNFα、IL−2、IL−12)産生量を測定した。さらに、NK活性測定後の細胞を回収し、種々の遺伝子発現解析を行った。
【0045】
NK活性とサイトカイン産生量の測定結果を表2に示した。数値は、普通飼料の若齢マウス群の値を100%とし、他はそれに対する相対値を示した。若齢マウスと加齢マウスを比較すると、NK活性、IFNγ産生量、TNFα産生量のいずれも加齢マウスにおいて明らかに低下し、加齢による免疫機能低下、すなわちIL−2応答性の低下が認められた。
【0046】
霊芝を添加した飼料により飼育を行うと、NK活性、IFNγ産生量、TNFα産生量に顕著な改善がみられ、霊芝は、加齢に伴うIL−2応答性の低下による、NK活性低下の改善、IFNγ産生量及びTNFα産生量の低下の改善に優れた効果を発揮した。NK細胞の活性化に関与するサイトカインとしてIL−2とIL−12についても測定を行ったが、これらは、いずれもELISAの検出限界以下であった。この結果は、単に、IL−2の産生量を増大させるだけでは、加齢による免疫機能低下を改善できないことを示している。
【0047】
【0048】
次に、IL−2応答性関連因子の遺伝子発現解析を行った。遺伝子発現解析に用いたプライマーは次の通りである。
【0049】
IL−2受容体α用プライマーセット
TCCTAAACTGTGAATGCAAGAG(配列番号5)
ATTTGTCATGGGAGTTGCTG(配列番号6)
IL−2受容体β用プライマーセット
CCTTTGACAACCTTCGCCTG(配列番号7)
AGCATCTCCAAGAAGAGCCA(配列番号8)
IL−2受容体γ用プライマーセット
GCTGAAACGAGAATCCTTCC(配列番号9)
CGTTCCAACCAACAGTACAC(配列番号10)
Myc用プライマーセット
ATCAGCAACAACCGCAAGTG(配列番号11)
GTGTCCGCCTCTTGTCGTTT(配列番号12)
Bcl−2用プライマーセット
CCGGGAGATCGTGATGAAGT(配列番号13)
ATCTCCAGCATCCCACTCGTA(配列番号14)
Jun用プライマーセット
AAACAGAGCATGACCTTGAACC(配列番号15)
GTCGGTGTAGTGGTGATGTG(配列番号16)
Fos用プライマーセット
CAAAGTAGAGCAGCTATCTCCT(配列番号17)
CAGACCTCCAGTCAAATCCA(配列番号18)
p16用プライマーセット
TGATGATGATGGGCAACGTT(配列番号19)
TCGAATCTGCACCGTAGTTGAG(配列番号20)
p21用プライマーセット
CCGAGAACGGTGGAACTTTG(配列番号21)
AACGCGCTCCCAGACGAA(配列番号22)
p53用プライマーセット
CGACCTATCCTTACCATCATCACA(配列番号23)
GGCACAAACACGAACCTCAA(配列番号24)
【0050】
IL−2受容体の遺伝子発現解析の結果を表3−1に示した。IL−2受容体はα、β、γの3種類より構成される。試験の結果、IL−2受容体αとIL−2受容体γは、加齢により遺伝子発現が低下し、霊芝の投与により改善した。IL−2受容体βは、加齢による低下は見られないものの、霊芝の投与により2倍以上の遺伝子発現促進を示した。
【0051】
【0052】
IL−2受容体からのシグナルは、その下流因子を介して、グランザイムの産生につながるため、IL−2受容体シグナルの下流因子Myc、Bcl2、Jun、Fosの遺伝子発現解析を行った。表3−2に示した結果より、Fosについては加齢による遺伝子発現低下や霊芝の投与による影響は見られなかったが、Fos以外のIL−2受容体シグナルの下流因子は、加齢による発現低下と霊芝の投与による顕著な改善が見られた。
【0053】
【0054】
グランザイムA及びBの遺伝子発現解析の結果を表3−3に示した。グランザイムA及びBの遺伝子発現は、加齢により明らかに低下し、霊芝の投与による顕著な改善が認められた。表3−1、表3−2、表3−3の結果から、霊芝は、加齢に伴うIL−2の応答性低下を改善することが明らかとなった。
【0055】
【0056】
一般的な細胞老化マーカーの遺伝子発現解析の結果を表3−4に示した。その結果、p16、p21、p53のいずれの遺伝子においても、加齢による発現上昇と霊芝の投与による発現抑制が観察された。
【0057】
【0058】
また、製造例3の黒霊芝においても、NK活性、IFNγ産生量、TNFα産生量、グランザイムA及びBの遺伝子発現、IL−2受容体α、β及びγの遺伝子発現、細胞老化マーカーp16、p21、p53遺伝子発現について、同様の改善効果が認められた。
【0059】
霊芝によるNK活性改善効果の発揮に対し、より重要な働きをする因子を探索するため、実験例2における霊芝投与群のマウスについて、個体毎のNK活性と、表3−1、表3−2、表3−3、表3−4に示した遺伝子発現との相関解析を行った。尚、IFNγとTNFαについては、表2に示したELISA測定値との相関解析を行った。
【0060】
NK活性と、遺伝子発現またはELISA測定値との相関係数を表4に示した。相関係数は、−1から1までの値を取り、絶対値が大きいほど、2種のデータ(この場合、NK活性と、遺伝子発現またはELISA測定値)の相関が強いことを示す。数値がプラスの場合、正の相関(一方の値が増加すると、もう一方の値も増加する傾向にあること)と判断される。解析の結果、NK活性は、グランザイムA及びBの遺伝子発現と、非常に強い相関があることが明らかとなった。すなわち、加齢に伴うNK活性低下の改善には、グランザイムの遺伝子発現を改善することが大変重要であり、霊芝は加齢に伴うグランザイムの遺伝子発現の改善に優れた効果を発揮することが明らかとなった。
【0061】
【0062】
以上の結果から、霊芝は、加齢に伴う免疫機能低下を改善する効果が認められた。霊芝は、IL−2応答性の改善、IL−2受容体産生の改善、グランザイムの産生の改善によって免疫機能の低下全体を改善することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の霊芝を含有することを特徴とする抗加齢剤は、加齢に伴う免疫機能低下、NK活性低下、リンパ球のIL−2応答性低下、サイトカイン産生低下及びグランザイム産生低下に対して優れた改善効果を示した。加齢に伴う免疫機能低下の根本的な改善は、代謝性疾患や慢性炎症など免疫機能が関与する様々な加齢関連疾患の改善にもつながり、医薬品、医薬部外品、食品として幅広く利用できる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]