特許第6983399号(P6983399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6983399-ワーク搬送システム 図000002
  • 特許6983399-ワーク搬送システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6983399
(24)【登録日】2021年11月26日
(45)【発行日】2021年12月17日
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20211206BHJP
【FI】
   B23Q7/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-153810(P2017-153810)
(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公開番号】特開2019-30942(P2019-30942A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友基
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−173713(JP,A)
【文献】 特開平02−040701(JP,A)
【文献】 特開2008−046913(JP,A)
【文献】 特開2009−054043(JP,A)
【文献】 特開2006−195862(JP,A)
【文献】 特開2017−004300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04
B23Q 15/00
G05B 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X,Y,Z軸のうち、2軸以上にそれぞれ移動制御手段を備えたガントリーローダからなるワークの搬送システムであって、
前記ガントリーローダに有する搬送ハンドがワークを把持し、目標の位置に搬送する際に、一の軸方向の移動動作が完了するステップの前に他の軸方向の移動動作が開始するステップを有し、
記一の軸方向の移動動作が高速動作から減速に切り換わる際に又は減速中に、
前記他の軸方向の移動動作の開始指令が出力され
記ワークの搬送中の位置座標の検出手段を有し、
設定してある干渉領域に前記ワークが侵入する恐れが発生すると前記搬送が自動停止し、アラームが鳴る停止制御手段を有していることを特徴とするーク搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送システムに関し、特に高速化を図った搬送システムに係る。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、ワークの受け渡しを行う目的で、ガントリーローダ等の搬送装置が備えられているものがある。
従来は、図2に示すような搬送システムになっている。
例えば、機外でワークを把持し、工作機械の主軸等にワークを受け渡す際には、ワーク(図示省略)を把持した搬送ハンド1は、まずZ軸方向に機内に向けて移動し、Z軸方向の移動が高速(V)から減速(VZ1)に切り換わり、Z軸方向の移動が完了し、停止(VZ2)した後に搬送ハンド1がY軸方向に下降移動する。
この際に、Y軸方向の動作開始指令が出力されると、停止状態(VY2)から移動速度が上昇(VY1)するステップを経て、高速移動(V)に移る。
これでは、Z軸方向の移動が完了する第1ステップから、Y軸方向の移動が開始される第2ステップの間に動きが遅く、あたかも動きが停まっているかのように見えるロス時間(T)が発生する問題があった。
【0003】
特許文献1には、ガントリーローダを付設した工作機械を開示し、レールに沿って走行可能な走行体と、この走行体に付設された上下動機構を有している。
しかし、同公報には、走行と上下動との切り換え方法については、具体的な記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−47010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ワークの高速搬送システム及びそれを備えた工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワークの搬送システムは、X,Y,Z軸のうち、2軸以上にそれぞれ移動制御手段を備えたワークの搬送システムであって、ワークを目標の位置に搬送する際に、一の軸方向の移動動作が完了するステップの前に他の軸方向の移動動作が開始するステップを有することを特徴とする。
ここで、一の軸方向とは、ある1つの軸方向との意味である。
【0007】
本明細書では便宜上、図1にて左右方向をZ軸方向,上下方向をY軸方向,紙面の表裏方向をX軸方向として説明するが、2次元又は3次元座標であれば、どのように定義してもよい。
【0008】
本発明において、一の軸方向の移動動作が高速動作から減速に切り換わる際に又は減速中に、前記他の軸方向の移動動作の開始指令が出力されるものであってよい。
また、ワークの搬送中の位置座標の検出手段を有し、設定してある干渉領域に前記ワークが侵入する恐れが発生すると前記搬送が自動停止する停止制御手段を有するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明におけるワーク搬送システムは、2軸方向の2ステップ移動制御、又は3軸方向の3ステップ移動制御において、それぞれの軸方向の移動動作が一部オーバラップするように連続移動制御したので、従来のステップ毎の移動制御に比較して、高速搬送が可能になる。
このような搬送システムを備えた工作機械を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る搬送システムの例を示す。
図2】従来のワーク搬送方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るワークの搬送システムの構成例を図1に示す。
図1は、工作機械の図示は省略してあり、工作機械例えば、旋盤やその複合加工機等にガントリーローダ等の搬送装置が備えられている。
図1(a)は、ガントリーローダのワークを把持して搬送する搬送ハンド1を表示してある。
本実施例では、ワークを工作機械に受け渡す第1チャック部1aと、工作機械外に搬送するための第2チャック部1bを有した例になっている。
また、工作機械に有する主軸台や刃物台等との干渉を防止するための干渉領域2を設定し、ワークの座標上の移動位置が認識されるようになっている。
【0012】
図1(a)は、例えばワークを第1ステップとしてZ軸方向に移動し、途中で第2ステップとしてY軸方向に移動する例を示すが、どの方向に移動が切り換わるか、あるいは2軸方向の他に3軸方向の移動切り換えも同様に構築することができる。
第1ステップから第2ステップに切り換わる際の時間−速度のグラフを図1(b)に示す。
Z軸方向に高速(V)で移動してきた搬送ハンド1は、Y軸方向に移動を切り換える準備として、必要に応じて減速指令を介して、停止指令により減速V11する。
この減速V11の開始、あるいはその後、所定の速度まで減速された(速度又は経過時間を検出する)時点で、Y軸方向の第2ステップの動作開始指令が出力される。
これにより、Y軸方向の移動速度が上昇(V31)し、高速(V)に切り換わる。
よって、図1(b)のグラフに示すように、Z軸方向の速度成分と、Y軸方向の速度成分とがオーバラップしているオーバラップ区間Vが発生している。
この移動が合成され(V)の移動として現れる。
これにより、2軸方向あるいは3軸方向の移動がオーバラップさせながら切り換わり、高速搬送が可能である。
【0013】
本実施例では、図1(a)に示すように干渉領域2を設定してあり、ワーク(搬送ハンド)の位置検出手段により、ワークがこの干渉領域に侵入する恐れが生じると、搬送装置が安全停止し、アラームが鳴るようになっている。
【符号の説明】
【0014】
1 搬送ハンド
2 干渉領域
図1
図2